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明細書 :ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶、その製造方法、結晶構造解析用試料の作製方法、及び有機化合物の分子構造決定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5969616号 (P5969616)
登録日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発行日 平成28年8月17日(2016.8.17)
発明の名称または考案の名称 ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶、その製造方法、結晶構造解析用試料の作製方法、及び有機化合物の分子構造決定方法
国際特許分類 C30B  29/54        (2006.01)
C30B   7/06        (2006.01)
C07D 307/92        (2006.01)
C07D 311/30        (2006.01)
C07D 401/14        (2006.01)
C07D 333/18        (2006.01)
C07C  13/18        (2006.01)
C07C  69/14        (2006.01)
C07C   9/15        (2006.01)
C07C  15/06        (2006.01)
C07C  43/04        (2006.01)
C07C 255/03        (2006.01)
C07C  19/041       (2006.01)
C07C  25/08        (2006.01)
C07C 255/50        (2006.01)
C07C  49/403       (2006.01)
C07C  13/47        (2006.01)
C07C  50/10        (2006.01)
C07C   7/152       (2006.01)
C07C   7/14        (2006.01)
C07C  17/392       (2006.01)
C07C  41/40        (2006.01)
C07C  46/10        (2006.01)
C07C  67/52        (2006.01)
C07C 253/32        (2006.01)
FI C30B 29/54
C30B 7/06
C07D 307/92
C07D 311/30
C07D 401/14
C07D 333/18
C07C 13/18
C07C 69/14
C07C 9/15
C07C 15/06
C07C 43/04 Z
C07C 255/03
C07C 19/041
C07C 25/08
C07C 255/50
C07C 49/403 Z
C07C 13/47
C07C 50/10
C07C 7/152
C07C 7/14
C07C 17/392
C07C 41/40
C07C 46/10
C07C 67/52
C07C 253/32
請求項の数または発明の数 26
全頁数 48
出願番号 特願2014-534207 (P2014-534207)
出願日 平成25年3月7日(2013.3.7)
国際出願番号 PCT/JP2013/056370
国際公開番号 WO2014/038220
国際公開日 平成26年3月13日(2014.3.13)
優先権出願番号 2012197911
2012270199
優先日 平成24年9月7日(2012.9.7)
平成24年12月11日(2012.12.11)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年2月2日(2015.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤田 誠
【氏名】猪熊 泰英
【氏名】吉岡 翔太
【氏名】有吉 絢子
個別代理人の代理人 【識別番号】100108419、【弁理士】、【氏名又は名称】大石 治仁
審査官 【審査官】今井 淳一
参考文献・文献 特開2006-188560(JP,A)
国際公開第2011/062260(WO,A1)
特開2008-247884(JP,A)
M. KAWANO et al.,Direct observation of crystalline-state guest exchange in coordination networks,Coordination Chemistry Reviews,2007年,Vol. 251,p. 2592-2605
調査した分野 C30B 29/54
C07C 7/14
C07C 7/152
C07C 9/15
C07C 13/18
C07C 13/47
C07C 15/06
C07C 17/392
C07C 19/041
C07C 25/08
C07C 41/40
C07C 43/04
C07C 46/10
C07C 49/403
C07C 50/10
C07C 67/52
C07C 69/14
C07C 253/32
C07C 255/03
C07C 255/50
C07D 307/92
C07D 311/30
C07D 333/18
C07D 401/14
C30B 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
式:[〔M(X)(L)]〔式中、Mは金属イオンを表し、Xは一価の陰イオンを表し、Lは、下記式(1)
【化1】
JP0005969616B2_000023t.gif
(式中、Arは、置換基を有していてもよい3価の芳香族基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、またはArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。Y~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。)で示される三座配位子を表し、nは任意の自然数を表す。〕で示される高分子金属錯体であって、
前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の、前記細孔及び中空内に、脂肪族炭化水素;脂環式炭化水素;エーテル類;エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素、並びにニトリル類からなる群から選ばれる少なくとも一種がゲスト化合物(A)として内包されてなり、
前記細孔及び中空内における、前記ゲスト化合物(A)の存在量が、前記細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物に対して60モル%以上であることを特徴とするゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項2】
前記ゲスト化合物(A)が、炭素数3~20の脂環式炭化水素またはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素である、請求項1に記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項3】
前記ゲスト化合物(A)が、炭素数3~20の飽和脂環式炭化水素である、請求項1又は2に記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項4】
前記高分子金属錯体の細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物の占有率が10%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項5】
前記金属イオンが、周期表第8~12族の金属のイオンであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項6】
前記金属イオンが、亜鉛(II)イオンまたはコバルト(II)イオンであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項7】
一辺が10~1000μmの、立方体または直方体形状を有するものである、請求項1~6のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【請求項8】
前記式(1)で示される三座配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む高分子金属錯体であって、前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の前記細孔及び中空内に、結晶化溶媒(ゲスト化合物(A)を除く、)が内包されてなる結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を、液体状のゲスト化合物(A)、または、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液中に浸漬させる工程を有する、請求項1~7のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法。
【請求項9】
高分子金属錯体結晶の細孔及び中空内に、分子構造を決定するための有機化合物の分子が規則性をもって配列されてなる結晶構造解析用試料の作製方法であって、
前記有機化合物を含む溶媒溶液に、請求項1~7のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程を有することを特徴とする、結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項10】
100μg以下の前記有機化合物を含む溶媒溶液に、式(2)
【数1】
JP0005969616B2_000024t.gif
(式中、bは溶媒溶液中の有機化合物の量を表し、aは前記高分子錯体結晶中のすべての細孔及び中空内を、比重1の物質で満たすと仮定したときに要する前記比重1の物質の量を表す。)
から算出されるA値が0.1~30となる量の、前記ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程を有することを特徴とする、請求項に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項11】
溶媒溶液中の有機化合物の濃度が、0.001~50μg/μLである、請求項9又は10に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項12】
有機化合物が、天然物由来の化合物または合成化合物中の不純物である、請求項9~11のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項13】
前記有機化合物を含む溶媒溶液に、ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程の後、前記溶媒を揮発させて、溶媒溶液を濃縮する工程を有することを特徴とする、請求項9~12のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項14】
溶媒の揮発速度が、0.1~1000μL/24時間である、請求項13に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項15】
溶媒を揮発させるときの温度が、0~180℃である、請求項14又は15に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項16】
前記有機化合物を含む溶媒溶液に、ゲスト化合物内包細孔及び中空性錯体高分子結晶を浸漬させる工程が、一粒のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を、有機化合物を含む溶媒溶液に浸漬させるものである、請求項11~15のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項17】
分子構造を決定する有機化合物を含む混合物を、液体クロマトグラフィーにより分離して、前記分子構造を決定する有機化合物の溶媒溶液を得るステップ(I)と、
前記ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を、ステップ(I)で得られた分子構造を決定する有機化合物の溶媒溶液に浸漬させた後、溶媒を緩和な条件下で揮発させて、前記溶媒溶液を濃縮するステップ(II)を有することを特徴とする、請求項11~16のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項18】
得られる結晶構造解析用試料が、管電圧が24kV、管電流が50mAで発生させたMoKα線(波長:0.71Å)を照射し、回折X線をCCD検出器で検出したときに、少なくとも1.5Åの分解能で分子構造を決定できるものである、請求項11~17のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【請求項19】
請求項11~18のいずれかに記載された方法により得られる結晶構造解析用試料の結晶構造解析を行うことにより、結晶構造解析用試料の細孔及び中空内に内包されている有機化合物の分子構造を決定する有機化合物の分子構造決定方法。
【請求項20】
式:[〔M(X)(L)]〔式中、Mは金属イオンを表し、Xは一価の陰イオンを表し、Lは、下記式(1)
【化2】
JP0005969616B2_000025t.gif
(式中、Arは、置換基を有していてもよい3価の芳香族基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、またはArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。Y~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。)で示される三座配位子を表し、nは任意の自然数を表す。〕で示される高分子金属錯体であって、
前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の、前記細孔及び中空内に、分子構造を決定する有機化合物の分子が規則性をもって配列されてなる結晶構造解析用試料を作製する装置であって、
容器本体と、容器を密閉可能な状態にできる蓋部と、気体分子が通過可能な開口部とを有し、
前記容器本体内部に前記有機化合物の有機溶媒溶液を収容し、前記有機溶媒溶液中に前記高分子錯体の単結晶を浸漬させ、前記開口部より前記有機溶媒を揮発除去させるものである、
結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項21】
前記開口部が、前記有機溶媒を、0.1~1000μL/24時間の揮発速度で揮発除去させるものである、
請求項20に記載の結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項22】
前記容器本体の底部が、先端が尖った形状を有することを特徴とする、請求項20又は21に記載の結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項23】
式:[〔M(X)(L)]〔式中、Mは金属イオンを表し、Xは一価の陰イオンを表し、Lは、下記式(1)
【化3】
JP0005969616B2_000026t.gif
(式中、Arは、置換基を有していてもよい3価の芳香族基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、またはArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。Y~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。)で示される三座配位子を表し、nは任意の自然数を表す。〕で示される高分子金属錯体であって、
前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の、前記細孔及び中空内に、分子構造を決定する有機化合物の分子が規則性をもって配列されてなる結晶構造解析用試料を作製する装置であって、
蓋部、容器本体及び気体分子が通過可能な開口部を有する密閉可能な容器と、前記蓋部に固定された結晶支持体とを備え、
前記結晶支持体の先端部が、前記高分子錯体の単結晶を固定し得るものであり、かつ、
前記容器を閉じたときに、前記結晶支持体の先端部が下向きに容器内部に収容されるものである、結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項24】
前記支持体又はその先端部が、そのまま結晶構造解析装置に取り付け可能なものである、請求項23に記載の結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項25】
前記容器本体内部に前記有機化合物の有機溶媒溶液を収容し、前記有機溶媒溶液中に、前記結晶支持体に固定された高分子錯体の単結晶を浸漬させ、前記開口部より前記有機溶媒を揮発除去させるものである、
請求項23又は24に記載の結晶構造解析用試料の作製装置。
【請求項26】
前記開口部が、前記有機溶媒を、0.1~1000μL/24時間の揮発速度で揮発除去させるものである、
請求項23~25のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の有機化合物の分子構造を決定する際に用いられる結晶構造解析用試料の作製材料として有用な、ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶及びその製造方法、このゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を用いる結晶構造解析用試料の作製方法、並びに、この方法によって得られた結晶構造解析用試料を用いる、有機化合物の分子構造決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋生物等に由来する微量の生理活性物質が農医薬資源等として期待されている(特許文献1、2)。このため、これらの微量の有機化合物の分子構造を、正確、かつ、効率よく決定することは、新規農医薬品の開発等において極めて重要になってきている。
また、農医薬品を製造する際は、安全性を高めるために、農医薬品やその原料に含まれる微量の不純物を正確に同定することが求められている。
同様に、電子部品の製造に用いる原材料についても、近年の電子部品の高性能化に伴い、微量の不純物を同定し、それを低減化することが望まれている。
このように、近年、多くの分野において、微量の有機化合物の分子構造を、正確、かつ、効率よく決定することが求められている。
【0003】
従来、有機化合物の分子構造を決定する方法として、単結晶X線構造解析法が知られている。単結晶X線構造解析法は、良質な単結晶を作製することができれば、有機化合物の分子構造を正確に決定することができるため、極めて有用な方法である。
【0004】
しかしながら、有機化合物が微量である場合、十分量の単結晶が得られないため、分子構造を決定する方法として、単結晶X線構造解析法を採用することが困難である。また、分子構造を決定する有機化合物が常温付近で液体である場合(すなわち、融点が室温以下の場合)等においては、単結晶を作製することが困難であった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-232738号公報
【特許文献2】特開2010-090141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、微量の有機化合物の分子構造を決定する際に有用な結晶構造解析用試料を作製することのできる、ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶及びその製造方法、結晶構造解析用試料の作製方法、並びに、この方法によって得られた結晶構造解析用試料を用いる、有機化合物の分子構造決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、三次元ネットワーク構造と、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔や中空を有する高分子金属錯体であって、前記細孔等内に、特定のゲスト化合物が一定量以上内包されてなるゲスト化合物内包高分子金属錯体を用いると、微量の有機化合物の分子構造を決定する際に用いられる結晶構造解析に適する試料を効率よく作製できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記〔1〕~〔8〕のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶、〔9〕のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法、〔10〕~〔18〕の結晶構造解析用試料の作製方法、及び、〔18〕の有機化合物の分子構造決定方法、が提供される。
【0009】
〔1〕配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む高分子金属錯体であって、前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の、前記細孔及び中空内に、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びニトリル類からなる群から選ばれる少なくとも一種がゲスト化合物(A)として内包されてなり、
前記細孔及び中空内における、前記ゲスト化合物(A)の存在量が、前記細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物に対して60モル%以上であることを特徴とするゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
〔2〕前記ゲスト化合物(A)が、炭素数3~20の脂環式炭化水素または炭素数6~10の芳香族炭化水素である、〔1〕に記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
〔3前記ゲスト化合物(A)が、炭素数3~20の飽和脂環式炭化水素である、〔1〕または〔2〕に記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
【0010】
〔4〕前記高分子金属錯体の細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物の占有率が10%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
〔5〕配位性部位を2つ以上有する配位子が、配位性部位を3つ以上有する有機配位子であり、中心金属としての金属イオンが、コバルトイオンまたは亜鉛イオンである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔6〕前記高分子金属錯体が、式:[〔M(X)(L)]〔式中、Mは金属イオンを表し、Xは一価の陰イオンを表し、Lは、下記式(1)
【0011】
【化1】
JP0005969616B2_000002t.gif

