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明細書 :CO選択メタン化触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5942233号 (P5942233)
登録日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発行日 平成28年6月29日(2016.6.29)
発明の名称または考案の名称 CO選択メタン化触媒
国際特許分類 B01J  23/847       (2006.01)
B01J  33/00        (2006.01)
B01J  35/04        (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  23/755       (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   8/0612      (2016.01)
FI B01J 23/847 Z
B01J 33/00 C
B01J 35/04 301Z
B01J 35/08 B
B01J 35/10 301G
B01J 37/02 301C
B01J 37/04 102
B01J 37/08
B01J 23/755 Z
H01M 8/10
H01M 8/06 G
請求項の数または発明の数 15
全頁数 19
出願番号 特願2014-534307 (P2014-534307)
出願日 平成25年8月26日(2013.8.26)
国際出願番号 PCT/JP2013/072762
国際公開番号 WO2014/038426
国際公開日 平成26年3月13日(2014.3.13)
優先権出願番号 2012194476
優先日 平成24年9月4日(2012.9.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年2月26日(2015.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】宮尾 敏広
【氏名】東山 和寿
【氏名】沈 衛華
【氏名】山下 壽生
【氏名】橋本 登
【氏名】出来 成人
【氏名】渡辺 政廣
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】佐藤 哲
参考文献・文献 特開2005-238131(JP,A)
特開昭57-015834(JP,A)
国際公開第2011/142481(WO,A1)
国際公開第2010/122855(WO,A1)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
H01M 8/0612
H01M 8/10
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆い、多数の細孔を有し、且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層とを備え
前記被覆層は、メソポーラスシリカである、
CO選択メタン化触媒。
【請求項2】
CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆い、多数の細孔を有し、且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層とを備え、
前記被覆層には、COのメタン化能を有する被覆層金属が担持されており、これによって前記担持金属触媒に近づくにつれてCO濃度が低減され、
前記被覆層金属は、Cu、Mg、及びFeから選択される少なくとも1種の修飾金属を含み、
前記修飾金属/Niの原子比は、0.01~1である、
CO選択メタン化触媒。
【請求項3】
CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆い、多数の細孔を有し、且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層とを備え、
前記細孔は、前記担持金属触媒の表面に対して垂直方向に配向されている、
CO選択メタン化触媒。
【請求項4】
前記細孔は、前記細孔の内部でのCOの拡散速度が、前記担持金属触媒の表面でのCOのメタン化速度よりも遅く、これによって前記担持金属触媒に近づくにつれてCO濃度が低減されるサイズである請求項1~請求項3の何れか1つに記載の触媒。
【請求項5】
前記被覆層には、COのメタン化能を有する被覆層金属が担持されており、これによって前記担持金属触媒に近づくにつれてCO濃度が低減される請求項1~請求項4の何れか1つに記載の触媒。
【請求項6】
前記被覆層金属は、Niを含む、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
前記被覆層金属は、Cu、Mg、及びFeから選択される少なくとも1種の修飾金属をさらに含む請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記修飾金属は、Feを含む請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記修飾金属/Niの原子比は、0.01~1である、請求項7又は請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
前記細孔は、前記担持金属触媒の表面に対して垂直方向に配向されている請求項1~請求項9の何れか1つに記載の触媒。
【請求項11】
前記被覆層は、厚さが5~200nmであり、前記細孔の直径は、0.5~100nmである請求項1~請求項10の何れか1つに記載の触媒。
【請求項12】
前記被覆層は、メソポーラスシリカである請求項1~請求項11の何れか1つに記載の触媒。
【請求項13】
前記メソポーラスシリカは、Ti、La、及びZrから選択される少なくとも1種の添加金属を含有し、前記添加金属/Siの原子比は、0.001~3である請求項12に記載の触媒。
【請求項14】
前記担持金属触媒の担体は、V酸化物を含んだAl酸化物であり、前記担持金属触媒の活性金属は、Ni、又はNiとVの合金又は混合物である請求項1~請求項13の何れか1つに記載の触媒。
【請求項15】
前記担持金属触媒がハニカム基材上にコーティングされて触媒層が形成され、前記被覆層は、この触媒層を被覆する請求項1~請求項14の何れか1つに記載の触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用固体高分子形燃料電池用燃料改質器のCO除去工程や、反応物の蓄積によって活性低下を伴う触媒反応プロセスに広く適用可能であるCO選択メタン化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は80℃程度の低温で運転するため、燃料である水素リッチガス中に一酸化炭素が、あるレベル以上含まれていると、アノード白金触媒のCO被毒により、発電性能が低下したり遂には全く発電ができなくなったりするという問題が生じる。
【0003】
