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明細書 :座位搭乗装置及びクッション型押圧動作検知装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-158909 (P2016-158909A)
公開日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 座位搭乗装置及びクッション型押圧動作検知装置
国際特許分類 A61G   5/04        (2013.01)
FI A61G 5/04 502
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-040965 (P2015-040965)
出願日 平成27年3月3日(2015.3.3)
発明者または考案者 【氏名】江上 正
【氏名】梅木 和希
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098626、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 壽
【識別番号】100134728、【弁理士】、【氏名又は名称】奥川 勝利
審査請求 未請求
要約 【課題】駆動対象を備えた座位搭乗装置に搭乗する搭乗者が、その駆動対象の動作をコントロールするために押圧する箇所を柔らかくしつつも、その押圧動作を適切に検知可能とする。
【解決手段】搭乗者による押圧によって変形可能な柔軟性を有する流体封入部材32A,32Bと、前記流体封入部材の変形により搭乗者による押圧動作を検知する押圧動作検知手段とを有し、駆動対象11A,11Bを駆動させる駆動源13A,13Bを制御する駆動制御手段20は、前記押圧動作検知手段の検知結果に基づいて前記駆動源を制御する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動制御手段により制御される駆動源によって駆動する駆動対象を備えた座位搭乗装置であって、
搭乗者による押圧によって変形可能な流体封入部材と、
前記流体封入部材の変形により搭乗者による押圧動作を検知する押圧動作検知手段とを有し、
前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段の検知結果に基づいて前記駆動源を制御することを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座位搭乗装置において、
前記流体封入部材は、前記座椅子の座面上に配置されるものであることを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座位搭乗装置において、
前記流体封入部材は、搭乗者が押圧可能な複数の押圧検知箇所にそれぞれ個別に配置されており、
前記押圧動作検知手段は、各押圧検知箇所に配置された流体封入部材ごとに搭乗者による押圧動作を検知するものであり、
前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段により検知される各押圧検知箇所の検知結果に基づいて前記駆動源を制御することを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項4】
請求項3に記載の座位搭乗装置において、
前記押圧動作検知手段は、各流体封入部材の内部圧力を検知して各押圧検知箇所に対する搭乗者の押圧力を検知するものであり、
前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段により検知される搭乗者の押圧力が上昇した押圧検知箇所と搭乗者の押圧力が低下した押圧検知箇所との検知結果に基づいて、前記駆動源を制御することを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の座位搭乗装置において、
搭乗者による当該座位搭乗装置の指示操作を受け付ける指示操作受付手段と、
前記指示操作受付手段が受け付けた指示操作に応じて当該座位搭乗装置を移動させる移動動作及び当該座位搭乗装置の向きを変更させる向き変更動作のいずれか一方を制御する動作制御手段とを有し、
前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段の検知結果に応じて前記移動動作及び前記向き変更動作のうちの他方を制御することを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項6】
請求項5に記載の座位搭乗装置において、
前記指示操作受付手段は、前記座椅子の前後の傾きを検知する傾き検知手段であり、
前記動作制御手段は、前記傾き検知手段が検知した前記座椅子の前後傾きに基づいて前後方向への移動動作を制御することを特徴とする座位搭乗装置。
【請求項7】
搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動制御手段により制御される駆動源によって駆動する駆動対象を備えた座位搭乗装置に設置されるクッション型押圧動作検知装置であって、
搭乗者による押圧によって変形可能な流体封入部材と、
前記流体封入部材の変形により搭乗者による押圧動作を検知する押圧動作検知手段と、
前記押圧動作検知手段の検知結果を前記駆動制御手段へ出力する出力手段とを有することを特徴とするクッション型押圧動作検知装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動源によって駆動する駆動対象を備えた座位搭乗装置及びこれに設置されるクッション型押圧動作検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の座位搭乗装置としては、電動車椅子、動力付きの移動玩具やスポーツ用移動体、車両、船舶、航空機などの移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体などが挙げられる。このような座位搭乗装置として代表的な電動車椅子は、一般に、座椅子の肘置き部分に操作レバーが設置され、座椅子に座った搭乗者が自分の手で操作レバーを前後左右に操作することにより、電動車椅子を前後に移動させたり電動車椅子の向きを変えたりするコントロールを行う。
【0003】
