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明細書 :ナノゲル/エキソソーム複合体とDDS

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年8月25日(2016.8.25)
発明の名称または考案の名称 ナノゲル/エキソソーム複合体とDDS
国際特許分類 A61K  47/36        (2006.01)
A61K  35/12        (2015.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
FI A61K 47/36
A61K 35/12
A61K 9/127
A61K 48/00
A61K 31/713
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 23
出願番号 特願2014-539733 (P2014-539733)
国際出願番号 PCT/JP2013/076577
国際公開番号 WO2014/054588
国際出願日 平成25年9月30日(2013.9.30)
国際公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権出願番号 2012219155
優先日 平成24年10月1日(2012.10.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ
発明者または考案者 【氏名】秋吉 一成
【氏名】澤田 晋一
【氏名】珠玖 洋
【氏名】原田 直純
【氏名】瀬尾 尚宏
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C086
4C087
Fターム 4C076AA19
4C076AA95
4C076CC29
4C076DD70
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE37
4C076EE41
4C076FF32
4C076FF34
4C076GG27
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084NA13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA07
4C086MA24
4C086NA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA05
4C087MA24
4C087NA13
要約 本発明は、エキソソームを任意の細胞に導入する手段の提供を課題とする。
斯かる課題を解決する手段として、疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される、複合体を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される、複合体。
【請求項2】
疎水化多糖ナノゲルが、多糖部分及び疎水性部分を有している、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
疎水化多糖ナノゲルの多糖部分が、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、水溶性セルロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
疎水性部分が、炭素数8~50の炭化水素基またはステリル基である、請求項2または3に記載の複合体。
【請求項5】
疎水性部分が、コレステリル基である、請求項2~4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
疎水化多糖ナノゲルがカチオン性である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
疎水化多糖ナノゲルがカチオン性のコレステリル化プルランである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
カチオン性基として、アミノ基を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
エキソソームが粒子径200ナノメートル未満の細胞外分泌小胞である請求項1~8のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
前記エキソソームが薬物またはsiRNAを含む、請求項1~8のいずれかに記載の複合体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の複合体からなる物質導入用担体。
【請求項12】
請求項10に記載の複合体からなる薬物またはsiRNAの導入剤。
【請求項13】
細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入したエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項10に記載の複合体の製造方法。
【請求項14】
細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、前記細胞を培養してエキソソームを得、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項13に記載の複合体の製造方法。
【請求項15】
エキソソームにエレクトロポレーションにより薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、請求項13に記載の複合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年10月1日に出願された、日本国特許出願第2012-219155号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、エキソソームを含む複合体とドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する。
【背景技術】
【0003】
エキソソームは、細胞が分泌するエンドソーム由来の50~200nm程度の小胞であり、その存在は1980年代から知られていた。近年、このエキソソーム中にメッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)が含まれており、他の細胞に核酸やタンパク質を運ぶ運搬体として機能することが見いだされている。特定の細胞由来の細胞膜タンパク質や核酸を含むエキソソームが、長距離の細胞間コミュニケーション経路として、種々の生命現象に重要に関わっていることが明らかにされつつあり、医療やバイオへの応用研究が進められている。
【0004】
生体内において細胞同士が離れた場所にある場合、細胞はタンパク質や低分子化合物等を介して情報のやりとりを行っていることが知られている。近年、新たな細胞間コミュニケーション手段として体液中に存在するRNAが注目を浴びている。古くから体液中にRNAが存在することは報告されていたが、その役割は長い間不明であった。また、体液中ではRNAが非常に不安定であることから、長距離の細胞間コミュニケーションに関与しているとは考えられていなかった。
【0005】
最近になり、細胞から分泌されるエキソソーム内にmRNAやmiRNAが存在することが報告され、分泌型RNAという新たな細胞間コミュニケーション手段が明らかとなりつつある。エキソソームに内包され輸送されるRNAは主にmRNAとmiRNAであり、エキソソームに内包されているmRNAがエキソソームを受け取る側の細胞で翻訳されることが発見されている(非特許文献1:Valadi H et al. Nat Cell Biol 2007, 9: 654-659)。一方、エキソソーム由来miRNAの受け手側細胞での機能発現についてもいくつかの報告がされている。Pegtelらは、EBウイルス(Epstein-Barr virus)に感染したリンパ球から分泌されたエキソソームにはEBウイルス由来のmiRNAが存在することや、そのエキソソームによってmiRNAがEBウイルスに感染していない単核球由来樹状細胞内に運ばれ、標的遺伝子の発現を抑制することを明らかとしている(非特許文献2:Pegtel D M et al. Proc Natl Acad Sci USA 2010, 107: 6328-6333)。また、Kosakaらは、ある特定のmiRNAを過剰発現させた腎細胞株由来のエキソソームに目的のmiRNA が含まれているのを確認するとともに、受け手側の細胞内にmiRNAが入り標的遺伝子の発現を抑制することを報告している(非特許文献3:Kosaka N et al. J Biol Chem 2010, 285: 17442-17452)。
【0006】
