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明細書 :炭素鋼の表面改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年7月25日(2016.7.25)
発明の名称または考案の名称 炭素鋼の表面改質方法
国際特許分類 C23C  24/06        (2006.01)
F16C  17/14        (2006.01)
C23C  26/00        (2006.01)
B23K  20/12        (2006.01)
FI C23C 24/06
F16C 17/14
C23C 26/00 Z
B23K 20/12 D
B23K 20/12 Z
B23K 20/12 310
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 18
出願番号 特願2014-529523 (P2014-529523)
国際出願番号 PCT/JP2013/071294
国際公開番号 WO2014/024899
国際出願日 平成25年7月31日(2013.7.31)
国際公開日 平成26年2月13日(2014.2.13)
優先権出願番号 2012174839
優先日 平成24年8月7日(2012.8.7)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】志摩 政幸
【氏名】菅原 隆志
【氏名】秋田 秀樹
【氏名】鈴木 基司
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100091498、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 勇
【識別番号】100118500、【弁理士】、【氏名又は名称】廣澤 哲也
審査請求 未請求
テーマコード 3J011
4E167
4K044
Fターム 3J011DA01
3J011DA02
3J011MA21
3J011QA02
3J011QA03
3J011QA04
3J011SB02
3J011SB05
3J011SB20
3J011SD01
4E167AA01
4E167AA02
4E167AA18
4E167AA19
4E167AA21
4E167BF02
4E167BF10
4E167BF12
4E167BF13
4E167BG29
4E167CA21
4E167DC05
4K044AA02
4K044AB05
4K044AB10
4K044BA10
4K044BA18
4K044BA19
4K044BB02
4K044BB03
4K044BB08
4K044BC01
4K044BC02
4K044CA23
4K044CA67
要約 本発明は、海水中における耐食性と耐摩耗性を併せ持つ表面改質鋼とする炭素鋼の表面改質方法に関する。
炭素鋼の表面改質方法は、炭素鋼の丸軸を回転させ、工具の先端を丸軸の外周面に接触させ、工具を回転させながら丸軸と工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、丸軸よりも硬い硬質粉末を丸軸と工具との接触部分に供給することにより、丸軸の表面に硬質粉末の埋め込み処理をし、硬質粉末が埋め込まれた丸軸を回転させ、炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンの先端を丸軸の外周面に接触させ、ピンを回転させながら丸軸とピンとを丸軸の軸方向に相対移動させることにより、丸軸の表面に金属の埋め込み処理をし、丸軸の表面に硬質膜と金属膜とを共存させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素鋼の丸軸を回転させ、工具の先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記工具を回転させながら前記丸軸と工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、前記丸軸よりも硬い硬質粉末を前記丸軸と工具との接触部分に供給することにより、前記丸軸の表面に前記硬質粉末の埋め込み処理をし、
前記硬質粉末が埋め込まれた前記丸軸を回転させ、炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンの先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記ピンを回転させながら前記丸軸とピンとを丸軸の軸方向に相対移動させることにより、前記丸軸の表面に炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理をし、
前記丸軸の表面に、前記硬質粉末の埋め込み処理により形成された硬質膜と前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理により形成された金属膜とを共存させることを特徴とする炭素鋼の表面改質方法。
【請求項2】
前記硬質粉末はSi粉末からなることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項3】
前記硬質粉末は、金属粉末、セラミックス粉末、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブの少なくとも1種類よりなることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項4】
前記硬質粉末に加えて高速度鋼粒子を供給し、前記丸軸の表面に前記硬質膜と前記金属膜と高速度鋼膜とを共存させることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項5】
前記硬質粉末を、該硬質粉末よりも大きな外径の高速度鋼粒子と共に供給することを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項6】
前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンは、Znピン又はZn合金ピンからなることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項7】
前記ピンは中空ピンからなることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項8】
前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理の後に、前記丸軸を回転させ、仕上げ用工具の先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記仕上げ用工具を回転させながら前記丸軸と仕上げ用工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、仕上げ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
