TOP > 国内特許検索 > ホログラフィック断層顕微鏡、ホログラフィック断層画像生成方法、およびホログラフィック断層画像用のデータ取得方法 > 明細書

明細書 :ホログラフィック断層顕微鏡、ホログラフィック断層画像生成方法、およびホログラフィック断層画像用のデータ取得方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年8月25日(2016.8.25)
発明の名称または考案の名称 ホログラフィック断層顕微鏡、ホログラフィック断層画像生成方法、およびホログラフィック断層画像用のデータ取得方法
国際特許分類 G03H   1/00        (2006.01)
G02B  21/00        (2006.01)
FI G03H 1/00
G02B 21/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 42
出願番号 特願2014-539842 (P2014-539842)
国際出願番号 PCT/JP2013/077059
国際公開番号 WO2014/054776
国際出願日 平成25年10月4日(2013.10.4)
国際公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権出願番号 2012223690
優先日 平成24年10月5日(2012.10.5)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】佐藤 邦弘
出願人 【識別番号】513099603
【氏名又は名称】公立大学法人兵庫県立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100084375、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 康夫
【識別番号】100121692、【弁理士】、【氏名又は名称】田口 勝美
【識別番号】100125221、【弁理士】、【氏名又は名称】水田 愼一
【識別番号】100142077、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 真之
審査請求 未請求
テーマコード 2H052
2K008
Fターム 2H052AA04
2H052AC04
2H052AC09
2H052AC27
2H052AC34
2H052AF21
2H052AF25
2K008AA06
2K008BB04
2K008FF27
2K008HH12
2K008HH28
要約 ホログラフィック断層顕微鏡、ホログラフィック断層画像生成方法、およびホログラフィック断層画像用のデータ取得方法において、断層画像を正確かつ高速に生成可能とする。本方法は、データ取得工程(S1)と、断層画像生成工程(S2乃至S7)とを備える。データ取得工程では、照明光Q、オフアクシス球面波参照光R、インライン球面波参照光Lの波長を変えて各波長λの光毎に物体光O等のホログラムIOR,IQR,ILRを取得する。断層画像生成工程では、これらのホログラムから、再生面z=zにおける物体光Oの再生光波hと照明光Qの再生光波cとを求める。位相を調整した再生光波h/(c/|c|)を各波長(j=1,・・,N)について加算して断層ホログラムHを求める。これから、焦点の合った無歪で正確な断層画像S=|Hが得られる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ホログラフィック断層顕微鏡であって、
波長掃引光を用いて物体のホログラムを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得されたホログラムから前記物体の断層画像を生成する断層画像生成部と、を備え、
前記データ取得部は、
コヒーレント光を放射する波長掃引型の光源と、
前記光源が放射する光から照明光(Q)、オフアクシス球面波参照光(R)、およびインライン球面波参照光(L)を構成し、これらの光と前記照明光(Q)によって照明される物体から放たれる物体光(O)とを伝播させる光学系と、
光強度を電気信号に変換して出力する受光素子と、
前記物体光(O)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞(IOR)、前記照明光(Q)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞(IQR)、および、前記オフアクシス球面波参照光(R)と前記インライン球面波参照光(L)との干渉縞(ILR)を、前記光源が波長を変えて放射する各波長(λ,j=1,・・,N)の光毎に、前記受光素子から出力される電気信号に基づいてホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)として記録する記録部と、を備え、
前記断層画像生成部は、
前記記録部によって記録された前記ホログラム(IOR,IQR,ILR)に空間周波数フィルタリングを適用して、それぞれ、前記物体光(O)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)、前記照明光(Q)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JQR)、および前記オフアクシス球面波参照光(R)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JLR)、を生成するフィルタリング部と、
前記フィルタリング部によって生成された前記各複素振幅オフアクシスホログラム(JOR,JQR)のデータを、前記フィルタリング部によって生成された前記複素振幅オフアクシスホログラム(JLR)のデータでそれぞれ除算することにより、参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)を生成するインライン化変調部と、
特定の再生面(z=z)において、前記変調部によって生成された前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)の各々から、物体光(O)の再生光波(h)と、照明光(Q)の再生光波(c)と、前記照明光の再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)とを求め、前記各波長の光毎に前記物体光の再生光波から前記位相成分を除去した位相調整再生光波(h/ξ)を求め、それらを前記各波長(λ,j=1,・・,N)について加算して前記特定の再生面(z=z)におけるホログラムである断層ホログラム(H=Σh/ξ)を求め、前記断層ホログラム(H)から、前記特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成する断層画像計算部と、を備えることを特徴とするホログラフィック断層顕微鏡。
【請求項2】
前記断層画像生成部は、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大部と、
前記画素数増大部によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)に対し、前記インライン球面波参照光(L)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波参照光(L)成分を除去してホログラム面における複素振幅インラインホログラム(g,b)を生成する空間変調部と、
前記複素振幅インラインホログラム(g,b)をフーリエ変換した結果である変換関数(G,B)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および前記変換関数(G,B)を用いて前記物体光(O)と照明光(Q)とを平面波展開する平面波展開部と、を備え、これらを用いて前記再生光波(h,c)を生成することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック断層顕微鏡。
【請求項3】
前記断層画像生成部は、
前記複素振幅インラインホログラム(g,b)を複数枚の微小ホログラム(g,b,i=1,・・,n)に分割する分割部と、
前記分割部によって得られた各微小ホログラム(g,b)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ,Π)を生成する合成部と、をさらに備え、
前記平面波展開部は、前記合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ,Π)をフーリエ変換することにより前記変換関数(G,B)を求めることを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック断層顕微鏡。
【請求項4】
前記断層画像生成部は、
前記特定の再生面(z=z)を複数設定し、それらの各再生面(z=z,P=1,・・,m)について前記断層画像(S,P=1,・・,m)を生成し、それらの集合を3次元体積画像(V={S,P=1,・・,m})として記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のホログラフィック断層顕微鏡。
【請求項5】
ホログラフィック断層画像生成方法であって、
照明光(Q)により物体を照明し、オフアクシス球面波参照光(R)を用いて、前記物体から放たれる物体光(O)のオフアクシスホログラム(IOR)と前記照明光(Q)のオフアクシスホログラム(IQR)とを記録し、インライン球面波参照光(L)を用いて、前記オフアクシス球面波参照光(R)のオフアクシスホログラム(ILR)を記録し、前記オフアクシスホログラム(ILR)を用いて、前記オフアクシスホログラム(IOR,IQR)から、物体光(O)の複素振幅インラインホログラム(JOL)と前記照明光(Q)の複素振幅インラインホログラム(JQL)とを求める処理を、前記照明光(Q)、前記オフアクシス球面波参照光(R)、および前記インライン球面波参照光(L)の波長を変えた各波長(λ,j=1,・・,N)の光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎の複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)を求め、
特定の再生面(z=z)において、前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)の各々から、前記物体光(O,j=1,・・,N)の再生光波(h,j=1,・・,N)と、前記照明光(Q,j=1,・・,N)の再生光波(c,j=1,・・,N)と、前記照明光の再生光波(c,j=1,・・,N)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|,j=1,・・,N)とを求め、
前記各波長毎に前記物体光の再生光波から前記位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ,j=1,・・,N)を求め、それらを前記各波長について加算して前記特定の再生面(z=z)におけるホログラムである断層ホログラム(H=Σh/ξ)を求め、
前記断層ホログラム(H)から、前記特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成して記録することを特徴とするホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項6】
前記物体光の再生光波(h)と前記照明光の再生光波(c)とは、前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)のサンプリング間隔を細分化して実質的にサンプル数を増やす処理を行ったホログラムを用いて求めることを特徴とする請求項5に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項7】
前記特定の再生面(z=z)を複数設定し、それらの各再生面(z=z,P=1,・・,m)について前記断層画像(S,P=1,・・,m)を生成し、それらの集合を3次元体積画像(V={S,P=1,・・,m})として記録することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項8】
前記物体光の再生光波(h)と前記照明光の再生光波(c)とは、それぞれ前記物体中の光路を含む光路における光の屈折率を考慮して求めることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項9】
前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)のそれぞれから前記インライン球面波参照光(L)の位相(φ)を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(g)および照明光複素振幅インラインホログラム(b)を求め、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を分割して複数の微小ホログラム(g,i=1,・・,n)を生成し、これらを互いに重ねて合成した合成微小ホログラム(Σ)を求め、
前記照明光複素振幅インラインホログラム(b)を分割して複数の微小ホログラム(b,i=1,・・,n)を生成し、これらを互いに重ねて合成した合成微小ホログラム(Π)を求め、
前記合成微小ホログラム(Σ,Π)を用いて、前記物体光の再生光波(h)と前記照明光の再生光波(c)とを求めることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項10】
前記物体光の再生光波(h)と前記照明光の再生光波(c)とを求める際に、屈折率の空間変化による光収差を補正するように構成した位相シフト関数(exp(iχ(x,y)))を用いることを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか一項に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項11】
前記物体光の再生光波(h)と前記照明光の再生光波(c)とを求める際に、前記物体中の光路を含む光路における平均的な光の分散特性に基づいて色収差を補正することを特徴とする請求項5乃至請求項10のいずれか一項に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項12】
前記物体における自由空間との境界に物質によって平面境界を構成し、その平面境界に向けて前記照明光(Q,j=1,・・,N)を照射し、前記平面境界を通過した光による照明によって前記物体から放たれる光を前記物体光(O,j=1,・・,N)のホログラムとして記録し、前記平面境界からの反射光を前記照明光(Q,j=1,・・,N)のホログラムとして記録して、これらのホログラムを用いて前記複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)を求めることを特徴とする請求項5乃至請求項11のいずれか一項に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項13】
ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法であって、
照明光(Q)により物体を照明し、その物体から放たれる物体光(O)をオフアクシス球面波参照光(R)を用いてオフアクシスホログラム(IOR)に記録し、
前記オフアクシス球面波参照光(R)を用いて前記照明光(Q)をオフアクシスホログラム(IQR)に記録し、
インライン球面波参照光(L)を用いて前記オフアクシス球面波参照光(R)をオフアクシスホログラム(ILR)に記録する処理を、
前記照明光(Q)、前記オフアクシス球面波参照光(R)、および前記インライン球面波参照光(L)の波長を変えた光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎のホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)を求めこれらのデータをホログラフィック断層画像用として記録することを特徴とするホログラフィック断層画像用のデータ取得方法。
【請求項14】
ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法であって、
照明光(Q)により物体を照明し、その物体から放たれる物体光(O)を参照光(R)を用いてホログラム(IOR)に記録し、
前記参照光(R)を用いて前記照明光(Q)をホログラム(IQR)に記録し、
インライン参照光(L)を用いて前記参照光(R)をオフアクシスホログラム(ILR)に記録する処理を、
前記照明光(Q)、前記参照光(R)、および前記インライン参照光(L)の波長を変えた光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎のホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)のデータをホログラフィック断層画像用として取得することを特徴とするホログラフィック断層画像用のデータ取得方法。
【請求項15】
前記物体の手前に透過鏡を配置し、
前記透過鏡を通して前記照明光(Q)により前記物体を照射し、
前記透過鏡を透過した物体光(O)と、前記透過鏡によって反射された照明光(Q)とを、1枚の共通ホログラム(IOQR)に同時に記録することにより、前記物体光(O)のホログラム(IOR)のデータと前記照明光(Q)のホログラム(IQR)のデータとを取得することを特徴とする請求項14に記載のホログラフィック断層画像用のデータ取得方法。
【請求項16】
前記照明光(Q)と前記参照光(R)とを、互いに直交する偏光状態とし、
前記物体光(O)と前記照明光(Q)の反射光とを偏光板を透過させることによって前記照明光(Q)の反射光を減衰させた状態で、前記共通ホログラム(IOQR)のデータを取得することを特徴とする請求項15に記載のホログラフィック断層画像用のデータ取得方法。
【請求項17】
前記透過鏡の奥方で集光する光を前記照明光(Q)として用いて前記共通ホログラム(IOQR)を取得し、
前記照明光(Q)の反射光が集光する位置において、前記共通ホログラム(IOQR)から再生光を生成し、その再生光を前記照明光(Q)とそれ以外とに分離することにより、前記物体光(O)のホログラム(IOR)のデータと前記照明光(Q)のホログラム(IQR)のデータとを取得することを特徴とする請求項15または請求項16に記載のホログラフィック断層画像用のデータ取得方法。
【請求項18】
ホログラフィック断層画像生成方法であって、
互いにコヒーレントな照明光(Q)および参照光(R)の波長を変えた光(Q,R,j=1,・・,N)を用いて、前記照明光(Q)により物体を照明し、前記参照光(R)を用いて記録した、前記物体から放たれる物体光(O)のホログラム(IOR)と前記照明光(Q)のホログラム(IQR)と、が各波長(λ,j=1,・・,N)毎に与えられ、
前記ホログラムに記録された物体光(O)は前記物体内部の各点で前記照明光(Q)が反射して生じる反射光が重なり合った光であり、該物体光(O)を構成する前記反射光が発生する位置における該反射光の位相とその位置における該反射光を生成する前記照明光(Q)の位相とが同じであることに基づいて、特定の再生面(z=z)において物体光(O,j=1,・・,N)の位相を調整したものを加算して構成したホログラムである断層ホログラム(H)を求め、その断層ホログラム(H)を用いて、前記特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成することを特徴とするホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項19】
前記断層ホログラム(H)を用いて、前記特定の再生面(z=z)から離れた、異なる波長(λ,j=1,・・,N)を有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列のパルスの幅(δz)内の近傍再生面(z=z+dz,dz<δz)における近傍ホログラム(HPd)を求め、その近傍ホログラム(HPd)を用いて、近傍断層画像(SPd=|HPd)を生成することを特徴とする請求項18に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
【請求項20】
前記断層ホログラム(H)を用いて、前記特定の再生面(z=z)から、異なる波長(λ,j=1,・・,N)を有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列の周期(Δz)の倍数だけ離れた超周期再生面(z=z+kΔz、kは整数)における超周期ホログラム(HPk)を求め、その超周期ホログラム(HPk)を用いて、超周期断層画像(SPk=|HPk)を生成することを特徴とする請求項18に記載のホログラフィック断層画像生成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮像技術に係り、ホログラフィによる、断層顕微鏡、断層画像生成方法、および断層画像用のデータ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光干渉断層撮像法(OCT:オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィ)の技術が、人体に無害で非侵襲な最先端の医療診断技術として注目されており、装置開発や生体計測への応用研究が精力的に進められている。OCTは、物体の表面から光が進入可能な深さまでの、物体の光応答構造の情報を得る技術であり、眼底検査などに応用されている。当初から提案され実用化されたOCTは、光ビームのスポットサイズを絞ったレーザ光を用いるものである。そのレーザ光を照明光と参照光とに分離し、物体中に照明光を入射させ、物体中から反射して戻ってくる光を参照光との干渉によって観測する。観測された干渉から物体中の光の反射位置や反射強度の情報すなわち光の進行方向(縦方向すなわち深さ方向)における物体中の構造の情報が導出される。レーザ光を入射させる物体表面上の位置を1次元的に移動させれば1面の断層画像が得られ、2次元的に移動させれば物体の3次元構造データが得られ、そのデータから任意断層面における断層画像を再生できる。なお、断層画像は、有限厚みを有する層の厚み方向の平均的な光反射強度の面分布である。その有限厚みを有する層を1面(例えば層の中心面)で代表させる場合、その代表面を断層面または再生面と称する。
【0003】
OCTは、縦方向の情報を導出する方法の違いにより2つに大別される。1つは光パルスの飛行時間を直接求める時間領域OCT(TD-OCT)であり、他の1つは縦方向の距離の違いを干渉縞の空間周波数から求めるフーリエ領域OCT(FD-OCT)である。前者のTD-OCTは光波の干渉を実空間(時間領域)で処理する。TD-OCTは、最初に実用化されたOCTであり、照明光の1回の照射によって深さ方向の1点の情報しか得られない。従って、TD-OCTによって深さ方向の各点の情報を得るには、参照光の光路長を変化させる必要があり、そのために光路上の参照ミラーを機械的に移動させる。後者のFD-OCTは光波の干渉をフーリエ空間(周波数領域または波長領域)で処理する。FD-OCTは、さらに、波長固定光源と分光器を用いるスペクトル領域OCT(SD-OCT)と、光源の発信波長を変化させる波長掃引型OCT(SS-OCT)とに大別される。これらのFD-OCTは、参照ミラーの機械的移動が不要であり、撮像の高速化が実現される。
【0004】
しかしながら、いずれのFD-OCTにおいても、ビームスポットサイズを絞ったレーザ光を用いるので、2次元または3次元のデータを得るにはガルバノ走査したり、参照ミラーおよび光干渉計からなる可動ヘッドを物体表面に沿って機械的に1次元的または2次元的に走査したりする必要があり、撮像の高速化が制限される。これに対し、光学系の機械的走査が不要な撮像法として、結像レンズと光波長掃引レーザ光を用いたディジタルホログラフィによる断層撮像方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、この断層撮像方法を生物組織に適用した例が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。これらの非特許文献1,2に記載された断層撮像方法では、波長掃引平面波光を照明光として用いて、物体光を各波長毎にホログラムに記録する。記録した各波長のホログラムについて、共通の再生位置で各波長毎に物体光の位相を求め、求めた物体光の各位相で各ホログラムを規格化して各ホログラムを互いに加算することにより、その再生位置における断層画像を再生するためのホログラムが求められる。他の位置における断層画像は、その断層画像用のホログラムに記録された光波を伝搬させることによって求められる。
【0005】
ディジタルホログラフィは、画像を高速撮像して記録する方法として開発が進められている。例えば、オフアクシスホログラフィに空間ヘテロダイン変調と空間周波数フィルタリングを適用して広帯域複素振幅ホログラムを高速かつ正確に記録できるワンショットディジタルホログラフィが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来の光学顕微鏡の問題を解決するため、このワンショットディジタルホログラフィを用いて、ホログラフィック顕微鏡、微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、および画像再生方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この顕微鏡は、透過型および反射型の顕微鏡であり、結像レンズを用いないレンズレスホログラフィック顕微鏡であり、従来の媒質や結像レンズの影響を受ける光学顕微鏡の問題を解決することができる。すなわち、この顕微鏡は、結像レンズを用いないことにより、大開口数の物体光を正確にワンショットで記録し無歪で正確な高分解能3次元動画像を計算機を用いて再生することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】リンフォン・ユー(Lingfeng Yu)、ミユン・ケイ・キム(Myung K. Kim)著 「ウエイブレングス-スキャニング ディジタル インターファレンス ホログラフィ フォー トモグラフィック スリー-ディメンショナルイメージング バイ ユース オブ ジ アンギュラースペクトラム メソッド(Wavelength-scanning digital interference holography for tomographic three-dimensional imaging by use of the angular spectrum method)」、オプティックス レターズ(Optics Letters)、Vol.30,No.16,pp.2092-2094(2005)
【非特許文献2】リンフォン・ユー(Lingfeng Yu)、ミユン・ケイ・キム(Myung K. Kim)著、「ウエイブレングス スキャニング ディジタル インターファレンス ホログラフィ フォー バリアブル トモグラフィック スキャニング(Wavelength scanning digital interference holography for variable tomographic scanning)」、オプティックス エクスプレス(Optics Express)」、Vol.13,No.15,pp.5621-5627(2005)
【0007】