エキソソームと免疫に関する研究は数多く行われているが、その中でも、癌細胞と免疫細胞との間のエキソソームを介した相互作用について多くの知見が報告されている。癌細胞から分泌されるエキソソームには癌細胞特異的な抗原が含まれており、樹状細胞を介して抗原特異的傷害性T細胞を誘導する(非特許文献4:Thery C et al. Nat Rev Immunol 2009, 9: 581-593, 非特許文献5:Andre F et al. Lancet 2002, 360: 295-305)。特に癌抗原として癌細胞特異的な膜タンパク質やエンドソーム構成タンパク質が多く含まれており、このようなエキソソームが抗原提示細胞に取り込まれることにより抗腫瘍免疫作用が誘導される。また、癌細胞由来エキソソームは免疫促進作用だけでなく免疫抑制作用を示すことも明らかとなっている。例えば、癌細胞や癌患者の体液由来エキソソームによるT細胞のアポトーシス誘導や増殖抑制(非特許文献6:Andreola G et al. J Exp Med 2002, 195:1303-1316)、NK細胞やT細胞の細胞傷害活性の抑制(非特許文献7:Clayton A et al. Cancer Res 2007, 67:7458-7466等が報告されており、癌細胞から分泌されたエキソソームは様々な免疫抑制作用を示すことで、多面的に抗腫瘍免疫作用から癌細胞を守っているとも考えられる。
【0007】
このようなエキソソームによる免疫制御機能が明らかになるにつれ、エキソソームによる新しい癌免疫療法の開発も進められつつある。癌抗原に感作させた樹状細胞から分泌されたエキソソームを用いることで抗腫瘍免疫作用を誘導できることが数多く報告され、現在、このタイプのエキソソームを利用した臨床試験も始まっている(非特許文献8:Tan A et al. Int J Nanomed 2010, 5: 889-900)。
【0008】
エキソソームをドラッグデリバリーキャリアとして応用した例はまだそれほど多くはないが、エキソソームを分泌する側の細胞を適切に選択することにより、また、疾病特異的に発現している膜タンパク質等のリガンドをエンドソームや細胞膜に過剰発現させてエキソソームに移行させるにより、標的指向性を上昇させ、ドラッグキャリアとして利用することが試みられている。例えば、Zhangらは、マウスリンパ腫EL-4由来のエキソソームにがん細胞の増殖を抑制するクルクミンを含有させ、マウスの骨髄細胞に到達させることに成功している(非特許文献9:Sun D et al. Mol Ther 2010, 18:1606-1614)。細胞種によりエキソソームはレセプター/リガンド相互作用、マクロピノサイトーシス等の様々なエンドサイトーシスやファゴサイトーシスによって受け手側の細胞に取り込まれると報告されている(非特許文献10:Escrevent C et al. BMC cancer 2011 11:108-118)。
【0009】
一方、Ervitiらは、siRNAを搭載したエキソソームをマウスの脳に送り込むことに成功している(非特許文献11)。脳にターゲティングするために、遺伝子工学的手法を用いてニューロン特異的ペプチド(RVGペプチド)を融合させたエキソソーム膜タンパク質(Lamp2b)を発現する樹状細胞を作製した。その細胞から回収したエキソソームに電気穿孔法を用いてsiRNAを内包させ、マウスに投与したところ、脳のニューロンやミクログリアなどにsiRNAが送達され、標的遺伝子がノックダウンされることを報告している。また、アルツハイマー病治療の標的遺伝子であるBACE1のノックダウンにも成功しており、新しい治療法として期待されている。
【0010】
一方,我々はこれまでに、親水性の多糖に疎水性基を部分的に置換した疎水化多糖が、水中で20-30 nmの会合体微粒子(ナノゲル)を形成する事を見出している。ナノゲルはタンパク質のリフォールディングを助けるシャペロン機能を有し、さらには、カチオン性基を導入したナノゲルにおいては細胞内にタンパク質や核酸を導入し得る事が分かっている。カチオン性ナノゲルは導入したいタンパク質と混合するだけで、細胞に取り込まれ易いナノサイズの複合体(~50 nm)を自発的に形成し得ること、さらに細胞内でシャペロン機能によりタンパク質を効率よく放出しえることが他のキャリアにはない大きな特徴である。最近では、siRNA(非特許文献12:Toita S et al. Chem. Lett 2009 38:1114-1115)、プラスミドDNA(非特許文献13:Toita S et al. J Controlled Release 2011 155:54-59)のデリバリーとしてもカチオン性ナノゲルが有用であることを報告している。また、ナノゲルの癌ワクチンへの応用も進められている。
【0011】
癌ワクチンによる癌免疫療法は、副作用が少ないこと、長期にわたり癌細胞の増殖、再発、転移の抑制が可能であることなど他の治療法にはない特長を有している。ワクチン療法では、癌細胞や感染細胞が特異的に発現する抗原タンパク質をマクロファージや樹状細胞に、いかに効率よくデリバリーするかが重要である。ナノゲルは抗原タンパク質を容易に内包することができ、50 nm以下の安定な複合体ナノ微粒子を形成した。例えば、癌遺伝子産物としてのerbB2抗原タンパク質を内包したCHPナノゲルを担癌マウスの皮下に投与すると、抗体を産生するヘルパーT細胞のみならず、抗腫瘍性のキラーT細胞が効率よく誘導されることが明らかになった(非特許文献14:Ikuta Y et al. Blood 2002 99:3717-3724)。2004年から臨床試験も行われその有効性が実証されている(非特許文献15:Uenaka A et al. Cancer Immunity 2007 7:9-19 非特許文献16:Kageyama S et al. Cancer Sci 2008 99:601-607)。食道がん抗原のNY-ESO-1タンパク質を内包したCHPナノゲルの臨床有用性も示唆されており、治験に進んでいる。また、最近、カチオン性ナノゲルの細胞親和性を利用した、粘膜ワクチンの開発も進めている。経鼻ワクチンは、抗原特異的免疫応答を全身組織に加え、粘膜組織にも誘導可能であることから、インフルエンザなどの呼吸器感染症に対する予防ワクチンとして非常に効果的とされている。一方で、粘膜組織は、通常は上皮層によって強固に覆われており、経鼻ワクチンの効果を最大限に期待するためには、上気道粘膜免疫システムへの効果的なワクチンデリバリー技術の開発が必要不可欠とされてきた。カチオン性のナノゲルにワクチン抗原を内包し、それを経鼻投与することで、感染すると神経麻痺による致死性の高いボツリヌス菌や破傷風菌などのワクチン抗原を、効果的に上気道粘膜免疫システムにデリバリーさせ、高いレベルの防御免疫応答を、アジュバント非存在下でも誘導できることに成功した(非特許文献17:Nochi T et al. Nat Mat 2010 9:572-578)。また、疎水化多糖に細胞親和性を付与するために、細胞接着シグナルとして知られているRGDペプチドを導入したRGD置換ナノゲルを開発し、癌細胞に効率よく取り込まれることを報告している(非特許文献18;A. Shimoda, S. Sawada, K. Akiyoshi, Cell specific peptide-conjugated polysaccharide nanogels for protein delivery, Macromol. Bioscience, 11, 882-888 (2011))。
【0012】
また、水溶性多糖に疎水性分子を導入した疎水化多糖ナノゲルはリン脂質に分子膜からなるリポソームと相互作用し、リポソーム表面を疎水化多糖ナノゲルで被覆できることも報告されており(非特許文献19:Kang EC et al. J. Bioact Compat Polym 1997 12:14-26)、リポソーム表面の機能化への応用も進めている。
【0013】
通常、特定の細胞から抽出精製したエキソソームは、特定の受け手細胞と相互作用して取り込まれることが明らかとなっているが、その受け手細胞以外の細胞とは相互作用しない。その為、本来の受け手細胞以外の任意の細胞にエキソソームを取り込ませる場合、従来は、目的の細胞が発現する細胞膜受容体に対する特異的なリガンドをエキソソーム表面に人為的に発現させることで、目的細胞とエキソソームの相互作用を実現させる戦略がとられてきた。あるリガンドをエキソソーム表面に発現させる技術としては、エキソソームに存在する膜タンパク質とリガンドの融合遺伝子を遺伝子工学的にエキソソーム産生細胞に導入する方法がほとんどである。その遺伝子工学操作の困難さや、産生細胞内部でのエキソソームへのリガンドの導入が不確実であること等から、エキソソームの任意の細胞への取り込み手法はいまだ確立されていない。
【0014】
疎水化多糖ナノゲルは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【0015】

