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明細書 :オステオプロテジェリン誘導体及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-169171 (P2016-169171A)
公開日 平成28年9月23日(2016.9.23)
発明の名称または考案の名称 オステオプロテジェリン誘導体及びその用途
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  19/02        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
C07K  17/04        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
A61K 37/02
A61P 19/02
A61P 19/08
A61P 19/10
A61P 43/00 111
A61P 43/00 121
A61L 27/00 F
C07K 17/04
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2015-048698 (P2015-048698)
出願日 平成27年3月11日(2015.3.11)
発明者または考案者 【氏名】青木 和広
【氏名】加藤 玄樹
【氏名】大谷 啓一
出願人 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100103160、【弁理士】、【氏名又は名称】志村 光春
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4C084
4H045
Fターム 4C081AB03
4C081AB04
4C081AB06
4C081BA12
4C081BA17
4C081CE02
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA34
4C084CA59
4C084DB60
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA34
4C084MA52
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA96
4C084ZA97
4C084ZC02
4C084ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA61
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA10
4H045FA74
要約 【課題】 より一層の安全性や有効性が期待される新規の骨の形成促進成分を見いだし、これを骨形成促進剤等として用いる手段を提供すること。
【解決手段】 アミノ酸配列(Tyr-Cys-Glu-Ile-Glu-Phe-Cys-Tyr-Leu-Ile-Arg)からなるOP3-4のC末端がアミド化されていることを特徴とする、ペプチド誘導体を提供する発明し、さらに、当該ペプチド誘導体からなることを特徴とする、骨形成促進剤を提供し、当該骨形成促進剤が担体に固定されていることを特徴とする医療用複合担体、及び、当該骨形成促進剤又は骨形成促進剤を含有することを特徴とする医薬品組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1において表されるアミノ酸配列からなるOP3-4のC末端がアミド化されていることを特徴とする、ペプチド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド誘導体からなることを特徴とする、骨形成促進剤。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド誘導体、及び、ヒトBMP-2、からなることを特徴とする、骨形成促進剤。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド誘導体からなることを特徴とする、骨疾患の予防若しくは治療剤。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド誘導体、及び、ヒトBMP-2、からなることを特徴とする、骨疾患の予防若しくは治療剤。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の骨形成促進剤、あるいは、請求項4又は5に記載の骨疾患の予防若しくは治療剤、が担体に固定されていることを特徴とする、医療用複合担体。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の骨形成促進剤、あるいは、請求項4又は5に記載の骨疾患の予防若しくは治療剤、を含有することを特徴とする、医薬品組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の形成促進作用を有するペプチド誘導体と、その用途に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば砂糖等のカルシウムの消費を伴う成分が多く含まれる食事の過剰摂取、さらに高齢化社会が進む現代社会においては、単位容積当たりの骨質量の減少が様々な形で深く関わる骨疾患や、これに起因する骨折等、さらに歯槽骨の減少を伴う歯周病疾患等の骨や歯に関するトラブルが増大する傾向が認められる。
