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明細書 :酸化触媒及び有機酸化物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6183860号 (P6183860)
登録日 平成29年8月4日(2017.8.4)
発行日 平成29年8月23日(2017.8.23)
発明の名称または考案の名称 酸化触媒及び有機酸化物の製造方法
国際特許分類 B01J  31/38        (2006.01)
B01J  31/26        (2006.01)
C12N   9/04        (2006.01)
C12P   7/42        (2006.01)
C07C  59/105       (2006.01)
C07C  51/235       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/38 Z
B01J 31/26 Z
C12N 9/04 D
C12P 7/42
C07C 59/105
C07C 51/235
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2014-534346 (P2014-534346)
出願日 平成25年9月2日(2013.9.2)
国際出願番号 PCT/JP2013/073538
国際公開番号 WO2014/038511
国際公開日 平成26年3月13日(2014.3.13)
優先権出願番号 2012194605
優先日 平成24年9月4日(2012.9.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年8月22日(2016.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】春田 正毅
【氏名】竹之内 翔
【氏名】竹歳 絢子
【氏名】武井 孝
個別代理人の代理人 【識別番号】100150876、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 裕一郎
審査官 【審査官】山口 俊樹
参考文献・文献 N. CHAUHAN et al.,Immobilization of barley oxalate oxidase onto gold-nanoparticle-porous CaCO3 microsphere hybrid for amperometric determination of oxalate in biological materials,Clinical Biochemistry,2012年,45,253-258.,Available online 20 December 2011. DOI:10.1016/j.clinbiochem.2011.12.004
I. WILLNER,Nanoparticle- and Nanorod-Biomaterial Hybrid Systems for Sensor, Circuitry and Motor Applications,e-J. Surf. Sci. Nanotech.,2005年,3,1-7.,DOI: 10.1380/ejssnt.2005.1
調査した分野 B01J21/00-38/74
C12N9/00-9/99
C12P7/42
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
有機化合物の酸化反応に際して所定の酵素を触媒として用いた場合に過酸化物を発生する酸化反応系に用いられる酸化触媒であって、
上記酵素と金含有粒子とを含み、
上記金含有粒子が、金ナノ粒子を担体に担持させてなる粒子であり、
上記担体が金属酸化物であり、該金属酸化物がZrO、Al、CeO又はSiOであることを特徴とする酸化触媒。
【請求項2】
上記酵素と上記金含有粒子との配合割合が、重量比で1:0.1~10であることを特徴とする請求項1記載の酸化触媒。
【請求項3】
上記有機化合物がグルコースであり、上記の所定の酵素がグルコースオキシダーゼであり、上記過酸化物が過酸化水素である請求項1~3のいずれかに記載の酸化触媒。
【請求項4】
請求項1記載の酸化触媒を用いる有機酸化物の製造方法であって、
有機化合物を、上記酸化触媒の存在下、60℃以下の温度で且つpH6~8の中性領域で酸化反応させることを特徴とする製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒及び有機酸化物の製造方法に関し、さらに詳しくは、反応効率が高く、しかも常温常圧に近い低コストな反応条件下で有機酸化物の製造を行うことができる酸化触媒及び有機酸化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物の合成技術は、製薬、化学、食品、材料などを始めとしたあらゆる分野で応用されており、これまで、種々技術が提案されている。その結果、人工的に合成を行うことが可能となった有機化合物は飛躍的に増加したが、それでもなお、人工的に合成を行うことが困難な有機化合物や合成できても効率が悪い有機化合物や反応系も多数存在するのが現状である。
そのような有機化合物として有機酸化物があり、かかる有機酸化物の合成方法の1つとして、反応選択性が高い酵素を用いた反応や金属触媒を用いた反応などが提案されている。
例えばグルコン酸の製造において、特許文献1では、従来の微生物を用いた発酵法による製造法に代わる方法として、グルコースオキシダーゼ及びカタラーゼを、微生物を介することなく特定の条件で触媒として用い、従来の発酵法よりも製造に要する時間が短く、収率が高くなる方法が提案されている。
また、特許文献2では、炭素材料表面に金ナノ粒子が担持されてなる金ナノ触媒を用いて、グルコン酸を効率よく酸化する反応系について提案されている。また、特許文献3では、酵素とルテニウムやパラジウム等の金属とを併用することにより、反応効率を高くする有機酸化物の製造方法が提案されている。
また、特許文献4には、グルコ-スオキシダ-ゼと貴金属微粒子とを高分子ゲルビ-ズに固定化してなるゲルビーズ触媒を用いてグルコン酸を製造する製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特表平10-502825号公報
【0004】