【特許文献1】WO00/12564
【0016】

【非特許文献1】Valadi H et al. Nat Cell Biol 2007, 9:654-659
【非特許文献2】Pegtel D M et al. Proc Natl Acad Sci USA 2010, 107:6328-6333
【非特許文献3】Kosaka N et al. J Biol Chem 2010, 285:17442-17452
【非特許文献4】Thery C et al. Nat Rev Immunol 2009, 9:581-593
【非特許文献5】Andre F et al. Lancet 2002, 360: 295-305
【非特許文献6】Andreola G et al. J Exp Med 2002, 195:1303-1316
【非特許文献7】Clayton A et al. Cancer Res 2007, 67:7458-7466
【非特許文献8】Tan A et al. Int J Nanomed 2010, 5:889-900
【非特許文献9】Sun D et al. Mol Ther 2010, 18:1606-1614
【非特許文献10】Escrevent C et al. BMC cancer 2011 11:108-118
【非特許文献11】Erviti L A, Seow Y, Yin H F, Betts C, Lakhal S et al.: Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosome. Nat Biotechnol 2011, 29: 341-345
【非特許文献12】Toita S et al. Chem. Lett 2009 38:1114-1115
【非特許文献13】S. Toita et al. J Controlled Release 2011 155:54-59
【非特許文献14】Ikuta Y et al. Blood 2002 99:3717-3724
【非特許文献15】Uenaka A et al. Cancer Immunity 2007 7:9-19
【非特許文献16】Kageyama S et al. Cancer Sci 2008 99:601-607
【非特許文献17】Nochi T et al. Nat Mat 2010 9:572-578
【非特許文献18】A. Shimoda, S. Sawada, K. Akiyoshi, Cell specific peptide-conjugated polysaccharide nanogels for protein delivery, Macromol. Bioscience, 11, 882-888 (2011)
【非特許文献19】Kang EC et al. J. Bioact Compat Polym 1997 12:14-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、エキソソームの任意細胞への取り込み手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、エキソソームの細胞への取り込みを促進させるための複合体及びその製造方法、薬物、核酸などの物質の細胞への導入法に関するものである。
【0019】
項1、 疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される、複合体。
【0020】
項2、 疎水化多糖ナノゲルが、多糖部分及び疎水性部分を有している、項1に記載の複合体。
【0021】
項3、 疎水化多糖ナノゲルの多糖部分が、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、水溶性セルロースからなる群から選択される少なくとも1種である項2に記載の複合体。
【0022】
項4、 疎水性部分が、炭素数8~50の炭化水素基またはステリル基である、項2または3に記載の複合体。
【0023】
項5、 疎水性部分が、コレステリル基である、項2~4のいずれか1項に記載の複合体。
【0024】
項6、 疎水化多糖ナノゲルがカチオン性である、項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【0025】
項7、 疎水化多糖ナノゲルがカチオン性のコレステリル化プルランである、項6に記載の複合体。
【0026】
項8、 カチオン性基として、アミノ基を有する、項1~7のいずれか1項に記載の複合体。
【0027】
項9、 エキソソームが粒子径200ナノメートル未満の細胞外分泌小胞である項1~8のいずれかに記載の複合体。
【0028】
項10、 前記エキソソームが薬物またはsiRNAを含む、項1~8のいずれかに記載の複合体。
【0029】
項11、 項1~9のいずれかに記載の複合体からなる物質導入用担体。
【0030】
項12、 項10に記載の複合体からなる薬物またはsiRNAの導入剤。
【0031】
項13、 細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入したエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、項10に記載の複合体の製造方法。
【0032】
項14、 細胞内に薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、前記細胞を培養してエキソソームを得、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、項13に記載の複合体の製造方法。
【0033】
項15、 エキソソームにエレクトロポレーションにより薬物またはsiRNAもしくはその前駆体を導入し、得られたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルを混合することを特徴とする、項13に記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、エキソソームの任意細胞への取り込み機能を付与し、核酸、薬物、タンパク質などの様々な生理活性物質の細胞への取り込みを促進、向上させることができる。特に、細胞との親和性分子を導入した疎水化多糖ナノゲルをエキソソーム表面に被覆することでエキソソーム表面に細胞との親和性を付与することが可能となる。
【0035】
本発明によれば、本来、相互作用し得ない細胞へのエキソソームの導入を行うことが可能になる。エキソソーム膜への機能付与手法として、遺伝子工学的手法と確率論的なエキソソームへの機能改変膜タンパク質の導入では不可能な、エキソソーム膜表面の確実な機能化を可能とする。付与する機能をナノゲルへ導入する機能分子により制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】CHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体形成における複合体粒径測定結果。
【図2A】CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体を取り込んだHeLa細胞の共焦点レーザー顕微鏡画像(a)CFSE標識エキソソームのみ(b)CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体。
【図2B】図2Aの上段において、色を反転させた図。
【図3A】CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体を取り込んだRAW264.7細胞の共焦点レーザー顕微鏡画像(a)CFSE標識エキソソームのみ(b)CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体。
【図3B】図3Aの上段において、色を反転させた図。
【図4A】CHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体によるsiRNAの細胞内導入実験(CT26細胞、CMS5細胞)。(A) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (-)。(B) CHP-NH2 (-)、エキソソーム (+)、siRNA (+)。(C) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (+)
【図4B】CHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体によるsiRNAの細胞内導入実験(4T1細胞、K562細胞)。(A) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (-)。(B) CHP-NH2 (-)、エキソソーム (+)、siRNA (+)。(C) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (+)
【図5】CHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体によるsiRNAの細胞内導入実験(RAW264.7細胞)。(A) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (-)。(B) CHP-NH2 (-)、エキソソーム (+)、siRNA (+)。(C) CHP-NH2 (+)、エキソソーム (+)、siRNA (+)
【図6】本発明の疎水性ナノゲルの一例を示す。1:コレステリル基(1~5%)、2:プルラン、3:疎水性ナノゲル(粒径~50 nm)、p:自己組織化。
【図7A】本発明の疎水性ナノゲルの一例を示す。1:コレステロール、2:アミノ基、3:プルラン、4:cCHPナノゲル(カチオン性ナノゲル)、p:自己会合。
【図7B】本発明の疎水性ナノゲルの一例を示す。
【図7C】本発明の複合体の一例を示す。1:カチオン性ナノゲル、2:エキソソーム、3:カチオン性ナノゲル/エキソソーム複合体、4:エンドソーム、5:核、6:細胞質、p:内水相への薬物の導入(例えば、モデル薬物として蛍光色素。)、q:静電相互作用による複合化、r:カチオン性ナノゲルによる細胞内導入、s:エキソソームの細胞内取り込みを促進、t:エキソソームの膜融合。
【図8】CHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体の細胞内導入。1:エキソソーム(Exosome)(例えば、K562由来。)、2:CFSE-Exosome(CFSE標識エキソソーム)、3:CHP-NH2ナノゲル、4:CFSE標識エキソソーム/CFSE-Exosome(CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体)、5:細胞(例えば、HeLa、RAW264.7。)、p:CFSE染色(37℃、4h(4時間))及びゲル濾過精製、q:複合化(on ice(氷上)、30 min(30分間))、r:投与、s:3h(3時間)、t:1h(1時間)、i:Lysotracker (Red)添加、ii:共焦点顕微鏡観察。