【0012】
(式中、Arは、置換基を有していてもよい3価の芳香族基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、またはArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。Y~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。)で示される三座配位子を表し、nは任意の自然数を表す。〕
で示される化合物である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
〔7〕前記金属イオンが、周期表第8~12族の金属のイオンであることを特徴とする、〔8〕前記金属イオンが、亜鉛(II)イオンまたはコバルト(II)イオンであることを特徴とする、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶〔9〕一辺が10~1000μmの、立方体または直方体形状を有するものである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶。
〔10〕配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む高分子金属錯体であって、前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空を有する高分子金属錯体の前記細孔及び中空内に、結晶化溶媒(ゲスト化合物(A)を除く、)が内包されてなる結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を、液体状のゲスト化合物(A)、または、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液中に浸漬させる工程を有する、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法。
【0013】
〔11〕高分子金属錯体結晶の細孔及び中空内に、分子構造を決定するための有機化合物の分子が規則性をもって配列されてなる結晶構造解析用試料の作製方法であって、
前記有機化合物を含む溶媒溶液に、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程を有することを特徴とする、結晶構造解析用試料の作製方法。
〔12〕100μg以下の前記有機化合物を含む溶媒溶液に、式(2)
【0014】
【数1】
JP0005969616B2_000003t.gif

【0015】
(式中、bは溶媒溶液中の有機化合物の量を表し、aは前記高分子錯体結晶中のすべての細孔及び中空内を、比重1の物質で満たすと仮定したときに要する前記比重1の物質の量を表す。)
から算出されるA値が0.1~30となる量の、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程を有することを特徴とする、〔11〕に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔13〕溶媒溶液中の有機化合物の濃度が、0.001~50μg/μLである、〔11〕または〔12〕に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔14〕有機化合物が、天然物由来の化合物または合成化合物中の不純物である、請求項11~13のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔15〕前記有機化合物を含む溶媒溶液に、ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程の後、前記溶媒を揮発させて、溶媒溶液を濃縮する工程を有することを特徴とする、〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔16〕溶媒の揮発速度が、0.1~1000μL/24時間である、〔15〕に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【0016】
〔17〕溶媒を揮発させるときの温度が、0~180℃である、〔14〕または〔15〕に記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔18〕前記有機化合物を含む溶媒溶液に、ゲスト化合物内包細孔及び中空性錯体高分子結晶を浸漬させる工程が、一粒のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を有機化合物を含む溶媒溶液に浸漬させるものである、〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔19〕分子構造を決定する有機化合物を含む混合物を、液体クロマトグラフィーにより分離して、前記分子構造を決定する有機化合物の溶媒溶液を得るステップ(I)と、
〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を、ステップ(I)で得られた分子構造を決定する有機化合物の溶媒溶液に浸漬させた後、溶媒を緩和な条件下で揮発させて、前記溶媒溶液を濃縮するステップ(II)を有することを特徴とする、〔11〕~〔18〕のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
【0017】
〔20〕得られる結晶構造解析用試料が、管電圧が24kV、管電流が50mAで発生させたMoKα線(波長:0.71Å)を照射し、回折X線をCCD検出器で検出したときに、少なくとも1.5Åの分解能で分子構造を決定できるものである、〔11〕~〔19〕のいずれかに記載の結晶構造解析用試料の作製方法。
〔21〕前記〔11〕~〔20〕のいずれかに記載された方法により得られる結晶構造解析用試料の結晶構造解析を行うことにより、結晶構造解析用試料の細孔及び中空内に内包されている有機化合物の分子構造を決定する有機化合物の分子構造決定方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶によれば、微量の有機化合物の分子構造を決定する際に有用な結晶構造解析用試料を効率よく作製することができる。
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法によれば、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を簡便に製造することができる。
本発明の結晶構造解析用試料の作製方法によれば、試料が微量であっても、有機化合物の分子構造を決定することができる結晶構造解析用試料を簡便に効率よく作製することができる。
本発明の有機化合物の分子構造決定方法によれば、試料が微量であっても、有機化合物の分子構造を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】高分子金属錯体の細孔が延在する方向を表す図である。
【図2】高分子金属錯体1の三次元ネットワーク構造を表す図である。
【図3】高分子金属錯体3の三次元ネットワーク構造を表す図である。
【図4】高分子金属錯体5の三次元ネットワーク構造を表す図である。
【図5】溶媒溶液を濃縮する際に用いる装置の一例を表す図である。
【図6】シクロへキサン内包高分子金属錯体結晶の顕微鏡写真図である。
【図7】実施例1において得られたシクロへキサン内包高分子金属錯体結晶を表す図である。
【図8】実施例1において得られたシクロへキサン内包高分子金属錯体の拡大図である。
【図9】実施例9において得られた、2-メチル-1,4-ナフトキノンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図10】実施例9において得られた、2-メチル-1,4-ナフトキノンを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図11】実施例10において得られた、4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図12】実施例10において得られた、4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図13】実施例11における回折像を表す図である。
【図14】実施例11において得られた、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図15】実施例11において得られた、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図16】実施例12で得られた、3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図17】実施例12において得られた、3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオンを接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図18】実施例13において得られた、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1ベンゾピラン-4-オンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図19】実施例13において得られた、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1ベンゾピラン-4-オンを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図20】実施例14において得られた、5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1ベンゾピラン-4-オンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図21】実施例14において得られた、5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1ベンゾピラン-4-オンを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図22】実施例16において得られた、2,2’-ビチオフェンを包接した高分子金属錯体を表す図である。
【図23】実施例16において得られた、2,2’-ビチオフェンを包接した高分子金属錯体の拡大図である。
【図24】比較例1で得られた高分子金属錯体を表す図である。
【図25】比較例1で得られた高分子金属錯体の拡大図である。
【図26】ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶上に、液状物である、分子構造を決定する有機化合物を、スポイドから滴下し、結晶構造解析用試料を作製する概念図である。
【図27】実施例17で得られた結晶構造解析用試料(イソプレン内包高分子金属錯体)の拡大図である。
【図28】実施例18で得られた結晶構造解析用試料(シクロヘキサノン内包高分子錯体)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、1)ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶、2)ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法、3)結晶構造解析用試料の作製方法、及び、4)有機化合物の分子構造決定方法、に項分けして詳細に説明する。

【0021】
1)ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶は、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む高分子金属錯体であって、前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔及び中空(以下、「細孔等」ということがある。)を有する高分子金属錯体の前記細孔及び中空内に、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びニトリル類からなる群から選ばれる少なくとも一種がゲスト化合物(A)として内包されてなり、前記細孔及び中空内における、前記ゲスト化合物(A)の存在量が、前記細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物に対して60モル%以上であることを特徴とする。

【0022】
(i)高分子金属錯体
本発明に用いる高分子金属錯体は、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む三次元ネットワーク構造を有するものである。
ここで、「三次元ネットワーク構造」とは、配位子(配位性部位を2つ以上有する配位子及びその他の単座配位子)と金属イオンが結合して形成された構造単位が、三次元的に繰り返されてなる網状の構造をいう。