このCO被毒を回避するため、都市ガス、LPガス又は灯油などを燃料改質器で水素リッチガスに転換して使用する家庭用固体高分子形燃料電池発電システムでは、燃料電池アノード入口ガスのCO濃度を常に10ppm以下に抑えることが望まれる。実システムの多くは、燃料改質プロセスの最終段階で生成ガスに空気を混合しガス中に含まれるCOをCOに酸化するCO選択酸化触媒を採用している。
CO + 1/2 O = CO (反応式1)
【0004】
この触媒では反応式1に示すように外部から常に空気を取り込む必要があるため、空気ブロアやその制御システム、更には供給した空気を反応ガスと均一に混合するための複雑なガス混合構造体を燃料改質器に設置する必要がある。
【0005】
最近、このCO選択酸化触媒に変わる新たな方法として、CO選択メタン化触媒が注目されている(例えば特許文献1~2)。
【0006】
特許文献1には、噴霧プラズマ法により作製した非化学量論組成のNi-Al複合酸化物前駆体にルテニウム塩を含浸担持し、還元処理を行うことで、従来触媒ではCOメタン化反応よりCOメタン化反応と逆水性シフト反応が支配的に進行する高温度領域においても選択的にCOメタン化反応を起こさせることができるCO選択メタン化触媒が開示されている。
【0007】
特許文献2には、一酸化炭素をメタン化する触媒の活性成分に、二酸化炭素の反応抑制剤であるハロゲン、無機酸、金属酸素酸から選ばれた少なくとも1種が吸着又は結合させることによって、COメタン化反応の選択性に優れたCO選択メタン化触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】WO2010/122855号
【特許文献2】WO2011/142481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~2に開示された触媒は、COメタン化反応の選択性に優れたものであるが、このような触媒の実用化に向けてさらに研究を進めたところ、これらの文献の触媒を用いた場合、特に反応ガスの空塔速度が大きい場合に、触媒が劣化(触媒活性が低下)しやすいことが分かった。また、CO選択酸化触媒を用いた場合の出口ガスのCO濃度(以下、「出口CO濃度」)は10ppm以下にすることが容易であったが、CO選択メタン化触媒を用いた場合には、非常に狭い温度範囲においてのみ、出口CO濃度を10ppm以下にすることができたので、このままでは実用化が容易でないという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、第1の課題は、CO選択メタン化触媒を長寿命化させることであり、第2の課題は、CO選択メタン化触媒のCO除去率を高めて、広い温度範囲において出口CO濃度を低い値にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆い、多数の細孔を有し、且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層とを備えるCO選択メタン化触媒が提供される。
【0012】
本発明者らは、CO選択メタン化触媒の劣化の原因を特定するために、劣化後の触媒の分析を行ったところ、反応時間の経過と共に触媒表面に堆積する炭素量が増大し、それによって反応表面積が減少することが原因であることが分かった。そして、このような炭素種の堆積の原因について調べるために、触媒の劣化速度のCO濃度依存性を調べたところ、CO濃度の増大と共に劣化速度が早まることと、CO濃度がある閾値以下である場合には触媒の劣化速度が極めて遅くなることを見出した。そして、この知見に基づき、多数の細孔を有し且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層で、担持金属触媒の表面を被覆したところ、触媒寿命が劇的に向上することを見出し、本発明の完成に到った。
【0013】
また、本発明の第2の観点によれば、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒を水と混合する混合工程と、水と混合した後の固形分を焼成する工程を備えるCO選択メタン化触媒の製造方法が提供される。
【0014】
本発明者らは、担持金属触媒上に被覆層を形成すると、拡散抵抗によって、寿命が延びたとしても触媒活性は低下して出口CO濃度は高くなってしまうであろうと予測していた。しかし、担持金属触媒上に被覆層を形成した触媒を用いた場合の出口CO濃度を測定したところ、被覆層の形成前の1/10以下という劇的に低い値が得られた。このような驚くべき結果が得られた要因について鋭意検討を行ったところ、被覆層形成自体は高活性化に必須ではなく、被覆層形成工程において、担持金属触媒を水と混合し、混合後の固形分を焼成する工程が、この高活性化に必須であることが分かり、本発明の完成に到った。このような工程によって、活性が劇的に向上する理由ははっきりとは分かっていないが、本発明者らは、(1)金属表面の組成の変化、(2)金属表面の改質(ラフネス等の変化)、(3)金属表面の露出結晶面の変化、(4)添加物(バナジウムなど)とNiの混合具合の変化のうちの1つ以上が高活性化のメカニズムであると推測している。但し、別の要因によって触媒が高活性化されている可能性は否定できず、本発明の範囲はここに記載したメカニズムには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)~(D)は、担持金属触媒上形成された被覆層内にCOの濃度勾配が形成されるメカニズムの説明図である。
【図2】水素製造システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【図3】(A)~(B)は、ハニカム基材の例を示す斜視図であり、(C)は、ハニカム基材の1つのセルの平面図である。
【図4】製造例1~5の触媒の初期特性評価結果を示すグラフである。
【図5】(A)、(B)は、それぞれ、製造例2及び製造例1の触媒の長期試験結果を示すグラフである。
【図6】製造例3の触媒の長期試験結果を示すグラフである。
【図7】製造例5の触媒の長期試験結果を示すグラフである。
【図8】(A)は、製造例2の触媒の元素分布の分析結果を示すグラフであり、(B)は分析を行った位置のTEM写真である。
【図9】CO濃度依存性を示すグラフである。
【図10】被覆層にCu又はMgOを添加した場合の長期試験の結果を示すグラフである。
【図11】Ti-MCM触媒の長期試験の結果を示すグラフである。
【図12】(a)~(c)は、Ti-MCM触媒の顕微鏡写真を示し、(a)は還元前、(b)は還元後、(c)は長期試験後の状態を示す。(d)は、還元前、還元後、及び長期試験後のTi-MCM触媒のXRDパターンを示す。
【図13】水蒸気処理前後のTi-MCM層(Ti/Siの原子比=0.1)についての、吸着等温線を示すグラフである。
【図14】水蒸気処理前後のTi-MCM層(Ti/Siの原子比=1)についての、吸着等温線を示すグラフである。
【図15】水蒸気処理前後のTi-MCM層(Ti/Siの原子比=0.1)についての顕微鏡写真を示す。
【図16】水蒸気処理前後のTi-MCM層(Ti/Siの原子比=1)についての顕微鏡写真を示す。
【図17】水蒸気処理前後のLa-MCM層(La/Siの原子比=0.05)についての顕微鏡写真を示す。
【図18】水蒸気処理前後のZr-MCM層(Zr/Siの原子比=0.05)についての顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。

