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明細書 :DNA結合ドメイン組込み用ベクターおよびそのセット、融合タンパク質コーディングベクターおよびそのセットならびにその製造方法、デスティネーションベクター、植物細胞用発現ベクターおよびその製造方法、植物細胞用発現ベクター作製用キット、形質転換方法、ならびにゲノム編集方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-163556 (P2016-163556A)
公開日 平成28年9月8日(2016.9.8)
発明の名称または考案の名称 DNA結合ドメイン組込み用ベクターおよびそのセット、融合タンパク質コーディングベクターおよびそのセットならびにその製造方法、デスティネーションベクター、植物細胞用発現ベクターおよびその製造方法、植物細胞用発現ベクター作製用キット、形質転換方法、ならびにゲノム編集方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 1/00 A
請求項の数または発明の数 19
出願形態 OL
全頁数 52
出願番号 特願2015-051424 (P2015-051424)
出願日 平成27年3月13日(2015.3.13)
優先権出願番号 2015037195
優先日 平成27年2月26日(2015.2.26)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】島田 浩章
【氏名】草野 博彰
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
4B024
Fターム 2B030AA02
2B030CA17
4B024AA08
4B024AA20
4B024DA01
4B024EA04
4B024FA02
4B024GA11
要約 【課題】植物細胞中でTALEのDNA結合ドメインにFokIのDNA切断ドメインなどの生物学的活性を有するタンパク質を連結した融合タンパク質を複数、効率よく植物細胞に導入する方法、およびそのために使用可能なベクター群を提供する。
【解決手段】attL組換え部位と、TALEのDNA結合ドメイン用挿入領域と、タンパク質をコードする遺伝子と、第2のattL組換え部位と、を含み、第1のattL組換え部位、挿入領域、遺伝子、および第2のattL組換え部位は、タンパク質コード方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、第1のattL組換え部位と挿入位置との間に、プロモーターを有しない、DNA結合ドメイン組込み用ベクター。前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターと組換え可能であり、反対方向を向いたプロモーター対を有するデスティネーションベクター。およびこれらを用いた方法およびキット。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1のattL組換え部位と、
可変領域を有するTALE(TAL effector)のDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域と、
前記挿入位置にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合にTALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質をコードする核酸配列を形成可能となるように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記挿入領域、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記挿入位置との間に、プロモーターを有しない、DNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【請求項2】
前記第1のattL組換え部位の核酸配列は、前記第2のattL組換え部位の核酸配列とは異なる、請求項1に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【請求項3】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、核酸組換え活性、核酸修復活性、転写制御活性、および核酸修飾活性からなる群から選択される1つ以上を有するタンパク質をコードする遺伝子である、請求項1または請求項2に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【請求項4】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子がイントロンを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【請求項5】
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、マーカー遺伝子をさらに含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【請求項6】
各々が請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、および
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、
を含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【請求項7】
各々が請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、を含み、
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含み、
前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを準備すること、および
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの前記挿入位置に、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入すること、
を含む、融合タンパク質をコードする核酸セグメントを含む融合タンパク質コーディングベクターの製造方法。
【請求項9】
第1のattL組換え部位と、
TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメント、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントとの間に、プロモーターを有しない、融合タンパク質コーディングベクター。
【請求項10】
各々が請求項9に記載の融合タンパク質コーディングベクターである複数種類のベクターを含む、融合タンパク質コーディングベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1の融合タンパク質コーディングベクター、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2の融合タンパク質コーディングベクター、を含む、融合タンパク質コーディングベクターセット。
【請求項11】
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含むデスティネーションベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattR組換え部位と、
第2のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattR組換え部位と、
第4のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattR組換え部位および前記第2のattR組換え部位は、前記第1のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、前記第2のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、デスティネーションベクター。
【請求項12】
前記第1のDNAブロックにおける前記第1のプロモーターがコードされた方向を基準として前記第2のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBを有する核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記第2のプロモーターがコードされた方向を基準として前記第4のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBを有する核酸セグメントと、をさらに含む、請求項11に記載のデスティネーションベクター。
【請求項13】
前記第1のattR組換え部位の核酸配列が前記第2のattR組換え部位の核酸配列とは異なり、前記第3のattR組換え部位の核酸配列が前記第4のattR組換え部位の核酸配列とは異なる、請求項11または請求項12に記載のデスティネーションベクター。
【請求項14】
請求項10に記載のベクターセットにおける前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第1のattL組換え部位を、請求項11~請求項13のいずれか一項に記載のデスティネーションベクターにおける前記第1のattR組換え部位と組み換えること、
前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第2のattR組換え部位と組み換えること、
前記ベクターセットにおける前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第1のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第3のattR組換え部位と組み換えること、および
前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第4のattR組換え部位と組み換えること、
を含む、植物細胞用発現ベクターの製造方法。
【請求項15】
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含む植物細胞用発現ベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第1の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と、
第2のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第2の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と、
第4のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattB組換え部位、前記第1の核酸セグメント、前記第1の遺伝子および前記第2のattB組換え部位は、前記第1の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattB組換え部位、前記第2の核酸セグメント、前記第2の遺伝子および前記第4のattB組換え部位は、前記第2の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、植物細胞用発現ベクター。
【請求項16】
請求項6または請求項7に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットおよび請求項11~請求項13のいずれか一項に記載のデスティネーションベクターを含む、植物細胞用発現ベクター作製用キット。
【請求項17】
請求項15に記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入することを含む、前記植物細胞用発現ベクターを遺伝子導入した植物細胞を作製する方法。
【請求項18】
前記導入することが、前記植物細胞用発現ベクターをアグロバクテリウムに導入すること、および前記アグロバクテリウムを植物細胞に感染させることにより、前記植物細胞用発現ベクターを前記植物細胞内に導入すること、を含み、
前記植物細胞用発現ベクターは、前記第1のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第2のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBをコードする核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記第4のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBをコードする核酸セグメントと、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入すること、前記導入された植物細胞用発現ベクターから前記生物学的活性を有するタンパク質を発現させること、および前記生物学的活性を有するタンパク質を植物細胞のゲノムに作用させること、を含むゲノム編集方法であって、前記生物学的活性を有するタンパク質が、FokIのDNA切断ドメインであり、前記TALEのDNA結合ドメインと共にTALEN融合タンパク質を形成しており、前記FokIのDNA切断ドメインが前記植物細胞のゲノムにおける、前記TALEのDNA結合ドメインが結合可能な特定の配列の近傍を切断する、ゲノム編集方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA結合ドメイン組込み用ベクターおよびそのセット、融合タンパク質コーディングベクターおよびそのセットならびにその製造方法、デスティネーションベクター、植物細胞用発現ベクターおよびその製造方法、植物細胞用発現ベクター作製用キット、形質転換方法、ならびにゲノム編集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Transcription activator-like effector nucleases(TALEN)は、植物に対する細菌病原体であるXanthomonas由来のタンパク質であるTranscription activator-like effector(TALE)と、FokIのDNA切断ドメインとを連結した人工融合タンパク質である。TALEの中には、典型的にはLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHG(配列番号1)で表される通常34アミノ酸長の配列が繰り返された中央繰り返しドメイン(central repeat domain)が存在する。繰り返し数は概ね1.5~33.5であり、つまりC末端の最後の繰り返しは完全なものではなく、2アミノ酸残基のみとなっている(half repeat)。上記の配列の12番目および13番目のアミノ酸残基は可変であり、TALEが結合するDNA配列に対する特異性を決めている。これら2つのアミノ酸残基はrepeat variable diresidue(RVD)とも呼ばれ、この2アミノ酸残基の配列と、認識されるヌクレオチドとの間には固定した関係が存在する。
【0003】
このため、各繰り返しにおけるRVDの配列を改変することにより、TALEは一定の範囲内の長さを有する任意のDNA配列に結合可能となる。TALEがDNA配列に結合すると、TALEに連結したFokIヌクレアーゼが作用して、その近傍でDNAを切断する。この技術によれば、従来の制限酵素が有していた認識配列についての制約が大きく解消される。
【0004】
今から始めるゲノム編集(羊土社2014、p191)にはTALEN構成用ベクターが開示されており、プロモーターの下流にTALEのDNA結合ドメインを導入している。このベクターは制限酵素を用いてさらなるクローニングを受ける。また、Zhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)には動物細胞でTALENを発現するためのTALEN構成用ベクターが記載されており、やはりプロモーターの下流にTALEのDNA結合ドメインを導入している。
【0005】
また、核酸を細胞に導入することにより、当該核酸にコードされたタンパク質やRNAを発現させることも行われている。細胞を核酸に導入する技術については、例えば細菌である大腸菌については広く研究されており、例えば、対数増殖期の細胞を塩化カルシウム溶液で処理することによって得られるコンピテントセルをDNA存在下で熱処理するなどの方法により、核酸を導入することが出来る。また、動物細胞の場合にはリポフェクション(核酸含有リポソームを動物細胞内に導入する方法)、エレクトロポレーション(電気パルスにより細胞膜に穴をあけ、核酸を動物細胞内に導入する方法)、マイクロインジェクション(ガラスのマイクロピペットを用いて、DNAを動物細胞内に注入する方法)、パーティクル・ガン法(金属の微粒子をDNAでコーティングし、動物細胞内に打ち込む方法)、およびウイルスベクターを利用して遺伝子を動物細胞内に導入する方法などがある。特に、マイクロインジェクションなどの方法を用いれば、DNAを高い確実性で動物細胞内に導入することが可能である。
【0006】
しかし、これらの方法の多くは、植物細胞には適用できない。植物細胞には細胞壁が存在し、このために、マイクロインジェクションなどの方法を採ることは出来ない。植物細胞の形質転換方法としては、アグロバクテリウムを用いる方法や、パーティクル・ガン法などがあるだけである。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】今から始めるゲノム編集(羊土社2014、p191)
【非特許文献2】Zhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先に述べたFokIヌクレアーゼは、二量体として機能するため、TALENを細胞内で機能させる場合、DNA二重鎖の一方上の特定配列を認識するDNA結合ドメインを有するTALENと、その相補鎖上の特定配列を認識するDNA結合ドメインを有するTALEN、の2つのタンパク質を発現させる必要がある。これは一般に、動物細胞では比較的容易である。何故なら、動物細胞に対してはマイクロインジェクションなどの方法により高い確実性で、上記2つのタンパク質をコードする2種のプラスミドを導入することが可能であるためである。
【0009】
しかし、植物細胞中でTALENを発現させようとした場合、前記2つのタンパク質をコードする2種のプラスミドを導入するといった戦略は一般に効率が低い。何故なら、パーティクル・ガン法による遺伝子導入効率は必ずしも高いものではなく、2種のプラスミドが両方成功裏に導入される確率は低く、また、アグロバクテリウムを用いる方法は効率は高いものの導入できるプラスミドが一種に制限されるからである。二量体で機能する酵素はTALENに限定されるものではなく、核酸に対して作用する酵素では他の酵素でも見られるものである。このような酵素にTALEのDNA結合ドメインを連結して融合タンパク質を作製した場合にも、細胞への導入に際して同様の問題が生じうる。
【0010】
本願発明者らは、植物細胞中でTALEのDNA結合ドメインにFokIのDNA切断ドメインなどの生物学的活性を有するタンパク質を連結した融合タンパク質を2つ発現できるようにするよう植物細胞中に遺伝子導入を行うことは、従来の技術では困難であることを見いだした。このため、本発明の一実施形態は、前記融合タンパク質を複数、効率よく植物細胞に導入する方法、およびそのために使用可能なベクター群を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑みて、本発明は以下の態様を包含する。
本発明の第1の観点によれば、
第1のattL組換え部位と、
可変領域を有するTALE(TAL effector)のDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域と、
前記挿入位置にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合にTALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質をコードする核酸配列を形成可能となるように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記挿入領域、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記挿入位置との間に、プロモーターを有しない、DNA結合ドメイン組込み用ベクター、が提供される。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、
各々が第1の観点に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、および
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、
を含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット、が提供される。
【0013】
本発明の第3の観点によれば、各々が第1の観点に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、を含み、
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含み、
前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット、が提供される。
【0014】
本発明の第4の観点によれば、第1の観点に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを準備すること、および
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの前記挿入位置に、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入すること、
を含む、融合タンパク質をコードする核酸セグメントを含む融合タンパク質コーディングベクターの製造方法、が提供される。
【0015】
本発明の第5の観点によれば、
第1のattL組換え部位と、
TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメント、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントとの間に、プロモーターを有しない、融合タンパク質コーディングベクター、が提供される。
【0016】
本発明の第6の観点によれば、
各々が第5の観点に記載の融合タンパク質コーディングベクターである複数種類のベクターを含む、融合タンパク質コーディングベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1の融合タンパク質コーディングベクター、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2の融合タンパク質コーディングベクター、を含む、融合タンパク質コーディングベクターセット、が提供される。
【0017】
本発明の第7の観点によれば、
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含むデスティネーションベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattR組換え部位と、
第2のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattR組換え部位と、
第4のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattR組換え部位および前記第2のattR組換え部位は、前記第1のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、前記第2のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、デスティネーションベクター、が提供される。
【0018】
本発明の第8の観点によれば、
第6の観点に記載のベクターセットにおける前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第1のattL組換え部位を、前記第7の観点に記載のデスティネーションベクターにおける前記第1のattR組換え部位と組み換えること、
前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第2のattR組換え部位と組み換えること、
前記ベクターセットにおける前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第1のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第3のattR組換え部位と組み換えること、および
前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第4のattR組換え部位と組み換えること、
を含む、植物細胞用発現ベクターの製造方法、が提供される。
【0019】
本発明の第9の観点によれば、
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含む植物細胞用発現ベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第1の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と、
第2のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第2の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と、
第4のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattB組換え部位、前記第1の核酸セグメント、前記第1の遺伝子および前記第2のattB組換え部位は、前記第1の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattB組換え部位、前記第2の核酸セグメント、前記第2の遺伝子および前記第4のattB組換え部位は、前記第2の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、植物細胞用発現ベクター、が提供される。
【0020】
本発明の第10の観点によれば、
第2または第3の観点に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットおよび第7の観点に記載のデスティネーションベクターを含む、植物細胞用発現ベクター作製用キット、が提供される。
【0021】
本発明の第11の観点によれば、
第9の観点に記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入することを含む、前記植物細胞用発現ベクターを遺伝子導入した植物細胞を作製する方法、が提供される。
【0022】
本発明の第12の観点によれば、
第9の観点に記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入すること、前記導入された植物細胞用発現ベクターから前記生物学的活性を有するタンパク質を発現させること、および前記生物学的活性を有するタンパク質を植物細胞のゲノムに作用させること、を含むゲノム編集方法であって、前記生物学的活性を有するタンパク質が、FokIのDNA切断ドメインであり、前記TALEのDNA結合ドメインと共にTALEN融合タンパク質を形成しており、前記FokIのDNA切断ドメインが前記植物細胞のゲノムにおける、前記TALEのDNA結合ドメインが結合可能な特定の配列の近傍を切断する、ゲノム編集方法、が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記融合タンパク質を複数、効率よく植物細胞に導入することが出来、また、そのために使用可能なベクター群が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る植物細胞用発現ベクターの作製の一例である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係るSSA assayによるTALEN活性の確認用のプラスミド構造を模式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係るSSA assayによるTALEN活性の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示においては、1つのベクター上に、マーカー遺伝子以外の複数遺伝子が発現可能に配置されているベクター(以下マルチ遺伝子ベクターとも称する)を植物細胞に導入する。これにより、1つのベクターの細胞内導入によって、所望の複数の遺伝子を植物細胞内に導入することが出来る。これにより、別々の遺伝子を有する複数のベクターを、例えばパーティクル・ガン法などの植物細胞形質転換方法により細胞内に導入する場合に比べて、高い遺伝子導入効率を達成することが可能となる。さらに、ベクターの数が1つで済むことから、アグロバクテリウムを遺伝子導入に用いることが可能になり、この方法によっても、前記複数のベクターを導入する方法よりも、高い遺伝子導入効率を達成することが可能になる。

