TOP > 国内特許検索 > EBAG9に対するモノクローナル抗体、及びハイブリドーマ、並びにEBAG9に対するモノクローナル抗体の利用 > 明細書

明細書 :EBAG9に対するモノクローナル抗体、及びハイブリドーマ、並びにEBAG9に対するモノクローナル抗体の利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6182149号 (P6182149)
登録日 平成29年7月28日(2017.7.28)
発行日 平成29年8月16日(2017.8.16)
発明の名称または考案の名称 EBAG9に対するモノクローナル抗体、及びハイブリドーマ、並びにEBAG9に対するモノクローナル抗体の利用
国際特許分類 C07K  16/30        (2006.01)
C12N   5/20        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C07K 16/30 ZNA
C12N 5/20
A61K 39/395 T
A61P 35/04
C12N 15/00 C
C12P 21/08
請求項の数または発明の数 5
微生物の受託番号 NPMD NITE BP-01406
全頁数 32
出願番号 特願2014-535562 (P2014-535562)
出願日 平成25年9月11日(2013.9.11)
国際出願番号 PCT/JP2013/074452
国際公開番号 WO2014/042167
国際公開日 平成26年3月20日(2014.3.20)
優先権出願番号 2012199412
優先日 平成24年9月11日(2012.9.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年8月2日(2016.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
発明者または考案者 【氏名】井上 聡
【氏名】池田 和博
【氏名】伊地知 暢広
【氏名】重川 崇
【氏名】津田 均
【氏名】宮崎 利明
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
審査官 【審査官】宮岡 真衣
参考文献・文献 米国特許出願公開第2012/0052508(US,A1)
Catalog Number: CPTC-EBAG9-2, ANTIBODY PORTAL,The Office of Cancer Clinical Proteomics Research, [online],2011年 8月 8日,[retrieved on 2013.12.03],Retrieved from the Internet:,URL,<http://antibodies.cancer.gov/apps/site/detail/CPTC-EBAG9#CPTC-EBAG9-2>
Product code: 392300, Product name: Mouse anti-RCAS-1,Material Safety DataSheets, Manuals & Protocols, invitrogen, [online],2009年 8月11日,[retrieved on 2013.12.03],Retrieved from the Internet:,URL,<園田顕三,RCAS1 をターゲットとした新たな癌分子標的治療開発に関する研究,2011KAKEN: 科学研究費助成事業データベース, [online],2011年度研究成果報告書,KAKEN: 科学研究費助成事業データベース, [online],2012年 4月23日,[retrieved on 2013.12.03],URL,<http://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/17102/21592134seika.pdf>
SONODA, K.,RCAS1 is a promising therapeutic target against cancer: itsmultifunctional bioactivities and clinical significance,Expert Review ofObstetrics & Gynecology,2012年 5月,Vol.7, No.3,p.261-267
青儀健二郎,ホルモン療法耐性機序の分子生物学的解明と耐性克服及び治療効果予測に関する研究, 最終(総括)報告書,独立行政法人国立ガン研究センター,がん研究データベース, [online],2009年,[retrieved on 2013.12.03],URL,<http://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/17102/21592134seika.pdf>
TSUCHIYA, F. et al.,Molecular Cloning and Characterization ofMouse EBAG9, Homolog of a Human Cancer Associated SurfaceAntigen: Expression and Regulation by Estrogen,Biochemical andBiophysical Research Communications,2001年 6月 1日,Vol.284, No.1,p.2-10
調査した分野 C07K 16/30
A61K 39/395
A61P 35/00-35/04
C12N 5/10-5/20
C12N 15/02
C12P 21/08
G01N 33/574
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
受託番号:NITE BP-01406のハイブリドーマが産生するEBAG9に対するモノクローナル抗体であることを特徴とするEBAG9に対するモノクローナル抗体。
【請求項2】
エピトープが、配列番号13に記載のアミノ酸配列内にある請求項1に記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体。
【請求項3】
EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであって、受託番号:NITE BP-01406であることを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を含み、乳癌の肺への転移を抑制することを特徴とする癌転移抑制剤。
【請求項5】
請求項4に記載の癌転移抑制剤を含むことを特徴とする医薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、EBAG9に対するモノクローナル抗体、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を用いた内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキット、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む腫瘍増殖抑制剤、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む癌転移抑制剤、並びに、前記腫瘍増殖抑制剤及び前記癌転移抑制剤の少なくともいずれかを含む医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、40歳以上の女性に多く、日本においても増加の傾向にある。前記乳癌は、エストロゲン受容体陽性のものが多く、抗エストロゲン剤等の内分泌療法薬を用いた内分泌療法が奏功することが知られている。しかしながら、乳癌の中には、治療過程において、内分泌療法薬に対する抵抗性(耐性)を獲得するものが多く、予後不良となるため問題となっている。そのため、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否かを早期に診断することを可能とする技術が求められている。
【0003】
EBAG9(Estrogen receptor-binding fragment associated gene 9)は、エストロゲン応答遺伝子として単離され、その後の研究で、癌細胞の糖鎖修飾に関与し、免疫系からの回避に関与することが明らかにされている。また、EBAG9は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肝癌、腎癌、膀胱癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、子宮癌、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、大腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病での発現が報告されており、癌の進展、転移に関わると考えられている。
【0004】
これまでに、免疫原として、前記EBAG9の全長を用いて、EBAG9に対するポリクローナル抗体を作製し、前記ポリクローナル抗体と乳癌サンプルとを用いた免疫染色法による解析が行われている(例えば、非特許文献1参照)。前記解析では、EBAG9の免疫染色性は、エストロゲン受容体の免疫染色性と相関すること、並びに腫瘍組織内へのCD3陽性T細胞の浸潤の減少と相関することが示されている。しかしながら、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否か等の乳癌の予後との関係は、解明されていない。
【0005】
したがって、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否かを早期に診断することを可能とする技術は未だ開発されておらず、その速やかな開発が強く求められている。
【0006】
また、上述のようにEBAG9は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肝癌、腎癌、膀胱癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、子宮癌、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、大腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病での発現が報告されており、EBAG9に対する抗体が癌の予防乃至治療に有効となり得ると考えられるものの、未だそのような抗体は提供されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Suzuki et al., EBAG9/RCAS1 in human breast carcinoma: a possible factor in endocrine-immune interactions. Br J Cancer. 2001 November; 85(11):1731-1737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否かの診断に用いることができ、また腫瘍の増殖や癌の転移を抑制することも可能なEBAG9に対するモノクローナル抗体、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキット、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む腫瘍増殖抑制剤、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む癌転移抑制剤、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む癌転移抑制剤、並びに、前記腫瘍増殖抑制剤及び前記癌転移抑制剤の少なくともいずれかを含む医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、免疫原として、EBAG9の特定の部分を用いて作製したEBAG9に対するモノクローナル抗体を用いることで、内分泌療法薬耐性乳癌を予測でき、また腫瘍の増殖を抑制したり、癌の転移を抑制したりすることも可能であることを知見し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 免疫原として、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドをマウスに投与する工程と、
前記マウスから抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドとを接触させ、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程と、
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程とを含む方法により得られることを特徴とするEBAG9に対するモノクローナル抗体である。
<2> エピトープが、配列番号13に記載のアミノ酸配列内にあることを特徴とするEBAG9に対するモノクローナル抗体である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであって、受託番号:NITE BP-01406であることを特徴とするハイブリドーマである。
<4> 被検体由来の試料中におけるEBAG9を前記<1>から<2>のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を用いて測定する工程と、
前記測定結果を指標として、内分泌療法薬に耐性を有する乳癌か否かを評価する工程とを含むことを特徴とする内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法である。
<5> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を含むことを特徴とする内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキットである。
<6> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を含むことを特徴とする腫瘍増殖抑制剤である。
<7> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のEBAG9に対するモノクローナル抗体を含むことを特徴とする癌転移抑制剤である。
<8> 前記<6>に記載の腫瘍増殖抑制剤、及び前記<7>に記載の癌転移抑制剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする医薬である。
<9> 癌を予防乃至治療するための方法であって、個体に、前記<6>に記載の腫瘍増殖抑制剤、前記<7>に記載の癌転移抑制剤、及び前記<8>に記載の医薬の少なくともいずれかを投与することを特徴とする方法である。
<10> 免疫原として、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドをマウスに投与する工程と、
前記マウスから抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドとを接触させ、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程と、
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程とを含むことを特徴とするEBAG9に対するモノクローナル抗体の製造方法である。
<11> EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの製造方法であって、
免疫原として、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドをマウスに投与する工程と、
前記マウスから抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドとを接触させ、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程とを含むことを特徴とするハイブリドーマの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否かの診断に用いることができ、また腫瘍の増殖や癌の転移を抑制することも可能なEBAG9に対するモノクローナル抗体、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキット、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む腫瘍増殖抑制剤、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む癌転移抑制剤、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含む癌転移抑制剤、並びに、前記腫瘍増殖抑制剤及び前記癌転移抑制剤の少なくともいずれかを含む医薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ヒトEBAG9タンパク質及び免疫原として用いた部分を模式的に示した図である。
【図2】図2は、製造例1における一次スクリーニングにより選択されたハイブリドーマが産生するEBAG9モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図3】図3は、製造例1における単クローン化したハイブリドーマが産生するEBAG9モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図4】図4は、試験例1におけるウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図5】図5は、試験例2における免疫組織化学的染色結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、試験例2における免疫組織化学的染色結果の他の一例を示す図である。
【図7】図7は、試験例2におけるEBAG9の免疫反応性に基づく乳癌患者の生存解析の結果を示す図である。
【図8】図8は、試験例3の「エピトープの同定-1」におけるウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図9】図9は、試験例3の「エピトープの同定-2」におけるウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図10A】図10Aは、試験例4の1秒間当たりの発光量を測定した結果のグラフである。
【図10B】図10Bは、試験例4のインビボイメージング装置で撮影した写真の一例である。
【図11A】図11Aは、試験例4における肺転移を調べた写真の一例である。
【図11B】図11Bは、試験例4における転移巣の数を測定した結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(モノクローナル抗体及びその製造方法)
本発明のモノクローナル抗体は、EBAG9に対するモノクローナル抗体であって、以下のモノクローナル抗体の製造方法により製造することができる。
以下、モノクローナル抗体の製造方法の説明と併せて本発明のモノクローナル抗体を説明する。