【0037】
図4A、図4B及び図5において、横軸はAF488(Alexa Fluor 488)の蛍光強度を示し、siRNAの導入量を表す。縦軸は、siRNAが導入された細胞数を示す。横軸において、siRNA導入量(蛍光強度)が左側に向かって少なく、右側に向かって多いことを示す。縦軸において、細胞数が下側に向かって少なく、上側に向かって多いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1つの実施形態において、本発明は、疎水化多糖ナノゲルとエキソソームから構成される複合体を提供するものである。

【0039】
本発明におけるエキソソームとは、細胞から放出される小胞を広く含む。エキソソームの直径は30~200nm程度、好ましくは30~100nm程度であり、リン脂質、コレステロ-ルなどの脂質、タンパク質等を含む。エキソソームはそれを産生する限り、いかなる動物種または植物種由来のものであってもよい。動物種は、例えば、脊椎動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、ハムスタ-、ウサギ、ヤギ、ニワトリ、サケ、マグロ等)が挙げられるが、好ましくは、薬物、核酸などの生理活性物質を導入する標的細胞と同種の動物由来であり、標的細胞が生体内の細胞である場合には、標的細胞と同じ動物に由来する小胞が好ましい。また、エキソソームが由来する細胞種は特に限定されないが、例えば、腫瘍細胞、樹状細胞、マクロファ-ジ、T細胞、B細胞、血小板、網状赤血球、上皮細胞、線維芽細胞、幹細胞、iPS細胞等の様々な種類の細胞を挙げることができる。また、エキソソームは種々の体液、例えば、血液、尿、腹水などから調製することもできる。

【0040】
本発明で使用する疎水化多糖ナノゲルは公知であり、例えば特許文献1に開示されている。

【0041】
疎水化多糖ナノゲルは、多糖部分と疎水性部分を有しており、これらが直接或いは適当なリンカー基を介して連結されている。多糖部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどの1種または2種以上の単糖分子が、2分子以上結合したものであればよい。多糖部分は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、カルボキシメチルなどの修飾基を有していてもよい。多糖部分の具体例としては、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、水溶性セルロースなどが挙げられる。中でも、α-グルコースからなるホモ多糖であるプルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストランなどが好ましく、プルランが特に好ましい。多糖部分は、1種単独の多糖であってもよく、2種以上の多糖の組み合わせであってもよい。