【0026】
なお、動物細胞に複数の遺伝子を導入する場合には、複数のベクターをマイクロインジェクションなどの方法により高効率で導入できるため、マルチ遺伝子ベクターを作製する必要も動機付けもそもそも存在しない。

【0027】
(TALEの構造)
TALEは、Xanthomonasが植物細胞に感染した際に、植物細胞のプロモーター配列に結合して自己の感染を助ける植物遺伝子群の発現を活性化するタンパク質である。TALEはそのC末端側に核移行シグナルと転写活性化ドメイン、中央に繰り返し構造のDNA結合ドメインを有する。本開示においては、TALEのDNA結合ドメインよりN末端側の領域をTALE-N領域、TALEのDNA結合ドメインよりもC末端側の領域をTALE-C領域と称する場合がある。TALEの分子量は約120kDaである。

【0028】
(TALEのDNA結合ドメイン)
TALEの中央部には繰り返し配列からなるDNA結合ドメインが存在する。繰り返し配列における繰り返し単位となる配列の長さはおよそ34アミノ酸長であるが、一定はしていない。典型的な繰り返し単位は、配列番号1で表されるものであるが、配列番号1における12番目と13番目のアミノ酸残基は可変であり、この残基を変更することにより当該繰り返し単位が認識するヌクレオチドが変わる。具体的には、これらの2アミノ酸残基(RVD)がアミノ酸一文字表記でNIの場合アデニン(A)を認識し、HDの場合シトシン(C)を認識し、NHあるいはNKの場合グアニン(G)を認識し、NGの場合チミン(T)を認識する。NNは主にグアニン(G)を認識する。本開示中において、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、グアニン認識用ジペプチド、とは、TALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列の可変部位において指定されたヌクレオチドを特異的に認識可能な任意のジペプチドを指すが、その例としては、上記に記載したジペプチドが挙げられる。各繰り返し単位中におけるRVDを適宜設計することによって、所望のヌクレオチド配列を有するDNAにTALEのDNA結合ドメインが特異的に結合するようにすることが出来る。また、上記のRVD以外にも繰り返し単位には細かなバリエーションが存在し、いずれも本開示において用いることが出来る。本開示においては、例えばAddgeneから提供されるPlatinum Gate TALEN kitにより作製可能な繰り返し単位を用いることが出来る。この場合の繰り返し配列の一例は、GLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAH(配列番号51、NNはRVDに相当)であり、ハーフリピートの一例は、GLTPEQVVAIASHDGG(配列番号52、HDはRVDに相当)である。

【0029】
本明細書においては、TALEのDNA結合ドメインとは、上記のように各繰り返し単位におけるRVDが設計された、TALEのDNA結合ドメインのことを指す。つまり、Xanthomonasが元々有しているTALEのDNA結合ドメインだけでなく、RVD等の変更により得られた人工のTALEのDNA結合ドメインをも包含する。また、上記のように繰り返し配列における繰り返し単位によってRVDの配列は変わりうるため、本明細書においては、この繰り返し配列を可変繰り返し配列とも称する。

【0030】
TALEのDNA結合ドメインの繰り返し単位の繰り返し数によって、認識できるDNA配列の長さが変わる。認識配列の長さが長くなれば、植物細胞ゲノム全体の中における認識配列の数は減少するため、特異性が向上すると言える。言い換えれば、標的となる箇所以外の箇所にDNA結合ドメインが結合する確率が減少する。一方で、繰り返し単位をコードするDNAの長さは約100bp程度になるため、繰り返し単位の繰り返し数を増加させると、それをコードするDNAの長さも長くなり、当該DNAの作製が複雑化する。また、繰り返し数を25を超えて長くしても特異性の向上といった点での効果は限定的となるため、本発明においては繰り返し単位の数(C末端側のhalf repeatは含めない)は、例えば10~25、好ましくは14~20である。なお、Platinum Gate法を用いる場合には、前記繰り返し単位の数は、例えば12~21、好ましくは15~19としてもよい。

【0031】
(TALEのDNA結合ドメインの作製)
人工的に設計したTALEのDNA結合ドメインは、Platinum Gate法(Addgeneからキット入手可能、Tetsushi Sakuma et al., Scientific Reports 3, Article number 3379, 2013, doi: 10. 1038/srep03379)Golden Gate法(Addgeneからキット入手可能、Cermak et al., Nucleic Acids Res.2011)、FLASH assembly法(Addgeneからキット入手可能、Reyon D, et al., Nat Biotechnol. 2012 Apr 8. doi: 10.1038/nbt.2170)、Ligation independent cloning法(Addgeneからキット入手可能)などの方法を用いて、調製することが出来るが、Platinum Gate法を用いることが特に好ましい。Platinum Gate法においては、それぞれアデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、を含むTALEDNA結合ドメイン繰り返し単位をコードするヌクレオチド配列を有する4種類のプラスミドからなるプラスミド群が使用される。

【0032】
このプラスミド群は、さらに繰り返し単位両側の4ヌクレオチド配列が異なる、4組のプラスミド群を形成している(Addgeneから提供されるPlatinum Gate TALEN kit (Addgene, One Kendall Aq. B7102, Cambridge MA 02139)の場合、p1HD、p1NG、p1NI、p1NN、p2HD...p4NIおよびp4NN)。ステップIでは、まず、上記4組のプラスミド群のそれぞれにおいて、所望のRVDを有するものを選択し(Platinum Gate TALEN kitの場合、p1HD、p1NG、p1NIおよびp1NNのうちいずれか、p2HD、p2NG、p2NIおよびp2NNのうちいずれか、p3HD、p3NG、p3NIおよびp3NNのうちいずれか、ならびにp4HD, p4NG, p4NIおよびp4NNのうちいずれか)、これらに含まれる繰り返し単位(以下、モジュールとも称する)同士を連結しつつ、別のプラスミド(Platinum Gate TALEN kitの場合、pFUS2_a1a(モジュール数が6~9個の場合)、pFUS2_a2aおよびpFUS2_a2b(モジュール数が10~13個の場合)、pFUS2_a3a、pFUS2_a3bおよびpFUS_a2b(モジュール数が14~17個の場合)、pFUS2_a4a、pFUS2_a4b、pFUS2_a3bおよびpFUS_a2b(モジュール数が18~21個の場合))に挿入し、4つの繰り返しを有するプラスミド(Platinum Gate TALEN kitの場合、pFUS2_aXX_TALE)を作製する(ステップ1)。ステップ1においては、各プラスミドの切断には制限酵素を、切断された断片同士の連結にはリガーゼを用いればよい(Platinum Gate TALEN kitの場合は、各プラスミドの切断にはBsaI-HFを用い、切断された断片同士の連結にはQuick Ligaseを用いる)。また、繰り返し数の端数については、別途用意した繰り返し単位の端数挿入用のベクター(Platinum Gate TALEN kitの場合、pFUS2_b(1-4))に、所望のRVDを有するものを1~4から選択される所望の数挿入して、プラスミド(Platinum Gate TALEN kitの場合、pFUS2_b(1-4)_TALE)を作製する。ステップ2では、これらの中に含まれるモジュール連結体同士(Platinum Gate TALEN kitの場合、pFUS2_aXX_TALEおよびpFUS2_b(1-4)_TALE)をさらに連結しつつ、別途用意したベクターに挿入して、所望のTALEDNA結合ドメイン繰り返し配列を含むベクターを作製する。モジュール同士あるいはモジュール連結体同士の連結の際には、モジュールあるいはモジュール連結体の末端の配列が、特定のモジュールあるいはモジュール連結体の末端の配列あるいはプラスミドの配列に相補的になっているため、所定の順序で連結されることになる。ステップ2における各プラスミドの切断には制限酵素を用いればよい(Platinum Gate TALEN kitの場合は、各プラスミドの切断にはEsp3Iを用いる)。連結の際にはT4DNAリガーゼなどを用いればよい。Platinum Gate法の詳細については、Tetsushi Sakuma et al., Scientific Reports 3, Article number 3379, 2013, doi: 10. 1038/srep03379に記載されている。本開示においては、前記別途用意したベクターとして、後述する本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターを使用できる。

【0033】
BsaI(あるいはその高信頼性版であるBsaI-HF)は、GGTCTCを認識して、この配列の外側の位置でDNAを切断する酵素である。その認識配列は、以下のように表される。
5’...GGTCTC(N)...3’
3’...CCAGAG(N)...5’
つまり、一方鎖では、GGTCTCの1ヌクレオチド分3’側のヌクレオチドと、2ヌクレオチド分3’側のヌクレオチドの間を切断し、また他方鎖では、CCAGAGの5ヌクレオチド分5’側のヌクレオチドと、6ヌクレオチド分5’側のヌクレオチドの間を切断する。

【0034】
Esp3Iは、CGTCTCを認識して、この配列の外側の位置でDNAを切断する酵素である。その認識配列は、以下のように表される。
5’...CGTCTC(N)...3’
3’...GCAGAG(N)...5’
つまり、一方鎖では、CGTCTCの1ヌクレオチド分3’側のヌクレオチドと、2ヌクレオチド分3’側のヌクレオチドの間を切断し、また他方鎖では、GCAGAGの5ヌクレオチド分5’側のヌクレオチドと、6ヌクレオチド分5’側のヌクレオチドの間を切断する。
Platinum Gate法においては、上記のようなDNA切断酵素を用いているために、その認識配列と、切断によって生じる突出末端の配列とを独立に設計できる。このため、複数のプラスミドを同一のDNA切断酵素で切断しながらも、一定の順序で断片同士を連結することが可能である。

【0035】
このようなペプチドによるヌクレオチド配列認識の別の例としてはジンクフィンガー構造が挙げられる。ジンクフィンガー構造を利用して、3~6個のジンクフィンガーを有するDNA結合ドメインと、DNA切断ドメインとを連結したジンクフィンガーヌクレアーゼが考案されている。しかしながら、ジンクフィンガー構造によって4種のヌクレオチドの全てを明瞭に区別して認識することは困難であり、全ての配列を標的配列に出来る訳ではない。また、ジンクフィンガー構造によるヌクレオチド配列認識の特異性は、周囲の環境による影響を受けるため、得られたジンクフィンガーヌクレアーゼが期待した特異性を有しない場合もある。本開示においては、TALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列を用いるため、各ヌクレオチドを明瞭に区別して認識でき、標的配列とする配列が制限される事態が避けられる。

【0036】
(Gateway(登録商標)法)
λファージは大腸菌染色体へ侵入するための、部位特異的組換えシステムを有している。Gateway法は、このλファージの組換えシステムのコンポーネントを改変し、組み換え反応の特異性および効率を高めた方法である。具体的には、組換えには、att 配列と称される特定の配列と、組換え反応を仲介するクロナーゼ(登録商標)が関与する。att配列としては、attL配列、attR配列、attB配列およびattP配列が存在する。なお、attB配列とattP配列は、BPクロナーゼ(登録商標)によって特異的に組換えを起こし、組換え後にはattR配列とattP配列とを生じる。一方、attL配列とattR配列とは、LRクロナーゼ(登録商標)によって特異的に組換えを起こし、組換え後にはattB配列とattP配列を生じる。なお、attL配列、attR配列、attB配列およびattP配列には、attL1配列(配列番号2)、attL2配列(配列番号3)、attL3配列、attL4配列等の亜種が存在し、attR配列にもattR1配列(配列番号4)、attR2配列(配列番号5)、attR3配列、attR4配列等の亜種が存在し、attB配列にもattB1配列(配列番号6)、attB2配列(配列番号7)、attB3配列、attB4配列等の亜種が存在し、またattP配列にもattP1配列(配列番号8)、attP2配列(配列番号9)、attP3配列、attP4配列などの亜種が存在する。これらの亜種については、例えばattL1配列とattR1配列のように、同じ番号のもの同士が特異的に組換えを起こす。本開示においては、これらの亜種を包含する概念として、attL組換え部位、attR組換え部位、attB組換え部位、およびattP組換え部位の用語を用いる。つまり、例えば、attL組換え部位は、attL1配列、attL2配列、attL3配列、attL4配列等の亜種のうち任意のものを指しうるが、その場合、組換えを生じるのに用いられるattR組換え部位も、対応する番号のものが用いられる。attP組換え部位およびattB組換え部位についても同様のことが言える。詳細については、Gateway(登録商標) Technology A universal technology to clone DNA sequences for functional analysis and expression in multiple systems, Catalog Numbers 12535-019 and 12535-027, Revision 1.0 Document Part Number 250522, Publication Number MAN0000282を参照することも出来る。なお、亜種(例えば、attL1、attR2、attP1やattP2)といった亜種の中でも若干のバリエーションが存在し得るが、本開示においては、対応する亜種(例えば、attR1、attL2、attB1やattB2)との間の特異的な組換えが可能な範囲において、こうしたバリエーションも各亜種の範囲に含まれる。なおこのようなバリエーションとしては、例えば配列番号54~57で表されるものなどが挙げられる。

【0037】
なお、attL3~attL5などは、マルチサイトゲートウェイ法において使用可能であるが、これらの特異性、信頼性はattL1やattL2と比較すると低い。また、マルチサイトゲートウェイは、標準的なLRクロナーゼ以外の組換え酵素が必要になるなど、非常にコストが高い。Zhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)では、attL5の使用など、マルチサイトゲートウェイ法が用いられており、コストが高くなる。本開示においては、attL1、attL2、attR1およびattR2からなる群から選択される組換え部位を用いて、LRクロナーゼによる組換えを行うことが、コスト面から好ましい。

【0038】
(DNA結合ドメイン組込み用ベクター)
本開示においては、TALEDNA結合ドメイン繰り返し配列を挿入するベクターとして、
第1のattL組換え部位と、
可変領域を有するTALE(TAL effector)のDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域と、
前記挿入位置にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合にTALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質をコードする核酸配列を形成可能となるように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記挿入領域、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記挿入位置との間に、プロモーターを有しない、DNA結合ドメイン組込み用ベクター(以下、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターとも称する)、を用いることが出来る。

【0039】
TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸配列を挿入可能な挿入位置の下流にFokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子を配置したベクターとしては、今から始めるゲノム編集(羊土社2014、p191)に記載のベクターがある。ただし、このベクターはatt配列を有しておらず、その後の組換え操作は制限酵素により行っている。また、挿入位置の上流には35Sプロモーターが配置されている。
また、Zhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)には、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸配列を挿入可能な挿入位置の上流にCAGプロモーターあるいはEF1プロモーターを有するベクターが記載されている。このベクターはatt配列を有している。
今から始めるゲノム編集(羊土社2014、p191)に記載のベクターと比べると、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、Gateway(登録商法)法による組換えが可能であるため、制限酵素法の場合に必要なフェノール-クロロホルム処理やエタノール沈殿等の処理が不要である。これにより、その後の組換え操作を簡便なものとすることが出来る。