【特許文献1】国際公開第2011/089820号
【特許文献2】国際公開第2012/005315号
【発明の開示】
【0008】
しかしながら、上述の非特許文献1,2に示されるようなディジタルホログラフィによる断層撮像方法は、従来のOCTにおける光学系の機械的走査を不要とするものの、実用上の問題がある。これらの非特許文献1,2に記載された方法における断層画像用のホログラムは、物体光の位相に基づいて導出されている。従って、物体光の発生位置が限定されているコインなどの非透明物体の断層画像生成には有効と考えられる。言い換えれば、半透明物体の断層画像取得の場合、物体光は、一般に半透明物体中の各点から放出されるので、物体光の位相を一意的に決めることができず、物体光の位相のみに基づいて導出した断層画像は誤差を含み、また、S/N比の悪い画像となる。特に、物体中で生じた反射光が深さ方向において連続的に重なり合う場合に、このような断層撮像方法による実用的な断層画像を導出することが困難になる。また、上述した特許文献2に示されるようなホログラフィック顕微鏡は、無歪で正確な高分解能3次元動画像を再生することができるものの、断層画像の取得と観察用に開発されたたものではない。
【0009】
断層画像の取得と観察の技術は、主に生体画像診断に用いられ、医療技術として大きな役割を担っている。医療現場において、細胞レベルの病変を診断するには1μm以下の分解能が要求される。ビームスポットサイズを絞ったレーザ光を用いるOCTは、現在広く実用化されているが、照明光のスポットサイズによって横分解能、すなわち光の伝搬方向に直交する方向の分解能が決まるので、その高分解能化は難しく横分解能は光学顕微鏡と比べて1桁以上低い値に留まっている。また、従来のOCTは、例えば、癌の早期診断を初め、より多くの疾患の診断に対応するには、依然として解像度が低く、また高速撮像ができないので、動く被写体の断層画像の実時間撮像も難しい。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、培養液中細胞や生体組織などの内部構造を観察するために、任意媒質中の半透明物体の3次元体積画像を精度良く生成することができるホログラフィック断層画像生成方法を提供し、高分解能の平面断層画像を作成するデータを高速に取得することができるホログラフィック断層画像用のデータ取得方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高速に無歪のホログラムを記録して被写体の内部の動きを観察することができるホログラフィック断層顕微鏡を提供することを目的とする。
【0011】
上記課題を達成するために、本発明は、ホログラフィック断層顕微鏡であって、波長掃引光を用いて物体のホログラムを取得するデータ取得部と、データ取得部によって取得されたホログラムから物体の断層画像を生成する断層画像生成部と、を備え、データ取得部は、コヒーレント光を放射する波長掃引型の光源と、光源が放射する光から照明光(Q)、オフアクシス球面波参照光(R)、およびインライン球面波参照光(L)を構成し、これらの光と照明光(Q)によって照明される物体から放たれる物体光(O)とを伝搬させる光学系と、光強度を電気信号に変換して出力する受光素子と、物体光(O)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞(IOR)、照明光(Q)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞(IQR)、および、オフアクシス球面波参照光(R)とインライン球面波参照光(L)との干渉縞(ILR)を、光源が波長を変えて放射する各波長(λ,j=1,・・,N)の光毎に、受光素子から出力される電気信号に基づいてホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)として記録する記録部と、を備え、断層画像生成部は、記録部によって記録されたホログラム(IOR,IQR,ILR)に空間周波数フィルタリングを適用して、それぞれ、物体光(O)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)、照明光(Q)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JQR)、およびオフアクシス球面波参照光(R)を記録した複素振幅オフアクシスホログラム(JLR)、を生成するフィルタリング部と、フィルタリング部によって生成された各複素振幅オフアクシスホログラム(JOR,JQR)のデータを、フィルタリング部によって生成された複素振幅オフアクシスホログラム(JLR)のデータでそれぞれ除算することにより、参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)を生成するインライン化変調部と、特定の再生面(z=z)において、変調部によって生成された複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)の各々から、物体光(O)の再生光波(h)と、照明光(Q)の再生光波(c)と、照明光の再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)とを求め、各波長の光毎に物体光の再生光波から位相成分を除去した位相調整再生光波(h/ξ)を求め、それらを各波長(λ,j=1,・・,N)について加算して特定の再生面(z=z)におけるホログラムである断層ホログラム(H=Σh/ξ)を求め、断層ホログラム(H)から、特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成する断層画像計算部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このホログラフィック断層顕微鏡において、断層画像生成部は、複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大部と、画素数増大部によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)に対し、インライン球面波参照光(L)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波参照光(L)成分を除去してホログラム面における複素振幅インラインホログラム(g,b)を生成する空間変調部と、複素振幅インラインホログラム(g,b)をフーリエ変換した結果である変換関数(G,B)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数(G,B)を用いて物体光(O)と照明光(Q)とを平面波展開する平面波展開部と、を備え、これらを用いて再生光波(h,c)を生成するようにしてもよい。
【0013】
このホログラフィック断層顕微鏡において、断層画像生成部は、複素振幅インラインホログラム(g,b)を複数枚の微小ホログラム(g,b,i=1,・・,n)に分割する分割部と、分割部によって得られた各微小ホログラム(g,b)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ,Π)を生成する合成部と、をさらに備え、平面波展開部は、合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ,Π)をフーリエ変換することにより変換関数(G,B)を求めるようにしてもよい。
【0014】
このホログラフィック断層顕微鏡において、断層画像生成部は、特定の再生面(z=z)を複数設定し、それらの各再生面(z=z,P=1,・・,m)について断層画像(S,P=1,・・,m)を生成し、それらの集合を3次元体積画像(V={S,P=1,・・,m})として記録するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明は、ホログラフィック断層画像生成方法であって、照明光(Q)により物体を照明し、オフアクシス球面波参照光(R)を用いて、物体から放たれる物体光(O)のオフアクシスホログラム(IOR)と照明光(Q)のオフアクシスホログラム(IQR)とを記録し、インライン球面波参照光(L)を用いて、オフアクシス球面波参照光(R)のオフアクシスホログラム(ILR)を記録し、オフアクシスホログラム(ILR)を用いて、オフアクシスホログラム(IOR,IQR)から、物体光(O)の複素振幅インラインホログラム(JOL)と照明光(Q)の複素振幅インラインホログラム(JQL)とを求める処理を、照明光(Q)、オフアクシス球面波参照光(R)、およびインライン球面波参照光(L)の波長を変えた各波長(λ,j=1,・・,N)の光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎の複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)を求め、特定の再生面(z=z)において、複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)の各々から、物体光(O,j=1,・・,N)の再生光波(h,j=1,・・,N)と、照明光(Q,j=1,・・,N)の再生光波(c,j=1,・・,N)と、照明光の再生光波(c,j=1,・・,N)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|,j=1,・・,N)とを求め、各波長毎に物体光の再生光波から位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ,j=1,・・,N)を求め、それらを各波長について加算して特定の再生面(z=z)におけるホログラムである断層ホログラム(H=Σh/ξ)を求め、断層ホログラム(H)から、特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成して記録することを特徴とする。
【0016】
このホログラフィック断層画像生成方法において、物体光の再生光波(h)と照明光の再生光波(c)とは、複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)のサンプリング間隔を細分化して実質的にサンプル数を増やす処理を行ったホログラムを用いて求めるようにしてもよい。
【0017】
このホログラフィック断層画像生成方法において、特定の再生面(z=z)を複数設定し、それらの各再生面(z=z,P=1,・・,m)について断層画像(S,P=1,・・,m)を生成し、それらの集合を3次元体積画像(V={S,P=1,・・,m})として記録するようにしてもよい。
【0018】
このホログラフィック断層画像生成方法において、物体光の再生光波(h)と照明光の再生光波(c)とは、それぞれ物体中の光路を含む光路における光の屈折率を考慮して求めるようにしてもよい。
【0019】
このホログラフィック断層画像生成方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL)のそれぞれからインライン球面波参照光(L)の位相(φ)を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(g)および照明光複素振幅インラインホログラム(b)を求め、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を分割して複数の微小ホログラム(g,i=1,・・,n)を生成し、これらを互いに重ねて合成した合成微小ホログラム(Σ)を求め、照明光複素振幅インラインホログラム(b)を分割して複数の微小ホログラム(b,i=1,・・,n)を生成し、これらを互いに重ねて合成した合成微小ホログラム(Π)を求め、合成微小ホログラム(Σ,Π)を用いて、物体光の再生光波(h)と照明光の再生光波(c)とを求めるようにしてもよい。
【0020】
このホログラフィック断層画像生成方法において、物体光の再生光波(h)と照明光の再生光波(c)とを求める際に、屈折率の空間変化による光収差を補正するように構成した位相シフト関数(exp(iχ(x,y)))を用いるようにしてもよい。
【0021】
このホログラフィック断層画像生成方法において、物体光の再生光波(h)と照明光の再生光波(c)とを求める際に、物体中の光路を含む光路における平均的な光の分散特性に基づいて色収差を補正するようにしてもよい。
【0022】
このホログラフィック断層画像生成方法において、物体における自由空間との境界に物質によって平面境界を構成し、その平面境界に向けて照明光(Q,j=1,・・,N)を照射し、平面境界を通過した光による照明によって物体から放たれる光を物体光(O,j=1,・・,N)のホログラムとして記録し、平面境界からの反射光を照明光(Q,j=1,・・,N)のホログラムとして記録して、これらのホログラムを用いて複素振幅インラインホログラム(JOL,JQL,j=1,・・,N)を求めるようにしてもよい。
【0023】
また、本発明は、ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法であって、照明光(Q)により物体を照明し、その物体から放たれる物体光(O)をオフアクシス球面波参照光(R)を用いてオフアクシスホログラム(IOR)に記録し、オフアクシス球面波参照光(R)を用いて照明光(Q)をオフアクシスホログラム(IQR)に記録し、インライン球面波参照光(L)を用いてオフアクシス球面波参照光(R)をオフアクシスホログラム(ILR)に記録する処理を、照明光(Q)、オフアクシス球面波参照光(R)、およびインライン球面波参照光(L)の波長を変えた光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎のホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)を求めこれらのデータをホログラフィック断層画像用として記録することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法であって、照明光(Q)により物体を照明し、その物体から放たれる物体光(O)を参照光(R)を用いてホログラム(IOR)に記録し、参照光(R)を用いて照明光(Q)をホログラム(IQR)に記録し、インライン参照光(L)を用いて参照光(R)をオフアクシスホログラム(ILR)に記録する処理を、照明光(Q)、参照光(R)、およびインライン参照光(L)の波長を変えた光(Q,R,L,j=1,・・,N)を用いて行い、各波長毎のホログラム(IOR,IQR,ILR,j=1,・・,N)のデータをホログラフィック断層画像用として取得することを特徴とする。
【0025】
このホログラフィック断層画像用のデータ取得方法において、物体の手前に透過鏡を配置し、透過鏡を通して照明光(Q)により物体を照射し、透過鏡を透過した物体光(O)と、透過鏡によって反射された照明光(Q)とを、1枚の共通ホログラム(IOQR)に同時に記録することにより、物体光(O)のホログラム(IOR)のデータと照明光(Q)のホログラム(IQR)のデータとを取得するようにしてもよい。
【0026】
このホログラフィック断層画像用のデータ取得方法において、照明光(Q)と参照光(R)とを、互いに直交する偏光状態とし、物体光(O)と照明光(Q)の反射光とを偏光板を透過させることによって照明光(Q)の反射光を減衰させた状態で、共通ホログラム(IOQR)のデータを取得するようにしてもよい。
【0027】
このホログラフィック断層画像用のデータ取得方法において、透過鏡の奥方で集光する光を照明光(Q)として用いて共通ホログラム(IOQR)を取得し、照明光(Q)の反射光が集光する位置において、共通ホログラム(IOQR)から再生光を生成し、その再生光を照明光(Q)とそれ以外とに分離することにより、物体光(O)のホログラム(IOR)のデータと照明光(Q)のホログラム(IQR)のデータとを取得するようにしてもよい。
【0028】
また、本発明は、ホログラフィック断層画像生成方法であって、互いにコヒーレントな照明光(Q)および参照光(R)の波長を変えた光(Q,R,j=1,・・,N)を用いて、照明光(Q)により物体を照明し、参照光(R)を用いて記録した、物体から放たれる物体光(O)のホログラム(IOR)と照明光(Q)のホログラム(IQR)と、が各波長(λ,j=1,・・,N)毎に与えられ、ホログラムに記録された物体光(O)は物体内部の各点で照明光(Q)が反射して生じる反射光が重なり合った光であり、該物体光(O)を構成する反射光が発生する位置における該反射光の位相とその位置における該反射光を生成する照明光(Q)の位相とが同じであることに基づいて、特定の再生面(z=z)において物体光(O,j=1,・・,N)の位相を調整したものを加算して構成したホログラムである断層ホログラム(H)を求め、その断層ホログラム(H)を用いて、特定の再生面(z=z)における断層画像(S=|H)を生成することを特徴とする。
【0029】
このホログラフィック断層画像生成方法において、断層ホログラム(H)を用いて、特定の再生面(z=z)から離れた、異なる波長(λ,j=1,・・,N)を有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列のパルスの幅(δz)内の近傍再生面(z=z+dz,dz<δz)における近傍ホログラム(HPd)を求め、その近傍ホログラム(HPd)を用いて、近傍断層画像(SPd=|HPd)を生成するようにしてもよい。
【0030】
このホログラフィック断層画像生成方法において、断層ホログラム(H)を用いて、特定の再生面(z=z)から、異なる波長(λ,j=1,・・,N)を有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列の周期(Δz)の倍数だけ離れた超周期再生面(z=z+kΔz、kは整数)における超周期ホログラム(HPk)を求め、その超周期ホログラム(HPk)を用いて、超周期断層画像(SPk=|HPk)を生成するようにしてもよい。
【0031】
本発明のホログラフィック断層画像用のデータ取得方法によれば、光学系の機械的な走査を行うことなく波長掃引のみによって3種類のホログラムを各波長について取得するだけで断層画像用のデータを取得することができるので、より高速に短時間でデータを取得して記録できる。本発明のホログラフィック断層画像生成方法によれば、波長掃引される照明光Qと参照光R,Lとを用い取得されたホログラムを用いて断層画像を生成するので、光学系の機械的な走査が不要であり、また、物体光Oと照明光Qの両方のホログラムを用いるので、断層面において断層面以外からの物体光による擾乱を受けることなく断層を切り出してS/N比の大きな断層画像を生成でき、それらの集合によって3次元体積画像を生成できる。本発明のホログラフィック断層顕微鏡によれば、球面波参照光R,Lを用いるので、結像レンズを用いることなく正確に無歪の断層画像を生成でき、また、機械的な走査が不要であるので、高速に撮像データを取得し記録できる。従って、本断層顕微鏡によれば、低エネルギー照明の下で生きた生体組織の高速連続断層撮像が可能になり、装置の低価格化と小型化を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るホログラフィック断層画像生成方法を示すフローチャート。
【図2】同断層画像生成方法の実施時にオフアクシス球面波参照光Rのデータをインライン球面波参照光Lによって取得する装置の模式的構成図。
【図3】同断層画像生成方法の実施時に照明光Qのデータをオフアクシス球面波参照光Rによって取得する装置の模式的構成図。
【図4】同断層画像生成方法の実施時に物体光Oのデータをオフアクシス球面波参照光Rによって取得する装置の一例を示す模式的構成図。
【図5】図2の要部詳細図。
【図6】図3の要部詳細図。
【図7】図4の要部詳細図。
【図8】同断層画像生成方法で用いる異波長光の重ね合わせを説明する概念図。
【図9】異波長光の重ね合わせによって発生するパルス列を説明する概念図。
【図10】同断層画像生成方法における高分解能化処理のフローチャート。
【図11】(a)はホログラムの部分図、(b)は同ホログラムにおける空間サンプリング間隔を増やす様子を示すホログラムの部分図。
【図12】(a)はホログラムの概念図、(b)は同ホログラムを分割して重ね合わせた概念図、(c)は(b)のホログラムを合成したホログラムの概念図。
【図13】(a)は単一の再生用ホログラムと再生像の概念図、(b)は複数の再生用ホログラムと再生された複数の像とを示す概念図。
【図14】同断層画像生成方法における高速化処理のフローチャート。
【図15】本発明の一実施形態に係るホログラフィック断層画像用のデータ取得方法を示すフローチャート。
【図16】同データ取得方法の変形例を示すフローチャート。
【図17】同データ取得方法を光路によって説明する模式図。
【図18】同データ取得方法の他の変形例を光路によって説明する模式図。
【図19】他の実施形態に係るホログラフィック断層画像生成方法を示すフローチャート。
【図20】同断層画像生成方法の変形例を示すフローチャート。
【図21】同断層画像生成方法の他の変形例を示すフローチャート。
【図22】本発明の一実施形態に係るホログラフィック断層顕微鏡を示すブロック構成図。
【図23】同断層顕微鏡を用いて照明光の波長を変えて取得したUSAFテストターゲットの複数枚のホログラムのうちの1枚のホログラムの画像を示す図。
【図24】(a)(b)(c)は、図23に示したホログラムと共に取得された複数枚のホログラムを用いて、それぞれ再生位置を変えて再生した断層画像を示す図。
【図25】再生光の平均光強度の測定値および理論値のターゲット面位置からの距離依存性を示す図。
【図26】図24(c)の画像とその部分拡大画像を示す図。
【図27】(a)(b)(c)は、それぞれ図24(a)(b)(c)に示した断層画像の再生位置において、図23に示した1枚のホログラムから比較例として再生した画像を示す図。
【図28】(a)は同断層顕微鏡を用いて断層画像を取得する対象物の断面構成図、(b)は(a)の断面構成を説明する断面分解図。
【図29】(a)(b)(c)は、同断層顕微鏡を用いて照明光の波長を変えて図28(a)(b)に示した対象物の複数枚のホログラムを取得し、それぞれ再生位置を変えて再生した断層画像を示す図。
【図30】(a)(b)(c)は、それぞれ図29(a)(b)(c)に示した断層画像の再生位置において、1枚のホログラムから比較例として再生した画像を示す図。
【図31】(a)(b)は同断層顕微鏡を用いて、それぞれ再生位置を変えて取得したタマネギ鱗葉の断層画像を示す図。
【図32】(a)(b)は図31(b)からさらに、それぞれ再生位置を変えて取得したタマネギ鱗葉の断層画像を示す図。
【図33】(a)(b)は図32(b)からさらに、それぞれ再生位置を変えて取得したタマネギ鱗葉の断層画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係るホログラフィック断層画像生成方法、ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法、およびホログラフィック断層顕微鏡について、図面を参照して説明する。