【0023】
〔配位子〕
配位性部位を2つ以上有する配位子(以下、「多座配位子」ということがある。)は、金属イオンに配位して、前記三次元ネットワーク構造を形成し得るものである限り特に限定されず、公知の多座配位子を利用することができる。
ここで、「配位性部位」とは、配位結合が可能な非共有電子対を有する、配位子中の原子又は原子団をいう。例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子;ニトロ基、アミノ基、シアノ基、カルボキシル基等の原子団;等が挙げられる。なかでも、窒素原子又は窒素原子を含む原子団が好ましい。

【0024】
また、多座配位子としては、配位子の平面性が高く、強固な三次元ネットワーク構造が形成され易いことから、芳香環を有するものが好ましい。
さらに、比較的大きな細孔等を有する高分子金属錯体を容易に得ることができる観点から、多座配位子としては、配位性部位を2つ以上有する配位子が好ましく、配位性部位を3つ有する配位子(以下、「三座配位子」ということがある。)がより好ましく、3つの配位性部位の非共有電子対(軌道)が擬同一平面上に存在し、かつ、3つの配位性部位が、三座配位子の中心部に対して等間隔放射状に配置されているものがさらに好ましい。

【0025】
ここで、「擬同一平面上に存在する」とは、各非共有電子対が、同一平面上に存在する状態の他、若干ずれた平面、例えば、基準となる平面に対して、20°以下で交差するような平面に存在する状態も含む意味である。
また、「3つの配位性部位が、三座配位子の中心部に対して等間隔放射状に配置されている」とは、配位子の中心部から等間隔で放射状に延びる線上に、3つの配位性部位が前記中心部から略等距離に配置されている状態をいう。

【0026】
三座配位子としては、例えば、式(1)

【0027】
【化2】
JP0005969616B2_000004t.gif

【0028】
(式中、Arは、置換基を有していてもよい3価の芳香族基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、又はArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。Y~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。)で示される配位子が挙げられる。

【0029】
式(1)中、Arは3価の芳香族基を表す。
Arを構成する炭素原子の数は、通常3~22、好ましくは3~13、より好ましくは3~6である。

【0030】
Arとしては、6員環の芳香環1つからなる単環構造を有する3価の芳香族基や、6員環の芳香環が3個縮合してなる縮合環構造を有する3価の芳香族基が挙げられる。

【0031】
6員環の芳香環1つからなる単環構造を有する3価の芳香族基としては、下記式(2a)~式(2d)で示される基が挙げられる。また、6員環の芳香環が3個縮合してなる縮合環構造を有する3価の芳香族基としては、下記式(2e)で示される基が挙げられる。なお、式(2a)~式(2e)において、「*」は、それぞれ、X~Xとの結合位置を表す。

【0032】
【化3】
JP0005969616B2_000005t.gif

【0033】
【化4】
JP0005969616B2_000006t.gif

【0034】
Arは、式(2a)、式(2c)~式(2e)で示される芳香族基の任意の位置に置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、t-ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。これらの中でも、式(2a) 又は(2b)で示される芳香族基が好ましく、式(2b)で示される芳香族基が特に好ましい。

【0035】
~Xは、それぞれ独立に、2価の有機基、又はArとY~Yとを直接結ぶ単結合を表す。

【0036】
2価の有機基としては、Arとともに、π電子共役系を構成し得るものが好ましい。X~Xで表される2価の有機基がπ電子共役系を構成することで、式(1)で示される三座配位子の平面性が向上し、より強固な三次元ネットワーク構造が形成され易くなる。
2価の有機基を構成する炭素原子の数は、2~18が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい。

【0037】
2価の有機基としては、炭素数2~10の2価の不飽和脂肪族基、6員芳香環1つからなる単環構造を有する2価の有機基、6員芳香環が2~4個縮合してなる縮合環構造を有する2価の有機基、アミド基〔-C(=O)-NH-〕、エステル基〔-C(=O)-O-〕、これらの2価の有機基の2種以上の組み合わせ等が挙げられる。

【0038】
炭素数2~10の2価の不飽和脂肪族基としては、ビニレン基、アセチレン基(エチニレン基)等が挙げられる。
6員環の芳香環1つからなる単環構造を有する2価の有機基としては、1,4-フェニレン基等が挙げられる。
6員環の芳香環が2~4個縮合してなる縮合環構造を有する2価の有機基としては、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、アントラセン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
これらの2価の有機基の2種以上の組み合わせとしては、下記のものが挙げられる。

【0039】
【化5】
JP0005969616B2_000007t.gif

【0040】
これらの芳香環は、環内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
また、2価の有機基は、置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、Arの置換基として先に示したものと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、X~Xで表される2価の有機基としては、下記のものが好ましい。

【0041】
【化6】
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【0042】
~Yは、それぞれ独立に、配位性部位を有する1価の有機基を表す。
~Yで表される有機基としては、Ar、X~Xとともに、π電子共役系を構成し得るものが好ましい。
~Yで表される有機基がπ電子共役系を構成することで、式(1)で示される三座配位子の平面性が向上し、強固な三次元ネットワーク構造が形成され易くなる。
~Yを構成する炭素原子の数は、5~11が好ましく、5~7がより好ましい。

【0043】
~Yとしては、下記式(3a)~式(3f)で示される有機基が挙げられる。なお、式(3a)~式(3f)において、「*」は、X~Xとの結合位置を表す。

【0044】
【化7】
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【0045】
~Yは、式(3a)~式(3f)で示される有機基の任意の位置に、置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、Arの置換基として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、式(3a)で表される基が特に好ましい。

【0046】
式(1)で示される三座配位子中の、Ar、X~X、Y~Yを適宜選択することで、高分子金属錯体の細孔等の大きさを調節することができる。この方法を利用することで、分子構造を決定する有機化合物を包接し得る大きさの細孔等を有する高分子金属錯体の単結晶を効率よく得ることができる。

【0047】
式(1)で示される三座配位子としては、強固な三次元ネットワーク構造が形成され易いことから、平面性及び対称性が高く、かつ、π共役系が配位子全体に広がっているものが好ましい。このような三座配位子としては、下記式(4a)~式(4f)で示される配位子が挙げられる。

【0048】
【化8】
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【0049】
これらの中でも、式(1)で示される三座配位子としては、上記式(4a)で示される2,4,6-トリス(4-ピリジル)-1,3,5-トリアジン(TPT)が特に好ましい。

【0050】
〔金属イオン〕
中心金属としての金属イオンは、前記多座配位子と配位結合を形成して、三次元ネットワーク構造を形成し得るものである限り特に限定されず、公知の金属イオンが挙げられる。なかでも、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、銀イオン等の周期表第8~12族の金属のイオンが好ましく、2価の、周期表第8~12族の金属イオンがより好ましい。なかでも、大きな細孔等を有する高分子金属錯体が得られ易いことから、亜鉛(II)イオン、コバルト(II)イオンが特に好ましい。

【0051】
〔高分子金属錯体を構成するその他の成分〕
本発明に用いる高分子金属錯体は、通常、中性の多座配位子の他に、対イオンとなる単座配位子が配位することで安定化されている。
かかる単座配位子としては、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、チオシアン酸イオン(SCN)等の1価の陰イオンが挙げられる。

【0052】
また、本発明に用いる高分子金属錯体は、溶媒;アンモニア、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、エチレンジアミン等の電気的に中性の配位性化合物;後述する骨格形成性芳香族化合物;を含むものであってもよい。

【0053】
「骨格形成性芳香族化合物」とは、配位結合以外の結合又は相互作用によって、三次元ネットワーク構造中に拘束され、ホスト分子(ゲスト化合物を取り込むことができる化合物)の骨格の一部を構成する芳香族化合物をいう。高分子金属錯体が骨格形成性芳香族化合物を含むことで、その三次元ネットワーク構造がより強固になり易く、分子構造を決定する有機化合物の分子を包接した後であっても、三次元ネットワーク構造がより安定化する場合がある。

【0054】
骨格形成性芳香族化合物としては、縮合多環芳香族化合物が挙げられる。例えば、下記式(5a)~式(5i)で示されるものが挙げられる。

【0055】
【化9】
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【0056】
〔高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造〕
本発明に用いる高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造は、前記多座配位子が前記金属イオンに配位して形成されたものであり、その内部に、三次元的に規則正しく整列した細孔等を有する。

【0057】
ここで、「三次元的に規則正しく整列した細孔等」とは、単結晶X線構造解析によって、細孔等を確認することができる程度に乱れなく、規則的に整列している細孔等をいう。
「細孔」は、後述する図3(a)、(b)に示すごとく、三次元ネットワーク構造の間に形成された空間A、Bや、図4(a)に示すごとく、球状錯体構造(図中、紫色の部分)の繰り返し単位間に形成された空間(図中、白い部分)等のように、高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造の間に形成された空間を意味する。また、「中空」とは、図4(a)に示す球状錯体構造の繰り返し単位(赤線で囲まれた部分、図4(b)参照)のごとく、球状錯体構造が有する内部空間をいう。
なお、本明細書において、「三次元ネットワーク構造内の細孔」、「高分子金属錯体の細孔」、「単結晶中の細孔」はいずれも同じ意味を表す。

【0058】
三次元ネットワーク構造は、上記の構造的特徴を有し、かつ、前記細孔等が、分子構造を決定する有機化合物の分子を包接し得る大きさのものである限り、特に限定されない。
一般的に、配位子の中心から、配位性部位までの距離が長い多座配位子を用いると、相対的に細孔等が大きい高分子金属錯体が得られ、配位子の中心から、配位性部位までの距離が短い多座配位子を用いると、相対的に細孔等が小さい高分子金属錯体が得られる。

【0059】
細孔の大きさは、細孔が延在する方向に対して、最も垂直に近い結晶面と平行な面(以下、平行面ということがある。)における細孔の内接円(以下、単に「細孔の内接円」ということがある。)の直径と相関がある。

【0060】
「細孔が延在する方向」は、以下の方法により決定することができる。
すなわち、まず、対象の細孔を横切る適当な方向の結晶面X(A面、B面、C面かそれぞれの対角面など)を選ぶ。そして、結晶面X上に存在し、かつ、ホスト分子を構成する原子を、ファンデルワールス半径を用いて表すことで、結晶面Xを切断面とする細孔の断面図を描く。同様に、当該結晶面Xと一単位胞ずれた結晶面Yを切断面とする細孔の断面図を描く。次に、それぞれの結晶面における細孔の断面形状の中心間を、立体図において直線(一点鎖線)で結ぶ(図1参照)。このとき得られる直線の方向が、細孔が延在する方向である。

