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明細書 :連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体、およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6164591号 (P6164591)
登録日 平成29年6月30日(2017.6.30)
発行日 平成29年7月19日(2017.7.19)
発明の名称または考案の名称 連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体、およびその製造方法
国際特許分類 C08J   5/04        (2006.01)
B29B  11/16        (2006.01)
B29C  70/06        (2006.01)
D04C   1/12        (2006.01)
D03D   3/02        (2006.01)
D03D   1/00        (2006.01)
D04B   1/22        (2006.01)
D04B  21/20        (2006.01)
FI C08J 5/04 CER
C08J 5/04 CEZ
B29B 11/16
B29C 70/06
D04C 1/12
D03D 3/02
D03D 1/00 A
D04B 1/22
D04B 21/20 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2014-542000 (P2014-542000)
出願日 平成25年9月13日(2013.9.13)
国際出願番号 PCT/JP2013/074803
国際公開番号 WO2014/061384
国際公開日 平成26年4月24日(2014.4.24)
優先権出願番号 2012229891
優先日 平成24年10月17日(2012.10.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年7月20日(2016.7.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】大谷 章夫
【氏名】仲井 朝美
個別代理人の代理人 【識別番号】100129698、【弁理士】、【氏名又は名称】武川 隆宣
審査官 【審査官】飛彈 浩一
参考文献・文献 特開2001-73241(JP,A)
特開2005-52987(JP,A)
特開2007-46197(JP,A)
特開2004-115961(JP,A)
特開2010-121250(JP,A)
調査した分野 C08J 5/04-5/24
5/24
B29B 11/16
B29C 70/06
D03D 1/00
D03D 3/02
D04B 1/22
D04B 21/20
D04C 1/12
特許請求の範囲 【請求項1】
連続繊維束と、
当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、
前記連続繊維束が偏平に変形可能であることを特徴とする連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂繊維は、
(a)長手方向に対して斜めに配向された組糸と、当該組糸間に挿入されるように長手方向に配向された中央糸とからなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する組物構造
(b)長手方向に対して直交して交差する経糸と緯糸とからなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する織物構造
(c)ループを形成する糸からなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する編物構造
上記(a)~(c)のいずれかの構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体。
【請求項3】
前記連続繊維束は、そのアスペクト比が1.2以上の値となるように変形可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体。
【請求項4】
前記連続繊維束は、そのアスペクト比が3~10の値となるように変形可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体。
【請求項5】
連続繊維束と、
当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、
前記連続繊維束が偏平に変形可能である連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法であって、
前記連続繊維束の外径より一回り大きな外径を有するガイドを被覆するように熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造を作製し、その被覆構造内に前記連続繊維束を挿通配置するようにしたことを特徴とする連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法。