【0034】
(ホログラフィック断層画像生成方法)
図1乃至図12は、ホログラフィック断層画像生成方法を示す。ホログラフィック断層画像生成方法は、図1に示すように、データ取得工程(S1)と、その後のデータ処理によって断層画像を生成する断層画像生成工程(S2乃至S7)とを備えている。データ取得工程(S1)では、照明光Q、オフアクシス球面波参照光R、およびインライン球面波参照光Lの波長を変えた各波長λ,j=1,・・,Nのコヒーレントな光Q,R,L,j=1,・・,Nを用いる。これらの波長掃引光によって生成される光の干渉縞が、ホログラムIOR,IQR,ILRとして、各波長λ毎に取得される。各波長λは、一定周波数間隔で変えてもよく、一定波長間隔で変えてもよく、また、任意間隔で変えてもよい。

【0035】
ホログラムIORは、照明光Qにより半透明物体を照明し、その半透明物体から放たれる物体光Oを、オフアクシス球面波参照光Rを用いて記録したオフアクシスホログラムである。半透明物体における半透明とは、照明光Qに対して半透明ということであり、この半透明性により、物体内部の断層情報が得られる。ホログラムIQRは、照明光Qをオフアクシス球面波参照光Rを用いて記録したオフアクシスホログラムである。ホログラムILRは、オフアクシス球面波参照光Rをインライン球面波参照光Lを用いて記録したオフアクシスホログラムである。これらのホログラムIOR,IQR,ILRは、オフアクシス球面波参照光Rおよびインライン球面波参照光Lという球面波の参照光を用いるものであり、このことから、これらのホログラムは大開口数(大NA数)のホログラムとなる。そして、これらの大開口数ホログラムIOR,IQR,ILRから、下記の如く、大開口数複素振幅インラインホログラムJOL,JQLが得られる。