【0014】
<モノクローナル抗体の製造方法>
前記モノクローナル抗体の製造方法は、免疫原を投与する免疫原投与工程と、抗体産生細胞を回収する抗体産生細胞回収工程と、ハイブリドーマを調製するハイブリドーマ調製工程と、ハイブリドーマを選択するハイブリドーマ選択工程と、抗体を回収する抗体回収工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。

【0015】
<<免疫原投与工程>>
前記免疫原投与工程は、免疫原として、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドをマウスに投与する工程である。

【0016】
-免疫原-
前記免疫原としては、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のみからなるポリペプチド、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGlutathione S-transferase(GST)タンパク質を融合させたポリペプチド(融合タンパク質)等が挙げられる。これらの中でも、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGlutathione S-transferase(GST)タンパク質を融合させたポリペプチドが、水溶性が高く、精製が容易な点で、好ましい。

【0017】
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列は、ヒトEBAG9タンパク質の48番目から213番目のアミノ酸に相当する。前記ヒトEBAG9タンパク質は、2つの機能ドメインとして、N末端側の膜貫通ドメインと、C末端側のコイルドコイル(coiled-coil)ドメインとを有している。前記配列番号1に記載のアミノ酸配列は、ヒトEBAG9タンパク質の膜貫通ドメインは含まず、コイルドコイル(coiled-coil)ドメイン含む166のアミノ酸配列からなる(図1参照)。
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAをプラスミドに組み込み、前記プラスミドを宿主細胞に導入し、発現させることにより調製する方法等が挙げられる。
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学合成により調製する方法、EBAG9を発現している細胞からトータルRNAを抽出し、cDNAを合成することにより調製する方法等が挙げられる。
前記プラスミドとしては、特に制限はなく、宿主細胞に応じて適宜選択することができ、例えば、pGEXベクター等が挙げられる。
前記宿主細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大腸菌等が挙げられる。前記宿主細胞の培養条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドの精製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができる。

【0018】
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGSTタンパク質を融合させたポリペプチドの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のGST融合タンパク質発現用ベクターに前記配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを組み込み、前記ベクターを宿主細胞に導入し、発現させることにより調製する方法等が挙げられる。
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを調製する方法は、上記と同様の方法が挙げられる。
前記GST融合タンパク質発現用ベクターとしては、特に制限はなく、宿主細胞に応じて適宜選択することができ、例えば、pGEXベクター等が挙げられる。
前記宿主細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大腸菌等が挙げられる。前記宿主細胞の培養条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGSTタンパク質を融合させたポリペプチドの精製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、Glutathione Sepharose 4B(GE Healthcare社)を用いて精製する方法等が挙げられる。

【0019】
-マウス-
前記マウスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BALB/cマウス等が挙げられる。

【0020】
-投与-
前記免疫原を投与する方法(マウスを免疫する方法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アジュバントとともに投与することが、前記マウスの免疫原への免疫応答性を高めることができる点で、好ましい。
前記アジュバントとしては、特に制限はなく、公知のアジュバントを適宜選択することができ、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

【0021】
前記免疫原の投与は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前記免疫原の投与を複数回行う場合に使用するアジュバントは、各回同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記免疫原の投与を複数回行う場合の投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記免疫原の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記アジュバントの投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記免疫原及びアジュバントの投与部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0022】
<<抗体産生細胞回収工程>>
前記抗体産生細胞回収工程は、前記マウスから抗体産生細胞を回収する工程である。

【0023】
-抗体産生細胞回収-
前記抗体産生細胞を回収する時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、最後の免疫原の投与から3日間後とする等が挙げられる。
前記抗体産生細胞の回収方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウスの両足から肥大したリンパ節を取り出し、細胞をたたき出し、遠心して回収する方法等が挙げられる。

【0024】
<<ハイブリドーマ調製工程>>
前記ハイブリドーマ調製工程は、前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程である。

【0025】
-ミエローマ-
前記ミエローマの由来としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、マウス由来のものが好ましい。
前記マウス由来のミエローマとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、P3U1、P3X63-Ag8.653、SP2/O-Ag14等が挙げられる。

【0026】
-細胞融合-
前記細胞融合の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールを用いる方法(PEG法)、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法等が挙げられる。
前記細胞融合された細胞の選択方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、選択培地として、ヒポキサン-アミノプテリン-チミジン培地(HAT培地)を用いて細胞を培養する方法等が挙げられる。前記HAT培地を用いることにより、親細胞株が死滅し、細胞融合された細胞のみが増殖する。

【0027】
<<ハイブリドーマ選択工程>>
前記ハイブリドーマ選択工程は、前記ハイブリドーマが産生する抗体と、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、EBAG9タンパク質の全長のアミノ酸配列は含まないポリペプチドとを接触させる処理を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の処理を含む。前記ハイブリドーマ選択工程により、前記EBAG9に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。

【0028】
-選択-
前記選択工程における処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISA法による処理、ウエスタンブロット法による処理等が挙げられる。これらは、単独で行なってもよいし、併用してもよいが、併用することが好ましい。
前記処理の回数としては、特に制限はなく、1回であってもよいし、複数回であってもよい。