特許文献1には、利用者(搭乗者)の動きを計測する加速度センサ、磁気方位センサ、圧力センサ、脈拍センサ等の利用者動作計測手段を備え、これらのセンサの計測結果に基づいて左右2つの駆動輪の駆動制御を行う電動車椅子が開示されている。この電動車椅子は、これに座ってテニスを行う利用者のスムーズで力強いスイング動作を実現するために、利用者のスイング動作に連動して電動車椅子の左右2つの駆動輪を駆動制御する。具体的には、利用者動作計測手段のうちの圧力センサは利用者の座席フレームの4箇所に設置されており、これらの圧力センサの計測結果から、座椅子に座る利用者の重心位置を計測する。これにより、利用者の重心位置の変化を検知し、その検知結果に対応する予め決められた動作パターンに従って2つの駆動輪を駆動制御して、テニスのスイング動作を支援する電動車椅子の動きを実現する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平11-198075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、座席に座る搭乗者の重心位置の変化を4つの圧力センサで検知するためには、座席に座る搭乗者により座面が押圧される押圧力の分布状態を、4つの圧力センサが設置されている座席フレームが押される力に反映させることが必要である。このとき、座面が柔らかいと、重心位置に加わる搭乗者による座面への押圧力が座面に広がって分散し、座席フレームに設置された4つの圧力センサで搭乗者の重心位置を検知することが困難となる。そのため、特許文献1に記載された電動車椅子では、搭乗者に押圧される座面は硬いものにせざるを得ない。しかしながら、座面が硬いと、これに座る搭者の座り心地が悪く、座った状態を長時間維持することが困難となるなど多くの弊害を招く。したがって、柔らかい座面でも、これに座る搭乗者の重心位置、言い換えると、座面を押す搭乗者の押圧動作を検知できる新たな検知方法が望まれる。
【0006】
なお、以上の説明は、座面を押す押圧動作を検知する場合であるが、例えば、搭乗者が座る座椅子の背もたれ、肘置き、その他の箇所を、搭乗者が押圧する押圧動作を検知する場合でも、その箇所が硬いと、その座席に座る搭乗者の居心地、その箇所を押圧するときの操作感が悪いものとなる。よって、このような場合も、その箇所を柔らかいものとすることが好ましいため、その箇所が柔らかくても、その箇所を押圧する搭乗者の押圧動作を検知できる検知方法が望まれる。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、駆動対象を備えた座位搭乗装置に搭乗する搭乗者が、その駆動対象の動作をコントロールするために押圧する箇所を柔らかくしても、その押圧動作を適切に検知可能な座位搭乗装置及びクッション型押圧動作検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動制御手段により制御される駆動源によって駆動する駆動対象を備えた座位搭乗装置であって、搭乗者による押圧によって変形可能な流体封入部材と、前記流体封入部材の変形により搭乗者による押圧動作を検知する押圧動作検知手段とを有し、前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段の検知結果に基づいて前記駆動源を制御することを特徴とするものである。
本発明において、搭乗者による押圧動作は、その押圧動作を行った箇所に配置される流体封入部材が搭乗者の押圧によって変形することにより検知される。流体封入部材の変形は、流体封入部材の内部圧力や封入流体の移動、あるいは、流体封入部材の形状変化などを検知することにより把握することができる。しかも、搭乗者が押圧する箇所を柔軟な流体封入部材とすることができるので、その箇所が搭乗者による押圧では変形しないような硬いものである場合と比べて、座椅子に座る搭乗者の座り心地や居心地を向上させたり、その箇所を搭乗者が押圧するときの操作感を良好にしたりすることができる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の座位搭乗装置において、前記流体封入部材は、前記座椅子の座面上に配置されるものであることを特徴とするものである。
これによれば、座面上に座る搭乗者が重心位置を変えるように座面に対して押圧動作することで、駆動対象をコントロールすることができる。これにより、搭乗者は、手を使わずに駆動対象をコントロールできるので、駆動対象のコントロールと並行して、手を使った別の操作や作業などを行うことが可能となる。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の座位搭乗装置において、前記流体封入部材は、搭乗者が押圧可能な複数の押圧検知箇所にそれぞれ個別に配置されており、前記押圧動作検知手段は、各押圧検知箇所に配置された流体封入部材ごとに搭乗者による押圧動作を検知するものであり、前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段により検知される各押圧検知箇所の検知結果に基づいて前記駆動源を制御することを特徴とするものである。
1つの押圧検知箇所だけに流体封入部材を配置した場合においては、その押圧検知箇所に対する搭乗者の押圧動作によって駆動対象をコントロールすることになるが、これにより制御できる駆動対象の動作の種類は1つだけである。本発明によれば、複数の押圧検知箇所に対する搭乗者の押圧動作を個別に検知できるので、押圧検知箇所の違いによって異なる駆動対象の動作を制御することが可能となり、より多くの駆動対象の動作を制御することが可能となる。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の座位搭乗装置において、前記押圧動作検知手段は、各流体封入部材の内部圧力を検知して各押圧検知箇所に対する搭乗者の押圧力を検知するものであり、前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段により検知される搭乗者の押圧力が上昇した押圧検知箇所と搭乗者の押圧力が低下した押圧検知箇所との検知結果に基づいて、前記駆動源を制御することを特徴とするものである。
