TOP > 国内特許検索 > 金属化合物の濃縮方法 > 明細書

明細書 :金属化合物の濃縮方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6192645号 (P6192645)
登録日 平成29年8月18日(2017.8.18)
発行日 平成29年9月6日(2017.9.6)
発明の名称または考案の名称 金属化合物の濃縮方法
国際特許分類 C22B   7/00        (2006.01)
C22B   5/10        (2006.01)
C22B   5/12        (2006.01)
C22B  26/10        (2006.01)
C22B  41/00        (2006.01)
C22B  58/00        (2006.01)
FI C22B 7/00 E
C22B 5/10
C22B 5/12
C22B 26/10
C22B 41/00
C22B 58/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 24
出願番号 特願2014-533147 (P2014-533147)
出願日 平成25年9月2日(2013.9.2)
国際出願番号 PCT/JP2013/073500
国際公開番号 WO2014/034925
国際公開日 平成26年3月6日(2014.3.6)
優先権出願番号 2012191071
優先日 平成24年8月31日(2012.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年8月2日(2016.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
発明者または考案者 【氏名】明石 孝也
個別代理人の代理人 【識別番号】100114890、【弁理士】、【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
【識別番号】100116403、【弁理士】、【氏名又は名称】前川 純一
【識別番号】100135633、【弁理士】、【氏名又は名称】二宮 浩康
【識別番号】100162880、【弁理士】、【氏名又は名称】上島 類
審査官 【審査官】荒木 英則
参考文献・文献 特表2010-528180(JP,A)
特開2002-348622(JP,A)
特開平3-229831(JP,A)
特開2000-273558(JP,A)
特開2001-097716(JP,A)
中国特許出願公開第101407864(CN,A)
調査した分野 C22B 7/00
C22B 5/00- 5/12
C22B 26/00-26/10
C22B 41/00
C22B 58/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とする工程と、
前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を前記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する工程と
を有する金属化合物の濃縮方法。
【請求項2】
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程を蒸発部で行い、
前記気体金属化合物を前記蒸発部から捕集部に移送する工程をさらに有し、
前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程を捕集部で行う
請求項1に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項3】
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において、前記第1固体金属化合物と固体還元剤との混合物中、還元性ガス雰囲気中、または還元性ガス雰囲気における前記第1固体金属化合物と固体還元剤との混合物中で前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする
請求項1または2に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項4】
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を加熱する
請求項1~3のいずれかに記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項5】
前記金属がガリウムであり、
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を900℃以上となるように加熱する
請求項4に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項6】
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物を還元して気体GaOとし、
前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程において前記気体GaOを酸化して固体Gaとする
請求項5に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項7】
前記金属がインジウムであり、
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を600℃以上となるように加熱する
請求項4に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項8】
前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物を還元して気体InOとし、
前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程において前記気体InOを酸化して固体Inとする
請求項7に記載の金属化合物の濃縮方法。
【請求項9】
反応管と、
前記反応管内に設けられており、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物が収容され、加熱により前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物を生成する蒸発部と、
前記反応管内に設けられており、前記気体金属化合物が移送され、前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を捕集基板に捕集する捕集部と、
前記蒸発部において前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、前記捕集部において前記気体金属化合物を酸化して前記第1金属含有率より高い第2金属含有率で前記第2固体金属化合物を捕集する温度プロファイルとなるように前記反応管の内部を加熱する、反応管の外周部に設けられたヒーターと
を有する金属化合物の濃縮装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属化合物の濃縮方法に関し、特に、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、またはセシウムである金属化合物の混合物から各化合物の濃度を高める金属化合物の濃縮方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガリウムは、CIGS型薄膜太陽光パネルや発光ダイオード(LED)などに用いられる重要な元素である。
【0003】
ガリウムは、地殻中に広く分布しているが、ガリウムをリッチに含有する鉱石は存在せず、工業的な製造方法は以下に述べるバイヤー法が一般的である。
バイヤー液からガリウムを得る方法として、例えば、バイヤー液に二酸化炭素を吹き込むことによってガリウムとアルミニウムを共沈させてガリウムの濃縮物を得て、これを水酸化ナトリウムに溶解して電解し金属ガリウムを得る方法、また、水銀電極を用いて直接バイヤー液を電解しアマルガムとして得る方法が知られている。
例えば、非特許文献1には、バイヤー液からガリウムを直接電析する方法が開示されている。
【0004】
また、例えば、鉱山から採掘される鉱石中からボーキサイト、セン亜鉛鉱あるいはスズ石などからアルミニウム、亜鉛またはスズなどの金属あるいは化合物を製造する過程において、ガリウムを含有する副生成物を生じることが多い。このため、上記の副産物を資源としてガリウムを採取することが検討されている。
【0005】
例えば、塩化第二スズ中に含まれるガリウムの分離濃縮法が特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の方法は湿式であることから、大量の鉱石を処理する場合に大量の廃液が発生するという不利益がある。
【0006】
また、例えば、乾式でガリウムを含む酸化物から金属ガリウムを回収する方法が特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献3には、ガリウム含有廃棄物からのガリウム回収技術が提案されている。
【0008】
特許文献2及び3に記載の方法は乾式であり、特許文献1に記載の方法のように大量の廃液が発生するというデメリットはないが、特許文献2に記載の方法は、既に相当に高いガリウム濃度を有する混合物あるいは化合物から、さらに純度の高いガリウムを得ようとするものであり、ガリウムを微量に含有する鉱石から一定の濃度にまでガリウム濃度を濃縮する本発明の技術とは全く異なるものである。特許文献3に記載の方法では、塩素は塩素化を起こさせるものとして添加され、排ガスから有毒な塩素ガスを除去する必要があるため、装置上の問題を有している。
【0009】
また、特許文献4及び5には、金属ガリウムから高濃度ガリウム酸化物を生成する方法が開示されている。
【0010】
ガリウムは、今後ますます供給量が不足すると予想され、鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを分離あるいは濃縮する技術の開発が求められている。
インジウムについても同様の状況であり、インジウムを微量に含有する混合物からインジウムを分離あるいは濃縮する技術の開発が求められている。
【0011】
特許文献6には、揮発性の放射性物質を含む放射性廃棄物を加熱して、放射性物質を気化させて分離する放射性廃棄物の処理方法及び装置が開示されている。
特許文献7には、ウラン窒化物を主成分とする使用済燃料からウランを窒化物の形態で回収する使用済燃料の処理方法が開示されている。
特許文献8には、テルル原料を真空溶解して高純度テルルを製造する方法が開示されている。
特許文献9には、スクラップ合金中に含まれる元素のうち少なくとも1種の金属元素を金属酸化物として昇華させて捕集し、残余の金属元素と分離させるスクラップ合金から有価物を回収する方法が開示されている。
特許文献10には、ゲルマニウム含有固形物と塩化水素を接触させて四塩化ゲルマニウムを生成して回収する、ゲルマニウム回収方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開昭53-103998号公報
【特許文献2】特開2002-348622号公報
【特許文献3】特開昭64-75633号公報
【特許文献4】特開昭51-126997号公報
【特許文献5】特開昭50-119795号公報
【特許文献6】特開平10-206594号公報
【特許文献7】特開平11-248880号公報
【特許文献8】特開平10-324933号公報
【特許文献9】特開昭61-6101号公報
【特許文献10】特開2001-58823号公報
【0013】