【0036】
断層画像生成工程(S2乃至S7)は、波長掃引ループLPs-LPeにおいて各波長λについて一連の処理を行う工程(S2乃至S5)と、波長掃引ループで得られた結果を統合して断層画像を生成する工程(S6,S7)とを備えている。波長掃引ループLPs-LPeは、フィルタリング工程(S2)、インライン化変調工程(S3)、光波計算工程(S4)、位相調整工程(S5)を備えている。フィルタリング工程(S2)では、ホログラムIOR,IQR,ILRに空間周波数フィルタリングを適用して、それぞれ、物体光Oを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJOR、照明光Qを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJQR、およびオフアクシス球面波参照光Rを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJLR、を生成する。インライン化変調工程(S3)では、フィルタリング工程によって生成された各複素振幅オフアクシスホログラムJOR,JQRのデータを、同じくフィルタリング工程によって生成された複素振幅オフアクシスホログラムJLRのデータでそれぞれ除算することにより、参照光R成分を除去した複素振幅インラインホログラムJOL,JQLを生成する。

【0037】
光波計算工程(S4)では、特定の再生面z=zにおいて、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLの各々から、物体光Oの再生光波hと、照明光Qの再生光波cと、照明光の再生光波cに含まれる位相成分ξ=c/|c|とを求める。再生面z=zは、例えば、ホログラムを取得する際に用いられたCCDなどの受光素子の受光面に平行な面である。この場合、z軸は、その受光面に直交する軸として設定される受光面の光軸であり、z軸上の位置を特定することによって、z軸に直交する1つの平面を指定できる。また、z軸は、物体光Oを放つ物体の深さ方向に合理的に設定された光軸であり、断層画像は、このz軸に垂直な断層面について生成される。

【0038】
位相調整工程(S5)では、各波長の光毎に物体光の再生光波から位相成分を除去した位相調整再生光波h/ξを求める。位相調整再生光波h/ξを求める操作は、各波長λに対する再生光波hの位相を互いに規格化するものである。物体光Oは物体内部の各点で生じる反射光が重なり合った光であり、各反射光の位相は、その反射光が発生する位置において、その反射光を生成する照明光Qの位相と同じになる。言い換えると、物体内部の各点で生じる各物体光は、その物体光が発生する各位置において、各物体光を発生させる各照明光と同相である。そこで、この除算による位相調整の操作によって、再生面z=zにおいて、各波長の物体光の位相が0に調整される。

【0039】
光波総和工程(S6)では、位相調整再生光波h/ξを各波長λ,j=1,・・,Nについて加算して再生面z=zにおけるホログラムである断層ホログラムH=Σh/ξを求める。物体光Oを構成する反射光の位相は、その反射光が発生する位置において、物体光Oの位相と照明光Qの位相とは一致しているので、光波総和工程(S6)の加算により、断層内部で発生する物体光は加算されて強くなり、断層外部で発生する物体光は互いに打ち消されて弱くなる。個数Nの物体光Oを再生面で加算することにより、物体光の振幅がN倍になり、再生される断層画像の光強度はN倍になる。また、概念的に表現すれば、再生面以外の物体光はN分の1になる。従って、S/N比(ノイズに対する信号の割合)に優れた断層画像を生成することができるので、焦点の合った鮮明な断層画像を生成でき、断層外部の物体光に埋もれた断層内部の弱い光であっても再生することができる。

【0040】
光強度計算工程(S7)では、断層ホログラムHから、再生面z=zにおける断層画像S=|Hが生成される。断層画像Sは、モニタ画面に画像として表示することができる。再生面z=zは、通常、受光面(ホログラム面)に平行な面とされるので、ホログラム面に平行(光学的な意味で平行)な表面を有する半透明物体のその表面を照明光Qで照明した場合に、半透明物体の表面に平行な断層画像が得られる。ここで、2面が光学的な意味で平行とは、その2面がいずれも光軸に対して直交するという意味であり、途中に鏡が存在することなどにより、実空間で2面が平行とは限らない。

【0041】
再生面z=zの位置を変えて上述の光波計算工程(S4)以降の工程を繰り返すことにより、半透明物体中の光軸に垂直な任意の再生面における断層画像Sが得られる。そこで、再生面z=zを複数設定し、それらの各再生面z=z,P=1,・・,mについて断層画像S,P=1,・・,mを生成し、それらの集合を3次元空間の各点において焦点の合った3次元体積画像V={S,P=1,・・,m}として記録することができる。3次元体積画像Vを再生できるデータとして、断層ホログラムHの集合による3次元体積データVh={H,P=1,・・,m}を記録してもよい。なお、受光面(ホログラム面)に平行でない再生面においても、同様に、焦点の合った断層画像Sを得ることもできる。上述の位相調整工程(S5)と、この光波総和工程(S6)とは、波長掃引光とディジタルホログラフィとを用いて、機械的な走査をすることなく、半透明物体中の特定の再生面における物体光の再生を可能とするための、重要な処理である(図8、図9参照)。以下では、上記の各工程を詳述する。

【0042】
(データ取得工程S1)
データ取得工程(S1)は、図2、図3、図4に示すデータ取得装置10を用いて実行される。オフアクシスホログラムILRは、図2に示すデータ取得装置10を用いて取得される。データ取得装置10は、コヒーレント光を放射する光源2と、光の伝搬を行う光学系3と、光強度を検出して電気信号を出力する受光素子4と、受光素子4からの信号をホログラムIOR,IQR,ILRとして記録する記録部5と、を備えている。光源2は、光波長掃引レーザである。光学系3は、2つの球面波参照光R,Lを生成するために、光源2からのレーザ光を、直進光と、これに直交する方向に向きを変えた光(90°偏向光)との2つに分けるビームスプリッタBSを備えている。直進光の光路上には、レーザ光のビーム径を広げる2つのレンズ31,32、および拡径したレーザ光を球面波参照光Rに変換する集光レンズ33を備えている。集光レンズ33の前方正面には、受光素子4が配置されている。集光レンズ33からの光は、z軸から光軸を傾けたオフアクシス球面波参照光Rとして、広がりながら受光素子4に入射する。

【0043】
ビームスプリッタBSで90°偏向された光の光路上には、90°反射鏡M1、拡径用のレンズ34,34、90°反射鏡M2、拡径したレーザ光を球面波参照光Lに変換する集光レンズ36、および90°偏向用のハーフミラーHMとを備えている。集光レンズ36からの光は、ハーフミラーHMによって反射した後、z軸に対する光軸の傾きのないインライン球面波参照光Lとして、広がりながら受光素子4に入射する。なお、参照光Rは、ハーフミラーHMを通過して受光素子4に入射する。受光素子4に入射した球面波参照光R,Lは、互いに干渉して受光素子4の受光面に干渉縞を生成する。受光素子4は、その干渉縞の光強度に応じた電気信号を出力し、記録部5が、その出力を、オフアクシスホログラムILRとして記録する。ホログラムILRは、オフアクシス球面波参照光Rをインライン球面波参照光Lによって記録するホログラムである。

【0044】
照明光QのオフアクシスホログラムIQRは、図3に示すデータ取得装置10を用いて取得される。データ取得装置10は、図2に示した光学系3の構成において、インライン球面波参照光Lを伝搬させる構成に替えて、照明光Qを伝搬させる構成としたものである。オフアクシス球面波参照光Rの光学系は上記と同じである。ビームスプリッタBSで90°偏向された光の光路上には、90°反射鏡M3、拡径用のレンズ37,38、90°反射鏡M4、拡径したレーザ光のビームスポットを絞るためのレンズ39、カバーガラス61、および90°偏向用のハーフミラーHMとを備えている。カバーガラス61を通過した先には断層撮像のターゲットである半透明物体6の存在が想定されている。カバーガラス61に入射する光は、照明光Qを構成する。カバーガラス61の表面で後方に反射した光は、照明光Qを記録するための光として、90°偏向用のハーフミラーHMで反射した後、受光素子4に入射する。受光素子4に入射する光(照明光Q)は、オフアクシス球面波参照光Rと干渉して受光素子4の受光面に干渉縞を生成する。その干渉縞は、照明光Qを記録するオフアクシスホログラムIQRとして記録部5に記録される。レンズ39は、半透明物体6に入射する照明光Qのビームスポットの大きさを調整するためのものである。照明光Qは、半透明物体6における注目部位を照明して物体光Oを発生させることができる光として構成されていればよく、収束光に限らず発散光でもよい。また、照明光Qの情報だけを取得する場合には、カバーガラス61に替えて、反射鏡を用いることができる。

【0045】
物体光OのオフアクシスホログラムIORは、図4に示すデータ取得装置10を用いて取得される。この図4のデータ取得装置10は、図3に示した光学系3の構成において、カバーガラス61の背後に半透明物体6を配置した構成になっている。カバーガラス61を透過して半透明物体6に達した照明光Qが、半透明物体6の表面や内部で反射(後方散乱)する光が物体光Oとなる。物体光Oは、半透明物体6における個々の反射点から放たれ、カバーガラス61を透過し、ハーフミラーHMで反射されて受光素子4に入射する。受光素子4に入射した物体光Oは、オフアクシス球面波参照光Rと干渉して受光素子4の受光面に干渉縞を生成し、オフアクシスホログラムIORとして記録される。

【0046】
図5、図6、図7は、それぞれ、図2、図3、図4におけるハーフミラーHMと受光素子4の周辺の光伝搬の様子を示す。図5に示すように、球面波参照光Rは受光素子4に対して、光軸を傾けたオフアクシス配置とされており、球面波参照光Lは受光素子4に対して光軸を合わせたインライン配置とされている。図6に示す照明光Qのホログラムの取得は、図7における物体光Oのホログラムの取得と同時に行うことができる。照明光QのホログラムIQRは、半透明物体6において物体光Oが発生する位置に到達する照明光Qの情報を取得することを目的としている。このような照明光Qの情報は、物体光Oから断層画像を生成するために使用される。すなわち、断層画像の作成には、物体光Oの情報だけでなく、物体光Oが発生する位置(断層画像を作成する位置)での照明光Qの位相を用いるので、その位相のデータが必要になる。

【0047】
半透明物体6の表面における凹凸は、光を乱反射させるので、物体光Oの正確な測定に対する阻害要因となる。断層画像を生成するには、媒質中の物体光だけでなく照明光の位相も正確に再生する必要があるが、物体表面に凹凸がある場合、平面波展開を用いて物体光や照明光を再生すると凹凸に起因した誤差が生じ、正確な光波面再生ができなくなる。そこで、照明光Qや物体光Oを正確に記録し、再生するために、図6、図7に示すカバーガラス61の平面が効果的に用いられる。この平面の平坦度は、その表面の凹凸変化が照明光Qの波長λ程度以下であればよい。これを言い換えれば、光の伝搬解析ができる照明光Qと物体光Oが得られる平坦度が必要である。照明光Qの情報と物体光Oの情報を別々のホログラムに記録する場合、カバーガラス61に替えて、例えば、エレクトロクロミズムの原理に基づく調光ミラーデバイスを用いることができる。これにより、カバーガラス61や半透明物体6の配置を操作することなく、調光ミラーデバイスによる反射と透光とを電気的に切り替えて、照明光Qの反射光だけを、物体光Oと分離して効率的に記録することができる。また、後述の偏光と偏光板を用いる方法(図17参照)と組み合わせて、物体光Oを、照明光Qと分離して効率的に記録することができる。

【0048】
カバーガラス61の平面は、半透明物体6の内部と外界との境界を平面に保つことができる。また、図7に示すように、カバーガラス61と半透明物体6との間に、液体やゼリー状の半透明物質62を充填することにより、例えば、磨りガラスを水で濡らすときのように、半透明物体6の表面の凹凸の問題を解消することができる。すなわち、半透明物体6における自由空間との境界に半透明物質62によって平面境界を構成し、照明光Qと物体光Oをそのような平面境界を通過させてホログラムを取得する。この場合、半透明物質62の屈折率は、半透明物体6の表面の屈折率に合わせるのが好ましい。また、カバーガラス61の上面には、例えば、光を通さない金属蒸着膜層などによって形成した、ピンホールマスク63を設けることが好ましい。マスク63の開口は、例えば、照明光Qを通過させる大きさに制限する。マスク63により、半透明物体6の内部で発生する多重反射光などの擾乱光(バックグラウンド光)が受光素子4に入射するのを防止することができ、高品質のホログラムを取得できる。

【0049】
(断層画像生成工程の詳細)
以下では、ホログラムの処理等について、数式表現を用いて説明する。各式中の係数、引数、添え字などは、一般的な表現と意味に解釈される。また、以下の各式において、位置座標(x,y)の明示、各波長λ,j=1,・・,Nを区別する添え字jなどは、適宜省略される。ホログラムの取得には、参照光R,L、物体光O、照明光Qなどが関与する。そこで、受光素子4の受光面における位置座標(x,y)を用いて、参照光R(x,y,t),L(x,y,t)、物体光O(x,y,t)、および照明光Q(x,y,t)を、それぞれ一般的な形で、下式(1)~(4)のように表す。これらの光は、互いにコヒーレントな角周波数ωの光である。受光素子4の表面における干渉縞の光強度ILR(x、y),IOR(x、y),IQR(x、y)は下式(5)(6)(7)となり、これらがホログラムとして記録される。

【0050】
【数1】
JP2014054776A1_000003t.gif

【0051】
(フィルタリング工程S2)
上式(5)(6)(7)に空間周波数フィルタリングを適用して各式の右辺第3項のみを取り出す。空間周波数フィルタリングは、上式(5)(6)(7)を空間周波数空間における表現にするフーリエ変換と、バンドパスフィルタによるフィルタリングと、その後の、逆フーリエ変換とによって行われる。この工程により、参照光Rを記録した複素振幅ホログラムJLR、物体光Oを記録した複素振幅ホログラムJOR、および照明光Qを記録した複素振幅ホログラムJQRが、下式(8)(9)(10)に得られる。参照光R,Lとして球面波を用いると、空間周波数空間において、光強度成分および共役像成分から、直接像成分を分離することが、特に容易となる。なお、受光素子4における画素が画素ピッチdで2次元配列されているとすると、受光素子4を用いて記録可能なホログラムの最大空間周波数は、f=1/dとなる。

