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明細書 :酸化グラフェンに金属を担持させる方法及び金属-酸化グラフェン複合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6116016号 (P6116016)
登録日 平成29年3月31日(2017.3.31)
発行日 平成29年5月10日(2017.5.10)
発明の名称または考案の名称 酸化グラフェンに金属を担持させる方法及び金属-酸化グラフェン複合体の製造方法
国際特許分類 B01J  37/16        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
B01J  23/44        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
C01B  32/15        (2017.01)
C01B  32/18        (2017.01)
C01B  32/182       (2017.01)
C07C   1/32        (2006.01)
C07C  15/14        (2006.01)
C07C  45/62        (2006.01)
C07C  49/784       (2006.01)
C07C  45/68        (2006.01)
C07C   2/86        (2006.01)
C07C  15/52        (2006.01)
C07C  45/38        (2006.01)
C07C  47/54        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 37/16
B01J 37/02 101C
B01J 37/34
B01J 23/44 Z
B01J 23/42 Z
C01B 31/02 101Z
C07C 1/32
C07C 15/14
C07C 45/62
C07C 49/784
C07C 45/68
C07C 2/86
C07C 15/52
C07C 45/38
C07C 47/54
C07F 7/08 B
C07F 7/08 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2014-535610 (P2014-535610)
出願日 平成25年9月13日(2013.9.13)
国際出願番号 PCT/JP2013/074937
国際公開番号 WO2014/042259
国際公開日 平成26年3月20日(2014.3.20)
優先権出願番号 2012201088
優先日 平成24年9月13日(2012.9.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年7月4日(2016.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】仁科 勇太
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】佐藤 哲
参考文献・文献 国際公開第2011/119961(WO,A2)
特開2012-031024(JP,A)
Y.HE et al.,Metal nanoparticles supported graphene oxide 3D porous monoliths and their excellent catalytic activity,Materials Chemistry and Physics,2012年 6月15日,Vol.134 No.2-3,Pages585-589
N.ZHANG et al.,Fabrication of gold nanoparticle/graphene oxide nanocomposites and their excellent catalytic performance,Journal of Materials Chemistry,2011年 8月14日,Vol.21 No.30,Pages11080-11083
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C01B 32/15
C01B 32/18
C01B 32/182
C07B 61/00
C07C 1/00 -409/44
C07F 7/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)

特許請求の範囲 【請求項1】
酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散溶液に、金属塩または金属イオンを含有している溶液を添加して混合溶液を作製する第1の工程と、