駆動対象の動作を1つの押圧検知箇所に対する押圧動作でコントロールしようとする場合には、搭乗者の押圧動作以外でその押圧検知箇所を押圧してしまったり、搭乗者の意図しない押圧動作に反応してしまったりして、搭乗者の意志に反して駆動対象が動作してしまうおそれがある。ここで、座椅子に座っている搭乗者は自分の体重を利用して押圧動作を行うことが多いので、1つの押圧検知箇所を押圧したときには、これに連動して別の箇所が押圧されない又は押圧力が下がるのが通常である。例えば、搭乗者が重心位置を右側にずらして座面上右側の押圧検知箇所に体重をかける押圧動作を行うと、座面上左側の押圧検知箇所に対する体重による加重が抜ける。
本発明によれば、押圧動作がなされて押圧力が高まった押圧検知箇所だけでなく、その押圧動作によって押圧力が下がった押圧検知箇所の検知結果も利用して、制御を行う。その結果、1つの押圧検知箇所の押圧力上昇を検知したとき、本来であればその押圧動作に連動して押圧力が低下することになる他の押圧検知箇所の押圧力が低下していなければ制御しないというような対処が可能となる。これにより、搭乗者の押圧動作以外でその押圧検知箇所を押圧してしまった場合に、駆動対象が誤動作するのを抑制することが可能となる。また、押圧動作がなされて押圧力が高まった押圧検知箇所だけでなく、その押圧動作によって押圧力が下がった押圧検知箇所の検知結果も利用することで、押圧動作がなされた押圧検知箇所の検知結果のみを用いる場合よりも、押圧動作の検知感度が高まり、搭乗者の意図しない押圧動作に反応してしまう事態も抑制可能である。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の座位搭乗装置において、搭乗者による当該座位搭乗装置の指示操作を受け付ける指示操作受付手段と、前記指示操作受付手段が受け付けた指示操作に応じて当該座位搭乗装置を移動させる移動動作及び当該座位搭乗装置の向きを変更させる向き変更動作のいずれか一方を制御する動作制御手段とを有し、前記駆動制御手段は、前記押圧動作検知手段の検知結果に応じて前記移動動作及び前記向き変更動作のうちの他方を制御することを特徴とする。
座位搭乗装置が電動車椅子のような移動体である場合、少なくとも、座位搭乗装置を移動させる移動動作の制御と、座位搭乗装置の向きを変更する向き変更動作の制御とが必要になる。このとき、移動動作の制御と向き変更動作の制御の両方を、押圧動作検知手段が検知する押圧動作によって実現することは、搭乗者による操作性(コントロール性)を損なうおそれがある。これは、座椅子に座っている搭乗者は自分の体重を利用して押圧動作を行うことが多いので、通常、一度に押圧動作を行うことができる押圧検知箇所は1箇所だけであるから、異なる2つ以上の動作を押圧動作でコントロールすることは難しいからである。
本発明によれば、移動動作及び向き変更動作のいずれか一方については、移動指示操作受付手段が受け付ける移動指示操作によって制御し、その他方について押圧動作検知手段が検知する押圧動作で制御する。これにより、移動動作と向き変更動作の両方を、押圧動作検知手段が検知する押圧動作によって制御する場合よりも、搭乗者による操作性(コントロール性)を向上させることができる。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の座位搭乗装置において、前記指示操作受付手段は、前記座椅子の前後の傾きを検知する傾き検知手段であり、前記動作制御手段は、前記傾き検知手段が検知した前記座椅子の前後傾きに基づいて前後方向への移動動作を制御することを特徴とするものである。
これによれば、当該座位搭乗装置の前後方向への移動動作については、搭乗者が座椅子を前後に傾ける動きによって制御し、当該座位搭乗装置の向き変更動作については押圧動作検知手段が検知する押圧動作によって制御することができる。このような移動動作制御は、公知の倒立振子制御により実現できる。
【0014】
また、請求項7の発明は、搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動制御手段により制御される駆動源によって駆動する駆動対象を備えた座位搭乗装置に設置されるクッション型押圧動作検知装置であって、搭乗者による押圧によって変形可能な流体封入部材と、前記流体封入部材の変形により搭乗者による押圧動作を検知する押圧動作検知手段と、前記押圧動作検知手段の検知結果を前記駆動制御手段へ出力する出力手段とを有することを特徴とするものである。
本発明において、搭乗者による押圧動作は、その押圧動作を行った箇所に配置される流体封入部材が搭乗者の押圧によって変形することにより検知される。流体封入部材の変形は、流体封入部材の内部圧力や封入流体の移動、あるいは、流体封入部材の形状変化などを検知することにより把握することができる。しかも、搭乗者が押圧する箇所を柔軟な流体封入部材とすることができるので、その箇所が搭乗者による押圧では変形しないような硬いものである場合と比べて、座椅子に座る搭乗者の座り心地や居心地を向上させたり、その箇所を搭乗者が押圧するときの操作感を良好にしたりすることができる。
本発明に係るクッション型押圧動作検知装置を既存の座位搭乗装置に対してクッションのように設置することで、既存の座位搭乗装置の座り心地や居心地を向上させるとともに、既存の座位搭乗装置における駆動対象の動作を押圧動作によって制御することを実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動対象を備えた座位搭乗装置に搭乗する搭乗者が、その駆動対象の動作をコントロールするために押圧する箇所を柔らかくしつつも、その押圧動作を適切に検知することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る電動車椅子を模式的に示した斜視図である。
【図2】同電動車椅子を模式的に示した平面図である。
【図3】同電動車椅子の座面シート上に載置されるセンサ付きクッションを模式的に示した平面図である。
【図4】同電動車椅子のコントローラによる左右駆動モータの駆動制御に関わるブロック図である。
【図5】同駆動制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る座位搭乗装置を、左右2つの駆動輪(駆動対象)の駆動によって移動や向き変更が可能な電動車椅子に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る電動車椅子を模式的に示した斜視図である。
図2は、本電動車椅子を模式的に示した平面図である。