【0017】
1.システム全体の構成
図2は、原燃料(都市ガス等)から燃料電池(たとえば固体高分子形燃料電池(PEFCスタック))に供給する高い濃度の水素ガスを製造、精製するフロー及びシステム全体の概略構成を示すものである。破線で囲まれた部分が燃料改質装置(燃料処理装置)14に相当し、この中を、原燃料供給系4から供給される原燃料が流れ、各触媒層を通過する過程で改質とCOの除去を行い(10ppm以下)高い濃度の水素ガス(改質ガス:H約75%、CO約20%)を得る。

【0018】
原燃料はまず脱硫器5で硫黄成分を除去した後,改質触媒層を含む改質器7において改質反応により水素(H)と一酸化炭素(CO)を生成し(水蒸気発生器6からの水蒸気を用いた水蒸気改質)、さらにCO変成触媒層を含むCO変成器8でCOを除去する。

【0019】
COを0.5~1.0%程度含むガス(H、COなど)は本発明によるCO選択メタン化触媒を用いたCOの選択メタン化触媒層を含むCO選択メタン化反応器11内に流入して、この触媒層を通過する過程でCO濃度が10ppm以下の高濃度Hガス(改質ガス)となり、PEFCスタック13に供給される。

【0020】
CO選択メタン化触媒は、好ましくは粒状触媒として使用される。また、CO選択メタン化触媒は、ハニカム基材上にコーティングして使用してもよい。ハニカム基材の一例が図3(A)、図3(B)に示されている。図3(A)はコージェライト製のハニカム基材の例であり、図3(B)はメタル製のハニカム基材の例である。いずれにしても、筒体(円筒、角筒等)内部に、その長手方向に沿って配置された多数の縦、横、斜め、波形等の仕切り板(隔壁)が交叉して設けられ、隣接する仕切り板間がガスの通路となっている。これらの仕切り板の表面全体にCO選択メタン化触媒がコーティングされる。断面が六角形のみならず、四角形、正弦波形、その他の形状のガス通路(流路)(セル)を有するハニカム構造のものを、この明細書では、単にハニカムまたはハニカム基材と呼ぶ。

【0021】
また、CO選択メタン化触媒をハニカム基材上にコーティングする方法としては、粉末に被覆層を形成したものをハニカム基材上にコーティングする方法や、図3(C)に示すように、触媒粉末をハニカム基材1上にコーティングして触媒層3を形成し、その後に、被覆層5を形成する方法が挙げられる。

【0022】
2.CO選択メタン化触媒の構成
本発明の一実施形態のCO選択メタン化触媒は、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆い、多数の細孔を有し、且つ前記担持金属触媒の表面でのCO濃度を低減するように構成された被覆層とを備える。

【0023】
この触媒は、特許文献1~2に記載されているような、CO選択メタン化能を有する担持金属触媒上に、CO濃度を低減する機能を有する被覆層を形成したことを特徴としている。上記の通り、CO選択メタン化反応器11に流入する反応ガス中には、通常、COが0.5~1.0%程度含まれており、担持金属触媒がこのような濃度のCOに長時間さらされると、担持金属触媒上に徐々に炭素種が堆積し、その活性が徐々に低下するが、本実施形態によれば、担持金属触媒上に被覆層が形成され、それによって、担持金属触媒上でのCO濃度が反応ガス中のCO濃度に比べて低減されるので、担持金属触媒の劣化が抑制される。本発明者らの実験によれば、CO濃度が高いほど担持金属触媒の劣化の速度が大きく、CO濃度が0.2%以下の場合には担持金属触媒の劣化が極めて遅くなることが分かったので、担持金属触媒上に被覆層を形成することによって担持金属触媒表面でのCO濃度を0.2%以下にすることが好ましい。

【0024】
ここで、図1を用いて、被覆層によって、担持金属触媒の表面でのCO濃度が低減されるメカニズムについて説明する。なお本発明者らは、このCO濃度低減は、図1の(B)~(D)に示すメカニズムの何れか1つ又は2つ以上の組合せによって達成されると推測しているが、本発明はこれらのメカニズムに限定されず、別のメカニズムでCO濃度が低減される場合も本発明の範囲に含まれる。

【0025】
図1(A)は、担持金属触媒上に被覆層が形成されていない場合である。高濃度COを含んだ反応ガスに担持金属触媒表面が直接接触するために、反応ガス中のCO濃度が高くなるに従って触媒の劣化が加速される。図1(B)は、被覆層が例えば0.5~2nm程度の非常に小さい細孔(以下、「ミクロ孔」)を有する場合である。ミクロ孔内ではCOの拡散速度が非常に小さく、担持金属触媒表面でのメタン化によるCOの消費速度よりも、担持金属触媒表面へのCOの供給速度が小さいので、担持金属触媒表面に近づくにつれてCO濃度が低くなって、被覆層内にCOの濃度勾配が形成される。
ミクロ孔内の分子の拡散係数は、以下の式で表される。
Dk=(1/3)vd
ここで、Dkはクヌーセン拡散係数、vは分子の運動速度、dはミクロ孔径であり、拡散係数はミクロ孔径に比例することから、ミクロ孔径が十分に小さければCO吸着速度よりもCO拡散速度を小さくすることができる。ミクロ孔径が小さいほど、被覆層厚が厚いほど、担持金属触媒表面でのCO濃度が低くなるので、ミクロ孔径及び被覆層厚は、担持金属触媒表面でのCO濃度が所望の値になるように、適宜設定される。

【0026】
図1(C)は、被覆層が例えば2~50nm程度の小さい細孔(以下、「メソ孔」)を有する場合である。メソ孔内でのCO拡散速度は、通常、担持金属触媒表面でのメタン化によるCOの消費速度よりも大きく、そのため、メタン化によるCOの消費のみでは被覆層内にCOの濃度勾配が形成されにくい。そこで、図1(C)では、メソ孔の壁面にCOのメタン化能を有する被覆層金属を担持し、メソ孔内でCOをメタン化することによって、担持金属触媒表面に近づくにつれてCO濃度が低くなるCOの濃度勾配を被覆層内に形成させている。メソ孔内に担持する被覆層金属は、担持金属触媒の活性金属と同一であっても異なっていてもよい。メソ孔内の被覆層金属と担持金属触媒の活性金属を同一にすることのメリットとしては、担持金属触媒に担持されている活性金属を錯体として一旦溶解させた後にメソ孔内で析出させることによって、メソ孔内に被覆層金属を担持させることができるので、製造工程をシンプルにすることができる。一方、メソ孔内の被覆層金属と担持金属触媒の活性金属を異ならせる場合、例えば、担持金属触媒の活性金属にはCO選択率が高いものを選択し、メソ孔内の被覆層金属には高濃度COに対する被毒耐性が高いものを選択することができる。一般にCO選択率はCO濃度が低下するに従って低下するので、CO濃度が低い担持金属触媒表面ではCO選択率が高いことが重要であるのに対し、CO濃度が比較的高い被覆層(特に被覆層表面に近い場所)では、CO選択率よりも被毒耐性が重要になるからである。メソ孔のサイズ、メソ孔内の被覆層金属の種類及び担持量、被覆層厚などは、担持金属触媒表面でのCO濃度が所望の値になるように、適宜設定される。

