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明細書 :浮遊帯域溶融法およびこれを用いた装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-147800 (P2016-147800A)
公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
発明の名称または考案の名称 浮遊帯域溶融法およびこれを用いた装置
国際特許分類 C30B  13/30        (2006.01)
H01L  21/208       (2006.01)
FI C30B 13/30
H01L 21/208 Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-013330 (P2016-013330)
出願日 平成28年1月27日(2016.1.27)
優先権出願番号 2015014941
優先日 平成27年1月29日(2015.1.29)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】綿打 敏司
【氏名】エムディー ムクタール ホサイン
【氏名】長尾 雅則
【氏名】田中 功
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
5F053
Fターム 4G077AA02
4G077BA04
4G077CE03
4G077CE05
4G077EG15
4G077EG25
4G077HA01
4G077HA12
4G077NE01
4G077NF11
4G077NG03
5F053AA19
5F053DD01
5F053FF04
5F053GG01
要約 【課題】赤外線集中加熱浮遊帯域溶融(IR-FZ)法で単結晶を製造するときに溶融帯を安定化させるための原料棒の適切な配置方法の提供。
【解決手段】単結晶を育成する浮遊帯域溶融(FZ)法において、間隙をもって複数の原料棒を配置し、間隙を維持したまま溶融帯を生成するFZ融法であり、間隙を変えることにより、溶融帯を安定化することができる。このため、上下に移動可能なサスペンション機能を付したシャフトに複数の原料棒を固定し、原料棒間に間隙をもって配置可能な保持機構を有する原料棒設置装置を備えるFZ法装置。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
単結晶を育成する浮遊帯域溶融法において
鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒を、該原料棒間に間隙をもって配置し、
間隙を維持したまま溶融帯を生成する浮遊帯域溶融法
【請求項2】
単結晶を育成する浮遊帯域溶融装置において
鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒を、該原料棒間に間隙をもって配置可能な保持機構を備え、
間隙を維持したまま溶融帯を生成する浮遊帯域溶融装置
【請求項3】
上下に移動可能なサスペンション機能を付したシャフトに複数の原料棒を固定し、前記原料棒間に前記間隙をもって配置可能な保持機構を有する原料棒設置装置を備える請求項2に記載の浮遊帯域溶融装置
【請求項4】
上下に移動可能なサスペンション機能を付したシャフトを複数備え、
前記シャフト各々に原料棒が設置され、
前記原料棒の各々が前記間隙をもつように前記シャフトを保持する原料棒設置装置を備える請求項2に記載の浮遊帯域溶融装置
【請求項5】
前記シャフトの各々が個々に回転する回転機能を備えた請求項4に記載の浮遊帯域溶融装置
【請求項6】
加熱光源を備える請求項4または5の1つに記載の浮遊帯域溶融装置
【請求項7】
前記加熱光源を少なくとも2個備え、前記原料棒の回転軸に対する前記加熱光源の一方の照射角度と、前記加熱光源の他方の照射角度とが互いに異なる請求項4から6のいずれか1つに記載の浮遊帯域溶融装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法で単結晶を製造するときの、原料棒の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、サファイア、ガリウム砒素(砒化ガリウム)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウムなどの市場規模の大きな単結晶材料の多くは、原料のすべてを一旦溶融し、その一部から結晶化させるチョクラルスキー(Cz)法やブリッジマン法といった手法で生産されている。これらの手法の特長は、高品質で大口径の結晶を量産できることにある。その一方、欠点としては、結晶育成に坩堝が必須であることや偏析制御が困難であることなどがある。