【0018】
本実施形態の電動車椅子1は、座面シート2、背もたれ3、肘置き4、フットステップ5、ハンドリム11が同軸に取り付けられた右駆動輪10Aと左駆動輪10Bなどから構成される。座面シート2、背もたれ3、肘置き4、フットステップ5は、本体フレーム6に取り付けられており、座椅子を構成している。右駆動輪10A及び左駆動輪10Bのハブ12は、本体フレーム6に対して回転自在に支持されているとともに、本体フレーム6に支持された駆動源である右駆動モータ13Aと左駆動モータ13Bのモータ軸にそれぞれ固定されている。これらの駆動モータ13A,13Bの駆動力によって右駆動輪10A及び左駆動輪10Bはそれぞれ回転駆動することができる。右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bは、本体フレーム6に支持された電力源としてのバッテリ14から給電され、駆動制御手段及び動作制御手段としてのコントローラ20によって駆動制御される。

【0019】
本実施形態において、座面中央の真下に、座椅子の前後の傾きを検知する傾き検知手段としてのジャイロセンサが設けられており、ジャイロセンサの検知結果はコントローラ20に出力される。本実施形態の電動車椅子1は、ジャイロセンサにより検知した座椅子の前後の傾きに応じてコントローラ20が右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bを制御して、右駆動輪10A及び左駆動輪10Bの2つの車輪で倒立状態を維持する倒立振子制御がなされる。

