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明細書 :分光特性測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5765693号 (P5765693)
登録日 平成27年6月26日(2015.6.26)
発行日 平成27年8月19日(2015.8.19)
発明の名称または考案の名称 分光特性測定装置
国際特許分類 G01J   3/45        (2006.01)
G01N  21/3563      (2014.01)
G01N  21/359       (2014.01)
A61B   5/1455      (2006.01)
FI G01J 3/45
G01N 21/3563
G01N 21/359
A61B 5/14 322
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2014-539680 (P2014-539680)
出願日 平成25年9月25日(2013.9.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/075904
国際公開番号 WO2014/054488
国際公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権出願番号 2012219760
優先日 平成24年10月1日(2012.10.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月16日(2015.3.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】石丸 伊知郎
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】喜々津 徳胤
参考文献・文献 特開2008-309706(JP,A)
特開2010-271246(JP,A)
特開平06-281499(JP,A)
特開2009-133735(JP,A)
特開平09-113211(JP,A)
調査した分野 G01J3/00-3/52
G01N21/00-21/61
G01B9/02
特許請求の範囲 【請求項1】
a)固定反射部と、
b)該固定反射部の反射面と平行な反射面を有し、前記固定反射部の反射面に対して垂直方向に移動可能な可動反射部と、
c)被測定物の内部の複数の測定点から発せられた測定光を前記固定反射部の反射面と前記可動反射部の反射面に入射させる入射光学系と、
d)前記固定反射部の反射面で反射された固定反射測定光と前記可動反射部の反射面で反射された可動反射測定光を同一点に導いて両反射測定光の干渉光を形成する結像光学系と、
e)前記干渉光の強度を検出するための複数の画素を有する光検出部と、
f)前記結像光学系と前記光検出部の間の光路に配置された透過率が異なる複数の領域を有するフィルタであって、前記複数の測定点から発せられた該複数の測定光は前記複数の領域のうちの2つ以上の領域に分かれて透過した後、前記複数の画素のいずれかに入射し、各画素に入射する干渉光を形成する固定反射測定光と可動反射測定光が同じ領域を透過するように構成された減光フィルタと、
g)前記可動反射部を移動させたときの前記光検出部の各画素の検出信号から前記測定光のインターフェログラムを前記2つ以上の領域にそれぞれ対応する透過率で求め、このインターフェログラムに基づき測定光のスペクトルを求める演算処理部と
を備えることを特徴とする分光特性測定装置。
【請求項2】
さらに、
前記光検出部の各画素に入射する干渉光を形成する固定反射測定光と可動反射測定光が透過した前記減光フィルタの領域の透過率に基づき、該画素の検出信号から求められるインターフェログラムの強度を補償する補償手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項3】