【請求項6】
連続繊維束と、
当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、
前記連続繊維束が偏平に変形可能である連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法であって、
前記連続繊維束の外径より一回り大きな外径を有するガイドを被覆するように熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造を作製し、
前記ガイドの内側に前記連続繊維束を挿通し、
当該連続繊維束と、前記熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造とを同時に前記ガイドから抜き取ることにより、前記被覆構造内に前記連続繊維束を挿通配置するようにしたことを特徴とする連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法。
【請求項7】
前記連続繊維束は、そのアスペクト比が1.2以上の値となるように変形可能なものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法。
【請求項8】
前記連続繊維束は、そのアスペクト比が3~10の値となるように変形可能なものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造に用いる中間材料として、コミングルヤーン(混繊糸)、プリプレグテープ、マイクロブレーデッドヤーン(MBY)が知られている。
コミングルヤーンは、含浸性に優れてはいるものの、汎用的な熱可塑性樹脂との限定的な組み合わせしか選べないといった制約や、混繊過程で強化繊維が損傷するという問題がある。
また、プリプレグテープは、予め樹脂が繊維に含浸されているため、含浸に時間がかからないという特長があるが、繊維束ではなくテープ状であり剛性が高いため、適用可能な形状が平面や曲面に限られるという問題がある。
【0003】
一方、マイクロブレーデッドヤーンは、様々な熱可塑性樹脂繊維との組み合わせが可能であり、強化繊維の損傷が少ない、比較的安価に作成することが可能であるなどといった優れた特長を有している。
このように、熱可塑性樹脂を母材樹脂とし、連続繊維を強化繊維とした連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、熱硬化性樹脂複合材料に比べリサイクル性能を有し、繊維が連続しているため強化繊維の強度を最大に活かすことができることから、自動車や航空機向け構造材料として、大幅な需要の拡大が期待されている。
【0004】
しかしながら、熱可塑性樹脂の溶融粘度は、硬化前の熱硬化性樹脂と比較して極めて高い(熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂としてナイロン(PA6)樹脂を例に取ると、 前者は数十Pa・sであるのに対して、後者は数百~数千Pa・sである。)ため、複合材料成形時に連続繊維の中への含浸が難しいことが問題となっている。
【0005】
特に連続繊維強化複合材料においては、繊維を流動させず、繊維集合体に浸み込ませる成形形態をとることから、より含浸が困難となる。
連続繊維強化複合材料においては、樹脂を十分に連続繊維束の中に含浸させることにより、多数本の連続繊維すべての優れた剛性と強度を引き出すことが可能となるため、含浸不十分の成形品では、力学的特性の低下が起こる原因となる。そのため、未含浸の領域をできるだけ減らすことが重要となる。
現在、連続繊維強化熱可塑性複合材料作製のために、樹脂をできるだけ連続繊維に含浸させやすくした種々の中間材料および成形方法が開発されており、それら従来技術の具体的な特徴と問題点は以下の通りである。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、長繊維強化熱可塑性樹脂複合材料のための、連続強化繊維束と連続熱可塑性樹脂繊維束とが均一に混繊された複合材料用混繊糸(含浸性中間材料)である。かかる複合材料用混繊糸は、既に説明した通り、優れた含浸性を有するが、繊維と樹脂の組み合わせが限定される他、混繊工程において強化繊維が損傷しているなどの問題点を有する。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、ガラス繊維ロービングに関する発明であり、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体に関する本発明とは根本的に異なるものである。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、組物技術を用いて樹脂繊維を連続繊維に被覆した中間材料であり、組物技術を用いる点において本発明と共通性を有している。
しかし、この発明は、熱可塑性樹脂繊維の管状体によって強化用繊維を被覆しているものであるため、含浸しにくい、含浸時間が長い、などの問題点を有している。
【0009】