【請求項9】
前記丸軸の改質面における炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属膜の被覆率は、少なくとも20%であることを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面改質方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素鋼に表面改質を施すことにより耐食性および耐摩耗性を付与することができる炭素鋼の表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋資源の利活用が注目されている。そのために使われる機器には、海水と直接接触するしゅう動部が存在するため、海水中で耐久性をもつ摩擦材が必要とされる。
海水中で用いられる摩擦材では、耐食性と耐摩耗性および低摩擦が要求されるが、これらを共に満足する材料はほとんどないのが現状である。テフロン(登録商標)(PTFE)等の高分子材料は耐食性と低摩擦を有するものの、強度が比較的低いため、高面圧下での使用には難がある。
一方、ステンレス鋼やチタン合金などは、耐食性と強度の面で優れているが、焼付きを生じ易いため、しゅう動材としての使用にはやはり難がある。
【0003】
このような状況を踏まえ、鉄鋼材やアルミニウム合金等の基材の表面に硬質薄膜を形成して耐摩耗性を高めることが一般的に行われている。
基材の表面に硬質薄膜を形成する方法として、機能材料を摩擦発熱により加熱軟化させて基材の表面に機能材料よりなる薄膜を形成する方法(特許文献1)やアーク式イオンプレーティング法により薄膜を形成する方法(特許文献2および3)が知られていた。
しかしながら、機能材料を高い摩擦熱によって加熱軟化させて薄膜を形成する方法では基材自体が熱の影響で変形する恐れがある等の問題点があった。また、アーク式イオンプレーティング法により薄膜を形成する方法では真空発生装置や複数の処理室を備えた大掛かりな装置が必要でコストが高くつく等の問題点があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、特許文献4において、丸軸を回転させ、外周面に螺旋溝を形成した工具の平坦な又は円錐状をした先端面を、前記丸軸の外周面に線又は点接触させ、該工具の回転に伴って、前記丸軸よりも硬い微細な硬質粉末を前記丸軸と工具との接触部分へ送り込むことにより、前記丸軸の表面に前記硬質粉末を埋め込むことを特徴とする丸軸表面の改質方法(請求項1)を提案した。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-102803号公報
【特許文献2】特開平7-118832号公報
【特許文献3】特開2004-138128号公報
【特許文献4】特開2010-172995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが特許文献4において提案した改質方法によれば、丸軸の表面に硬質粉末が埋め込まれて方向性のない硬質膜が島状に創成されるので、耐摩耗性が向上し、また、工具と丸軸とが丸軸の軸方向に相対的に移動しながら線接触又は点接触して回転するので、高い熱が発生せず、このため、丸軸の歪みや変形が抑制される等の効果が得られた。
しかしながら、上記改質方法では、基材の耐摩耗性は向上させることができるが、耐食性を向上させることができず、特に基材が一般的な機械材料である炭素鋼の場合には耐食性が不足しているため、海水中で摩擦材として使用することができないという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、工業的に広く用いられている機械材料である炭素鋼に表面改質を施すことにより、海水中における耐食性と耐摩耗性を併せ持つ表面改質鋼とすることができる炭素鋼の表面改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の炭素鋼の表面改質方法は、炭素鋼の丸軸を回転させ、工具の先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記工具を回転させながら前記丸軸と工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、前記丸軸よりも硬い硬質粉末を前記丸軸と工具との接触部分に供給することにより、前記丸軸の表面に前記硬質粉末の埋め込み処理をし、前記硬質粉末が埋め込まれた前記丸軸を回転させ、炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンの先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記ピンを回転させながら前記丸軸とピンとを丸軸の軸方向に相対移動させることにより、前記丸軸の表面に炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理をし、前記丸軸の表面に、前記硬質粉末の埋め込み処理により形成された硬質膜と前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理により形成された金属膜とを共存させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、炭素鋼の丸軸の表面に硬質粉末(例えば、Si粉末)が埋め込まれ、炭素鋼の丸軸の表面に方向性のない島状の硬質膜が形成されて耐摩耗性が向上する。そして、粉末改質処理後に炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属、例えばZnを含有したピンによる丸軸の表面への摩擦コート過程で激しいせん断とそれに伴う温度上昇により硬質膜の炭素鋼への密着性が向上するため、耐摩耗性が更に向上する。また、Znを含有したピンによる摩擦コート処理により、炭素鋼の丸軸の表面にZnが埋め込まれ、炭素鋼の丸軸の表面に方向性のない島状のZn膜が形成されるため、Znによる犠牲防食作用が得られ、炭素鋼の表面の腐食を防止することができ、海水中において優れた耐食性を発揮する。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、前記硬質粉末はSi粉末からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記硬質粉末は、金属粉末、セラミックス粉末、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブの少なくとも1種類よりなることを特徴とする。