混合溶液にアルコール(三級アルコールを除く)、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの少なくともいずれか1種を添加して撹拌することにより酸化グラフェン分散溶液の酸化グラフェンに金属塩の金属または金属イオンとなっている金属を担持させる第2の工程とからなる酸化グラフェンに金属を担持させる方法。
【請求項2】
前記第1の工程の前記酸化グラフェン分散溶液は、
六角形の格子状に並んだ炭素原子で構成された炭素シートの積層体である黒鉛にマイクロ波を照射する工程と、
マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化させることにより、前記黒鉛から1層または複数層の炭素シートで構成される酸化グラフェンを剥離させる工程とにより作成している請求項1に記載の酸化グラフェンに金属を担持させる方法。
【請求項3】
酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散溶液に、金属塩または金属イオンを含有している溶液を添加するとともに、アルコール(三級アルコールを除く)、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの少なくともいずれか1種を還元剤として添加して、前記還元剤の還元作用により前記酸化グラフェンに前記金属塩の金属または金属イオンとなっている金属を担持させて成る金属-酸化グラフェン複合体の製造方法
【請求項4】
前記酸化グラフェン分散溶液は、
六角形の格子状に並んだ炭素原子で構成された炭素シートの積層体である黒鉛にマイクロ波を照射した後に、マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化することにより1層または複数層の炭素シートに剥離させて作成した酸化グラフェンの分散溶液である請求項3に記載の金属-酸化グラフェン複合体の製造方法
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の金属-酸化グラフェン複合体からなる触媒の製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化グラフェンに金属を担持させる方法及びこの方法で作成した金属-酸化グラフェン複合体に関するものである。特に、酸化グラフェンを還元することで金属を酸化グラフェンに担持させるが、その際に酸化グラフェンがグラフェンにまで還元されることで分散性の低下が生じることを抑制し、酸化グラフェンの分散性を維持した金属-酸化グラフェン複合体を生成可能とするものであり、触媒あるいは金属スカベンジャーとして利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒の一つとして、パラジウム-グラフェン複合体から成る触媒が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この触媒は、酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散液に硝酸パラジウムとヒドラジンとを加えて、マイクロウェーブを照射することにより、酸化グラフェンにパラジウムを担持させて作成している。
【0004】
しかしながら、還元剤としてヒドラジンを用いた場合には、還元反応によって酸化グラフェンにパラジウムが担持されるだけでなく、酸化グラフェンがグラフェンに還元されることとなって、グラフェンの凝集が生じやすくなるというという問題があった。
【0005】
特に、凝集したグラフェンは、触媒としての機能を発現できにくくなるとともに、溶液中での分散性が低下するため、凝集したグラフェンを除去する必要が生じることから、製造効率を低下させることとなり、触媒が高コスト化する原因ともなっていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2011/119961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、還元剤としてヒドラジンのような強い還元作用を有する還元剤を用いることがグラフェンの凝集を生じさせる原因と考え、グラフェンの凝集を生じさせない程度の温和な還元作用を有する還元剤を用いることで、酸化グラフェンの分散性をできるだけ損なわずに金属を担持させることができると考え、研究開発を行うことで本発明を成すに至った。
【0008】