【非特許文献1】バイヤー液からのガリウムの直接電析の試み、水野博文ら、北海道大学工学部研究報告 第152号(平成2年)、第31~46ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする課題は、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを一定の濃度にまで濃縮することが難しいことである。
上記の問題はガリウムに限らず、インジウム、ゲルマニウム、テルル、セシウムの各元素を微量に含有する混合物から各元素を一定の濃度にまで濃縮することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の金属化合物の濃縮方法は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とする工程と、前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を前記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する工程とを有する。
【0016】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する。
【0017】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程を蒸発部で行い、前記気体金属化合物を前記蒸発部から捕集部に移送する工程をさらに有し、前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程を捕集部で行う。
【0018】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において、前記第1固体金属化合物と固体還元剤との混合物中、還元性ガス雰囲気中、または還元性ガス雰囲気における前記第1固体金属化合物と固体還元剤との混合物中で前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする。
【0019】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を加熱する。
【0020】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記金属がガリウムであり、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を900℃以上となるように加熱する。
【0021】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物を還元して気体GaOとし、前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程において前記気体GaOを酸化して固体Gaとする。
【0022】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記金属がインジウムであり、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物の混合物を600℃以上となるように加熱する。
【0023】
上記の本発明の金属化合物の濃縮方法は、好適には、前記第1固体金属化合物を還元して前記気体金属化合物とする工程において前記第1固体金属化合物を還元して気体InOとし、前記気体金属化合物を酸化して前記第2固体金属化合物とする工程において前記気体InOを酸化して固体Inとする。
【0024】
本発明の金属化合物の濃縮装置は、反応管と、前記反応管内に設けられており、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物が収容され、加熱により前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物を生成する蒸発部と、前記反応管内に設けられており、前記気体金属化合物が移送され、前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を捕集基板に捕集する捕集部と、前記蒸発部において前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、前記捕集部において前記気体金属化合物を酸化して前記第1金属含有率より高い第2金属含有率で前記第2固体金属化合物を捕集する温度プロファイルとなるように前記反応管の内部を加熱する、反応管の外周部に設けられたヒーターとを有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを一定の濃度にまで容易に濃縮することができる。
また、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、インジウムを微量に含有する混合物からインジウムを一定の濃度にまで容易に濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
【図2】図2は本発明の第2実施形態に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
【図3】図3は本発明の第3実施形態に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
【図4】図4は本発明の第3実施形態の変形例に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
【図5】図5は本発明の第3実施形態の変形例に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
【図6】図6(a)及び(b)は本発明の第1実施例に係る反応管位置に対する温度プロファイルを示すグラフである。
【図7】図7は本発明の第1実施例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
【図8】図8は本発明の第1実施例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)から得た捕集物中の元素含有率の熱処理温度依存性を示すグラフである。
【図9】図9(a)は本発明の第2実施例に係る捕集基板の模式平面図であり、図9(b)及び(c)はX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
【図10】図10は本発明の第3実施例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
【図11】図11は比較例に係る装置の模式構成図である。
【図12】図12は比較例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の金属化合物の濃縮装置であるガリウム化合物の濃縮方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。

【0028】
<第1実施形態>
[ガリウム化合物の濃縮装置の構成]
図1は本実施形態に係る元素のガリウム化合物の濃縮装置の模式構成図である。
例えば、反応管10の上部開口部が上部栓11で塞がれており、上部栓11を貫通する上部ガラス管12が設けられている。
例えば、反応管10の下部開口部が下部栓13で塞がれており、下部栓13を貫通する下部ガラス管14が設けられている。

【0029】
例えば、反応管10の外周部に、個別に温度制御が可能であり、反応管10の内部が所望の温度プロファイルとなるように加熱する第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17が設けられている。また、例えば反応管10の側面における温度をモニターする第1熱電対15a、第2熱電対16a及び第3熱電対17aが設けられている。ここでは、代表させて3個の熱電対を示しているが、より多数個の熱電対を設けてもよい。

【0030】
例えば、反応管10の内部に、蒸発ガス誘導管である第1タンマン管20が設けられている。第1タンマン管20の上端は開口されて反応管10の内部の空間と連通している。また、第1タンマン管20の下端は閉じられているが、第1タンマン管20の底部にノズル20aが開口されている。

【0031】
例えば、第1タンマン管20の内部に、第2タンマン管21が設けられている。第2タンマン管21の上端は開口されて第1タンマン管20の内部の空間と連通しており、第2タンマン管21の下端は閉じられている。

【0032】
例えば、第1タンマン管20のノズル20a部分の下部に、第1タンマン管20と所定の間隙をもって第3タンマン管22が設けられている。第3タンマン管22の上端は開口されて反応管10の内部の空間と連通している。また、第3タンマン管22の下端は閉じられているが、第3タンマン管22の底部近傍にタンマン管排気口22aが開口されている。

【0033】
例えば、第3タンマン管22の内部に、タンマン管からなる基板台23が設けられている。基板台23上に、アルミナ基板などの捕集基板23aが保持される。捕集基板23aを構成する材料は、後述の理由から、安定化ジルコニア、ガドリニアド-プセリア、ジルコニア-セリア固溶体などを用いることもできる。

【0034】
上記の構成の第2タンマン管21の内部には、第1ガリウム含有率の固体ガリウム化合物の混合物が収容される。第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17により所定の温度に加熱されると、固体ガリウム化合物の混合物中の固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される。第2タンマン管21の内部を蒸発部30と称する。

【0035】
また、上記で生成された気体ガリウム化合物が捕集基板23a近傍において酸化されて固体ガリウム化合物が生成され、生成された固体ガリウム化合物が捕集基板23a上に捕集される。捕集基板23a近傍を捕集部31と称する。