本発明によれば、硬質粉末は、丸軸の材質よりも硬い、金属粉末、セラミックス粉末(例えば、窒化チタン粉末、窒化アルミ粉末、窒化クロム粉末、タングステンカーバイト粉末、炭化ケイ素粉末)、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブなどの一種類、又は、複数種類を混合したものである。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記硬質粉末に加えて高速度鋼粒子を供給し、前記丸軸の表面に前記硬質膜と前記金属膜と高速度鋼膜とを共存させることを特徴とする。
本発明によれば、炭素鋼の丸軸の表面に硬質膜と炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属膜(例えばZn膜)と高速度鋼膜とを共存させることができる。高速度鋼膜(HSS膜)はHv1000を超す硬さを有しているため、丸軸表面の耐摩耗性が向上する。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、前記硬質粉末を、該硬質粉末よりも大きな外径の高速度鋼粒子と共に供給することを特徴とする。
本発明によれば、硬質粉末を高速度鋼粒子(HSS粒子)と共に丸軸と工具との接触部分に供給することにより、流動性が良い球状のHSS粒子の周囲に硬質粉末が付着して運搬されるので、硬質粉末を工具と丸軸との接触部分へ効率よく供給することができる。また、HSS粒子は、硬質粉末どうしを適度に分散させて、過度な凝集を防ぎ、HSS粒子が転がることにより、大規模な焼き付きを防ぐ作用もある。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンは、Znピン又はZn合金ピンからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記ピンは中空ピンからなることを特徴とする。
本発明によれば、炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属を含有したピンによる摩擦コート処理の際に、中空ピンを用いることにより中実ピンより低い荷重で所期の摩擦熱を発生させることができ、改質層の減耗低下に中空ピンの方が有利である。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属の埋め込み処理の後に、前記丸軸を回転させ、仕上げ用工具の先端を前記丸軸の外周面に接触させ、前記仕上げ用工具を回転させながら前記丸軸と仕上げ用工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、仕上げ処理を行うことを特徴とする。
本発明によれば、改質処理によって丸軸の表面粗さは粗くなるが、仕上げ処理によって丸軸の表面粗さを改善することができ、丸軸の表面を平滑にすることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記丸軸の改質面における炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属膜の被覆率は、少なくとも20%であることを特徴とする。
本発明によれば、丸軸の改質面における炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属膜、例えばZn膜の被覆率を少なくとも20%とすることにより、Znが被覆されている領域ではZn自体による防食効果が得られ、Znが被覆されていない領域である暴露域ではZnによる犠牲防食作用が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭素鋼に硬質粉末による改質処理を施し、この改質処理により形成された改質面に炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属、例えばZnを含有したピンによる摩擦コート処理を施すことにより、海水中における耐食性と耐摩耗性を併せ持つ表面改質鋼とすることができる。この表面改質鋼は無潤滑および油潤滑中においても高周波焼入材よりも高い耐摩耗性を発揮する。
本発明によれば、炭素鋼の丸軸と工具又はピンとが丸軸の軸方向に相対的に移動しながら線接触又は点接触して回転するので、高い熱が発生せず、このため、丸軸の歪みや変形が抑制され、しかも、丸軸の摩耗は極めて少なく、高熱・高荷重に耐えられる特殊な工具や装置も必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る炭素鋼の表面改質方法の第一改質処理工程を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、第一改質処理工程における試験片と工具との関係を示す模式的斜視図である。
【図3】図3は、第二改質処理工程における試験片とZnピンとの関係を示す模式的斜視図である。
【図4A】図4Aは、仕上げ処理工程における試験片と円錐状工具との関係を示す図であり、図4Aは側面図である。
【図4B】図4Bは、仕上げ処理工程における試験片と円錐状工具との関係を示す図であり、図4Bは正面図である。
【図5】図5は、表面改質処理工程と改質面の様子を示す図である。
【図6】図6は、後処理を施した面に対してEDX(エネルギー分散形X線分光器)による元素分析を行った結果を示す図である。
【図7】図7は、改質面をラッピングした後にピクリン酸溶液でエッチング処理を行った後に得られた組織の光学顕微鏡観察結果を示す図である。
【図8】図8は、改質面をラッピングして測定したマイクロビッカース硬さを示す図である。
【図9】図9は、人工海水浸漬による腐食の進行状況を示す図である。
【図10】図10は、2週間の浸漬試験後に超音波洗浄を行ってから測定した表面の粗さを、浸漬試験前の表面の粗さを基準にして表面の粗さの比として表示した図である。
【図11】図11は、交叉円筒形式の点接触往復摩擦の試験形態を示す図である。
【図12A】図12Aは、改質処理材と基準となる材料の大気中無潤滑における摩擦係数の経時変化を示す図である。
【図12B】図12Bは、改質処理材と基準となる材料の潤滑油中における摩擦係数の経時変化を示す図である。
【図12C】図12Cは、改質処理材と基準となる材料の人工海水中における摩擦係数の経時変化を示す図である。
【図13】図13は、改質処理材の耐摩耗性を基準となる材料(基材)と比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る炭素鋼の表面改質方法の実施形態を図1乃至図13を参照して説明する。図1乃至図13において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下に述べる実施形態において、炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属としてZnを用いている。