複数の測定点から発せられた測定光の固定反射測定光と可動反射測定光が同じ領域を透過することを特徴とする請求項1または2に記載の分光特性測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分光特性測定装置に関し、特には、血糖や血中コレステロール等の生体成分を非侵襲で測定することができる分光特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病や高脂血症等、さまざまな病気において、血液に含まれるグルコース(血糖)やコレステロール等の生体成分の管理はその予防及び治療のために重要である。しかしながら、血液中の生体成分を測定するためには、通常、微量ながら血液を採取しなければならず、苦痛を伴う。また、採血部位の消毒や消耗品の処理などの煩わしい作業が必要であるため、例えば予防目的で生体成分を測定するための採血を日常的に行うことは敬遠される。
【0003】
これに対して、血液を採取せずに生体成分を測定する非侵襲の測定装置が提案されている(特許文献1参照)。この測定装置では、生体の被検部位に光を照射し、それにより該被検部位の内部の生体成分から発せられる光(物体光)の分光特性から生体成分を求める。具体的には、生体成分を光学的に構成する各輝点から生じる透過光や拡散・散乱光等の物体光を、対物レンズを介して位相シフタである固定ミラー部と可動ミラー部に導き、これら2つのミラー部から反射される物体光束を結像面において干渉させる。可動ミラー部はピエゾ素子などにより移動されるようになっており、該可動ミラー部の移動量に応じた位相差が固定ミラー部と可動ミラー部から反射される物体光束に付与され、それに伴い干渉光の強度が変化して、いわゆるインターフェログラムを形成する。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性(スペクトル)を取得する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-309707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結像面に形成された干渉光は光検出部で受光され、アナログ信号として出力される。この信号は、増幅器によって増幅された後、A/D変換器にてデジタルデータに変換され、該デジタルデータに対して所定のデータ処理を実行した後、フーリエ変換を実行することでスペクトルが得られる。生体成分の変化を調べる場合には、該生体成分からの透過光等を高精度に検出してノイズの少ないスペクトルを得る必要がある。そのためには、光検出器からのアナログ信号をできるだけ大きく増幅することが好ましいが、A/D変換器の入力レンジを超えるとオーバーフローが起きて飽和してしまうため、生体成分から発せられる光の最大光量を想定し、該最大光量に基づき増幅率が設定される。
【0006】
ところが、血液に含まれるグルコースやコレステロールの濃度を継続的に測定してその変化を調べるような場合に、一定の増幅率で測定を続けた場合には、必ずしも適切な増幅率で測定していることにはならない場合がある。特に、被検部位から発せられる光の光量が小さい場合は、グルコースやコレステロールの濃度の微量な変化を正確に測定することができない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、広い測定レンジで被測定物から発せられる光を測定できる分光特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光特性測定装置は、
a)固定反射部と、
b)該固定反射部の反射面と平行な反射面を有し、前記固定反射部の反射面に対して垂直方向に移動可能な可動反射部と、
c)被測定物の内部の複数の測定点から発せられた測定光を前記固定反射部の反射面と前記可動反射部の反射面に入射させる入射光学系と、
d)前記固定反射部の反射面で反射された固定反射測定光と前記可動反射部の反射面で反射された可動反射測定光を同一点に導いて両反射測定光の干渉光を形成する結像光学系と、
e)前記干渉光の強度を検出するための複数の画素を有する光検出部と、
f)前記結像光学系と前記光検出部の間の光路に配置された透過率が異なる複数の領域を有するフィルタであって、前記複数の測定点から発せられた該複数の測定光は前記複数の領域のうちの2つ以上の領域に分かれて透過した後、前記複数の画素のいずれかに入射し、各画素に入射する干渉光を形成する固定反射測定光と可動反射測定光が同じ領域を透過するように構成された減光フィルタと、