【0029】
前記ELISA法としては、例えば、前記免疫原として、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGSTタンパク質を融合させたポリペプチドを用いた場合には、例えば、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGSTタンパク質を融合させたポリペプチド、又はGSTタンパク質を感作用プレートに固相化し、次いで、前記ハイブリドーマが産生する抗体が含まれる培養上清を加え反応させた後、酵素標識抗マウスIgGを加えて反応させ、次いで、酵素基質(発色剤)を加え、発色させた後、波長450nmの吸光度を測定する方法等が挙げられる。
ここで、前記GSTタンパク質を固相化したプレートに対する反応性が高いものを除き、かつ、前記配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端にGSTタンパク質を融合させたポリペプチドを固相化したプレートに対する反応性が高いものを選択することで、よりEBAG9に特異的な抗体を産生しているハイブリドーマを選択することができる。

【0030】
前記ウエスタンブロット法としては、例えば、全長のヒトEBAG9を発現する細胞の溶解液を調製し、前記溶解液をSDS-PAGEにて分離後、一次抗体として、前記ハイブリドーマが産生する抗体を用い、二次抗体として、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識された抗体を用い、発光シグナルを検出することにより行う方法等が挙げられる。
前記ELISA法と組み合わせることにより、よりEBAG9に特異的な抗体を産生しているハイブリドーマを選択することができる。

【0031】
前記選択したハイブリドーマを分離する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いる方法等が挙げられる。

【0032】
<<抗体回収工程>>
前記抗体回収工程は、前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程である。

【0033】
-抗体回収-
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイブリドーマの培養上清から回収する方法、ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から回収する方法等が挙げられる。

【0034】
前記ハイブリドーマの培養上清から回収する方法における前記ハイブリドーマの培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静置培養、高密度培養、スピナーフラスコによる培養等が挙げられる。前記各培養の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0035】
前記ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から回収する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、プリスタン等の免疫抑制作用を有する物質を投与したマウスの腹腔内へ前記ハイブリドーマを移植し、約1週間後から3週間後に腹水を採取する方法等が挙げられる。

【0036】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製工程等が挙げられる。

【0037】
-精製工程-
前記精製工程は、前記回収工程により回収された抗体を精製する工程である。
前記精製の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ProteinAを充填したカラムに培養上清をアプライし、精製する方法等が挙げられる。

【0038】
<モノクローナル抗体>
本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体は、後述する試験例3に示すように、エピトープが配列番号13に記載のアミノ酸配列内にある。
本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体は、ヒトEBAG9に対するモノクローナル抗体として好適に利用可能である。
また、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体は、後述する内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法、内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキットとして好適に利用可能である。

【0039】
(ハイブリドーマ及びその製造方法)
本発明のハイブリドーマは、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであって、以下のハイブリドーマの製造方法により製造することができる。
以下、ハイブリドーマの製造方法の説明と併せて本発明のハイブリドーマを説明する。

【0040】
<ハイブリドーマの製造方法>
前記ハイブリドーマの製造方法は、免疫原を投与する免疫原投与工程と、抗体産生細胞を回収する抗体産生細胞回収工程と、ハイブリドーマを調製するハイブリドーマ調製工程と、ハイブリドーマを選択するハイブリドーマ選択工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。

【0041】
<<免疫原投与工程>>
前記免疫原投与工程は、前記モノクローナル抗体の製造方法における免疫原投与工程と同様に行うことができる。

【0042】
<<抗体産生細胞回収工程>>
前記抗体産生細胞回収工程は、前記モノクローナル抗体の製造方法における抗体産生細胞回収工程と同様に行うことができる。

【0043】
<<ハイブリドーマ調製工程>>
前記ハイブリドーマ調製工程は、前記モノクローナル抗体の製造方法におけるハイブリドーマ調製工程と同様に行うことができる。

【0044】
<<ハイブリドーマ選択工程>>
前記ハイブリドーマ選択工程は、前記モノクローナル抗体の製造方法におけるハイブリドーマ選択工程と同様に行うことができる。

【0045】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0046】
<ハイブリドーマ>
本発明のハイブリドーマC57-8株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、寄託申請し、2012年8月15日に国内寄託され、その後、2013年7月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求がされ、受託番号:NITE BP-01406として国際寄託されている。

【0047】
(内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法)
本発明の内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法は、EBAG9を測定する測定工程と、内分泌療法薬に耐性を有する乳癌か否かを評価する評価工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。

【0048】
<測定工程>
前記測定工程は、被検体由来の試料中におけるEBAG9を前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を用いて測定する工程である。

【0049】
<<被検体由来の試料>>
前記被検体由来の試料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳癌組織、子宮癌組織、前立腺癌組織、膀胱癌組織、腎癌組織、肺癌組織、肝癌組織、卵巣癌組織、大腸癌組織、胃癌組織、精巣腫瘍組織、脳腫瘍組織、甲状腺癌組織、胆嚢癌組織、胆管癌組織、膵癌組織、食道癌組織、喉咽頭癌組織、扁平上皮癌組織、悪性リンパ腫組織、悪性中皮腫組織、ページェット病組織等が挙げられる。前記被検体由来の試料の採取方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。

【0050】
<<測定>>
前記測定の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、免疫組織化学的染色による方法等が挙げられる。
前記免疫組織化学的染色の方法としては、例えば、Dako社のEnVision+ visualization kit等を用いて行うことができる。具体的には、乳癌組織切片を前処理した後、一次抗体として、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を用いて反応させ、次いで、二次抗体として、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ標識したEnvision+ horseradish peroxidase-labeled polymerを用いて反応させ、抗原抗体複合体を形成する。前記抗原抗体複合体の可視化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Vector社の3,3’-diaminobenzidine (DAB) substrate kit for peroxidase等を用いて行うことができる。
以上のようにして染色された乳癌組織切片を顕微鏡下で観察し、視野内の全細胞における染色された陽性細胞の存在の有無や、割合を測定する。
なお、前記乳癌組織以外の組織の癌の場合も同様にして、免疫組織化学的染色を行うことができる。

【0051】
<評価工程>
前記評価工程は、前記測定結果を指標として、内分泌療法薬に耐性を有する乳癌か否かを評価する工程である。

【0052】
<<内分泌療法薬>>
前記内分泌療法薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤等が挙げられる。
前記抗エストロゲン剤としては、例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン等が挙げられる。
前記アロマターゼ阻害剤としては、例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の予測方法では、タモキシフェンに対する耐性を獲得する乳癌か否かを好適に予測できる。

【0053】
<<評価>>
前記評価では、前記測定結果を指標として、EBAG9陽性の乳癌であると判断された場合に、内分泌療法薬耐性乳癌であると評価することができる。
前記EBAG9陽性の乳癌であるか否かの判断方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顕微鏡観察における視野内に、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体に対する陽性細胞が検出された場合や、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体陽性細胞の割合が50%以上の場合にEBAG9陽性の乳癌であると判断する方法等が挙げられる。これらの中でも、顕微鏡観察における視野内に前記EBAG9に対するモノクローナル抗体陽性細胞の割合が50%以上の場合にEBAG9陽性の乳癌であると判断する方法が好ましい。
前記顕微鏡としては、例えば、光学顕微鏡(DMLB 100S、Leica社製)等が挙げられる。前記評価は、病理学者が行うことが好ましい。
なお、前記乳癌組織以外の組織の癌の場合も同様にして、評価を行うことができる。

【0054】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被検体由来の試料を調製する試料調製工程等が挙げられる。
前記試料調製工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0055】
(内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキット)
前記内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキットは、前記した本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体を含み、必要に応じて更にその他の構成を含む。

【0056】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、公知の診断薬又は診断キットに用いられている構成を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、標識、緩衝液、プレート、反応停止液等が挙げられる。前記標識の具体例としては、酵素とその発色基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質等が挙げられる。