【0020】
図3は、本実施形態におけるセンサ付きクッション30を模式的に示した平面図である。
本実施形態において、電動車椅子1の座面シート2の上面には、クッション型押圧動作検知装置としてのセンサ付きクッション30が載置されている。このセンサ付きクッション30は、ベースクッション31の左側部分と右側部分に、それぞれ、流体封入部材としての空気袋32A,32Bが設けられている。空気袋32A,32Bは、搭乗者が座椅子に座ったときの加重で容易に変形可能な柔軟性を有するものであれば、材質などに特に限定はない。この空気袋32A,32Bの内部には、封入流体としての空気が封入されているが、封入流体は気体でも液体でもよい。

【0021】
各空気袋32A,32Bの流体出入口には、それぞれ空気圧センサ33A,33Bが取り付けられている。空気圧センサ33A,33Bは、ベースクッション31に固定されており、空気圧センサ33A,33Bの圧力検知部が空気袋32A,32Bの流体出入口を塞ぐように設置されている。また、空気圧センサ33A,33Bの検知結果は、ベースクッション31に取り付けられた出力手段としての出力インターフェース34から、電動車椅子1のコントローラ20へ出力される。

【0022】
本実施形態において、搭乗者が座面シート2上のセンサ付きクッション30上に座ると、搭乗者の体重が空気袋32A,32Bに加わって空気袋32A,32Bが押しつぶされるように変形し、これにより空気袋32A,32Bが減容する。空気袋32A,32Bは密閉されているため、空気袋32A,32Bの減容により空気袋32A,32Bの内部圧力が高まり、これが空気圧センサ33A,33Bによって検知され、その検知結果はコントローラ20へ送られる。

【0023】
図4は、コントローラ20による右駆動モータ13Aと左駆動モータ13Bの駆動制御に関わるブロック図である。
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信インターフェースなどを有する。コントローラ20は、ROMに格納された制御プログラムをCPUを実行することにより、電動車椅子1の各種動作、主に右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bの動作を制御する。

【0024】
コントローラ20には、ジャイロセンサ15から出力される前後傾斜情報(座椅子の前後の傾き角度など)が入力される。この前後傾斜情報に基づき、コントローラ20は、右駆動輪10A及び左駆動輪10Bの2つの車輪で倒立状態を維持するために必要な駆動指令を生成して、各駆動モータ13A,13Bへ出力する倒立振子制御を実行する。

【0025】
また、コントローラ20には、センサ付きクッション30に設けられた空気圧センサ33A,33Bから出力される空気袋32A,32B内の空気圧情報(座面シート2上の左右2つの空気袋32A,32Bを搭乗者が体重をかけてそれぞれ押圧する押圧力)が入力される。これらの空気圧情報に基づき、コントローラ20は、倒立振子制御により生成される駆動指令を補正して、電動車椅子1の向きを変更させる向き変更動作である旋回動作を制御する。

【0026】
また、右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bのモータ軸にはそれぞれエンコーダ16A,16Bが取り付けられ、各エンコーダ16A,16Bからは右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bの回転情報(回転角、回転速度、回転角速度等)が出力される。コントローラ20には、各エンコーダ16A,16Bからの右駆動モータ13A及び左駆動モータ13Bの回転情報も入力される。コントローラ20は、この回転情報に基づき、各駆動モータ13A,13Bの回転動作をそれぞれの目標値に追従させるような駆動指令を生成して各駆動モータ13A,13Bへ出力するフィードバック制御を実行する。

【0027】
図5は、コントローラ20による右駆動モータ13Aと左駆動モータ13Bの駆動制御の流れを示すフローチャートである。
コントローラ20が起動すると(S1のYes)、まず、コントローラ20は、ジャイロセンサ15から、座椅子の前後の傾きを示す前後傾斜情報を取得する(S2)。そして、コントローラ20は、取得した前後傾斜情報に基づき、倒立振子制御を実現するため、両駆動モータ13A,13Bへの各駆動指令を生成する(S3)。