g)前記可動反射部を移動させたときの前記光検出部の各画素の検出信号から前記測定光のインターフェログラムを前記2つ以上の領域にそれぞれ対応する透過率で求め、このインターフェログラムに基づき測定光のスペクトルを求める演算処理部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成においては、干渉光を形成する固定反射測定光と可動反射測定光に、フィルタ内の光透過率が同一である領域を通過させて干渉光を検出する。そして、干渉光の検出信号からインターフェログラムを求め、測定光のスペクトルを求める。従って、一度の測定によって、光透過率が異なる複数の領域のそれぞれに対応した強度の干渉光を検出し、インターフェログラムを取得して、それらの中の最適なインターフェログラムから測定光のスペクトルを求めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、A/D変換器の入力レンジを超過するオーバーフローを防止しつつ、分光特性測定装置のダイナミックレンジを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例に係る血糖値センサの全体構成を示す概略図。
【図2】干渉光強度変化とインターフェログラム、分光特性の関係を説明する図。
【図3】減光フィルタを示す図。
【図4】第1実施例に係る血糖値センサの解析結果と従来の血糖値センサの解析結果の比較図。
【図5】本発明の第3実施例に係る血糖値センサの全体構成を示す概略図。
【図6】本発明の第4実施例に係る血糖値センサの全体構成を示す概略図。
【図7】検出部の受光面を示す図。
【図8】回折格子から対物レンズに入射する1次回折光の波長、回折角の説明図。
【図9】回折格子からの1次回折光を示す正面図(a)及び側面図(b)並びに1次回折光を立体的に示す図(c)。
【図10】測定光のインターフェログラム(a)と1次回折光の干渉光強度変化(b)の関係を示す図。
【図11】インターフェログラムの補正方法の説明図であり、取得データ(a)、余弦曲線で近似した図(b)、余弦曲線をシフトした図(c)。
【図12】減光フィルタの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を血糖値センサに適用した具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1に係る血糖値センサ10の全体構成を示している。血糖値センサ10は、分光測定部16と該分光測定部16の動作を制御する制御部40とを備えている。
【実施例1】
【0014】
分光測定部16は、光源161、対物レンズ162、位相シフタ163、結像レンズ164、検出部165、減光装置166から構成されている。本実施例では、対物レンズ162及び結像レンズ164がそれぞれ入射光学系及び結像光学系に相当する。対物レンズ162は指先Fの光照射面と対向配置されている。一方、結像レンズ164は、対物レンズ162と光軸が直交する向きに配置されている。
【実施例1】
【0015】
光源161には、皮膚の透過性が良い、波長が1μm付近の近赤外光を出射する光源が用いられている。光源161からの出射光は被測定物である指先Fに照射されると該指先Fの皮膚を透過し、その内部において様々な光学現象に起因した反射光、散乱光を生成する。これらの光は再び皮膚を透過して指先Fの外部に出射して対物レンズ162に入射し、平行光束に変換される。
検出部165は例えば16×16画素の二次元CCDカメラ165aと該CCDカメラ165aの受光信号を増幅する増幅器(図示せず)、増幅された受光信号をA/D変換するA/D変換器165bを含んで構成されており、結像レンズ164の結像面にCCDカメラ165aの受光面165cが位置するように配置されている。
【実施例1】
【0016】
検出部165の検出信号は記憶部41に保存されるようになっている。詳しくは後述するように、処理部42は記憶部41に保存された検出信号を読み出し、インターフェログラムを求める。このインターフェログラムは演算処理部43によって数学的にフーリエ変換され、その結果、測定光の波長毎の相対強度である分光特性(スペクトル)が得られる。
【実施例1】
【0017】
位相シフタ163は、対物レンズ162と結像レンズ164の間に配置されている。位相シフタ163は固定ミラー部31及び可動ミラー部32、及び可動ミラー部32を移動させる駆動機構33から構成されている。固定ミラー部31及び可動ミラー部32は、いずれも対物レンズ162の光軸及び結像レンズ164の光軸に対して45°の角度で傾斜する矩形状の反射面を有している。両ミラー部の反射面は、非常に僅かな隙間をおいて並べて配置されている。