特に、当初の目的の分散性の高い触媒として利用できるだけでなく、酸化グラフェンに金属を捕捉させて回収する金属スカベンジャーとして利用できることを見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の酸化グラフェンに金属を担持させる方法では、酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散溶液に、金属塩または金属イオンを含有している溶液を添加して混合溶液を作製する第1の工程と、混合溶液にアルコール(三級アルコールを除く)、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの少なくともいずれか1種を添加して撹拌することにより酸化グラフェン分散溶液の酸化グラフェンに金属塩の金属または金属イオンとなっている金属を担持させる第2の工程とを有するものである。
【0010】
さらに、本発明の酸化グラフェンに金属を担持させる方法では、酸化グラフェン分散溶液を、六角形の格子状に並んだ炭素原子で構成された炭素シートの積層体である黒鉛にマイクロ波を照射した後に、マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化することにより1層または複数層の炭素シートに剥離させて作成していることにも特徴を有するものである。
【0011】
また、本発明の金属-酸化グラフェン複合体の製造方法では、酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散溶液に、金属塩または金属イオンを含有する溶液を添加するとともに、アルコール(三級アルコールを除く)、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの少なくともいずれか1種を還元剤として添加して、還元剤の還元作用により酸化グラフェンに金属塩の金属または金属イオンとなっている金属を担持させているものである。
【0012】
さらに、本発明の金属-酸化グラフェン複合体の製造方法では、酸化グラフェン分散溶液として、六角形の格子状に並んだ炭素原子で構成された炭素シートの積層体である黒鉛にマイクロ波を照射した後に、マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化することにより1層または複数層の炭素シートに剥離させて作成した酸化グラフェンの分散溶液を用いていることに特徴を有し、触媒として使用することにも特徴を有するものである。

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、還元作用の弱いアルコール等を還元剤として用いることにより、酸化グラフェン自体が還元されること抑制しながら酸化グラフェンに金属を担持させることができ、凝集したグラフェンを生じさせることなく金属-酸化グラフェン複合体を生成できる。
【0014】
このようにして生成した金属-酸化グラフェン複合体において、担持させた金属が白金などのように触媒活性を有する場合には、分散性の高い触媒として利用でき、特に安価な触媒を提供可能とすることができる。しかも、触媒として用いた金属-酸化グラフェン複合体は、酸化グラフェンの濾別処理等による分離回収が容易であり、再利用のしやすい触媒とすることができる。
【0015】
また、酸化グラフェンが金属を担持することを利用して金属スカベンジャーとして利用した場合には、酸化グラフェンの比表面積が極めて大きいことにより捕捉の効率が高く、しかも、金属を捕捉して金属-酸化グラフェン複合体となることにより、濾別処理等により金属-酸化グラフェン複合体の分離及び回収が容易であることから、金属の回収率を向上させることができる。さらには、回収した金属-酸化グラフェン複合体は加熱処理することで炭素成分を除去できるため、酸化グラフェンが捕捉した金属を容易に回収することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例4に係る金属-酸化グラフェン複合体の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、還元剤としてヒドラジンのような還元作用の強い還元剤ではなく、還元作用の比較的弱い還元剤を用いることで、溶液中の金属イオンを酸化グラフェンに担持させる一方で、酸化グラフェンの表面に対して必要以上の還元反応が生じることを抑制して、酸化グラフェンの分散性を維持しながら金属を担持させている。

【0018】
この目的に合致した還元剤として、アルコール(三級アルコールを除く)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンが好適であることを見出した。なお、三級アルコールは、ヒドロキシル基が結合している炭素上に水素原子を有さないため、還元剤としての利用には不適である。

【0019】