【0018】
図1は、本発明に係る炭素鋼の表面改質方法の第一改質処理工程を示す模式的断面図である。図1に示すように、炭素鋼の表面改質方法を実施する装置は、下端が開口した筒状部1と、筒状部1の上端部に接続されている漏斗状部2とを備えている。試験片(test specimen)TSは、筒状部1の下端開口部に設置されている。本実施形態では、試験片TSとして、直径10mm,長さ120mmの炭素鋼(S45C)の丸棒(丸軸)を用いている。筒状部1内には工具挿入孔3が形成されており、工具挿入孔3に円柱状の工具4が挿入されている。工具挿入孔3の内径は工具4の外径よりやや大きく設定されている。漏斗状部2には、ホッパー(図示せず)等から硬質粉末としてのSi粉末(ケイ素粉末)が連続的に供給されるようになっている。本実施形態では、Si粉末として、#300メッシュのものを用い、またSi粉末の流動性を高めるために平均粒径50μmのハイス球状粒子(高速度鋼(HSS)粒子)をかさ比で1:9の割合(Si粉末1に対してハイス粒子9の割合)で混合している。工具4は、炭化タングステン(WC)など、硬くて耐摩耗性のある材料を素材とした円柱体よりなる。工具4には、工具挿入孔3に挿入されている部分の外周面に螺旋溝4sが形成されている。工具4は平坦な或いは円錐状の先端面4fを有している。工具4の基端部はボール盤等の工作機械に取り付けられており、工具4を回転させながら、先端面4fを介して丸棒(丸軸)からなる試験片TSに対し荷重を加えられるようになっている。