連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を短いサイクルで成形するためには、溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を連続繊維に短時間で含浸させる技術が必要となる。その技術の一つが繊維状中間材料技術であり、連続繊維の近傍に母材となる樹脂を繊維の形態にして配置することによって、高温で成形した際に樹脂繊維が溶融し、連続繊維に含浸する技術となる。
【0010】
前記マイクロブレーデッドヤーン40は、組物技術を使って連続繊維束1の周りに多数本の樹脂繊維の被覆41を設ける方法により作製された繊維状中間材料である(特許文献4、図10参照)。
この中間材料の特長としては、既に説明した通り、どのような繊維材料の組み合わせであっても、組物技術により被覆するだけなので中間材料が容易に作製できること、および、樹脂繊維の割合を容易に制御でき、強化繊維を被覆することによって繊維の損傷が押さえられることも特長である。
【0011】
しかしながら、組物構造となっている多数本の樹脂繊維からなる被覆41により、連続繊維束1が周りから締め付けられているため、樹脂繊維の被覆41と連続繊維束1との隙間がほぼ0%であり、連続繊維の束の断面が円形状になってしまう(図11参照)。
この現象により、樹脂繊維が溶けて連続繊維束1の内部に含浸するまでの距離T2が長くなり、含浸に時間がかかってしまう。また、締め付けによって連続繊維の束の密度が高くなるため、これも含浸を阻害する要因となる。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】日本国特開平9-324331号公報
【特許文献2】日本国特表2005-529047号公報
【特許文献3】日本国特開2012-136653号公報
【特許文献4】日本国特開2004-115995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造に際し、連続繊維束の断面が「円形状になる」、「密度が高くなる」ことにより、含浸に時間がかかってしまうということであり、本発明の目的は、これらの含浸を阻害する2つの問題点を解決し、溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を連続繊維(強化繊維)に短時間で含浸させる技術を提供することで、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を短いサイクルで成形することを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の中間材料を製造するに際し、多数本の熱可塑性樹脂繊維による連続繊維への締め付けを解消し、連続繊維束が偏平に変形可能とするために、以下の作成方法を採用したことを特徴とする。
(1)連続繊維の束の径より一回り大きな径のガイド(例えば金属丸棒又は金属パイプ)に対し、熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造を作製し、その被覆構造(例えば組物構造、織物構造又は編物構造)にて連続繊維束を被覆することにより、連続繊維束に対する締め付けが無い中間材料を作製する。
(2)熱可塑性樹脂繊維を組物構造を使って被覆させるときにおいては、長手方向に対して斜めに配向された組糸だけでなく、長手方向に配向された中央糸を組糸間に挿入することにより、組物構造の変形を抑え、連続繊維束に対する締め付けを抑制する。
なお、従来のマイクロブレーデッドヤーンにおいて、中央糸を挿入する技術は、組物構造物の強度を増す目的で用いられている。しかしながら、本発明においては、(1)で作製する連続繊維束よりも一回り大きい組物構造の形状を維持するためという目的で挿入させる点が特徴である。
【0015】
本発明による課題を解決するための手段は、具体的には、
『連続繊維束と、当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、前記連続繊維束が偏平に変形可能であることを特徴とする連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体。』を特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の前記熱可塑性樹脂繊維は、
(a)長手方向に対して斜めに配向された組糸と、当該組糸間に挿入されるように長手方向に配向された中央糸とからなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する組物構造
(b)長手方向に対して直交して交差する経糸と緯糸とからなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する織物構造
(c)ループを形成する糸からなり、前記連続繊維束の周囲を網状に被覆する編物構造
上記(a)~(c)のいずれかの構造となっていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、