【0003】
坩堝における問題としては、シリコンの結晶育成に用いる石英坩堝では、使い捨てである点、サファイアやニオブ酸リチウムの結晶育成に用いられることのあるイリジウムや白金といった貴金属坩堝は非常に高額である点がある。貴金属坩堝の場合、使用に伴って形状変形が進行したりするため、定期的な改鋳が必要となる。これらの要因が一層の低コスト化を阻害する大きな要因である。
【0004】
偏析に関する問題としては、偏析制御が困難であるために量産は偏析制御が不要な結晶材料が中心となっている点である。シリコンの場合、p型シリコンでは偏析係数が0.8と1に近いホウ素をドーパントして利用できるため、Cz法で育成してもドーパントの偏析は問題となりにくいのに対し、n型シリコンでは偏析係数がせいぜい0.35と1に比べて小さなリンなどしかドーパントとして利用できないため、ドーパントの偏析が問題となる。そのため、結晶育成過程での固化率を制限せざるを得ず、n型シリコンは、長尺化が難しく、p型シリコンに比べて低コストの量産が困難である。近年注目を集める単結晶シリコン太陽電池では、基板にn型シリコンを用いるタイプの変換効率がp型シリコンを用いるものに比べて高いことから、n型シリコンの低コスト化が効果的な状況にある。一方、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムといった単結晶では、リチウムとニオブあるいはリチウムとタンタルの組成比が1:1の定比組成に近い結晶ほど表面弾性波素子としての性能が高いことが知られているが、実際に量産されているのは、Cz法で育成可能なニオブやタンタルが過剰の一致溶融組成の結晶である。
【0005】
こうした点を踏まえると現在工業化されている結晶材料は、適切な坩堝が利用可能な一致溶融組成に近い物質の結晶に限られているといえる。融液の反応性が高いために適切な坩堝のない物質や極端な偏析を生じる物質の結晶はたとえ優れた特性を有していたとしても工業的に利用することは現状では困難である。
【0006】
赤外線集中加熱浮遊帯域溶融(IR-FZ)法は、坩堝材の消耗やドーパントの偏析といったCz法やブリッジマン法の欠点を補いうる手法の一つとして開発されたもので、高周波加熱浮遊帯域溶融(rf-FZ)法と同様に坩堝不要の帯域溶融法である(例えば特許文献1)。坩堝不要であることから融液の反応性が高くても結晶育成が可能である。さらに、帯域溶融法であることから、ドーパントの偏析係数が1に比べて極端に大きくても小さくても適切な組成の溶融帯を用いることで均一組成の長尺結晶を原理的に育成可能という特長を有している。しかし、大口径の単結晶育成が困難であったために工業的に用いられることは皆無に近く、研究用に多様な化合物単結晶の少量育成に用いられるにすぎなかった。
【0007】
このIR-FZ法でも育成結晶径を改善する試みが行われている。例えば、特許文献2では回転楕円鏡をその長径方向に移動できる装置を用いてシリコンの育成で原料径に合わせて適切な位置に回転楕円鏡を移動させることでシリコン結晶を大型化できた。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2007-99602
【特許文献2】特開2013-224237
【0009】
特許文献1の浮遊帯域溶融装置は、四楕円鏡型のもので、試料棒の加熱位置で交叉する水平な直交軸上に4つの回転楕円面反射鏡(内面が反射面)が配置されてなるものである。各回転楕円面反射鏡の第1焦点に赤外線ランプが配置され、4つの回転楕円面反射鏡はその第2焦点を加熱位置で共有するように配置されている(上記直交軸の交点が第2焦点)。赤外線ランプから出射する光を各回転楕円面反射鏡で反射させて加熱位置に集光させ、試料を加熱するものである。
【0010】
ところが、大口径の単結晶育成には単に集光加熱するだけでなく、溶融帯の固液界面の形状を制御することが必要である。
【0011】
そのため、このシリコンの育成において溶融帯形状を丹念に調べた結果、溶融帯中心で原料-融液界面と結晶-融液界面が互いに近接していた。また、直接加熱される融液表面の温度が育成結晶の大口径化に伴って著しく高くなることが示唆された。このことは、溶融帯の外側と内側の温度差が大きいことを意味し、そのような状態でこの原料と結晶が接触することで溶融帯が著しく不安定化されることが考えられた。これらは、溶融帯の中心付近までの伝熱が不十分であることに起因していると考えられた。溶融帯の表面近傍と溶融帯の中心付近で溶融に必要な伝熱機構を定性的に考えると溶融帯表面近傍では、回転楕円鏡からの赤外線の集中による輻射伝熱効果が大きいことに加えて、原料と育成結晶の外周部に近いためこれらの回転による強制対流による伝熱の効果が大きい。したがって、熱伝導の寄与は相対的に小さい。一方、溶融帯中心部では、輻射伝熱効果がほとんど期待できないことに加えて、中心部では原料と育成結晶の回転による強制対流による伝熱の効果も小さい。したがって、熱伝導の寄与が相対的に大きい。こうした状況を是正するような措置を取ることができれば、育成結晶のより一層の大型化が期待できると考えられるが、これまでそのような試みがなされていないのが現状であった。