【0019】
図1に示すように構成された装置を用いて丸棒からなる試験片TSの表面を改質するには、工具4の先端面4fを試験片TSの外周面に線接触又は点接触させ、漏斗状部2にSi粉末とハイス粒子を連続的に供給する。そして、工具4を回転させるとともに試験片TSを回転させる。工具4の回転に伴い、螺旋溝4sによってSi粉末とハイス粒子が工具4と試験片TSとの接触部へ送り込まれる。工具4は、回転させながら試験片TSの表面に沿って試験片TSの軸方向に移動させる。工具4は試験片TSの軸方向に複数回往復移動させると良い。なお、工具4を移動させる代わりに試験片TSを試験片TSの軸方向に移動させてもよい。

【0020】
図2は、第一改質処理工程における試験片TSと工具4との関係を示す模式的斜視図である。図2に示すように、試験片TSを回転させ、かつ工具4を回転させるとともに試験片TSの表面に沿って試験片TSの軸方向に移動させて改質処理を行う。このときの処理条件を表1に示す。
【表1】
JP2014024899A1_000003t.gif

【0021】
改質処理工程中、工具4の先端面4fと試験片TSの外周面とは線接触又は点接触して回転及び摺動しているため、大きな荷重を加えなくても、接触部に送り込まれたSi粉末と試験片TSとの間には高面圧が作用して、冷間溶着、即ち、高い接触圧力又はせん断力による低温下での溶着が生ずる。この結果、試験片TSの外周面にSi粉末が埋め込まれ、試験片TSの表面に方向性のない島状の硬質膜が形成されて、耐摩耗性が大幅に向上する。
また、試験片TSの表面は高面圧とせん断力を受けて摩耗するが、その摩耗粉のほとんどはSi粉末と混じり合って再移着が生じるため、結果的に、試験片TSの摩耗はきわめて少なく、しかも、高温が発生しないため、試験片TSの歪みや変形を抑制できる。

【0022】
次に、図1に示す同一の装置を用い、Si粉末およびハイス粒子は除去し、かつ工具4をZnピン(亜鉛ピン)に換えてセットし、Znピンの端面を試験片TSの外周面に接触させて摩擦することにより第二改質処理工程を行う。
第二改質処理工程を行う前に、改質に用いる摩擦ピン形状(中実と中空)による影響を、予め丸軸を(Si+HSS)粉末により処理した面に対して調べた。その方法は、先ずZnピン(中実と中空)で処理、その上にリン青銅ピン(中実と中空)で処理し、処理時の摩擦温度,処理後の面の観察,寸法変化,及びピンの状態観察を実施した。同一荷重,同一回転速度において、Znピン処理時では中実ピン処理では最高で121℃、中空ピン処理では最高で249℃の温度が生じ、リン青銅ピン処理時にはそれぞれ87℃及び305℃の温度が生じた。これらの結果は、中実ピンに比べ中空ピンの方が高温状態が生じやすいことを示している。
処理後の寸法変化(直径の変化)を測定すると、Znピン処理後には初期(改質前)の寸法に対して、中実ピンでは21μmの減少、中空ピンでは5μmの増加となり、リン青銅ピン処理後には初期(改質前)の寸法に対して、中実ピンでは22μmの減少、中空ピンでは4μmの増加となった。これらの結果は、発生する摩擦温度と附合しており、中空ピンに比べて中実ピンでは(Si+HSS)粉末による改質層を磨滅させてしまいやすいこと、またピン材料の移着層も生じにくいことを示している。以上の予備実験から、摩擦ピンとしてのZnピンは中空ピンが好ましいことが分かったので、第二改質処理工程には中空ピン(外径10mm,内径6mm,長さ30mm)を用いた。

【0023】
図3は、第二改質処理工程における試験片TSとZnピン5との関係を示す模式的斜視図である。図3に示すように、試験片TSを回転させ、かつZnピン5を回転させるとともに試験片TSの表面に沿って試験片TSの軸方向に移動させて改質処理を行う。このときの押付荷重(W)は約15N、Znピン5の回転速度(N)は2000rpmとし、その他の処理条件は粉末による処理条件と同じである(表1参照)。なお、Znピン5を移動させる代わりに試験片TSを試験片TSの軸方向に移動させてもよい。
改質処理工程中、Znピン5の円筒端面5fと試験片TSの外周面とは線接触又は点接触して回転及び摺動しているため、大きな荷重を加えなくても、Znピン5と試験片TSとの間には高面圧が作用して、冷間溶着、即ち、高い接触圧力又はせん断力による溶着が生ずる。なお、第1改質処理における粉末を介しての摩擦では高温は発生しないが、Znピン摩擦は固体同士の直接接触であるため、100~150℃の高温が発生する。この結果、試験片TSの外周面にZnが埋め込まれ、試験片TSの表面に方向性のない島状のZn膜が形成されて、耐食性が大幅に向上する。

【0024】
次に、試験片TSの改質面の表面粗さの改善を目的に円錐状工具を用いて後処理(潤滑油中でのバニシ仕上)を行う。
図4A,4Bは、仕上げ処理工程における試験片TSと円錐状工具6との関係を示す斜視図であり、図4Aは側面図、図4Bは正面図である。円錐状工具6にはDLC膜付超硬工具を用いている。図4A,4Bに示すように、円錐状工具6の円錐面6cを潤滑下で試験片TSの外周面に押し付けた状態で試験片TSを回転させ、かつ円錐状工具6を回転させるとともに試験片TSの表面に沿って試験片TSの軸方向に移動させてバニシ仕上げ処理を行う。これにより、試験片TSの表面粗さを改善して平滑にする。