『連続繊維束と、当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、前記連続繊維束が偏平に変形可能である連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法であって、前記連続繊維束の外径より一回り大きな外径を有するガイドを被覆するように熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造を作製し、その被覆構造内に前記連続繊維束を挿通配置するようにした連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法』を特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、
『連続繊維束と、当該連続繊維束を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維とからなり、前記連続繊維束が偏平に変形可能である連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法であって、前記連続繊維束の外径より一回り大きな外径を有するガイドを被覆するように熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造を作製し、前記ガイドの内側に前記連続繊維束を挿通し、当該連続繊維束と、前記熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造とを同時に前記ガイドから抜き取ることにより、前記被覆構造内に前記連続繊維束を挿通配置するようにした連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法』を特徴とする。
さらに、本発明の前記連続繊維束は、そのアスペクト比が1.2以上の値となるように変形可能であることを特徴とする。
また、本発明の前記連続繊維束は、好ましくは、そのアスペクト比が3~10の値となるように変形可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記構成を採用したことにより、本発明の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体においては、従来技術による中間材料とは異なり、樹脂繊維による連続繊維束に対する締め付けが緩くなることにより、連続繊維の断面が偏平に変形できるようになり、中心までの距離(含浸距離)が短くなるため、含浸時間が短くなる。また、繊維の密度が低くなることからも、溶融した樹脂が連続繊維束に含浸しやすくなる。
従って、本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体においては、従来と同じ温度、同じ圧力、同じ時間でプレス成形を行った場合に、含浸していない割合(未含浸率)が著しく低下し、成形時間を大幅に短縮させることができるとともに、成形品の強度を高めることも可能となった。
【0020】
さらに、本発明は、含浸時間の短縮によってできるだけ早く成形可能な中間材料を提供できるため、量産サイクルが上がり、成形品の製造コストを低減することもできるという優れた効果を有する。
なお、複合材料の形状が本発明において偏平化又は楕円形化することによる支障は、生じない。
また、本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体は、熱可塑性樹脂繊維を用いるものであるため、リサイクルや二次加工を容易に行うこともできる。
【0021】
従って、本発明は、自動車製造や航空機製造などのための軽量化材料およびその製造方法を提供でき、各種の産業上極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体が偏平に変形している様子を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体を製造する手順の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の樹脂繊維の被覆として利用できる他の構造を例示する平面図である。
【図4】図4は、本発明の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体を製造する手順を示すフロー図である。
【図5】図5は、本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体を製造する際に使用できるガイドの形状を示す端面図である。
【図6】図6は、本発明の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体を製造する手順の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7は、連続繊維束に熱可塑性樹脂が含浸している様子を写した断面写真であって、(A)は従来の連続繊維束の断面図、(B)は本発明の連続繊維束の断面図である。
【図8】図8は、従来の強化繊維/樹脂繊維複合体と本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体について熱可塑性樹脂の未含浸率を測定した結果を示すグラフ図である。
【図9】図9は、従来の強化繊維/樹脂繊維複合体と本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体について引張強度を測定した結果を示すグラフ図である。