【0061】
また、「細孔の内接円の直径」は、以下の方法により求めることができる。
すなわち、まず、上記と同様の方法により、前記平行面を切断面とする細孔の断面図を描く。次に、その断面図において細孔の内接円を描き、その直径を測定した後、得られた測定値を実際のスケールに換算することで、実際の細孔の内接円の直径を求めることができる。
さらに、前記平行面を、一単位胞分、徐々に平行移動させながら、各平行面における細孔の内接円の直径を測定することで、最も狭い部分の内接円の直径と、最も広い部分の内接円の直径が求められる。

【0062】
本発明に用いる高分子金属錯体の細孔の内接円の直径は、2~30Åが好ましく、3~10Åがより好ましい。

【0063】
また、細孔の形状が真円とは大きく異なる場合、上記平行面における細孔の内接楕円の短径及び長径から、高分子金属錯体のゲスト分子包接能を予測することが好ましい。
本発明に用いる高分子金属錯体の細孔の内接楕円の長径は、2~30Åが好ましく、3~10Åがより好ましい。また、高分子金属錯体の細孔の内接楕円の短径は、2~30Åが好ましく、3~10Åがより好ましい。

【0064】
本発明に用いる高分子金属錯体の細孔容積は、論文Acta Crystallogr.A46,194-201(1990)に記載の手法により求めることができる。すなわち、計算プログラム(PLATON SQUEEZE PROGRAM)により算出したSolvent Accessible Void(単位格子内の空隙体積)をもとに「単結晶の体積×単位胞における空隙率」を用いて計算することができる。
本発明に用いる高分子金属錯体の細孔容積(一粒の単結晶中のすべての細孔の容積)は、1×10-7~0.1mmが好ましく、1×10-5~1×10-3mmがより好ましい。

【0065】
また、上述のように、高分子金属錯体が球状錯体構造の繰り返し単位からなる場合、各球状錯体構造は内部空間(中空)を有する。中空の大きさも、細孔容積と同様に、論文Acta Crystallogr.A46,194-201(1990)に記載の手法により求めることができる

【0066】
本発明に用いる高分子金属錯体は、ゲスト化合物をその細孔等内に取り込んだ後においても結晶性を失わず、かつ、比較的大きな細孔等を有するものが好ましい。

【0067】
これらの高分子金属錯体は、その細孔等内に、高分子金属錯体の合成時に用いた有機溶媒(以下、「結晶化溶媒」ということがある。)を内包している。
この結晶化溶媒がゲスト化合物(A)であれば、得られる高分子金属錯体は、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体に相当する。
結晶化溶媒がゲスト化合物(A)でない場合には、後述するように、結晶化溶媒を、ゲスト化合物(A)にゲスト置換することにより、結晶構造解析用試料の作製に好適に用いることができるゲスト化合物内包高分子金属錯体とすることができる。

【0068】
本発明に用いる高分子金属錯体は、一般的には、配位性部位を2つ以上有する配位子の第1の溶媒溶液と、金属塩を含む第2の溶媒溶液とを、前記配位子と金属イオンとが所定割合となるように混合することで得ることができる。例えば、配位子として、前記式(1)で示される三座配位子を用い、金属塩として、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛等の亜鉛(II)の塩;チオシアン酸コバルト等のコバルト(II)の塩等を用いることができる。なお、高分子金属錯体の合成方法の詳細は後述する。

【0069】
本発明に用いる高分子金属錯体の具体例としては、三座配位子として、前記式(4a)で示されるTPTを用いることにより得られる、下記式(6a)~式(6d)で示される高分子金属錯体が挙げられる。これらの高分子金属錯体は、本発明に用いる高分子金属錯体として特に適している。

【0070】
【化10】
JP0005969616B2_000012t.gif

【0071】
上記式(6a)~式(6d)中、「solv」は、細孔等に内包された結晶化溶媒を表し、「SA」は、骨格形成性芳香族化合物を表し、a、bは任意の自然数を表す。
以下、これらの高分子金属錯体について詳しく説明する。なお、以下の説明中、配位子や溶媒分子を以下のように省略することがある。

【0072】
PhNO:ニトロベンゼン
TPH:トリフェニレン
PER:ペリレン
MeOH:メタノール
DCB:1,2-ジクロロベンゼン

【0073】
(1)[(ZnI(TPT)(solv) (6a)
式(6a)で示される高分子金属錯体としては、特開2008-214584号公報、J.Am.Chem.Soc.2004,v.126,pp16292-16293に記載の[(ZnI(TPT)(PhNO5.5(高分子金属錯体1)が挙げられる。

【0074】
高分子金属錯体1の三次元ネットワーク構造を図2(a)~(d)に示す。
高分子金属錯体1の三次元ネットワーク構造は、2つの三次元ネットワーク構造1aと1bから構成される。三次元ネットワーク構造1a、1b中、各亜鉛(II)イオンには、2つのTPTのピリジル基と2つのヨウ化物イオンが四配位四面体型で配位している。そして、TPTによって、この亜鉛(II)イオンを含む構造同士が三次元的に結ばれることで、それぞれの三次元ネットワーク構造が形成されている〔図2(a)〕。

【0075】
三次元ネットワーク構造1a、1bは、それぞれ、最も短い閉鎖環状連鎖構造として、TPT10分子とZn10原子とからなる閉鎖環状連鎖構造を有している〔図2(b)〕。
これらの三次元ネットワーク構造1a、1bは、(010)軸に沿ったピッチが15Åの螺旋状のヘキサゴナル三次元ネットワーク構造とみなすことができる〔図2(c)〕。

【0076】
三次元ネットワーク構造1a、1bは、同じ亜鉛(II)イオンを共有することはなく、互いに独立している。そして、同一の空間を共有するように互いに入り組んだ入れ子状に相互貫通することで、複合化三次元ネットワーク構造を構成する。
この複合化三次元ネットワーク構造を有する高分子金属錯体1は、規則的に整列した1種類の細孔を有している〔図2(d)〕。

【0077】
高分子金属錯体1の空隙率は、50%である。
高分子金属錯体1の細孔の内接円の直径は、5~8Åである。

【0078】
(2)[(ZnBr(TPT)(solv) (6b)
式(6b)で示される高分子金属錯体としては、特開2008-214318号公報に記載の[(ZnBr(TPT)(PhNO(HO)](高分子金属錯体2)が挙げられる。

【0079】
高分子金属錯体2は、(ZnI)が(ZnBr)に置き換わっている点を除き、高分子金属錯体1の三次元ネットワーク構造と同様の構造を有している。
高分子金属錯体2の細孔の形状や大きさ、及び空隙率は、高分子金属錯体1のものとほぼ同じである。

【0080】
(3)[(ZnI(TPT)(SA)(solv))] (6c)
式(6c)で示される高分子金属錯体としては、特開2006-188560号公報に記載の[(ZnI(TPT)(TPH)(PhNO3.9(MeOH)1.8(高分子金属錯体3)や、[(ZnI(TPT)(PER)(PhNO(高分子金属錯体4)が挙げられる。

【0081】
高分子金属錯体3の三次元ネットワーク構造を図3(a)~(c)に示す。
高分子金属錯体3の三次元ネットワーク構造は、2つの三次元ネットワーク構造1Aと1Bから構成される。三次元ネットワーク構造1A、1B中、各亜鉛(II)イオンには、2つのヨウ化物イオンと2つのTPTのピリジル基が四配位四面体型で配位している。そして、TPTによって、この亜鉛(II)イオンを含む構造同士が三次元的に結ばれることで、それぞれの三次元ネットワーク構造が形成されている。
三次元ネットワーク構造1A、1Bは、同じ亜鉛(II)イオンを共有することはなく、互いに独立している。そして、同一の空間を共有するように互いに入り組んだ入れ子状に相互貫通することで、複合化三次元ネットワーク構造を構成する。

【0082】
高分子金属錯体3中で、トリフェニレン分子(2)は、3次元ネットワーク構造1Aのトリス(4-ピリジル)トリアジン〔TPT(1a)〕のπ平面と、3次元ネットワーク構造1Bのトリス(4-ピリジル)トリアジン〔TPT(1b)〕のπ平面との間に強固に挿入(インターカレート)されている〔図3(b)〕。このとき、トリフェニレン分子は、TPT(1a)及びTPT(1b)間のπ-π相互作用によって安定化され、高分子金属錯体3の主骨格の一部として機能している。なお、図3(b)は、図3(a)中の線で囲った部分を横から見たときの図である。

【0083】
高分子金属錯体3には、その三次元ネットワーク構造内に規則的に配列した2種の細孔(細孔A及びB)が存在する〔図3(c)〕。細孔A及びBは、TPTとTPHが交互に積み重なった積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に形成されている。
細孔Aは、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数のTPT及びTPHのπ平面の側縁に存在する水素原子でほぼ取り囲まれている。
一方、細孔Bは、略三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する3方の面のうち、2つはTPTのπ平面に取り囲まれ、もう一つは積み重なった無数のTPT及びTPHのπ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。
これら細孔A及びBは、若干蛇行した細長い形状を有している。

【0084】
高分子金属錯体3の細孔の空隙率は、28%である。
高分子金属錯体3の細孔Aの内接円の直径は、5~8Åである。
高分子金属錯体3の細孔Bの内接円の直径は、5~8Åである。

【0085】
高分子金属錯体4は、高分子金属錯体3のトリフェニレン分子の代わりに、ペリレン分子が2つのTPTの間に挿入されている点を除き、高分子金属錯体3と同様の骨格構造を有する。
高分子金属錯体4の細孔の形状や大きさ、及び空隙率は、高分子金属錯体3のものとほぼ同じである。

【0086】
(4)[(Co(NCS)(TPT)(solv) (6d)
式(6d)で示される高分子金属錯体としては、WO2011/062260号公報に記載の[(Co(NCS)(TPT)(DCB)25(MeOH)(高分子金属錯体5)が挙げられる。