【特許文献2】特開2009-220017号公報
【0005】

【特許文献3】特開2001-161388号公報
【0006】

【特許文献4】特開平06-70785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の提案にかかる酸化触媒及び有機酸化物の製造方法は、未だ不十分で要求されているレベルにはないものであった。
すなわち、特許文献1に記載の提案では、ある程度低い温度条件でも反応が進行するものの未だ反応効率の点で不十分であった。
特許文献2に記載の提案では、反応温度を高く設定しなければならないなど反応条件を通常のよりも厳しい条件とする必要があり、非効率であった。
特許文献3に記載の提案では、酵素を用いた系における過酸化水素の発生というネガティブ要素を排除することにより、酵素を用いた系の効率をより高めることは可能となったものの、常温常圧に近い低コストな反応条件下で反応が進行しているとは言えず不十分なものであった。
特許文献4に記載の提案は、単に貴金属(Pd,Pt等)触媒の併用により、Hの分解を促進させて酵素活性を維持するものであり、一定の効果は得られるものの、未だに反応速度が遅く、常温常圧に近い低コストな反応条件下での製造ではなく未だ不十分であった。
このため、従来提案されている方法よりも、反応効率が高く、しかも常温常圧に近い低コストな反応条件下で有機酸化物の製造を行うことができる酸化触媒及び有機酸化物の製造方法の開発が要望されているのが現状である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、反応効率が高く、しかも常温常圧に近い低コストな反応条件下で有機酸化物の製造を行うことができる酸化触媒及び有機酸化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、酵素反応における副生成物である過酸化物を除去できる化合物を酵素と併用する際に通常の金属では酵素の活性を阻害するなどの問題を生じてしまうことを知見し、酵素と相性がよく相乗効果を発揮し得る金属触媒についてさらに検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1 有機化合物の酸化反応に際して所定の酵素を触媒として用いた場合に過酸化物を発生する酸化反応系に用いられる酸化触媒であって、
上記酵素と金含有粒子とを含み、
上記金含有粒子が、金ナノ粒子を担体に担持させてなる粒子であることを特徴とする酸化触媒。
2 上記酵素と上記金含有粒子との配合割合が、重量比で1:0.1~10であることを特徴とする1記載の酸化触媒。
3 上記担体が金属酸化物であり、該金属酸化物がZrO、Al、CeO又はSiOである1又は2記載の酸化触媒。
4 上記有機化合物がグルコースであり、上記の所定の酵素がグルコースオキシダーゼであり、上記過酸化物が過酸化水素である1~3のいずれかに記載の酸化触媒。
5 1記載の酸化触媒を用いる有機酸化物の製造方法であって、
有機化合物を、上記酸化触媒の存在下、50℃以下の温度で且つpH6~8の中性領域で反応させることを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酸化触媒は、反応効率が高く、しかも常温常圧に近い低コストな反応条件下で有機酸化物の製造を行うことができるものである。
また、本発明の有機酸化物の製造方法によれば、反応効率が高く、しかも常温常圧に近い低コストな反応条件下で有機酸化物の製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施例1及び2、比較例1~3において行ったグルコース酸化反応におけるグルコースのグルコン酸への転化率を経時的に示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1のグルコース酸化反応の生成物をH-NMRで分析した結果を示すチャートであり、(a)は、チャート全体を示すものであり、(b)は、グルコン酸部分を拡大して示すものである。
【図3】図3は実施例1、比較例1、4及び5において行ったグルコース酸化反応におけるグルコースのグルコン酸への転化率を経時的に示すグラフである。
【図4】図4は実施例1及び3において行ったグルコース酸化反応におけるグルコースのグルコン酸への転化率を経時的に示すグラフである。
【図5】図5は実施例1及び比較例6において行ったグルコース酸化反応におけるグルコースのグルコン酸への転化率を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の酸化触媒は、有機化合物の酸化反応に際して所定の酵素を触媒として用いた場合に過酸化物を発生する酸化反応系に用いられる酸化触媒であって、上記酵素と金含有粒子とを含み、上記金含有粒子が、金ナノ粒子を金属酸化物に担持させてなる粒子である、酸化触媒である。