【発明の開示】
【0012】
この発明は、たとえば赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法で単結晶を製造するときに溶融帯を安定化させるための原料棒の適切な配置方法を提供することを目的とする。
【0013】
この発明は単結晶を育成する浮遊帯域溶融法において鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒を、該原料棒間に間隙をもって配置し、間隙を維持したまま溶融帯を生成する浮遊帯域溶融法であり、間隙を変えることにより、溶融帯を安定化することができる方法である。
【0014】
また、この発明によると単結晶を育成する浮遊帯域溶融装置において、鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒を、該原料棒間に間隙をもって配置可能な保持機構を備えており、間隙を維持したまま溶融帯を生成することができるため、溶融帯を安定化することができる浮遊帯域溶融装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】原料棒のサイズの増大させたときの溶融帯の概観写真を示す。
【図2】(上)この発明の実施例の2本の原料棒配置と、(下)溶融帯の急冷固化体の縦断面の写真を示す。
【図3】溶融帯の模式図を示す。
【図4】原料棒間距離と界面形状の凸度の関係について示す図である。
【図5】原料棒間距離とランプ出力の関係を示す図である。
【図6】原料棒間距離と溶融帯高さ、原料棒間距離と溶融帯最小幅との関係について示す図である。
【図7】原料棒間配置の模式図を示す。
【図8】原料棒間配置の模式図を示す。
【図9】本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置が備える原料棒設置装置を示した図である。
【図10】原料棒の構成例と原料棒設置装置での適用例を示す図である。
【図11】溶融帯の様子の一例を示す。
【図12】本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置が備える原料棒設置装置を示した図である。
【図13】複数の原料棒の構成例を示す図である。
【図14】原料(原料棒)と光源が正対する場合の図である。
【図15】原料(原料棒)の隙間と光源が正対する場合の図である。
【図16】原料(原料棒)と光源が正対する場合の図である。
【図17】原料(原料棒)の隙間と光源が正対する場合の図である。
【図18】原料(原料棒)と光源が正対する場合の図である。
【図19】原料(原料棒)の隙間と光源が正対する場合の図である。
【図20】加熱光源の配置の一例を示す図である。

【実施例】
【0016】
赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶の育成を行った。通常1本の原料棒を用いて、溶融帯を形成し、単結晶を育成するが、溶融帯の中心部と外周部の温度差により溶融帯が不安定となり、原料棒のサイズの増大に伴い、図1のように溶融帯が維持できない状態があった。これを改善する方法を検討し、シャフトの回転軸上近傍を避けるように複数の原料棒を配置してそれらを同時に用いて結晶育成を行った。
【0017】
10mm×20mm角の原料棒を2本同時に用い、この長辺側を、回転軸の中心をはさみ、向い合せに配置し、その間隙を原料棒間距離2、4、7mmとし、育成試験を行い、20mm×20mm角の1本原料棒を用いた育成試験の結果と合わせて比較検討した。
【0018】
図2上段は、その例として鉛直方向に吊り下げられた10mm×20mm×180mmの2本の原料棒の間隔を変化させた原料棒配置を示している。図2下段は、ランプ出力を6.8kWとし、ほぼ同一の条件で形成した溶融帯の急冷固化体の縦断面の写真を示している。原料棒間距離が2 mm程度までは、ほぼ一定時間ごとに融液が毛細管現象により原料側に吸い上げられる現象が見られた。原料棒間距離が4mm近くになるとそのような現象は抑制された。
【0019】
さらに詳細な検討として、原料棒間距離と界面形状の凸度、ランプ出力、溶融帯高さの関係について示す。図3に溶融帯の模式図を示す。図4には、原料棒間距離と界面形状の凸度の関係について示す。図5には、原料棒間距離とランプ出力の関係について示す。図6には、原料棒間距離と溶融帯高さの関係について示す。