【図10】図10は、従来の強化繊維/樹脂繊維複合体を模式的に示す斜視図及び写真による側面図である。
【図11】図11は、従来の強化繊維/樹脂繊維複合体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、図1に示すように、多数本の連続繊維1aからなる連続繊維束1と、当該連続繊維束1を締め付けることなくその周囲を網状に被覆する熱可塑性樹脂繊維(被覆2)とからなり、前記連続繊維束1が偏平に変形可能であることを特徴とする連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体10であって、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の中間材料として用いられるものである。
本発明において、前記連続繊維束が「偏平」に変形している状態としては、前記連続繊維束のアスペクト比として約3~10程度のものが好適に含まれる。
即ち、連続繊維束の断面形状が楕円形である場合の長径:短径の比が3~10であるもの、又は、連続繊維束の断面形状が長方形である場合の長辺:短辺の比が3~10であるものが本発明の実施形態として好適である。
そして、連続繊維束の断面形状が図1に例示した状態のものであれば、そのアスペクト比は約4.0となる。
ここで、図11に示すように、連続繊維束の断面形状がほぼ円形であって、指でつぶすように押さえつけても連続繊維束のアスペクト比が1.2以上の値に変形しないものは、被覆が連続繊維束を締め付けているものと考えられ、本発明の範囲外のものであると考えられる。

【0024】
本発明の前記連続繊維束1としては、ガラス繊維束、炭素繊維束、アラミド繊維束、金属繊維束、セラミック繊維束といった軽く柔軟性および強度に優れた材料を好適に用いることができるが、ジュート、ケナフなどの天然繊維からなるものを用いるなど、これらに限定されるものではない。
さらに、これらの材料を2種以上適宜組み合わせて使用したり、同一材料で太さや形状の異なるものを組み合わせて使用したり、紡糸したものを使用することもできる。

【0025】
本発明の前記熱可塑性樹脂繊維の被覆2を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂(汎用樹脂)、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(エンジニアリング樹脂)などの材料を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明において、前記熱可塑性樹脂繊維は、長手方向に対して斜めに連続的に配向された組糸2aと、当該組糸2a間に挿入されるように長手方向に配向された中央糸2bとからなる組物構造20であって、前記連続繊維束1の周囲を常時緩く網状に被覆するものであることが望ましい(図1、図2参照)。

【0026】
即ち、上記のように長手方向に配向された中央糸2bを用いる構成とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の被覆2が長手方向に引っ張られても網状にされている熱可塑性樹脂繊維によって連続繊維束1が締め付けられることを防ぐことができる。
従って、連続繊維束1の断面が常に偏平に変形できるようになり、連続繊維束1の中心までの距離(厚み)が短くなるため、熱可塑性樹脂繊維の被覆2が溶融した樹脂が連続繊維束1に含浸する時間が短くなるという効果を得ることができる。また、連続繊維束1の密度が低くなり、溶融した熱可塑性樹脂が連続繊維束1にさらに含浸しやすくなるという効果を得ることができる。

【0027】
さらに、前記連続繊維束1を締め付けることなくその周囲を被覆する熱可塑性樹脂繊維の被覆2の被覆構造については、上記組物構造20の他、
図3(A)に示すように中央糸を含まない組物構造21であったり、
図3(B)に示すように長手方向に対して直交して交差する経糸と緯糸とからなり、前記連続繊維束1の周囲を網状に被覆する織物構造22,23,24、又は、
図3(C)に示すようにループを形成する糸からなり、前記連続繊維束1の周囲を網状に被覆する編物構造25,26、を採用してもよい。

【0028】
上記の織物構造22,23,24としては、図3(B)の左側から順に、平織(Plain)、綾織(Twill)、朱子織(Satin)を含み、平織は経糸と緯糸が1本ずつ上下して交差した構造であり、綾織は1本の糸の上(または下)を交差し2本の糸の下(または上)を交差する構造である。
朱子織は経糸と緯糸の交差点をなるべく少なくし、さらにその交差点を連続しないように分散させた構造である。図3(B)における右側の図は5枚朱子の例を示しており1本の糸の上(または下)を交差し、4本の糸の下(または上)を交差する構造を有している。

【0029】
上記の編物構造25,26としては、繊維束がよこ方向に移動しながらループが形成される緯編物と、繊維束がたて方向に移動しながらループが形成される経編物とを含み、図3(C)に示す緯編構造は、最も単純な平(Plain)編構造であり、日常使用されるシャツ、靴下、セーターなどに多用されている編構造である。