【0014】
<所定の酵素>
本発明において用いられる上記の所定の酵素は、有機化合物の酸化反応に用いられるものであれば特に制限されないが、過酸化水素を発生させるオキシダーゼ等が挙げられ、具体的には、グルコースオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ等が好ましく挙げられる。

【0015】
<金含有粒子>
本発明において用いられる上記金含有粒子は、金ナノ粒子を金属酸化物などの担体に担持させてなる粒子である。
上記金含有粒子の平均粒子径は10nm~1μmであるのが好ましく、上記金ナノ粒子と上記担体との構成比は、重量比で、上記金ナノ粒子1に対して上記担体10~500とするのが好ましい。
(金ナノ粒子)
上記金ナノ粒子とは、金原子が好ましくは10~50,000個集合してなる粒子をいい、さらに好ましくは200~10,000個集合してなる粒子をいう。
上記金ナノ粒子の粒子径は、平均粒子径で2~10nmであるのが好ましく、2~5nmであるのがさらに好ましい。

【0016】
(担体)
本発明において用いられる担体としては、金属酸化物、カーボン、又はセルロースなどが挙げられ、特に金属酸化物を好ましく挙げることができる。
上記金属酸化物は、上記金ナノ粒子を担持できるものであれば、特に制限なく用いることができ、上記金属酸化物としては、ZrO、Al、CeO、SiOなどが挙げられ、ZrO、又は、Alを好ましく挙げることができる。
上記金属酸化物の形状は、球状、板状、フラワー状、ロッド(棒)状等種々形態とすることができる。
また、上記金属酸化物の大きさは、平均粒子径で10nm~1μmであるのが好ましい。
また、上記金属酸化物の大きさは、金ナノ粒子の粒子径の4~20倍であるのが好ましい。
また、上金属酸化物の形状が、板状、フラワー状、ロッド(棒)状である場合には、厚さを5nm~100nmとするのが好ましい。
また、上記カーボンとしては、ダイヤモンド結晶構造を有するナノサイズのダイヤモンドである、ナノダイヤモンドを好ましく挙げることができる。上記セルロースとしては、天然物、人工物の別なく用いることができ、ニトロセルロースやアセチルセルロースなどの誘導体を用いることもできる。これらカーボンやセルロースの形状、大きさは上述の金属酸化物を同様とすることができる。

【0017】
(製造方法)
上記金含有粒子は 金化合物と上記担体としての上記金属酸化物とを混合し、得られた混合物を焼成及び/又は還元することにより得ることができる。
上記金化合物としては、Au[C(NHCl等のエチレンジアミン金錯体、ジメチル(アセチルアセトナート)金(III)、などのジメチル金β‐ジケトン誘導体錯体金錯体化合物が挙げられる。
上記混合に際しては、固相混合法、湿式混合法などの混合方法を用いることができる。
上記固相混合法は、上記金化合物と上記金属酸化物とを乳鉢などの混合器を用いて両者固体状のまま混合する方法である。
上記湿式混合法は、アセトン、メタノール等の溶媒に上記金化合物と上記金属酸化物とを溶解又は分散させた系でボールミルなどの混合装置を用いる方法である。
上記焼成は、上記混合により得た混合物を電気炉で100~400℃の温度条件にて1~10時間空気焼成することにより行うことができる。
上記金属酸化物と上記金化合物との混合比は、金属酸化物100重量部に対して上記金化合物0.1~5重量部とするのが好ましい。
また、担持後に得られる金ナノ粒子が金属酸化物に担持されてなる金含有粒子に対して、後処理もしくは焼成と同時に行う処理として、還元処理、焼成処理、プラズマ処理などの処理を常法に従って行うことにより、得られる金含有粒子に付着した不純物や副生物を除去することもできる。
また、上記担体として上記カーボンやセルロースを用いた場合も上記金属酸化物を用いる場合に準じて製造することができる。