【0036】
[ガリウム化合物の濃縮方法]
図1の構成のガリウム化合物の濃縮装置を用いて、以下のようにガリウム化合物を濃縮する。
例えば、第2タンマン管21の内部に第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物を収容する。第1固体ガリウム化合物の混合物としては、例えば鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品の混合物を用いることができる。
また、例えば、上部ガラス管12から、窒素(N)などのキャリアガスG1を所定の流量で流入する。キャリアガスG1は、第1タンマン管20の内部及び外部を流れる。

【0037】
ここで、例えば、第1固体ガリウム化合物の混合物を第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物とする。
あるいは、上記のキャリアガスG1に還元性ガスを混合し、反応管10内を還元性ガス雰囲気とする。
あるいは、第1固体ガリウム化合物の混合物を第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物とし、さらに、上記のキャリアガスG1に還元性ガスを混合し、反応管10内を還元性ガス雰囲気とする。
上記の固体還元剤として、例えば、活性炭やグラファイトなどの炭素、廃材木、及び廃プラスチックなどを用いることができる。
また、還元性ガスとして、例えば、水素、一酸化炭素、石油類の燃焼ガス、廃材木の燃焼ガス、及び廃プラスチックの燃焼ガスなどを用いることができる。
以下の本実施形態においては、還元剤を代表して活性炭を用いて説明するが、これに限らず、上記の活性炭以外の固体還元剤、還元性ガスあるいはその両者を用いることができる。

【0038】
ここで、例えば、第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17により、第2タンマン管21の内部を所定の温度プロファイルとなるように加熱する。加熱により、蒸発部30において、第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物中、還元性ガス雰囲気中、または還元性ガス雰囲気における第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物中で第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物である蒸発ガスG2が生成される。キャリアガスG1と蒸発ガスG2とのガリウム含有混合ガスG3が、ノズル20aから捕集部31へと移送される。

【0039】
上記の固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応においては、例えば下記の化学式(1)で示されるように、第1固体ガリウム化合物であるGaが還元剤である活性炭(C)と反応して気体ガリウム化合物であるGaOと一酸化炭素(CO)が生成される。

【0040】
例えば、捕集部31では、ノズル20aからガリウム含有混合ガスG3が移送され、また、第1タンマン管20と第3タンマン管22の間隙からキャリアガスG1が流入する。ガリウム含有混合ガスG3中の気体ガリウム化合物を酸化して第2固体ガリウム化合物とし、該第2固体ガリウム化合物を第1ガリウム含有率より高い第2ガリウム含有率で捕集基板23a上に捕集する。

【0041】
上記の気体ガリウム化合物が酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成される反応においては、例えば下記の化学式(2)で示されるように、気体ガリウム化合物であるGaOがガリウム含有混合ガスG3あるいはキャリアガスG1中に含まれる酸素(O)、水蒸気等の酸化性ガスと反応して第2固体ガリウム化合物であるGaが生成される。
化学式(1)及び(2)で示す反応では、第1固体ガリウム化合物と第2ガリウム化合物が同じ組成のGaであるが、互いに異なる組成のガリウム化合物であってもよい。

【0042】
【化1】
JP0006192645B2_000002t.gif

【0043】
上記の本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法において、第1固体ガリウム化合物を還元して気体ガリウム化合物とする工程においては、第1固体ガリウム化合物の混合物を900℃以上となるように加熱することが好ましい。
ここで、第1固体ガリウム化合物を還元して気体ガリウム化合物とする工程(蒸発部30)は、例えば、還元により生成されるガリウム化合物の蒸気圧が10-2atm(1kPa)以上となる温度及び酸素分圧となる条件とする。
900℃未満では、上記の化学式(1)で示す還元反応が十分に進行しない可能性がある。
熱力学的計算によれば、上記の化学式(1)の反応において、GaOが生成される温度は900℃以上となる。
また、気体ガリウム化合物を酸化して第2固体ガリウム化合物とする工程(捕集部31)は、例えば、酸化により生成されるガリウム化合物の蒸気圧が、蒸発部におけるガリウム化合物の蒸気圧の1/10以下となる温度及び酸素分圧となる条件とする。
上記のように第1固体ガリウム化合物の混合物を900℃以上となるように加熱するには、例えば、図1の構成のガリウム化合物の濃縮装置において、第1ヒーターをオフ(加熱なし)、第2ヒーターを1150℃、第3ヒーターを800~1150℃に設定する。
電気炉の劣化を抑制するため、各ヒーターの設定温度上限を1150℃程度とするが、反応管の耐熱性が高ければこれ以上に高めることができる。
また、加熱温度を高くすると気体のケイ素成分(SiO(g)など)も生成されてケイ素化合物が捕集される可能性が高まるので、ケイ素成分を生成しない程度の温度に設定することが好ましい。

【0044】
上記の一酸化炭素(CO)、ガリウム含有混合ガスG3の未反応成分及びキャリアガスG1は、タンマン管排気口22aを通じて下部ガラス管14から排ガスG4として排出される。

【0045】
上述のように、本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法においては、ガリウム微量含有原料に還元剤である活性炭を混合し、高温で還元させることによりガリウム成分のGaO(g)蒸気を分離し、これを酸化させてGa(s)として捕集する。

【0046】
従来のバイヤー液からのガリウムの回収法はいずれも溶液を用いる湿式法であるが、本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法は、溶液を用いない、従って廃液を生じない乾式精錬である。
本実施形態では、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品からガリウムを濃縮することができる。

【0047】
従来産業上利用を検討されることがなかった、10~1000ppm程度の濃度の低含有率のガリウム混合物から、産業上利用しやすい5重量%を超える高含有率としてガリウムを分離、捕集することができる。

【0048】
特許文献2に記載の方法は、金属ガリウムとして回収する発明であり、ガリウムを回収する下部トラップにおいて、金属ガリウムが安定となるような低い酸素分圧を維持する必要がある。このためには、上下トラップにおいてリークの無い完全に密閉された精巧な装置設計が不可欠であり、これが実用上の大きな障害となりうる。
一方、本実施形態では、低酸素雰囲気下における酸化ガリウム(主にGaO)の高い蒸気圧を利用している点で大きな相違がある。従って、まず蒸発部周辺において金属ガリウムが安定となるような低い酸素分圧を維持する必要はない。また、ガリウム捕集部においては酸化雰囲気にしている。よって、上記のような実用上の障害は無い。