さらに、酸化グラフェンを分散させている酸化グラフェン分散溶液は、既知のHummers法等によって黒鉛から作成するのではなく、黒鉛にマイクロ波を照射する前処理を施した後に、マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化することにより作成することで、酸化グラフェン分散溶液自体の製造コストを大きく低減できる。

【0020】
このようにして製造された酸化グラフェン分散溶液の酸化グラフェンに、触媒活性を有する金属を担持させた金属-酸化グラフェン複合体は、分散性の高い触媒として利用でき、しかも、より安価に製造できることから、安価な触媒を提供可能とすることができる。

【0021】
しかも、この金属-酸化グラフェン複合体から成る触媒は、濾別処理等によって容易に金属-酸化グラフェン複合体を分離回収でき、再利用することができることによっても低コスト化が可能である。

【0022】
また、酸化グラフェンが金属を担持することを利用して金属スカベンジャーとして金属除去に用いることもできる。

【0023】
このような、金属の除去方法としては、特開2011-41919号公報記載の溶存パラジウムの除去方法が知られている。この溶存パラジウムの除去方法は、パラジウム触媒を用いた有機金属反応後の溶液から溶存パラジウムを効率的に除去する方法を提供するものである。具体的には、パラジウム触媒を用いる有機金属反応後の溶液を、アミド含有環状スルフィド化合物からなる吸着剤、又はアミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定化した吸着剤と接触させることで、パラジウム濃度を15ppmに低下させるものである。

【0024】
あるいは、特表2008-535645号公報において、ゾルゲル法において、シリカまたはSBA-15等のシリケート材料を、チオールもしくはアミン、または他の官能化剤で官能化することによって調製される金属スカベンジャーが提案されている。この場合において、パラジウムを捕捉する場合には、捕捉のための官能化剤にチオールを用いることが提案されている。

【0025】
あるいは、特開平06-227813号公報において、架橋構造を有するキトサン分子に、キレート形成能を有するピリジン環或いはチオフェン環を結合させた貴金属捕集剤が提案されている。このキトサン分子は、水産加工業の廃棄物であるキチンから得られたものであり、金、白金、パラジウム等の貴金属イオンに対して高い吸着性を示すことが記載されている。

【0026】
このような既知の金属スカベンジャーあるいは貴金属捕集剤では、目的の金属を回収することは可能であるが、回収後に目的の金属のみを分離回収することが困難であって、目的の金属のみの分離回収にさらに多大な処理コストを要することとなっていた。

【0027】
しかしながら、本発明のように酸化グラフェンが金属を担持することを利用した金属スカベンジャーでは、加熱処理することで酸化グラフェンの炭素成分を除去できるため、酸化グラフェンに担持された金属を容易に回収することもできる。

【0028】
しかも、酸化グラフェンは、黒鉛にマイクロ波を照射する前処理を施した後に、マイクロ波が照射された黒鉛に硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを加えて酸化することにより作成することで比較的安価に供給可能であり、コスト的にも十分な実用性を有している。
【実施例1】
【0029】
<酸化グラフェン分散溶液の作成>
はじめに、後述する各実施例で用いた酸化グラフェン分散溶液の作成方法について詳説する。酸化グラフェンは、六角形の格子状に並んだ炭素原子で構成された炭素シートの積層体である黒鉛から、炭素シートを剥離させて形成している。
【実施例1】
【0030】
原料の黒鉛は、適宜の粉砕処理等によって粉末状としていることが望ましく、できるだけ微細な粉末としておくことにより、後述する本処理での炭素シートの剥離を生じさせやすくすることができる。今回は、和光純薬株式会社から販売されているグラファイト粉末を用いた。このグラファイト粉末は、平均粒径が約45μmであった。
【実施例1】
【0031】
前処理として、黒鉛に対してマイクロ波の照射処理を行った。具体的には、230Wの電子レンジを用いてマイクロ波の照射処理を行った。
【実施例1】
【0032】
すなわち、黒鉛を乳鉢に入れて軽くかき混ぜ、黒鉛同士がくっついて塊状となった黒鉛がない状態として、乳鉢を電子レンジに入れた。
【実施例1】
【0033】
電子レンジのスイッチを入れると、数秒程度で電子レンジ内に火花が飛び始めるので、火花が飛び始めたところで電子レンジを強制停止させた。
【実施例1】
【0034】