【0052】
【数2】
JP2014054776A1_000004t.gif

【0053】
(インライン化変調工程S3)
得られたJLRによってJOR,JQRを割ると、式(9)(10)から参照光Rの振幅Rと位相φとを取り除くことができる。この除算処理により、像再生に用いる物体光Oの複素振幅ホログラムJOL、および照明光Qの複素振幅ホログラムJQLが、下式(11)(12)に得られる。この割り算の処理は、空間ヘテロダイン変調の処理であり、かつ、強度に対する処理でもあり、複素振幅ホログラムJOR,JQRから、参照光Rの成分(強度と位相の両方)を除去する処理である。

【0054】
【数3】
JP2014054776A1_000005t.gif

【0055】
上式(1)(2)において、参照光Rをオフアクシス球面波参照光R、参照光Lをインライン球面波参照光Lとすると、オフアクシスホログラムILR、オフアクシスホログラムIOR,IQRが得られ、これらから、それぞれ、インラインホログラムJOL,JQLが得られる。この場合のホログラムは、参照光R,Lが球面波であることから、大開口数を有する。すなわち、上記の除算処理により、像再生に用いる物体光Oの大開口数複素振幅インラインホログラムJOL、および照明光Qの大開口数複素振幅インラインホログラムJQLが得られる。以下では、当面、このようなオフアクシス球面波参照光Rとインライン球面波参照光Lとを用いる場合について述べる。その後に、一般化した場合についても述べられる(図15、図16、図19等)。

【0056】
(光波計算工程S4)
光波計算工程(S4)では、まず、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLに対し、インライン球面波参照光Lの位相φを用いて空間ヘテロダイン変調を行う。インライン球面波参照光Lの受光素子4の受光面における位相φ(x,y)は、光が球面波であることを用いて容易に関数式の形に求めることができる。位相φを用いる空間ヘテロダイン変調は、上式(11)(12)に、exp(iφ(x,y))を乗じることで実施される。この空間ヘテロダイン変調の結果、下式(13)(14)に示す物体光Oの複素振幅インラインホログラムg(x,y)、および照明光Qの複素振幅インラインホログラムb(x,y)が得られる。球面波の位相φ(x,y)が数学的に正確に求められるので、得られるホログラムg(x,y),b(x,y)も数学的に正確なものとなる。

【0057】
【数4】
JP2014054776A1_000006t.gif

【0058】
この複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、受光素子4の受光面における物体光Oの波面、すなわち、受光面の法線方向にとられたz軸における受光面の位置をz=0としたときのz=0における物体光の光波分布を表す。同様に、複素振幅インラインホログラムb(x,y)は、受光素子4の受光面における照明光Qの光波分布を表す。球面波参照光R,Lを用いて大開口数でホログラムを記録することにより、非球面波参照光を用いる場合よりも、空間周波数帯域を狭くすることができる。開口数が大きくなればなるほど、物体光や照明光を表すホログラムg(x,y),b(x,y)の空間周波数帯域は広くなる。ホログラムg(x,y),b(x,y)の空間変化は、凸レンズによるニュートンリングのごとく、ホログラム中心から離れるにつれて大きくなりホログラムの端で最大になる。ホログラムの開口数NAおよび光波長λを用いると、ホログラムg(x,y),b(x,y)の最大空間周波数はNA/λで表される。

【0059】
(平面波展開)
z軸上の任意位置での波面は、以下に示す平面波展開法によって、受光面上のホログラムg(x,y),b(x,y)から再生することができる。平面波展開法は、各複素振幅インラインホログラムg,bをフーリエ変換した結果である変換関数G,Bを求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数G,Bを用いて物体光O、および照明光Qを、平面波の重ね合わせによって再生する方法である。電磁波に関するヘルムホルツ方程式の厳密解として球面波と平面波がある。この厳密解である平面波を用いて物体光Oや照明光Qを記録したホログラムを展開すると、それらの光の正確な光波面を再生できる。そこで、まず、上式(13)(14)のg(x,y),b(x,y)をフーリエ変換して、z=0における変換関数G,Bを、下式(15)(16)のように求める。この変換関数G,Bは、それぞれ、物体光Oおよび照明光Qの空間周波数スペクトルである。

【0060】
【数5】
JP2014054776A1_000007t.gif

【0061】
次に、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および上記の変換関数G,Bを用いて、下式(17)(18)に示すように、z=zにおけるxy平面上の物体光Oと照明光Qの光波h(x,y),c(x,y)を再生する。これらの再生光波、例えば、光波h(x,y)は、物体光Oの空間周波数スペクトルである変換関数Gの重み付けによって平面波を重ね合わせることにより求められる。光波c(x,y)についても同様である。zは任意の値とすることができる。ここで、(u,v,w)におけるu,vはそれぞれx,y方向の空間周波数である。また、z方向の空間周波数wは、下式(19)に示すように、平面波の分散式から求められる。式(19)におけるλは光波長であり、nは、半透明物体6中の光路を含む光路における光の屈折率である。

【0062】
【数6】
JP2014054776A1_000008t.gif

【0063】
式(17)の光波h(x,y)は、受光素子4の受光面における境界条件g(x,y)を満たすヘルムホルツ方程式の厳密解である。光波c(x,y)についても同様である。ここで、光波c(x,y)の位相成分ξを、ξ=c/|c|によって求めておく。再生光波のうち、例えば、物体光Oの光波h(x,y)は、その絶対値の2乗|h(x,y)|によって求めた画素毎の光の強度を電子ディスプレイに表示することにより、無歪の画像を見ることができる。無歪の画像は、物体光Oと受光素子4との間に結像レンズを設けないことによって実現される。式(17)におけるz=zの値を変えることにより、記録された3次元画像中の任意の位置の画像を表示することができる。

【0064】
(位相調整工程S5)
この工程は、断層画像を生成するための重要な工程である。位相調整工程(S5)は、物体光Oの光波h(x,y)から、照明光Qの光波c(x,y)の位相成分を除去する工程である。位相成分の除去は、光波h(x,y)を位相成分ξによって除算して、位相調整再生光波h/ξ、すなわち、h/(c/|c|)を求めることで実施される。上述の各工程(S1乃至S5)の処理は、各波長λ,j=1,・・,Nの光について行われる。このことを明示して位相調整再生光波h/ξを表示すると、h/ξ,j=1,・・,Nとなる。

【0065】
物体光Oの再生光波hを求める際に、屈折率の空間変化による光収差を補正するように構成した位相シフト関数exp(iχ(x,y))を用いるようにしてもよい。例えば、断層画像撮像の対象である半透明物体6の事前の測定、撮像条件、蓄積された情報等に基づいて、補正用の関数χ(x,y)を求めておき、位相シフト関数exp(iχ(x,y))を再生光波hに乗算すればよい。必要ならば、照明光Qの反射光に基づく再生光波cについても、同様の補正を行うことができる。また、物体光の再生光波hと照明光の再生光波cとをそれぞれ求める際に、半透明物体6中の光路を含む全光路における平均的な光の分散特性に基づいて、それぞれ色収差を補正するようにしてもよい。このような分散特性は、半透明物体6の事前の測定、撮像条件、蓄積された情報等に基づいて求めることができ、この色収差の補正により、画像品質を、より高めることができる。

【0066】
(光波総和工程S6と光強度計算工程S7)
これらの工程において、再生面z=zにおけるホログラムである断層ホログラムHおよび断層画像Sが、下式(20)(21)のように生成される。位相成分ξによる位相調整を経て再生面上の画像のみを切り出すことができるので、他の位置からの物体光による擾乱のない、高画質の断層画像を得ることができる。また、座標zを変えながら作成した断層画像を蓄積すると、3次元体積画像V={S(x,y,z),P=1,・・,m}のデータや3次元体積データVh={H,P=1,・・,m}を得ることができ、これらの体積画像データを使って任意位置や任意方向の断層画像を作成することができる。

【0067】
【数7】
JP2014054776A1_000009t.gif

【0068】
(光波の重ね合わせについて)
ここで、図8、図9を参照して、各波長λ,j=1,・・,Nの光波の重ね合わせ(合成)について説明する。図8に示すように周波数掃引間隔(分割幅)δfで互いに周波数値が異なる有限個(N個)のz方向に伝搬する光波を重ねる。空間周波数帯域幅Δfは、最大波長λmaxと最小波長λminとを用いてΔf=(1/λmin-1/λmax)=(N-1)δfとなる。最大波長λmaxを対応する最小空間周波数fmin=1/λmaxで表わす。ここで、重ね合わせる光波として物質中で照明光の反射波として発生する物体光を考える。すなわち、照明光の周波数を、周波数fminから掃引間隔δfずつ増加させながら、N回、物体光の波面を記録して重ね合わせたとする。有限個の物体光を合成した合成波の強度分布は、図9に示すように、パルス間隔Δz=1/(2δf)、パルス幅δz=Δz/Nのパルス列となる。空間周波数帯域幅Δfが狭い場合は、周波数掃引と波長掃引とが、互いに近似的に線形関係になる。

【0069】
この物体光の合成波を数式で説明するために、各波長の物体光を定式化する。一般に、z軸方向の空間周波数fの照明光を位置zの物体と位置zの物体とに照射して反射による物体光が発生したとき、z軸と反対の方向に反射する2つの物体光の位相差は4πf(z-z)になる。一方、照明光と反射光とは、物体光の発生位置で同位相になる。従って、位置zの物体からの反射光と照明光の位相差は位置zにおいて4πf(z-z)となる。物体光が反射光であることにより、その位相変化量は2πf(z-z)の2倍になる。物体光は照明光を用いて位相調整した後の位置zの物体中からの反射光と仮定し、また、物体光の発生効率と振幅が一定であると仮定する。すると、合成される各反射光は、下式(22)のように定式化される。下式(22)の物体光を重ね合わせた合成波は、等比級数の和の公式を用いて和を求めて変形すると、下式(23)で与えられる。下式(24)(25)は、式(23)の右辺の2項を分離したものであり、それぞれ、振幅と位相を表す。下式(26)(27)は、それぞれパルス間隔(周期)Δz、パルス幅δzを表す。

【0070】
【数8】
JP2014054776A1_000010t.gif

【0071】
上式(24)はディリクレ核と呼ばれる関数であり、この関数の2乗のグラフは、図9に示すように、パルス列を表し、Nを大きくとれば周期的なデルタ関数、くし形関数に近づく。図9は、N=20の場合の例である。上式(25)の位相の式において、{fmin+Δf/2}(これをfcとする)は、掃引周波数の中央値である。従って、上式(23)で表される合成波のホログラムである断層ホログラムHから得られる物体光の位相分布は、この周波数fcを中央値として持つパルス波の光を用いて記録した物体光の位相分布と等しくなる。言い換えれば、断層ホログラムHは、照明光と参照光が周波数の中央値としてfcを有するパルス光であり、かつ、そのパルス光のパルス幅(またはコヒーレント長)が2δzであるという光を用いて記録したホログラムと同等である。この特徴に関して、さらに後述する(図20、図21参照)。

【0072】
上式(26)のパルス間隔Δzは、上式(24)の2乗の関数の周期である。上式(27)のパルス幅δzは、通常行われるように、上式(24)の2乗の関数が最大値をとる点と最初に最小値をとる点の間隔として求めている。パルス幅δzは、断層画像として表される断層の厚さに対応しており、深さ方向に試料(半透明物体6)の構造を分離できるz方向分解能(縦分解能)を表す指標となる。断層画像は、深さ方向にパルス間隔Δzだけ離れた位置z=z+kΔz(kは整数)に周期的に現れる。従って、ある深さの断層画像を周期的に現れるその他の深さの断層画像と完全に分離して観察する場合には、試料の厚さをパルス間隔Δz未満にすればよい。

【0073】
図9について、さらに説明する。パルス(光強度のピーク)は、各波長の光の位相が揃った位置に発生する。逆に、任意の位置で、位相を揃えることにより、その位置にパルスを発生させることができる。位相を揃えてパルスを発生させることは、そのパルスの位置以外の光強度を抑制することを意味する。そこで、この原理に基づいて、z軸上の任意の位置zにおいて断層ホログラムHが求められる。位相を合わせる手段として、物体光Oが発生する位置における照明光Qの位相情報が用いられる。これにより、他の位置で発生した物体光による擾乱を除くことができる。位置zからパルス間隔Δzずつ離れた位置に、他のパルスが現れるが、それらのパルス位置における像は焦点の合っていないぼけた像となる。このような物体光の合成波の周期性の結果、パルス間隔Δz内で、パルス幅δzの間隔z(P+1)-z=δzで、断層ホログラムH(x,y,z),P=1,・・,mを取得すると、この場合m=Nであり、この1周期分の断層ホログラムHによって、記録されたホログラムに含まれる全空間の断層画像が得られる。