【0003】
無論のことこれらに対する対策としては、食事内容に対する考慮や運動による骨量増大等の生活習慣の改善は欠かせないが、他方のアプローチとして薬剤による治療や予防の必要性が認められる。
【0004】
例えば骨粗鬆症は、各種の原因による骨質量の病的な減少の総称であり、(1)老人性及び閉経後骨粗鬆症、(2)内分泌性骨粗鬆症、(3)先天性骨粗鬆症、及び、(4)不動性又は外傷性骨粗鬆症等が含まれ、これらに対して、カルシウム剤、ビタミンD製剤、女性ホルモン製剤、イプリフラボン、ビタミンK2製剤等が提供されている。
【0005】
また近時においては、BMP(Bone morphogenetic protein:骨形成蛋白質)が骨や歯の形成促進成分として、骨や歯の形成促進用途への応用が着目されている。BMP-2は、BMPサブファミリーの中のさらにdppサブファミリーに属する、筋組織内で異所性の骨化を誘導するサイトカインとして発見された分子量が約3万の糖蛋白質であり、TGF-βスーパーファミリー中のサブファミリーを構成していることが知られている(Wozney,J.M.et al.,Science,242,2538(1988):非特許文献1)。
【0006】
さらに、特定の配列を有する骨形成ペプチドを骨の形成促進成分として用いる試みがなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2012-77093号公報
【0008】

【非特許文献1】Wozney,J.M.et al.,Science,242,2538(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
骨に関連する代謝機構は多様であり、現在においても明確ではない点も存在する。よって、骨の形成促進に関するさらに多様なアプローチを行う意義は大きい。また、上記のBMPは体内への吸収困難性や不安定性、さらには種々の副作用の危険性が指摘されている(特許文献1等)。
【0010】
そこで、さらなる安全性や有効性が期待される新規の骨の形成促進成分を見いだし、これを当該形成促進剤等として用いる手段を提供すること本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記の課題の解決に向けて、オステオプロテジェリン(osteoprotegerin:OPG)について着目した。OPGは、骨のリモデリング(再構築)に深く関わっている生体内蛋白質である。リモデリングは、活性化、吸収、逆転、形成の4段階を経て行われることが知られており、OPGはその活性化期に大きく関係している。すなわち、骨吸収の刺激により、間葉系細胞及び骨芽細胞あるいは骨細胞においてRANKL(receptor activator of nuclear κB ligand)が産生され、これと造血系幹細胞から誘導された前破骨細胞におけるRANKLの受容体であるRANKとの相互作用を介して多核の破骨細胞への分化が誘導される。通常は、この過程は上記OPGの産生により均衡が保たれている。OPGは、RANKに構造が類似しているが膜貫通ドメインを持たない間葉系細胞や骨芽細胞における分泌性蛋白であり、いわばRANKの「おとり受容体」としての機能を有している。つまり、おとり受容体であるOPGとRANKが結合することにより、上記のRANKLとRANK間のシグナルは遮断され、骨吸収は抑制される。
【0012】
本発明者はこのOPGについて検討を重ねた結果、OPGのOP3-4と呼ばれる配列番号1のアミノ酸配列からなる部分ペプチドのC末端がアミド化されたペプチド誘導体に、非常に優れた骨の形成促進活性が認められることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、配列番号1において表されるアミノ酸配列(Tyr-Cys-Glu-Ile-Glu-Phe-Cys-Tyr-Leu-Ile-Arg)からなるOP3-4のC末端がアミド化されていることを特徴とする、ペプチド誘導体(以下、本発明のペプチド誘導体ともいう)を提供する発明である。
【0014】