【0049】
また、引用文献2の方法は、ガリウムを含む酸化物を金属ガリウムへの還元を利用して、ガリウムの回収を試みているため、ガリウム含有酸化部中に「酸化物の生成自由エネルギーの高い元素を実質的に含まない」ことが必要である。
一方、本実施形態では、低酸素雰囲気下における酸化ガリウム(主にGaO)の高い蒸気圧を利用している点で大きな相違がある。従って、Feのような「酸化物の生成自由エネルギーの高い元素」含んでいても回収可能である。また、後述の実施例に示すように、Feを8.87重量%含有する鉱石Iにおいてガリウム化合物の濃縮を成功させている。

【0050】
特許文献3の方法では、塩素は塩素化を起こさせるものとして添加されている。塩素を用いるプロセスでは、排ガスから有毒な塩素ガスを除去する必要がある。また、装置の部材が塩素により激しく腐食されることが装置設計上の問題となるため、実施例では耐食性に優れる石英製の容器が用いられている。
さらに、特許文献3の方法では、塩素化容器内に高沸点塩化物が残留しているため、これらを濾別するプロセスも必要である。

【0051】
一方、本実施形態では、低酸素雰囲気下における酸化ガリウム(主にGaO)の高い蒸気圧を利用し、酸化物Gaとして回収している点で大きな相違がある。よって、上記のような実用上の障害は無い。

【0052】
また、特許文献4及び5の金属ガリウムから高濃度ガリウム酸化物を生成する方法は、原料が金属ガリウムであることが必要であるので、本実施形態のようなガリウム化合物の濃縮には適用できない。
本実施形態では、例えば50ppm(0.005重量%)程度の微量のガリウム化合物からの濃縮に適用できる。

【0053】
上記のように、本実施形態によれば、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを一定の濃度にまで、上記の従来技術の不利益を抑制して、容易に濃縮することができる。
例えば、本実施形態によりある程度の濃度にまでガリウム化合物を濃縮し、得られた生成物について、特許文献1~3の方法でさらに濃縮することも可能である。

【0054】
図1に示すガリウム化合物の濃縮装置における捕集基板23aは、酸化物イオン導電性材料あるいは酸素吸蔵能を有する材料で構成されていると、上記の化学式(2)の反応を促進するため好ましい。
酸化物イオン導電性を有する材料の場合、捕集基板23a内を酸化物イオンが移動することにより、捕集基板23aの捕集面に酸素を供給することができる。また、酸素吸蔵能を有する材料の場合、捕集基板23a内に吸蔵された酸素を捕集面に供給することができる。
上記の酸化物イオン導電性材料あるいは酸素吸蔵能を有する材料としては、例えば、安定化ジルコニア、ガドリニアド-プセリア、ジルコニア-セリア固溶体などが挙げられる。

【0055】
上記の本実施形態においては、上記の化学式(1)及び(2)で示される反応によりガリウム化合物を濃縮する方法及び装置について説明したが、ガリウム化合物に限らない。金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元することで気体金属化合物となり、得られた気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物となる化学反応が可能な金属元素の化合物に適用でき、具体的には、ガリウムの他に、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用可能である。

【0056】
即ち、本実施形態に係る金属化合物の濃縮方法は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、得られた気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する。

【0057】
インジウム化合物の濃縮方法及び装置においては、例えば下記の化学式(3)で示されるように、第1固体インジウム化合物であるInが還元剤である活性炭(C)と反応して気体インジウム化合物であるInOと一酸化炭素(CO)が生成され、さらに下記の化学式(4)で示されるように、気体インジウム化合物であるInOが酸素(O)等の酸化性ガスと反応して第2固体インジウム化合物であるInが生成される。

【0058】
【化2】
JP0006192645B2_000003t.gif
第1固体インジウム化合物を還元して気体ガリウム化合物とする工程(蒸発部30)は、熱力学的計算によれば、上記の化学式(3)の反応において、InOが生成される温度は700℃以上となる。

【0059】
ゲルマニウム化合物の濃縮方法及び装置においては、例えば下記の化学式(5)で示されるように、第1固体ゲルマニウム化合物であるGeOが還元剤である活性炭(C)と反応して気体ゲルマニウム化合物であるGeOと一酸化炭素(CO)が生成され、さらに下記の化学式(6)で示されるように、気体ゲルマニウム化合物であるGeOが酸素(O)等の酸化性ガスと反応して第2固体ゲルマニウム化合物であるGeOが生成される。

【0060】
【化3】
JP0006192645B2_000004t.gif
第1固体ゲルマニウム化合物を還元して気体ゲルマニウム化合物とする工程(蒸発部30)は、熱力学的計算によれば、上記の化学式(5)の反応において、GeOが生成される温度は700℃以上となる。

【0061】
テルル化合物の濃縮方法及び装置においては、例えば下記の化学式(7)で示されるように、第1固体テルル化合物であるTeOが還元剤である活性炭(C)と反応して気体テルル化合物であるTeと一酸化炭素(CO)が生成され、さらに下記の化学式(8)で示されるように、気体テルル化合物であるTeが酸素(O)等の酸化性ガスと反応して第2固体テルル化合物であるTeOが生成される。

【0062】
【化4】
JP0006192645B2_000005t.gif
第1固体テルル化合物を還元して気体テルル化合物とする工程(蒸発部30)は、熱力学的計算によれば、上記の化学式(7)の反応において、Teが生成される温度は200℃以上となる。

【0063】
セシウム化合物の濃縮方法及び装置においては、例えば下記の化学式(9)で示されるように、第1固体セシウム化合物であるCsが還元剤である活性炭(C)と反応して気体セシウム化合物であるCsOと一酸化炭素(CO)が生成され、さらに下記の化学式(10)で示されるように、気体セシウム化合物であるCsOが酸素(O)等の酸化性ガスと反応して第2固体セシウム化合物であるCsが生成される。

【0064】
【化5】
JP0006192645B2_000006t.gif
第1固体セシウム化合物を還元して気体セシウム化合物とする工程(蒸発部30)は、熱力学的計算によれば、上記の化学式(9)の反応において、CsOが生成される温度は室温以上となる。

【0065】
インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用する場合、本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法及び装置についての説明と同様にして行うことができる。