【0025】
図5に、表面改質処理工程と改質面の様子を示す。ハイス(HSS)粒子をキャリアとするSi粉末による処理では、炭素鋼の表面は黒みを帯びたざらつきのある面となっている(上段の図)。このSi粉末処理した面をZnピンで摩擦すると、黒みは点在するものの全体的に白っぽい面となる(中央の図)。引き続いて後処理(バニシ仕上)を行うと、光沢をもつ面が一様に創成される(下段の図)。これらの処理による丸棒の直径増Δdは、53μm程度である。
後処理を施した面に対してEDX(エネルギー分散形X線分光器)による元素分析を行った結果を、図6に示す。右上及び左下の画像から明らかなように、Feがリッチな領域はSiもリッチとなっており、これより基材表面にSi粉末が埋入あるいは凝着していることがわかる。また、右下の画像から明らかなように、Fe及びSiがリッチな領域の間及びその領域の上にZnが埋入あるいは凝着している。改質面におけるZnの被覆率は少なくとも20%であった。

【0026】
改質面の内部(表層)の状況を調べるために、厚さ約10μmほどラッピング(lapping)し、EDXおよび光学顕微鏡で観察した。ピクリン酸溶液で軽くエッチングしたときの光学顕微鏡観察結果の一例を、図7に示す。図7において下方の画像は、上方の画像のほぼ左中央部の部分を縦横約2倍に拡大した画像である。薄くエッチングされた基材とSiからなる領域(画像中、広範囲に亘る“基材+Si”で示す領域)に加え、ほとんどエッチングされないハイス(HSS)粒子(画像中、最も淡色で示される“HSS”で示す部分)が多数存在することがわかる。また、ラッピングで除去されずに残存しているZnも部分的に認められる(画像中、中央部のやや濃い色の部分)。なお、図中に見られる黒色部(Zn部分よりも濃色の部分)は、欠陥部(凹部)である。

【0027】
図7と同様のラッピングを施した面に対し、マイクロビッカース硬さ試験(押込荷重20gf)を行った。その結果を、図8に示す。図8において未処理材の硬さを点線で示している。Si粉末が埋入あるいは凝着した基材表面は、未処理のS45Cに比べてはるかに硬化している。また、ハイス粒子の硬さはHv1000を超しており、これらの存在は耐摩耗性を向上させる要因となる。一方、Zn部はその素材(Zn)と同程度の硬さを示している。Znの分散した組織は、海水中のような電解質溶液中においてカソード防食効果をもつ。

【0028】
試験片の海水中における耐食性を、人工海水に浸漬して調べた。人工海水成分を表2に示す。
【表2】
JP2014024899A1_000004t.gif
試験片は長さ10mmに切断し、両切断面には防食塗料を施した。その後、試験片をアクリル性の箱(45mm×58mm,高さ18mm)に箱ごとに各1個入れた後、人工海水を約16mmの高さまで注いだ。人工海水の蒸発を抑えるために、アクリル製の箱はすべて密閉容器に保管した。腐食試験は、人工海水の蒸発による減量を考慮して2週間とした。なお、その時の雰囲気温度は約23℃で一定である。比較のために、未処理基材も同様にして腐食試験を行った。
図9に、人工海水浸漬による腐食の進行状況を示す。未処理基材(S45C基材)では、浸漬後1日程度で赤さびが生じ、1週間程度で赤さびが全面を覆い、2週間後には赤さびの量が増えている。図9の未処理基材の画像に示すように、試験片の全面が赤さびで覆われた状態は、開始直後の未処理基材に見られる光沢が1日経過後で無くなり1週間経過後には全然見られなくなっていることから明らかである。これに対して、改質処理の施された試験片では、2週間経過後も赤さびは生じていない。図9の最上段に示す開始直後の未処理基材と改質処理の施された基材との2枚の画像を比較してみると、処理が施された試験片の画像には改質処理された表面状態が表れており、未処理の試験片に見られるような光沢を示す縦線は表れていない。改質処理が施された試験片の場合には、2週間経過後の画像においても改質処理された表面状態は開始直後と同様であり赤さびは生じていないことがわかる。なお、改質処理された試験片の周囲には浸漬後数時間で気泡が生じる。この気泡は、Znが犠牲陽極となってイオン化した際に生じた水素ガスと考えられる。