【0074】
さらに述べると、空間を伝搬する平面波パルスレーザ光または球面波パルスレーザ光は波長の異なる多数の平面波または球面波に展開できる。逆に、波長の異なる多数の平面波または球面波の重ね合わせによって空間伝搬するパルスレーザ光を合成することができる。そこで、上述のように、ある平面上で位相が同期した多種波長の光を重ね合わせると、その平面上で光強度がピークになるような周期的なパルス波が形成される。このようなピークを生成する操作により、特定の断層に注目した断層画像が得られる。パルスの空間周期であるパルス間隔ΔzはΔz=1/(2δf)であり、周波数掃引間隔(分割幅)δfが狭いほど広くなる。また、パルス幅δzは、δz=Δz/Nであり、異波長光波の数Nが多いほど、狭くなる。パルス幅δzは、半透明物体6の深さ方向における断層画像の厚さに相当すると考えることができる。厚さが薄いほど、深さ方向について高分解能となる。波長可変レーザ光を用いて多種波長のホログラムを記録することにより、多種波長再生光の計算機合成によってホログラムからパルス幅δzで切り取られた断層画像が再生される。

【0075】
上述したように、パルス波の分解と合成という相補的な考えに基づいて、例えば、パルス幅(コヒーレント長)が2δzのパルス光からなる参照光R,L、および照明光Qを用いて、反射光である物体光Oを取得することにより、縦方向の測定精度がδzの断層画像Sが得られる。測定精度がパルス幅2δzの半分になるのは、ある物体の長さを巻き尺で測定する場合、その物体の一端に巻き尺の端を固定し、その物体の他端まで行って折り返すことにより物体の2倍の長さを測定し、その測定値の半分を物体の長さとして求めると、測定精度は往復しない場合の2倍に向上することに例えられる。これは、2倍に拡大された物体の両端間の長さの測定値の半分を物体の長さとして求める場合と同じである。いずれにしても、物差しとしてのパルス光による測定精度がパルス幅2δzである場合、往復パルス光(行きは照明光Q、帰りは反射光O)による測定精度は2倍に向上してδzとなる。

【0076】
(画像の高分解能化)
図10、図11(a)(b)は画像の横方向の分解能の高分解能化、すなわち、断層画像の面内分解能の向上について示す。この高分解能化は、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLのサンプリング間隔を細分化して実質的にサンプル数を増やすことで実現される。上述した複素振幅インラインホログラムJOL,JQLは、球面波参照光R,Lを用いて、また、結像レンズを用いることなく求められている。従って、空間サンプリング間隔を細分化して光波長程度まで小さくするように画像を拡大しても歪みは発生しない。そこで、図10に示すように、この高分解能化の処理工程は、実質的に画素数を増やす画素数増大工程(S11)と、空間変調工程(S12)と、変換関数生成工程(S13)と、平面波展開工程(S14)と、を備えている。これらの工程(S11乃至S14)は、図1に示した光波計算工程(S4)に対する分解能についての改良版になっている。

【0077】
画素数増大工程(S11)では、図11(a)(b)に示すように、受光素子4の画素ピッチdに対応する空間サンプリング間隔dを有する複素振幅インラインホログラムJOL,JQLに対して、空間サンプリング間隔dを細分化して空間サンプリング間隔δとする。その後、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす。データ補間の方法として、画像処理における周知の3次式によるデータ補間やsinc関数によるデータ補間を用いることができる。データ補間としてsinc補間を用いれば、3次式を用いた補間に比べて数値計算に時間がかかるが、より正確な結果を得ることができる。複素振幅インラインホログラムJOL,JQLに対してデータ補間によって画素数を増やした結果を複素振幅インラインホログラムKOL,KQLと表すことにする。なお、受光素子4の画素ピッチdは、画素の配列方向(xy方向)で互いに異なってもよく、空間サンプリング間隔δも画素の配列方向で互いに異なるものとすることができる。

【0078】
空間変調工程(S12)では、複素振幅インラインホログラムKOL,KQLに対し、インライン球面波参照光Lの予め求めた位相φを用いて空間ヘテロダイン変調を行う。これにより、インライン球面波参照光L成分を除去してホログラム面(受光素子4の受光面、z=0)における複素振幅インラインホログラムg,bを生成する。

【0079】
変換関数生成工程(S13)では、複素振幅インラインホログラムg,bをフーリエ変換した結果である変換関数G,Bを求める。平面波展開工程(S14)では、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数G,Bを用いて物体光Oと照明光Qとを平面波展開し、再生光波h,cを生成する。これらの再生光波h,cを用いて再生される画像は、分解能がd/δ倍に高められた画像であり、歪みなしで倍率d/δ倍に拡大された像を得ることができる。画像の大きさ(絶対寸法)は、画素ピッチdを物差しとして計測される。

【0080】
(画像再生の高速化)
図12(a)(b)(c)、図13(a)(b)、図14は、断層画像生成方法において計算量を削減できる高速化処理について示す。上述のように、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLから高分解能な再生光を再生することができるので、平面波展開を用いて高分解能画像を再生するために、空間サンプリング間隔を光波長程度まで狭くする。このとき、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、妥当な計算時間のもとで数値計算が可能となる範囲に、サンプリングデータ数を抑える必要がある。逆に、計算時間の短縮が図られるならば、サンプリングデータ数をさらに増加させることができ、より高分解能で無歪画像を再生することができる。ところで、互いに周波数帯域の異なるデータは、波の重ね合わせの原理によると、互いに足し合わせた状態で計算処理をすることができる。すなわち、異なる周波数帯域に記録されたそれぞれの情報は空間的に重ねても失われずに保存され、このことを利用することにより、周波数帯域の広いホログラムを重ねて広帯域でコンパクトな「微小ホログラム」を作成することができる。また、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLや複素振幅インラインホログラムg(x,y),b(x,y)は、これらを分割しても、その分割した各領域に画像を再生するための情報を保持している。

【0081】
そこで、図12(a)に示すように、例えば、物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を幅Δ,Δ’の数枚の微小ホログラムgに分割し、図12(b)(c)に示すように、各微小ホログラムgを互いに重ね合わせて合成微小ホログラムΣを生成する。この合成微小ホログラムΣに対して、上述の式(15)(17)(19)に基づく計算を行えば、計算時間の短縮が図られる。図13(a)は、幅Dの物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を幅Δの微小ホログラムg1,g2,g3に分割する様子を示す。この物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、1枚で再生像60を再生する。このような物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を、図13(b)に示すように、幅Δだけずらしながら重ねたホログラムは、幅Δの周期を有する周期的なホログラムになり、多数の同じ再生像60を幅Δの間隔ごとに再生することができる。計算点数は、重ね合わせた微小ホログラムgの枚数の逆数分に圧縮される。つまり、n枚重ねると、計算量は、1/nになる。照明光複素振幅インラインホログラムb(x,y)についても同様である。

【0082】
図14に示す分割工程(S21)、合成工程(S22)、変換関数生成工程(S23)の全体は、図10に示した変換関数生成工程(S13)に対する計算速度についての改良版である。分割工程(S21)では、物体光複素振幅インラインホログラムgを分割して複数の微小ホログラムg,i=1,・・,nを生成し、照明光複素振幅インラインホログラム(b)を分割して複数の微小ホログラムb,i=1,・・,nを生成する。合成工程(S22)では、微小ホログラムg,i=1,・・,nを互いに重ねて合成した合成微小ホログラムΣを求め、微小ホログラムb,i=1,・・,nを互いに重ねて合成した合成微小ホログラムΠを求める。変換関数生成工程(S23)では、合成微小ホログラムΣ,Πをそれぞれフーリエ変換して変換関数G(u,v),B(u,v)を求める。フーリエ変換による変換関数G(u,v),B(u,v)を一度求めておけば、任意の距離z=zにおける光波h(x,y,z),c(x,y,z)は式(17)(18)より求められる。

【0083】
このような画像再生方法によると、FFTを用いた数値計算により、自由焦点画像を容易かつ精度良く、高速に再生することができる。微小ホログラムg,bの幅Δは、複素振幅インラインホログラムg(x,y),b(x,y),の大きさ(幅D)や形状とは無関係に再生画像の大きさに合わせて設定することができる。分割の幅Δが、再生画像の大きさより小さくなると、再生像が隣同士で重なって再生される。従って、例えば、被写体の寸法が0.5mmならば、幅Δは0.5mmよりは大きな寸法にする。

【0084】
(高分解能化と計算高速化の他の方法)
上記では、図10の画素数増大工程(S11)、空間変調工程(S12)の後に、図14の分割工程(S21)、合成工程(S22)、変換関数生成工程(S23)を実施する方法を示した。これらの実施順番はこれに限定されるものではなく、例えば、画素数増大工程を合成工程の後に実施するように変更することができる。すなわち、空間変調工程、分割工程、合成工程、画素数増大工程、変換関数生成工程の順番に実施して、(JOL,JQL)から順番に(g,b),(g,b),(Σ,Π),(KΣ,KΠ),(G,B)を生成するようにすることができる。ここで、(KΣ,KΠ)は、(Σ,Π)の画素数を実質的に増大したホログラムである。

【0085】
(ホログラフィック断層画像用のデータ取得方法)
図15乃至図18は、一実施形態に係るホログラフィック断層画像用のデータ取得方法を示す。図15に示すように、このデータ取得方法は、照明光Q、参照光R、およびインライン参照光Lの波長を変えた光Q,R,L,j=1,・・,Nを用いて、波長掃引ループLPs-LPeを実行する。波長掃引ループLPs-LPeの中で、各波長毎に、物体光のホログラムIORを記録する工程(#1)、照明光のホログラムIQRを記録する工程(#2)、参照光をオフアクシスホログラムILRに記録する工程(#3)を、実行する。工程(#1)では、照明光Qにより物体を照明し、その物体から放たれる物体光Oを参照光Rを用いてホログラムIORに記録する。工程(#2)では、参照光Rを用いて照明光QをホログラムIQRに記録する。工程(#3)では、インライン参照光Lを用いて参照光RをオフアクシスホログラムILRに記録する。各波長毎のホログラムIOR,IQR,ILR,j=1,・・,Nのデータがホログラフィック断層画像用として取得される。

【0086】
図16は、上述の図15に示したデータ取得方法の変形例を示す。この変形例によるデータ取得方法は、上述の工程(#1)と工程(#2)に替えて、これらの工程を同時に実行する工程(#12)を備えている。すなわち、工程(#12)では、物体の手前に透過鏡を配置し、透過鏡を通して照明光Qにより物体を照射し、透過鏡を透過した物体光Oと、透過鏡によって反射された照明光Qとが、1枚の共通ホログラムIOQRに同時に記録される。物体光OのホログラムIORのデータと照明光QのホログラムIQRのデータは、後処理によって共通ホログラムIOQRから互いに分離される。

【0087】
図17は、共通ホログラムIOQRを記録する際に、受光素子4が受光する物体光Oと照明光Qの両者の光強度を光の偏光を用いて調節することについて示す。半透明物体6から放たれる物体光Oは一般に広い指向性を持ち、また、発生効率が低いので、受光素子4に到達する物体光Oの強度は照明光Qに比べて小さくなる。透明度の高い試料を記録する場合には、物体の内部から反射して来る物体光Oはさらに弱くなる。このような弱い物体光Oを照明光Qと同時に記録するためには、受光素子4に到達する照明光Qを大幅に減衰させて物体光Oと同じ程度になるまで光強度を小さくする必要がある。

【0088】
そこで、照明光Qを方向Pqに偏光させ、参照光Rを方向Prに偏光させ、受光素子4に入射する照明光Qと参照光Rとを互いに直交する偏光状態とする。受光素子4の前方には、偏光板PPを配置する。共通ホログラムIOQRの記録は、物体光Oと照明光Qの反射光とを偏光板PPを透過させることによって照明光Qの反射光を減衰させた状態で行う。偏光板PPは方向Ppに偏光した光を透過させるものとすると、偏光板PPの配置した位置において、方向Ppと照明光Qの偏光の方向Pqとの角度を直角に近づけることにより、参照光Rは減衰させずに、照明光Qだけを大きく減衰させることができる。また、物体光Oは、その発生時にランダムな偏光状態になると考えられるので、偏光板PPの影響を受けないと考えられる。参照光Rは、本来、独立にその強度を調整できる。従って、参照光Rと物体光Oに対して照明光Qの強度を適切に調整した状態の光を、受光素子4に入射させることができる。このような偏光と偏光板PPとを用いるデータ取得方法により、物体光Oの光強度を保ちながら、受光素子4のダイナミックレンジを確保することができ、鮮明なホログラムを記録することができる。

【0089】
図18は、共通ホログラムIOQRを取得し、その共通ホログラムIOQRから物体光OのホログラムIORのデータと照明光QのホログラムIQRのデータとを分離して取得するデータ取得方法を示す。共通ホログラムIOQRは、例えば、カバーガラス61を半透明物体6の表面に配置し、カバーガラス61の奥方で集光する光を照明光Qとして用いて取得される。カバーガラス61は、透過鏡として用いられる。照明光Qは、z軸方向に伝搬し、一部はカバーガラス61の表面で反射して照明光Q’となり、残りの照明光Qは半透明物体6の内部に侵入し、カバーガラス61の表面位置z=zmから距離Fの位置z=zm+Fで集光し、その後、発散しながら物体6の内部を伝搬する。内部の照明光Qは、物体6の各位置で反射されて物体光Oとなる。図中の物体6中の2つの三角領域では、互いに逆向きに伝搬する照明光Qと物体光Oとが存在する。位置z=0に配置した受光素子に伝搬してきた照明光Q’と物体光Oとは、参照光との干渉によって、共通ホログラムIOQRとして記録される。