さらに本発明は、(1)本発明のペプチド誘導体からなることを特徴とする、骨形成促進剤(以下、本発明の骨形成促進剤ともいう)を提供する発明であり、(2)当該骨形成促進剤、あるいは、骨疾患予防又は治療剤(後述)が担体に固定されていることを特徴とする医療用複合担体(以下、本発明の複合担体ともいう)、及び、(3)当該骨形成促進剤、あるいは、当該骨形成促進剤、又は、当該骨疾患予防若しくは治療剤、を含有することを特徴とする医薬品組成物(以下、本発明の医薬品組成物ともいう)を提供する発明である。
【0015】
ヒトOPGのアミノ酸配列と塩基配列は既に知られており(Simonet, WS et al, Cell.89(2):309-19 1997, Yasuda H et al, Endocrinology. 139(3):1329-37 1998.)、OPGは、OP1、OP2、及び、OP3の3箇所のRANKL結合部位を伴っている(Cheng et al, J Biol Chem. 279(9):8269-77 2004)。OP3-4は、このOP3におけるRANKLとの複合体を形成するための本質的な部位である。本発明のペプチド誘導体は、上記OP3-4のC末端、すなわち上記配列の「Arg」のカルボキシル基「-C(=O)-OH」の「-OH」が「-NH」に置き換わった1級アミドである。
【0016】
このようなC末端におけるアミド化修飾を施すことにより、OP3-4の未修飾ペプチドと比較して、破骨細胞の分化阻害作用及び上述したBMPの作用増強が認められる本発明のペプチド誘導体を作出することができる。
【0017】
さらに、本発明のペプチド誘導体とBMP-2を組み合わせて用いることにより、相乗的に骨形成促進作用を発揮させることが可能であり、本発明は、本発明のペプチド誘導体、及び、BMP-2からなることを特徴とする、骨形成促進剤を提供し、この態様も本発明の骨形成促進剤である。
【0018】
本発明の骨形成促進剤における「形成促進」とは、文字通りの骨の形成促進と、骨の新生の促進を意味するものであり、具体的な効能としては、骨折の治療、骨折の予防、骨量減少の抑制等が挙げられ、歯においては歯周病疾患における歯槽骨の溶解現象の抑制若しくは当該溶解状態からの回復、さらには歯槽骨の新生等が挙げられる。特に、歯槽骨の骨量回復により入れ歯を安定させる治療、及び、インプラント治療においては、本発明の骨形成促進剤の効能は有用である。
【0019】
インプラント治療とは、歯の喪失により生じた欠損部位の顎骨に人工物を埋入し、これを支台として歯冠部や歯肉部への代替物を取り付け、損なわれた咀嚼機能、審美、発音等を回復する治療法であり、インプラントは人工歯根とも呼ばれている。現在、インプラント治療は、歯槽骨内にインプラント体を埋入し、これを人工歯根として、上部構造と一体化させる骨内インプラント方式が主流である。インプラント治療の成功には、インプラント体と歯槽骨の結合に関して、X線写真や光学顕微鏡レベルにおいて、歯根膜を有する天然歯とは大きく異なり、界面に何も存在せず、両者が直接的に接している状態(オッセオインテグレーション)となることが前提となる。このオッセオインテグレーションの状態を得るためには、インプラント体埋入予定部において、歯槽骨の量と質が一定レベル以上であることが要求される。すなわち、歯槽骨量が少なくても、歯槽骨密度が少なくても、インプラント体の土台として不的確である可能性が強くなり、骨粗鬆症に罹患をしていると、インプラント治療の適用除外になる可能性がある。また、骨移植、骨再生誘導法(GBR法)、上顎洞底挙上術、ソケットリフト、リッジエクスパンジョン、仮骨延長法等が行われている。
【0020】
本発明の骨形成促進剤は、特に上記の骨移植やGBR法を行うに際して、歯槽骨の形成促進効果を発揮して、これらの歯槽骨の再形成術を成功に導く効果が認められる。あるいは、GBR法を用いずとも骨量を増加させることが可能である。本発明の骨形成促進剤は、局所の骨形成を促進することにより、骨折の治癒の促進、口蓋裂の治療、顎骨部の骨増量治療等にも用いることが可能である。
【0021】
このように本発明の骨形成促進剤は、骨疾患の予防又は治療剤として用いることが可能である(以下、本発明の骨疾患治療剤ともいう)。具体的に本発明の骨疾患治療剤は、骨粗鬆症[老人性及び閉経後骨粗鬆症、内分泌性骨粗鬆症、先天性骨粗鬆症、並びに、不動性又は外傷性骨粗鬆症等]、骨軟化症、リウマチ性骨疾患、歯周病に伴う歯槽骨の溶解、癌に伴う骨疾患、くる病、関節炎、変形性関節症等の予防又は治療剤として用いることが可能である。
【0022】
本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤を担体に固定化してなる本発明の複合担体は、これを患部や骨欠損部位等への埋植をすることにより、当該部位の骨形成を促進させて、対象となる骨疾患の予防や治療を行うことができる。
【0023】