強化繊維/樹脂繊維複合体を構成する連続繊維束の周囲を網状に被覆する樹脂繊維による被覆構造として有益である緯編物の特長のひとつは、その高い伸縮性(破断ひずみが100%以上)であり、複雑形状への賦型性に優れる。平編以外にも、様々な構造を有する緯編物により、連続繊維束1の周囲を網状に被覆する樹脂繊維による被覆構造が作製可能である。

【0030】
また、連続繊維束1と、その周囲を網状に被覆する熱可塑性樹脂繊維2a,2bの割合は、最終的に成形される製品に求められる強度、密度、重量、生産コストなどから算定して適宜決定すればよい。

【0031】
また、本発明は、連続繊維束1と、当該連続繊維束1を締め付けることなくその周囲を網状に被覆する熱可塑性樹脂繊維2a,2bとからなり、前記連続繊維束1が偏平に変形可能である連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法であって、前記連続繊維束の外径より一回り大きな外径を有するガイドに熱可塑性樹脂繊維からなる被覆構造(20~26)を作製し、その被覆構造内に前記連続繊維束を挿通配置するようにした連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の製造方法である。

【0032】
ここで、前記熱可塑性樹脂繊維からなる被覆2としては、上記にて説明した通り、長手方向に対して斜めに配向された組糸2aと、当該組糸2a間に挿入されるように長手方向に配向された中央糸2bとからなる組物構造20であって、前記連続繊維束1の周囲を締め付けることなく常時緩く網状に被覆するものであることが望ましい。
【実施例1】
【0033】
次に、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の強化繊維/樹脂繊維複合体の実施例1について説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明を具体化した強化繊維/樹脂繊維複合体10の実施例に用いた連続繊維束1は、太さ7μmの炭素繊維12000本からなるもの(東レ株式会社製T700-12K)であって、連続繊維1aが絡み合うことなく長手方向に延びている繊維束である。
【実施例1】
【0035】
本発明を具体化した実施例の前記連続繊維束1を締め付けることなくその周囲を網状に被覆する熱可塑性樹脂繊維は、470テックスのナイロン66(東レ株式会社製PA66-470T)を24本用いており、図2に示すように長手方向に対して斜めに連続的に配向された組糸2aと、当該組糸2a間に挿入されるように長手方向に配向された中央糸2bとからなる組物構造20としている。
【実施例1】
【0036】
ここで、本実施例において、前記連続繊維束1と、熱可塑性樹脂繊維2a,2bとからなる強化繊維/樹脂繊維複合体の断面を同心円状の円形と仮定した場合、樹脂繊維からなる被覆2の直径は1.5mm、強化繊維からなる連続繊維束1の直径は0.9mm、樹脂繊維の被覆2と連続繊維束1と間の隙間は0.3mmとなった。
この実施例の強化繊維/樹脂繊維複合体10を偏平に変形させた場合のアスペクト比は、約7となる。
【実施例1】
【0037】
このように長手方向に配向された中央糸2bを用いる構成とすることにより、熱可塑性樹脂繊維が長手方向に引っ張られても網状にされている熱可塑性樹脂繊維による連続繊維束1の締め付けが生じることを防ぐことができる。
このため、連続繊維束1の断面が常に偏平に変形できるようになり、連続繊維束1の中心までの距離が短くなるため、含浸時間が短くなるという効果を得ることができる。
また、連続繊維束1の密度が低くなり、溶融した熱可塑性樹脂が連続繊維束1によりいっそう含浸しやすくなるという効果を得ることができる。
【実施例1】
【0038】
従って、上記構成された強化繊維/樹脂繊維複合体10は、従来通り軽量であって高強度の成形品を製造できるものであり、かつ、従来とは異なり種々の形状への成形が容易であってしかも成形時間を短縮できるという特長を有しており、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の中間材料として、優れた実用性を備えたものとなる。
本発明による連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用の中間材料についての具体的な成形条件としては、およそ下記のとおりである。
成形温度・・・樹脂の融点+摂氏30度程度
圧力・・・1~10MPa
成形時間・・・1~30分
【実施例1】
【0039】
次に、本発明を具体化した上記実施例の強化繊維/樹脂繊維複合体10の製造方法の一例について説明する。
【実施例1】
【0040】
まず、図2及び図4に示すように、強化繊維としての連続繊維束1を被覆するための熱可塑性樹脂繊維による被覆構造(20)を製造するため、連続繊維束1の外径よりも一回り大きな外径を有するガイドG1を用意する(ステップS1)。
このガイドG1の形状は、図5(A)に示すように好ましくは円筒状(パイプ状)であるが、図5(B)に示すように円筒の一部を切り欠いたガイドG2(断面C字状又は断面U字状)であってもよく、また、複数本の棒状体又は断面が弧状の板状体からなるガイドG3,G4であってもよい。