【0090】
共通ホログラムIOQRには、位置z=zm-Fで集光する反射による照明光Q’と、位置z=zm-Fで広く分散している物体光Oとが重なって記録されている。そこで、共通ホログラムIOQRから、位置z=zm-Fにおいて再生光を生成することにより、その再生光を点状に集まった照明光Q’とそれ以外の広がった物体光Oとに分離することができる。分離した照明光Q’と物体光Oとを用いて、照明光Q’のホログラムIQRのデータと物体光OのホログラムIORのデータとを取得できる。点状となった照明光Q’を位置z=zmまで伝搬させ、さらにカバーガラス61を通過させ、物体6中に伝搬させると、カバーガラス61の表面における反射による照明光Q’、および、物体6の内部に伝搬する照明光Qを計算できる。その表面の反射率をγとすると、照明光Qが、Q=Q’/γにより求まる。このようにして、照明光Q’のデータから、照明光Qの情報、すなわち、物体光Oが生成された位置における内部の照明光Qの情報が得られる。物体内部の照明光Qのデータは、物体光Oの位相調整に用いられる。

【0091】
(一般化したホログラフィック断層画像生成方法)
図19、図20、図21は、一般化したホログラフィック断層画像生成方法を示す。図19に示すように、入力工程(#100)において、所定のホログラムデータが与えられ、次の生成工程(#200)において、与えられたデータを用いて断層ホログラムHを求め、その断層ホログラムHを用いて特定の再生面z=zにおける断層画像S=|Hを生成する。工程(#100)では、互いにコヒーレントな照明光Q、および参照光Rの波長を変えた光Q,R,j=1,・・,Nを用いて、照明光Qにより物体を照明し、参照光Rを用いて記録した、物体から放たれる物体光OのホログラムIORと照明光QのホログラムIQRと、が各波長λ,j=1,・・,N毎に与えられる。

【0092】
工程(#200)では、物体光Oが発生する位置における物体光Oの位相と照明光Qの位相とが同じであることに基づいて、ホログラムIOR,IQR,λ,j=1,・・,Nを用いて、特定の再生面z=zにおける物体光O,j=1,・・,Nの加算によるホログラムである断層ホログラムHが求められる。この断層ホログラムHは、次の基本原理に基づく。物体光Oは、物体内部の各点で生じる反射光が重なり合った光であり、物体光Oを形成する各反射光の位相は、その反射光が発生する位置において、その反射光を生成する照明光Qと同位相になる。求められた断層ホログラムHを用いて、特定の再生面z=zにおける断層画像S=|Hが生成される。

【0093】
図20は、上述の図19に示した断層画像生成方法の変形例を示す。この断層画像生成方法は、断層ホログラムHを生成した工程(#200)の後に、断層ホログラムHを用いて、再生面z=zから離れた近傍位置における近傍ホログラムHPdを求めて近傍断層画像SPd=|HPdを生成する工程(#300)を実行する。近傍ホログラムHPdは、特定の再生面z=zから離れた、異なる波長λ,j=1,・・,Nを有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列のパルスの幅δz内の近傍再生面z=z+dz,dz<δzにおけるホログラムである。パルス幅δzについては、式(27)参照。

【0094】
断層ホログラムHは、上述の光波の重ね合わせの式(23)に関連して述べたように、照明光と参照光が掃引周波数の中央値fcの周波数を持つパルス光であり、かつ、そのパルス光のパルス幅(コヒーレント長)が2δzである、という光を用いて記録したホログラムと同等である。断層ホログラムHがこのような性質を有するホログラムであるので、断層ホログラムHを用いて、再生面z=zの前後におけるホログラムである近傍ホログラムHPdを導出できる。近傍ホログラムHPdは、上述の図1に示した波長掃引ループLPs-LPe(S2~S5)や光波総和工程S6を行うことなく、従って、位相調整工程S5を行うことなく、導出することができる。近傍ホログラムHPdの導出は、断層ホログラムHに、上述の式(15)(17)に示された平面波展開を適用することによって実現される。このようなホログラフィック断層画像生成方法によると、3次元体積データVh={H,P=1,・・,m}や3次元体積画像V={S(x,y,z),P=1,・・,m}のデータを補間した高密度のデータを、効率的に得ることができる。

【0095】
図21は、上述の図19に示した断層画像生成方法の他の変形例を示す。この断層画像生成方法は、断層ホログラムHを生成した工程(#200)の後に、断層ホログラムHを用いて、再生面z=zからパルス列の周期Δzの倍数だけ離れた超周期位置における超周期ホログラムHPkを求めて超周期断層画像SPk=|HPkを生成する工程(#400)を実行する。超周期ホログラムHPkは、特定の再生面z=zから、異なる波長λ,j=1,・・,Nを有する光波を重ね合わせたときに現れるパルス列の周期Δzの整数倍だけ離れた超周期再生面z=z+kΔz(kは整数)におけるホログラムである。周期(パルス間隔)Δzについては、式(26)参照。

【0096】
超周期ホログラムHPkは、上述の近傍ホログラムHPdの場合と同様に、位相調整工程S5や光波総和工程S6を行うことなく、断層ホログラムHに、上述の式(15)(17)に示された平面波展開を適用することによって、効率的に導出される。この断層画像生成方法は、半透明物体6の厚さが周期Δzより厚い場合の記録ホログラムに有効的に適用される。このようなホログラフィック断層画像生成方法によれば、断層ホログラムHから超周期ホログラムHPkを求めて、3次元体積データVh={H,P=1,・・,m}や3次元体積画像V={S(x,y,z),P=1,・・,m}のデータを周期外に補外した大域データを、効率的に得ることができる。なお、この超周期ホログラムHPkの導出は、上述の近傍ホログラムHPdの導出と組み合わせて実行することができる。このホログラフィック断層画像生成方法は、半透明物体だけでなく非透明物体についても適用できる。非透明物体の場合、照明光Qで照射された表面、すなわち外形の断層画像が得られる。

【0097】
(ホログラフィック断層顕微鏡)
図22は本発明の一実施形態に係るホログラフィック断層顕微鏡(以下、断層顕微鏡1という)を示す。断層顕微鏡1は、波長掃引光を用いて半透明物体6のホログラムを取得するデータ取得部10と、データ取得部10によって取得されたホログラムから断層画像を生成する断層画像生成部11と、を備えている。データ取得部10は、光源2と、光学系3と、受光素子4と、記録部5とを備えている。光源2は、コヒーレント光を放射する波長掃引型のレーザであり、波長を、例えば、一定周波数間隔で変えて、各波長λ,j=1,・・,Nの光を放射する。データ取得部10は、図2乃至図7に例示されている。

【0098】
光学系3は、光源2が放射する光から照明光Q、オフアクシス球面波参照光R、およびインライン球面波参照光Lを構成し、これらの光と照明光Qによって照明される半透明物体6から放たれる物体光Oとを伝搬させる。受光素子4は、光強度を電気信号に変換して記録部5に出力する。記録部5は、物体光Oとオフアクシス球面波参照光Rとの干渉縞IOR、照明光Qとオフアクシス球面波参照光Rとの干渉縞IQR、および、オフアクシス球面波参照光Rとインライン球面波参照光Lとの干渉縞ILRを、光源2が放射する各波長λ,j=1,・・,Nの光毎に、受光素子4を用いてホログラムIOR,IQR,ILR,j=1,・・,Nとして記録する。記録用のホログラムのデータは、データベースDT1に保存される。

【0099】
断層画像生成部11は、フィルタリング部11aと、インライン化変調部11bと、断層画像計算部11c(12)と、表示部11dと、を備えている。フィルタリング部11aは、記録部5によって記録されたホログラムIOR,IQR,ILRに空間周波数フィルタリングを適用して、それぞれ、物体光Oを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJOR、照明光Qを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJQR、およびオフアクシス球面波参照光Rを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJLR、を生成する。

【0100】
インライン化変調部11bは、フィルタリング部11aによって生成された各複素振幅オフアクシスホログラムJOR,JQRのデータを、フィルタリング部11aによって生成された複素振幅オフアクシスホログラムJLRのデータでそれぞれ除算することにより、参照光R成分を除去した複素振幅インラインホログラムJOL,JQLを生成する。断層画像計算部11c(12)は断層ホログラムHと断層画像Sを求める(下記に詳述)。表示部11dは、液晶表示装置などのFPDであり、画像を表示する。

【0101】
断層画像計算部11c(12)は、光波計算部12a(13)と、位相調整部12bと、光波総和部12cと、光強度計算部12dと、を備えている。光波計算部12a(13)は、特定の再生面z=zにおいて、変調部11bによって生成された複素振幅インラインホログラムJOL,JQLの各々から、物体光Oの再生光波hと、照明光Qの再生光波cと、照明光の再生光波cに含まれる位相成分ξ=c/|c|とを求める。

【0102】
位相調整部12bは、各波長の光毎に物体光の再生光波から位相成分を除去した位相調整再生光波h/ξを求める。光波総和部12cは、位相調整再生光波h/ξを各波長λ,j=1,・・,Nの光の全てについて加算して特定の再生面z=zにおけるホログラムである断層ホログラムH=Σh/ξを求める。光強度計算部12dは、断層ホログラムHから、再生面z=zにおける断層画像S=|Hを生成する。生成された断層画像Sは、それらの集合により3次元体積画像(V={S,P=1,・・,m})を構成し、3次元体積画像データとしてデータベースDT2に保存される。

【0103】
上述の光波計算部12a(13)は、画素数増大部13aと、空間変調部13bと、分割部13cと、合成部13dと、平面波展開部13eと、を備えている。画素数増大部13aは、複素振幅インラインホログラムJOL,JQLの空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす。空間変調部13bは、画素数増大部13aによって画素数を増やした複素振幅インラインホログラムJOL,JQLに対し、インライン球面波参照光Lの予め求めた位相φを用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波参照光L成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラムg,bを生成する。

【0104】
分割部13cは、物体光複素振幅インラインホログラムg,bを複数枚の微小ホログラムg,b,i=1,・・,nに分割する。合成部13dは、分割部13cによって得られた各微小ホログラムg,bを互いに重ね合わせて合成微小ホログラムΣ,Πを生成する。

【0105】
平面波展開部13eは、空間変調部13bが生成したホログラムg,bをフーリエ変換し、その結果である変換関数G,Bを求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数G,Bを用いて物体光Oと照明光Qとを平面波展開して、再生光波h,cを生成する。また、平面波展開部13eは、合成部13dによって生成された合成微小ホログラムΣ,Πをフーリエ変換することにより変換関数G,Bを求め、これを用いて上記同様に再生光波h,cを生成する。

【0106】
断層顕微鏡1は、さらに、データ取得部10および断層画像生成部11を制御する制御部14と、FFT等の計算用プログラム、制御用データ等を記憶するメモリ15とを備えている。断層画像生成部11とその各部は、表示部11dとデータベースDT2を除いて、コンピュータ上で動作するプログラムとそのサブルーティン群を含むソフトウエアを用いて構成されている。

【0107】
(実施例)
図23乃至図27はホログラフィック断層顕微鏡、ホログラフィック断層画像生成方法、およびホログラフィック断層画像用のデータ取得方法の実施例を示す。参照光R,Lの記録は、図2、図3、図5、図6に示した構成の装置を用いて行い、物体光Oの記録には、図4、図7に示した構成の装置を用いた。被写体となる半透明物体6として、空気中に配置したUSAFテストターゲットを用いた。USAFテストターゲットと受光素子4とは、それらの表面が光路上で互いに平行になるように配置されている。光源2にはLittman型波長可変レーザを用い、受光素子4にはCCDカメラ(有効画素数4872×3248pixel、画素ピッチ7.4μm)を用いた。開口数0.1のレンズ(レンズ39)を通過させた光ビーム(照明光Q)をUSAFテストターゲットに照射した。レーザ光源2の波長を755nmから785nmまで約1.5nm間隔で掃引して波長の異なる、多種光波長大開口数ホログラムである20枚のホログラムを記録した。本実施例の条件では、この波長掃引は、一定周波数間隔で行うものと見倣すことができる。これらのホログラムから、異なる光波長の再生物体光20枚を生成し、断層画像を求めた。図23は、断層顕微鏡1を用いて照明光Qの波長を変えて取得したUSAFテストターゲットの複数枚のホログラムのうちの1枚のホログラムの画像を示す。ホログラム上のスポット状の光はターゲット面で反射された光ビームを表す。

【0108】
図24(a)(b)(c)はそれぞれ、受光面からの距離40.410mm、距離40.415mm、距離40.420mmの位置における断層画像を示す。画像は受光素子4の前方のハーフミラーHFによって左右反転されている。距離40.420mmの位置はUSAFテストターゲットの表面(ターゲット面という)の位置であり、明るい断層画像が得られている。この光はターゲット面における反射によって生じた物体光を表している。ターゲット面から手前に離れると、ターゲットの画像は急速に暗くなる。これらの断層画像には薄い断層内で生じた物体光のみが表示されている。距離40.410mmでは反射光の発生はない。距離40.415mmでは縦方向の分解能の範囲内で観測される物体光が僅かに見える。