【0087】
高分子金属錯体5の三次元ネットワーク構造を図4(a)に示す。
高分子金属錯体5は、構造単位として、コバルトイオン6個と、TPT4個とから構成される〔Co(TPT)〕構造を有する。この構造単位は八面体型の立体形状を有し、該八面体の6つの頂点にコバルトイオンが配置されている〔図4(b)〕。各コバルト(II)イオンには、4つのTPTのピリジル基と2つのチオシアン酸イオンとが六配位八面体型で配位している。なお、図4(b)は、図4(a)中の線で囲った部分を拡大した図である。
そして、この〔Co(TPT)〕構造の各頂点に位置するコバルトイオンを共有しながら、〔Co(TPT)〕構造が三次元的に連結することで、〔Co(TPT)〕構造間に細孔が形成される〔図4(c)〕。
また、前記構造単位は、内部に中空を有している。
高分子金属錯体5の空隙率は、78%である。この値は、細孔等の体積をあわせて算出した値である。
高分子金属錯体5の細孔の内接円の直径は、10~18Åである。

【0088】
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶としては、細孔等内に最終的に取り込みを希望する有機化合物の取り込みを阻害せず、細孔等内に内包するゲスト化合物(A)が有機化合物とゲスト交換し、有機化合物内包高分子金属錯体結晶となるものが好ましい。

【0089】
かかる観点から、好ましいゲスト化合物(A)としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びニトリル類からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。

【0090】
ゲスト化合物(A)としての脂肪族炭化水素としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、テトラデカン、オクタデカン等の、鎖状又は分枝状の炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素;分子内に1又は2以上の、二重結合又は三重結合を有する、鎖状又は分枝型の炭素数2~20の不飽和脂肪族炭化水素;等が挙げられる。

【0091】
脂環式炭化水素としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロウンデカン、デカリン等の炭素数3~20の飽和脂環式炭化水素;これらの分子内に1又は2以上の、二重結合又は三重結合を有する炭素数3~20の不飽和脂環式炭化水素;等が挙げられる。

【0092】
エーテル類としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。

【0093】
エステル類としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、乳酸エチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ペンチル、吉草酸ペンチル等が挙げられる。

【0094】
芳香族炭化水素としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。

【0095】
ハロゲン化炭化水素としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、例えば、前記脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素として例示した化合物であって、分子内の炭素原子の1又は2以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等ハロゲン原子で置換された化合物を例示することができる。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、トリフルオロメタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等が挙げられる。

【0096】
ニトリル類としては、前記細孔等に入り得るものであれば特に制約はなく、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。

【0097】
これらの中でも、有機化合物とゲスト交換し易く、高品質な結晶構造解析用試料を容易に作製できる観点から、炭素数3~20の脂環式炭化水素、及び炭素数6~10の芳香族炭化水素が好ましく、炭素数5~10の脂環式炭化水素、及び炭素数6~10の芳香族炭化水素がより好ましく、シクロへキサン、及びトルエンがさらに好ましく、シクロヘキサンが特に好ましい。

【0098】
高分子金属錯体中の前記ゲスト化合物(A)の存在量は、前記細孔等内に内包されているすべてのゲスト化合物に対して60モル%以上、好ましくは75%モル以上、より好ましくは90モル%以上である。
前記ゲスト化合物(A)の存在量が、前記細孔等内に内包されているすべてのゲスト化合物に対して60モル%未満では、目的とする結晶構造解析用試料を容易に作製できないおそれがある。

【0099】
また、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶においては、前記高分子金属錯体の細孔及び中空内に内包されているすべてのゲスト化合物の占有率は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
前記占有率が10%未満のものは、X線単結晶構造解析においてゲスト化合物の構造を決定することが不可能あるいは非常に困難であり、ここから得られる構造データも化学的な信頼度が低い。

【0100】
占有率は、単結晶構造解析により得られる値であり、理想的な包接状態におけるゲスト化合物の量を100%としたときの、単結晶中に実際に存在するゲスト化合物の量を表すものである。

【0101】
2)ゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶の製造方法は、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む高分子金属錯体であって、前記配位子が前記金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造を有し、かつ、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔等を有する高分子金属錯体の前記細孔等内に、結晶化溶媒(ゲスト化合物(A)を除く、以下にて同じ。)が内包されてなる結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を、液体状のゲスト化合物(A)、又は、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液中に浸漬させる工程を有することを特徴とする。

【0102】
すなわち、本発明の製造方法は、(i)結晶化溶媒中で高分子金属錯体結晶を合成して結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を得、次いで、(ii)得られた結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を、液体状のゲスト化合物(A)、又は、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液中に浸漬させ、細孔等内の結晶化溶媒を、ゲスト化合物(A)に置換する工程を有する。

【0103】
(i)結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶の合成
本発明に用いる結晶化溶媒内包高分子金属錯体は、多座配位子及び金属イオン含有化合物等を反応させる公知の方法によって合成することができる。例えば、多座配位子の第1の溶媒の溶媒溶液に、金属イオン含有化合物の第2の溶媒の溶媒溶液を加え、このまま、0~70℃で、数時間から数日間、静置する方法が挙げられる。

【0104】
金属イオン含有化合物は、特に制限されない。例えば、式:MXで示される化合物が挙げられる。ここで、Mは金属イオンを表し、Xは対イオンを表し、nはMの価数を表す。

【0105】
前記Xの具体例としては、F、Cl、Br、I、SCN、NO、ClO、BF、SbF、PF、AsF、CHCO等が挙げられる。

【0106】
前記第1及び第2の溶媒としては、多座配位子等を溶解するものが好ましい。
具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;N,N-ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;水;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。

【0107】
比較的大きな高分子金属錯体の単結晶を得たい場合には、前記第1の溶媒と、第2の溶媒として、互いに相溶性を有さない(すなわち、2層分離する)ものを用いることが好ましい。具体的には、第1の溶媒として、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、又はこれらとメタノールの混合溶媒を用い、第2の溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いるのが好ましい。
上述したように、上記高分子金属錯体1~5については、それぞれ、上記文献に記載された方法にしたがって合成することができる。

【0108】
(ii)ゲスト化合物による置換
得られる高分子金属錯体は、三次元ネットワーク構造を有し、該三次元ネットワーク構造内に三次元的に規則正しく整列した細孔等を有するが、その細孔等内には、結晶化溶媒が内包されている。
この結晶化溶媒内包高分子金属錯体結晶を、液体状のゲスト化合物(A)、又は、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液中に浸漬させて静置し、細孔等内の結晶化溶媒を、ゲスト化合物(A)と置換することによって、目的とするゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を得ることができる。

【0109】
ゲスト化合物(A)としては、前記と同様のものが挙げられる。
用いる不活性溶媒としては、ゲスト化合物(A)と相溶性があり、高分子金属錯体に対して、不活性、すなわち、ゲスト化合物(A)よりも高分子金属錯体の細孔等内に置換されにくいものであれば特に制約はない。不活性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
なお、ゲスト化合物(A)が液体状であれば、そのまま用いることができる。

【0110】
用いる液体状のゲスト化合物(A)、又は、ゲスト化合物(A)を含む不活性溶媒溶液(以下、「ゲスト化合物(A)の溶液」と略記することがある。)の使用量は、高分子金属錯体結晶100mgに対し、通常1~100ml、好ましくは5~30mlである。

【0111】
浸漬温度は、特に限定されないが、通常0~70℃、好ましくは10~70℃、より好ましくは20~60℃である。
浸漬時間は、細孔等内の60%以上をゲスト化合物(A)が占めるようになるまでの時間であり、通常6時間以上、好ましくは12時間から10日、より好ましくは1日~8日である。
また、この間は、置換を促進するために、1日おき程度に、浸漬液(ゲスト化合物(A)の溶液)の上澄み液を傾斜法により除去し、除去した分、新たな浸漬液を追加するのが好ましい。

【0112】
細孔等内にゲスト化合物(A)が置換内包されたことは、元素分析、X線結晶構造解析等により確認することができる。

【0113】
以上のようにして得られるゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶は、細孔等内のゲスト化合物(A)が容易に微量の有機化合物試料とゲスト置換するものであるため、後述する結晶構造解析用試料の作製材料として有用である。
以上のようにして得られるゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶は、他の様々なゲスト化合物を包接する場合にゲスト交換を阻害することなく効率的な取り込みを行う事を可能にする。ゲスト交換における試料は、結晶性固体である必要が無く、液体、気体、非晶質固体などあらゆるものが適用可能である。包接に必要なゲスト化合物の重量は、5μg以下でよく、数十ngの量でも十分に良好な単結晶X線構造解析のデータが得られる。本発明を用いた単結晶X線構造解析では、分子の絶対配置を含めた立体構造が正確に決定できる。また、熱分解や加溶媒分解を起こしやすい不安定な化合物に対しても、加熱したり、種々の溶媒あるいは緩衝溶液等に溶解させたりすることなく立体構造(絶対構造)が得られるようになった。

【0114】
本発明のゲスト化合物高分子金属錯体結晶は、一辺が、10~1000μm、好ましくは60~200μmの立方体又は直方体形状を有する単結晶であるのが好ましい。かかる形状を有する高分子金属錯体の単結晶を用いることで、良質の結晶構造解析用試料が得られ易くなる。

【0115】
本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶は、管電圧が24kV、管電流が50mAで発生させたMoKα線(波長:0.71Å)を照射し、回折X線をCCD検出器で検出したときに、少なくとも1.5Åの分解能で分子構造を決定できるものが好ましい。かかる特性を有するゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶によれば、良質の結晶構造解析用試料を得ることができる。

【0116】
3)結晶構造解析用試料の作製方法
本発明の結晶構造解析用試料の作製方法は、高分子金属錯体結晶の細孔等内に、分子構造を決定するための有機化合物の分子が規則性をもって配列されてなる結晶構造解析用試料の作製方法であって、前記有機化合物を含む溶媒溶液に、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる工程を有することを特徴とする。

【0117】
〔分子構造を決定する有機化合物〕
分子構造を決定する有機化合物(以下、「有機化合物(α)」ということがある。)は、高分子金属錯体の細孔等内に入り得る大きさのものである限り、特に限定されない。
有機化合物(α)が低分子化合物の場合、その分子量は、通常、20~3000、好ましくは100~500である。
また、有機化合物(α)がポリエチレン等のような、繰り返し単位を有する鎖状高分子化合物の場合、その分子量は、通常、10~10、好ましくは10~10である。さらに、有機化合物(α)は、室温付近(25℃前後)において、固体であっても、液体であってもよい。