この電子レンジのスイッチのオン-オフ(強制停止)を3回繰り返し、累計で10秒程度の照射を行った。マイクロ波の照射時間は累計で1分程度まででよく、必要に応じて複数回繰り返してマイクロ波の照射処理を行うことが望ましいが、照射時間によっては1回だけであってもよい。特に黒鉛の粒径が大きい場合には、マイクロ波の照射時間を長くする方がよく、逆に、黒鉛の粒径が小さい場合には、マイクロ波の照射時間は短くてもよい。また、マイクロ波を照射する際には、不活性雰囲気とした方が望ましく、例えば電子レンジ内に窒素ガスを充満させて電子レンジのスイッチのオン-オフ操作を行ってもよい。
【実施例1】
【0035】
上記のマイクロ波の照射処理が施された黒鉛を、説明の便宜上、「前処理済み黒鉛」と呼ぶ。
【実施例1】
【0036】
次いで、前処理済み黒鉛から炭素シートの剥離を生じさせて酸化グラフェン分散溶液を作成する本処理を、以下の手順にて行った。
【実施例1】
【0037】
(本処理1)
3.6gの前処理済み黒鉛をビーカーに入れ、さらに92mLの硫酸を加えて4℃に冷却して、本処理一次液を作製した。
【実施例1】
【0038】
(本処理2)
本処理一次液に4gの硝酸ナトリウム(NaNO3)を少しずつ加えて本処理二次液を作製した。
【実施例1】
【0039】
(本処理3)
本処理二次液に12gの過マンガン酸カリウム(KMnO4)を加えて、10分間撹拌して、本処理三次液を作製した。
【実施例1】
【0040】
(本処理4)
本処理三次液の温度を35℃とし、その温度を維持しながら2時間撹拌し、その後、ビーカーを水で冷却して、本処理三次液を撹拌しながら184mLの水を1滴ずつ所定量加えて、本処理四次液を作製した。
【実施例1】
【0041】
(本処理5)
本処理四次液を30分間撹拌し、100mLの水を加え、さらに20mLの過酸化水素(H2O2)を少しずつ加えて本処理五次液を作製した。
【実施例1】
【0042】
(本処理6)
本処理五次液を90℃として30分間撹拌し、300mLの水を加えて希釈しながら、遠心分離を行った。上澄みが中性になるまで遠心分離を繰り返し行い、上澄みが中性になったところで完了とした。
【実施例1】
【0043】
このようにして、黒鉛を構成している炭素シートを、硫酸と、硝酸ナトリウムと、過マンガン酸カリウムを用いて酸化させることより炭素シートの剥離を生じさせて、酸化グラフェン分散溶液を作成した。
【実施例1】
【0044】
なお、黒鉛から炭素シートを酸化させながら剥離させた際には、炭素シートが1層だけで剥離することもあれば、複数層の炭素シートが積層された状態のまま剥離することもあり、複数層の炭素シートが積層された状態のものは厳密な意味での「グラフェン」ではないが、本発明では、便宜上、複数層の炭素シートが積層された状態のものも含めてグラフェンと呼ぶこととする。
【実施例1】
【0045】
以下において、上述の方法で作成した酸化グラフェン分散溶液を用いた実施例を説明する。なお、使用する酸化グラフェン分散溶液は、酸化グラフェンが10mg/mLの濃度となるように調整した。
【実施例2】
【0046】
<酸化グラフェンにパラジウムを担持させてなる触媒の分散液の作製>
酸化グラフェンにパラジウムを担持させてパラジウム-酸化グラフェン複合体とした触媒の分散液を、以下の方法で作成した。
【実施例2】
【0047】
まず、第1の工程として、3mLの酸化グラフェン分散溶液に、5mgの酢酸パラジウムを添加して混合溶液を作製した。
【実施例2】
【0048】
次いで、第2の工程として、第1工程の混合溶液に20mLのエタノールと、20mLの蒸留水を添加し、超音波を約2分間照射して十分に分散させた後、60℃で約1時間、加熱撹拌を行って、パラジウム粒子を酸化グラフェンに担持させたパラジウム-酸化グラフェン複合体の分散液を作製した。ここで、パラジウム-酸化グラフェン複合体が触媒である。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、還元剤としてエタノールを用いたが、DMF、THF、1,4-ジオキサン、プロパノール、ブタノールあるいはヘキサノール等を用いてもよい。加熱温度は60℃としたが、25~150℃、好適には25~80℃であればよく、また、加熱時間は、0.1~24時間、好適には0.2~5時間であればよく、加熱時間を高温とすることにより加熱時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0050】
上記したようにエタノール:蒸留水=1:1として作製したパラジウム-酸化グラフェン複合体の分散液を、便宜上、Pd/GO分散液と呼ぶこととする。
【実施例2】
【0051】
<触媒の機能確認(1-1):鈴木-宮浦反応>