【0057】
(腫瘍増殖抑制剤)
前記腫瘍増殖抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。

【0058】
<EBAG9に対するモノクローナル抗体>
前記EBAG9に対するモノクローナル抗体の詳細としては、前記した本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体の項目に記載したとおりである。
前記腫瘍増殖抑制剤中の前記EBAG9に対するモノクローナル抗体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記腫瘍増殖抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体そのものであってもよい。

【0059】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体等が挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。
前記腫瘍増殖抑制剤中の前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0060】
<腫瘍>
前記腫瘍増殖抑制剤の適用対象となる腫瘍としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、大腸癌、胃癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、食道癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病が好ましく、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌がより好ましく、乳癌が特に好ましい。

【0061】
前記腫瘍増殖抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含むので、腫瘍の増殖を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を腫瘍に作用させることを特徴とする、腫瘍の増殖抑制方法にも関する。

【0062】
(癌転移抑制剤)
前記癌転移抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。

【0063】
<EBAG9に対するモノクローナル抗体>
前記EBAG9に対するモノクローナル抗体の詳細としては、前記した本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体の項目に記載したとおりである。
前記癌転移抑制剤中の前記EBAG9に対するモノクローナル抗体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記癌転移抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体そのものであってもよい。

【0064】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体等が挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。
前記癌転移抑制剤中の前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0065】
<癌>
前記癌転移抑制剤の適用対象となる癌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、大腸癌、胃癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、食道癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病が好ましく、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌がより好ましく、乳癌が特に好ましい。例えば、前記癌転移抑制剤は、癌の肺への転移を好適に抑制することができる。

【0066】
前記癌転移抑制剤は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含むので、癌の転移を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、癌の転移抑制方法にも関する。

【0067】
(医薬)
前記医薬は、前記腫瘍増殖抑制剤及び前記癌転移抑制剤の少なくともいずれかを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。

【0068】
<腫瘍増殖抑制剤、癌転移抑制剤>
前記腫瘍増殖抑制剤の詳細としては、前記した本発明の腫瘍増殖抑制剤の項目に記載したとおりである。
前記癌転移抑制剤の詳細としては、前記した本発明の癌転移抑制剤の項目に記載したとおりである。
前記医薬中の前記腫瘍増殖抑制剤及び前記癌転移抑制剤の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬は、前記腫瘍増殖抑制剤そのものであってもよいし、前記癌転移抑制剤そのものであってもよいし、前記腫瘍抑制剤及び前記癌転移抑制剤のみからなるものであってもよい。

【0069】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体等が挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、例えば、剤形等に応じて適宜選択することができる。
前記医薬中の前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0070】
<適用対象>
前記医薬の適用対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、大腸癌、胃癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、食道癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病が好ましく、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌がより好ましく、乳癌が特に好ましい。

【0071】
<剤形>
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の剤形としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤等が挙げられる。

【0072】
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。

【0073】
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。

【0074】
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。
前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。

【0075】
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。
前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。

【0076】
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。
前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シート等が挙げられる。

【0077】
<投与>
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の投与対象動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、これらの中でも、ヒトが特に好ましい。

【0078】
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、前記腫瘍増殖抑制剤、及び前記医薬の剤型、疾患の種類、患者の状態等に応じて、局所投与、全身投与のいずれかを選択することができる。
例えば、局所投与においては、前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の有効成分(前記EBAG9に対するモノクローナル抗体)を、所望の部位(例えば、腫瘍部位)に直接注入することにより投与することができる。前記注入には、注射等の従来公知の手法を適宜利用することができる。
また、全身投与(例えば、経口投与、腹腔内投与、血液中への投与等)においては、前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の有効成分(前記EBAG9に対するモノクローナル抗体)が所望の部位(例えば、腫瘍部位)まで安定に、かつ効率良く送達されるよう、従来公知の薬剤送達技術を適宜応用することが好ましい。

【0079】
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の投与回数としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記疾患に対して、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。