【0027】
被覆層金属としては、Niを含むものが挙げられ、Niと、Cu、Mg、及びFeから選択される少なくとも1種の修飾金属を含むものが好ましい。このような修飾金属を含む場合、被覆層金属の触媒活性が劣化しにくくなるからである。また、修飾金属は、Feが特に好ましい。被覆層金属としてNiとFeを含むものを用いた場合、被覆層金属の触媒活性の劣化が極めて遅くなるからである。修飾金属/Niの原子比は、例えば0.01~1であり、0.05~0.5が好ましい。この原子比は、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0028】
ここでは、説明の便宜上、細孔の大きさに従ってミクロ孔とメソ孔の区分を行なっているが、両者の境界は種々の条件に従って変化し、また、ミクロ孔域とメソ孔域が共存する場合もあると考えられる。つまり、拡散抵抗による濃度勾配とメソ孔内の被覆層金属によるメタン化による濃度勾配が組み合わさって、担持金属触媒表面でのCO濃度の低減されている場合もあると考えられる。また、メソ孔域であっても反応温度が高い条件下では、反応速度>拡散速度と成り得るので、被覆層がメソ孔を有する場合であっても、被覆層が拡散抵抗として働く場合がある。

【0029】
図1(D)は、被覆層が例えば50nm程度以上の細孔(以下、「マクロ孔」)を有する場合である。この場合にCO濃度勾配が形成されるメカニズムは基本的にメソ孔の場合と同様であるが、マクロ孔の場合は、図1(D)に示すように、マクロ孔内に担体粒子を担持させ、その担体粒子上に被覆層金属を担持させている。

【0030】
また、図1では、説明の便宜上、単純な形状の細孔を示したが、細孔は、CO濃度勾配が形成されるものであれば、その構成は限定されず、例えば、ゼオライトに代表される結晶格子が有するミクロ孔、活性炭等が有するミクロ孔、またはメソポーラスシリカMCM-41、SBA-15に代表される直線型の細孔、またはKIT-6に代表される三次元細孔、またはランダムな細孔、球体を最密充填した際に生じる規則的な間隙、粒子間や粒子中のランダムな間隙でもよい。また、細孔の配向としては、メソポーラスシリカのように、担持金属触媒表面に対して垂直に配向されていることが好ましい。この場合、細孔サイズと長さを均一に制御できるという利点があるからである。

【0031】
被覆層の組成は、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、およびこれらの複合酸化物およびカーボンから構成される被覆層が想定されるが、細孔構造を形成できる酸化物で基本的に適用可能である。但し、細孔内部に被覆層金属を担持する場合、被覆層は強い塩基性を有さないものが好ましい。これは、塩基性酸化物を用いた場合、酸性分子のCOの吸着が促進され副反応の逆水性ガスシフトおよびCOメタン化が起こるからである。

【0032】
被覆層がメソポーラスシリカからなる場合、メソポーラスシリカは、シリカに対して質量比で0.1~50%のTi(TiO換算)を含有することが好ましい。メソポーラスシリカがTiを含有する場合、触媒寿命が向上することが実験的に確認されたからである。触媒寿命向上のメカニズムは明らかになっていないが、Tiがメソポーラスシリカの細孔構造を安定化させていると推測している。

【0033】
また、メソポーラスシリカは、Ti、La、及びZrから選択される少なくとも1種の添加金属を含有することが好ましい。このような添加金属を含有することによって水蒸気耐性が向上するからである。また、添加金属/Siの原子比は、例えば、0.001~3であり、0.01~3がさらに好ましい。この場合、水蒸気耐性が特に高くなるからである。この原子比は、具体的には例えば、0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2,2.5、3であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、Tiについては、Ti/Siの原子比を高めることによって水蒸気耐性が向上することが確認されており、Ti/Siは、0.5~3が好ましい。

【0034】
被覆層の厚さ及び細孔の直径は、上述したように、担持金属触媒表面での所望のCO濃度に従って適宜選択される。被覆層の厚さは、例えば5~100nmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。細孔の直径は、例えば0.5~100nmであり、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0035】
担持金属触媒の担体と活性金属の種類は、特に限定されず、特許文献1~2に記載されているようなCOメタン化能を有するものであればよい。具体的には、例えば活性金属としては、Ni、Ru、Fe、Co、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Reおよびこれらの複合物が利用可能であり、担体としては、Al、V、Ti、Zr、Si、Mg、Ceの少なくとも一つ以上からなる酸化物、窒化物、炭化物が利用可能である。具体例としてはゼオライトやシリカアルミナなどが挙げられる。このような担持金属触媒は、COのメタン化反応を選択的に抑制するメタン化反応抑制剤を含んでいることが好ましい。メタン化反応抑制剤としては、前記活性金属の表面電荷をδ+側にする材料、又はCOメタン化活性を抑制する効果のある種々の材料が適用できるが、特に、F、Cl、Br、I等のハロゲン、HCl、HNO、HSO、HPO等の無機酸、ホウ酸、バナジウム酸、タングステン酸、クロム酸などの金属酸素酸のいずれか又は二つ以上を含むことが望ましい。触媒上での存在形態としては、その作製工程に依存するため、前記化合物に限定されるものではなく、その前駆体、反応物、分解生成物でも良い。一具体例では、活性金属は、Ni、又はNiとVの合金又は混合物であり、担体は、V酸化物を含んだAl酸化物(つまり、Al酸化物のマトリックス中にV酸化物が担持または分散・混合されたような状態)である。このような構成の担持金属触媒は、長期間に渡ってCOを選択的にメタン化可能であることが特許文献1に記載の実験などから明らかになったからである。