【実施例1】
【0018】
駆動機構33は、例えば静電容量センサを具備する圧電素子から構成されており、制御部40からの信号を受けて、光軸に対する反射面の傾斜角度を45°に維持した状態で可動ミラー部32を矢印A方向に移動させる。このような構成により、固定ミラー部31に対する可動ミラー部32の相対位置が変化し、固定ミラー部31で反射された光束、及び可動ミラー部32で反射された光束の間に位相差が付与される。
【実施例1】
【0019】
具体的には、可動ミラー部32の対物レンズ162或いは結像レンズ164の光軸方向の移動量は、可動ミラー部32の矢印A方向の移動量の1/√2となる。また、固定光束と可動光束の間に相対的な位相変化を与える光路長差は、可動ミラー部32の光軸方向の移動量の2倍となる。
【実施例1】
【0020】
減光装置166は、結像レンズ164と検出部165の間に配設されている。減光装置166は、透過率が段階的に変化する複数の領域が横方向に並べて配置された矩形板状の減光フィルタ166a(図3参照)と、これをラック、ピニオンを介して直線方向に移動させるステッピングモータを含んで構成される。減光フィルタ166aの透過率とステッピングモータのステップ数との関係を表す制御テーブルは予め記憶部41に保存されている。従って、減光フィルタ166aを目的の透過率に設定するときには、制御部40はステッピングモータを制御テーブルから求まるステップ数になるように駆動する。
【実施例1】
【0021】
次に、上記構成の血糖値センサ10を用いて被検者の手の指先の血液中の血糖(グルコース)を測定する場合の動作について説明する。
まず、被検者の手の指先Fを所定の位置に置き、光源161からの近赤外光を指先Fに照射する。すると、近赤外光は、指先Fの皮膚を透過して指先F内部の様々な生体成分によって散乱される。生体成分によって散乱された光は、再び指先Fの皮膚を経て外部に出射される。
【実施例1】
【0022】
なお、測定開始直後の初期状態においては、位相シフタ163の固定ミラー部31及び可動ミラー部32の表面(反射面)は同一平面上に位置している。また、減光フィルタ166aは、複数の領域のうち例えば中間値の透過率(40%)の領域が結像レンズ164と検出部165の光路上に位置している。その後、測定動作が開始されると、後述するように制御部40は、駆動機構33を駆動して可動ミラー部32を移動させると共に、減光装置166を駆動して設定された適正透過率の領域が結像レンズ164と検出部165の光路上に位置するように減光フィルタ166aを移動させる。
【実施例1】
【0023】
指先Fの内部から出射された測定光としての散乱光は様々な方向に拡がりながら対物レンズ162に到達し、平行光束となって位相シフタ163の固定ミラー部31及び可動ミラー部32の表面全体に至る。つまり、散乱光の一部は固定ミラー部31の反射面で反射され、残りの散乱光は可動ミラー部32の反射面で反射され、それぞれ結像レンズ164に入射する。なお、以下の説明では、固定ミラー部31で反射された散乱光を固定散乱光束、可動ミラー部32で反射された散乱光を可動散乱光束とも呼ぶ。
【実施例1】
【0024】
結像レンズ164に入射した固定散乱光束及び可動散乱光束は減光フィルタ166aを通して検出部165の受光面165cに入射し、干渉する。このとき、指先Fの内部から発せられる散乱光には、様々な波長の光が含まれることから、可動ミラー部32を移動させて可動散乱光束と固定散乱光束の光路長差を変化させることにより、インターフェログラムと呼ばれる結像強度変化(干渉光強度変化)の波形が得られる、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより分光特性を取得できる。図2に各波長の光の干渉強度変化、インターフェログラム、分光特性を示す。
【実施例1】
【0025】
また、本実施例の血糖値センサ10では、指先F内部のうち対物レンズ162の特定深度に位置する合焦面から発せられた散乱光のみが検出部165の受光面165cにおいて結像し、合焦面以外から生じた光は検出部165の受光面165cで結像しない。従って、合焦面のみに深度を限定した指先内部の分光特性を得ることができる。
【実施例1】
【0026】