【0042】
疎水性部分としては、炭素数8~50(炭素数12~50であってもよい。)の炭化水素基またはステリル基が挙げられ、ステリル基が好ましく、特にコレステリル基が好ましい。リンカー基としては、エステル結合(-COO-または-O-CO-)、エ-テル基(-O-)、アミド基(-CONH-または-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-または-OCONH-)が挙げられ、これらが1個または複数個組み合わせられ、必要に応じて炭素数1~10のアルキレン基、アリ-レン基、アラルキレン基(ベンジレン基、フェネチレン基など)がさらに組み合わせられてもよい。

【0043】
疎水性部分は、重量比で多糖部分の0.1~20%程度、好ましくは0.3~15%程度、より好ましくは0.5~10%程度、特に1~5%程度である。

【0044】
疎水化多糖ナノゲルは、例えば特許文献1に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、炭素数8~50(または、炭素数12~50。)の水酸基含有炭化水素またはステロールと、OCN-R1-NCO(式中、R1は炭素数1~50の炭化水素基である。)で表されるジイソシアナート化合物を反応させて、炭素数12~50の水酸基含有炭化水素またはコレステロールが1分子反応したイソシアナート基含有疎水性化合物を製造する第1段階反応、及び、前記第1段階反応で得られたイソシアナート基含有疎水性化合物と多糖類とをさらに反応させて、疎水性基として炭素数8~50の炭化水素基またはステリル基を含有するを製造する第2反応工程を含む方法が挙げられる。この場合、第2段階反応の反応生成物をケトン系溶媒で精製して、高純度の疎水性基含有多糖類(疎水性多糖ナノゲル)の製造することができる。(以下、「方法A」と記載する場合がある。)

【0045】
疎水化多糖ナノゲルは、カチオン性を有するのが好ましい。これはカチオン性疎水化多糖が、アニオン性を元々有するエキソソームと疎水性相互作用に加えて静電的相互作用に基づき結合するためである。疎水化多糖ナノゲルをカチオン性にするためには、カチオン性のアミノ酸(Lys,Arg,His)あるいはこれらのポリマ-を多糖部分に連結させてもよく、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、イミノ基、アンモニウム基、グアニジノ基、アミジノ基、などのカチオン性基を疎水化多糖ナノゲルに導入させてもよい。カチオン性基の導入は、例えば炭素数1~10のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基(ベンジレン基、フェネチレン基など)、あるいはこれらと上記で例示したようなリンカー基を介してカチオン性基を含む適当な官能基を多糖部分に導入することで行うことができる。或いはポリエチレンイミンなどの他のカチオン性の官能基を導入してもよい。

【0046】
好適な疎水化多糖ナノゲルは、複数のカチオン性基(好ましくはアミノ基)を有するコレステリル化プルラン(CHP-NH2、プルランの100単糖あたりコレステリル基が1~10個、好ましくは1~数個導入され、カチオン性基(好ましくはアミノ基)が1~50個、好ましくは5~30個導入されたもの)である。コレステリル基は、リンカー基(好ましくは、ウレタン結合)を介してプルランに導入されている。

【0047】
ナノゲルへのカチオン性基(好ましくはアミノ基)の導入方法としては、以下のような手法(以下、「方法B」と記載する場合がある。)が好適に挙げられる。方法Bは、文献H. Ayame, N. Morimoto, and K. Akiyoshi, Self-assembled cationic nanogels for intracellular protein delivery system, Bioconjugate Chem., 19, 882-890 (2008)に記載されている。

【0048】
減圧乾燥したコレステロ-ル化プルラン(CHP)1 gおよびジメチルアミノピリジン(DMAP) 0.035 gをジメチルスルホキシド(DMSO)/ピリジン(v:v=1:1)混合溶媒20mlに溶解し、これに10mlの0.25g/ml 4-ニトロフェニルクロロギ酸/(DMSO/ピリジン(v:v=1:1)混合溶媒)をゆっくり添加し、4時間攪拌する。これを、エタノール/ジエチルエーテル(v:v=1:1)混合溶媒を用いて再沈する。回収した沈殿物を300mlのDMSO/ピリジン(v:v=1:1)混合溶媒に溶解し、10 mlの28.5%エチレンジアミン/(DMSO/ピリジン(v:v=1:1)混合溶媒)にゆっくりと滴下し、4日間攪拌する。これを、エタノール/ジエチルエーテル(v:v=1:1)混合溶媒を用いて再沈する。沈殿物を減圧乾燥し、200mlのDMSOに溶解し、蒸留水により透析する。さらに1N NaOH水溶液により透析し、これをHClにより中和し、さらに蒸留水により透析する。これを凍結乾燥し、乳白色の固体を得る。アミノ基の具体例としてはNHが好適に挙げられる。導入する置換基の数は適宜変えることができ、導入する置換基の数を変えることにより正電荷の大きさを制御し、複合体の細胞への取り込み効率を制御することが可能である。エチレンジアミンに代えてカチオン性基を有する他の化合物を使用することにより、種々のカチオン性基を導入することができる。

【0049】
疎水化多糖ナノゲルの性状は、多糖のサイズや導入される疎水性部分の疎水性の程度により、コレステロールなどの疎水性置換量を変え変更可能である。疎水性をコントロールするためには、炭素数10~30、好ましくは炭素数12~20程度のアルキル基をコレステリル基に代えて或いはコレステリル基とともに導入することも好適である。本発明で使用するナノゲルは、平均粒径(直径)5~200nm、好ましくは10~40nm、より好ましくは20~30nmである。ナノゲルは既に広く市販されており、本発明では、これら市販品を広く利用可能である。

【0050】
なお、本明細書において、平均粒径(直径)は、例えば、動的光散乱法(DLS、Dynamic light scattering)により測定をすることができる。

【0051】
疎水化多糖ナノゲルとエキソソームの粒子間の比率は、10:1~1:2程度である。疎水化多糖ナノゲルとエキソソームは、例えば図7に示すように、これらの粒子が適当な比率で結合して複合体を形成する。