【0036】
また、メソポーラスシリカを担体として用いることもできる。特に、メソポーラスシリカからなる担体上に、NiとFeを含有する触媒を担持した場合には、被覆層を設けなくても触媒活性の劣化が極めて遅くなるという利点がある。Fe/Niの原子比は、例えば0.01~1であり、0.05~0.5が好ましい。この原子比は、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。メソポーラスシリカの具体的な構成は上述した通りである。

【0037】
また、メソポーラスシリカからなる担体に上述した活性金属を担持させて担持金属触媒とし、その上にメソポーラスシリカを被覆層として形成し、この被覆層に被覆層金属を担持させてもよい。

【0038】
3.CO選択メタン化触媒の製造方法
本発明者らは担持金属触媒上に被覆層を形成した場合の寿命と活性を評価したところ、被覆層を設けた場合、活性が飛躍的に高まるという現象が発見された。この活性向上のメカニズムとして、被覆層(メソポーラスシリカ)形成時に担持金属触媒を水と混合する工程に着目し、水処理によって、(1)金属表面の組成の変化、(2)金属表面の改質(ラフネス等の変化)、(3)金属表面の露出結晶面の変化、(4)添加物(バナジウムなど)とNiの混合具合の変化のうちの1つ以上が起こり、その結果、活性が高まったという仮説を立てた。そして、この仮説の妥当性を検証すべく、メソポーラスシリカの作成に必要な原料を混合液中に投入せずに、単に担持金属触媒を水と混合し、それを焼成するという工程を行い、この工程によって得られた触媒の活性を評価したところ、被覆層を形成したものとほぼ同様の初期活性を有することが分かり、活性向上は、被覆層によるものではなく、水処理によるものが大きいことを明らかにした。

【0039】
即ち、本発明の一実施形態のCO選択メタン化触媒の製造方法は、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒を水と混合する混合工程と、水と混合した後の固形分を300~800℃で焼成する工程を備える。

【0040】
混合工程で混合する水は、純水であってもよく、水溶液(例:アンモニア水)や懸濁液中の水であってもよい。アンモニア水を混合する場合、アンモニア水の混合は、比較的高濃度のアンモニア水を水と共に担持金属触媒と混合してもよく、予め希釈して低濃度のアンモニア水を担持金属触媒と混合してもよい。また、水の混合は、担持金属触媒の懸濁液を形成するように行うことが好ましいが、担持金属触媒の粉末を水で湿らす程度であってもよい。混合工程で得られる混合液中のアンモニア濃度は、特に限定されないが、0.05~10質量%であり、好ましくは、0.1~1質量%であり、具体的には例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アンモニア水の濃度が低すぎると、アンミン錯体が形成されにくく、高すぎるとNi成分の過剰な溶解および溶出が生じてNi担持量が減じるからである。

【0041】
焼成温度は、300~800℃であり、好ましくは450~650℃であり、具体的には例えば、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0042】
混合工程で得られる混合液から固形分を得る方法は、特に限定されず、ろ過や遠心分離などの固液分離法によって行えばよい。また、固液分離法によって得られた固形分に対して乾燥工程を行なってもよい。また、混合液を濾過分離せずそのまま乾燥、焼成しても良い。

【0043】
このような方法によって、担持金属触媒の活性金属の金属分散度が向上し、担持金属触媒の表面上において一様に分散されているCO選択メタン化触媒が得られる。