1atmのアルゴン雰囲気下で、試験管に、1mLのPd/GO分散液と、0.22mmolのフェニルボロン酸(1)と、0.2mmolのブロモベンゼン(2)を加え、密封し、40℃で3時間加熱撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、ビフェニル(3)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化1】
JP0006116016B2_000002t.gif
【実施例2】
【0052】
Pd/GO分散液中の触媒の濃度は0.005mol%であって、ビフェニル(3)の収量は99%以上であった。既存のパラジウム-カーボン触媒で比較試験を行ったが、この場合、反応がほとんど進行せず、触媒の濃度が0.005mol%の場合でビフェニル(3)の収量が5%以下であった。特に、パラジウム-酸化グラフェン複合体触媒は、パラジウム-カーボン触媒の触媒量の1/10としても目的の生成物を吸収率で得ることができ、高効率な触媒であることが確認できた。
【実施例2】
【0053】
<触媒の機能確認(1-2):水素添加反応>
風船での1atmの水素雰囲気下で、試験管に、1mLのPd/GO分散液と、0.20mmolのカルコン(4)を加え、室温で10時間撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(5)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化2】
JP0006116016B2_000003t.gif
【実施例2】
【0054】
Pd/GO分散液中の触媒の濃度は0.005mol%であって、1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(5)の収量は95%以上であった。
【実施例2】
【0055】
<触媒の機能確認(1-3):触媒回転数の確認>
1atmのアルゴン雰囲気下で、試験管に、1mLのPd/GO分散液と、1.65mmolのフェニルボロン酸(1)と、1.5mmolの4-アセチルヨードベンゼン(6)を加え、密封し、135℃で1時間加熱撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、ビフェニル(7)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化3】
JP0006116016B2_000004t.gif
【実施例2】
【0056】
Pd/GO分散液中の触媒の濃度は0.005mol%であって、ビフェニル(7)の収量は44%であった。
【実施例2】
【0057】
パラジウム1原子あたりの触媒回転数を算出したところ、TOF (Turn Over Frequency, 1時間あたりの触媒回転数)及びTON(Turn Over Number,総触媒回転数)が237,000と極めて高い値となり、高効率な触媒であることが確認できた。
【実施例2】
【0058】
<触媒の機能確認(1-4):Heck反応>
1atmのアルゴン雰囲気下で、試験管に、1mLのPd/GO分散液と、0.25mmolの臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムと、0.75mmolのヨードベンゼン(8)と、0.5mmolのスチレン(9)を加え、密封し、100℃で24時間加熱撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、スチルベン(10)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化4】
JP0006116016B2_000005t.gif
【実施例2】
【0059】
Pd/GO分散液中の触媒の濃度は0.005mol%であって、スチルベン(10)の収量は93%であった。臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムは界面活性剤として働き、グラフェン層が凝集することを抑制しているものと思われる。
【実施例3】
【0060】
<酸化グラフェンに白金を担持させてなる触媒の分散液の作製>
酸化グラフェンに白金を担持させて白金-酸化グラフェン複合体とした触媒の分散液を、以下の方法で作成した。
【実施例3】
【0061】
まず、第1の工程として、3mLの酸化グラフェン分散溶液に、50mgの塩化白金を添加して混合溶液を作製した。
【実施例3】
【0062】
次いで、第2の工程として、第1工程の混合溶液に20mLのエタノールと、20mLの蒸留水を添加し、超音波を約2分間照射して十分に分散させた後、80℃で約15時間、加熱撹拌を行って、白金ナノ粒子を酸化グラフェンに担持させた一次分散液を作製した。
【実施例3】
【0063】