検出部165の受光面165cに入射し、干渉した光は、アナログ信号として出力される。この信号はA/D変換器165bにおいてデジタルデータに変換され、制御部40の演算処理部43に入力される。演算処理部43では、該デジタルデータに対して所定のデータ処理を実行した後、フーリエ変換を実行することにより分光特性(スペクトル)を得る。
ところで、検出部165の受光面165cで干渉する光の強度は血糖値の大きさに応じて変化(増減)する。強度が小さい干渉光のアナログ信号は信号強度が小さいため、そのまま演算処理部43に入力されると該信号強度を感度良く測定することができない。そのため、干渉光のアナログ信号は増幅器(図示せず)によって増幅された後、A/D変換器165bに入力される。ところが、干渉光強度が大きい場合には、増幅後のアナログ信号がA/D変換器165bの入力レンジを超えてオーバーフローが起き、飽和してしまうことがある。
【実施例1】
【0027】
そこで、制御部40は、ステッピングモータを駆動して減光フィルタ166aを移動させ、減光フィルタ166aを適正透過率に設定する。演算処理部43は、減光フィルタ166aの透過率から、該透過率が100%のときのインターフェログラムを求める。従って、本実施例では、演算処理部43が補償手段として機能する。そして、補正後のインターフェログラムをフーリエ変換して分光特性を求める。
【実施例1】
【0028】
具体的には、演算処理部43は、初期状態において検出部165で検出された測定光の干渉光強度から、該干渉光強度が検出部165(A/D変換器)の入力レンジに収まる最大値となるように減光装置166の適正透過率を設定する。従って、本実施例では演算処理部42が設定手段として機能する。設定された適正透過率は記憶部41に記憶される。制御部40は、記憶部41に記憶された適正透過率を読み取り、ステッピングモータを介して減光フィルタ166aを移動する。従って、その後の測定動作では、検出部165には減光フィルタ166aの適正透過率の領域を通過した測定光の干渉光が入射する。従って、検出部165の入力レンジを有効に利用でき、しかも、入力レンジを超過するオーバーフローを防止することができる。
【実施例1】
【0029】
図4に、本実施例の血糖値センサ10を用いて試験管内のグルコース濃度を測定し、解析した結果を示す。従来型(減光フィルタの減光率が一定、或いは減光フィルタなし)では、干渉光強度が大きいアナログ信号に合わせて増幅率を小さくすると、低濃度領域が検出限界を下回ってしまい(図4の(a))、干渉光強度が小さいアナログ信号に合わせて増幅率を大きくすると、高濃度領域で飽和してしまう(図4の(b))。一方、減光フィルタ166aの透過率を可変にした本実施例では、全濃度領域で適正に測定することができる(図4の(c))。
【実施例2】
【0030】
実施例2の血糖値センサの要部構成は、図1に示した実施例1と同様であるため、図示及び詳細な説明を省略する。本実施例では、透過率が異なる複数の領域を備えた減光フィルタ166aの全面に反射測定光を透過させてインターフェログラムを求める。従って、実施例1と異なり、本実施例では減光フィルタ166aは移動させない。また、実施例1と同様に、16×16画素の二次元CCDカメラ165aを用いるが、減光フィルタ166aの領域数と同数以上の画素を有する他のカメラ等を用いてもよい。
【実施例2】
【0031】
本実施例では、1つの干渉光(干渉像)を形成する固定散乱光束と可動散乱光束は、減光フィルタ166aの同一の領域を通過する。本実施例では図3に示すように、透過率が異なる5つの領域を備えた減光フィルタ166aを用いるため、検出手段165によって強度が異なる5つの干渉光を同時に検出し、それぞれについてインターフェログラムを求めることができる。そして、求めたインターフェログラムから適切な透過率を求め、該透過率の領域を透過した測定光のインターフェログラムを用いてスペクトルを求める。
このように、本実施例の構成では、一度の測定で強度が異なる複数の干渉光を検出するため、実施例1の構成よりも効率的に測定を行うことができる。
【実施例3】
【0032】
図5は実施例3に係る血糖値センサ110の全体構成を示している。この血糖値センサ110は、矩形箱状のケーシング112内に分光測定部16を収容してなる。ケーシング112の外周側面の一つ、例えば上面には矩形板状の窓部114が固定されている。
【実施例3】
【0033】