【0066】
<第2実施形態>
[ガリウム化合物の濃縮装置の構成]
図2は本実施形態に係るガリウム化合物の濃縮装置の模式構成図である。
例えば、第1反応管10aの上部開口部が第1上部栓11aで塞がれており、第1上部栓11aを貫通する酸化ガス導入用の第1上部ガラス管12aが設けられている。また、第1上部栓11aを貫通して第2反応管24が設けられている。第2反応管24の上部開口部が第2上部栓11bで塞がれており、第2上部栓11bを貫通するキャリアガス導入用の第2上部ガラス管12bが設けられている。
例えば、第1反応管10aの下部開口部が下部栓13で塞がれており、下部栓13を貫通する下部ガラス管14が設けられている。

【0067】
例えば、第1反応管10aの外周部に、個別に温度制御が可能であり、第2反応管24の内部が所望の温度プロファイルとなるように加熱する第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17が設けられている。また、例えば第1反応管10aの側面における温度をモニターする第1熱電対15a、第2熱電対16a及び第3熱電対17aが設けられている。

【0068】
例えば、第2反応管24の下端は閉じられているが、第2反応管24の底部にノズル24aが開口されている。また、例えば、第2反応管24の内部に、第1るつぼ25が設けられている。

【0069】
例えば、第2反応管24のノズル24a部分の下部に、第2反応管24と所定の間隙をもって第2るつぼ26が設けられている。第2るつぼ26の上端は開口されて第1反応管10aの内部の空間と連通している。

【0070】
上記の構成の第1るつぼ25の内部には、第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物が収容される。第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17により所定の温度に加熱されると、第1固体ガリウム化合物の混合物中の第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される。第1るつぼ25の内部を蒸発部30と称する。

【0071】
また、上記で生成された気体ガリウム化合物が第2るつぼ26内において酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成され、生成された第2固体ガリウム化合物が第2るつぼ26内に捕集される。第2るつぼ26内を捕集部31と称する。

【0072】
[ガリウム化合物の濃縮方法]
図2の構成のガリウム化合物の濃縮装置を用いて、以下のようにガリウム化合物を濃縮する。
例えば、第1るつぼ25の内部に第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物を収容する。第1固体ガリウム化合物の混合物としては、例えば鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品と、還元剤である活性炭などの炭素の混合物を用いることができる。
また、例えば、第1上部ガラス管12aから、窒素(N)などのキャリアガスと酸素(O)の混合ガスG5を所定の流量で流入する。
また、例えば、第2上部ガラス管12bから、窒素(N)などのキャリアガスと気体の水(HO)の混合ガスG6を所定の流量で流入する。

【0073】
ここで、例えば、第1固体ガリウム化合物の混合物を第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物とする。
あるいは、上記の混合ガスG5あるいは混合ガスG6などに還元性ガスを混合し、第2反応管24内を還元性ガス雰囲気とする。
あるいは、第1固体ガリウム化合物の混合物を第1固体ガリウム化合物と固体還元剤との混合物とし、さらに、上記の混合ガスG5あるいは混合ガスG6などに還元性ガスを混合し、第2反応管24内を還元性ガス雰囲気とする。
上記の固体還元剤として、例えば、活性炭やグラファイトなどの炭素、廃材木、及び廃プラスチックなどを用いることができる。
また、還元性ガスとして、例えば、水素、一酸化炭素、石油類の燃焼ガス、廃材木の燃焼ガス、及び廃プラスチックの燃焼ガスなどを用いることができる。
以下の本実施形態においては、還元剤を代表して活性炭を用いて説明するが、これに限らず、上記の活性炭以外の固体還元剤、還元性ガスあるいはその両者を用いることができる。

【0074】
ここで、例えば、第1ヒーター15、第2ヒーター16及び第3ヒーター17により、第1るつぼ25の内部を所定の温度プロファイルとなるように加熱する。加熱により、蒸発部30において、第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物中の固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物である蒸発ガスG7が生成される。混合ガスG6と蒸発ガスG7とのガリウム含有混合ガスG8が、ノズル24aから捕集部31へと移送される。

【0075】
上記の第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応においては、例えば上記の化学式(1)で示されるように、固体ガリウム化合物であるGaが還元剤である活性炭(C)と反応して気体ガリウム化合物であるGaOと一酸化炭素(CO)が生成される。

【0076】
例えば、捕集部31では、ノズル24aからガリウム含有混合ガスG8が移送され、また、第2反応管24と第2るつぼ26の間隙から混合ガスG5が流入する。ガリウム含有混合ガスG8中の気体ガリウム化合物を酸化して第2固体ガリウム化合物とし、該第2固体ガリウム化合物を第1ガリウム含有率より高い第2ガリウム含有率で第2るつぼ26内に捕集する。

【0077】
上記の気体ガリウム化合物が酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成される反応においては、例えば上記の化学式(2)で示されるように、気体ガリウム化合物であるGaOが混合ガスG5中に含まれる酸素(O)と反応して固体ガリウム化合物であるGaが生成される。
化学式(1)及び(2)で示す反応では、第1固体ガリウム化合物と第2ガリウム化合物が同じ組成のGaであるが、互いに異なる組成のガリウム化合物であってもよい。

【0078】
上記の本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法において、第1固体ガリウム化合物を還元して気体ガリウム化合物とする工程においては、第1固体ガリウム化合物の混合物を900℃以上となるように加熱することが好ましい。
900℃未満では、上記の化学式(1)で示す還元反応が十分に進行しない可能性がある。

【0079】
上記の一酸化炭素(CO)、ガリウム含有混合ガスG8の未反応成分及び混合ガスG5は、下部ガラス管14から排ガスG9として排出される。

【0080】
上述のように、本実施形態のガリウム化合物の濃縮方法においては、ガリウム微量含有原料に還元剤として炭素を混合し、高温で還元させることによりガリウム成分のGaO(g)蒸気を分離し、これを酸化させてGa(s)として捕集する。

【0081】
従来のバイヤー液からのガリウムの回収法はいずれも溶液を用いる湿式法であるが、本実施形態は溶液を用いない、従って廃液を生じない乾式精錬である。
上記から、本実施形態では、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品からガリウムを濃縮することができる。

【0082】
従来産業上利用を検討されることがなかった、10~1000ppm程度の濃度の低含有率のガリウム混合物から、産業上利用しやすい5重量%を超える高含有率としてガリウムを分離、捕集することができる。

【0083】
上記のように、本実施形態によれば、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを一定の濃度にまで、上記の従来技術の不利益を抑制して、容易に濃縮することができる。
例えば、本実施形態によりある程度の濃度にまでガリウム化合物を濃縮し、得られた生成物について、特許文献1~3の方法でさらに濃縮することも可能である。

【0084】
上記を除いては、第1実施形態と同様である。
上記の本実施形態においては、ガリウム化合物を濃縮する方法及び装置について説明したが、ガリウム化合物に限らず、第1実施形態と同様に、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用可能である。