【0018】
(酸化触媒の形態、配合割合)
本発明の酸化触媒は、上記金含有粒子と上記酵素とを含有していれば、その使用形態は特に制限されず、後述する反応系に混合した後で投入しても別々に投入してもよい。
また、本発明の酸化触媒には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で通常この種の酸化触媒に併用される緩衝液、各種塩、補酵素等の添加剤を含有させてもよい。
また、上記金含有粒子と上記酵素とを混合した形態とする場合の混合方法は、酵素活性を失活させない方法であれば特に制限されない。
酵素と金含有粒子との配合割合は、重量比で酵素:金含有粒子=1:0.1~10であることが好ましく、1:0.2~5であることが特に好ましい。

【0019】
<使用方法>
本発明の酸化触媒は、有機化合物の酸化反応に際して所定の酵素を触媒として用いた場合に過酸化物を発生する酸化反応系に用いられる酸化触媒であり、上記有機化合物の酸化反応の触媒として用いられるのが好ましい。
以下に本発明の酸化触媒を使用した本発明の有機酸化物の製造方法を詳細に説明する。
本発明の有機酸化物の製造方法は、上記酸化触媒を用いて、上記有機化合物を所定の温度と所定のpHで反応を行う有機酸化物の製造方法である。
上記温度は、60℃以下の温度であり、50℃以下であるのが好ましい。温度が50℃を超えると反応実行時の操作が煩雑になり、特別な装置設備が必要になる等コストが高くなるので、上記温度範囲内とする必要がある。
上記pHは、pH6~8の中性領域である。中性領域でない場合、たとえば大量のアルカリを必要とする場合には、反応後に中和作業が必要で工程数の増加による反応操作の煩雑化とそれに伴うコストの増加が生じるので、上記範囲内とする必要がある。
換言すると、本発明の酸化触媒は、50℃以下の温度で且つpH6~8の中性領域で酸化反応を行うことができるものである。
pHの調製は、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を反応時に添加して生成するグルコン酸を中和する方法、反応溶液にpH6~8に緩衝作用がある緩衝液を用いる方法、などの方法を用いて行うことができる。中和する方法を採用した場合には得られたグルコン酸ナトリウムを常法に従ってグルコン酸とすることにより目的物であるグルコン酸を得ることができる。
本発明の酸化触媒は種々有機化合物の酸化反応に際して使用することができ、その際、常温に近い反応温度、常圧に近い圧力条件、中性領域で高い反応性をもって目的化合物を得ることができるが、中でも下記するような有機化合物の合成反応系における酸化反応触媒として好ましく用いることができる。

【0020】
(グルコースの酸化反応)
下記式(化1)に示す反応によりグルコースを酸化してグルコン酸を製造する際の酸化反応である。
この場合の酸化触媒としては、酵素としてグルコースオキシダーゼを用い、金ナノ粒子を金属酸化物としてのZrOに担持させてなる金含有粒子を用いてなるものを好ましく用いることができる。
反応条件は上述の好ましい範囲であるが、アルカリ溶液の添加により反応液のpHを中性に保つこともできる。また、反応温度や圧力は上記の使用方法の欄に記載したような比較的低温条件で且つ常圧とすることができる。

【0021】
【化1】
JP0006183860B2_000002t.gif

【0022】
本発明の酸化触媒は、上記グルコン酸製造の酸化反応以外でも種々の酸化反応系で応用可能である。
例えば、以下の反応系が挙げられる。
ヒドロキシル基をカルボニル基へ変換する反応系
C-OH → RC=O
ホルミル基をカルボキシル基へ変換する反応系
R-CHO → R-COOH
アミノ基を酸化的脱アミノ化する反応系
R-CHNH → R-CHO
NH-CH反応系
R-NH-CH → R-NH
窒素化合物反応系
R-CHNO → R-CHO
硫黄化合物反応系
RSO2- → RSO2-
上述の各式中、Rはすべてアルキル基などの脂肪族基、フェニル基などの芳香族基、その他の一価の置換基を示す。