【0020】
図7の模式図に示すように原料棒の間隔が広くなるに伴って、原料側の界面形状の凸度が減少し、平坦に近くなることがわかった。これは、原料棒の間隙を通って加熱光の一部が浸透し、シャフト回転中心近傍の原料棒や溶融帯表面を直接加熱できるためである。言い換えると1本の原料棒を用いる従来の条件では、回転中心近傍の伝熱が主に熱伝導でなされていたのに対し、複数の原料棒の隙間によって、輻射伝熱の寄与が加わったといえる。また、この溶融帯界面形状の変化に伴って溶融帯が安定化した。また、溶融帯と結晶の界面が最も凸になる結晶の回転中心近傍の直上は、2本の原料棒の間隙で、原料と育成結晶が接触しづらい配置となっていることも溶融帯の安定化に寄与していると考えられる。原料棒をさらに増やし、10mm×10mm×180mmの4本の原料棒の間隙が十字型になるように配し、その間隔を変化させた場合でも類似の結果が得られた。
【0021】
また本試験を行った赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置には、間隙を維持したまま複数の原料棒を保持可能なクランプ状の保持機構を備えており、クランプ位置を調整することで間隙を調整した。
【0022】
原料棒を複数用いることで生じる固液界面形状変化から、原料棒と育成結晶の接触が起こりにくくなることから、IR-FZ法での育成結晶の大型化を期待できる。IR-FZ法で大型化を実現できれば、坩堝を用いない偏析制御が可能な帯溶融法を結晶材料の量産に用いることができることになるため、Cz法では困難であったn型シリコンなど偏析制御が必要な結晶材料の長尺化が見込める。坩堝コスト分の低コスト化に加えて長尺化による低コスト化が期待される。また、例えばシリコンの場合、現状ではCz法で量産可能なのはp型結晶であるため、p型基板を前提としたデバイス設計における制約がなくなり、例えば、変換効率の高いn型基板を用いた太陽電池に用いることができる。
【0023】
また、この方法では、原料のすべてではなく、一部を溶融帯として溶融する手法であり、原料すべてを一旦溶融するCz法等の手法に比べて必要な電力が少なくなりうるという利点を持つ。
【0024】
上述のとおり通常の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融法では、1本の原料棒を用いて、溶融帯を形成し、単結晶を育成する。このため、赤外線加熱浮遊帯域溶融法で、育成結晶の大口径化を行う場合、原料棒の断面積を大きくする必要がある。図1は原料棒の断面積を変化(図左から(a)20×20mm、(b)25×25mm、(c)30×30mm)させた条件におけるシリコン単結晶育成中の溶融帯付近の写真である。シリコン単結晶育成の条件は、原料供給速度が10mm/h(ケース(a)(b))、および5mm/h(ケース(c))、集光鏡位置は4mm(ケース(a)(b)(c))である。なお、ここで集光鏡位置は、赤外線を溶融帯に集光する集光鏡の焦点の位置と単結晶の回転軸と距離である。また、ランプ出力は原料棒が20×20mm、25×25mm、30×30mmの各ケースに対し、それぞれ6.8kW(ケース(a))、8.6kW(ケース(b))、7.9kW(ケース(c))とした。図1に30×30mmのケースでは同条件でのシリコン単結晶の育成を開始から約1分後の状態も示す(d)。ここで示す結果から明らかなように、原料が大きいほど、溶融帯形成に必要なランプ出力がそれぞれ大きくなるだけでなく、溶融帯は大きくくびれ、安定保持が困難な状態になり、溶融帯最小幅と育成結晶径の比は小さくなっていることがわかる。一般に高温になって融液の粘性が小さくなるほど溶融帯はくびれやすくなることから、この現象は、ランプの高出力化にともなって溶融帯の表面が局所的に加熱されて融液表面の粘性が低下する一方、溶融帯中心部では加熱が不十分で原料棒や育成結晶が溶融しにくく、互いに接近し、接触しやすいことに起因していると考えられる。
【0025】
2本の原料棒を用いた上述の実施例を図2から図8を用いて再度検討する。図8は以下の検討のため図7の構成物に参照番号を付した原料棒間配置の模式図である。ここで、図8の(a)は従来通り1本の原料棒を用いた場合、同図(b)は2本の原料棒を間隔Sb空けた場合、同図(c)は2本の原料棒を間隔Sc空けた場合をそれぞれ示している。なお、図8(b)(c)及びそれに対応する図7では、Sb=2mm、Sc=4mmにて実験を行った場合の模式図に相当する。
【0026】