【0040】
また、上記のベクターを、例えば2-in-1発現ベクター(マーカー遺伝子を除いて、2つの生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を同一のベクター上に有する発現ベクター)の作製に用いる場合、それぞれの生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子にTALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列をコードする核酸配列を融合させるために、少なくとも2種類のベクターが必要である。ベクターがTALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列の、末端ハーフリピートを有する場合には、4種類のRVDを用意しなければならないため、少なくとも2×4=8種類のベクターを用意しなければならない。目的とする実験に応じてプロモーターを所望の誘導プロモーターに変更したり、所望の発現レベルのプロモーターに変更したり、所望の種類の植物の細胞で発現するプロモーターに変更したりする場合、ベクター自体にプロモーター配列が含まれていると、上記少なくとも8種類のベクターの各々についてプロモーター交換のための操作が必要になる。しかし、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおいては、前記第1のattL組換え部位と前記挿入位置との間に、プロモーターが存在しないため、プロモーターの交換は容易である。例えば2-in-1発現ベクターを作製する場合などは、後述するデスティネーションベクター中のプロモーターを最終的な2-in-1発現ベクターにおけるプロモーターとして用いることが可能である。前記「プロモーターが存在しない」とは、より具体的には、前記生物学的活性を有するタンパク質あるいは前記融合タンパク質をコードする遺伝子を、大腸菌などのクローニング用微生物、植物細胞、動物細胞などで発現させるためのプロモーターが存在しないことを指してもよい。

【0041】
さらに、上記のZhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)に記載の方法においては、CAGやEF1といった動物細胞用のプロモーターが用いられている。そもそも、動物細胞においてはマイクロインジェクションなどの方法により複数のベクターを効率よく同時導入することが出来る。このため、例えば、複数のTALENを導入したい場合でも、TALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列を挿入するベクターを複数種用意し、これら自身にプロモーターとFokIのDNA切断ドメインを設けておけば、前記DNA結合ドメインの繰り返し配列を挿入するだけで動物細胞への導入用ベクターが完成する。このため、これ以上の組換え操作を行う必要は無く、これら動物細胞用のベクターは動物細胞用のプロモーターを保持している必要があり、プロモーターを除去する動機付けは何ら存在しない。

【0042】
また、Zhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)に記載の方法においては、動物細胞用プロモーターの下流にGFPもしくはmChと、TALENとが続けて配置されるため、これらの間に自己切断性ペプチドT2Aを設けることで両者を別々のタンパク質として発現させている。しかし、このT2Aペプチドは、最終的な動物細胞用発現ベクター中にも残存し、その結果、プロモーターとTALENの間の距離は遠くなり、また、発現のメカニズムが複雑化してしまう。

【0043】
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域は、好ましくは、可変繰り返し配列のC末端側のハーフリピートをコードする核酸配列を挿入位置の下流側隣接位置に有する。つまり、前記挿入領域は、前記挿入位置の下流側隣接位置に、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、またはグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを含むことが好ましい。なお、下流側隣接位置とは、前記挿入位置に対し、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における下流側の位置であって、前記ジペプチドをコードする核酸セグメントが、挿入されるTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントと一体となってTALEのDNA結合ドメインを形成可能である位置を指す。前記ハーフリピートをコードする核酸配列は、通常は、前記挿入位置の下流側(3’末端側)直後に(つまり、前記挿入位置との間隔を置かずに)存在しており、挿入されるTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントと一体となってTALEのDNA結合ドメインを形成することができる。

【0044】
前記挿入領域における挿入位置の両側の配列は、前記モジュール連結体同士をさらに連結したものの両末端の配列に対して相補的なものであってもよい。これにより、モジュール連結体を挿入位置に特異的に挿入することが出来る。挿入の際にはT4DNAライゲースなどを用いればよい。Platinum Gate TALEN kitの場合には、最終的なモジュール連結体の両端の配列が、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列のコード鎖について5’側末端がTCAA(これがEsp3Iによる切断で突出末端となる)、3’側末端がTGGG(実際にはこれがEsp3Iによる切断で非コード鎖の突出末端となる)に相補的な配列(つまりACCC)になっているため、挿入領域は前記生物学的活性を有するタンパク質のコード鎖について挿入位置の5’側にAGTT(実際にはこれがEsp3Iによる切断で非コード鎖の突出末端となる)に相補的な配列(TCAA)、3’側にACCC(Esp3Iによる切断で突出末端となる)の配列を有していることが好ましい。ハーフリピートをコードする核酸配列がある場合には、前記ACCCの配列も繰り返し配列をコードする核酸セグメントの一部を構成する。なお、上記説明では、便宜上、非コード鎖上の配列は3’→5’の向きで表記している。

【0045】
前記挿入位置は、例えば制限酵素により切断可能な位置であってもよく、前記制限酵素としてはBsaIまたはEsp3Iが好ましく、Esp3Iがさらに好ましい。Platinum Gate法を用いる場合などは、前記挿入位置は、Esp3Iの認識部位(CGTCTC)に隣接する位置となる(Esp3Iは前述のとおり認識部位の外側を切断する酵素であるため)。つまり、一つの実施形態では、前記挿入領域はEsp3Iの認識部位を有し、好ましくはEsp3Iの認識部位を2つ有する。前記挿入領域がEsp3Iの認識部位を2つ有する場合には、Esp3Iの認識部位は、DNAの二本鎖のそれぞれに一つづつ存在することが好ましい。両認識部位の間の領域は、Esp3Iによる切断によりベクターから失われ、その代わりに前記モジュール連結体が挿入可能となる。挿入領域中にEsp3Iの認識部位が1つしか存在しない場合には、切断によって生じた各鎖の突出末端が挿入位置を構成する。挿入領域中にEspIの認識部位が2つ以上存在する場合にも、各鎖の突出末端が挿入位置を構成するが、この場合は、各鎖の突出末端の配列を異ならせることが出来るため、モジュール連結体を特定の方向で挿入する上で有利である。なお、挿入領域中にEspIの認識部位は3つ以上存在してもよいが、その場合は、実際に挿入位置を構成する突出末端を生じるのは、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における最上流の認識部位と最下流の認識部位となる。

【0046】
挿入のために用いる制限酵素がEsp3Iである場合、ベクター中の挿入領域以外の箇所が切断されないように、前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターは、前記挿入領域以外にはEsp3Iの認識部位を有しないことが好ましい。
上記のとおり、挿入領域が、前記生物学的活性を有するタンパク質のコード鎖について挿入位置の5’側にTCAA、3’側にACCCの配列を有している場合には、前記挿入領域は、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列のコード鎖上に、TCAANGAGACG(配列番号58)の配列およびCGTCTCNACCC(配列番号59)の配列を有することとなる(NはA、G、TおよびCのうち任意のもの)。この2つの配列を有する結果、2つの配列のうち一方においてはコード鎖上にEsp3Iの認識配列CGTCTCが存在し、他方においては非コード鎖上に該認識配列が存在する。この場合、TCAANGAGACGの配列はEsp3Iにより、

【0047】
【化1】
JP2016163556A_000003t.gif

【0048】
のように切断され、CGTCTCNACCCの配列はEsp3Iにより

【0049】
【化2】
JP2016163556A_000004t.gif

【0050】
のように切断される。そして、TCAANGAGACGの下流側かつCGTCTCNACCCの上流側の部分が、ベクターから失われ、その代わりに前記モジュール連結体が挿入可能となることになる。このため、一つの実施形態では、前記挿入領域は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側の位置にTCAANGAGACGの配列を、下流側の位置にCGTCTCNACCCを含む。
上記の説明では、Platinum Gate TALEN kit(Addgene)、Platinum Gate法およびEspIを使用する場合を想定したが、BsaIなど、認識配列の外側で核酸を切断する制限酵素(例えばIIS型制限酵素)を使用する場合には、EspIを使用する場合について説明した事項が同様に当てはまる。また、上記の説明における挿入領域の切断によって生じる突出末端の配列はPlatinum Gate TALEN kit(Addgene)を使用する場合を想定した一例であり、挿入領域の切断によって生じる突出末端の配列はモジュール連結体側の突出末端の配列と連結可能な配列であれば上記の説明で言及された配列以外の配列であってもよい。つまり、モジュール連結体の形成に用いるプラスミドがPlatinum Gate TALEN kitに含まれるプラスミドとは異なるものであっても、形成されるモジュール連結体の両側の突出末端に相補的な突出末端を形成できるように挿入領域中の挿入位置近傍の配列を選択すれば、上記の説明と同様にしてモジュール連結体を挿入位置に挿入できる。認識配列の外側で核酸を切断する制限酵素を用いる場合には、切断によって生じる突出末端の配列を、制限酵素の認識配列とは独立して設計することが可能になるため、Platinum Gate法およびPlatinum Gate TALEN kitからの改変が可能であり、そのような場合にも本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターは使用可能である。

【0051】
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける、生物学的活性を有するタンパク質は、TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成した場合において、TALEのDNA結合ドメインが標的核酸部位に結合した際に生物学的活性を発揮するタンパク質であれば、特に限定されない。その例としては、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、核酸組換え活性、転写制御活性、および核酸修飾活性からなる群から選択される1つ以上を有するタンパク質である。なお、本発明において、「核酸」とは、DNA、RNA等の核酸を包含する概念であり、核酸は修飾されたものであってもよい。つまり、「核酸」は、修飾または未修飾のDNAまたはRNAを指しうる。

【0052】
特に、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターを用いれば2-in-1ベクターなどを容易に作製可能である点を考慮すれば、前記タンパク質は2量体として機能するタンパク質であることが好ましい。その例としては、FokIのDNA切断ドメインが挙げられる。FokIのDNA切断ドメインは二量体として働き、各単量体がDNA二重鎖の各鎖上に位置し、配列非特異的にDNAを切断する。このため、TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質(Transcription activator-like effector nuclease(TALEN))とすることで、ゲノム上の所望の位置でDNAを切断することが可能である。その他、本開示において、生物学的活性を有するタンパク質の例としては、リプレッションドメイン(CRES-T法で使用される)、グルココルチコイドレセプター、およびVP16転写制御ドメインが挙げられる。

【0053】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、イントロンを含んでいてもよい。前記タンパク質は、クローニング用の微生物(例えば、大腸菌)内で発現してしまうと、タンパク質の種類によっては、該微生物の増殖を阻害する場合もある。しかし、前記タンパク質をコードする遺伝子がイントロンを含んでいる場合には、前記微生物はイントロンのスプライシングが出来ないため、前記微生物内では前記タンパク質は発現せず、前記微生物の増殖が妨げられることを防止できる。なお、後述するデスティネーションベクター中の植物細胞で作動可能な第1のプロモーターおよび第2のプロモーターが、前記微生物中で全く発現を生じないものであれば、前記タンパク質は前記微生物中で発現しないため、イントロンを含ませる必要は基本的に無い。つまり、イントロンを含ませるかどうかは、前記プロモーターがどの程度クローニング用微生物中で発現を誘導するかによって決めればよい。なお、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターは、大腸菌内においても弱く発現を誘導する。このため、イントロンを含ませると、含ませない場合よりも、大腸菌の増殖を早くすることが出来る。挿入するイントロン領域の数は1つでもよいが、2つ以上(例えば2つ)にすればより確実にクローニング用の微生物(例えば大腸菌)内における機能的なタンパク質の発現を防止できる。なお、融合タンパク質のN末端側に位置するTALEのDNA結合ドメインと、C末端側に位置する前記生物学的活性を有するタンパク質(例えばFokIのDNA切断ドメイン)の各々に、1つ以上のイントロンを有することは、クローニング用の微生物(例えば大腸菌)内における機能的なタンパク質の発現を防止できる上でさらに有効である。

【0054】
前記挿入位置から前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子までの核酸配列は、前記挿入位置にPlatinum Gate法などによってTALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合に、TALEのDNA結合ドメインと前記生物学的活性を有するタンパク質が融合タンパク質を形成できるように、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸配列と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子とが共通のオープンリーディングフレームを形成できるように設計されている。これは、両者の間のヌクレオチドの数を、コドンフレームが共通となるような数にし、また終始コドンを両者の間に含まないように設計することにより可能となる。

【0055】
前記挿入領域および前記生物学的活性をタンパク質をコードする遺伝子を挟むように、その上流及び下流には第1のattL組換え部位と第2のattL組換え部位が位置する。これらの組換え部位をattR組換え部位と組換えさせることによって、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位の間の領域を他のベクターに移すことが可能である。この操作は特異性が高く、また、制限酵素処理に伴うフェノールクロロホルム処理やエタノール沈殿の必要が無いため、これらの組換え部位の存在によって、デスティネーションベクターへの組換え処理が容易になっている。

【0056】
前記第1のattL組換え部位の核酸配列は、前記第2のattL組換え部位の核酸配列とは異なることが好ましい。この配列が同じであると、後にattR配列と組換えを起こす場合に、どちらのattL組換え部位で組換えが生じるかを制御することが難しくなるためである。さらに、前記第1のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位と組み換え可能であり、前記第2のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位とは核酸配列が異なる第2のattR組換え部位と組み換え可能であることが好ましい。また、前記第1のattL組換え部位は前記第2のattR組換え部位と組み換え可能ではなく、前記第2のattL組換え部位は前記第1のattR組換え部位とは組み換え可能ではないことが好ましい。これらの構成によって、組換えにより挿入される領域の方向性を制御できる。

【0057】
前記第1のattL組換え部位がattL1およびattL2のうちの一方であり、前記第2のattL組換え部位がattL1およびattL2のうちの他方である構成を採用してもよい。attL1、attL2の組換えの特異性により、これら両者における組換えを独立に制御できる。なお、attL配列としては、他にもattL3配列やattL4配列などがあるが、attL3やattL4の組換えの特異性はattL1やattL2の組換えの特異性に比べると低いものと考えられる。

【0058】
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、マーカー遺伝子をさらに含んでいてもよい。マーカー遺伝子が存在すれば、大腸菌を始めとするクローニング用の微生物にトランスフォームした際に、ベクターが導入された細胞を容易に検出し、選択することが出来る。
前記マーカー遺伝子は、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と前記第2のattL組換え部位との間に位置してもよい。このような位置にあれば、前記第1のattL組換え部位を用いて、別のベクターのプロモーター領域の下流に前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を配置するように組換えた場合でも、マーカー遺伝子がプロモーター領域と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子との間に割り込むことがない。
前記マーカー遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子(例えばGreen Fluorescent Protein(GFP))、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子、および薬剤(例えば抗生物質)耐性遺伝子からなる群から選択されてもよい。これらの遺伝子を有するクローンは、光学的観察あるいは薬剤(例えば抗生物質)含有培地を用いての培養によって容易に検出することが出来る。

【0059】
前記マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子であってもよい。抗生物質耐性遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子(amp)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)、クラリスロマイシン耐性遺伝子(cam)、カナマイシン耐性遺伝子(kan)、ストレプトマイシン-スペクチノマイシン耐性遺伝子(spec)、およびテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)が挙げられる。

【0060】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと、前記マーカー遺伝子との間の距離は、例えば0.2kb~1.0kb、好ましくは0.3kb~0.6kbであってもよい。この距離が長すぎると、プラスミド構築上の困難性が増す傾向がある。なお、前記マーカー遺伝子は、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きであってもよく、逆向きであってもよい。前記マーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きであるとは、前記マーカー遺伝子と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子とが、同じ鎖にコードされている(コード鎖が同じ)であることを意味し、前記マーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と逆向きであるとは、前記マーカー遺伝子と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子とが、別の鎖(相補鎖)にコードされている(前記マーカー遺伝子のコード鎖が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の非コード鎖に相当する)ことを意味する。