【0023】
<用途>
本発明の酸化触媒は、種々の有機化合物の酸化反応に用いることができ、高効率に、常温常圧に近い条件且つ中性領域、たとえばpH=7.0、温度30℃、1気圧の条件で反応を行うことができるものである。
また、酵素は固定化せず、液中に溶解させるだけで使用できるので簡便な操作で各種反応を行うことが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0025】
〔実施例1〕酸化触媒(Au/ZrOとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒)を用いたグルコース酸化反応
金化合物としてのジメチル(アセチルアセトナート)金(III)(トリケミカル社製、商品名「ジメチル金アセチルアセトナート錯体」)4.2mgと、金属酸化物としてのZrO(第一稀元素社製、商品名「ZrO2
RC-100」)0.5gとを、メノウ乳鉢で20分間混合し、H/N(20%/80%、体積比)流通下、120℃、2時間の条件で還元処理を行い、ZrOにAuが担持されてなる金含有粒子を得た。得られた金含有粒子の詳細を以下に示す。
金含有粒子の平均粒子径:5~10nm(平均粒子径はHR-TEM(高分解能透過形電子顕微鏡)により測定)
金ナノ粒子の平均粒子径:4.2nm(平均粒子径はHAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過形電子顕微鏡)により測定)
金ナノ粒子と金属酸化物との構成比(重量比)=5:1000
次に、D-グルコースを0.1mol/Lの濃度となるようにビーカー中で蒸留水に溶解させ、得られた溶液をウォーターバスで30℃に加温し、撹拌しながら、60mL/分の流量のOで30分間バブリングした。
バブリング後の上記溶液に、酸化触媒としての上記金含有粒子とグルコースオキシダーゼ(和光純薬工業社製、商品名「20000U」)とを、それぞれの濃度が0.26g/Lと0.13g/Lとになるように添加、混合し、グルコース酸化反応を開始させた。
グルコース酸化反応は、60mL/分の流量でOのバブリングを続け、ウォーターバスで30℃に加温し、pHが7.0になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を滴下し続ける条件の下で行った。
グルコースのグルコン酸への転化率(%)は、反応開始から5分毎の1M水酸化ナトリウム溶液の滴下量により、以下の数式(数式)で算出した。
【実施例】
【0026】
【数1】
JP0006183860B2_000003t.gif
【実施例】
【0027】
その結果を図1に示す。
また、グルコースのグルコン酸への転化初速度を、上記転化率の経時変化データの開始から開始10分後の転化率の傾きを計算することにより算出した。その結果を表1に示す。
加えて、グルコース酸化反応の生成物を調べるために、反応終了後の反応溶液をH-NMR(日本電子社製、装置名「JMN-ECS300」)で常法に従って分析した。
その結果を図2に示す。
【実施例】
【0028】
〔実施例2〕酸化触媒(Au/Alとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒)を用いたグルコース酸化反応
金属酸化物としてAlを用いた以外は、実施例1と同様にして金含有粒子を調製した。
金含有粒子の平均粒子径:20~50nm(平均粒子径はHR-TEMにより測定)
金ナノ粒子の平均粒子径:11.1nm(平均粒子径はHAADF-STEMにより測定)
金ナノ粒子と金属酸化物との構成比(重量比)=5:1000
これ以外は実施例1と同様にして酸化触媒を調製し、実施例1と同様にしてグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図1に示す。
また、実施例1と同様に転化初速度を算出した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0029】
〔比較例1〕酵素のみを用いたグルコース酸化反応
金含有粒子を用いずに酵素(グルコースオキシダーゼ)のみ添加した以外は実施例1と同様にしてグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図1に示す。
また、実施例1と同様に転化初速度を算出した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0030】
〔比較例2〕Au/ZrOのみを用いたグルコース酸化反応
グルコースオキシダーゼを用いずに実施例1で用いた金含有粒子のみを酸化触媒として用いた以外は実施例1と同様にグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図1に示す。
【実施例】
【0031】
〔比較例3〕Au/Alのみを用いたグルコース酸化反応
グルコースオキシダーゼを用いずに金含有粒子(Au/Al)を酸化触媒として用いた以外は実施例2と同様にしてグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図1に示す。
【実施例】
【0032】
〔比較例4〕Pt/ZrOとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒を用いたグルコース酸化反応