【0109】
図25は、ターゲット面の位置を原点として、ターゲット面から手前方向に順次離れる方向において得られた断層画像の平均光強度の距離依存性を示す。すなわち、上述の図24(c)の画像の位置が原点であり、図24(c)から図24(a)に向かう方向に距離が設定されている。点線で示した測定値は、各位置における断層画像の平均光強度を、図24(c)の画像の平均光強度で規格化した値である。実線で示した理論値は、N=20として、上述の式(24)の関数を2乗して求めた値である。式(27)で定義したパルス幅δzは、波長λmin=755nm,λmax=785nm、N=20、からδz=9.4μmと求められる。この値は、図24(a)(b)(c)の画像の変化から予想される断層の厚さと符合する。測定値の曲線は、理論値の曲線とよく一致しており、距離が10μmの近くでゼロ近くまで減少している。平均光強度は原点で最大となっており、物体光が生じる反射面であるターゲット面を含む断層において明るい断層画像が得られることを示している。

【0110】
図26は受光面からの距離40.420mmの位置における断層画像のターゲット中心部の拡大断層画像を示す。一般に、波長の異なる多数の物体光の重ね合せによって、ランダムノイズは減少する。このことに加え、本方法の断層顕微鏡は、結像レンズを用いていないので、無歪の正確な拡大画像を得ることができる。図26の断層画像から、断層画像の横分解能は約1.3μmと見積もられ、この値は記録ホログラムの開口数0.29と光波長770nmから求めた理論値1.33μmとよく一致する。

【0111】
図27(a)(b)(c)に示す比較例は、それぞれ図24(a)(b)(c)に示した断層画像の再生位置において、図23に示した1枚のホログラムから再生した画像である。これらの再生画像は非断層画像であり、反射によって生じたすべての物体光が再生されて表示されている。従って、画像再生位置までの距離によらず、いずれの画像も明るい画像となっている。また、リング状のノイズが重畳されている。このようなノイズは、上述の断層画像には見られない。

【0112】
(他の実施例)
図28、図29、図30は、上述の実施例におけるUSAFテストターゲットに、さらに2枚のガラスを重ねた場合の実施例を示す。図28(a)(b)に示すように、USAFテストターゲットの上に厚さ0.15mmのカバーガラスを重ね、その上にガラス厚1mmのミクロメータを裏返して重ねて、断層撮像用の半透明物体6とした。レーザ光源の波長を755nmから約0.9nm間隔で掃引して波長の異なる32枚のホログラムを記録し、ガラス中を伝搬している各波長の再生物体光32枚を使ってガラス中の断層画像を求めた。

【0113】
図29(a)(b)(c)はそれぞれ受光面からの距離39.800mmの位置(ミクロメータの目盛り面の位置)、距離39.875mmの位置、距離39.950mmの位置(USAFパターン面の位置)において再生した断層画像である。図29(a)に示す断層画像には、ミクロメータの画像とカバーガラス表面からの反射光の画像が表示されている。図29(b)に示す断層画像は、カバーガラス中の断層画像であり、その断層面では反射光が生じないので、真黒の断層画像となっている。図29(c)に示す断層画像には、ターゲット面の画像とカバーガラスの下面からの反射光の画像が表示されている。

【0114】
図30(a)(b)(c)に示す比較例は、それぞれ図29(a)(b)(c)に示した断層画像の再生位置において、1枚のホログラムから再生した画像である。これらの再生画像は、ターゲット面の画像、ミクロメータの画像、およびカバーガラスの両面で反射された光の画像が重なって表示されており、ターゲットとミクロメータとを識別することは難しい。

【0115】
(さらに他の実施例)
図31、図32、図33は、水分を含んだ半透明のタマネギ鱗葉の断層撮像を取得した実施例を示す。タマネギの鱗葉から、その表面に平行に厚さ約50μmにスライスした試料を切り出して水中に浸し、その表面に平行な断層画像を得るため、表面にカバーガラスを配置した。光波長を755nmから785nmまで約0.5nm間隔で変化させながら、64枚のホログラムを記録し、これらのホログラムを使って断層画像を再生した。この光波長の条件から、パルスの周期Δz、および断層画像の縦分解能の指標となるパルス幅δzは、それぞれΔz=640μm、δz=10μmとなる。

【0116】
照明光は、カバーガラスを通して照射し、カバーガラスによる照明光の反射光とカバーガラスを透過した物体光とを同時に1枚のホログラムに記録し、後処理によって照明光と物体光を分離してそれぞれの複素振幅ホログラムを得た。媒質中の照明光と物体光の伝搬計算は、ガラス、水、および試料の各々の屈折率を考慮して行った。

【0117】
図31(a)(b)、図32(a)(b)、図33(a)(b)の画像は、それぞれ順番に、受光素子(CCD)からの距離40.39mmを起点として、0.01mm間隔で、距離40.44mmまでの各深さ位置における断層画像を示す。画像中で斜めの白い筋は、照明光を反射して物体光を放射するタマネギ鱗葉の細胞壁の位置を示す。このような断層画像によって断層中にある細胞壁を画像として観察できる。断層画像の再生位置によって、幅20μm程度の小さい細胞や幅50μm程度の大きな細胞を確認できる。これらの断層画像から、半透明な生体組織の内部構造を知ることができ、断層画像データを集積することにより、生体組織内部の3次元体積画像データが得られる。

【0118】
以上の結果は、媒質中で再生した多種光波長物体光の重ね合せにより再生面上の横方向における高分解能な断層画像が作成できることを示している。この断層画像の横分解能は、光波長と開口数から決まる値になる。従って、再生面の位置を変えながら断層画像データを蓄積していくと、被写体内部を3次元表示するために必要な3次元体積画像データを得ることができる。

【0119】
上記のように、本発明は、光波長を変化させながら半透明物体の表面および内部または非透明物体の表面で発生する物体光を多数枚のホログラムに記録し、被写体表面や被写体内部の3次元体積画像情報を取得するものである。本発明によると、光波長の異なる条件でホログラムを記録し、記録した各ホログラムから再生した物体光を重ね合せることにより、浮遊物体や点在物体が存在する媒質の断層画像や、半透明物体内部の断層画像を、縦横両方向について高分解能で生成することができる。また、個々の断層画像を重ねて3次元体積画像データを求めることができ、その体積画像データを用いて、任意位置と任意角度の再生面における断面画像を生成することができる。

【0120】
本発明は、生体組織のような体積のある半透明物体を断層撮像する際の対応として、以下のようなことが挙げられる。
(レーザの光波長可変幅による縦分解能の制限への対応)
断層画像の縦分解能はレーザの光波長可変幅によって制限され、高い縦分解能を達成するためには可変幅の広いレーザ光源が必要になる。ところが、所望の広い波長幅に亘って連続的変化できるレーザ光源が存在するとは限らない。しかしながら、本発明によれば、光波長を変えながらホログラムを記録するので、互いに光波長帯の異なる複数のレーザ光源を組み合すことによって可変幅を広げることができる。これにより、高い縦分解能を達成することが可能になる。

【0121】
(被写体の光分散による分解能の低下への対応)
結像レンズを用いた撮像装置では、光分散で生じる色収差のために画質が劣化し分解能が低下する。本発明の一実施形態に係る、結像レンズを使用せずに記録した多種光波長ホログラムから各光波長毎に画像再生する方法および断層顕微鏡によれば、前もって測定した媒質の光分散を用いて、光分散に起因する色収差の問題を回避することができる。また、結像レンズを用いないことにより、無歪の断層画像を得ることができる。

【0122】
(被写体中の光吸収や反射によって生じる影や陰への対応)
被写体中で部分的な光吸収や反射が大きくなると、影や陰が生じ、断層画像の理解が難しくなる。この影や陰の影響は、照明光の方向を変えながら複数枚の断層画像を作成してこれらの画像を合成することによって取り除くことができる。

【0123】
(屈折率の空間変化による光収差への対応)
断層顕微鏡の効果的な利用として、眼球内各部の検査が挙げられる。眼球では角膜や水晶体、ガラス体、および網膜の境界面は球面状形状であり、各部の屈折率は空間的に変化している。このために、平面波展開を適用して物体光再生を行うと屈折率の空間変化によって光収差が生じてしまう。この収差を補正する方法として、補正用レンズを通した照明光を使用する方法、複数枚の理想板レンズ(位相シフト関数)を用いた物体光再生の方法を用いることができる。

【0124】
また、本発明は、結像レンズを用いて、結像レンズを通した照明光Qと物体光Oとに基づいて断層画像を生成することができる。しかしながら、結像レンズを用いて得られる断層画像はなにがしかの歪みを有する。結像レンズを用いる構成にするか否かは、そのような断層画像における歪みの許容程度と断層画像を使用する目的等に応じて、適宜選択すればよい。光学系における結像レンズの存在を、計算機ホログラフィにより正しく反映させることができれば、より歪の少ない断層画像を生成することができる。また、本発明において、参照光R,Lに球面波光を用いるか否かは、断層画像に許容される誤差の程度と断層画像を使用する目的等に応じて、適宜選択することができる。

【0125】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、ホログラムILRは、ホログラムIQR,IORとは独立に取得される。この場合、ホログラムILRは、各波長λ,j=1,・・,Nの光の全てについて取得することに替えて、代表点となるように選択した複数の波長の光に対して取得し、それらの波長の間のホログラムは、計算機による補間によって生成するようにしてもよい。また、受光素子の受光面に平行ではない傾いた断層画像は、斜めの光波再生面における傾いた断層ホログラムH’を線形変換によって生成することにより、生成することができる。この場合、平面波展開における空間周波数ベクトル|k>=(u,v,w)を回転したベクトル|k’>=(u’,v’,w’)を求める。次に、上述した式(15)(16)におけるG,Bを、このベクトル|k’>に対応したG’,B’に変換して平面波展開を行えばよい。この方法により、3次元体積画像V={S,P=1,・・,m}を求めることなく、傾いた再生面における断層画像を、直接、生成することができる。しかしながら、光軸に平行な断層面に近づくと誤差が大きい断層画像となる。これに対して、3次元体積画像Vからは、傾けることによる誤差を発生することなく、斜めの断層画像を生成することができる。本発明は、任意の物体に対して適用でき、半透明物体に対してだけでなく、内部が見えない非透明の物体に対しても表面観察用として適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、再生医療、医療診断、医療機器、内視鏡、バイオテクノロジ、光工業計測、などの分野で使われる3次元体積画像データの記録と高分解能断層画像の表示に適用することができる。特に、生体組織のような3次元構造を持つ半光透過性被写体の体積画像を細胞レベルの分解能で作成する用途に適用できる。本発明の高分解能なホログラフィック断層顕微鏡は、X線、CT、MRI、超音波診断、従来のOCTに続く、非侵襲・非破壊かつ高速に高分解能3次元断層画像が得られる計測機器であり、医療診断機器に求められる要素を多く備えた新しい生体光計測技術として発展する可能性を有する。生体計測に用いられる近赤外光は生体を透過しやすく、生体に無害である。また、光学限界に達する高分解能化も可能になり、これまでの医療診断機器では不可能であった細胞レベルでの生体組織の微細構造や病変を検出できる。
【0127】
医療用CTの空間分解能が300~600μm程度、MRIが800μm程度、超音波が200μm程度、従来のOCTが15μm程度であることを考えると、本断層顕微鏡の空間分解能は突出しており解像度が高い鮮明な光断層イメージングが可能になる。さらに、従来のOCTにおける光の機械的走査が不要であり、波長掃引レーザ光源と高速イメージセンサを用いて低エネルギー照射の下で高速連続撮影が可能である。加えて、必要光学部品の少ない構造の簡単な計測機器にできるので、装置の低価格化と小型化が容易である。したがって、CTやMRIのような高価で大きな設備が必要でなく、チェアサイドですぐに撮像が可能であり、その場で計測結果が画像として描出されるので、患者への説明やインフォームド・コンセントにも活用でき、安価に医療現場に提供できる。
【符号の説明】
【0128】
1 ホログラフィック断層顕微鏡
10 データ取得装置、データ取得部
11 断層画像生成部
11a フィルタリング部
11b インライン化変調部
11c,12 断層画像計算部
13a 画素数増大部
13b 空間変調部
13c 分割部
13d 合成部
13e 平面波展開部
2 光源
3 光学系
4 受光素子
5 記録部
6 物体(被写体)
61 透過鏡(カバーガラス)
62 半透明物質
照明光の変換関数
DT1 ホログラムデータ
DT2 3次元体積画像データ
物体光の変換関数
断層ホログラム
Pd 近傍ホログラム
Pk 超周期ホログラム
LR 参照光のオフアクシスホログラム
QR 照明光のホログラム
OR 物体光のホログラム
OQR 共通ホログラム
LR 参照光Rの複素振幅オフアクシスホログラム
QR 照明光Qの複素振幅ホログラム
OR 物体光Oの複素振幅ホログラム
QL 照明光Qの複素振幅インラインホログラム
OL 物体光Oの複素振幅インラインホログラム
L,L インライン参照光
N 異波長光の数
O,O 物体光
P 断層面を識別する整数変数
PP 偏光板
Q,Q 照明光
R,R 参照光
断層画像(光強度)
Pd 近傍断層画像(光強度)
Pk 超周期断層画像(光強度)
V 3次元体積画像
照明光複素振幅インラインホログラム
照明光の再生光波
物体光複素振幅インラインホログラム
物体光の再生光波
j 掃引波長を識別する整数変数
再生面
(u,v,w) 空間周波数(波数ベクトル)
Δz パルス周期(パルス間隔)
Π 照明光の合成微小ホログラム
Σ 物体光の合成微小ホログラム
δz パルス幅
λ 波長
ξ 照明光の再生光波に含まれる位相成分
φ インライン球面波参照光の位相
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図25】
23
【図26】
24
【図28】
25
【図31】
26
【図32】
27
【図33】
28
【図24】
29
【図27】
30
【図29】
31
【図30】
32