【0085】
<第3実施形態>
[ガリウム化合物の濃縮装置の構成及び濃縮方法]
図3は本実施形態に係るガリウム化合物の濃縮装置の模式構成図である。
例えば、第1反応管10bの内部において、平板状の捕集基板40上に、下部に開口部が設けられた第2反応管41が、該開口部を捕集基板40の表面で塞ぐように配置して設けられている。
例えば、第2反応管41は、外部直流電源Bの正極を第2反応管41の外部表面に、負極を第2反応管41の内部表面に接続して電圧を印加することで、第2反応管41の内部を酸化物イオンが導電される材料で構成されている。上記のように電圧が印加されると、第2反応管41の上端近傍における内部に存在していた酸素が酸化物イオンとなって第2反応管41の内部表面から外部表面へ導電され、第2反応管41の上端近傍における外部表面で酸素となって放出される。即ち、第2反応管41は酸素ポンプとして機能し、第2反応管41の上端近傍における内部から酸素が除去される。
内部を酸化物イオンが導電される材料としては、例えば、安定化ジルコニア、アパタイト型ランタンシリケートなどを用いることができる。

【0086】
例えば、捕集基板40は、酸素透過性材料あるいは酸化物イオン-電子混合導電性材料で構成される。
酸素透過性材料は、例えば、第2反応管41が設けられた側の反対側における捕集基板40の表面から、第2反応管41が設けられた側の表面へ酸素を透過する。
酸化物イオン-電子混合導電性材料は、例えば、第2反応管41が設けられた側の反対側における捕集基板40の表面から第2反応管41が設けられた側の表面へ酸化物イオンを導電し、第2反応管41が設けられた側における捕集基板40の表面から第2反応管41が設けられた側の反対側の表面へ電子を導電し、酸化物イオンと電子を混合して導電することで実質的に第2反応管41が設けられた側の反対側における捕集基板40の表面から、第2反応管41が設けられた側の表面へ酸素を透過することができる。
酸素透過性材料あるいは酸化物イオン-電子混合導電性材料としては、例えば、安定化ジルコニア-金属複合材料、多孔質材料、ペロブスカイト形酸化物を用いることができる。

【0087】
例えば、第1反応管10bの外周部に、ヒーター18が設けられている。ヒーター18は、第2反応管41と捕集基板40で囲まれた空間が所望の温度プロファイルとなるように、区分されて個別に温度制御が可能な構成でもよい。また、例えば第2反応管41の側面における温度をモニターする熱電対が設けられていてもよい。

【0088】
第2反応管41と捕集基板40で囲われた空間に、るつぼ42が設けられている。
上記の構成のるつぼ42の内部には、第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物が収容される。
第2反応管41に電圧を印加して酸素ポンプとして機能させ、第2反応管41の上端近傍における内部に存在していた酸素を除去して還元雰囲気とし、ヒーター18により所定の温度に加熱することで、第1固体ガリウム化合物の混合物中の第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される。るつぼ42の内部を蒸発部30と称する。

【0089】
上記で生成された気体ガリウム化合物を含有するガスG10が、気体ガリウム化合物の濃度差によって生じるガスの流れに乗って捕集基板40の表面へと移送される。気体ガリウム化合物は捕集基板40の表面で、捕集基板40を透過した酸素により酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成され、生成された第2固体ガリウム化合物が第1ガリウム含有率より高い第2ガリウム含有率で捕集基板40の表面に捕集される。捕集基板4の表面を捕集部31と称する。

【0090】
例えば固体ガリウム化合物であるGaを還元して気体ガリウム化合物であるGaOを生成し、捕集基板40の表面で酸化して固体ガリウム化合物であるGaを生成して捕集する。

【0091】
上記のように、本実施形態によれば、廃液の発生量を抑制して鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品のような、ガリウムを微量に含有する混合物からガリウムを一定の濃度にまで、上記の従来技術の不利益を抑制して、容易に濃縮することができる。
例えば、本実施形態によりある程度の濃度にまでガリウム化合物を濃縮し、得られた生成物について、特許文献1~3の方法でさらに濃縮することも可能である。

【0092】
上記を除いては、第1実施形態と同様である。
上記の本実施形態においては、ガリウム化合物を濃縮する方法及び装置について説明したが、ガリウム化合物に限らず、第1実施形態と同様に、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用可能である。

【0093】
図4は本実施形態の変形例に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
図3に示す金属化合物の濃縮装置と同様に、例えば、第1反応管10bの内部において、平板状の捕集基板40上に、下部に開口部が設けられた第2反応管41が、該開口部を捕集基板40の表面で塞ぐように配置して設けられている。第1反応管10bの内部における捕集基板40の下部に、内部に第1ガリウム含有率の第1固体ガリウム化合物の混合物が収容されたるつぼ42が設けられている。第1反応管10bの上部開口部が上部栓11で塞がれており、上部栓11を貫通する上部ガラス管12が設けられ、下部開口部が下部栓13で塞がれており、下部栓13を貫通する下部ガラス管14が設けられている。
例えば、第2反応管41は、電圧が印加されると内部を酸化物イオンが導電される材料で構成される。外部直流電源Bの正極を第2反応管41の内部表面に、負極を第2反応管41の外部表面に接続して電圧が印加されると、第2反応管41は酸素ポンプとして機能し、第2反応管41の上端近傍における外部に存在していた酸素が酸化物イオンとなって第2反応管41の外部表面から内部表面へ導電され、第2反応管41の上端近傍における内部表面で酸素となり、第2反応管41の上端近傍における内部へ酸素が導入される。第2反応管41と捕集基板40で囲われた空間において、酸素が捕集基板40側へと移送される。
例えば、捕集基板40は酸素透過性材料で構成され、第2反応管41が設けられた側における捕集基板40の表面から、第2反応管41が設けられた側の反対側の表面へ酸素を透過する。あるいは、捕集基板40は酸化物イオン-電子混合導電性材料で構成され、第2反応管41が設けられた側における捕集基板40の表面から第2反応管41が設けられた側の反対側の表面へ酸化物イオンを導電し、逆方向に電子を導電し、酸化物イオンと電子を混合して導電することで実質的に酸素を透過することができる。
上部ガラス管12から第1反応管10b内に窒素(N)などのキャリアガスと気体の水(HO)の混合ガスG11を流入し、ヒーター18により所定の温度に加熱することで、蒸発部30であるるつぼ42内の第1固体ガリウム化合物の混合物中の第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成され、気体ガリウム化合物を含有するガスG12が捕集基板40の表面へと移送され、酸素ポンプとして機能する第2反応管41と、捕集基板40を透過した酸素により捕集基板40の表面で酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成され、生成された第2固体ガリウム化合物が第1ガリウム含有率より高い第2ガリウム含有率で捕集部31である捕集基板40の表面に捕集される。未反応成分を含む排ガスG13が下部ガラス管14から排出される。
上記を除いては、図3に示す金属化合物の濃縮装置と同様である。