【0052】
本発明の複合体は、薬物、siRNAなどの生理活性物質を含ませることができる。

【0053】
siRNAは化学合成により製造することができるので、天然型のsiRNAの他に、細胞内での安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(標的RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を施したsiRNAを含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2'位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2'-O-Me)、CH2CH2OCH3(2'-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。

【0054】
siRNAとは、標的遺伝子のmRNAもしくは初期転写産物のヌクレオチド配列又はその部分配列(好ましくはコード領域内)(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相同なヌクレオチド配列とその相補鎖からなる二本鎖オリゴRNAである。siRNAに含まれる、標的ヌクレオチド配列と相同な部分の長さは、通常、約18塩基以上、例えば約20塩基前後(代表的には約21~23塩基長)の長さであるが、RNA干渉を引き起こすことが出来る限り、特に限定されない。また、siRNAの全長も、通常、約18塩基以上、例えば約20塩基前後(代表的には約21~23塩基長)の長さであるが、RNA干渉を引き起こすことが出来る限り、特に限定されない。

【0055】
標的ヌクレオチド配列と、siRNAに含まれるそれに相同な配列との関係については、100%一致していてもよいし、塩基の変異があってもよい(少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の同一性の範囲内であり得る)。

【0056】
siRNAは、5’又は3’末端に5塩基以下、好ましくは2塩基からなる、塩基対を形成しない、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いるとsiRNAの安定性を向上させることができる。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’等の配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。

【0057】
siRNAは任意の標的遺伝子に対するものであってよいが、本発明の核酸導入剤を疾患の予防・治療剤として用いる場合には、エキソソーム中に封入されるsiRNAは、その発現亢進が対象疾患の発症および/または増悪に関与する遺伝子を標的とするものであることが好ましく、より具体的には、その遺伝子に対するアンチセンス核酸が、臨床もしくは前臨床段階に進んでいる遺伝子や新たに知られた遺伝子を標的とするもの等が挙げられる。

【0058】
siRNAは、1種のみで使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0059】
本発明の複合体に含まれる薬物としては、特に限定されず、抗腫瘍剤が好ましく例示される。抗腫瘍剤としては、ホルモン療法剤(例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェンなど)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリンなど)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンなど)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミドなど)、5α-レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリドなど)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロンなど)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾールなど)などが挙げられ、なかでもLH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリンなど))、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、カルボコン、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン)、代謝拮抗剤(例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフールなど)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン)、抗癌性抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン)、植物由来抗癌剤(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビン、カンプトテシン、塩酸イリノテカン)、免疫療法剤(BRM)(例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール)、細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤(例えば、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標);抗HER2抗体)、ZD1839(イレッサ)、グリーベック(GLEEVEC)などの抗体医薬)が挙げられる。抗腫瘍剤の対象となる癌の種類としては、結腸・直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、胆道癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられ、好ましくは結腸・直腸癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌が挙げられる。

【0060】
これらの薬剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0061】
エキソソームを細胞親和性分子導入ナノゲルで被覆することで、エキソソームに強い細胞親和性を付与することができる。細胞親和性分子はその用途に応じて選択することができ、カチオン性分子を導入したナノゲルを用いた場合、細胞の種類によらず、細胞膜表面との静電的相互作用によるエキソソーム-細胞相互作用の促進を行うことができる。また、ペプチドやタンパク質フラグメント、抗体等をナノゲルに導入することで、目的細胞特異的に相互作用するエキソソームを調製することも可能である。例えば、先に述べた細胞接着シグナルとして知られているRGDペプチドを導入したRGD置換ナノゲルがある。A. Shimoda, S. Sawada, K. Akiyoshi, Cell specific peptide-conjugated polysaccharide nanogels for protein delivery, Macromol. Bioscience, 11, 882-888 (2011)。この手法では、基本的にエキソソームとナノゲルの混和操作により、エキソソームの由来に関わらずナノゲルの複合化および細胞との相互作用機能の付与を短時間で行うことができる。そのため、従来は、細胞の選択から遺伝子改変、エキソソームの機能解析まで、細胞への相互作用促進を確認するまでに数ヶ月の時間を要していた操作時間が飛躍的に短縮できるだけでなく、遺伝子改変そのものが必要無くなるケースも考えられる。

【0062】
本発明の複合体は、エキソソームと疎水化多糖ナノゲルを水中で混合することにより得ることができる。得られた複合体は、遠心分離などにより分離回収することができる。エキソソームと疎水化多糖ナノゲルは、エキソソームの表面の一部又は全部が疎水化多糖ナノゲルで被覆されるような割合で混合され、疎水化多糖ナノゲルがカチオン性である場合には、複合体の電荷がアニオン性/カチオン性となるように両者の比率を調整する。

【0063】
複合体が薬物またはsiRNA又は当該薬物またはsiRNAの前駆体を有する場合、薬物またはsiRNA又はその前駆体が導入されたエキソソームと疎水化多糖ナノゲルとを混合することで、本発明の複合体を形成することができる。薬物またはsiRNA又はその前駆体が導入されたエキソソーム(すなわち、薬物またはsiRNA又はその前駆体が封入されたエキソソーム。)は、例えば1つの態様においては、エキソソームを生産する細胞内に薬物またはsiRNA若しくはその前駆体を導入後、これらが封入されたエキソソームを生産させて得ることができる。薬物またはsiRNA又はその前駆体は、エキソソームを生産する細胞が、自らその細胞内に導入(例えば、合成、細胞外からの取込、など。)するものであってもよい。別の態様では、エキソソームに対し、エレクトロポレ-ションなどの適当な方法で薬物またはsiRNA又はその前駆体を導入して、エキソソームを得ることもできる。或いは、複合体を形成した後で薬物またはsiRNA又はその前駆体を導入することもできる。