【0061】
前記マーカー遺伝子と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子とが同じ向きである場合は、前記距離とは、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと、前記マーカー遺伝子の5’末端との距離を意味し、前記マーカー遺伝子と前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が逆向きである場合は、前記距離とは、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと、前記マーカー遺伝子の3’末端との距離を意味する。逆向きの場合、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記マーカー遺伝子とは、それぞれ別々の鎖にコードされているが、その場合前記距離とは、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子のコード鎖上における、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと前記マーカー遺伝子の3’末端(これは相補鎖上に存在する)に対応する位置との距離を指す。本明細書中に記載された他の距離についても、同様に、遺伝子、核酸セグメント、特定配列、組換え部位、プロモーター等の、要素間の距離とは、各要素の間の最短距離を指し、各要素が別々の鎖にコードされている場合には、一方の要素がコードされている核酸鎖上の領域に対応する相補鎖上の領域と、他方の要素がコードされている領域との間の最短距離を指す。

【0062】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と前記マーカー遺伝子との間にはターミネーターが存在してもよい。これにより、両遺伝子は別々のmRNAに転写されるようになる。このようなターミネーターの例としては、例えばNOSターミネーターがある。

【0063】
前記マーカー遺伝子発現用のプロモーターは、マーカー遺伝子自身が通常有しているプロモーターでよく、大腸菌内で発現可能なプロモーターであることが好ましい。
前記挿入位置と、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子との間の距離は、例えば0.1kb~0.5kbであってもよい。この領域には、後述のとおりTALE-C領域を配置できる。前記距離を適切に設定することで、TALEのDNA結合ドメインが特定配列のDNAに結合した際に、前記生物学的活性を有するタンパク質がより有効に機能できるようになる。

【0064】
前記第1のattL組換え部位と、前記挿入位置との間の距離は、例えば0bp~1.0kb、好ましくは6bp~0.5kbである。この距離が長すぎると、プラスミド構築上の困難性が増す傾向がある。この間には、TALE-N領域を配置できる。前記挿入位置の上流(TALE-N領域が配置されている場合には、TALE-N領域の上流)には、制限酵素部位、Ω因子および翻訳促進効果のある5’UTRからなる群から選択される一つ以上を配置することも出来る。

【0065】
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、環状二本鎖プラスミドベクターであることが好ましい。また、前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターは、大腸菌内で機能可能な複製起点を有することが好ましい。この複製起点が存在する場合は、大腸菌を用いたクローニングが可能となる。前記複製起点は、pUC起点であってもよいし、大腸菌で機能するその他の複製起点であってもよい。前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターは、さらに構成セグメントを含むことが好ましい。この構成セグメントは、ベクターの土台として働くものであり、一般的に使われている大腸菌用ベクターのセグメントを前記構成セグメントとして用いてもよい。前記構成セグメントは、プラスミドベクターの構成セグメントであることが好ましい。また、前記構成セグメントの長さは、例えば0.5kb~5.0kbの長さであってもよい。この距離が長すぎると、プラスミド構築上の困難性が増す傾向がある。前記構成セグメントは好ましくは大腸菌内で機能可能な複製起点を有する他、転写や複製の制御のための領域を含んでいてもよい。前記構成セグメントは、pUC19、pBluescript、pDONR207等に由来する構成セグメントであってもよい。

【0066】
本開示のDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、前記挿入領域の上流側(前記機能性タンパク質をコードする遺伝子のコード鎖の5’側)に隣接してTALE-N領域の全長あるいは一部(例えば140~153アミノ酸長程度)をコードする核酸セグメントをさらに含んでいてもよい。この場合は、前記挿入領域にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合に、前記TALE-N領域の全長あるいは一部は、TALEのDNA結合ドメイン及び前記生物学的活性を有するタンパク質との融合タンパクを形成可能となるように、コドンのフレームが合っていることが好ましい。また、本開示のDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、前記挿入領域の下流側(前記機能性タンパク質をコードする遺伝子のコード鎖の3’側)に隣接してTALE-C領域の全長あるいは一部(例えば40~47アミノ酸長程度)をコードする核酸セグメントをさらに含んでいてもよい。この場合は、前記挿入領域にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合に、前記TALE-C領域の全長あるいは一部は、TALEのDNA結合ドメイン及び前記生物学的活性を有するタンパク質との融合タンパクを形成可能となるように、コドンのフレームが合っていることが好ましい。TALE-N領域およびTALE-C領域については、部分的に欠失させた方が融合タンパク質の活性が高くなるという報告があり、136/63や153/47(スラッシュの左側がTALE-N領域のアミノ酸残基数、右側がTALE-C領域のアミノ酸残基数)といった部分欠失型が知られている。また、上記のようなTALE-N領域の全長もしくは一部、またはTALE-C領域の全長あるいは一部、にイントロンを含ませてもよい。

【0067】
(第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット)
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターを用いて、2-in-1ベクターを作製する場合などは、各々の、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む、2つ以上のベクターを準備してもよい。このため、本開示に係る第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットは、
各々が本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、および
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、
を含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットである。
このように複数のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを用いることによって、生物学的活性を有するタンパク質をコードする複数の核酸領域を、複数のベクターにそれぞれ含ませることが実現される。

【0068】
一つの実施形態では、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものである。これにより、attL組換え部位の種類を少なくできるため、組換え操作をより簡略化することが可能になる。
一つの実施形態では、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものである。これは、前記実施形態の変形例と考えることが出来る。

【0069】
なお、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものであることが好ましい。その例としては、前述のFokIのDNA切断ドメインが挙げられる。
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターおよび前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターの詳細については、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターの詳細と同じである。

【0070】
(第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット)
先に述べたとおり、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターは、前記挿入位置の下流側(前記生物学的活性を有するタンパク質のコード鎖における3’側)隣接領域に、TALEの繰り返し配列のハーフリピートを有していてもよい。その場合、ハーフリピートの種類に対応して、多種類のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを用意することが考えられる。具体的には、本開示に係る第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットは、
各々が本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、を含み、
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含み、
前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット、である。

【0071】
一つの実施形態においては、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものである。これにより、attL組換え部位の種類を少なくできるため、組換え操作をより簡略化することが可能になる。

【0072】
別の実施形態においては、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものである。これは、前記実施形態の変形例と考えることが出来る。

【0073】
なお、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものであることが好ましい。その例としては、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットの説明において挙げた例と同様である。
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群および前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群における各ベクターの詳細については、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターの詳細と同じである。

【0074】
(融合タンパク質コーディングベクターの製造方法)
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターには、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入することが出来る。すなわち、本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターの製造方法は、
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターを準備すること、および
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの前記挿入位置に、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入すること、
を含む、融合タンパク質をコードする核酸セグメントを含む融合タンパク質コーディングベクターの製造方法である。TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントの挿入は、例えばPlatinum Gate法によって行うことが出来る。前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列の繰り返し数は、13~25であってもよく、好ましくは14~20である。なお、Platinum Gate法を用いる場合には、前記繰り返し単位の数は、例えば12~21、好ましくは15~19としてもよい。反応条件の詳細については、Tetsushi Sakuma et al., Scientific Reports 3, Article number 3379, 2013, doi: 10. 1038/srep03379を参照することが出来る。
得られた融合タンパク質は、TALEのDNA結合ドメインと前記生物学的活性を有するタンパク質とが融合されたタンパク質である。これによって、前記生物学的活性を、TALEのDNA結合ドメインが認識する特定の核酸配列の位置で発揮することが可能になる。このためには、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列は、前記生物学的活性を有するタンパク質の作用対象部位となる対象核酸領域の配列に基づいて、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列が前記対象核酸領域に結合可能となるように選択されることになる。

【0075】
なお、このような融合タンパク質を発現するために、前記TALEのDNA結合ドメインと、前記生物学的活性を有するタンパク質とは、コドンのフレームは合っていなければならない。
なお、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターがTALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列の末端ハーフリピートを有している場合には、挿入される前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントは、標的配列を認識するためのTALEのDNA結合ドメインのモジュール繰り返しのうち、前記末端ハーフリピートを除いた部分となる。

【0076】
(融合タンパク質コーディングベクター)
本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターに、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入することで、融合タンパク質コーディングベクターが得られる。つまり、本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターは、
第1のattL組換え部位と、
TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメント、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントとの間に、プロモーターを有しない、融合タンパク質コーディングベクターである。

【0077】
前記融合タンパク質コーディングベクターは、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターに、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入することで得ることができるものであるため、ベクターの構造についての詳細、attLおよびattR組換え部位についての詳細、前記TALEのDNA結合ドメインの繰り返し配列およびそれをコードする核酸セグメントについての詳細、前記生物学的活性を有するタンパク質およびそれをコードする遺伝子についての詳細、前記マーカー遺伝子についての詳細、前記イントロンについての詳細、前記核酸上の距離についての詳細については、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターの説明におけるそれらの詳細と同様である。

【0078】
前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列の繰り返し数は、13~25であってもよく、好ましくは14~20である。あるいは、別の実施形態では、前記繰り返し単位の数は、例えば12~21、好ましくは15~19としてもよい。
前記融合タンパク質コーディングベクター上にコードされた融合タンパク質は、TALEのDNA結合ドメインと前記生物学的活性を有するタンパク質とが融合されたタンパク質である。これによって、前記生物学的活性を、TALEのDNA結合ドメインが認識する特定の核酸配列の位置で発揮することが可能になる。このためには、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列は、前記生物学的活性を有するタンパク質の作用対象部位となる対象核酸領域の配列に基づいて、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列が前記対象核酸領域に結合可能となるように選択されることになる。
なお、このような融合タンパク質を発現するために、前記TALEのDNA結合ドメインと、前記生物学的活性を有するタンパク質とは、コドンのフレームは合っている。また、前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの場合と同様に、マーカー遺伝子が存在する場合は、該マーカー遺伝子は生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きに配置されていても、逆向きに配置されていてもよい。

【0079】
(融合タンパク質コーディングベクターセット)
本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターを用いて、2-in-1ベクターを作製する場合などは、各々融合タンパク質をコードする遺伝子を含む、2つ以上のベクターを準備してもよい。このため、本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターセットは、
各々が本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターである複数種類のベクターを含む、融合タンパク質コーディングベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1の融合タンパク質コーディングベクター、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2の融合タンパク質コーディングベクター、を含む、融合タンパク質コーディングベクターセットである。
このように複数の融合タンパク質コーディングベクターを用いることによって、融合タンパク質をコードする複数の核酸領域を、複数のベクターにそれぞれ含ませることが実現される。

【0080】
前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものであるものであってもよい。これらについての詳細は、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットの説明におけるそれらの詳細と同様である。

【0081】
(デスティネーションベクター)
前記融合タンパク質コーディングベクター中の前記第1のattL組換え部位および前記第2のattL組換え部位の間の領域は、Gateway(登録商標)法によって、デスティネーションベクターに導入することが出来る。attL組換え部位との組換えを可能とするために、デスティネーションベクターはattR組換え部位を有している。
具体的には、本開示に係るデスティネーションベクターは、
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含むデスティネーションベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattR組換え部位と、
第2のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattR組換え部位と、
第4のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattR組換え部位および前記第2のattR組換え部位は、前記第1のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、前記第2のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、デスティネーションベクターである。

【0082】
前記デスティネーションベクターにおいては、前記第1のDNAブロックと、前記第2のDNAブロックとは、互いに逆向きに配置されている。つまり、第1のDNAブロックにおける第1のプロモーターのコード鎖と同じ鎖は、第2のDNAブロックにおける第2のプロモーターの非コード鎖に相当する。この構成により、第1のプロモーターと第2のプロモーターとの間に遺伝子を配置する必要が無く、このため、第1のプロモーターと第2のプロモーターを含む領域を、別のDNAフラグメントで置き換えることにより、第1のプロモーターと第2のプロモーターとを1回の操作でまとめて置換可能である。目的とする実験に応じてプロモーターを所望の誘導プロモーターに変更したり、所望の発現レベルのプロモーターに変更したり、所望の種類の植物の細胞で発現するプロモーターに変更したりする場合、1回の操作で複数のプロモーターを交換できることは作業効率を大きく向上させる。なお、本明細書中において、DNAブロックについて「逆向き」とは、上記と同様に、一方のDNAブロックにおけるコード鎖(センス鎖)が、他方のDNAブロックにおける非コード鎖(アンチセンス鎖)となっていることを指し、例えば、植物細胞用プロモーターの配列や、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の配列がコードされている鎖が二重鎖のうちどちらであるかを判別することで判断することが出来る。

【0083】
さらに、前記第1のDNAブロックと、前記第2のDNAブロックとが逆向きに配置されていることは、次のような利点も有する。前述の今から始めるゲノム編集(羊土社2014、p191)やZhang et al., PLOS ONE(November 2013 | Volume 8 Issue 11, e80281)に記載のベクターでは、TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸配列を含む2つの遺伝子発現単位が、同方向に配置されている。この場合、両遺伝子発現単位中のTALEのDNA結合ドメインにおいては数多くの重複する配列が存在することから、細胞中で、両発現単位は自然に相同組換えを起こし、その結果、組換えを起こした部位の間に存在した核酸セグメントは欠失することになり、機能するTALENが得られなくなる場合がある。
一方、本開示におけるようにDNAブロックが逆方向に配置されている場合には、たとえ両DNAブロックの配列が相同組換えを起こしたとしても、結果として起こることは、単に両ブロックの配列が入れ替わるだけであり、依然として機能的なTALENが得られる。

【0084】
前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターは、構成的プロモーター、誘導的プロモーター、組織特異的プロモーターおよび時期特異的プロモーターから選択されてもよい。このようなプロモーターの選択を行うことで、所望の植物種、時期、および発現レベルで、発現の制御を行うことが可能である。
前記構成的プロモーターは、強発現プロモーターであってもよい。また、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、イネユビキチンプロモーター、およびアグロバクテリウムNOSプロモーターからなる群から選択されてもよい。
前記第1のプロモーターと前記第2のプロモーターは、互いに異なるプロモーターであってもよいが、通常は互いに同じプロモーターである。

【0085】
また、前記デスティネーションベクターの各プロモーター領域の下流には、attR組換え部位が配置されているため、attL組換え部位との間で組換えを起こすことが出来る。これにより、各プロモーターの下流に、該プロモーターにより発現制御される核酸あるいはタンパク質をコードする遺伝子(例えば、前記融合タンパク質)を挿入することが可能であり、これによって、前記核酸あるいはタンパク質をコードする遺伝子発現ベクターを形成することが出来る。

【0086】
前記第1~第4のattR組換え部位は、各々attR1またはattR2であってもよい。attR1およびattR2配列の組換え特異性は、attR3やattR4の組換え特異性よりも高いため、attR1およびattR2の使用により所望の構築物をより高効率に得ることが出来る。
前記第1のattR組換え部位の核酸配列が前記第2のattR組換え部位の核酸配列とは異なり、前記第3のattR組換え部位の核酸配列が前記第4のattR組換え部位の核酸配列とは異なる構成を有していてもよい。これにより、第1のattR組換え部位と前記第2のattR組換え部位の間、あるいは前記第3のattR組換え部位と前記第4のattR組換え部位との間に、特定の方向性で核酸フラグメントを導入することがより容易になる。
また、前記第1のattR組換え部位の核酸配列と前記第3のattR組換え部位の核酸配列が同じであり、前記第2のattR組換え部位の核酸配列と前記第4のattR組換え部位の核酸配列とが同じである構成を採用してもよい。この場合、使用するattR配列の種類を少なくできるため、組換え操作を簡略化することができるようになる。