【0094】
図5は本実施形態の変形例に係る金属化合物の濃縮装置の模式構成図である。
図3に示す金属化合物の濃縮装置において、捕集基板の第2反応管41が設けられた側の反対側の表面に、上部に開口部が設けられた第3反応管43が、該開口部を捕集基板40の表面で塞ぐように配置して設けられている。
第2反応管41と第3反応管43と同様に、電圧が印加されると内部を酸化物イオンが導電される材料で構成される。
外部直流電源B1の正極を第2反応管41の外部表面に、負極を第2反応管41の内部表面に接続して電圧を印加することで、第2反応管41は酸素ポンプとして機能し、第2反応管41の上端近傍における内部から酸素が除去される。酸素を除去して還元雰囲気とし、ヒーター18により所定の温度に加熱することで、蒸発部30であるるつぼ42内の第1固体ガリウム化合物の混合物中の第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される。生成された気体ガリウム化合物を含有するガスG10が、気体ガリウム化合物の濃度差によって生じるガスの流れに乗って捕集基板40の表面へと移送される。
一方、外部直流電源B2の正極を第3反応管43の内部表面に、負極を第3反応管43の外部表面に接続して電圧を印加することで、第3反応管43は酸素ポンプとして機能し、第3反応管43の下端近傍における内部へと酸素が導入される。第3反応管43と捕集基板40で囲われた空間において、酸素が捕集基板40側へと移送され、さらに捕集基板40を透過する。上記の気体ガリウム化合物は、捕集基板40を透過した酸素により捕集基板40の表面で酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成され、生成された第2固体ガリウム化合物が第1ガリウム含有率より高い第2ガリウム含有率で捕集部31である捕集基板40の表面に捕集される。
上記を除いては、図3に示す金属化合物の濃縮装置と同様である。

【0095】
上記の本実施形態においては、ガリウム化合物を濃縮する方法及び装置について説明したが、ガリウム化合物に限らず、第1実施形態と同様に、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用可能である。

【0096】
<第1実施例>
表1は、ガリウム化合物を含有する混合物である天然の鉱石Iの組成と、鉱石Iを模した模擬鉱石の酸化ガリウム(Ga)を除く部分の組成を示す。
模擬鉱石の酸化ガリウム(Ga)含有率は約1重量%であり、ガリウム(Ga)に換算すると0.74重量%である。また、鉱石Iのガリウム(Ga)含有率は50ppm(0.005重量%)である。
本実施例においては、第1実施形態に係るガリウム化合物の濃縮装置及び方法を用いて、上記の模擬鉱石を原料として、還元剤である活性炭を混合し、この混合粉末を縦型の3ゾーン式電気炉の中央部に、Al焼結体を3ゾーン式電気炉の下部に設置した。3ゾーン式電気炉の上部から下部にNガスを流しながら、中央部を1150℃に、下部を800℃~1150℃に加熱し、ガリウム化合物の濃縮を行った。

【0097】
【表1】
JP0006192645B2_000007t.gif

【0098】
図6(a)及び(b)は本実施例に係る反応管位置に対する温度プロファイルを示すグラフである。反応管位置は、反応管上端を0cmとして、上端からの距離Xで示す。
図6(a)は、第1ヒーターをオフ(加熱なし)、第2ヒーターを1150℃、第3ヒーターを900℃と設定したときの温度プロファイルである。
図6(b)は、第1ヒーターをオフ(加熱なし)、第2ヒーターを1150℃、第3ヒーターを1000℃と設定したときの温度プロファイルである。

【0099】
図6(a)及び(b)に示すように、反応管距離Xが15cm~40cm程度の領域において、1000℃を超える領域が得られ、また、反応管距離Xが10cm~45cm程度の領域において、900℃を超える領域が得られた。

【0100】
図7は、上記の模擬鉱石を原料としてガリウム化合物の濃縮を行い、得られた捕集物のX線光電子分光スペクトル(XPS)を測定した結果である。
横軸は1160eV~1110eV領域の束縛エネルギーEを示し、縦軸は光電子の強度I(相対値)を示す。図中、Ga(2p1/2)とGa(2p3/2)に対応する束縛エネルギーを破線で示している。
ここで、第1ヒーターをオフ(加熱なし)、第2ヒーターを1150℃とし、第3ヒーターの設定温度は、a:800℃、b:850℃、c:900℃、d:950℃、e:1000℃、f:1050℃、g:1100℃、h:1150℃と設定した。

【0101】
図7に示すように、第1ヒーターをオフ(加熱なし)、第2ヒーターを1150℃とし、第3ヒーターを800~1150℃として、XPSにGaに対応するピークが得られ、捕集物中にGa化合物が存在することが確認された。
上記の温度は、熱力学的計算による上記の化学式(1)の反応においてGaOが生成される温度である900℃以上と整合性のある温度であった。

【0102】
図8は本実施例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)から得た捕集物中の元素含有率の熱処理温度依存性を示すグラフである。
横軸は第3ヒーターの設定温度Tを示し、縦軸は各元素の含有率R(原子%)を示す。
第3ヒーターを1000℃にした時のAl焼結体である捕集基板の表面におけるGa成分の濃度が最も高いことがわかる。
そこで、実際の鉱石Iを用いて第3ヒーターを1000℃にしてガリウム化合物の濃縮を行うと、Al焼結体である捕集基板の表面における成分の濃度は、X線光電子分光法(XPS)により、O:65.6原子%,Al:18.9原子%,C:10.2原子%,Si:4.3原子%,Ga:1原子%,Ca:0.1原子%であった。
この分析結果に対するAl焼結体からの寄与を除去すると、O:65.3重量%、C:13.4重量%,Si:13.2重量%、Ga:7.6重量%、Ca:0.4重量%となり、ガリウムの濃度は金属成分中の35.8重量%となった。
上記のように、本実施例において、濃縮前のガリウム化合物のガリウム含有率50ppm(0.005重量%)の鉱石Iに対して、35.8重量%までガリウム含有率を高めることができた。