【0080】
(癌を予防乃至治療するための方法)
前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬は、前記EBAG9に対するモノクローナル抗体を含むので、癌を患う個体に投与することにより、腫瘍の増殖の抑制や、癌の転移を抑制することができ、癌を予防乃至治療することができる。したがって、本発明は、個体に、前記腫瘍増殖抑制剤、前記癌転移抑制剤、及び前記医薬の少なくともいずれかを投与することを特徴とする、癌の予防乃至治療方法にも関する。
前記癌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、大腸癌、胃癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、甲状腺癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、食道癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病が好ましく、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌がより好ましく、乳癌が特に好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、製造例、試験例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の製造例、試験例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
(製造例1:ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の製造)
<プラスミド1の構築>
配列番号1に記載のアミノ酸配列(ヒトEBAG9タンパク質(全長:213アミノ酸)のN末端側の48番目のアミノ酸から213番目のアミノ酸に相当(N末端の1番目から47番目のアミノ酸を欠く))に相当するcomplementary DNA(cDNA)を調製し、GSTタンパク質とEBAG9タンパク質の48番目から213番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(48-213))を以下のようにして作製した。
EBAG9の全長cDNA(Watanabe et al., Mol Cell Biol. 18(1):442-449, 1998)を鋳型として、下記配列番号2及び3の合成DNAをプライマーとしてPCR(polymerase chain reaction)を行った。
配列番号2:5’-ccggaattcttattcatcagttcctaagcagac-3’
配列番号3:5’-ccgctcgagttatgaaagtttcacaccaatttt-3’
前記PCRにより得られた増幅産物を制限酵素EcoRI及びXhoIで消化した後、EcoRI及びXhoIで消化したpGEX-4T-1ベクター(GE Healthcare社製)に挿入し、GSTタンパク質とEBAG9タンパク質の48番目から213番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(48-213))を作製した。なお、前記融合タンパク質は、前記EBAG9タンパク質の48番目から213番目のアミノ酸のN末端側にGSTタンパク質が融合されている。
【実施例】
【0083】
<免疫原の調製>
前記プラスミド1を大腸菌BL21(タカラバイオ株式会社)に形質転換した。
前記形質転換した大腸菌を以下のようにして、培養、回収、精製し、配列番号4に記載のGST融合EBAG9(48-213)タンパク質を調製した。
200mLのL-Broth(LB培地)2本に前記形質転換した大腸菌を入れ、30℃で振盪培養し、600nmの吸光度が0.6~0.8になるまで培養した。その後、Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside(IPTG)を最終濃度0.1mMになるように添加し、更に30℃で2時間振盪培養した。
前記培養液を5,000rpm、4℃、10分間遠心した沈殿を5mLの溶液A(20mM Tris-HCl(pH7.5)、10% Glycerol、80mM KCl、1mM MgCl、0.2mM ethylenediaminetetraacetic acid(EDTA)、0.5mM dithiothreitol(DTT)、0.5mM phenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF)、1% TritonX-100)で懸濁し、ソニケート(30秒間を4回)した。
次いで、10,000rpm、4℃、15分間遠心した上清に、500μLのグルタチオンセファロース4B(GE Healthcare社製)を加え、4℃で1時間混合して吸着させた後、遠心操作によってPBSで3回洗浄した。最後の洗浄後、Elution buffer(50mM Tris-HCl(pH8.0)、20mM reduced glutathione)1mLを入れて懸濁し、10分間静置した後、500×g、4℃、5分間遠心してGST融合EBAG9(48-213)タンパク質が含まれる上清を回収した。この工程を3回繰り返し、2.5mgのGST融合EBAG9(48-213)タンパク質を精製した。
このようにして得られたGST融合EBAG9(48-213)タンパク質を免疫原とした。
【実施例】
【0084】
<免疫原投与工程>
前記精製したGST融合EBAG9(48-213)タンパク質の1mg/mL溶液と、アジュバントとを等量混和し、エマルジョンとした。前記エマルジョンをマウス(日本エスエルシー株式会社製)の足裏に50μL投与した。前記免疫原の投与は、1週間おきに3回行った。なお、前記アジュバントは、1回目の投与では、Sigma社製のCat No F5881 Freund’s Adjuvant Completeを用い、2回目以降の投与では、Sigma社製のCat No F5506 Freund’s Adjuvant Incompleteを使用した。
【実施例】
【0085】
<抗体産生細胞回収工程>
前記免疫原投与工程の最後の免疫原の投与から3日間後に免疫したマウスの両足から肥大したリンパ節を取り出し、細胞をたたき出し、1,400rpmで5分間遠心して細胞を回収した。
【実施例】
【0086】
<ハイブリドーマ調製工程>
ミエローマ細胞は、P3U1細胞を用い、培養フラスコで増殖させたもの(75cmフラスコ4本分)を回収した。
前記抗体産生細胞回収工程で回収した細胞(マウス2匹から回収)と、前記P3U1とを混和し、1,400rpmで5分間遠心した。ペレットにPEG(ポリエチレングリコール)溶液(RPMI培地で等量希釈)を加え、細胞融合を行った。
前記細胞融合を行った細胞を洗浄し、次いで、細胞を懸濁した後、96穴プレートに播種した。コロニー形成が確認されたら、後述のハイブリドーマ選択工程における一次スクリーニングを行った。なお、96穴プレートにおける培地は、HAT培地(HAT/15%FBS/PS/RPMI;アミノプテリン(SIGMA社製 Cat.No.A3411、HT(GIBCO社製 Cat.No 11067-030))を用いた。
【実施例】
【0087】
<ハイブリドーマ選択工程>
-一次スクリーニング-
前記一次スクリーニングはELISAにより行った。
まず、前記免疫原とした融合タンパク質、又はGSTタンパク質をPBS(0.01mol/Lリン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、5μg/mLに調製した後、感作用プレート(NUNC社製 Cat No 468667)に50μL/穴分注し、4℃で一晩静置した。その後、タンパク質溶液を除去し、ブロッキング バッファー(株式会社医学生物学研究所製)を100μL/穴分注し、4℃で一晩静置した。なお、前記GSTタンパク質は、前記免疫原とした融合タンパク質の調製において、プラスミド1をpGEX-4T-1ベクター(EBAG9の部分配列が組み込まれていないベクター)に代えた以外は、前記免疫原とした融合タンパク質の調製と同様にして、調製した。
前記コロニー形成が確認された各培養上清を50μL/穴加え、室温で60分間反応させた。PBSで3回洗浄後、POD conjugated anti-mouse IgG(#330、株式会社医学生物学研究所製)を青バッファー(株式会社医学生物学研究所製希釈液)で10,000倍に希釈したものを50μL/穴加え、室温で60分間反応させた。3回洗浄後、発色基質(株式会社医学生物学研究所製)を加え10分間から15分間発色させた。その後、450nm及び620nmで吸光度測定を行った。なお、前記620nmはバックグラウンド測定用であり、450nmでサンプルの評価を行った。
【実施例】
【0088】
前記一次スクリーニングを行い、最終的に、前記免疫原とした融合タンパク質のプレートに対する反応性が、吸光度測定の結果、OD値0.2以上であり、GSTタンパク質のプレートに対する反応性が、OD値0.2以下であるハイブリドーマ株が32種得られた。表1-1に免疫原とした融合タンパク質のプレートに対する反応性の測定結果を示し、表1-2にGSTタンパク質のプレートに対する反応性の測定結果を示し、表1-3にハイブリドーマのクローンリストを示す。表1-3中、カッコ書きは選択されなかったハイブリドーマ株を示し、それ以外は選択されたハイブリドーマ株を示す。
【実施例】
【0089】
【表1-1】
JP0006182149B2_000002t.gif
【実施例】
【0090】
【表1-2】
JP0006182149B2_000003t.gif
【実施例】
【0091】
【表1-3】
JP0006182149B2_000004t.gif
【実施例】
【0092】
-ウエスタンブロット解析-
--細胞溶解液の調製--
---プラスミド2の構築---
ヒトEBAG9(hEBAG9)タンパク質(全長、ただし1番目のメチオニンを除く)のN末端にFlagタグを付加した融合タンパク質に相当するDNA配列をpcDNA3プラスミドにサブクローニングし、発現プラスミド2(pCDNA3-FLAG-hEBAG9)を以下のようにして構築した。
EBAG9の全長cDNA(Watanabe et al., Mol Cell Biol. 18(1):442-449, 1998)を鋳型として、下記配列番号5及び6の合成DNAをプライマーとしてPCR(polymerase chain reaction)を行った。
配列番号5:5’-ccggaattcgccatcacccagtttcggttattt-3’