金化合物としてのジメチル(アセチルアセトナート)金(III)をビスアセチルアセトナト白金に代えた以外は、実施例1と同様に粒子を合成してPt含有粒子を得、金含有粒子に代えて得られたPt含有粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図3に示す。
また、実施例1と同様に転化初速度を算出した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0033】
〔比較例5〕Au/ケッチェンブラックとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒を用いたグルコース酸化反応
金属酸化物としてのZrOに代えてケッチェンブラック(以下「KB」と呼ぶこともある。)を用いた以外は実施例1と同様に粒子を合成し金含有ケッチェンブラック粒子を得、金含有粒子に代えて得られた金含有KB粒子及びグルコースオキシダーゼを酸化触媒として用いた以外はグルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図3に示す。
また、実施例1と同様に転化初速度を算出した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0034】
〔実施例3〕Au/ZrOとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒を用いたグルコース酸化反応(40℃)
グルコース酸化反応時の反応溶液の温度を40℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、グルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図4に実施例1の結果と合わせて示す。
【実施例】
【0035】
〔比較例6〕Au/ZrOとグルコースオキシダーゼとを含有する酸化触媒を用いたグルコース酸化反応(pH9.5)
グルコース酸化反応時の反応溶液のpHを9.5となるように調整した以外は、実施例1と同様にして、グルコース酸化反応を行い、転化率を算出した。
その結果を図5に実施例1の結果と合わせて示す。
【実施例】
【0036】
以下、結果について考察する。
図1に示す結果から、本発明の酸化触媒は、酵素のみ(比較例1)からなる酸化触媒に比してグルコン酸の転換率及び転換速度が顕著に高く、酸化触媒として有用であることがわかる。
一方、金含有金属酸化物のみを用いた比較例2及び3は、グルコン酸への転換がほとんど見られず、これらの酸化触媒では常温中性に近い反応条件では反応が進まず、高温及び/又は塩基性という特別な反応条件を整えなければ反応を進行させられないことがわかる。この結果から、本発明の酸化触媒は、より安価に酸化反応を行いうるものであることがわかる。
【実施例】
【0037】
図2に示す結果から本発明の酸化触媒を用いてグルコース酸化反応を行った場合(実施例1)、高選択的にグルコン酸が得られることがわかる。
【実施例】
【0038】
図3に示す結果から、白金含有粒子を用いてなる酸化触媒(比較例4)では、本発明の酸化触媒と比較して活性が低いことがわかる。 また、金属酸化物の代わりにケッチェンブラックを用いて調整した金含有粒子を用いた酸化触媒(比較例5)は、酵素のみからなる酸化触媒(比較例1)よりも活性が低く、本発明の酸化触媒よりも著しく活性が低いことがわかる。
【実施例】
【0039】
【表1】
JP0006183860B2_000004t.gif
【実施例】
【0040】
表1は実施例1及び2、比較例1、4及び5において行ったグルコース酸化反応におけるグルコースのグルコン酸への転化初速度を示すデータである。
表1に示す結果から、本発明の酸化触媒を用いた系に比して各比較例の酸化触媒では添加初速度が低く、活性に劣ることがわかる。
【実施例】
【0041】
図4に示す結果から、本発明の酸化触媒では、反応温度が30℃~40℃といった常温に近い温度条件で良好に反応が進行することがわかる。
【実施例】
【0042】
図5に示す結果から、塩基性条件下の反応(pH9.5,比較例6)では、反応開始からある程度時間が経過すると、急激に反応効率活性が低下し、最終的な転化率も低く、pHが塩基性条件となる範囲では反応が高活性に進まないことがわかる。
【実施例】
【0043】
以上の結果から、本発明の酸化触媒は、常温に近く、また中性領域のpHで、製造コストが低く、高い活性で反応を行うことができるものであることがわかる。
また、本発明の有機酸化物の製造方法によれば、中性領域のpHで、特別にアルカリなどを添加することなく、高効率で酸化反応を行うことができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の酸化触媒は種々有機化合物の酸化反応に際して使用することができ、その際、高収率で反応選択性をもって目的化合物を得ることができるため、製薬、化学、食品、材料、バイオなどを始めとしたあらゆる分野で応用が可能である。


図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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