図8(a)~(c)において、1a、1b、1cは回転軸中心、2a、2b1,2b2,2c1,2c2は原料棒、3a、3b1,3b2、3c1、3c2は原料棒の凸部、4b、4cは溶融帯溶液の原料棒間での液面、5a、5b、5cは生成された単結晶の凸部、6a、6b、6cは生成された単結晶、7a、7b、7cは溶融帯を示す。また、生成された単結晶6a、6b、6cの半径をrca、rcb、rcc、回転軸から原料棒(2a、2b1、2b2、2c1,2c2)の側面までの距離をrFa、rFb、rFc、原料棒の凸部の高さをhFa、hFb、hFc、単結晶凸部の高さをhca、hcb、hcc、溶融帯高さをHa、Hb、Hc、溶融帯最小間隔をhma,hmb,hmc、溶融帯最小幅をWa、Wb、Wcとして示す。図8のrFa、rFb、rFcは図3のrFに、同じくhFa、hFb、hFcはhFに、hca、hcb、hccはhcに、rca、rcb、rccはrcにそれぞれ対応する。なお、回転軸中心(1a~1c)は同じであるが、原料棒と単結晶とはそれぞれ逆方向に回転して製造されている。
【0027】
図4において、結晶側および原料側の界面形状凸度(h/r)がそれぞれ黒丸、白丸で示されている。結晶側界面形状凸度(hc/rc)は図3および図8に示すように単結晶の半径rcに対する単結晶の凸部高さhcの比を示したものである。また原料側界面形状凸度(hF/rF)は回転軸中心から原料棒の側面までの距離rFに対する原料棒の凸部高さhFの比を示したものである。結晶側界面形状凸度(hc/rc)および原料側界面形状凸度(hF/rF)はその値が大きいものほど凸部高が高いことになる。図4は、この結果から、原料棒の間隔(原料棒間距離S)が2mmから5mmの範囲においては、原料棒の間隔が大きくなるにつれ原料側の界面形状凸度(hF/rF)が減少し、原料側の界面形状が平坦化することがわかる。
【0028】
図6において、原料棒間距離Sと溶融帯高さHとの関係を黒丸で示している。また、原料棒間距離Sと溶融帯最小幅Wとの関係を白丸で示している。原料棒の間隔(原料棒間距離S)が0~7mmの範囲においては、原料棒の間隔が広くなるに伴って、溶融帯高さHが減少し、溶融帯最小幅Wが増大していることがわかる。なお、本実験において原料棒間距離(S)とランプ出力の関係については図5に示すようにほぼ一定である。
【0029】
以上のことから、単結晶を育成する浮遊帯域溶融法において、鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒を、該原料棒間に間隙をもって配置し、間隙を維持したまま溶融帯を生成すると溶融帯が安定することがわかる。このことは浮遊帯域溶融法によってより大きな(半径が大きい)単結晶の製造を可能とする。本願発明によりIR-FZ法での育成結晶の大型化が可能となる。本発明のIR-FZ法によるn型シリコン単結晶の大型化量産化技術は、従来Cz法を使うが故に生じた「p型基板を使うという制約事項」から解放されることを意味する。そして、その効果は変換効率の高いn型基板を用いた太陽電池などで顕著に発揮されることとなる。
【0030】
図9は、本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置が備える原料棒設置装置を示した図である。図9(A)は、上述の実施例において利用した、複数の原料棒を一定の間隙を保った状態で1つにまとめ、シャフトのフックにぶら下げる構成の原料棒設置部分を示し、図9(B)はその改良形を示している。
【0031】
図9(A)において、原料棒設置装置100は、シャフト11、フック12、ワイヤ13を備える。なお、2つの原料棒(102-1,102-2)は、スペーサ14により所定の間隙を備えて一体化される。ワイヤ13をフック12かけることによりシャフト11に一体化した原料棒をつりさげる。本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置はシャフト11が10で示す方向に回転する回転機構(不図示)を備える。
【0032】
図9(B)において、原料棒設置装置200は、サスペンション機能付きシャフトを備える。外側シャフト21、内側シャフト22はバネ23を介して外側シャフト21の内部につりさげられた構成である。内側シャフト22は、外側シャフト21の内部をくりぬいた領域にはめ込まれバネ23を介して外側シャフト21に吊さげられている。外側シャフト21が10の方向に回転すると、内側シャフト22も回転するように構成される。また内部シャフトはスベーサ部24を備えスペーサ部24を挟んで原料棒(202-1、202-2)が所定の間隙を備えて一体化される。図9(A)と同様に本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置はシャフト21、22が10で示す方向に回転する回転機構(不図示)を備える。
【0033】