ケーシング112は、例えばプラスチックや金属などの、光を透過しない材料から作製されている。窓部114は、光透過性を有する材料、例えばガラスやプラスチックから作製されており、その上面に指先Fが載置されるようになっている。そして、光源161は、その出射光が窓部114の光照射面に照射されたときに正反射光L0が対物レンズ162に入射しないような向きに配置されている。
【実施例3】
【0034】
本実施例では、窓部114の上面に指先Fを強く押し当て、指先Fと窓部114を密着させて測定を行う。このため、光源161の光は、窓部114を通して指先Fの内部に入射し、内部の様々な生体成分によって散乱された後、再び指先Fから出射され、窓部114を通ってケーシング112内に至り、測定光として対物レンズ162に入射する。このとき、指先Fが窓部114に密着しているため、指先Fの表面の凹凸構造が平坦化し、光源161からの光が前記凹凸構造によって散乱、反射して測定光に混入することを抑制できる。また、指先Fを窓部114に強く押し当てることにより、測定中、対物レンズ162の合焦位置を指先F内の所定の位置(深度)に維持することができる。以上より、本実施例に係る血糖値センサ110では、血糖値を精度良く測定することができる。
【実施例4】
【0035】
図6~図11は本発明の実施例4に係る血糖値センサ210を示している。以下では、実施例3に係る血糖値センサ110との違いを中心に説明する。まず、この血糖値センサ210は、ケーシング112の上面に固定された窓部214の構成が実施例3の窓部114と異なっている。
【実施例4】
【0036】
具体的には、図6の(b)に示すように、ケーシング112内に位置する窓部214の下面(光照射面)の一部には回折格子が形成されている。この実施例では、窓部214の対向する2辺に沿って延びる2個の回折格子220、221が形成されている。以下の説明では、窓部214の光照射面のうち2個の回折格子220、221が形成された領域を参照光領域、それ以外の領域を測定光領域とも呼ぶ。各回折格子220、221は、いずれも窓部214の2辺と平行な複数本の突条部から成る。本実施例では、これら突条部の間隔は 1.1 μmに設定されている。
【実施例4】
【0037】
光源161は、その出射光が窓部214の光照射面に照射されたときに正反射光が対物レンズ162に入射せず、且つ、前記回折格子220、221に照射されたときに生成される1次回折光が対物レンズ162に入射するような向きに配置されている。回折格子220、221からの1次回折光は参照光として利用される。参照光については後述する。
【実施例4】
【0038】
検出部165は例えば16×16画素の二次元CCDカメラ165aと該CCDカメラ165aの受光信号を増幅する増幅器(図示せず)、増幅された受光信号をA/D変換するA/D変換器165bを含んで構成されており、結像レンズ164の結像面にCCDカメラ165aの受光面165cが位置するように配置されている。
【実施例4】
【0039】
図7は検出部165の受光面165cを概略的に示す図である。なお、ここでは便宜上画素数を10×10として説明する。この図7に示すように、検出部165の受光面165cには多数のCCDが配置されており、そのうち上端の20個(2×10)及び下端の20個のCCDにそれぞれ回折格子220及び回折格子221で生じた1次回折光(参照光)が結像する。従って、これらのCCDが参照光検出部となる。一方、受光面165cのうち参照光検出部を除くCCDに測定光が結像する。従って、これらのCCDが測定光検出部となる。なお、実際は窓部214の載置面に載置された指先Fの画像Faが示す部分に位置するCCDに測定光が結像することになる。
【実施例4】
【0040】
上記構成の血糖値センサ210を用いて被検者の手の指先の血液中の血糖(グルコース)を測定する場合の動作について説明する。なお、本実施例においても、測定開始直後の初期状態においては、位相シフタ163の固定ミラー部31及び可動ミラー部32の表面(反射面)は同一平面上に位置し、減光フィルタ166aは、複数の領域のうち例えば中間値の透過率(40%)の領域が結像レンズ164と検出部165の光路上に位置しているものとする。
【実施例4】
【0041】
まず、被検者の手の指先Fを窓部214の載置面に強く押し当てる。この状態で、光源161からの近赤外光を窓部214に照射する。すると、窓部214の測定光領域に照射された近赤外光は、窓部214を通して指先に至り、指先の皮膚を透過して指先内部の様々な生体成分によって散乱される。生体成分によって散乱された光は、再び指先の皮膚を経て窓部214からケーシング112内に至り、対物レンズ162に入射する。