【0028】
この倒立振子制御を実現するために生成される各駆動指令をそのまま両駆動モータ13A,13Bへ出力すれば、座椅子の座面シート2のシート面が略水平面に平行となるホームポジションから座椅子を前後方向へ傾斜させずに搭乗者が座っている場合、電動車椅子1は、その場から移動せずに、2つの駆動輪10A,10Bで倒立状態が維持される。また、座椅子に座っている搭乗者が前方へ重心を移動させてホームポジションよりも座椅子を前方へ傾斜させると、倒立状態を維持するために電動車椅子1を前方へ移動させる方向に両駆動モータ13A,13Bを回転駆動させる駆動指令が生成される。これにより、2つの駆動輪10A,10Bが回転して、倒立状態を維持しながら、電動車椅子1が前方へ移動する。同様に、座椅子に座っている搭乗者が背もたれ3に寄りかかるように後方へ重心を移動させ、ホームポジションよりも座椅子を後方へ傾斜させると、倒立状態を維持するために電動車椅子1を後方へ移動させる方向に両駆動モータ13A,13Bを回転駆動させる駆動指令が生成される。これにより、2つの駆動輪10A,10Bが回転して、倒立状態を維持しながら、電動車椅子1が後方へ移動する。

【0029】
また、コントローラ20は、座面シート2上のセンサ付きクッション30の左右の空気圧センサ33A,33Bから、座面シート2上の左右2つの空気袋32A,32Bを搭乗者が体重をかけてそれぞれ押圧する押圧力を示す空気圧情報を取得する(S4)。そして、コントローラ20は、取得した空気圧情報に基づき、倒立振子制御により生成される駆動指令を補正して、電動車椅子1の旋回動作制御を実行する。

【0030】
詳しくは、コントローラ20は、取得した空気圧情報に基づき、右空気袋32Aの空気圧から左空気袋32Bの空気圧を差し引いた差分値を算出し(S5)。この差分値に応じて、座椅子に座っている搭乗者による左右の空気袋32A,32Bに対する押圧力を認識し、その押圧動作に応じて電動車椅子1の旋回動作させるように各駆動指令を補正する。

【0031】
例えば、座椅子に座っている搭乗者がセンサ付きクッション30の左右方向中央付近に重心が来るように座っている場合、左右2つの空気袋32A,32Bには、搭乗者の体重がほぼ均等に加わる。その結果、左右の空気袋32A,32Bは、ほぼ同程度の押圧力で押圧され、左右の空気圧センサ33A,33Bからは、ほぼ同じ空気圧を示す空気圧情報が出力される。この場合、左右の空気圧の差分値は、ゼロ付近の値を示すことになり、左旋回閾値(負の値)と右旋回閾値(正の値)との間となる(S6のNo,S8のNo)。この場合、各駆動モータ13A,13Bへ出力される各駆動指令は、処理ステップS3において生成された倒立振子制御に基づく駆動指令がそのまま出力される(S10)。よって、電動車椅子1は、倒立振子制御に従って静止又は前後方向へ移動する。

【0032】
一方、座椅子に座っている搭乗者が左側へ重心を移動させて座面シート2上のセンサ付きクッション30の左空気袋32Bの押圧力を高めた場合、左空気圧センサ33Bからは、その押圧力に応じた空気圧情報がコントローラ20に入力される。このとき、座面シート2上のセンサ付きクッション30の右空気袋32Aの押圧力が下がり、右空気圧センサ33Aからは、その押圧力に応じた空気圧情報がコントローラ20に入力される。このとき、左空気袋32Bの空気圧の方が右空気袋32Aの空気圧よりも大きくなり、処理ステップS5で算出される空気圧の差分値は、負の値を示す。

【0033】
この差分値が左旋回閾値以下であった場合(S6のYes)、コントローラ20は、座椅子に座っている搭乗者が左空気袋32Bに対して押圧動作を行ったものと判断する。これにより、コントローラ20は、処理ステップS3において生成された右駆動モータ13Aに対する駆動指令についてはプラス補正を行い、左駆動モータ13Bに対する駆動指令についてはマイナス補正を行う(S7)。ここで、プラス補正とは、電動車椅子1を前進させる前進駆動方向へのモータ回転速度を、予め決められた一定の補正値分又は処理ステップS5で算出された差分値に応じて決定される補正値分だけ増速させ、あるいは、電動車椅子1を後進させる後進駆動方向へのモータ回転速度を、このような補正値分だけ減速させるものである。同様に、マイナス補正とは、前進駆動方向へのモータ回転速度を上述したような補正値分だけ減速させ、あるいは、後進駆動方向へのモータ回転速度をこのような補正値分だけ増速させるものである。