【0029】
2週間の浸漬試験後、試験片をアセトン中にて超音波洗浄し、腐食に伴う表面粗さの変化を測定した。図10に、表面粗さの変化の様子を腐食試験前の表面粗さと比較した結果(腐食前後の表面粗さの比)を示す。未処理基材の表面粗さは、最大高さRy,算術平均粗さRa,自乗平均平方根粗さRqともに、腐食試験前のそれらに比べて3倍以上になっている。それに対して、改質処理を施した改質処理材ではそれらの比は1.1~1.3であり、防食効果が認められる。

【0030】
次に、表面改質処理による耐摩耗性の改善効果を調べるために、交叉円筒形式で点接触形態の往復動試験を実施した。試験形態は、図11に示すように、固定側に試験片(耐摩耗性を調べようとする材料)を、駆動側に以下に述べる硬質材料を配置し、点接触往復摩擦とした。摩耗試験は、人工海水中に加え、無潤滑および潤滑油中でも実施した。駆動側の硬質材料として、人工海水中では耐食性を考慮してマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS440C,Hv660)を用い、無潤滑および潤滑油中では軸受鋼(SUJ2,Hv760)を用いた。試験条件等を表3に示す。
【表3】
JP2014024899A1_000005t.gif
なお、全実験を通してストロークは20mm、また繰返し数は21600回(繰返し速度1Hz,6時間)一定である。
改質処理材の耐摩耗性を検討するために、基準となる材料との比較試験を行った。基準となる材料として、人工海水中での比較試験にはオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を用い、無潤滑および潤滑油中での比較試験には高周波焼入を行った炭素鋼(S45C,Hv650~750)を用いた。これらの試験中、摩擦係数を常時モニターした。

【0031】
図12A,12B,12Cに、摩擦係数の経時変化の様子を示す。図12Aに示す大気中無潤滑における挙動をみると、S45C基材の摩擦係数は、基準材料であるS45C高周波焼入れ材とほぼ同程度の0.9~1.0であるが、改質処理材は1.1前後の値をとる。図12Bに示す潤滑油中での結果をみると、改質処理材はS45C高周波焼入れ材とほぼ同様な挙動をとり、S45C基材より摩擦初期に若干小さい値をとるが、摩擦の繰り返しにより約0.11前後の低い値となる。一方、人工海水中では、図12Cに示すように、改質処理の摩擦係数は、摩擦初期には0.3以下であるが、摩擦の繰り返しにより少しずつ増加し始め、次第にS45C基材の摩擦係数に近づく。なお、人工海水における実験の基準材料であるSUS304の摩擦係数は、不安定かつはるかに高い摩擦係数をとる。

【0032】
次に、改質処理材の耐摩耗性を、基準となる材料の摩耗と比較することにより調べた。その結果を、図13に示す。図13において縦軸の「摩耗体積比」は、対象とする材料の摩耗体積Vを次式(摩耗痕の形状を2次曲面と仮定して算出した体積)より求め、その比摩耗量を基準となる材料の比摩耗量で除した値である。
V=0.5πabh
a:摩耗痕長径,b:摩耗痕短径,h:摩耗痕最大深さ
この結果から、S45C基材では、雰囲気条件によらず摩耗体積比は1より大きく、基準となる材料より耐摩耗性に劣ることがわかる。これに対して、改質処理材では摩耗体積比はいずれの雰囲気条件においても1より小さく、無潤滑と潤滑油中では焼入硬化された基準となるS45Cより改質処理材の方が耐摩耗性に優れていること、また人工海水中では代表的耐食鋼であるSUS304よりはるかに改質処理材の方が耐摩耗性に優れていることを示している。なお、無潤滑における基準材料(S45C焼入れ材)の比摩耗量は1.759×10-9/(N・m)、潤滑油中における基準材料(S45C焼入れ材)の比摩耗量は37.828×10-12/(N・m)、人工海水中における基準材料(SUS304)の比摩耗量は385.44×10-12/(N・m)である。