【0103】
<第2実施例>
図9(a)は本実施例に係る捕集基板の模式平面図である。
捕集基板として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板Saとアルミナ焼結体基板Sbをそれぞれ半円形板状に成型し、円板上に接合した基板を用い、ガリウム含有原料(SiO:32%,Al:12%,MgCO:16%,CaCO:12%,Fe:8%,Ga:20%)を原料とし、第1実施例と同様にして、中央部を1150℃に、下部を1000℃に加熱してガリウム化合物の濃縮を行い、捕集基板の相違によるガリウム化合物の濃縮に対する効果の差を調べた。
図9(b)はYSZからなる捕集基板上の捕集物のX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
図9(c)はアルミナ焼結体からなる捕集基板上の捕集物のX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
アルミナ焼結体からなる捕集基板の表面の捕集物のガリウム濃度は3.4原子%であったのに対して、YSZからなる捕集基板の表面の捕集物のガリウム濃度は9.8原子%であり、捕集基板としてアルミナ焼結体よりYSZを用いる方が、濃縮効果が高かった。これは、捕集基板から放出された酸素によってGaOが酸化されたためと考えられる。
捕集基板として、セリア-ジルコニア固溶体などの酸素吸蔵能を有する基板を用いた場合でも、上記と同様にガリウムの濃縮に対する効果が高くなった。

【0104】
<第3実施例>
本実施例においては、第1実施形態に係るガリウム化合物の濃縮装置及び方法を用いて、ITO粉末に還元剤である活性炭を混合し、この混合粉末を縦型の3ゾーン式電気炉の中央部に、Al焼結体を3ゾーン式電気炉の下部に設置した。3ゾーン式電気炉の上部から下部にNガスを流しながら、中央部を700℃に、下部を350℃に加熱し、インジウム化合物の濃縮を行った。
図10は本発明の第3実施例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)である。
図10において、酸素(O)は74.4原子%、炭素(C)は20.1原子%、シリコン(Si)は4.5重量%、インジウム(In)は1.0原子%で検出され、捕集物中にIn化合物が存在することが確認された。Snに対応するピークは検出されず、ITOからInを分離、回収できたことが確認された。上記において、シリコン(Si)の検出はガラスウールからの混入とみられる。
上記の温度は、熱力学的計算による上記の化学式(3)の反応においてInOが生成される温度である700℃以上と整合性のある温度であった。

【0105】
<比較例>
図11は比較例に係る装置の模式構成図である。
反応管110の上部開口部が上部栓111で塞がれており、反応管110の下部開口部が下部栓112で塞がれている。
反応管110の内部に、タンマン管120が設けられている。タンマン管120の上端は開口されて反応管110の内部の空間と連通している。また、タンマン管120の下端は閉じられている。
タンマン管120の内部に、タンマン管からなる基板台121が設けられている。基板台121上に、アルミナ基板などの捕集基板122が保持される。
上記の構成のタンマン管120の内部に固体ガリウム化合物の混合物が収容される。
反応管110の外周部に、反応管10の内部を加熱するヒーター150が設けられている。
ヒーター150により固体ガリウム化合物が加熱される。タンマン管120の内部を蒸発部130と称する。

【0106】
本比較例においては、上記の実施例に示す鉱石Iと還元剤であるグラファイトを1:1の重量比で混合し、この混合粉末を図11に示す装置の蒸発部に収容し、ヒーターを1000℃に加熱して2時間保持した。

【0107】
図12は比較例に係るX線光電子分光スペクトル(XPS)である。上記の鉱石Iと還元剤であるグラファイトの混合粉末を図11に示す装置の蒸発部に収容し、ヒーターを1000℃に加熱して2時間保持した後に、得られた捕集物のXPSを測定した結果であり、図12中aで示す。
横軸は1160eV~1110eV領域の束縛エネルギーEを示し、縦軸は光電子の強度I(相対値)を示す。図中、Ga(2p3/2)に対応する束縛エネルギーを破線で示している。
また、鉱石Iの粉末についてもXPSを測定した。得られた結果を図12中bで示す。

【0108】
図12中のaに示すように、本比較例に係るXPSにおいてGaに対応するピークが現れなかった。
また、図12中のbに示すように、鉱石Iの粉末のXPSにおいてGaに対応するピークが現れなかった。

【0109】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、セシウムの各金属の化合物の混合物は、鉱山から採掘される鉱石のほか、使用済み電子部品にも適用できる。
また、熱処理するためのヒーターは上記の実施形態においては3個に分離され、個々に温度制御できるヒーターを用いているが、1個のヒーターで処理を行ってもよく、また、3個以外の複数個のヒーターを用いる構成としてもよい。
本実施形態に示す化学反応式において酸素が消費されるが、これは上部ガラス管などから供給してもよく、また、反応管内に既存の成分を用いてもよい。
温度モニターは熱電対以外のモニター装置を用いてもよい。また、各ヒーターの温度制御は熱電対などからモニターした温度値をフィードバックして行ってもよい。
上記の実施形態においては還元剤として活性炭を用いたが、その他の還元剤を用いることも可能である。
本発明は、金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元することで気体金属化合物となり、得られた気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物となる化学反応が可能な金属元素の化合物に適用でき、具体的には、ガリウムの他に、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムの各化合物に適用可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
10…反応管、10a…第1反応管、10b…第1反応管、11…上部栓、11a…第1上部栓、11b…第2上部栓、12…上部ガラス管、12a…第1上部ガラス管、12b…第2上部ガラス管、13…下部栓、14…下部ガラス管、15…第1ヒーター、15a…第1熱電対、16…第2ヒーター、16a…第2熱電対、17…第3ヒーター、17a…第3熱電対、18…ヒーター、20…第1タンマン管、20a…ノズル、21…第2タンマン管、22…第3タンマン管、22a…タンマン管排気口、23…基板台、23a…捕集基板、24…第2反応管、24a…ノズル、25…第1るつぼ、26…第2るつぼ、30…蒸発部、31…捕集部、40…捕集基板、41…第2反応管、42…るつぼ、43…第3反応管、G1…キャリアガス、G2…蒸発ガス、G3…ガリウム含有混合ガス、G4…排ガス、G5…混合ガス、G6…混合ガス、G7…蒸発ガス、G8…ガリウム含有混合ガス、G9…排ガス、G10…気体ガリウム化合物を含有するガス、G11…キャリアガス、G12…気体ガリウム化合物を含有するガス、G13…排ガス、B,B1,B2…外部直流電源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11