【0044】
水処理(例:アンモニア水処理)と共に被覆層を形成する場合には、混合工程で得られる混合液中に被覆層の原料を混合する。被覆層がメソポーラスシリカである場合、被覆層の原料の混合は、最初に、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例:ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物)を混合液中に混合し、その後に、テトラエチルオルトシリケートのアルコキシド溶液を混合することによって行うことができる。また、メソポーラスシリカ中にTiを含有させるために、アルコキシド溶液中にチタンイソプロポキシドを含有させてもよい。別の種類の被覆層を形成する場合には、それぞれの被覆層の形成に必要な原料を供給すればよい。また、水処理を行わずに被覆層の形成を行なってもよく、上記焼成工程を行った後に、被覆層を形成してもよい。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を実証すべく、以下に示す種々の実験を行った。
【実施例】
【0046】
1.製造例1(共沈法によるAl-VOx触媒粉末の調製とNiの含浸)
以下の方法で触媒担体であるAl-VOx触媒粉末を調製した。バナジウム酸アンモニウム(NHVO 0.60gを純水61mLに入れ、加温し溶解させた。また、硝酸アルミニウム44.1gを純水235mLに溶解させた。これら二つの溶液を混合した後、2Lのビーカーに移し2500rpmで撹拌しながら炭酸アンモニウム水溶液を約15分でpH=8になるように滴下した。その後、30分撹拌を継続した。析出した沈殿は、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、1Lの純水で洗浄した。得られた沈殿は室温で半日減圧乾燥後、110℃の乾燥炉で12時間乾燥した。得られたゲルは、磨砕した後、空気中500℃で3時間焼成した。これによりAl:V=0.96:0.04のモル比の酸化物担体を得た。
【実施例】
【0047】
上記Al-VOx触媒粉末6.26gを純水50mLに投入し縣濁液とした。また硝酸ニッケルNi(NO・6HO(関東化学社製)12.8gを純水50mLに溶解した。酸化物担体の懸濁液を撹拌しながら硝酸ニッケル水溶液をビュレットを用いて約20分間で全量投入した。室温で30分、45℃の湯浴中で30分攪拌した後、一度室温まで冷却した。その後、35~50℃の湯浴中でエバポレーターにかけ、水分を全て飛ばした。得られた粉末を、110℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、金属換算でNi30wt%を担持した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0048】
2.製造例2(30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上へのTi-MCM層の構築)
製造例1で作製した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上に、以下の方法で、Ti-MCM層を構築した。
【実施例】
【0049】
30wt%Ni/Al-VOx粉末5.00gと28%アンモニア水(関東化学社製)2.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)40mLと超純水6mLの混合液に入れ溶解した。次にテトラエチルオルトシリケート(関東化学社製)1.20gとチタンイソプロポキシド(関東化学社製)0.05gおよびアセチルアセトン(関東化学社製)0.25gをエタノール8mLに加えアルコキシド溶液とした。30wt%Ni/Al-VOxの懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、厚さ15nmの拡散抵抗層を表面に構築したTi-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0050】
3.製造例3(30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上へのMCM層の構築)
製造例1で作製した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上に、以下の方法で、Ti含まないMCM層を構築した。
【実施例】
【0051】
30wt%Ni/Al-VOx粉末5.00gと28%アンモニア水(関東化学社製)2.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)40mLと超純水6mLの混合液に入れ溶解した。次にテトラエチルオルトシリケート(関東化学社製)1.20gをエタノール8mLに加えアルコキシド溶液とした。30wt%Ni/Al-VOxの懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、厚さ15nmの拡散抵抗層を表面に構築したMCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0052】
4.製造例4(30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上へのシリカ層の構築)
製造例1で作製した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末上に、以下の方法で、メソ細孔を有さないシリカ層を構築した。
【実施例】
【0053】
30wt%Ni/Al-VOx粉末5.00gと28%アンモニア水(関東化学社製)2.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とした。次にテトラエチルオルトシリケート(関東化学社製)1.20gをエタノール8mLに加えアルコキシド溶液とした。30wt%Ni/Al-VOxの懸濁液を撹拌しながら、アルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、SiO/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0054】
5.製造例5(30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末のアンモニア水処理)
製造例1で作製した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末に対して、以下の方法で、アンモニア水処理を行った。
【実施例】
【0055】
30wt%Ni/Al-VOx粉末5.00gと28%アンモニア水(関東化学社製)2.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とし、室温で懸濁液を16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、アンモニア水処理30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0056】
6.製造例6(30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末の水処理)
製造例1で作製した30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末に対して、以下の方法で、水処理を行った。
【実施例】
【0057】
30wt%Ni/Al-VOx粉末5.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とし、室温で懸濁液を16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、水処理30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0058】