【0087】
前記第1のattL組換え部位および前記第3のattR組換え部位は、第1のattL組換え部位と組み換え可能であり、前記第2のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、第1のattL組換え部位とは核酸配列が異なる第2のattL組換え部位と組み換え可能である構成を採用してもよい。これにより、第1のattR組換え部位と前記第2のattR組換え部位の間、あるいは前記第3のattR組換え部位と前記第4のattR組換え部位との間に、特定の方向性で核酸フラグメントを導入することがより容易になる。
前記第1のattR組換え部位および前記第3のattR組換え部位は前記第2のattL組換え部位と組み換え可能ではなく、前記第2のattR組換え部位および前記第4の組換え部位は前記第1のattL組換え部位とは組み換え可能ではない構成を採用してもよい。これにより、第1のattR組換え部位と前記第2のattR組換え部位の間、あるいは前記第3のattR組換え部位と前記第4のattR組換え部位との間に、特定の方向性で核酸フラグメントを導入することがより容易になる。

【0088】
あるいは、前記第1のattR組換え部位の核酸配列と前記第4のattR組換え部位の核酸配列が同じであり、前記第2のattR組換え部位の核酸配列と前記第3のattR組換え部位の核酸配列とが同じである構成を採用してもよい。この場合、使用するattR配列の種類を少なくできるため、組換え操作を簡略化することができるようになる。どの構成を採用するかについては、例えば前記融合タンパク質コーディングベクターとの組換えを行う場合には、各融合タンパク質コーディングベクター中においてどのattL配列がどの配置で用いられているかを考慮して決定することが出来る。
また、前記第1のプロモーターと前記第1のattR組換え部位との間の距離および前記第2のプロモーターと前記第3のattR組換え部位との間の距離は、例えば0bp~500bpであってもよく、あるいは6bp~100bpとしてもよい。前記第1のプロモーターと前記第1のattR組換え部位との間の領域および前記第2のプロモーターと前記第3のattR組換え部位との間の領域には、ベクター開発のための制限酵素部位や、翻訳を制御する5’UTR領域(Ω配列、OsMac1、OsMac3等)を配置することができる。この距離が大きすぎると、プロモーターと発現対象の核酸領域との距離が大きくなりすぎ、有効な発現制御が出来ない場合がある。

【0089】
前記デスティネーションベクターは、前記第1のDNAブロックにおける前記第2のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBを有する核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記第4のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBを有する核酸セグメントと、をさらに含んでいてもよい。本開示において、RB(右境界配列)およびLB(左境界配列)とは、アグロバクテリウム(A. tumefaciens)の有するTiプラスミドの一部であるT-DNA(transfer DNA)の両端に存在する25塩基対(コンセンサス配列: 5'-TGGCAGGATATATN(C/G)N(G/A)(T/G)TGTAA(A/T)(T/C)-3', NはACGTのうちの任意のもの):配列番号50)の境界配列である。この配列は、T-DNAを植物細胞のゲノムに挿入するのに必要な配列であり、この配列を上記の位置に配置することにより、LBとRBとの間の領域を植物ゲノムに導入することが可能となる。

【0090】
本開示に係るデスティネーションベクターは、環状二本鎖プラスミドベクターであることが好ましい。また、前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターは、大腸菌内で機能可能な複製起点を有することが好ましい。この複製起点が存在する場合は、大腸菌を用いたクローニングが可能となる。前記複製起点は、pUC起点であってもよいし、大腸菌で機能するその他の複製起点であってもよい。また、前記デスティネーションベクターは、アグロバクテリウム内でベクターの複製および維持を可能とする複製起点を有することも好ましい。このような複製起点の例としてはRiプラスミド由来の変異型複製起点(Ri-ori)がある。前記デスティネーションベクターは、さらに構成セグメントを含むことが好ましい。この構成セグメントは、ベクターの土台として働くものであり、一般的に使われている大腸菌用ベクターのセグメントやpCAMBIA1301のセグメントを前記構成セグメントとして用いてもよい。前記構成セグメントは、プラスミドベクターの構成セグメントであることが好ましい。また、前記構成セグメントの長さは、4.5kb~12kbの長さであってもよい。この距離が長すぎると、プラスミド構築上の困難性が増す傾向がある。

【0091】
(植物細胞用発現ベクターの製造方法)
本開示の融合タンパク質コーディングベクターセットにおける各ベクター中の前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位の間の領域は、組み換えにより、前記デスティネーションベクターに導入することが出来る。この組み換えは、前記第1のattL組換え部位および前記第2のattL組換え部位と、前記デスティネーションベクター中の第1~第4のattR組換え部位との間の特異的な組換えによって行われる。
このため、本開示に係る植物細胞用発現ベクターの製造方法は、
本開示に係る融合タンパク質コーディングベクターセットにおける前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第1のattL組換え部位を、本開示に係るデスティネーションベクターにおける前記第1のattR組換え部位と組み換えること、
前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第2のattR組換え部位と組み換えること、
前記ベクターセットにおける前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第1のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第3のattR組換え部位と組み換えること、および
前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第4のattR組換え部位と組み換えること、
を含む、植物細胞用発現ベクターの製造方法である。

【0092】
前記組み換えは、Gateway(登録商標)法に従い、LRクロナーゼを用いて行ってもよい。反応条件の詳細については、Gateway(登録商標) Technology, A universal technology to clone DNA sequences for functional analysis and expression in multiple systems, Catalog Numbers 12535-019 and 12535-027, Revision 1.0, Document Part Number 250522, Publication Number MAN0000282を参照することが出来る。

【0093】
(植物細胞用発現ベクター)
例えば上記の反応により、植物細胞用発現用ベクターを得ることが出来る。本開示に係る植物細胞用発現ベクターは、
第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含む植物細胞用発現ベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第1の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と、
第2のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第2の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と、
第4のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattB組換え部位、前記第1の核酸セグメント、前記第1の遺伝子および前記第2のattB組換え部位は、前記第1の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattB組換え部位、前記第2の核酸セグメント、前記第2の遺伝子および前記第4のattB組換え部位は、前記第2の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、植物細胞用発現ベクターである。

【0094】
前記植物細胞用発現ベクターを、植物細胞に導入した場合、前記第1の遺伝子と、前記第2の遺伝子から、生物学的活性を有するタンパク質がそれぞれ発現する。これにより、一つのベクターの導入によって、第1の遺伝子および第2の遺伝子の両方の発現を達成することが出来る。このような利点は、例えば、TALENをアグロバクテリウムを用いて植物細胞に導入する場合などに顕著である。TALENは二量体で作用する人工ヌクレアーゼであり、TALENのTALEDNA結合ドメインは、それぞれ相補鎖の特定領域を認識するように特定の配列を有していなければならない。このため、TALENを発現させるためには、例えば2つのTALEN遺伝子の導入が必要となるが、アグロバクテリウムには1つのベクターしか導入できないため、前記2つのTALEN遺伝子は1つのベクター上に配置する必要があるためである。

【0095】
本開示に係る植物細胞用発現ベクターは、環状二本鎖プラスミドベクターであることが好ましい。また、前記植物細胞用発現ベクターは、大腸菌内で機能可能な複製起点を有することが好ましい。この複製起点が存在する場合は、大腸菌を用いたクローニングが可能となる。前記複製起点は、pUC起点であってもよいし、大腸菌で機能するその他の複製起点であってもよい。また、前記植物細胞用発現ベクターは、アグロバクテリウム内でベクターの複製および維持を可能とする複製起点を有することも好ましい。前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターは、さらに構成セグメントを含むことが好ましい。この構成セグメントは、ベクターの土台として働くものであり、一般的に使われている大腸菌用ベクターのセグメントを前記構成セグメントとして用いてもよい。前記構成セグメントは、プラスミドベクターの構成セグメントであることが好ましい。また、前記構成セグメントの長さは、4.5kb~12kbの長さであってもよい。

【0096】
前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子の詳細は、本開示に係る第1の融合タンパク質コーディングベクターセットにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子の詳細と同様である。
また、前記植物細胞用発現ベクターは、前記第1のattB組換え部位と前記第2のattB組換え部位との間に位置する第1のマーカー遺伝子、および前記第3のattB組換え部位と前記第4のattB組換え部位との間に位置する第2のマーカー遺伝子をさらに含んでいてもよい。前記第1のマーカー遺伝子および前記第2のマーカー遺伝子についての詳細は、本開示に係る第1の融合タンパク質コーディングベクターセットにおける前記第1のマーカー遺伝子および前記第2のマーカー遺伝子についての詳細と同様である。前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子の終始コドンと前記第1のマーカー遺伝子との間の距離、および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子の終始コドンと前記第2のマーカー遺伝子との間の距離は、例えば0.2kb~1.0kb、好ましくは0.3kb~0.6kbであってもよい。
また、前記TALEのDNA結合ドメインおよびそれをコードする第1および第2の核酸セグメントについての詳細、および核酸上の距離についての詳細、ならびにイントロンについての詳細については、本開示に係る第1の融合タンパク質コーディングベクターセットにおけるそれらの詳細と同様である。また、前記第1および第2のプロモーターについての詳細、およびRBおよびLBについての詳細については、本開示に係るデスティネーションベクターにおけるそれらの詳細と同様である。また、前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの場合と同様に、マーカー遺伝子は生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きであっても、逆向きであってもよい。

【0097】
attB組換え配列(25ヌクレオチド長程度)は、att配列の中では際だって短い。attP組換え配列は240ヌクレオチド長程度であり、attR配列は125bpヌクレオチド長程度であり、attL配列は100bpヌクレオチド長程度である。前記植物細胞用発現ベクターにおいては、attB配列の長さが比較的短いために、プロモーターと融合タンパク質の間の距離が短く、プロモーターによる発現制御が有効に働くようにすることが出来る。

【0098】
前記第1~第4のattB組換え部位は、各々attB1またはattB2であってもよい。
前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第1の核酸セグメントと、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子との間の距離、および前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第2の核酸セグメントと、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子との間の距離は、0.1kb~0.5kbであってもよい。この領域には、前述のとおりTALE-C領域を配置できる。前記距離を適切に設定することで、TALEのDNA結合ドメインが特定配列のDNAに結合した際に、前記生物学的活性を有するタンパク質がより有効に機能できるようになる。

【0099】
前記第1のattB組換え部位と、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第1の核酸セグメントとの間の距離、および前記第3のattB組換え部位と、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第2の核酸セグメントとの間の距離は、0bp~1.0kbであってもよい。この領域には、TALE-N領域、制限酵素部位、Ω因子および翻訳促進効果のある5’UTRからなる群から選択される一つ以上を配置することができる。
前記植物細胞用発現ベクターは、前記第1のDNAブロックにおける前記第2のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBをコードする核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記第4のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBをコードする核酸セグメントと、をさらに含んでいてもよい。このような境界配列が存在すれば、前記植物細胞用発現ベクター中の領域を、アグロバクテリウムを用いて植物細胞に高効率に導入することが出来る。
前記第1のプロモーターと前記第1のattB組換え部位との間の距離および前記第2のプロモーターと前記第3のattB組換え部位との間の距離は、0bp~500bpであってもよい。この程度の距離であれば、プロモーターによる発現制御を有効に働かせることが出来る。

【0100】
(方向性)
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターにおいてマーカー遺伝子が存在する場合、前述のとおり、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子とマーカー遺伝子とは同じ向きに配置されていても、逆向きに配置されていてもよい。また、前記融合タンパク質コーディングベクターにおいて、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントおよび前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は同じ向きに配置されているが、マーカー遺伝子が存在する場合、マーカー遺伝子はこれらと同じ向きに配置されていても逆向きに配置されていてもよい。前記植物細胞用発現ベクターにおいて、前記第1のプロモーター、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする第1の核酸セグメントおよび前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子は同じ向きに配置されており、マーカー遺伝子が存在する場合はマーカー遺伝子はこれらと同じ向きに配置されていても逆向きに配置されていてもよい。前記植物細胞用発現ベクターにおいて、前記第2のプロモーター、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする第2の核酸セグメントおよび前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子は同じ向きに配置されているが、この向きは前記第1のプロモーター、前記第1の核酸セグメントおよび前記第1の遺伝子の向きとは逆向きである。前記第2のDNAブロック内にマーカー遺伝子が存在する場合は、マーカー遺伝子は、前記第2のプロモーター、前記第2の核酸セグメントおよび前記第2の遺伝子の向きと同じ向きに配置されていても逆向きに配置されていてもよい。
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターおよび前記融合タンパク質コーディングベクターにおいて、前記第1のattL組換え部位および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きに配置されていても、逆向きに配置されていてもよい。前記植物細胞用発現ベクターにおいて、前記第1のattB組換え部位および前記第2のattB組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と同じ向きに配置されていてもよいし、逆向きに配置されていてもよい。同様に前記第3のattB組換え部位および前記第4のattB組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と同じ向きに配置されていてもよいし、逆向きに配置されていてもよい。
前記attL、attR、attB組換え部位の向きは、前記植物細胞で作動可能なプロモーターの下流に該プロモーターとは同じ向きで前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入できるようであれば特に制限されない。例えば、前記融合タンパク質コーディングベクターにおいて、前記第1のattL組換え部位および前記第2のattL組換え部位が、前記融合タンパク質をコードする遺伝子と同じ向きの場合、前記デスティネーションベクターの各DNAブロックにおいて植物細胞で作動可能なプロモーターと各attR組換え部位が同じ向きを向いていれば、これらのベクターの間の組換えによって、前記プロモーターの下流に該プロモーターと同じ向きで融合タンパク質をコードする遺伝子が配置される。一方、前記融合タンパク質コーディングベクターにおいて、前記第1のattL組換え部位および前記第2のattL組換え部位が、前記融合タンパク質をコードする遺伝子と逆向きの場合であっても、前記デスティネーションベクターの各DNAブロックにおいて植物細胞で作動可能なプロモーターと各attR組換え部位が逆向きであれば、これらのベクターの間の組換えによって、前記プロモーターの下流にやはり該プロモーターと同じ向きで融合タンパク質をコードする遺伝子が配置される。

【0101】
なお、特に明示の無い限り、本開示において「上流」および「下流」の方向性については、以下の方向を基準としている。
DNA結合ドメイン組込み用ベクターの説明における基準方向:前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向;
融合タンパク質コーディングベクターの説明における基準方向:前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向;
デスティネーションベクターの説明において:
第1のDNAブロック内の要素の配置の説明における基準方向:前記第1のプロモーターがコードされている方向
第2のDNAブロック内の要素の配置の説明における基準方向:前記第2のプロモーターがコードされている方向
第1のDNAブロックと第2のDNAブロックとの間の配置の関係の説明における基準方向:前記第1のプロモーターがコードされている方向
植物細胞用発現ベクターの説明において:
第1のDNAブロック内の要素の配置の説明における基準方向:前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされている方向;
第2のDNAブロック内の要素の配置の説明おける基準方向:前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子がコードされている方向
第1のDNAブロックと第2のDNAブロックとの間の配置の関係の説明における基準方向:前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされている方向
また、本開示において、ベクターやDNAブロックに存在する一つの要素(遺伝子、核酸セグメント、特定配列、組換え部位、プロモーター等)と別の要素とが逆向きに存在するときは、両要素は同一の核酸鎖にコードされているわけではないが、このような形態も本開示の範囲には包含される。つまり、当該別の要素は、明示が無い限り、あるいは前記一の要素との方向性が本開示中で定義されていない限りは、前記一の要素と同じ向きであっても逆向きであってもよい。