配列番号6:5’-ccgctcgagttatgaaagtttcacaccaatttt-3’
前記PCRにより得られた増幅産物を制限酵素EcoRI及びXhoIで消化した後、EcoRI及びXhoIで消化したpcDNAベクター(Invitrogen社製)に挿入した。更に、Flagタグ配列をBamHI認識配列(5’側)とEcoRI認識配列(3’側)で挟んだ配列を有する合成DNAを作製し、前記ベクターのBamHIとEcoRI部位に挿入して、pcDNA3-FLAG-hEBAG9を作製した。なお、前記融合タンパク質は、前記EBAG9タンパク質の2番目から213番目のアミノ酸のN末端側にFlag配列が融合されている(配列番号7参照)。
【実施例】
【0093】
---細胞溶解液1の調製---
ヒト腎由来293T細胞にベクターpcDNA3のみ(コントロール)をトランスフェクションした。得られた細胞をPBSで洗浄した後、スクレイプして培養ディッシュより剥がして集め、これを溶解バッファー(20mM HEPES(pH7.9)、300mM NaCl、1mM EDTA、15% glycerol、0.5% NP-40、1mM NaVo、1mM PMSF、1mM DTT)に懸濁して4℃、50分間ゆるやかに振盪し、14,000rpm、4℃、5分間遠心した上清を回収し、細胞溶解液1を調製した。
【実施例】
【0094】
---細胞溶解液2の調製---
細胞溶解液1の調製において、ベクターpcDNA3を用いていた点を、前記発現プラスミド2に代えた以外は、前記細胞溶解液1の調製と同様にして、細胞溶解液2を調製した。
【実施例】
【0095】
--ウエスタンブロット--
前記各細胞溶解液20μgをSDS-PAGEにて分離後、前記一次スクリーニングにより選択されたハイブリドーマB15、B16、C33、C35、C36、C57、C63、B65、C76、C77、C80及びC95が産生する抗体を一次抗体(100倍希釈)として用い、以下の手順により、ウエスタンブロットを行った。なお、コントロールとして、一次抗体として、抗Flag抗体(3,000倍希釈)を用いたものも試験した。
前記ウエスタンブロットは、SDS-PAGE後にImmobilon-P(Millipore社製)へブロッティングした膜を、前記一次抗体とともに室温で1時間、又は4℃で12時間、TBSTバッファー(20mM Tris、150mM NaCl、0.1% Tween-20)中で静置した後、二次抗体として、HRP(西洋ワサビパーオキシダーゼ)標識された二次抗体(GE Healthcare社製)とともに室温で1時間反応し、その後、発光シグナルをECL detection system(GE Healthcare社製)により検出した。
【実施例】
【0096】
結果を図2に示す。図2中、B15、B16、C33、C35、C36、C57、C63、B65、C76、C77、C80及びC95は抗体を産生するハイブリドーマの株を示し、Flag Ab.は抗Flag抗体を用いたものを示し、「1」は、細胞溶解液1を示し、「2」は細胞溶解液2を示す。
図2から、ELISAによって反応性が高かったものが、ウエスタンブロット解析においても強いシグナルが観察される傾向であった。その中でも、C57が産生する抗体は、抗EBAG9抗体として抗体価及び特異性が最も高いものであった。
【実施例】
【0097】
-単クローン化-
前記図2の結果から、強いシグナルが観察されたB16、C35、及びC57について96穴プレートに1細胞/穴となるように希釈して培養し、複数の単クローン(B16-1、B16-2、B16-6、B16-7、C35-1、C35-5、C35-6、C35-7、C57-2、C57-4、C57-6、C57-8)を得た。
前記各単クローンについて、前記一次スクリーニングにおけるウエスタンブロット解析と同様にして、ウエスタンブロット解析を行った。なお、コントロールには、一次抗体として、ウサギポリクローナル抗マウスEBAG9抗体(4,000倍希釈、Tsuchiya et al, Biochem Biophys Res Commun. 284(1):2-10, 2001)を用いた。
結果を図3に示す。図3中、B16-1、B16-2、B16-6、B16-7、C35-1、C35-5、C35-6、C35-7、C57-2、C57-4、C57-6、C57-8は抗体を産生するハイブリドーマの株を示し、Mouse EBAG9 Ab.はウサギポリクローナル抗マウスEBAG9抗体を用いたものを示し、「1」は、細胞溶解液1を示し、「2」は細胞溶解液2を示す。
図3から、C57株に由来するC57-8株が産生する抗体が、最も反応性に優れた抗体であることが明らかになった。
【実施例】
【0098】
前記ハイブリドーマC57-8株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、寄託申請し、2012年8月15日に国内寄託され、その後、2013年7月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求がされ、受託番号:NITE BP-01406として国際寄託されている。
【実施例】
【0099】
<抗体回収工程>
得られたハイブリドーマC57-8株のクローンの培養量を10Lまで増やし、1.5ヶ月間培養した後、培養上清を回収し、抗体を回収した。
【実施例】
【0100】
<精製工程>
前記培養上清に含まれる抗体を以下のようにして精製した。まず、ProteinAを充填したカラムに、回収した培養上清をフィルターでろ過したものをアプライし、抗体を、ProteinAを充填したカラム吸着させた。前記カラムをPBSで洗浄後、溶出バッファー(0.5M アルギニン、pH4.1)を入れて、抗体をフラクションごとに回収した。
回収した抗体はすぐに、1M Tris-HCl(pH8.0)により中和した。
得られたフラクションのうち、POD conjugated anti-mouse IgGとの反応性において吸光度の高いフラクションをプールした。プールした精製抗体をPBSに対して透析し、IgG分画の精製されたEBAG9に対するモノクローナル抗体(「マウスモノクローナル抗EBAG9抗体」と称することもある)を得た。
【実施例】
【0101】
(試験例1:抗体の評価)
前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体について、ウエスタンブロット法により、既存の各種抗体と比較し、評価した。既存の各種抗体としては、以下の3種類を用意した。なお、RCAS1とは、EBAG9の別名である。
-既存の各種抗体-
(A) ウサギポリクローナル抗マウスEBAG9抗体(Tsuchiya et al, Biochem Biophys Res Commun. 284(1):2-10, 2001)
(B) マウスモノクローナル抗RCAS1抗体(Cat# AM75-100UG、Millipore社製)(以下、「RCAS1(1)抗体」と称することがある。)
(C) マウスモノクローナル抗RCAS1抗体(Cat D060-3H、株式会社医学生物学研究所製)(以下、「RCAS1(2)抗体」と称することがある。)
【実施例】
【0102】
<ウエスタンブロット法>
-抗体希釈溶液の調製-
前記マウスモノクローナル抗EBAG9抗体、及び既存の各種抗体について、各抗体の濃度がほぼ同等となるようにTBSTバッファーで希釈し、希釈溶液を調製した。前記希釈は、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体及び前記(A)のウサギ抗マウスEBAG9抗体は、5,000倍希釈、前記(B)及び(C)のマウスモノクローナル抗RCAS1抗体は、2,000倍希釈とした。
【実施例】
【0103】
-細胞溶解液の調製-
前記製造例1のハイブリドーマ選択工程におけるウエスタンブロット解析と同様にして、プラスミド2、細胞溶解液1、及び細胞溶解液2を調製した。
【実施例】
【0104】
-ウエスタンブロット-
前記抗体希釈溶液を用いた点以外は、前記製造例1のハイブリドーマ選択工程におけるウエスタンブロットと同様にして、ウエスタンブロットを行った。
【実施例】
【0105】
結果を図4に示す。図4中、「1」は、細胞溶解液1を示し、「2」は細胞溶解液2を示す。
図4から、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体(C57-8由来の精製モノクローナル抗ヒトEBAG9抗体)は、外来性のタグ付きのEBAG9タンパク質に加え、内在性のEBAG9タンパク質をも検出し、しかも非特異的なバンドがほとんど見られなかった。一方、前記ウサギポリクローナル抗マウスEBAG9抗体は、外来性のタグ付きのEBAG9タンパク質及び内在性のEBAG9タンパク質の両者のバンドを検出できるものの、非特異的なバンドも数多く検出した。前記RCAS1(1)抗体は、外来性のタグ付きのEBAG9タンパク質を検出できるものの、同様の条件で内在性のEBAG9タンパク質は検出できず感度が低かった。前記RCAS1(2)抗体については、同様の条件で外来性のタグ付きのEBAG9タンパク質及び内在性のEBAG9タンパク質ともに検出できず感度が低かった。
したがって、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体は、十分な感度を有することに加え、極めて特異性が高く、バックグラウンドが低いことが示された。
【実施例】
【0106】
(試験例2:EBAG9免疫反応陽性と、乳癌患者の予後不良との相関)
前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を用い、再発乳癌患者に対する内分泌療法効果についてのケース-コントロール スタディを行った。
【実施例】
【0107】
<患者特性と組織選択>
100症例の乳癌患者を日本国内の3施設(国立がんセンター、国立四国がんセンター、東京都立駒込病院)より収集した。これらの患者は、1989年から1998年の間に乳癌と診断され、かつ術後タモキシフェン治療を実施後、再発情報が明らかであり、内分泌療法による予後を解析するために好適な症例群である。
本試験例2では、術後内分泌療法を行った後、5年のフォローアップ期間内で遠隔転移を認めた症例を再発群、認めなかった症例を無再発群と規定した。
サンプルとして、生検あるいは手術により摘出された乳癌組織をホルマリン固定・パラフィン包埋したサンプルを用いた。
なお、本試験は、参加施設並びに埼玉医科大学の倫理委員会の承認を受け、インフォームド コンセントを得ている。患者の臨床病理学的特性を表2に示した。
【実施例】
【0108】
【表2】
JP0006182149B2_000005t.gif
表2中、「ERα」は、エストロゲンレセプターαを示し、「PgR」は、プロゲステロンレセプターを示す。