【0064】
本発明の複合体は、物質を細胞へ導入するための担体として好適に使用することができる。本発明の複合体が、薬物、siRNAなどの生理活性物質を含む場合は、本発明の複合体は、薬物、siRNAなどの導入剤として好適に使用することができる。

【0065】
薬物、siRNAなどが導入される対象は、細胞であっても生体であってもよい。対象となる細胞としては、ヒト由来若しくはマウスなどの非ヒト動物由来の細胞、特に培養細胞が挙げられる。対象となる生体としては、ヒト;サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの哺乳類、ニワトリなど鳥類、魚類等の非ヒト動物が挙げられる。

【0066】
薬物、siRNAなどが導入される対象が細胞である場合、本発明の複合体を培地中に適量含ませることで、物質を細胞へ導入するための担体としてまたは導入剤として用いることができる。

【0067】
薬物、siRNAなどが導入される対象がヒトなどの生体である場合、本発明の導入剤は、注射剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの剤形で用いることが好ましい。この場合、本発明の導入剤は、医薬組成物として好適に提供され、通常用いられる適切な担体を用いて各種剤形の導入剤を得ることができる。本発明の導入剤の成人1日あたりの投与量は、導入される薬物、siRNAなどに応じて適宜設定することができるが、1日あたり約0.1 mg~1 g程度、好ましくは約0.5 mg ~500 mg程度の範囲から選択することができる。