【0118】
本発明においては、あらかじめ、核磁気共鳴分光法、質量分析法、元素分析等により、有機化合物(α)の大きさをある程度把握し、その大きさに合わせて、用いるゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を適宜選択することが好ましい。

【0119】
有機化合物(α)が、合成化合物(天然物由来の化合物や農医薬品、合成高分子等)に含まれる不純物の場合、液体クロマトグラフィー等の公知の精製方法によって有機化合物(α)の純度を高めてから、本発明の方法によって、結晶構造解析用試料を作製することが好ましい。液体クロマトグラフィーを用いる場合には、目的物を含む溶離液を、そのまま後述する「有機化合物の溶媒溶液」として用いることもできる。

【0120】
本発明の結晶構造解析用試料の作製方法は、大量の有機化合物(α)を必要としないものであり、有機化合物(α)が、天然物由来の化合物や農医薬品中の不純物のように、元々微量しか入手できない場合に有用な方法である。また、有機化合物(α)は、室温(20℃)で固体状のものであっても、液状のものであってもかまわない。

【0121】
溶媒溶液中の有機化合物(α)の含有量は、特に制限されないが、100μg以下であってもよい。有機化合物(α)の含有量の下限値は、通常は、0.5μg以上である。

【0122】
本発明の結晶構造解析用試料の作製方法は、100μg以下の有機化合物(α)を含む溶媒溶液に、下記式(2)から算出されるA値が、100以下、好ましくは0.1~30、より好ましくは1~5となる量のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を浸漬させる工程を有することが好ましい。

【0123】
【数2】
JP0005969616B2_000013t.gif

【0124】
式中、bは溶媒溶液中の有機化合物の量を表し、aは高分子金属錯体結晶中のすべての細孔等内を、比重1の物質で満たすと仮定したときに要する前記比重1の物質の量を表す。

【0125】
A値が0.1~30のとき、高分子金属錯体の単結晶の細孔等内に有機化合物(α)が十分に取り込まれ、良質の結晶構造解析用試料が得られ易くなる。一方、A値が大きい場合であっても、目的とする結晶構造解析用試料を得ることはできるが、それに見合う効果は得られず、有機化合物(α)が無駄になり易い。すなわち、本発明の方法は、天然物由来の化合物や農医薬品中の不純物のように、元々微量しか入手できない有機化合物の構造を決定するための結晶構造解析用試料を作製する場合に有用な方法である。

【0126】
なお、本発明の方法においては、高分子金属錯体が有するすべての細孔等内に有機化合物(α)が取り込まれている必要はなく、A値が1よりも小さい値の場合であっても、良質の結晶構造解析用試料を作製することができる。

【0127】
また、溶媒溶液中の有機化合物(α)の濃度は、特に限定されないが、良質の結晶構造解析用試料を効率よく作製する観点から、通常、0.001~50μg/μL、好ましくは0.01~5μg/μL、より好ましくは0.1~1μg/μLである。

【0128】
溶媒溶液の調製に用いる溶媒としては、高分子金属錯体の結晶を溶解せず、前記有機化合物(α)を溶解するものであって、有機化合物(α)の溶媒溶液から揮発させることにより、有機化合物(α)の溶媒溶液を濃縮することができるものであれば、特に限定されない。
かかる観点から、用いる溶媒としては、常圧(1×10Pa)での沸点が、0~250℃のものが好ましく、0~185℃のものがより好ましく、30~150℃のものがさらに好ましい。

【0129】
用いる溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;水;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、良質な結晶構造解析用試料が得られる観点から、用いた前記ゲスト化合物(A)を用いるのが好ましい。

【0130】
本発明においては、有機化合物(α)を含む溶媒溶液に、前記本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体結晶を浸漬させる。

【0131】
浸漬させるゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶の数は、上記のA値に関する要件を満たす限り、特に制限されない。有機化合物(α)の量が極めて少ないときは、単結晶を一粒浸漬させることで、目的の結晶構造解析用試料を得ることができる。また、有機化合物(α)の量に余裕があるときは、同種のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を二粒以上浸漬させたり、異種のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を同時に浸漬させたりしてもよい。

【0132】
本発明においては、ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を浸漬させた後、溶媒を緩和な条件下で揮発させることで、溶媒溶液を濃縮する。この処理を行うことで、単結晶中の細孔等内に、微量の有機化合物(α)を効率よく取り込ませることができる。

【0133】
このときの浸漬条件(濃縮条件)は、特に限定されないが、溶媒の温度は、好ましくは0~180℃、より好ましくは0~80℃、さらに好ましくは20~60℃である。
浸漬時間(濃縮時間)は、通常、6時間以上、好ましくは12~168時間、より好ましくは24~78時間である。

【0134】
溶媒の揮発速度は、好ましくは0.1~1000μL/24時間、より好ましくは1~100μL/24時間、さらに好ましくは5~50μL/24時間である。
溶媒の揮発速度があまりに速い場合には、良質の結晶構造解析用試料を得られないおそれがある。一方、溶媒の揮発速度があまりに遅いと、作業効率の観点から好ましくない。

【0135】
溶媒を揮発させるときの温度は、用いる有機溶媒の沸点にもよるが、通常、0~180℃、好ましくは0~120℃、より好ましくは15~60℃である。

【0136】
また、ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を有機化合物(α)の溶媒溶液に浸漬させた後、溶媒を揮発させて、溶媒溶液を濃縮する操作は、常圧下で行っても、減圧下で行っても、加圧下で行ってもよい。
溶媒を揮発させて、溶媒溶液を濃縮する操作時の圧力は、通常、1~1×10Pa、好ましくは、1×10~1×10Paである。
以上のように、溶媒溶液を濃縮する操作時において、温度や圧力を調節することで、溶媒の揮発速度を適宜なものに調節することができる。

【0137】
また本発明は、有機化合物(α)を含む混合物を、液体クロマトグラフィーにより分離して、有機化合物(α)の溶媒溶液を得るステップ(I)と、前記ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を、ステップ(I)で得られた分子構造を決定する有機化合物を含む溶媒溶液に浸漬させた後、溶媒を緩和な条件下で揮発させて、前記溶媒溶液を濃縮するステップ(II)を有するものであってもよい。

【0138】
すなわち、図26に示すように、有機化合物(α)を含む混合物を液体クロマトグラフィーの装置を使用して分離して、有機化合物(α)の溶媒溶液(溶媒以外に含まれる有機化合物が有機化合物(α)である溶液)を得、次いで、このフラクションA中に、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を浸漬させ、溶媒を緩和な条件下で揮発させて、前記溶媒溶液を濃縮することで、結晶構造解析用試料を得ることができる。
この場合、前記溶媒溶液の溶媒を別の溶媒に置換したのち、得られた溶液中に、前記高分子錯体の結晶を浸漬させてもよい。

【0139】
この方法は、構造が類似する複数の化合物の混合物を液体クロマトグラフィーにより分離して、それぞれ分離した化合物を含む溶媒溶液のそれぞれに高分子錯体の結晶を浸漬させて、結晶構造解析用試料を作製することができる。この方法によれば、NMRスペクトルなどの測定データだけでは、化合物の構造決定が困難である、構造が類似する化合物の混合物を分離し、分子構造を決定する場合にも有用である。

【0140】
また、本発明の結晶構造解析用試料の作製方法は、有機化合物(α)が室温付近(25℃前後)において液状の物質である場合にも適用することができる。すなわち、液状物である有機化合物(α)の溶媒溶液に、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を浸漬させた後、溶媒を緩和な条件下で揮発させて、前記溶媒溶液を濃縮することで、結晶構造解析用試料を作製することができる。

【0141】
さらにまた、図26に示すように、本発明のゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶に、極微量の液状物である有機化合物(α)を、スポイド等を用いて滴下し、室温25℃で数時間から数日間放置することで、目的とするとする結晶構造解析用試料を作製することもできる。有機化合物(α)が室温(25℃)付近で揮発性物質である場合には、ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶に、有機化合物(α)を滴下したサンプルを、バイアル瓶などの密閉容器中に載置しておくことが好ましい。

【0142】
得られる有機化合物内包高分子金属錯体の単結晶たる結晶構造解析用試料は、管電圧が24kV、管電流が50mAで発生させたMoKα線(波長:0.71Å)を照射し、回折X線をCCD検出器で検出したときに、少なくとも1.5Åの分解能で分子構造を決定できるものが好ましい。

【0143】
本発明の方法によって得られる結晶構造解析用試料は、高分子金属錯体の単結晶中の細孔等内に、ゲスト化合物(A)と置換された有機化合物(α)の分子が規則性をもって配列されてなるものである。
ここで、「有機化合物の分子が規則性をもって配列される」とは、有機化合物の分子が、単結晶X線構造解析によって構造を決定することができる程度に乱れなく、高分子金属錯体の細孔内に規則正しく収容されていることをいう。

【0144】
本発明の方法によって得られる結晶構造解析用試料は、有機化合物(α)の構造を決定することができるものであれば、高分子金属錯体の単結晶中のすべての細孔等内に有機化合物(α)が取り込まれている必要はない。例えば、前記高分子金属錯体の単結晶中の細孔等内の一部に、有機化合物(α)の溶媒溶液に用いた溶媒が取り込まれたものであっても良い。

【0145】
本発明により得られる結晶構造解析用試料は、前記有機化合物の分子の占有率が10%以上のものであることが好ましい。前記有機化合物の分子の占有率は、単結晶構造解析により得られる値であり、理想的な包接状態におけるゲスト分子〔有機化合物(α)〕の量を100%としたときの、単結晶中に実際に存在するゲスト分子の量を表すものである。

【0146】
A値に関する上記要件を満たすとともに、上記のように、有機化合物(α)の分子の大きさにあった細孔等を有する高分子金属錯体の結晶を選択し、良質の高分子金属錯体の単結晶を用いて、該単結晶の細孔等内に有機化合物(α)を包接させることで、結晶構造解析用試料を効率よく作製することができる。

【0147】
なお、ゲスト化合物内包高分子金属錯体の単結晶を有機化合物(α)の溶媒溶液に浸漬させた後、溶媒を揮発させて、高分子金属錯体を濃縮するには、例えば、図5に示す作製装置Aや作製装置Bを使用することができる。