この一次分散液1.5mLを5,000rpmで5分間の条件の遠心分離して、上澄み液をデカンテーションし、水を加えて2回の遠心分離を行った後、t-BuOHを加えて遠心分離を行い、残った固体に1.5mLのt-BuOHを加えて二次分散液を作製した。この二次分散液が触媒分散液であり、白金-酸化グラフェン複合体が触媒である。
【実施例3】
【0064】
本実施例では、還元剤としてエタノールを用いたが、DMF、THF、1,4-ジオキサン、プロパノール、ブタノールあるいはヘキサノール等を用いてもよい。加熱温度は80℃としたが、25~150℃、好適には25~100℃であればよく、また、加熱時間は、0.5~48時間、好適には1~20時間であればよく、加熱時間を高温とすることにより加熱時間を短くすることができる。
【実施例3】
【0065】
上記したようにエタノール:蒸留水=1:1として作製した白金-酸化グラフェン複合体の分散液を、便宜上、Pt/GO分散液と呼ぶこととする。
【実施例3】
【0066】
<触媒の機能確認(2-1)>
空気中で、試験管に、1mLのPt/GO分散液と、0.20mmolのベンジルアルコール(11)を加え、開封したまま、室温で12時間撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、ベンズアルデヒド(12)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化5】
JP0006116016B2_000006t.gif
【実施例3】
【0067】
触媒分散液中の触媒の濃度は5mol%であって、ベンズアルデヒド(12)の収量は91%であった。
【実施例3】
【0068】
<触媒の機能確認(2-2)>
空気中で、試験管に、1mLの上記触媒分散液と、0.50mmolのトリエチルシラン(13)と、5mmolの水を加え、超音波を3時間照射した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、トリエチルシラノール(14)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化6】
JP0006116016B2_000007t.gif
【実施例3】
【0069】
触媒分散液中の触媒の濃度は0.2mol%であって、トリエチルシラノール(14)の収量は90%であった。既存の白金-カーボン触媒で比較試験を行ったが、触媒の濃度が0.2mol%の場合でトリエチルシラノール(14)の収量が55%であり、既存の白金-カーボン触媒よりも効率のよい触媒であることが確認できた。
【実施例4】
【0070】
<白金-酸化グラフェン複合体上の白金ナノ粒子のサイズ制御>
上述した白金-酸化グラフェン複合体の分散液において、ナノサイズの粒子となっている白金のサイズを制御できることを見出した。
【実施例4】
【0071】
まず、第1の工程として、1mLの酸化グラフェン分散溶液に、1mgの塩化白金を添加して混合溶液を作製した。
【実施例4】
【0072】
次いで、第2の工程として、第1工程の混合溶液に20mLのエタノールと、20mLの蒸留水を添加し、室温で5分間撹拌し十分に分散させた後、トリエチルシラン0.6mLを滴下し、室温で1時間撹拌することで、白金ナノ粒子を酸化グラフェンに担持させた一次分散液を作製した。
【実施例4】
【0073】
この一次分散液1.5mLを5,000rpmで5分間の条件の遠心分離して、上澄み液をデカンテーションし、水を加えて2回の遠心分離を行った後、1,4-ジオキサンを加えて遠心分離を行い、残った固体に1.5mLの1,4-ジオキサンを加えて二次分散液を作製した。この二次分散液が触媒分散液であり、白金-酸化グラフェン複合体が触媒である。
【実施例4】
【0074】
本実施例では、還元剤としてエタノールを用いたが、DMF、THF、1,4-ジオキサン、プロパノール、ブタノールあるいはヘキサノール等いてもよい。
【実施例4】
【0075】
また、上述した実施例では加熱処理によって酸化グラフェンへの金属の担持を促しているが、本実施例では、補助的な還元剤としてトリエチルシランを用いることで、室温で酸化グラフェンへの金属の担持を促した。なお、トリエチルシランの替わりに、ポリジメチルシロキサン、トリフェニルシラン、t-ブチルジメチルシラン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のSi-H結合を有する化合物を用いてもよい。この補助的な還元剤の添加量は、0.01~10mL、好適には60~600mLが望ましい。
【実施例4】
【0076】
本実施例では、担持時の温度を室温としたが、0~150℃、好適には10~80℃であればよく、また、加熱時間は、0.5~48時間、好適には1~10時間であればよく、高温条件下ではより短時間の処理時間とすることができる。