【0033】
以上のように、炭素鋼(S45C)に、Siとハイス粒子からなる混合粉末による処理、及びその上にZnピン摩擦処理を行うことにより、人工海水中における耐食性と耐摩耗性が向上することが確認された。次に、その機構(メカニズム)を中心に考察する。

【0034】
(1)耐食性について
改質処理が施された表面には、図6および図7に示したようにZnが凝着している。電解溶液中にイオン化傾向の異なる異種金属が存在するとき、イオン化傾向の高い金属(本実施形態ではZn)は陽イオンとなって溶出し、もう一方の金属(本実施形態では炭素鋼)の溶出を防止する。Znは船体等の腐食防止にしばしば用いられる材料であるが、炭素鋼表面に存在するZnも同様な作用をすることにより、炭素鋼表面の腐食を防止するものと考えられる。このような犠牲防食作用は、Znが一様に被覆されていなくとも、すなわちZnの存在しない領域(以下暴露域という)に対しても一定の作用をもつものと考えられるが、暴露域の大きさと腐食性によりZnの溶出速度が異なるものと考えられる。この点を確かめるために、CrとHSSの混合粉末処理面にZnコートを施した材料でも腐食試験を行ったが、CrとHSSの混合粉末処理面の場合には、水素ガスと考えられる気泡の発生がSiとHSSの混合粉末処理面へのZnコート面の場合より激しく、1週間ほどを過ぎると試験片側面の数か所に赤さびが生じはじめ、その後はそこを中心に赤さびが全面に拡大する。この事実は、Znコートを施す表面の腐食性も重要な因子であることを示しており、Siが埋入/凝着した炭素鋼表面がZnコートを施す面としては適していることを示している。
炭素鋼よりもイオン化傾向の高い金属でZnと同様の作用効果をもたらすものとしてはAlなどが挙げられる。
本実施形態では人工海水を用いて腐食試験を行ったが、人工海水は実海水に近い成分をもっていることから、実海水中においてもZnコートによる同様な防食効果が期待される。また、電解溶液ではない超純水などは別として、清水(水道水等)中でもZnコートによる防食効果があることを確認している。図9および図10に示したように、Znコートされた試験片では赤さびは生じないものの、浸漬試験後の表面粗さはわずかに増加する。これは、Znコート領域の腐食によるものと考えられる。

【0035】
(2)耐摩耗性について
図13に示したように、改質処理を施すことによりS45C鋼の耐摩耗性は著しく向上する。これは基材の表面/表層に硬いハイス粒子が埋め込まれていること、またそれを支える基材+Si部の硬さも高くなっていることが挙げられる。Si粉末やハイス粒子が基材と十分な強度をもって密着していないと耐摩耗性効果は期待できないが、粉末改質処理後に行ったZnピンによる摩擦コート過程で、激しいせん断とそれに伴う温度上昇により密着性の向上がなされたものと考えられる。なお、このような摩擦コート処理は、摩擦を受ける材料(本実施形態ではS45C)が摩擦ピン(本実施形態ではZnピン)に比べて十分に高い硬さをもつ場合にのみ可能である。
Znコートは、無潤滑では摩擦低減作用はなく、むしろ未処理基材よりも高い摩擦係数を示すが、人工海水中では未処理材よりも低い摩擦係数となり、摩擦低減作用がある。これは、人工海水中においてZnが徐々に溶けることにより生じる摩擦低減効果と考えられる。

【0036】
以上説明したように、本発明によれば、炭素鋼(S45C)に、Siとハイス粒子からなる混合粉末による処理、またその上にZnピンによる摩擦コートを行うことにより、以下に列挙する効果を奏する。
1)改質処理されたS45Cは、人工海水に対して耐食性をもつ。
2)改質処理されたS45Cは、人工海水中において顕著な耐摩耗性を示す。また、無潤滑および潤滑油中においても高周波焼入材よりも高い耐摩耗性を示す。

【0037】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、炭素鋼に表面改質を施すことにより耐食性および耐摩耗性を付与することができる炭素鋼の表面改質方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 筒状部
2 漏斗状部
3 工具挿入孔
4 工具
4f 先端面
4s 螺旋溝
5 Znピン
6 円錐状工具
6c 円錐面
TS 試験片
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図8】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図12A】
8
【図12B】
9
【図12C】
10
【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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