図9(A)(B)においては、2つの原料棒を一体化する例を示したが、後述するように3つ以上の原料棒を一体化することも可能である。図10は、原料棒の構成例と原料棒設置装置での適用例を示す図である。図10の(A)~(E)はそれぞれ原料棒を設置するシャフト(11)側から単結晶(106)方向(鉛直下向き)に原料棒を見た図である。図10(F)に1例として図10(A)を図9(A)の原料棒設置装置100に適応した場合に示す。図10(A)は底面が長方形である2つの原料棒102-1a、102-2aをスペーサ14aを挟んで一体に構成した場合、図10(B)は底面が正方形である4つの原料棒102-1b~102-4bをスペーサ14bを挟んで一体に構成した場合、図10(C)は底面が正方形である3つの原料棒102-1c~102-3cをスペーサ14cを挟んで一体に構成した場合、図10(D)は底面が円形である4つの原料棒102-1d~102-4dをスペーサ14dを挟んで一体に構成した場合、図10(E)は底面が円形である3つの原料棒102-1e~102-3eをスペーサ14eを挟んで一体に構成した場合をそれぞれ示す。図10の(A)~(E)のいずれの図においても外周の円周状の矢印は、図10(F)の回転方向10と同じく、これらの一体化された原料棒の回転方向を示している。このように原料棒はスペーサ14を挟んだ構成にすることにより複数の原料棒を一体化することができる。図10(F)に示す例では、一体化された原料棒(102-1、102-2)がシャフト11の回転軸を中心に回転しながら、原料棒の先端が赤外線で加熱され溶融帯107を作り単結晶106を製造する。なお、105は単結晶の凸部、103-1,103-2は原料棒の凸部である。また単結晶106の回転軸はシャフト11の回転軸と同じで位置にあるが回転方向は逆である。上述したように、このように原料棒を増やし、10mm×10mm×180mmの原料棒3本を中心に間隙を持った三菱状に配したり、4本を間隙が十字型になるように配したりして、その間隔を変化させた場合でも溶融帯界面形状の平坦化とその結果溶融帯が安定化する結果が得られた。
【0034】
図9(A)は、ワイヤ13によりシャフト11の回転を一体化された原料棒に伝えるとともにワイヤ13により回転よる結晶成長時の原料棒の揺れを吸収する構成である。しかしながら図9(A)の構成でも原料棒が育成結晶に接触すると水平方向に大きくぶれることがある。図9(A)では左右に揺れる様子を示している。
【0035】
図11は3本の原料を1つにまとめたときに原料と育成結晶が接触し、大きく左右(水平方向に)ぶれた後の溶融帯の様子の一例である。この図のように育成結晶と溶融帯を形成している原料が一部に限られ、残りの原料が育成結晶と接触状態を保てなくなる場合がある。その場合、複数ある原料全体が斜めに傾く。原料棒が十分に長く、十分な質量がある場合には、未接触となった原料が再び溶融帯と接触する場合がある。しかし、原料棒が短く、質量が小さくなると原料全体が斜めに傾いたままの状態となり、原料全体を上下させても溶融帯を形成していない原料を溶融帯に改めて接触させることは困難になる。原料棒が長く、十分な質量を備える場合は、図9(A)の構成で十分対応が可能である。しかしながら、この現象が問題となる場合は、図9(B)に示したような原料棒設置装置200に変えることで複数ある原料の一部が溶融帯と接触しなくなる現象を抑制できる。
【0036】
別の方法としては、図9や図10に示したように複数の原料全体を一体化させて回転させるのではなく、複数のシャフトに個々の原料を固定し、そのシャフトを個々に回転させたり、上下に移動させたりする方法である。その1例を図12に示す。図12は本発明の赤外線集中加熱浮遊帯域溶融装置が備える原料棒設置装置を示した図であり、別の形態を示す図である。図12の原料棒設置装置300は、図9(B)で示したサスペンション機能付きシャフト(208-1,208-2)を複数備え、サスペンション機能付きシャフト各々に1つの原料棒(202-1,202-2)を設置する。また、サスペンション機能付きシャフト各々がそれぞれのシャフトの回転軸を中心に回転するように原料棒設置装置300は構成される。なお、サスペンション機能付きシャフト(208-1,208-2)の内側シャフト(22-1,22-2)、外側シャフト(21-1,21-2)、バネ(23-1,23-2)は、それぞれ図9(B)の内側シャフト(22)、外側シャフト(21)、バネ(23)に対応し、その構造は同じである。また図12においては、溶融帯を207、原料棒(202-1,202-2)のそれぞれの凸部を203-1,203-2、単結晶を206、単結晶の凸部を205とする。
【0037】