【0148】
図5(a)は作製装置Aの側面図であり、図5(b)は作製装置Aの上面図である。
11は蓋部、12は気体分子が通過可能な開口部、13は容器本体、14は有機化合物(α)の溶媒溶液、15は高分子金属錯体の単結晶である。
蓋部(11)としては、容器を密閉可能な状態にできるものであればよく、例えば、セプタム等のゴム製のものが使用できる。開口部(12)は、例えば、蓋部(11)にガス抜き用中空針を差し込むことで形成することができる。容器本体(13)としては、例えば、試験管、耐圧ガラス瓶等のガラス製の容器が使用できる。容器本体(13)の底部は、平坦であってもよいが、図5(a)に示すように、先端部が尖った形状を有する場合には、結晶の出し入れが容易であり、操作性に優れ好ましい。また、容器本体(13)として、透明なものを使用する場合には、溶媒の揮発状態や結晶の色変化(ゲスト分子が高分子金属錯体の細孔や中空内に取り込まれると、結晶の色が変化する。)を、外部から容易に観察することができる。

【0149】
図5(a)、(b)に示す装置において、有機化合物(α)の溶媒溶液(14)の溶媒は、開口部(ガス抜き用中空針)(12)の細い穴から徐々に揮発し、結果として有機化合物(α)から溶媒が完全に除かれる。次いで、蓋部(密封栓)(11)を開け、容器本体(バイアル瓶)(13)の中から結晶構造解析用試料を取り出し、このものを用いて結晶構造解析を行うことができる。

【0150】
図5(c)は作製装置Bの側面図であり、図5(d)は作製装置Bの上面図である。
装置Bは、図5(c)、(d)に示すように、蓋部(11)、容器本体(13)及び気体分子が通過可能な開口部(12)を有する密閉可能な容器と、前記蓋部に固定された結晶支持体(16)とを備え、前記結晶支持体(16)の先端部が、配位性部位を2つ以上有する配位子及び中心金属としての金属イオンとを含む三次元ネットワーク構造を有する高分子金属錯体の単結晶(15)を固定し得るものであり、かつ、前記容器を閉じたときに、前記結晶支持体(16)の先端部が下向きに容器内部に収容されるものである。

【0151】
図5(c)に示す作製装置Bでは、高分子金属錯体の単結晶(15)は、単結晶支持体(16)の先端部において、図示を省略するクライオループによって固定されている。
装置Bは、有機化合物(α)を高分子金属錯体の細孔や中空内に包接させて、結晶解析用試料を得た後、そのまま、X線結晶解析装置等の結晶構造解析装置に載せ替えて、測定を行うことができるものであることが好ましい。

【0152】
4)有機化合物の分子構造決定方法
本発明の有機化合物の分子構造決定方法は、本発明の方法により得られる結晶構造解析用試料の結晶構造解析を行うことにより、結晶構造解析用試料の細孔及び中空内に内包されている有機化合物の分子構造を決定することを特徴とする。
本発明の方法においては、X線回折、中性子線回折のいずれの方法も利用することができる。
本発明の方法により有機化合物の分子構造を決定する際は、従来の単結晶の代わりに、上記方法で得た結晶構造解析用試料をマウントする点を除き、従来と同様の方法を用いることができる。