上記のように複数本の棒状体又は板状体からガイドを構成する場合には、図5(C),(D)に示すようにそれらを円周上に並べるように配置するのが好ましい。
【実施例1】
【0041】
次に、前記ガイドG1の周囲に巻き付けて被覆するようにして熱可塑性樹脂繊維の組糸2aおよび中央糸2bからなる被覆構造(組物構造20)を設ける(ステップS2)。
そして、ガイドG1の内側に連続繊維1aからなる連続繊維束1を通し、熱可塑性樹脂繊維による被覆構造(組物構造20)と同時にガイドから引き出す(ステップS3)ことにより、熱可塑性樹脂繊維2a,2bによる被覆2によって緩く被覆された連続繊維束1からなる強化繊維/樹脂繊維複合体10を製造することができる。
【実施例1】
【0042】
なお、上記の製造方法の一例においては、ガイドG1から連続繊維束1と熱可塑性樹脂繊維2a,2bとを同時に抜き取るようにして強化繊維/樹脂繊維複合体10を製造したが(上記ステップS3)、当該ステップS3に代えて、筒状又は棒状のガイドから熱可塑性樹脂繊維による被覆構造(組物構造20)を取り外してから、熱可塑性樹脂繊維による被覆2の内部に連続繊維束1を挿通する(ステップS4)ことにより強化繊維/樹脂繊維複合体10を製造する方法を採用してもよい(図6参照)。
なお、上記ステップ4において、中実の棒状のガイドG5を用いる場合、その外形状としては、断面円形の丸棒を用いることが好ましいが、多角柱状のガイドG6を用いてもよい。
【実施例1】
【0043】
次に、上記のように構成した実施例1の強化繊維/樹脂繊維複合体10について、従来のマイクロブレーデッドヤーン40と性能を比較した結果について説明する。
上記のように構成した実施例1の強化繊維/樹脂繊維複合体と、同一の材料にて構成した従来のマイクロブレーデッドヤーンとをそれぞれ同じ温度(摂氏290度)、同じ圧力(5MPa)、同じ時間(10分)でプレス成形を行ったところ、図7の一部断面写真および図8のグラフに示すように、実施例1の強化繊維/樹脂繊維複合体において含浸していない部分の割合(未含浸率)が、従来のマイクロブレーデッドヤーンの1/3以下となり、成形時間を大幅に短縮することが可能であることが確認できた。
【実施例1】
【0044】
さらに、上記のように構成した実施例1の強化繊維/樹脂繊維複合体10と、同一の材料にて構成した従来のマイクロブレーデッドヤーン40とをそれぞれ同じ温度(摂氏290度)、同じ圧力(5MPa)、同じ時間(3分、5分、10分)でプレス成形を行ったものについて、引張強度を比較したところ、図9に示すグラフのとおりとなり、同じ成形時間で成形した場合において、実施例1の強化繊維/樹脂繊維複合体10を中間材料とした成形品は、従来のマイクロブレーデッドヤーン40を中間材料とした成形品よりも強度が優れていることが確認できた。
【実施例1】
【0045】
即ち、本発明による強化繊維/樹脂繊維複合体10は、溶融した樹脂が短時間で連続繊維束1に100%含浸し、所期の強度を備えた成形品を得ることができるため、本発明による強化繊維/樹脂繊維複合体10を中間材料とした成形品は、量産サイクルが向上し、コスト削減に貢献できるものとなる。
【実施例1】
【0046】
本発明は、上記各実施例の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能であり、熱可塑性樹脂繊維として色、強度、太さといった性質の異なるものを複数組み合わせて網状の被覆構造を製造するようにして実施してもよい。
例えば、被覆構造として、組糸と中央糸からなる組物構造を採用する場合に、組糸と中央糸とで性質の異なる糸を用いて実施してもよい。
【実施例1】
【0047】
また、本発明における「網状の被覆構造」には、繊維と繊維の間に隙間が無く「網目」が詰まったものと、繊維と繊維の間に隙間が生じているものの両者を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、様々な連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材を容易に提供可能となるため、自動車製造や航空機製造など様々な分野における構造部材の製造用中間材料として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 連続繊維束
1a 連続繊維
2 樹脂繊維の被覆
2a 組糸(樹脂繊維)
2b 中央糸(樹脂繊維)
10 強化繊維/樹脂繊維複合体(連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材製造用中間材料)
20 組物構造(被覆構造)
21 組物構造(被覆構造)
22 織物構造(被覆構造:平織)
23 織物構造(被覆構造:綾織)
24 織物構造(被覆構造:朱子織)
25 編物構造(被覆構造:平編)
26 編物構造(被覆構造:平編)
40 従来のマイクロブレーデッドヤーン
41 従来の樹脂繊維の被覆
G1 ガイド(パイプ)
G2 ガイド(断面C字状又は断面U字状)
G3 ガイド(複数本の板状体から構成されている)
G4 ガイド(複数本の棒状体又は板状体から構成されている)
G5 ガイド(丸棒)
G6 ガイド(多角柱)
T1 含浸距離
T2 従来の含浸距離
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10