図12に示す方法においても、複数の原料棒を利用することが可能である。図13は複数の原料棒の構成例を示す図であり、そのバリエーションを示す。図13(A)のように底面が正方形である4つの原料棒202-1a~202-4aをそれぞれサスペンション機能付きシャフトに取り付け各々がそれぞれ回転する4本のサスペンション機能付きシャフトを備えた原料棒設置装置を構成してもよい。図13(B)のように3つの原料棒(202-1b~202-3b)に適用させてもよいし、図13(C)(D)のように原料棒(202-1c~202‐4c、202-1d~202-3d)の底面形状を円形に変えて3または4本のサスペンション機能付きシャフトを備えた原料棒設置装置を構成してもよい。つまり、2本以上のN本の原料を直線もしくはN角形となるような配置において個々に回転させられるように構成すればよい。
【0038】
複数の原料棒を一体化し回転させる場合、直接、輻射加熱される面とされない面は常に同じである。そのため、図2あるいは図7に示したように回転中心近傍の原料側の界面が溶融帯側に凸状に張り出した形になっていた。一方、図12や図13のように複数の原料棒を個々に回転させる場合には、時間平均すると個々の原料両面は均一に加熱されることになる。その結果、界面形状は平坦化され、このことから溶融帯の高さを小さくしたコンパクトな溶融帯の形成が可能となる。
【0039】
図12に示したように複数のシャフトに個々の原料を固定した条件では、原料と加熱光源であるランプと回転楕円鏡との配置が固定される。この結果新たに”配置”が検討条件として生じる。その極端な例が原料(原料棒)と光源が正対する場合(図14)と原料(原料棒)の隙間と光源が正対する場合(図15)である。ここで、図14、図15はともに3つの原料棒(34-1~34-3)をそれぞれたとえば図12のようにサスペンション機能付きシャフトを使って回転させる場合を想定している。つまり加熱光源であるランプ(赤外線ランプ:32-1~32-3)と回転楕円鏡(31-1~31-3)からなる3つの光源(33-1~33-3)により、3つの原料棒(34-1~34-3)を加熱する場合を示している。なお、図14、図15はそれぞれの原料棒の回転軸に沿った方向からみたものである。
【0040】
今ここで、図14、図15の光源33-1~33-3が原料棒34-1~34-3に回転軸に対し垂直方向(真横、水平方向)から照射される場合を考える。この場合の図14の点線Pのラインについて、光源33-1に正対する原料棒34-1の図を図16に、図15の点線Qのラインについて、光源33-2に正対する原料棒34-1の図を図17にそれぞれ模式的に示す。図17は原料棒34-2と34-3の間隙(隙間)が光源に正対するケースである。また図16、図17はそれぞれの原料棒の回転軸に対し垂直方向であってラインP、Qと平行方向にみたものである。さらに図14、図15の光源33-1~33-3が原料棒34-1~34-3に回転軸に対し傾斜を持って照射される場合を考える。この場合の図16に対応する図が図18、図17に対応する図が図19である。なお、図16~図19において、303は原料棒34-1の凸部、305は単結晶の凸部、306は単結晶、307は溶融帯を示す。
【0041】
光源33-1と原料棒34-1が正対しかつ真横から光源が原料棒に対する図16の配置や、光源33-1と原料棒34-1が正対しかつ傾斜を持って光源が原料棒に対する図18の配置は、従来の単一の原料を用いた状況に類似している。単一の原料を用いた場合、図16に類似した水平配置の方が図18に類似した傾斜配置に比べて集光効率が高く、より小さなランプ出力で溶融帯を形成できることが知られている。これは、地面の暖まり方に対する太陽光の入射角度の効果と同様である。複数の原料を個々に回転する場合も同様で図16の水平配置に近い方が図18のより傾斜した配置に比べて集光効率が高く、より低出力のランプ出力で溶融帯を形成できる。一方、原料(原料棒)の隙間と光源が正対する図17や図19の配置では、溶融帯表面が図示したように傾いている。そのため、傾斜角度によっては図19の傾斜配置の方が図17の水平配置に近い場合に比べて集光効率が高くなることがある。
【0042】
これを踏まえると、複数ある原料自体もしくは原料の隙間に正対するか否かに応じて加熱光源を大きく傾けたり、水平近くに配置にしたりすると効果的であることがわかる。このように加熱光源と原料の位置関係に応じて加熱光源の傾斜を変化させることは別の効果をもたらす。図20に加熱光源の配置の一例を示す図を示す。図20に示したように育成結晶を取り囲むように配置される加熱光源の傾きの大小が丁度交互となるように加熱光源を配置する。図20では原料棒44-1~44-3を取り囲むように加熱光源43-1~43-6が配備される。ここでは水平方向に配置された加熱光源43-2,43-4,43-6と傾斜して配置された加熱光源43-1,43-3,43-5とを備える。