【実施例】
【0109】
<免疫組織化学的染色>
乳癌組織におけるEBAG9発現の免疫組織化学的解析は、Dako社のEnVision+ visualization kitを用い、以下のようにして行った。
厚み6μmの乳癌組織切片を脱パラフィン処理、段階的エタノール系列による再親水処理を行った後、0.05% Tween-20含有トリス緩衝リン酸溶液(TBST)により洗浄した。その後、抗原の賦活化処理として、10mMのクエン酸ナトリウム溶液(pH 6.0)に浸漬した切片スライドにオートクレーブ機器を用いた熱処理(121℃、5分間)を施した。その後、乳癌組織内の内在性ペルオキシダーゼ活性を阻害するため、切片を0.3%の過酸化水素水(H)で30分間処理したのち、非特異的抗原をマスクするため10%ウシ胎仔血清(FBS)で30分間処理した。次いで、一次抗体として、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を200倍希釈したマウスモノクローナル抗EBAG9抗体溶液を150μL添加し、4℃で一晩反応させた。TBSTで洗浄後、二次抗体として、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ標識したEnvision+ horseradish peroxidase-labeled polymerを150μL添加し、室温で1時間反応させた。抗原抗体複合体の可視化は、Vector社の3,3’-diaminobenzidine (DAB) substrate kit for peroxidaseを用いた。なお、前記一次抗体の陰性コントロールとして、マウス免疫グロブリン(IgG マウス血清由来、Sigma-Aldrich社製)を用いた。
前記染色結果の例を図5及び図6に示す。図5及び図6中、スケールバーは、100μmを表す。図5及び図6の結果から、EBAG9の免疫反応性は主に乳癌細胞の細胞質で観察された。一方、ほぼ全ての乳腺上皮細胞、筋上皮細胞、間質細胞におけるEBAG9免疫反応性は乳癌細胞に比べ弱いかあるいは陰性であった。
【実施例】
【0110】
<免疫組織化学的染色結果の判定>
前記染色した切片スライドを顕微鏡下で観察し、評価した。前記評価では、視野内全細胞における染色された陽性細胞の割合(以下、「免疫反応性スコア」と称することがある。)を評価した。前記評価は、2名が独立に行い、免疫反応性スコアを算定した。
なお、2名の評価者の間で免疫反応性スコアが異なった場合、第3の評価者が更に判定に加わり、3者の平均した結果を用いた。
乳癌組織におけるEBAG9免疫反応性と、臨床病理学的パラメーターとの間の相関を明らかにするため、EBAG9陽性細胞の割合が50%以上の乳癌患者をEBAG9陽性とし、一方50%未満の乳癌患者を陰性とした。
【実施例】
【0111】
<統計解析>
前記免疫反応性スコアと、臨床病理学的パラメーターとの相関の解析は、カイ2乗検定により行った。P値が0.05未満の場合、統計学的に有意であるとした。2群間の差異については、Student’s t-testにより解析した。無再発生存期間及び全生存期間における予後曲線は、Kaplan-Meier法により作成し、log-rank (Mantel-Cox) testにより評価した。
単変量解析及び多変量解析については、SAS Institute社のソフトウェアJMP9.0を用いてロジスティック回帰分析により行った。P値が0.05未満を統計学的有意と判定した。
【実施例】
【0112】
統計学的解析の結果、細胞質におけるEBAG9の免疫反応性は、再発群で有意に上昇していた(p=0.013)(表3参照)。同様に、Kaplan-Meier生存曲線解析の結果、EBAG9陽性患者は陰性患者に比べ、短い無再発生存期間を有していた(p=0.0205、5年間;p=0.0024、全フォローアップ期間)(図7参照)。
【実施例】
【0113】
【表3】
JP0006182149B2_000006t.gif
【実施例】
【0114】
更に、この乳癌患者の集団において、様々な臨床病理学的パラメーターの予後に対する統計学的有意性を、ロジスティック回帰分析により検討を行った。結果を表4に示す。
【実施例】
【0115】
【表4】
JP0006182149B2_000007t.gif
【実施例】
【0116】
まず、単変量解析(univariate)を行ったところ、腫瘍径(pT)、ERα、PgR、年齢の各因子との相関はみられなかったが、EBAG9陰性とリンパ節転移状態の2つの因子について、5年無再発生存との負の相関関係が有意に観察され、危険因子となることが判明した。
この結果を受けた多変量解析(Multivariate)においても、EBAG9陰性とリンパ節転移陰性のいずれも、より長期の無再発生存を予測しうる独立した予後予測因子であることが示唆された(odds ratio, 0.22 and 0.37、p-value, 0.035 and 0.025)。
これらの結果から、EBAG9の免疫反応性は術後内分泌療法を受けた乳癌患者の予後不良因子として機能しうることが初めて示された。
【実施例】
【0117】
(試験例3:EBAG9に対するモノクローナル抗体のエピトープの同定)
前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体のエピトープを以下のようにして同定した。
【実施例】
【0118】
<エピトープの同定-1>
-プラスミド-
プラスミドとして、前記製造例1で作製したプラスミド1と、以下のようにして構築したプラスミド3及び4を用意した。
【実施例】
【0119】
--プラスミド3の構築--
GSTタンパク質とヒトEBAG9タンパク質の48番目から136番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(48-136))を以下のようにして作製した。
前記製造例1で作製したプラスミド1(pGEX-hEBAG9(48-213))を制限酵素BglIIとXhoIで切断することによって、ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の137番目のアミノ酸から213番目のアミノ酸に相当するcDNAを除き、次いで、DNA Blunting Kit(TAKARA社製)を用いて平滑末端化した後、セルフライゲーションを行ってGSTタンパク質とEBAG9タンパク質の48番目から136番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(48-136))を作製した。なお、前記融合タンパク質は、前記EBAG9タンパク質の48番目から136番目のアミノ酸のN末端側にGSTタンパク質が融合されている(配列番号8参照)。
【実施例】
【0120】
--プラスミド4の構築--
ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の128番目から213番目のアミノ酸に相当するcDNAを調製し、GSTタンパク質とEBAG9タンパク質の128番目から213番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(128-213))を以下のようにして作製した。
EBAG9の全長cDNA(Watanabe et al., Mol Cell Biol. 18(1):442-449, 1998)を鋳型として、下記配列番号9及び10の合成DNAをプライマーとしてPCRを行った。
配列番号9:5’-ccggaattctctagtagattagcagctacacaa-3’
配列番号10:5’-ccgctcgagttatgaaagtttcacaccaatttt-3’
前記PCRにより得られた増幅産物を制限酵素EcoRI及びXhoIで消化した後、EcoRI及びXhoIで消化したpGEX-4T-1ベクター(GE Healthcare社製)に挿入し、GSTタンパク質とEBAG9タンパク質の128番目から213番目のアミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド(pGEX-hEBAG9(128-213))を作製した。なお、前記融合タンパク質は、前記EBAG9タンパク質の128番目から213番目のアミノ酸のN末端側にGSTタンパク質が融合されている(配列番号11参照)。
【実施例】
【0121】
-細胞抽出液の調製-
前記プラスミド1、3、及び4のそれぞれを用い、以下のようにして細胞抽出液を調製した。
大腸菌株DH5αに前記各プラスミドを導入し、LB培地で一晩培養した後、遠心分離によって大腸菌を回収し、サンプルバッファーで懸濁して細胞抽出液を作製した。
【実施例】
【0122】
-ウエスタンブロット-
前記各細胞抽出液をSDS-PAGEした後、Immobilon-P(Millipore社製)へブロッティングした膜を、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体とともに室温で1時間、又は4℃で12時間、TBSTバッファー(20mM Tris、150mM NaCl、0.1% Tween-20)中で静置した後、二次抗体として、HRP(西洋ワサビパーオキシダーゼ)標識された二次抗体(GE Healthcare社製)とともに室温で1時間反応し、その後、発光シグナルをECL detection system(GE Healthcare社製)により検出した。
なお、コントロールとして、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体の代わりにGSTに対する抗体を用い、同様にしてウエスタンブロットを行った。
【実施例】
【0123】
結果を図8に示す。図8中、左側はマウスモノクローナル抗EBAG9抗体(EBAG9モノクローナル抗体)を用いた場合の結果を示し、右側はGSTに対する抗体(GST抗体)を用いた場合の結果を示す。
図8に示すように、pGEX-hEBAG9(48-213)とpGEX-hEBAG9(128-213)を導入した大腸菌の抽出液ではGST-EBAG9融合タンパク質が検出されたが、pGEX-hEBAG9(48-136)を導入した大腸菌の抽出液ではGST-EBAG9融合タンパク質が検出されなかった。したがって、まず、マウスモノクローナル抗EBAG9抗体のエピトープは、ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の128番目から213番目のアミノ酸配列の間に存在することが示された。
【実施例】
【0124】
<エピトープの同定-2>
-ペプチド-
以下の各ペプチドを化学合成により用意した(Genscript社製)。