【実施例4】
【0042】
指先内部から発せられた測定光としての散乱光は様々な方向に拡がりながら対物レンズ162に到達し、平行光束となって位相シフタ163の固定ミラー部31及び可動ミラー部32の表面全体に至る。そして、散乱光の一部は固定ミラー部31の反射面で反射され、残りの散乱光は可動ミラー部32の反射面で反射され、それぞれ結像レンズ164に入射する。
【実施例4】
【0043】
結像レンズ164に入射した固定ミラー部31及び可動ミラー部32の反射面で反射された光(固定散乱光束及び可動散乱光束)は減光フィルタ166aを通して検出部165の受光面165cに入射し、干渉する。このとき、被検部位の内部から発せられる散乱光には、様々な波長の光が含まれることから、可動ミラー部32を移動させて可動散乱光束と固定散乱光束の光路長差を変化させることにより、インターフェログラムと呼ばれる結像強度変化(干渉光強度変化)の波形が得られる、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより分光特性を取得できる。
【実施例4】
【0044】
一方、窓部214の参照光領域に照射された近赤外光は回折格子220、221で反射され、特定波長λの1次回折光が対物レンズ162に入射する。本実施例では、図8に示すように、格子周期(突条部の間隔)d=1.1μmの回折格子に対して、光源161からの近赤外光が入射角45deg.で入射するように構成されている。また、開口数N.A.=0.24(開口角=14deg.)、焦点距離=20mm、レンズ口径g=φ10mmの対物レンズ162が用いられている。このとき、対物レンズ162に入射する短波長側の最小回折角θminは31deg.、その波長λminは0.566μmとなり、長波長側の最大回折角θmaxは59deg.、その波長λmaxは0.943μmとなる。また、本実施例では、検出部165として、検出波長域が0.9μm~1.7μmのInGaAsカメラを用いた。従って、対物レンズ162に入射した1次回折光のうち検出部165で検出される波長域は非常に狭い波長域(0.9μm~0.943μm)となる。
【実施例4】
【0045】
また、図9に示すように、回折格子220、221からの1次回折光は、回折格子220、221の幅方向に広がって対物レンズ162に到達し(図9(a)の正面図参照)、回折格子20、21の延びる方向では平行光束として対物レンズ162に到達する(図9(b)の側面図参照)。つまり、図9の(c)に示すような四角錐台形状の1次回折光が対物レンズ162に到達する。この結果、対物レンズ162に入射した1次回折光は、固定ミラー部31と可動ミラー部32の境界付近に、光源161の大きさと同等の幅を有する帯状の光として至り、一部は固定ミラー部31の反射面で反射され、残りは可動ミラー部32の反射面で反射され、それぞれ結像レンズ164に入射する。なお、以下の説明では、固定ミラー部31で反射された1次回折光を固定回折光、可動ミラー部32で反射された1次回折光を可動回折光とも呼ぶ。
【実施例4】
【0046】
結像レンズ164に入射した固定回折光及び可動回折光は減光フィルタ166aを通して検出部165の受光面165cに入射し、干渉像を形成する。このとき、可動ミラー部32を移動させて固定回折光と可動回折光の光路長差を変化させることにより干渉光強度変化が得られる。上述したように、固定回折光及び可動回折光は波長域が非常に狭く、ほぼ単一波長の光といえるため、ここで得られる干渉光強度変化の形状は単純な余弦波となる。
【実施例4】
【0047】
窓部214を通して指先Fに照射される光と、回折格子220、221で1次回折光を発生させる光は同一の光源から出射される光であるため、光源161から発せられる光強度に揺らぎが生じた場合は、測定光(散乱光)の干渉光強度変化及び1次回折光の干渉光強度変化の両方がその影響を受ける。また、窓部214から検出部165に至るまでの測定光と1次回折光の光路が共通であるため、この共通光路上に外乱が発生した場合、測定光の干渉光強度変化及び1次回折光の干渉光強度変化の両方が外乱の影響を受ける。
【実施例4】
【0048】