【0034】
このように補正された各駆動指令を各駆動モータ13A,13Bへ出力することにより(S10)、座椅子に座っている搭乗者が左空気袋32Bに対して押圧動作を行った場合に電動車椅子1が左向きに旋回動作する。その結果、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を静止させる駆動指令が生成される場合には、右駆動モータ13Aが前進駆動方向へ回転駆動するとともに、左駆動モータ13Bが後進駆動方向へ回転駆動することになり、電動車椅子1は、その場で左旋回する。また、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を前進させる動作指令が生成される場合には、前進駆動方向へのモータ回転速度が左駆動モータ13Bよりも右駆動モータ13Aの方が相対的に速いものとなり、電動車椅子1は、前進しながら左旋回する。また、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を後進させる動作指令が生成される場合には、後進駆動方向へのモータ回転速度が右駆動モータ13Aよりも左駆動モータ13Bの方が相対的に速いものとなり、電動車椅子1は、後進しながら左旋回する。

【0035】
他方、座椅子に座っている搭乗者が右側へ重心を移動させて座面シート2上のセンサ付きクッション30の右空気袋32Aの押圧力を高めた場合、右空気圧センサ33Aからは、その押圧力に応じた空気圧情報がコントローラ20に入力される。このとき、座面シート2上のセンサ付きクッション30の左空気袋32Bの押圧力が下がり、左空気圧センサ33Bからは、その押圧力に応じた空気圧情報がコントローラ20に入力される。このとき、右空気袋32Aの空気圧の方が左空気袋32Bの空気圧よりも大きくなり、処理ステップS5で算出される空気圧の差分値は、正の値を示す。

【0036】
この差分値が右旋回閾値以上であった場合(S6No,S8のYes)、コントローラ20は、座椅子に座っている搭乗者が右空気袋32Aに対して押圧動作を行ったものと判断する。これにより、コントローラ20は、処理ステップS3において生成された右駆動モータ13Aに対する駆動指令についてはマイナス補正を行い、左駆動モータ13Bに対する駆動指令についてはプラス補正を行う(S9)。

【0037】
このように補正された各駆動指令を各駆動モータ13A,13Bへ出力することにより(S10)、座椅子に座っている搭乗者が右空気袋32Aに対して押圧動作を行った場合に電動車椅子1が右向きに旋回動作する。その結果、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を静止させる駆動指令が生成される場合には、右駆動モータ13Aが後進駆動方向へ回転駆動するとともに、左駆動モータ13Bが前進駆動方向へ回転駆動することになり、電動車椅子1は、その場で右旋回する。また、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を前進させる動作指令が生成される場合には、前進駆動方向へのモータ回転速度が右駆動モータ13Aよりも左駆動モータ13Bの方が相対的に速いものとなり、電動車椅子1は、前進しながら右旋回する。また、例えば、倒立振子制御により電動車椅子1を後進させる動作指令が生成される場合には、後進駆動方向へのモータ回転速度が左駆動モータ13Bよりも右駆動モータ13Aの方が相対的に速いものとなり、電動車椅子1は、後進しながら右旋回する。

【0038】
以上のような制御が所定の制御間隔で繰り返し実行されることにより、座椅子に座っている搭乗者は、座椅子を前後に傾かせる動きによって電動車椅子1の前進、後進の移動動作をコントロールしつつ、左右の重心位置を変えて座面シート2上の左右の空気袋32A,32Bに対する押圧動作を行うことにより電動車椅子1の左右への旋回動作をコントロールすることができる。したがって、搭乗者は、手を使わず、体重移動によって、電動車椅子の進行方向、移動速度、旋回方向をコントロールすることができる。手の不自由な人でも簡単に思い通りの操作をすることが可能となり、あるいは、手を使った別の操作や作業などを行いながら思い通りの操作をすることが可能となる。特に、左右の空気圧情報に基づき、搭乗者による左右の空気袋32A,32Bに対する押圧力の大きさに応じて駆動指令の補正値を決定するようにすれば、旋回速度をコントロールすることも可能である。

【0039】
しかも、本実施形態においては、搭乗者の押圧動作を検知するために座面シート2上に載置されるセンサ付きクッション30の部分は、クッション性のあるベースクッション31と柔軟な空気袋32A,32Bである。そのため、硬い座面シートの場合と比べて、座椅子に座る搭乗者の座り心地や居心地が向上し、座った状態を長時間維持するときの負担も軽減される。