【0102】
(実施形態の例)
以上に説明した、植物細胞用発現ベクター作製の一例について、図1を用いて説明する。図1の上段には、pPlat_Aシリーズと命名された、本開示に係るDNA結合ドメイン組込み用ベクターの構成を有するベクターが描かれている。このベクター中にはFokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かって、attL1、前記第1のattL組換え部位の下流側に位置し、可変領域を有するTALE(TAL effector)のDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域、FokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子、Amp遺伝子、およびattL2がこの順で配置されている。なお、この例においては、以上の要素の中で、Amp遺伝子だけは他の要素とは逆向きに配置されている。このようなプラスミドは、例えば、Addgeneから入手可能なPlatinum Gate TALEN Kitに含まれるベクター、例えばptCMV-136/63-VR-HD、などを標準的な組換え操作を用いて改変してattL1組換え部位やattL2組換え部位、Amp遺伝子などを導入することで作製可能である。

【0103】
このpPlat_Aシリーズには、挿入位置の下流側に隣接してTALEのDNA結合ドメインのハーフリピートが含まれている。このため、pPlat_Aシリーズは実際にはHD,NG、NI、NNのハーフリピートに対応して4種類が用意されている。なお、pPlat_Aと同様の構造を有しながらもAmp遺伝子の代わりにCAT遺伝子を有する、pPlat_Cシリーズも同様に作製される(ハーフリピートの存在のため4種類)。

【0104】
ジャガイモGBSS遺伝子中の特定の領域を標的として、当該領域のDNA二重鎖それぞれの配列(標的配列)をそれぞれ選択する。なお、各標的配列は、標的配列間の中央位置よりは5’側にずれるように、互いに15bp程度の距離を置いて設計する。この標的配列を認識するRVDの並びを設計し、当該設計に基づいてTALEのモジュール同士を連結し、pPlat_AベクターおよびpPlat_Cベクターに、それぞれ導入する。TALEのモジュール同士の連結およびpPlat_AベクターおよびpPlat_Cベクターへの導入はPlatinum Gate法のプロトコールに準拠して行う。

【0105】
こうして得られる融合タンパク質コーディングベクターをそれぞれpPlat_C(標的認識部位入り)およびpPlat_A(標的配列認識部位入り)と命名する。
これと並行して、デスティネーションベクターである、pDual35SGwを用意する。このベクターは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かって、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、attR1、およびattR2がこの順で配置されたDNAブロックが2つ、互いに逆向きに(互いに離れる方向で)配置された構造を有する。このDNAブロックが2つ並んだ構造の両側には、それぞれLBおよびRBが配置されている。このベクターも、各構成要素を標準的な組換え手法を用いて基本となるベクターに導入することで作製することが出来る。

【0106】
Gateway(登録商標)法のプロトコールに基づいて、attR1とattL1との間、attR2とattL2との間で組換えを起こすことで、pDual35SGwベクターの各DNAブロックのattR1とattR2の間に、融合タンパク質-Amp/CATのフラグメントを導入する。この結果、植物細胞用発現ベクターである、2-in-1ベクターpDual35S-TALENが得られる。pDual35S-TALENを植物細胞内に導入すれば、標的配列への結合能を有する2つのTALENが発現し、各々の標的配列が存在するDNA鎖に結合する。その結果、標的とする領域(ジャガイモGBSS遺伝子)においてTALEN二量体が形成され、当該領域で植物ゲノムが切断できる。これにより、前記遺伝子は破壊されるものと予想される。TALENによる切断を受けたDNAの修復は完全には出来ないことが多く、その結果フレームシフトを起こすなどして機能的なタンパク質が発現しなくなるためである。

【0107】
(植物細胞用発現ベクター作製用キット)
なお、上記のような操作を簡便に行うことが出来るようにするために、本開示においてはキットも提供される。本開示に係るキットは、本開示に係る第1または第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットおよび本開示に係るデスティネーションベクターを含む、植物細胞用発現ベクター作製用キットである。なお、このキットはさらにLRクロナーゼ(登録商標)を含んでいてもよい。
上記のようなキットを用いれば、標的配列に対応したTALEのDNA結合ドメイン繰り返し配列を設計することにより、植物細胞用発現ベクターを容易に得ることが出来、この植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入することにより、標的配列を含む植物ゲノム領域において生物学的活性を有するタンパク質を作用させることが可能となる。

【0108】
(形質転換方法)
本開示に係る植物細胞用発現ベクターを用いれば、植物細胞を形質転換することが出来る。すなわち、本開示に係る植物細胞用発現ベクターを遺伝子導入した植物細胞を作製する方法は、本開示に係る植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入することを含む。一つの実施形態では、前記導入することは、前記植物細胞用発現ベクターをアグロバクテリウムに導入すること、および前記アグロバクテリウムを植物細胞に感染させることにより、前記植物細胞用発現ベクターを前記植物細胞内に導入すること、を含み、前記植物細胞用発現ベクターは、前記第1のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第2のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBをコードする核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第4のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBをコードする核酸セグメントと、をさらに含む。
アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入は、導入効率の高さ、操作に複雑な機器を必要としないこと、および遺伝子導入が可能な植物の種類の多さといった点から好ましい。

【0109】
前記植物細胞用発現ベクターを導入する植物細胞は、特に限定されない。本開示の方法は、原理的には任意の植物細胞に適用でき、デスティネーションベクターが有する植物細胞で作動可能な第1および第2のプロモーターとして、選択した植物細胞の種類に応じて適切なプロモーターを用いることで、任意の植物細胞において生物学的活性を有するタンパク質(例えばFokI)を発現できる。植物細胞の例としては、イネ、シロイヌナズナ、タバコ、およびジャガイモの細胞が挙げられる。