7.触媒の初期特性評価
触媒の活性評価条件と手順を以下に説明する。活性評価に先立ち触媒試料の水素還元を行った。これは、触媒活性成分を還元するためである。還元は反応管に500mL/minのHガスを流し、20℃/minで500℃まで昇温した後、1時間温度保持した。還元終了後、HからNにガスを切り替え5分間流しHをパージした。還元終了後、触媒の活性評価を行う温度まで降温した。水蒸気を反応管内に導入しはじめ、5分後に反応ガスを導入した。水蒸気供給速度は水蒸気/CO=34(モル比)に相当する値とし、イオン交換水をマイクロポンプで200℃に保った気化器に送り、発生した水蒸気をNキャリアで反応管に導入した。各反応ガスはマスフローコントローラーにより反応管に導入し、組成はドライベースでCO 0.5vol%、H 80vol%、CO 19vol%とした。空塔速度SVは4800h-1とした。反応管は外径13mmの石英管を使用した。この反応管の中央所定位置に1.1mm~2mmに整粒した粒状触媒2.1mLを充てんした。シース熱電対の先端を触媒層の上端から約2mmの位置に挿入し触媒層の温度測定を行った。反応管出口からのガスは、非分散型赤外分析計(堀場製作所製)によって定量を行った。
【実施例】
【0059】
以上の方法に従って得られた結果を図4に示す。図4を参照すると、アンモニア水処理と水処理の何れも行なっていない製造例1の触媒は、出口CO濃度が最低となる温度が高く、且つ出口CO濃度の最低値が高く、しかもその値が達成できる温度範囲が非常に狭かった。一方、アンモニア水処理又は水処理を行った製造例2~6の触媒は、出口CO濃度が最低となる温度が低く、且つ出口CO濃度の最低値が非常に低く、しかもその値が達成できる温度範囲が製造例1よりも広かった。
【実施例】
【0060】
このように担持金属触媒上に形成する被覆層の有無に関わらず、アンモニア水処理又は水処理を行った全ての触媒において非常に優れた結果が得られたことから、水中にアンモニアが含まれることも本質でなく、この結果は、水処理によって得られたといえる。この高活性化の理由は完全には明らかにはなっていないが、(1)金属表面の組成の変化、(2)金属表面の改質(ラフネス等の変化)、(3)金属表面の露出結晶面の変化、(4)添加物(バナジウムなど)とNiの混合具合の変化のうちの1つ以上が要因ではないかと推測している。
【実施例】
【0061】
このうち、特に(1)及び(4)が重要である可能性が高いことが、XPS測定から求めた表1の触媒表面原子組成から分かった。水処理を行うことによって、表面近傍でのV/Ni原子比が0.20から0.22へと1割程度増加していた。同時にNi/Al比が0.61から0.54へと1割減少しており、これは水処理によってVがNi表面に移動していることを示している。つまり、水処理によってVとNiの相互作用が変化し、その変化が活性向上につながっているということを示唆している。
【実施例】
【0062】
【表1】
JP0005942233B2_000002t.gif
【実施例】
【0063】
8.触媒の長期試験
次に、「7.触媒の初期特性評価」と同様の条件で触媒の長期試験を行った。この長期試験において、温度条件は、190℃とした。その結果を図5~図7に示す。図5(A)は、製造例2で作製した、担持金属触媒をTi-MCM層で被覆した触媒についての結果であり、図5(B)は、製造例1で作製した、担持金属触媒に被覆層を形成していない触媒についての結果である。これらの比較から明らかなように、Ti-MCM層で被覆した触媒では、400時間までは出口CO濃度が非常に低い値に維持され、それ以降にゆっくりと出口CO濃度が上昇した。一方、被覆なしの触媒では、反応開始後すぐに出口CO濃度が上昇し始めた。このように被覆層の有無によって、触媒の寿命に顕著な差異が見られた。
【実施例】
【0064】
図6は、製造例3で作製した、担持金属触媒をTiを含まないMCM層で被覆した触媒についての結果である。この結果を見ると、300時間までは出口CO濃度が非常に低い値に維持されていたが、それ以降にゆっくりと出口CO濃度が上昇した。出口CO濃度の上昇速度は、製造例2のTi-MCM層で被覆した触媒よりも大きかった。図5(A)と図6の比較により、MCM層がTiを含有することによって、触媒寿命が向上することが確認された。
【実施例】
【0065】
図7は、製造例5で作製した、担持金属触媒に対してアンモニア水処理を行った触媒についての結果である。この結果を見ると、反応開始直後から出口CO濃度が徐々に上昇したことが分かる。但し、この上昇速度は、製造例1の、アンモニア水処理を行っていない触媒よりも低かった。その理由としては、図4に示すようにアンモニア水処理によって触媒活性が高まった結果、触媒の内部でのCO濃度が低下したためであると推測されている。従って、触媒の耐CO被毒性はアンモニア水処理によって実質的に向上していないと考えられる。
【実施例】
【0066】
9.元素分布の分析
製造例2で作製した触媒について、走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散X線分光(STEM-EDS)によって、元素分析を行った。その結果を図8に示す。図8(A)は、NiとSiについての元素分布を示すグラフであり、図8(B)は、図8(A)の元素分布を分析した箇所のTEM写真である。このTEM写真に基づいて、担持金属触媒の範囲と、被覆層の範囲を特定した。図8(A)のグラフから分かるように、被覆層内にもNiが分布していることが分かり、このNiがCO濃度勾配層の形成に関与していると推測している。
【実施例】
【0067】
10.CO濃度依存性について
次に、製造例1で作製した触媒を用いて、「7.触媒の初期特性評価」で示した方法に従い、CO濃度を種々変更して、触媒の長期試験を行って、触媒劣化のCO濃度依存性について調べた。その結果を図9に示す。図9から明らかなように、CO濃度が高まるにつれて、触媒劣化が早くなり、また、CO濃度が0.2%以下の場合には、触媒劣化が極めて遅いことが分かった。
【実施例】
【0068】
11.被覆層への金属担持の効果について
製造例2で調製したTi-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末に対してNi-Cu合金およびNi-MgOを担持させた触媒を以下の方法で調製した。
Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末5.00gを、純水50.0mLに投入し懸濁液とした。また硝酸ニッケルNi(NO・6HO(関東化学社製)1.24gと硝酸銅三水和物(関東化学社製)0.19gを純水50mLに溶解した。触媒の懸濁液を撹拌しながら硝酸ニッケルと硝酸銅の混合水溶液をビュレットを用いて約20分間で全量投入した。室温で30分、45℃の湯浴中で30分攪拌した後、一度室温まで冷却した。その後、35~50℃の湯浴中でエバポレーターにかけ、水分を全て飛ばした。得られた粉末を、110℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、金属換算でNi5wt%、銅1wt%を被覆層に担持したNi-Cu/Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末5.00gを、純水50.0mLに投入し懸濁液とした。また硝酸ニッケルNi(NO・6HO(関東化学社製)1.24gと硝酸マグネシウム六水和物(関東化学社製)0.53gを純水50mLに溶解した。触媒の懸濁液を撹拌しながら硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムの混合水溶液をビュレットを用いて約20分間で全量投入した。室温で30分、45℃の湯浴中で30分攪拌した後、一度室温まで冷却した。その後、35~50℃の湯浴中でエバポレーターにかけ、水分を全て飛ばした。得られた粉末を、110℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、金属換算でNi5wt%、マグネシウム1wt%を被覆層に担持したNi-Mg/Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。