【実施例4】
【0077】
ここで、酸化グラフェンに担持される白金の粒子径は、補助的な還元剤としてのトリエチルシランの添加量によって調節できる。図1は、金属-酸化グラフェン複合体の電子顕微鏡写真を示しており、図1のaは、0.06mLのトリエチルシランを加えた場合、図1のbは、0.2mLのトリエチルシランを加えた場合、図1のcは、0.4mLのトリエチルシランを加えた場合、図1のdは、0.6mLのトリエチルシランを加えた場合を示している。0.06~0.2mLのときは1~2nmの粒子,0.2mL以上では1nmの白金ナノ粒子が生成していることが分かる。
【実施例4】
【0078】
また、図1のeは、0.6mLのトリエチルシランを加えた場合であって、白金の替わりにパラジウムを担持させた場合、図1のfは、0.6mLのトリエチルシランを加えた場合であって、白金の替わりにイリジウムを担持させた場合、図1のgは、0.6mLのトリエチルシランを加えた場合であって、白金の替わりにロジウムを担持させた場合を示しており、白金のみならずパラジウム、イリジウム、ロジウムのナノ粒子も形成できることがわかる。
【実施例4】
【0079】
<触媒の機能確認(3)>
空気中で、試験管に、1.5mLの本実施例の触媒分散液と、0.50mmolのトリエチルシラン(13)と、5mmolの水を加え、室温で1時間撹拌した後、反応混合物をガスクロマトグラフィー分析し、トリエチルシラノール(14)の収量を求めた、下に、反応式を示す。
【化7】
JP0006116016B2_000008t.gif
【実施例4】
【0080】
触媒分散液中の触媒の濃度は0.03mol%であって、トリエチルシラノール(14)の収量は99%以上であった。既存の白金-カーボン触媒やトリエチルシランを加えずに作成した白金担持酸化グラフェンの触媒よりも効率の良い触媒となることが確認できた。
【実施例5】
【0081】
<金属スカベンジャーとしての機能確認(1)>
酸化グラフェンを還元することで金属を捕集する金属スカベンジャーとしての実施例を以下に示す。なお、捕集対象の金属源として、酢酸パラジウムを用いた。
【実施例5】
【0082】
まず、試験管に0.0003mmolの酢酸パラジウムと、1mLの水を加えるとともに、0.3mmolのブロモベンゼンと0.3mmolのフェニルボロン酸を加えて、酢酸パラジウムを十分に溶解させ、30mgの酸化グラフェンと1mLのエタノールを加えて、室温で2時間撹拌し、反応混合物を作成した。なお、ここで用いた酸化グラフェンは、実施例1の方法で作成した酸化グラフェン分散溶液から得られた酸化グラフェンである。
【実施例5】
【0083】
エバポレーターを用いて反応混合物から溶媒を分離し、分離された溶媒に1mol/Lの硝酸を加え、メンブレンフィルターで濾過して反応液とし、この反応液に対してICP-MSにてパラジウムの濃度を測定した。
【実施例5】
【0084】
その結果、反応液に溶出したパラジウムは加えたパラジウムの1.2%であった。つまり98.8%のパラジウムが酸化グラフェンに捕捉された。
【実施例6】
【0085】
<金属スカベンジャーとしての機能確認(2)>
酸化グラフェンを還元することで金属を捕集する金属スカベンジャーとしての実施例を以下に示す。なお、捕集対象の金属源として、酢酸パラジウムを用いた。
【実施例6】
【0086】
まず、試験管に0.003mmolの酢酸パラジウムと、1mLの水を加えるとともに、0.3mmolのカルコンを加えて、酢酸パラジウムを十分に溶解させ、30mgの酸化グラフェンと1mLのエタノールを加えて、室温で12時間撹拌し、反応混合物を作成した。なお、ここで用いた酸化グラフェンは、実施例1の方法で作成した酸化グラフェン分散溶液から得られた酸化グラフェンである。
【実施例6】
【0087】
エバポレーターを用いて反応混合物から溶媒を分離し、分離された溶媒に1mol/Lの硝酸を加え、メンブレンフィルターで濾過して反応液とし、この反応液に対してICP-MSにてパラジウムの濃度を測定した。
【実施例6】
【0088】
その結果、反応液に溶出したパラジウムは加えたパラジウムの0.2%であった。つまり99.8%のパラジウムが酸化グラフェンに捕捉された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
還元剤で還元された酸化グラフェンが金属を担持することを利用して、酸化グラフェン分散溶液とアルコール等の還元剤とをセットして金属スカベンジャーとして利用でき、あるいは触媒金属を担持した酸化グラフェンから成る金属-酸化グラフェン複合体を触媒として利用できる。
図面
【図1】
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