そうすると図20の投影図(45,46)に示したように、各光源の回転楕円鏡の空間配置が互いの干渉を避けやすくなるような配置となる。そのため、回転楕円鏡の一部を削り落とす必要が小さくなる。その結果、回転楕円鏡を削り落とすことにより生じる集光効率の低下を抑制できる。図20においては、育成結晶を取り囲むように配置される加熱光源は、育成結晶(単結晶)の回転軸に対し、2つの互いに異なる傾きを持たせた加熱光源を配置しているが、これらをさらに増やしてもよい。少なくとも2つの互いに異なる傾きを持たせた加熱光源を配置するとよい。つまり加熱光源を少なくとも2個備え、原料棒の回転軸に対する加熱光源の一方の照射角度と、加熱光源の他方の照射角度とが互いに異なるように構成されていてもよい。
【0043】
上述した図12から図15に示す例では、それぞれの原料棒(図12あっては202-1,202-2、図13にあっては202-1a~202-4a、202-1b~202-3b、202-1c~202-4c、202-1d~202-3d、図14、図15にあっては34-1~34-3)が個々に回転するが、全体としては固定されている例を示した。つまりこれらの例では、成長させる単結晶の回転軸と原料棒の回転軸とは同一線上にはない。赤外線ランプの光をさらに平均化して原料棒に当てるためには、個々に回転する複数のシャフト全体をひとまとめに単結晶とは逆の方向に回転させるように原料棒設置装置を構成すればよい。たとえば、図14の例であれば、原料棒34-1~34-3の各々が各原料棒の中心を軸として回転するとともに原料棒34-1~34-3全体が軸X0を中心に回転するように原料棒設置装置を構成すればよい。
【0044】
また、上述のように複数の原料棒が、全体としても回転するように構成した原料棒設置装置に代えて図14、図15に示す光源33-1~33-3が原料棒の周りを単結晶の回転軸を中心に回転するように構成してもよい。この場合、図14、図15に示す光源33-1~33-3は、単結晶の回転軸に対し、同一の傾きで照射してもよいが、図20に示すように少なくとも2つ以上の互いに異なる傾きで照射するようにしてもよい。
【0045】
上述した例の説明において、たとえば図9のシャフト11、21、22は原料棒の回転のために設置されているものであり、上側シャフト(上シャフト)である。上述した例の説明において、特に図示していないが、単結晶(図10(F)の106など)はその回転のために上シャフトとは別に下側シャフト(下シャフト)に固定される。なお、下シャフトは上シャフトとは逆方向に回転する。
【0046】
本発明にあっては、単結晶(たとえば図10の106)を育成する浮遊帯域溶融法において、鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒(102-1,102-2)を、該原料棒間に間隙(104による間隙)をもって配置し、間隙を維持したまま溶融帯を生成する。
【0047】
また、本発明の浮遊帯域溶融法においては、単結晶(たとえば図10の106)を育成する浮遊帯域溶融装置において鉛直方向に吊り下げられた複数の原料棒(102-1,102-2)を、原料棒間に間隙(104による間隙)をもって配置可能な保持機構(12,13、14)を備え、この間隙を維持したまま溶融帯を生成する浮遊帯域溶融装置がつかわれる。
【0048】
また、図9(A)の12~14の保持機構に代えて、図9(B)に示すように上下に移動可能なサスペンション機能を付したシャフトに複数の原料棒を固定し、これらの原料棒間に所定の間隙をもって配置可能な保持機構としてもよい。
【0049】
さらに図12に示すように、この上下に移動可能なサスペンション機能を付したシャフトを複数備え、シャフト各々に原料棒が設置され、原料棒の各々が所定の間隙をもつようにシャフトを保持する原料棒設置装置としてもよい。
【0050】
さらにまたシャフトの各々が個々に回転する回転機能を備えるようにしてもよい。
これら開示される浮遊帯域溶融装置は加熱光源を少なくとも2個備え、原料棒の回転軸に対する加熱光源の一方の照射角度と、加熱光源の他方の照射角度とが互いに異なるように構成されていてもよい。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
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【図17】
16
【図18】
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【図19】
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【図20】
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