【実施例】
【0069】
次に、得られた触媒について、「8.触媒の長期試験」と同様の条件で触媒の長期試験を行った。但し、空塔速度SVは10000h-1とした。その結果を図10に示す。図10を参照すると、Cu又はMgOを添加した触媒では、無添加のものに比べて、出口CO濃度の上昇速度が低くなったことが分かる。このことは、被覆層金属の添加によって担持金属触媒表面でのCO濃度が低下したことを示している。
【実施例】
【0070】
12.Ti-MCMを担体として用いた触媒の調製及び評価
被覆層の耐久性検討のために、以下の方法により、Ti-MCMを担体として用いた触媒を作成した。
まず、ゾルゲル法によって、Ti-MCM粉末(Ti/Siの原子比が0.03)を作製した。
具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)2.9gをエタノール(関東化学社製)298mLと超純水24mLの混合液に入れ溶解した。次に28%アンモニア水(関東化学社製)8.1gと超純水537mLを混合し、上記の溶液に添加した。次にテトラエチルオルトシリケート(関東化学社製)5.92gとチタンイソプロポキシド(関東化学社製)0.18gおよびアセチルアセトン(関東化学社製)1.26gに加えアルコキシド溶液とした。次にヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて3分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、Ti-MCM粉末を得た。 次に、この粉末上に、Ni、Ni-Cu、Ni-Mg、Ni-Feを担持させて、Ti-MCM触媒を得た。この担持は、Niの担持量が10wt%となるように行った。Niに対するCu、Mg、Feの原子比は、0.1とした。これらの金属の担持は、含浸法(インシピエントウェットネス法)によって行った。具体的にはTi-MCM粉末5gに対して、Ni:M(MはCuまたはMgまたはFe)の原子比を1:0.1に調整した酢酸Ni水和物(関東化学社製)と酢酸銅水和物(関東化学社製)の混合水溶液、または酢酸Ni水和物(関東化学社製)と酢酸マグネシウム水和物(関東化学社製)の混合水溶液、または酢酸Ni水和物(関東化学社製)と酢酸鉄水和物(関東化学社製)の混合水溶液4mLをピペットで滴下し、110℃で5時間、500℃で3時間焼成した。この工程を3回繰り返し10wt%Ni-Cu/Ti-MCM粉末、または10wt%Ni-Mg/Ti-MCM粉末、または10wt%Ni-Fe/Ti-MCM粉末を得た。
【実施例】
【0071】
12.Ti-MCM触媒の評価
次に、「11.被覆層への金属担持の効果について」と同様の条件で、上記Ti-MCM触媒粉末の評価を行った。但し、反応ガスの組成は、ドライベースでCO 0.5vol%、CO 20vol%、N 6vol%、H 73.5vol%とした。
以上の方法に従って得られた結果を図11に示す。図11を参照すると、Ni-Cu又はNi-Mgを添加した触媒では、無添加のものに比べて、出口CO濃度の上昇速度が低くなったことが分かる。さらに、Ni-Feを添加した触媒では、Niを添加した触媒に比べて出口CO濃度の上昇速度が、1/100以下という極めて小さい値になった。この結果は、Ni-Feが優れた被覆層金属であることを示している。また、別の観点では、図11の結果は、Ti-MCM担体にNi-Feを担持させて得られた触媒は、担持金属触媒がなくても、CO選択メタン化触媒として優れた性質を有していることを示している。
また、Ni添加Ti-MCM触媒粉末の還元前、還元後、長期試験後の顕微鏡写真を図12(a)~(c)に示し、これらのXRDパターンを図12(d)に示す。これらの結果は、Ti-MCMのメソ孔中に結晶子径4.3nmから4.4nmのNi粒子が均一に担持できていることを示している。
【実施例】
【0072】
13.Ti-MCM層の耐水蒸気特性評価
まず、製造例2と同様の方法によって、Ti-MCM層のTi/Siの原子比が異なる2種類の触媒(Ti/Siの原子比が0.1と1)を作製した。
次に、これらの触媒について、「11.被覆層への金属担持の効果について」と同様の方法で、水蒸気処理を行った。但し、水蒸気処理では、反応ガスの組成は、HO 60vol%、N 40vol%とし、反応温度は、200℃とし、反応時間は、72時間とした。
上記の2種類の触媒について、水蒸気処理前後のBET比表面積及び細孔容積を測定し、顕微鏡写真を撮影した。その結果を図13~図16に示す。図13~図16において、「焼成後」とは、還元及び水蒸気処理を行う直前の状態を示し、「還元、水蒸気処理後」とは、還元及び水蒸気処理を行った直後の状態を示す。
図13に示すように、Ti/Siの原子比が0.1である触媒では、水蒸気処理によって比表面積が大幅に低下した。一方、図14に示すように、Ti/Siの原子比が1である触媒では、水蒸気処理による比表面積及び細孔容積の低下は見られなかった。この結果は、Ti/Siの原子比の増大に伴って、耐水蒸気性が向上したことを示している。
また、図15の顕微鏡写真に示すように、Ti/Siの原子比が0.1である触媒では、水蒸気処理によってTi-MCM層が部分的に崩壊していた。一方、図16の顕微鏡写真に示すように、Ti/Siの原子比が1である触媒では、水蒸気処理によるTi-MCM層の崩壊はほとんど見られなかった。
【実施例】
【0073】
14.La-MCM層の耐水蒸気特性評価
まず、製造例2と同様の方法によって、Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。次に、この触媒粉末5gを50gの超純水に懸濁したものに、硝酸ランタン6水和物(関東化学社製)0.12gを超純水10gに溶解した水溶液を滴下した後1時間撹拌し、エバポレーターを用いて35℃で蒸発乾固し、110℃で12時間乾燥した後、500℃で3時間焼成し、La-MCM層を有する触媒を作製した(La/Siの原子比=0.05)。作製した触媒について、「13.Ti-MCM層の耐水蒸気特性評価」と同様の方法で水蒸気処理を行い、水蒸気処理前後の顕微鏡写真を撮影した。その結果を図17に示す。図17に示すように、水蒸気処理によるLa-MCM層の崩壊はほとんど見られなかった。また、水蒸気処理前後のBET比表面積を測定したところ、水蒸気処理前が56m/gで、水蒸気処理後が59m/gであり、比表面積が低下しなかったという結果からも、La-MCM層が崩壊しなかったことが分かる。
【実施例】
【0074】
15.Zr-MCM層の耐水蒸気特性評価
まず、製造例2と同様の方法によって、Ti-MCM/30wt%Ni/Al-VOx触媒粉末を得た。次に、この触媒粉末5gを50gの超純水に懸濁したものに、硝酸ジルコニウム2水和物(関東化学社製)0.07gを超純水10gに溶解した水溶液を滴下した後1時間撹拌し、エバポレーターを用いて35℃で蒸発乾固し、110℃で12時間乾燥した後、500℃で3時間焼成し、Zr-MCM層を有する触媒を作製した(Zr/Siの原子比=0.05)。作製した触媒について、「13.Ti-MCM層の耐水蒸気特性評価」と同様の方法で水蒸気処理を行い、水蒸気処理前後の顕微鏡写真を撮影した。その結果を図18に示す。図18に示すように、水蒸気処理によるZr-MCM層の崩壊はほとんど見られなかった。また、水蒸気処理前後のBET比表面積を測定したところ、水蒸気処理前が63m/gで、水蒸気処理後が65m/gであり、比表面積が低下しなかったという結果からも、Zr-MCM層が崩壊しなかったことが分かる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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