【0068】
本発明はまた、本発明の複合体を用いた薬物、siRNAなどの生理活性物質を細胞へ導入するをも提供する。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例】
【0070】
実施例1
<実験方法>
1)カチオン性ナノゲル溶液の調製
本実験では直鎖状水溶性多糖であるプルランに、コレステロールを100単糖当り1.2個、アミノ基を100単糖当り15個導入したカチオン性疎水化プルラン(CHP-NH2)をPBSに溶解させプローブ型超音波照射器により処理し、CHP-NH2ナノゲル溶液を調製して用いた。なお、上記方法Aにより疎水化プルランを製造し、上記方法Bにより疎水化プルランにアミノ基の導入をしてカチオン性疎水化プルラン(CHP-NH2)を得た。
【実施例】
【0071】
2)細胞培養上清からのエキソソーム精製
K562細胞(ヒト白血病細胞株)を1.0~2.0×106個/mLの濃度でエキソソーム不含有培地(ウシ胎児血清(FBS)由来のエキソソームを取り除いた培地)に懸濁し、15時間培養した後、細胞懸濁液を回収し、1000 rpmで10分遠心後、上清を回収しさらに12000g, 4℃で30分間遠心した。この上清を回収し100000g, 4℃で2時間遠心した。上清を捨て、5 mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を入れ、100000g, 4℃で2時間遠心した。遠心後、上清を捨てPBSで沈殿を再懸濁しK562由来エキソソーム懸濁液を得た。
【実施例】
【0072】
RAW264.7細胞(マウスマクロファージ細胞株)を1×106個/mlの濃度でエキソソーム不含有培地2 Lに懸濁し、18~24時間培養した後、細胞懸濁液を回収し、400 g, 4℃で10分遠心後、上清を回収しさらに10000 g、4℃で15分間遠心した。この上清を孔径0.45μm及び孔径0.22μmのフィルターで濾過後、限外濾過膜を用いて180 mlまで濃縮した。この濃縮上清を孔径0.8 μmのフィルターに通した後、100000 g、4℃で2時間遠心した。上清をアスピレーターで吸引除去後、エキソソームを含む沈査をPBSで洗浄し、100000 g、4℃で2時間遠心した。遠心後、上清をアスピレーターで吸引除去後、沈査を200 μlのPBSに再懸濁しRAW264.7由来エキソソーム懸濁液を得た。エキソソーム懸濁液は使用するまで4℃で保存した。
【実施例】
【0073】
エキソソームのタンパク質濃度はサーモ・サイエンティフィック社製のMicro BCATMProtein Assay Kitを用いて定量した。
【実施例】
【0074】
3)フローサイトメトリー(FCM)解析のためのラテックスビーズとエキソソームの結合反応
直径4μmのアルデヒド/硫酸ラテックスビーズ(インビトロジェン社)を良く混和した後、ビーズ1.4 mg分を採取し、3000g、4℃、20分間の遠心分離後に上清を除去した。沈殿したビーズを2-(N-Morpholino) ethanesulfonic acid (MES)緩衝液に懸濁した。この遠心分離と懸濁の操作を3回繰り返してビーズを洗浄した後、MES緩衝液で20 mg/mlの濃度に調製した。ビーズ懸濁液をボルテックスと超音波処理で良く混和した後、ビーズ 0.2 mg分の懸濁液を採取して、タンパク質量で30 μgのRAW264.7由来エキソソーム懸濁液を徐々に添加した。撹拌しながら室温で15分間反応させた。全量で1 mlになるようにMES緩衝液を加えたのち、撹拌しながら室温で2時間反応させた。400 mMのグリシン溶液300 μlを添加して反応を停止し、さらに30分間撹拌した。3000g、4℃で20分間遠心分離してビーズを沈殿させて上清を除去した。2%FCS(エキソソーム不含)を加えたPBSにビーズを懸濁した。遠心分離と懸濁の操作を3回繰り返してビーズを洗浄した後、エキソームに発現する膜タンパク質に対する抗体で染色を行い、FCM解析した。
【実施例】
【0075】
4)エキソソームとカチオン性ナノゲルとの複合体調製
タンパク質濃度100 μg/mLのエキソソーム懸濁液30 μLを、CHP-NH2ナノゲル溶液(0~1.0mg/mL) 30 μLと混合し、4℃で30分間静置して複合化し、動的光散乱計(DLS)により粒径測定を行った。
【実施例】
【0076】
5)カチオン性ナノゲル/エキソソーム複合体の細胞内導入評価
50000 個/mLのHeLa細胞(ヒト子宮頸癌細胞株)およびRAW264.7細胞(マウスマクロファージ様細胞株)懸濁液1 mLをガラス底ディッシュに播種し、24時間の前培養を行った。タンパク質濃度300 μg/mLのK562由来エキソソーム懸濁液100 μLに2 mg/mL の蛍光色素(CFSE(carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester))溶液を2 μL添加し、37℃で4時間静置した。PD SpinTrap G-25に通しPBS にバッファー置換し、回収したCFSE標識エキソソーム溶液50 μLをカチオン性ナノゲル(CHP-NH2)溶液(1 mg/mL)50 μLと混合し、4℃で30分間複合化させた。複合化液100 μLを細胞に添加し、3時間後、細胞内エンドソーム染色試薬(LysoTracker(登録商標) Red DND-99)を細胞に1 μL添加し、さらに1時間後、培地で細胞を2回洗い、共焦点レーザー顕微鏡で観察を行った。図8に、実験手法を模式的に示す。
【実施例】
【0077】
PBS 100μl中にタンパク質量で10μgのエキソソームとAlexa Fluor 488(AF488)標識siRNAキアゲン社製、AllStars Negative Control siRNA (Alexa Fluor 488修飾)、型番:1027292)を加えた。2-mm gapキュベットに添加してNEPA21(ネッパジーン社製)でエレクトロポレーションすることで、RAW264.7由来エキソソームにsiRNAを導入した。エレクトロポレーションの条件はporing pulse:電圧100 V, パルス幅 1 ms, パルス間隔 50 ms, 2回, 減衰率 10%, 極性)、transfer pulse:電圧20 V, パルス幅 50 ms, パルス間隔 50 ms, 5回, 減衰率 40%, 極性+/-にて行った。siRNA導入エキソソームは100000g、4℃、2時間の遠心分離を行い沈降後、PBSに懸濁した。遠心分離から懸濁の操作を計2回繰り返すことでエキソームを洗浄し、100 μlのPBSに懸濁した。これに同容量のCHP-NH2ナノゲル溶液 (50 μg/ml)を加え、4℃で30分間複合化させた。その後、複合化液100μlを150μlの細胞液(1×104個のCT26マウス大腸癌細胞株、CMS5マウス繊維肉腫細胞株、4T1マウス乳癌細胞株、K562ヒト白血病細胞株、または2×104個のRAW264.7マウスマクロファージ様細胞株を含む)に添加し、4時間後のAF488標識siRNAの細胞内への取り込みをFCM解析により検討した。
【実施例】
【0078】
<結果および考察>
種々の濃度(図1中「CHP-NH2 final concentration」、0~1.0mg/mL)のCHP-NH2ナノゲル(粒径38nm)とK562由来エキソソーム(粒径145nm)を混合し、得られたCHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体の粒径をDLSにより測定した結果、CHP-NH2ナノゲル濃度が0.05mg/mL以上で粒径が180nm前後のCHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体を形成することが確認された(図1)。
【実施例】
【0079】
前述の結果をもとに調製したCHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体をHeLa細胞培養系に添加し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、CFSE標識エキソソームのみの条件では、細胞内に取り込まれたエキソソームはほとんど確認されなかった(図2(a),CFSE)。一方、CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体を添加した条件では、ほぼ全ての細胞内にCFSE標識エキソソームに由来する緑色蛍光が観察された(図2(b),CFSE)。また、細胞内局在を検討したところ、黄色蛍光を示すエンドソーム内に存在するエキソソームが確認されたが、取り込まれたエキソソームの多くは細胞質部分に存在していることが確認され、エンドサイトーシスにより取り込まれたエキソソームがエンドソームから細胞質へと移行することが示された。これらの結果より、CHP-NH2ナノゲルとの複合化によりエキソソームの細胞内取り込みが促進されることが明らかとなった。次に、細胞種の異なるRAW264.7細胞においてエキソソームの取り込みを検討したところ、エキソソーム単体でも細胞に取り込まれている様子が観察され、CHP-NH2ナノゲルとの複合化による差は確認されなかった。これは、RAW264.7細胞がマクロファージ様細胞であり、貪食作用が強く細胞外物質を取り込みやすいためであると考えられる(図3(a),エキソソームのみ;(b)CHP-NH2ナノゲル/CFSE標識エキソソーム複合体)。
【実施例】
【0080】
AF488標識siRNAを含むCHP-NH2ナノゲル/エキソソーム複合体をCT26細胞、CMS5細胞、4T1細胞または K562細胞に添加し、各細胞への4時間後のsiRNAの取り込みをFCM解析により検討した。これら全ての細胞において、CHP-NH2ナノゲル/エキソソームを用いて添加したsiRNAは、エキソソーム単体を用いて添加したsiRNAに比べて、遥かに高率に細胞に取り込まれた(図4)。一方、RAW264.7細胞では、CHP-NH2ナノゲル/エキソソームを用いて添加したsiRNAと、エキソソーム単体を用いて添加したsiRNAとで細胞への取込みに違いは見られなかった(図5)。これは、RAW264.7細胞がマクロファージ様細胞であり、貪食作用が強く細胞外物質を取り込みやすいためであると考えられた。以上の結果から、多くの細胞種、特に貪食作用が低い細胞において、CHP-NH2ナノゲルと複合体化したエキソソームはsiRNAを効率的に細胞に送達することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の複合体は、薬物、核酸などの生理活性物質を細胞内に導入することができるので、ドラッグデリバリ-システム(DDS)として利用可能である。また、標識物質を複合体に導入することで、バイオイメ-ジングに応用することができる。さらに、抗原を複合体に導入することで、ワクチンとして利用することもできる。
図面
【図1】
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【図2A】
1
【図2B】
2
【図3A】
3
【図3B】
4
【図4A】
5
【図4B】
6
【図5】
7
【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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