【0153】
本発明の分子構造決定方法によれば、微量の有機化合物であっても、効率よく、結晶構造解析を行い、その分子構造を決定することができる。
また、常温で液体の有機化合物であっても、かかる有機化合物を包接する結晶構造解析用試料を用いることで、その分子構造を決定することができる。
試料作製に用いる有機化合物は、気体、液体、固体を問わず、有機溶媒に溶解させることができれば、高分子金属錯体の単結晶内に導入することができる。
1粒の高分子金属錯体の単結晶に対して必要な有機化合物の量は多くとも5μgでよく、少ない場合では50ngでも単結晶構造を得られる。
本発明を用いれば、医薬中の微量の不純物、香料、食品添加物、動植物中の微量成分などの迅速且つ正確な構造決定を行うことができる。また、熱分解や加溶媒分解を起こしやすい不安定な化合物に対しても、加熱したり、種々の溶媒あるいは緩衝溶液等に溶解させたりすることなく立体構造(絶対構造)が得られるようになった。
【実施例】
【0154】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0155】
(機器類)
(1)単結晶X線構造解析
Bruker社製 APEX II/CCD diffractometer〔線源:Mo-Kα線(波長0.71Å)、出力:50mA、24kV〕を用いて行った。
(2)元素分析
YANACO社製 MT-6を用いて行った。
【実施例】
【0156】
(実施例1) シクロへキサン内包高分子金属錯体結晶の合成
(ステップ1)結晶性溶媒(ニトロベンゼン)内包高分子金属錯体結晶の合成
2,4,6-トリス(4-ピリジル)-1,3,5-トリアジン(TPT) 50.2mg(0.16mmol)を、ニトロベンゼン/メタノール(32ml/4ml)の混合液に溶解させ、配位子溶液を調製した。室温において、得られた配位子溶液に、ZnI76.5mg(0.24mmol)をメタノール8mlに溶解させた金属溶液を混合し、30秒攪拌し、沈殿した白色結晶をろ過することにより、白色粉末151.7mgを得た(収率81.6%)。
【実施例】
【0157】
得られた白色粉末試料を元素分析及び熱分解/質量分析測定(TG-MS)により同定したところ、[(ZnI(TPT)(PhNO5.5(高分子金属錯体1)であった。
【実施例】
【0158】
〈元素分析結果〉
理論値:C:36.68%、H:2.30%、N:10.85%
実測値:C:36.39%、H:2.43%、N:10.57%
【実施例】
【0159】
(ステップ2)ゲスト分子(シクロへキサン)内包高分子金属錯体結晶の合成
(1)で得られた高分子金属錯体1(ニトロベンゼン内包高分子金属錯体結晶)を、シクロへキサン溶媒中に、100mg/10mLの割合で浸漬した。インキュベータを用いて45℃に加温し、1週間放置した。この間、シクロヘキサンの上澄み液を1日おきに傾斜法により交換した。
1週間後、単結晶を取り出し、元素分析、及び、結晶構造解析を行ったところ、[(ZnI(TPT)(cyclohexane)]であることがわかった。
元素分析結果を下記に、結晶学的データを下記第1表に示す。
また、このものの単結晶の顕微鏡写真図を図6に示す。
なお、シクロヘキサンの占有率は100%であった。
【実施例】
【0160】
【表1】
JP0005969616B2_000014t.gif
【実施例】
【0161】
〈元素分析結果〉
測定値:C:37.67%、H:3.53%、N:8.75%
計算値:C:37.56%、H:3.78%、N:8.76%
【実施例】
【0162】
図7、8に、得られたシクロへキサン内包高分子金属錯体結晶の結晶構造を示す。
【実施例】
【0163】
(実施例2) 酢酸エチル内包高分子金属錯体結晶の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、酢酸エチル10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内を酢酸エチルで飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内に酢酸エチル(AcOEt)が内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(AcOEt)]であることがわかった。
【実施例】
【0164】
〈元素分析〉
測定値:C:31.36% H:2.38% N:9.30%
計算値:C:31.22% H:2.62% N:9.10%
【実施例】
【0165】
(実施例3) へプタン内包高分子金属錯体結晶の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、ヘプタン10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内をヘプタンで飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内にヘプタンが内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(PhNO)(heptane)2.5]であることがわかった。
【実施例】
【0166】
〈元素分析〉
測定値:C:36.68% H:3.60% N:9.43%
計算値:C:36.54% H:3.56% N:9.31%
【実施例】
【0167】
(実施例4) トルエン内包高分子金属錯体結晶の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、トルエン10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内をトルエンで飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内にトルエンが内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(toluene)]であることがわかった。
【実施例】
【0168】
〈元素分析〉
測定値:C:42.12% H:3.04% N:8.26%
計算値:C:41.74% H:3.16% N:8.23%
【実施例】
【0169】
(実施例5) 1,2-ジメトキシエタン内包高分子金属錯体の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、1,2-ジメトキシエタン(DME)10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内をDMEで飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内にDMEが内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(DME)2.5]であることがわかった。
【実施例】
【0170】
〈元素分析〉
測定値:C:30.87% H:2.53% N:9.07%
計算値:C:30.57% H:2.73% N:9.30%
【実施例】
【0171】
(実施例6) アセトニトリル内包高分子金属錯体の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、アセトニトリル(CHCN)10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内をCHCNで飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内にCHCNが内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(CHCN)3.25]であることがわかった。
【実施例】
【0172】
〈元素分析〉
測定値:C:29.92% H:1.68% N:12.19%
計算値:C:29.75% H:1.98% N:12.45%
【実施例】
【0173】
(実施例7) 四塩化炭素内包高分子金属錯体の合成
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、四塩化炭素10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、7日間浸し、単結晶の細孔等内を四塩化炭素(CCl)で飽和させた後、錯体結晶を濾取し元素分析を行った。その結果、このものは、細孔等内に四塩化炭素が内包されている高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(CCl]であることがわかった。
【実施例】
【0174】
〈元素分析〉
測定値:C:20.77% H:0.75% N:6.93%
計算値:C:20.94% H:1.03% N:7.15%
【実施例】
【0175】
(実施例8) シクロへキサン内包高分子金属錯体の合成
TPT 6.3mgを、ニトロベンゼン/メタノール(4mL/1mL)の混合液に溶解させて配位子溶液を得た。
これとは別に、ZnI 9.6mgをメタノール1mLに溶解させて金属イオン含有溶液を得た。
試験管(φ15mm、高さ12cm)内に前記配位子溶液を入れ、次いで、前記金属イオン含有溶液を、配位子溶液の上に層を形成するように静かに加えた。そのまま、15~25℃で7日間放置し、高分子金属錯体の結晶を得た。
【実施例】
【0176】
得られた結晶を、実施例1と同様に、元素分析、熱分解/質量分析測定、単結晶X線構造解析により同定したところ、[(ZnI(TPT)(PhNO5.5であることが分かった。
【実施例】
【0177】
得られたニトロベンゼン内包高分子金属錯体の単結晶100mgを、シクロヘキサン10mLの中に、実施例1と同様の条件で2日間浸し、単結晶の細孔内をシクロヘキサンで飽和させた。その後、単結晶を取り出し、元素分析、及び、結晶構造解析を行ったところ、このものは、[(ZnI(TPT)(cyclohexane)の組成を有する化合物であることがわかった。
【実施例】
【0178】
(実施例9) ジクロロベンゼン内包高分子金属錯体の合成]
試験管中、TPT 6.3mgを1,2-ジクロロベンゼンとメタノールの混合液(体積比で4:1)5mlに溶解させた。その溶液の上部にチオシアン酸コバルト(II)7.0mgを1mlのメタノールに溶解させた溶液を静かに加え、2層に分かれた溶液を2日間、室温で静置した。
次いで、試験管の壁に析出した橙色結晶を濾過することで、高分子金属錯体を9.9mg得た(収率52%)。
【実施例】
【0179】
得られた高分子金属錯体の元素分析と、X線単結晶構造解析を行ったところ、高分子金属錯体は、図4に示すのと同様の構造を有する、(TPT){Co(SCN)(Cl25(MeOH)であった。この高分子金属錯体は、正八面体の構造単位あたり25分子の1,2-ジクロロベンゼンと5分子のメタノールを内包していることが分かった。
【実施例】
【0180】
〈元素分析〉
元素分析の結果:C:49.60%,H:2.92%,N:7.43%
(理論値:C:49.89%,H:3.02%,N:7.48%)
〈X線単結晶構造解析〉
格子定数:a=b=c=37.599Å,cubic,空間群:Fm-3m
【実施例】
【0181】
(実施例10) 2-メチル-1,4-ナフトキノン内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLの酢酸エチルをセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例2で得た酢酸エチル内包高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(AcOEt)]の単結晶1粒(大きさ:150μm×150μm×100μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:1.13μg)を浸漬させた。
【実施例】
【0182】
2-メチル-1,4-ナフトキノンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL(2-メチル-1,4-ナフトキノンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例10におけるA値は4.4である。
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(酢酸エチル、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液が濃縮された。
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第2表に、結晶構造を図9、図10に示す。
【実施例】
【0183】
【表2】
JP0005969616B2_000015t.gif
【実施例】
【0184】
(実施例11) 4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLのヘプタンを、セプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例2で得たヘプタン内包高分子金属錯体[(ZnI(TPT)(nitrobenzene)(heptane)2.5]の単結晶1粒(大きさ:200μm×60μm×50μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:0.30μg)を浸漬させた。
【実施例】
【0185】
4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL(4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例11におけるA値は16.6である。
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(ヘプタン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第3表に、結晶構造を図11、図12に示す。
【実施例】
【0186】
【表3】
JP0005969616B2_000016t.gif
【実施例】
【0187】
(実施例12) 1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLのシクロヘキサンを、図5(a)に示すセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例8で得られたシクロへキサン内包高分子金属錯体の単結晶1粒(大きさ:100μm×100μm×60μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:0.3μg)の単結晶を浸漬させた。
1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL(1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例12におけるA値は、16.7である。
【実施例】
【0188】
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
【実施例】
【0189】
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
このとき、露光時間30秒で図13に示すような回折像が得られ、その解像度は0.8Å以上であった。
結晶学的データを第4表に、結晶構造を図14、図15に示す。なお、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンの占有率は73%であった。
【実施例】
【0190】
【表4】
JP0005969616B2_000017t.gif
【実施例】
【0191】
(実施例13)(3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオン内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLのシクロヘキサンを、図5(a)に示すセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例8で得られた単結晶1粒(大きさ:350μm×70μm×50μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:0.61μg)の単結晶を浸漬させた。
(3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL((3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例13におけるA値は8.2である。
【実施例】
【0192】
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
【実施例】
【0193】
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第5表に、結晶構造を図16、図17に示す。なお、(3S,3aS,5aS,9bS)-3a,5,5a,9b-テトラヒドロ-3,5a,9-トリメチルナフト[1,2-b]フラン-2,8(3H,4H)-ジオンの占有率は100%であった。
【実施例】
【0194】
【表5】
JP0005969616B2_000018t.gif
【実施例】
【0195】
(実施例14)(2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1-ベンゾピラン-4-オン内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLのシクロヘキサンを、図5(a)に示すセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例8で得られた単結晶1粒(大きさ:130μm×110μm×80μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:0.57μg)の単結晶を浸漬させた。
(2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1-ベンゾピラン-4-オンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL(2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1ベンゾピラン-4-オンを5μg含有)を、図5(a)に示すマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例14におけるA値は8.8である。
【実施例】
【0196】
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
【実施例】
【0197】
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第6表に、結晶構造を図18、図19に示す。なお、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラメトキシ-4-H-1-ベンゾピラン-4-オンの占有率は53%であった。
【実施例】
【0198】
【表6】
JP0005969616B2_000019t.gif
【実施例】
【0199】
(実施例15) (5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン内包高分子金属錯体結晶の合成
50μLのシクロヘキサンを、図5(a)に示すセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、実施例8で得られた単結晶1粒(大きさ:300μm×100μm×100μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:1.5μg)の単結晶を浸漬させた。
(5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを、濃度が2μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液2.5μL(5,6、7、8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。実施例15におけるA値は3.3である。
【実施例】
【0200】
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
【実施例】
【0201】
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第7表に、結晶構造を図20、図21に示す。なお、5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1ベンゾピラン-4-オンの占有率は80%であった。
【実施例】
【0202】
【表7】
JP0005969616B2_000020t.gif
【実施例】
【0203】
(実施例16)
実施例9で得られたコバルト錯体の単結晶100mgをトルエン10mLの中に2日間浸し、単結晶の細孔内をトルエンで飽和させた。
50μLのトルエンをセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、上記の浸漬処理を施した単結晶1粒(大きさ:320μm×300μm×280μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:21.0μg)の単結晶を浸漬させた。実施例16におけるA値は、0.31である。
次いで、2,2’-ビチオフェンを、濃度が1μg/1μLとなるようにトルエンに溶解して得られた試料溶液5μL(2,2’-ビチオフェンを5μg含有)を、図5(a)に示すマイクロバイアル瓶内に加えた。
45℃2日間静置した後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第8表に、結晶構造を図22、図23に示す。なお、2,2’-ビチオフェンの占有率は100%であった。
【実施例】
【0204】
【表8】
JP0005969616B2_000021t.gif
【実施例】
【0205】
(比較例1)
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1の単結晶10mgを、シクロヘキサン10mLの中に、実施例1のステップ2と同条件で、2日間浸し、高分子金属錯体の単結晶1rを得た。
なお、得られた高分子錯体を塩酸に溶解し、重クロロホルムで抽出後NMR測定を行ったところ、ニトロベンゼンとシクロヘキサン以外は観測されず、またその含有比はシクロヘキサン:ニトロベンゼン=39:61であった。
50μLのシクロヘキサンを、セプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、得られた単結晶1rの1粒(大きさ:150μm×130μm×120μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:1.17μg)を浸漬させた。
【実施例】
【0206】
(5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL((5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。比較例1におけるA値は3.3である。
【実施例】
【0207】
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
結晶学的データを第9表に、結晶構造を図24、図25に示す。
その結果、結晶中には、ニトロベンゼンが内包されたままであり、(5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンは内包されていないことがわかった。
【実施例】
【0208】
【表9】
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【実施例】
【0209】
(比較例2)
実施例1のステップ1で得た高分子金属錯体1を1粒(大きさ:150μm×130μm×120μm;細孔内を比重1の物質で満たすときの理論量:1.17μg)を用いて比較例2と同様の実験を行った。
50μLのシクロヘキサンを、セプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶に入れ、次いで、この中に、上記の単結晶1粒を浸漬させた。
(5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを、濃度が1μg/1μLとなるようにジクロロメタンに溶解し、得られた試料溶液5μL((5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンを5μg含有)をマイクロバイアル瓶内に加えた。比較例1におけるA値は3.3である。
その後、マイクロバイアル瓶のキャップを閉め、セプタム部に針穴径0.8mmの注射針でピンホールを開け、これを45℃の恒温室内に2日間静置した。
なお、この静置条件では、マイクロバイアル瓶内部の有機溶媒(シクロヘキサン、ジクロロメタン)は、約48μL/24時間の揮発速度で揮発し、溶液は濃縮された。
その後、単結晶を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
この結果、比較例1と同様に、細孔内にニトロベンゼンが内包された結晶構造が得られた。
【実施例】
【0210】
(実施例17)
実施例1のステップ1で得た高分子錯体1の単結晶100mgを、シクロヘキサン10mLの中に25℃で7日間浸し、単結晶の細孔内をシクロヘキサンで飽和させて、シクロヘキサン内包高分子金属錯体結晶を得た。
次いで、図26に示すように、このものをガラス板上に置き、この錯体上に、イソプレン(またはシクロヘキサン)をスポイドから1滴(約100μg)滴下した。このものを、図示を省略するセプタムキャップ付きマイクロバイアル瓶内に移し、25℃の恒温室内に2日間載置することで、結晶構造解析用試料を得た。
得られた試料を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
イソプレン内包高分子金属錯体の結晶構造の拡大図を図27に示す。
【実施例】
【0211】
(実施例18)
実施例9で得られたコバルト錯体の単結晶100mgを、トルエン10mLの中に25℃で7日間浸し、単結晶の細孔内をトルエンで飽和させて、トルエン内包高分子金属錯体結晶を得た。
次いで、図26に示すように、このものをガラス板上に置き、この錯体上に、シクロヘキサノンをスポイドから1滴(約100μg)滴下した。このものを25℃の恒温室内に2日間載置することで、結晶構造解析用試料を得た。
得られた試料を取り出し、X線構造解析装置にマウントし、結晶構造解析を行った。
シクロヘキサノン内包高分子金属錯体の結晶構造の拡大図を図28に示す。
実施例17、18によれば、液体の有機化合物でも、結晶と同様に結晶構造解析が出来ることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0212】
1:結晶面X
2:結晶面Y
3:細孔
4:細孔が延在する方向
11:蓋部(セプタム付き蓋)
11a:セプタム部
11b:プラスチック部
12:開口部(ガス抜き用中空針)
13:容器本体(バイアル瓶)
14:有機化合物(α)の溶媒溶液
15:高分子金属錯体の単結晶
16:結晶支持体
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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