そこで、本実施例の演算処理部43は、1次回折光の干渉光強度変化の振幅、及び該1次回折光と該1次回折光と同じ波長の測定光との位相差から測定光のインターフェログラムを補正する。このとき、演算処理部43は、減光フィルタ166aの透過率から、透過率が100%のときのインターフェログラムを求め、このインターフェログラムを補正する。従って、本実施例では、演算処理部43が補償手段として機能する。そして、補正後のインターフェログラムをフーリエ変換して分光特性を求める。
【実施例4】
【0049】
例えば図10の(a)に示すような測定光のインターフェログラムと、図10の(b)に示すような回折光の干渉光強度変化が得られたとすると、測定光のインターフェログラムの干渉光強度(Im)を1次回折光の干渉光強度変化の振幅(Io)に対する比(Im/Io)を用いることにより該インターフェログラムを補正する。ここではImとIoにおいて光源の時間変動の影響が同じなので、Im/Ioを用いて補正することにより光源の時間変動の影響を抑制することができ測定精度が向上する。また、1次回折光と測定光の位相ずれ量だけ測定光のインターフェログラムの位相をシフトすることにより、該インターフェログラムを補正する。具体的には、例えば、まず1次回折光の干渉光強度変化について取得(サンプリング)したデータ(図11(a))を余弦曲線(波)で近似する(図11(b))。このときのデータの位相値を位相実験値θeとする。次に位相θ=0で余弦曲線が頂点(最大値)となるように余弦曲線をシフト(補正)する(図11(c))。このときのデータの位相値を位相補正値θcとする。この補正により位相シフタ動作時の誤差など光路上に発生した外乱の影響を抑制することができ測定精度が向上する。このように、光源161の光強度の揺らぎ、及び光路上に発生した外乱の影響を抑えることができ、測定光のインターフェログラムを精度良く求めることができる。
【実施例4】
【0050】
さらに、本実施例においては、窓部214の面内の一部に2次元的に分布している回折格子に対して1次回折光の干渉光をイメージングして取得するので、空間的な積算・平均化効果により測定精度が向上する。
【実施例4】
【0051】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような変形が可能である。
測定時の初期状態における測定光及び参照光の干渉光強度から減光フィルタ166aの適正透過率を求めるようにしたが、作業者が減光フィルタ166aの透過率を設定するようにしても良い。
【実施例4】
【0052】
上記実施例では、指先の血液中の血糖を測定する装置を例に挙げて説明したが、本発明は、セルに収容された試料中の成分濃度を測定する装置に適用することもできる。
【実施例4】
【0053】
上記実施例では、横方向に段階的に透過率が変化する減光フィルタを用いたが、図12に示すような、横方向及び縦方向に透過率が異なる複数の領域が配置された減光フィルタを用いても良い。また、透過率が円周方向に変化する円板状の光学フィルタを用いても良く、この場合は、光学フィルタを円周方向に移動させるステッピングモータで減光装置を構成することができる。さらに、透過率が連続的に変化する減光フィルタを用いても良い。
【実施例4】
【0054】
上記実施例では指を測定対象としたが、人体における耳たぶ等の他の部位や内臓など、他の生体についても対象とすることができる。また、生体の血糖値測定などの医療分野だけでなく、果実の糖度測定など食品分野、物質材料の成分測定など工業分野にも適用できる。
【実施例4】
【0055】
減光フィルタは、位相シフタ(可動反射部及び固定反射部)と結像レンズの間に配置しても良い。
【符号の説明】
【0056】
10、110、210…血糖値センサ
112…ケーシング
114、214…窓部
16…分光測定部
161…光源
162…対物レンズ
163…位相シフタ
164…結像レンズ
165…検出部
165a…CCDカメラ
165b…A/D変換器
165c…受光面
166…減光装置
166a…減光フィルタ
220、221…回折格子
31…固定ミラー部
32…可動ミラー部
33…駆動機構
40…制御部
41…記憶部
42…処理部
43…演算処理部(補償手段)
52…反射膜
F…指先(被測定物)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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