(1) ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の128番目から157番目のアミノ酸に相当する30アミノ酸からなるペプチド(以下、「128-157」と称することがある)。
N末端-SSRLAATQDLPFIHQSSELGDLDTWQENTN-C末端(配列番号12参照)
(2)ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の148番目から177番目のアミノ酸に相当する30アミノ酸からなるペプチド(以下、「148-177」と称することがある)。
N末端-DLDTWQENTNAWEEEEDAAWQAEEVLRQQK-C末端(配列番号13参照)
(3)ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の167番目から196番目のアミノ酸に相当する30アミノ酸からなるペプチド(以下、「167-196」と称することがある)。
N末端-WQAEEVLRQQKLADREKRAAEQQRKKMEKE-C末端(配列番号14参照)
(4)ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の187番目から213番目のアミノ酸に相当する27アミノ酸からなるペプチド(以下、「187-213」と称することがある)。
N末端-EQQRKKMEKEAQRLMKKEQNKIGVKLS-C末端(配列番号15参照)
【実施例】
【0125】
-細胞抽出物の調製-
前記プラスミド1、4、又はpGEX-4T-1ベクター(GE Healthcare社製)のそれぞれを用い、以下のようにして細胞抽出液を調製した。
大腸菌株DH5αに前記各プラスミドを導入し、LB培地で一晩培養した後、遠心分離によって大腸菌を回収し、サンプルバッファーで懸濁して細胞抽出液を作製した。
【実施例】
【0126】
-抗体の中和-
前記(1)~(4)の各ペプチド 8μgと、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体とを4℃で一晩混合し、前記抗体を中和させた試料を用意した。なお、コントロールとして、前記ペプチドを含まない以外は同様の操作を行った試料(以下、「None」と称することがある)も用意した。
【実施例】
【0127】
-ウエスタンブロット-
前記各細胞抽出液をSDS-PAGEした後、Immobilon-P(Millipore社製)へブロッティングした膜を、前記「抗体の中和」で得られた各試料とともに室温で1時間、又は4℃で12時間、TBSTバッファー(20mM Tris、150mM NaCl、0.1% Tween-20)中で静置した後、二次抗体として、HRP(西洋ワサビパーオキシダーゼ)標識された二次抗体(GE Healthcare社製)とともに室温で1時間反応し、その後、発光シグナルをECL detection system(GE Healthcare社製)により検出した。
【実施例】
【0128】
結果を図9に示す。図9に示すように、前記製造例1で得られた抗体をヒトEBAG9タンパク質のN末端側の148番目から177番目のアミノ酸に相当する30アミノ酸からなるペプチド(「148-177」)で中和した場合にのみ、シグナルが検出されなかった。したがって、マウスモノクローナル抗EBAG9抗体のエピトープは、ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の148番目から177番目のアミノ酸配列に局限することが明らかになった。
【実施例】
【0129】
前記ヒトEBAG9タンパク質のN末端側の148番目から177番目のアミノ酸配列には、酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)が多く含まれており、特徴的な構造に寄与すると考えられる。この領域内をエピトープとするモノクローナル抗体が作製されたことで、力価の高い抗体となっていることが示唆された。
【実施例】
【0130】
(試験例4:EBAG9に対するモノクローナル抗体の作用)
前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体について、腫瘍増殖抑制作用、及び癌転移抑制作用を以下のようにして調べた。
【実施例】
【0131】
<細胞培養>
細胞として、BALB/cマウス由来乳癌細胞でルシフェラーゼを発現する4T1-Luc(Hiraga T. et al., Int J Cancer. 106:973-979, 2003)を使用した。
前記細胞は、10% fetal bovine serumと、100units/mL penicillin(Invitrogen社製)と、100μg/mL streptmysin(Invitrogen社製)とを含むRPMI1640培地(NACALAI TESQUE社製)で、5% CO、37℃にて培養した。
【実施例】
【0132】
<in vivoでの腫瘍増殖抑制実験>
8週齢、メスのBALB/cマウス(日本クレア社製)のmammary fat padに前記4T1-Luc細胞を移植した。移植する細胞は、5×10cells/匹とし、投与量は、100μL/匹となるように調整した。
前記マウスモノクローナル抗EBAG9抗体は、PBSに対して透析した後、腫瘍移植後2日目より、週に2回、0.2mg/匹の投与量で腹腔内に注入した(治療群)。なお、コントロールとして、正常マウスIgG(Sigma Aldrich社製)を同様に調製して投与した。
腫瘍の増殖は、ルシフェリン(3mg/匹)を腹腔内投与した後の発光をインビボイメージング装置Photon IMAGER (BIOSPACE LAB社製)を用いて週1回計測し、1秒間当たりの発光量(Counts/s)によって解析した。
【実施例】
【0133】
結果を図10A及び図10Bに示す。図10A中、「○」は正常マウスIgGを投与したコントロール(n=6)の結果を示し、「●」はマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した場合(n=8)の結果を示す。なお、図10Aは、平均±SE(bar)で示しており、「*」はP<0.05を示し、「**」はP<0.01を示す。図10Bは、腫瘍移植から3週間後に計測した際の典型的な例の写真であり、「IgG(コントロール)」はコントロールの場合の典型例を示し、「EBAG9モノクローナル抗体」はマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した場合の典型例を示す。
図10A及び図10Bから明らかなように、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した群では、コントロールに対して有意に腫瘍形成が抑制された。したがって、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体は、乳癌細胞の腫瘍増殖抑制効果を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0134】
<癌転移抑制作用の検証>
前記in vivoでの腫瘍増殖抑制実験において、腫瘍移植から4週間後のマウスにおける乳癌細胞の肺への転移を調べた。
図11Aは、腫瘍移植から4週間後のマウスの肺の様子の一例を示す写真であり、「IgG(コントロール)」はコントロールの場合のものであり、「EBAG9モノクローナル抗体」はマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した場合のものである。また、図11Bは、乳癌細胞の転移巣の数を示したグラフであり、「IgG(コントロール)」はコントロールの場合のものであり、「EBAG9モノクローナル抗体」はマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した場合のものである。なお、図11B中、「*」はP<0.05を示す。
図11Aから明らかなように、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した群では、乳癌細胞の肺への転移が抑えられており、また、図11Bから明らかなように、前記製造例1で得られたマウスモノクローナル抗EBAG9抗体を投与した群では、転移巣の数がコントロールに対して有意に低値を示した。
【実施例】
【0135】
EBAG9は、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、精巣腫瘍、脳腫瘍、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、大腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、喉咽頭癌、扁平上皮癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、ページェット病などで高発現しており、予後不良と相関することが知られている。したがって、EBAG9に対するモノクローナル抗体は、乳癌をはじめとする癌の治療に応用できる可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体は、特異性が高く、内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法、内分泌療法薬耐性乳癌の予測用診断薬又はキットに好適に用いることができ、また、腫瘍増殖抑制剤、癌転移抑制剤、及び医薬の有効成分として好適に利用可能である。また、本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体は、癌細胞の免疫系からの回避に関するメカニズムや増殖・転移メカニズムを解き明かし、病態解明への応用にも利用可能である。
本発明のハイブリドーマは、本発明のEBAG9に対するモノクローナル抗体の製造に好適に用いることができる。
本発明の内分泌療法薬耐性乳癌の予測方法、予測用診断薬又はキットによれば、内分泌療法薬に対する耐性を獲得する乳癌か否かを早期に診断することが可能となる。
本発明の腫瘍増殖抑制剤によれば、腫瘍の増殖を効果的に抑制することができる。
本発明の癌転移抑制剤によれば、癌の転移を効果的に抑制することができる。
本発明の医薬は、癌の予防乃至治療に好適に利用可能である。
【受託番号】
【0137】
NITE BP-01406
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10A】
9
【図10B】
10
【図11A】
11
【図11B】
12