【0110】
(ゲノム編集方法)
前記植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入した場合の作用は、導入される融合タンパク質に含まれる前記生物学的活性を有するタンパク質の種類により異なる。例えば、前記タンパク質がDNA切断酵素である場合、遺伝子破壊を生じさせることが出来る。
本開示に係るゲノム編集方法は、
本開示に係る植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入すること、
前記導入された植物細胞用発現ベクターから前記生物学的活性を有するタンパク質を発現させること、および
前記生物学的活性を有するタンパク質を植物細胞のゲノムに作用させること、
を含むゲノム編集方法であって、前記生物学的活性を有するタンパク質が、FokIのDNA切断ドメインであり、前記TALEのDNA結合ドメインと共にTALEN融合タンパク質を形成しており、前記FokIのDNA切断ドメインが前記植物細胞のゲノムにおける、前記TALEのDNA結合ドメインが結合可能な特定の配列の近傍を切断する、ゲノム編集方法、である。
前記切断により、遺伝子破壊を生じさせてもよい。また、切断されたDNAの修復の際に、切断端に相補的な配列を有する核酸フラグメントを修復鎖中に取り込んでしまう場合がある。このため、前記切断の生じる箇所の近傍のゲノム配列に相同的な人工設計核酸配列を存在させておくことにより、前記人工設計核酸配列をゲノム中に導入してもよい。
【実施例】
【0111】
0. 使用した材料
エントリーベクターpPlatシリーズの構築にはpDONR207(Invitrogen社)の複製起点とクロラムフェニコール耐性遺伝子、pCAMBIA1301(CAMBIA、オーストラリア)のNOSターミネーターとトウゴマ・カタラーゼ遺伝子のイントロン、pGEX3X(ゼネラルエレクトリック社)のアンピシリン耐性遺伝子、及びプラチナゲートTALENキット(Addgene、イギリス)に含まれるptCMV136/63VRシリーズ(HD型、NG型、NI型、NN型の4種)のTALENコード領域を用いた。
なお、pDONR207に含まれるattP1配列、attP2配列、ゲンタマイシン耐性遺伝子は以下に示す製作過程で除去されたためpPlatシリーズには残存しない。ccdB遺伝子はGatewayBP反応により除去され、ゲンタマイシン耐性遺伝子は製作過程(項1-1参照)で除去された。Gateway attP1配列とGateway attP2配列はGateway BP clonase 反応によりattL1、attL2配列に置換された。
【実施例】
【0112】
デスティネーションベクターpDual35sGwIII-1301の製作にはpCAMBIA1301、pGWB2のGateway クローニングユニット、pCAMBIA1301のカリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターとLacZ αサブユニット遺伝子を用いた。
特に記載の無い場合、制限酵素はWakoニッポンジーン社の製品を、DNA ligase はToyobo社のLigation highを、PCR酵素はToyobo社のKOD plus neoを使用した。Gateway反応にはinvitrogen 社の LR clonaseII およびBP clonaseII を使用した。Platinum Gate TALEN kit のStep1およびStep2では制限酵素BsaI-HF (New England Biolab)、制限酵素Esp3I(Thermo Scientific)、Quick Ligation kit (New England Biolab)に含まれるQuick Ligase、10xT4 DNA ligase buffer (New England Biolab) を使用した。その他、DNA断片の精製、大腸菌を利用したプラスミドクローニング、プラスミドDNA溶液の調製は一般的な手法、器具、試薬で実施した。
【実施例】
【0113】
1. GatewayエントリーベクターpPlatシリーズの製作
1-1. pDONR-dGentの製作
pDONR207から制限酵素Esp3Iの認識部位を含む領域を除去するため、以下の方法でゲンタマイシン耐性遺伝子を除去した。pDONR207を鋳型とし、pDONRt-A_SpeI(表1、配列番号15)とpDONRt-B_XbaI(表1、配列番号16)をプライマーとするPCRによりpDONR207のゲンタマイシン耐性遺伝子を除く全領域を増幅した。得られたPCR産物を制限酵素SpeI(Wako)とXbaI(Wako)で消化し、DNA Ligase を用いて連結することで環状とし、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをpDONR-dGentと名付けた。
【実施例】
【0114】
1-2. pDONR-tAmpおよびpDONR-tCATシリーズの製作
以下の方法でpDONR-dGentにattL1配列、NOSターミネーター、アンピシリン耐性遺伝子、attL2配列、およびTALENコード領域を挿入するための制限酵素部位を導入した。NOSターミネーターを含むDNA断片はpCAMBIA1301を鋳型とし、Ter-F_attB1_SpeIXhoI(表1、配列番号17)とTer-R_AdAmp(表1、配列番号18)をプライマーとするPCRにより得た。アンピシリン耐性遺伝子はpGEX3Xを鋳型とし、Amp-F_attB2(表1、配列番号19)とAmp-R_AdTer(表1、配列番号20)をプライマーとするPCRにより増幅した。これらのPCR産物を混合したものを鋳型とし、Ter-F_attB1_SpeIXhoI(表1)とAmp-F_attB2(表1)をプライマーとするPCRにより、attB1配列、NOSターミネーター、アンピシリン耐性遺伝子、attB2配列をこの順で含むDNA断片を得た。pDONR-dGentとこのPCR断片の混合物をBP clonase IIにより消化した。これにより、DNA断片に含まれる配列をpDONR-dGentのattP1-attP2間に挿入するとともに両端の配列をそれぞれattL1、attL2配列に変換し、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをpDONR-tAmpと名付けた。
【実施例】
【0115】
以下の方法でpDONR-dGentにattL1配列、NOSターミネーター、クロラムフェニコール耐性遺伝子、attL2配列を導入した。NOSターミネーターを含むDNA断片はpCAMBIA1301を鋳型とし、Ter-F_attB1_SpeIXhoI(表1)とTer-R_AdCAT(表1、配列番号21)をプライマーとするPCRにより得た。クロラムフェニコール耐性遺伝子はpDONR207を鋳型とし、CAT-F_attB2(表1、配列番号23)とCAT-R_AdTer(表1、配列番号22)をプライマーとするPCRにより増幅した。これらのPCR産物を混合したものを鋳型とし、Ter-F_attB1_SpeIXhoI(表1)とCAT-F_attB2(表1)をプライマーとするPCRにより、attB1配列、NOSターミネーター、クロラムフェニコール耐性遺伝子、attB2配列をこの順で含むDNA断片を得た。pDONR-dGentとこのPCR断片の混合物をBP clonase IIにより消化した。これにより、DNA断片に含まれる配列をpDONR-dGentのattP1-attP2間に挿入するとともに両端の配列をそれぞれattL1、attL2配列に変換し、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをpDONR-tCATと名付けた。
【実施例】
【0116】
pDONR-tAmpおよびpDONR-tCATのattL1配列とNOSターミネーターの間にTALENをコードする配列を挿入するための制限酵素部位は以下の方法で挿入した。pDONR-tAmpおよびpDONR-tCATを鋳型とし、pDONR-Cxba_HindIII(表1、配列番号24)とpDONR-Dbgl_HindIII (表1、配列番号25)をプライマーとするPCRによりプラスミドの全域を含むDNA断片を調製した。これらのDNA断片をそれぞれ制限酵素HindIIIで消化したのちDNA ligase を用いて分子内で連結することで環状DNAを得、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをそれぞれpDONR-tAmpIIおよびpDONR-tCATIIと名付けた。
クロラムフェニコール耐性遺伝子に含まれるEsp3I認識部位は以下の方法で除去した。pDONR-tCATIIを鋳型とし、CAT-A_BsaI(表1、配列番号36)とCAT-T_MscI(表1、配列番号37)をプライマーとするPCRによりクロラムフェニコール耐性遺伝子の一部を増幅し、制限酵素BsaIとMscIで消化した。この領域以外のプラスミド全領域を含むDNA断片は、pDONR-tCATIIを鋳型とし、CAT-S_MscI(表1、配列番号38)とCAT-B_Esp3I(表1、配列番号39)をプライマーとするPCRにより得た。このDNA断片を制限酵素Esp3IとMscIで消化した。これらのDNA断片をDNA ligase により連結し、大腸菌を用いてクローニングした。得られたプラスミドをpDONR-tCATIIIと名付けた。
【実施例】
【0117】
1-3. pPlatIシリーズの製作
TALENをコードする領域は以下の方法でpDONR-tAmpIIおよびpDONR-tCATIIに挿入した。ptCMV136/63VRシリーズを鋳型とし、TALEN63-F_BglII(表1、配列番号26)とTALEN63-R_HindIII(表1、配列番号27)をプライマーとするPCRによりTALENをコードする領域を含むDNA断片を増幅し、制限酵素HindIIIとBglIIで消化した。これをpDONR-tAmpIIおよびpDONR-tCATIIの HindIII部位とBglII部位の間に挿入した。得られたプラスミドをそれぞれpPlatIAシリーズ(pPlatIA-HD、pPlatIA-NG、pPlatIA-NI、pPlatIA-NNの4種)、pPlatICシリーズ(pPlatIC-HD、pPlatIC-NG、pPlatIC-NI、pPlatIC-NNの4種)と名付けた。
【実施例】
【0118】
1-4. pPlatIIAシリーズの製作
pPlatIAシリーズの複製起点を含む領域が逆位となったpPlatIIAシリーズは以下の方法で製作した。pPlatIAシリーズを鋳型とし、pPlatII-A_SpeI(表1、配列番号28)とpPlatII-B_EcoRI(表1、配列番号29)をプライマーとするPCRによりattL1配列からattL2配列までのTALENコード領域(HD型、NG型、NI型、NN型の4種類)を含む部位を増幅し、これらをそれぞれ制限酵素SpeIとEcoRIで消化した。pPlatIAシリーズを鋳型とし、pPlatII-D_XbaI(表1、配列番号31)とpPlatII-C_EcoRI(表1、配列番号30)をプライマーとするPCRにより複製起点を含むDNA断片を増幅し、制限酵素XbaIとEcoRIで消化した。このDNA断片とTALENコード領域を含むDNA断片(HD型、NG型、NI型、NN型の4種類)をDNA ligase により連結し、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをpPlatIIAシリーズ(pPlatIIA-HD、pPlatIIA-NG、pPlatIIA-NI、pPlatIIA-NNの4種)と名付けた。
【実施例】
【0119】
1-5. pPlat5Aシリーズの製作
TALENコード領域にイントロンを含むpPlat5Aシリーズは以下の方法で製作した。pCAMBIA1301を鋳型とし、Gint-F2_SpeI(表1、配列番号32)とGint-TALn-R(表1、配列番号33)をプライマーとするPCRによりトウゴマ・カタラーゼ遺伝子のイントロンを含むDNA断片を得た。このDNA断片を断片Aとする。pPlatIIAシリーズ(pPlatIIA-HD、pPlatIIA-NG、pPlatIIA-NI、pPlatIIA-NNの4種)を鋳型とし、Gint-TALn-F(表1、配列番号35)と pPlatII-B_EcoRI(表1)をプライマーとするPCRにより4種類のDNA断片を得た。この4種類のDNA断片を断片Bシリーズ(pPlatIIA-HD、pPlatIIA-NG、pPlatIIA-NI、pPlatIIA-NNに由来する4種)とする。この断片Bシリーズを含むDNA溶液にそれぞれ断片Aを混合したものを鋳型とし、Gint-F2_SpeI(表1)とpPlatII-B_EcoRI(表1)をプライマーとするPCRで増幅することで、断片Bシリーズにトウゴマカタラーゼ遺伝子のイントロンを連結したDNA断片(pPlatIIA-HD、pPlatIIA-NG、pPlatIIA-NI、pPlatIIA-NNに由来する4種)を作成した。これらをそれぞれ制限酵素EcoRIとSpeIで消化したものを断片Cシリーズ(pPlatIIA-HD、pPlatIIA-NG、pPlatIIA-NI、pPlatIIA-NNに由来する4種)とする。一方、pPlatIIA-HDを鋳型とし、pPlat4-H_XbaI(表1、配列番号34)とpPlatC-EcoRI(表1)をプライマーとするPCRにより、複製起点とattL1配列とTALENのN末端部分をコードする領域を含むDNA断片を調製した。これを制限酵素XbaIとEcoRIで消化したものを断片Dとする。断片Cシリーズと、この断片Dをそれぞれ混合し、DNA ligase により連結することでpPlatIIAのTALENコード領域にイントロンが挿入された環状DNAを得た。これを大腸菌を用いてクローニングし、得られたプラスミドをpPlat5Aシリーズ(pPlatI5A-HD、pPlat5A-NG、pPlat5A-NI、pPlat5A-NNの4種)と名付けた。
【実施例】
【0120】
1-6. pPlat5Cシリーズの製作
pPlat5Aシリーズに含まれるTALENコード領域を以下の方法でpDONR-tCATIIIに挿入した。pPlat5Aシリーズを鋳型とし、TALEN63-F_BglII(表1)とTALEN63-R_HindIII(表1)をプライマーとするPCRによりTALENをコードする領域を含むDNA断片を増幅し、制限酵素HindIIIとBglIIで消化した。これをpDONR-tCATIIIの HindIIIとBglIIの間に挿入し、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをそれぞれpPlat5Cシリーズ(pPlat5C-HD、pPlat5C-NG、pPlat5C-NI、pPlat5C-NNの4種)と名付けた。
【実施例】
【0121】
2. TALENをコードする遺伝子の製作
TALEN コード領域に標的認識部位を挿入する操作は以下のようにPlatinum Gate TALEN kit (Addgene, One Kendall Aq. B7102, Cambridge MA 02139) の方法 (Sakuma T. et al., 2013, Sci. Rep. 3: 3379; DOI: 10.1038/srep03379) にpPlat5シリーズとジャガイモGBSS遺伝子の配列を標的として適用することで実施した。今回はジャガイモGBSS遺伝子に含まれる配列tGGTTTAAGGGCTGTTaacaagcttgatgggCTCCAATCAAGAACTAa(配列番号10)を標的としたため、5'-tGGTTTAAGGGCTGTt-3'(配列番号11) 及び5'-tTAGTTCTTGATTGGAg-3'(配列番号12) を認識するTALENを以下のように設計・構築した。両配列の5'末端のTは天然のTALEの機能で認識される塩基である。また、TALEN認識配列の3'末端のTおよびGを認識する部位はpPlat5A-NGとpPlat5C-NNにそれぞれ含まれている。このためpPlat5A-NGとpPlat5C-NNに挿入された標的認識部位はそれぞれGGTTTAAGGGCTGT(配列番号13)を認識する部分とTAGTTCTTGATTGGA(配列番号14)を認識する部分である。
pPlat5A-NGにGGTTTAAGGGCTGTを認識する部位を挿入するための4種のプラスミド群はPlatinum Gate TALEN kit のStep1 を表3に示す組み合わせで実施することで得た。同様に、pPlat5C-NNにTAGTTCTTGATTGGAを認識する部位を挿入するための4種のプラスミド群はPlatinum Gate TALEN kit のStep1 を表4に示す組み合わせで実施することで得た。
Platinum Gate TALEN kit のStep2は、Platinum Gate TALEN kit に含まれるptCMVシリーズプラスミドの代わりにpPlat5A-NGとpPlat5C-NNをそれぞれ使用して実施した。Step1で得られた各4種のプラスミドとpPlat5A-NGとpPlat5C-NNをそれぞれ混合し、Step2で用いる緩衝液と酵素類を加えStep2と同じ温度と時間で反応を実施した。大腸菌を利用してクローニングし、得られたプラスミドをそれぞれpPlat5A-GBSS1aおよびpPlat5C-GBSS1bと名付けた。
【実施例】
【0122】
3. GatewayデスティネーションベクターpDual35sGwIII-1301の製作
カリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターとGateway attR配列をつないだ配列2種類は以下の方法でpCAMBIA1301に挿入した。
pGWB2 を鋳型とし、attR1-F_KpnI(表2、配列番号40)とattR2-R_SacI (表2、配列番号41)をプライマーとするPCRによりGateway クローニングユニットを増幅した。得られたDNA断片を制限酵素KpnIとSacIで消化し、pCAMBIA1301のKpnI部位とSacI部位の間にクローニングした。得られたプラスミドをpCAM-attRと名付けた。
同様にpGWB2を鋳型とし、35S-C _KpnI(表2、配列番号42)とattR2-R_HindIII (表2、配列番号43)をプライマーとするPCRによりGateway クローニングユニットをその5'上流配列を含めて増幅した。得られたDNA断片を制限酵素KpnIとHindIIIで消化し、pCAM-attRのKpnI部位とHindIII部位の間にクローニングした。得られたプラスミドをpCAM-attR-35SattRと名付けた。
pCAMBIA1301を鋳型とし、LacZ-S(表2、配列番号44)と35S-Z_XbaI(表2、配列番号45)をプライマーとするPCRによりカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとその5'上流に位置するLacZαサブユニット遺伝子を含むDNA断片を得た。pCAMBIA1301を鋳型とし、LacZ-A_EcoRI(表2、配列番号46)とLacZ-T(表2、配列番号47)をプライマーとするPCRによりpCAMBIA1301に含まれるLacZ遺伝子のプロモーター部位と開始コドンを含む領域を増幅した。これらのPCR産物を混合したものを鋳型とし、LacZ-A_EcoRI(表2)と35S-Z_XbaI(表2)をプライマーとするPCRによりこれらを連結し、制限酵素EcoRIとXbaIで消化した。一方で、pCAMBIA1301を鋳型とし、35S-D_EcoRI(表2、配列番号48)と35S-Z_KpnI(表2、配列番号49)をプライマーとするPCRによりカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを増幅し、制限酵素EcoRIとKpnIで消化した。この2種類のDNA断片と、pCAM-attR-35SattRをKpnIとXbaIで消化したものの3種類を混合し、DNA ligase により連結し、大腸菌を利用してクローニングした。得られたプラスミドをpDual35sGwIII-1301と名付けた。
【実施例】
【0123】
4. 植物で発現するTALEN遺伝子の製作
Gateway LR clonaseII を用いてpPlat5A-GBSS1aとpPlat5C-GBSS1bに含まれるTALENコード領域をpDual35sGw1301に含まれる2ヶ所のattR部位と置換した。得られた反応物から大腸菌を利用して2種のTALEN遺伝子を含むプラスミドをクローニングするため、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシンの3種類の抗生物質を含む培地を用いて、クローニングを実施した。得られたプラスミドをpTALEN-StGBSS1と名付けた。
【実施例】
【0124】
【表1】
JP2016163556A_000005t.gif
【実施例】
【0125】
【表2】
JP2016163556A_000006t.gif
【実施例】
【0126】
【表3】
JP2016163556A_000007t.gif
【実施例】
【0127】
【表4】
JP2016163556A_000008t.gif
【実施例】
【0128】
上記で得られた植物細胞用発現ベクターpTALEN-StGBSS1を植物細胞内に導入し、TALENの発現実験を行った。具体的には、pTALEN-StGBSS1と共に、TALENの活性をモニターするためのレポーターを有するプラスミドも植物細胞に導入した。このプラスミドは、以下のようにして作製された。pCAMBIA1301に含まれるGUS遺伝子の開始コドン~開始コドンの下流1.4kbまでの領域と、GUS(β-グルクロニダーゼ)遺伝子の終始コドン~終始コドンの上流1.4kbまでの領域との間に、試験用の認識配列を導入した構造(図2)を有するプラスミドを、標準的なPCRおよび組換え手法を用いて作製した。図2において、試験用の認識配列の導入部位は*で表されている。ここで、本実験では、試験用の認識配列として、pTALEN-StGBSS1に含まれるTALENをコードする遺伝子から発現するTALENの認識配列である配列番号10の配列(この配列が挿入されているプラスミドを、以下、TALEN#12とも称する)、および、前記TALENの認識配列ではない配列番号53(この配列が挿入されているプラスミドを、以下、mismatchとも称する)の配列を用いた。また、上記のGUS遺伝子上流側領域と、GUS遺伝子下流側領域とは、図2に示されるように一部が重複した構造となっている。認識配列が挿入されている結果、プラスミドが植物細胞に導入されても、GUSは有効に発現しないようになっている。
これらのプラスミドを導入する植物細胞としてはコメ(Rice)の培養細胞を用い、プロトプラスト-PEG法によって、プラスミドの導入を行った。プロトプラスト-PEG法の詳細は、Yoo SD, Cho YH, Sheen J (2007) Arabidopsis mesophyll protoplasts: a versatile cell system for transient gene expression analysis (Nat Protoc 2: 1565-1575)などを参照できる。その他、培養の手法などは、Aoki et al., Plant Biotechnol. 31:221-228(2014)に記載の方法に準拠して行った。
【実施例】
【0129】
プラスミドを導入したプロトプラストは、最初にWIバッファー中でインキュベートし、一旦、遠心により回収した。回収したプロトプラストをGUS抽出バッファー(50mM Tris-HCl (pH 7.0), 10mM EDTA, 0.1% TritonX-100および0.1%NoniDet P-40 (Sigma-Aldrich))に懸濁した。懸濁液の一部(aliquot)を分取し、GUS活性の測定に用いた。GUSの活性は、1mMの4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニドを含むバッファー溶液を用いて、GUS活性により生じる生成物である4-メチルウンベリフェロンからの蛍光強度を蛍光光度系ARVO X2(パーキンエルマー)を用いて測定することで行った。ここで、4-メチルウンベリフェロンの励起は355nm/40nmの光(355nmを中心とする40nmの波長幅の光)で行い、蛍光の測定は460nm/25nmの光(460nmを中心とする25nmの波長幅の光)を測定することにより行った。
ここで、TALENが有効に発現して機能した場合、TALEN#12中の配列番号10の配列にTALENが結合して、DNA鎖の切断を行う結果、SSA(single strand annealing)が起こり、前記GUS遺伝子上流側領域と前記GUS遺伝子下流側領域がその重複部において適切に連結される結果、機能的なGUS遺伝子が形成され、GUS活性が生じると考えられる。
【実施例】
【0130】
実験の結果を図3に示す。図3において、mismatchは上記の配列番号53(TALENの認識配列ではない配列)が挿入されたプラスミドをpTALEN-StGBSS1と共に導入した場合の結果を、TALEN#12は上記の配列番号10(TALENの認識配列)が挿入されたプラスミドをpTALEN-StGBSS1と共に導入した場合の結果を、そして、backgroundは、遺伝子導入の際に、上記のプラスミドもpTALEN-StGBSS1も遺伝子導入用溶液に含ませなかった場合の結果を示す。
上記の図3から分かるように、TALENの認識配列を有するTALEN#12は、認識配列を有しないmismatchと比べて、より有効に切断およびSSAが起こり、その結果、より高いGUS活性が観察された。
【実施例】
【0131】
以上で説明したとおり、本開示によって、例えば、新規な植物細胞用発現ベクターならびにその製造方法およびその製造に用いるベクターなどが提供され、これにより、例えば、DNA結合ドメインを有し二量体として機能する所望のタンパク質を、所望の植物細胞において適切に発現することが可能となる。
【実施例】
【0132】
本開示における、例示的な実施形態は以下のものを含む。
<1> 第1のattL組換え部位と、
可変領域を有するTALE(TAL effector)のDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入可能な挿入位置を有する挿入領域と、
前記挿入位置にTALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントが挿入された場合にTALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質をコードする核酸配列を形成可能となるように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記挿入領域、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記挿入位置との間に、プロモーターを有しない、DNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<2> 環状二本鎖プラスミドベクターである、<1>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【実施例】
【0133】
<3> さらに構成セグメントを含む、<1>または<2>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<4> 前記第1のattL組換え部位の核酸配列は、前記第2のattL組換え部位の核酸配列とは異なる、<1>~<3>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<5> 前記第1のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位と組み換え可能であり、前記第2のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位とは核酸配列が異なる第2のattR組換え部位と組み換え可能である、<1>~<4>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<6> 前記第1のattL組換え部位は前記第2のattR組換え部位と組み換え可能ではなく、前記第2のattL組換え部位は前記第1のattR組換え部位とは組み換え可能ではない、<1>~<5>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【実施例】
【0134】
<7> 前記第1のattL組換え部位がattL1およびattL2のうちの一方であり、前記第2のattL組換え部位がattL1およびattL2のうちの他方である、<1>~<6>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<8> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、核酸組換え活性、核酸修復活性、転写制御活性、および核酸修飾活性からなる群から選択される1つ以上を有するタンパク質をコードする遺伝子である、<1>~<7>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<9> 前記生物学的活性を有するタンパク質が、2量体として機能するタンパク質である、<1>~<8>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<10> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、FokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子である、<1>~<9>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<11> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子がイントロンを含む、<1>~<10>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<12> 前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、マーカー遺伝子をさらに含む、<1>~<11>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【実施例】
【0135】
<13> 前記マーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と前記第2のattL組換え部位との間に位置する、<12>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<14> 前記マーカー遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子および薬剤耐性遺伝子からなる群から選択される、<12>または<13>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<15> 前記マーカー遺伝子が、抗生物質耐性遺伝子である、<12>~<14>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<16> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと、前記マーカー遺伝子との間の距離が、0.2kb~1.0kbである、<12>~<15>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<17> 前記挿入領域が、前記挿入位置の下流側隣接位置に、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、またはグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを含む、<1>~<16>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
【実施例】
【0136】
<18> 前記挿入位置と、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子との間の距離が、0.1kb~0.5kbである、<1>~<17>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<19> 前記第1のattL組換え部位と、前記挿入位置との間の距離が、0bp~1.0kbである、<1>~<18>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<20> 各々が<1>~<19>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、および