【0040】
また、本実施形態では、搭乗者が右空気袋32A又は左空気袋32Bに対して行った押圧動作を、左右の空気袋32A,32Bの空気圧の差分値に基づいて判断しているが、各空気袋32A,32Bの空気圧から判断することも可能である。ただし、例えば右空気袋32Aの空気圧だけから右空気袋32Aへの押圧動作を判断する場合、搭乗者の押圧動作以外によって右空気袋32Aが押圧されたときに誤動作が生じやすい。また、この場合、搭乗者の体重の違いなどによって押圧動作が行われたかどうかの判断が難しくなり、搭乗者の意図しない押圧動作に反応する誤動作も生じやすい。これに対し、本実施形態のように、左右の空気袋32A,32Bの空気圧差分値に基づいて判断すれば、このような誤動作が少なくなる。

【0041】
また、本実施形態では、電動車椅子を例に挙げているが、搭乗者が座椅子に座った状態で搭乗し、駆動源によって駆動する駆動対象を備えたものであれば、あらゆる座位搭乗装置に適用可能である。すなわち、センサ付きクッション30の空気圧センサ33の出力結果は、座位搭乗装置に設けられる様々な駆動対象の動きをコントロールする制御に利用できる。なお、本実施形態のような倒立振子制御により2つの駆動輪10A,10Bで倒立状態を維持するような二輪型の電動車椅子に限らず、補助輪を含む三輪以上で走行する電動車椅子でもよい。また、上述した駆動モータ13A,13Bを、手動式の車椅子の補助動力として使用したものであってもよい。

【0042】
また、本実施形態では、搭乗者の押圧動作を検知する押圧検知箇所が座面シート2上の左右2箇所である例であったが、押圧検知箇所の数や位置はこれに限らず、適宜決定することができる。例えば、座面シート2上の前後2箇所も押圧検知箇所とし、そこに空気袋を追加配置すれば、上述した倒立振子制御に代えて、搭乗者の前後への体重移動によってこれらの空気袋を押圧する動作により、電動車椅子1の前進及び後進の移動動作を制御することも可能である。この場合、センサ付きクッション30の各空気袋に対する押圧動作だけで、電動車椅子1の進行方向、移動速度、旋回方向、旋回速度などをコントロールすることが可能である。また、押圧検知箇所は、座面シート2上に限らず、背もたれ3、肘置き4、フットステップ5などに配置してもよい。

【0043】
また、本実施形態では、空気袋32A,32B内の空気圧(内部圧力)に基づいて空気袋32A,32Bに対する押圧動作を検知する例であったが、空気袋32A,32Bの変形により押圧動作を検知する押圧動作検知手段は、これに限られない。例えば、左右の空気袋32A,32Bを連通部により連通させ、いずれかの空気袋に対して押圧動作されたときに連通部を流れる空気の移動を検知するような押圧動作検知手段であってもよい。また、空気袋が押圧されて潰れた分だけ当該空気袋の別の箇所が膨らむような構成であれば、当該別の膨らみによって変位する検知針の変位量を検知するような押圧動作検知手段であってもよい。この場合、押圧されても減容しない空気袋すなわち押圧されても容積変化がない空気袋を用いることが可能である。

【0044】
また、本実施形態では、センサ付きクッション30が電動車椅子1とは別体構成のものであるが、電動車椅子1の座面シート2にセンサ付きクッション30の機能を付加し、電動車椅子1の座面シート2とセンサ付きクッション30とが一体構成としてもよい。

【0045】
また、本実施形態では、前後方向の移動動作を座椅子の前後の傾きを検知して制御しているが、肘置き4に操作レバー等の操作部材を設け、その操作部材に対する支持操作に応じて前後方向の移動動作を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電動車椅子
2 座面シート
3 背もたれ
4 肘置き
5 フットステップ
6 本体フレーム
10A,10B 駆動輪
11 ハンドリム
12 ハブ
13A,13B 駆動モータ
14 バッテリ
15 ジャイロセンサ
16A,16B エンコーダ
20 コントローラ
30 センサ付きクッション
31 ベースクッション
32A,32B 空気袋
33A,33B 空気圧センサ
34 出力インターフェース
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4