前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター、
を含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0137】
<21> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものである、<20>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<22> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものである、<20>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<23> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものである、<20>~<22>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0138】
<24> 各々が<1>~<19>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターである複数種類のベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群、を含み、
前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含み、
前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群は、それぞれ、アデニン認識用ジペプチド、シトシン認識用ジペプチド、チミン認識用ジペプチド、およびグアニン認識用ジペプチド、をコードする核酸セグメントを前記挿入領域における前記挿入位置の下流側隣接位置に含む4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを含む、DNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0139】
<25> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものである、<24>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<26> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列が同じものであり、前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第2のattL組換え部位の核酸配列と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記第1のattL組換え部位の核酸配列が同じものである、<24>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<27> 前記第1のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2のDNA結合ドメイン組込み用ベクター群の前記4種のDNA結合ドメイン組込み用ベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものである、<24>~<26>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0140】
<28> <1>~<19>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターを準備すること、および
前記DNA結合ドメイン組込み用ベクターの前記挿入位置に、TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントを挿入すること、
を含む、融合タンパク質をコードする核酸セグメントを含む融合タンパク質コーディングベクターの製造方法。
<29> 前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列の繰り返し数が、13~25である、<28>に記載の方法。
<30> 前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列の繰り返し数が、14~20である、<28>または<29>に記載の方法。
<31> 前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列が、前記生物学的活性を有するタンパク質の作用対象部位となる対象核酸領域の配列に基づいて、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列が前記対象核酸領域に結合可能となるように選択されたものである、<28>~<30>のいずれかに記載の製造方法。
<32> 前記挿入が、Platinum Gate法によって行われる、<28>~<31>に記載の製造方法。
【実施例】
【0141】
<33> 第1のattL組換え部位と、
TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、
第2のattL組換え部位と、
を含み、
前記第1のattL組換え部位、前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメント、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、および前記第2のattL組換え部位は、前記生物学的活性を有するタンパク質がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第1のattL組換え部位と前記TALEのDNA結合ドメインをコードする核酸セグメントとの間に、プロモーターを有しない、融合タンパク質コーディングベクター。
<34> 環状二本鎖プラスミドベクターである、<33>に記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<35> さらに構成セグメントを含む、<33>または<34>に記載の融合タンパク質コーディングベクター。
【実施例】
【0142】
<36> 前記第1のattL組換え部位はattL1およびattL2のうちの一方であり、前記第2のattL組換え部位はattL1およびattL2のうちの他方である、<33>~<35>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<37> 前記第1のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位と組み換え可能であり、前記第2のattL組換え部位は、第1のattR組換え部位とは核酸配列が異なる第2のattR組換え部位と組み換え可能である、<33>~<36>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<38> 前記第1のattL組換え部位は前記第2のattR組換え部位と組み換え可能ではなく、前記第2のattL組換え部位は前記第1のattR組換え部位とは組み換え可能ではない、<33>~<37>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<39> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、核酸組換え活性、核酸修復活性、転写制御活性、および核酸修飾活性からなる群から選択される1つ以上を有するタンパク質をコードする遺伝子である、<33>~<38>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<40> 前記生物学的活性を有するタンパク質が、2量体として機能するタンパク質である、<33>~<39>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<41> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、FokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子である、<33>~<40>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
【実施例】
【0143】
<42> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子がイントロンを含む、<33>~<41>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<43> 前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、マーカー遺伝子をさらに含む、<33>~<42>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<44> 前記マーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と前記第2のattL組換え部位との間に位置する、<43>に記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<45> 前記マーカー遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子および薬剤耐性遺伝子からなる群から選択される、<43>または<44>に記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<46> 前記マーカー遺伝子が、抗生物質耐性遺伝子である、<43>~<45>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<47> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の終始コドンと、前記マーカー遺伝子との間の距離が、0.2kb~1.0kbである、<43>~<46>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
【実施例】
【0144】
<48> 前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントと、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子との間の距離が、0.1kb~0.5kbである、<33>~<47>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<49> 前記第1のattL組換え部位と、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする核酸セグメントとの間の距離が、0bp~1.0kbである、<33>~<48>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクター。
<50> 各々が<33>~<49>のいずれかに記載の融合タンパク質コーディングベクターである複数種類のベクターを含む、融合タンパク質コーディングベクターセットであって、
前記複数種類のベクターは、前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に第1のマーカー遺伝子を含む、第1の融合タンパク質コーディングベクター、および前記第1のattL組換え部位と前記第2のattL組換え部位との間に、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子を含む、第2の融合タンパク質コーディングベクター、を含む、融合タンパク質コーディングベクターセット。
<51> 前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と、前記第2の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものである、<50>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0145】
<52> 第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含むデスティネーションベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattR組換え部位と、
第2のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattR組換え部位と、
第4のattR組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattR組換え部位および前記第2のattR組換え部位は、前記第1のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、前記第2のプロモーターがコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、デスティネーションベクター。
<53> 前記第1のDNAブロックにおける前記第1のプロモーターがコードされた方向を基準として前記第2のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBを有する核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記第2のプロモーターがコードされた方向を基準として前記第4のattR組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBを有する核酸セグメントと、をさらに含む、<52>に記載のデスティネーションベクター。
<54> 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが、構成的プロモーター、誘導的プロモーター、組織特異的プロモーターおよび時期特異的プロモーターから選択される、<52>または<53>に記載のデスティネーションベクター。
<55> 前記構成的プロモーターが、強発現プロモーターである、<54>に記載のデスティネーションベクター。
【実施例】
【0146】
<56> 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターである、<52>~<55>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<57> 環状二本鎖プラスミドベクターである、<52>~<56>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<58> アグロバクテリウム内でベクターの複製および維持を可能とする複製起点を有する、<52>~<57>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<59> さらに構成セグメントを含む、<52>~<58>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<60> 前記第1~第4のattR組換え部位は、各々attR1またはattR2である、<52>~<59>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクター。
<61> 前記第1のattR組換え部位の核酸配列が前記第2のattR組換え部位の核酸配列とは異なり、前記第3のattR組換え部位の核酸配列が前記第4のattR組換え部位の核酸配列とは異なる、<52>~<60>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
【実施例】
【0147】
<62> 前記第1のattR組換え部位の核酸配列と前記第3のattR組換え部位の核酸配列が同じであり、前記第2のattR組換え部位の核酸配列と前記第4のattR組換え部位の核酸配列とが同じである、<52>~<61>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<63> 前記第1のattL組換え部位および前記第3のattR組換え部位は、第1のattL組換え部位と組み換え可能であり、前記第2のattR組換え部位および前記第4のattR組換え部位は、第1のattL組換え部位とは核酸配列が異なる第2のattL組換え部位と組み換え可能である、<52>~<62>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。
<64> 前記第1のattR組換え部位および前記第3のattR組換え部位は前記第2のattL組換え部位と組み換え可能ではなく、前記第2のattR組換え部位および前記第4の組換え部位は前記第1のattL組換え部位とは組み換え可能ではない、<52>~<63>のいずれかに記載のデスティネーションベクター。・
<65> 前記第1のattR組換え部位の核酸配列と前記第4のattR組換え部位の核酸配列が同じであり、前記第2のattR組換え部位の核酸配列と前記第3のattR組換え部位の核酸配列とが同じである、<52>~<61>に記載のデスティネーションベクター。
<66> 前記第1のプロモーターと前記第1のattR組換え部位との間の距離および前記第2のプロモーターと前記第3のattR組換え部位との間の距離が、0bp~500bpである、<52>~<65>に記載のデスティネーションベクター。
【実施例】
【0148】
<67> <50>または<51>に記載のベクターセットにおける前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第1のattL組換え部位を、<52>~<65>のいずれかに記載のデスティネーションベクターにおける前記第1のattR組換え部位と組み換えること、
前記第1の融合タンパク質コーディングベクターにおける前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第2のattR組換え部位と組み換えること、
前記ベクターセットにおける前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第1のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第3のattR組換え部位と組み換えること、および
前記第2の融合タンパク質コーディングベクターの前記第2のattL組換え部位を、前記デスティネーションベクターにおける前記第4のattR組換え部位と組み換えること、
を含む、植物細胞用発現ベクターの製造方法。
<68> 前記組み換えが、いずれも、LRクロナーゼ(登録商標)によって行われる、<67>に記載の方法。
【実施例】
【0149】
<69> 第1のDNAブロックおよび第2のDNAブロックを含む植物細胞用発現ベクターであって、
前記第1のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第1のプロモーターと、
第1のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第1の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と、
第2のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは、
植物細胞で作動可能な第2のプロモーターと、
第3のattB組換え部位と、
特定の核酸配列に結合可能なTALEのDNA結合ドメインをコードする第2の核酸セグメントと、
前記TALEのDNA結合ドメインとの融合タンパク質を形成するように位置する、生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と、
第4のattB組換え部位と、
を含み、
前記第2のDNAブロックは前記第1のプロモーターの上流側に位置し、かつ前記第1のDNAブロックとは逆向きに配置されており、前記第1のDNAブロックにおいて、前記第1のプロモーター、前記第1のattB組換え部位、前記第1の核酸セグメント、前記第1の遺伝子および前記第2のattB組換え部位は、前記第1の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されており、前記第2のDNAブロックにおいて、前記第2のプロモーター、前記第3のattB組換え部位、前記第2の核酸セグメント、前記第2の遺伝子および前記第4のattB組換え部位は、前記第2の遺伝子がコードされている方向における上流側から下流側に向かってこの順に配置されている、植物細胞用発現ベクター。
<70> 環状二本鎖プラスミドベクターである、<69>に記載の植物細胞用発現ベクター。
<71> アグロバクテリウム内でベクターの複製および維持を可能とする複製起点を有する、<69>または<70>に記載の植物細胞用発現ベクター。
<72> さらに構成セグメントを含む、<69>~<71>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<73> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子が、それぞれ独立に、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、核酸組換え活性、核酸修復活性、転写制御活性、および核酸修飾活性からなる群から選択される1つ以上を有するタンパク質をコードする遺伝子である、<69>~<72>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
【実施例】
【0150】
<74> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子が、FokIのDNA切断ドメインをコードする遺伝子である、<69>~<73>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<75> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子が、2量体として機能するタンパク質である、<69>~<74>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<76> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子が、同じものであるかまたはこれらがコードするタンパク質が協同して機能するものである、<69>~<75>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<77> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子が、イントロンを含む、<69>~<76>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<78> 前記第1~第4のattB組換え部位は、各々attB1またはattB2である、<69>~<77>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
【実施例】
【0151】
<79> 前記第1のattB組換え部位と前記第2のattB組換え部位との間に位置する第1のマーカー遺伝子、および前記第3のattB組換え部位と前記第4のattB組換え部位との間に位置する第2のマーカー遺伝子をさらに含む、<69>~<78>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<80> 前記第1のマーカー遺伝子と、前記第2のマーカー遺伝子が異なるものである、<79>に記載の植物細胞用発現ベクター。
<81> 前記第1のマーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子と前記第2のattB組換え部位との間に位置し、前記第2のマーカー遺伝子が、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子と前記第4のattB組換え部位との間に位置する、<79>または<80>に記載の植物細胞用発現ベクター。
<82> 前記第1のマーカー遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子および薬剤耐性遺伝子からなる群から選択される、<79>~<81>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
【実施例】
【0152】
<83> 前記第2のマーカー遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子および薬剤耐性遺伝子からなる群から選択される、<79>~<82>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<84> 前記第1のマーカー遺伝子および前記第2のマーカー遺伝子が、抗生物質耐性遺伝子である、<79>~<83>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<85> 前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子の終始コドンと前記第1のマーカー遺伝子との間の距離、および前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子の終始コドンと前記第2のマーカー遺伝子との間の距離が、0.2kb~1.0kbである、<79>~<84>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<86> 前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第1の核酸セグメントと、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子との間の距離、および前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第2の核酸セグメントと、前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子との間の距離0.1kb~0.5kbである、<69>~<85>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<87> 前記第1のattB組換え部位と、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第1の核酸セグメントとの間の距離、および前記第3のattB組換え部位と、前記TALEのDNA結合ドメインの可変繰り返し配列をコードする第2の核酸セグメントとの間の距離が、0bp~1.0kbである、<69>~<86>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
【実施例】
【0153】
<88> 前記第1のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第2のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBをコードする核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第4のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBをコードする核酸セグメントと、をさらに含む、<69>~<87>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<89> 前記第1のプロモーターと前記第1のattB組換え部位との間の距離および前記第2のプロモーターと前記第3のattB組換え部位との間の距離が、0bp~500bpである、<69>~<88>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクター。
<90> <20>~<27>のいずれかに記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセットおよび<52>~<66>のいずれかに記載のデスティネーションベクターを含む、植物細胞用発現ベクター作製用キット。
<91> さらにLRクロナーゼを含む、<90>に記載のキット。
<92> <69>~<89>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入することを含む、前記植物細胞用発現ベクターを遺伝子導入した植物細胞を作製する方法。
【実施例】
【0154】
<93> 前記導入することが、前記植物細胞用発現ベクターをアグロバクテリウムに導入すること、および前記アグロバクテリウムを植物細胞に感染させることにより、前記植物細胞用発現ベクターを前記植物細胞内に導入すること、を含み、
前記植物細胞用発現ベクターは、前記第1のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第1の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第2のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された右境界配列RBをコードする核酸セグメントと、前記第2のDNAブロックにおける前記生物学的活性を有するタンパク質をコードする第2の遺伝子がコードされた方向を基準として前記第4のattB組換え部位よりも下流側の位置に配置された左境界配列LBをコードする核酸セグメントと、をさらに含む、<92>に記載の方法。
<94> <69>~<89>のいずれかに記載の植物細胞用発現ベクターを植物細胞に導入すること、前記導入された植物細胞用発現ベクターから前記生物学的活性を有するタンパク質を発現させること、および前記生物学的活性を有するタンパク質を植物細胞のゲノムに作用させること、を含むゲノム編集方法であって、前記生物学的活性を有するタンパク質が、FokIのDNA切断ドメインであり、前記TALEのDNA結合ドメインと共にTALEN融合タンパク質を形成しており、前記FokIのDNA切断ドメインが前記植物細胞のゲノムにおける、前記TALEのDNA結合ドメインが結合可能な特定の配列の近傍を切断する、ゲノム編集方法。
<95> 前記切断により、遺伝子破壊が起こる、<94>に記載のゲノム編集方法。
<96> 前記切断の際に、前記切断の生じる箇所の近傍のゲノム配列に相同的な人工設計核酸配列を存在させておくことにより、前記人工設計核酸配列をゲノム中に導入する、<94>に記載のゲノム編集方法。
<97> 前記挿入領域が制限酵素認識部位を有する、<1>~<19>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターまたは<20>~<27>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<98> 前記挿入領域が認識配列の外側を切断する制限酵素の認識部位を1つ、2つ、または3つ以上有する、<1>~<19>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターまたは<20>~<27>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<99> 前記挿入領域がBsaIまたはEspIの認識部位を1つ、2つ、または3つ以上有する、<1>~<19>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターまたは<20>~<27>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<100> 前記挿入領域がEspIの認識部位を2つ有する、<1>~<19>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターまたは<20>~<27>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
<101> 前記挿入領域の他にはEspIの認識部位を有しない、<100>に記載のDNA結合ドメイン組込み用ベクターまたはDNA結合ドメイン組込み用ベクターセット。
【実施例】
【0155】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2