本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤を含有してなる本発明の医薬品組成物は、静脈投与、皮下投与、腹腔内投与、関節内投与、経皮投与、又は、骨欠損部や患部への充填等により、必要な骨形成を促進し、骨疾患を治療又は予防することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、非常に優れた骨形成促進作用を伴うペプチド誘導体が提供され、また、当該ペプチド誘導体からなる骨形成促進剤、及び、骨疾患治療剤が提供される。そして、これらの剤が担体に固定化された医療用の複合担体、及び、これらの剤を含有する医薬品組成物が、本発明により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のペプチド誘導体のMSスペクトルのチャートを含むデータである。
【図2】本発明のペプチド誘導体のHPLCのチャートを含むデータである。
【図3】非アミド化ペプチドOP3-4のMSスペクトルのチャートを含むデータである。
【図4】非アミド化ペプチドOP3-4のHPLCのチャートを含むデータである。
【図5】W9のMSスペクトルのチャートを含むデータである。
【図6】W9のHPLCのチャートを含むデータである。
【図7】本発明のペプチド誘導体の使用に関して、マウス骨髄細胞から破骨細胞への誘導能への影響を示す染色結果を示す画像である。
【図8】図7の染色結果の代表例の拡大図である。
【図9】図2で示したTRAP染色で、かつ、核を3核以上保有する細胞の数を破骨細胞数として数えた際の定量結果を示す図面である。
【図10】本発明のペプチド誘導体の使用による骨芽細胞の分化に対する影響を、アルカリフォスファターゼ染色で検討した結果を示す画像である。
【図11】図10に示した画像における染色濃度を定量化した結果を示す図面である。
【図12】脛骨を用いた関節炎モデルによる、本発明のペプチド誘導体の関節炎に対する有効性を示した画像である。
【図13】図12に示したモデルの脛骨における末梢骨用定量的CTを用いた骨密度定量による、本発明のペプチド誘導体の関節炎に対する有効性を検討した結果を示す図面である。
【図14】本発明のペプチド誘導体の骨吸収活性の抑制に関して検討した結果を示す図面である。
【図15】本発明のペプチド誘導体の投与によるカルセインの骨形成部位への沈着の促進に関して検討した結果を示す図面である。
【図16】本発明のペプチド誘導体の投与によるカルセインの二重ラベルの幅への影響を検討した結果を示す図面である。
【図17】図16に基づき、骨形成率について検討した結果を示す図面である。
【図18】本発明のペプチド誘導体のマウス頭蓋骨における局所の骨形成を検討した結果を示す、マイクロCT像である。
【図19】図18の新生骨の骨密度をDXA(二重エネルギーX線測定法)により計測した結果を示す図面である。
【図20】マウスの上顎骨に対して、本発明のペプチド誘導体とBMP-2を含ませた担体を、注射で局部に注入した場合の骨形成に対する効果を検討した結果を示す、マイクロCT像である。
【図21】図20の試験系において、pQCT(末梢骨用定量CT)を用いて新生骨の骨密度(1)と骨量(2)について解析を行った結果を示す図面である。
【図22】図20の試験系において、マウス上顎部非脱灰切片の蛍光顕微鏡像を用いた骨新生の検証を行った結果を示す、蛍光顕微鏡像である。
【図23】図22の蛍光顕微鏡像における、屠殺2日前のデメクロサイクリン染色部分の面積について、BMP-2投与群と、本発明のペプチド誘導体とBMP-2の併用群の両者を比較して示した図面である。
【図24】本発明のペプチドとBMP-2を組み合わせて用いた場合の、異所性骨形成活性を検討した結果を示す、マイクロCT像である。
【図25】図24の筋膜下に形成された骨の量をDXAにより骨塩量として計測した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)本発明のペプチド誘導体
本発明のペプチド誘導体は、上述の通りに配列番号1のアミノ酸配列におけるC末端がアミド化されたペプチド誘導体である。

【0027】
本発明のペプチド誘導体の製造方法は特に限定されるものではなく、主に化学合成法を駆使して製造することができる。

【0028】
本発明のペプチド誘導体におけるアミノ酸数は11と比較的短鎖であるゆえに、ペプチドの化学合成法を行って、直接本発明のペプチド誘導体を製造することが有利である。

【0029】
本発明のペプチド誘導体は、公知のペプチドの化学合成法とC末端のアミド化修飾法に従い製造することが可能である。ペプチド合成に関しては、常法として確立している液相ペプチド合成法、又は、固相ペプチド合成法を用いて製造することが可能である。そして、一般的に好適な化学合成法として認識されている固相ペプチド合成法も、Boc固相法又はFmoc固相法を用いることが可能であり、必要に応じてライゲーション法を用いることも可能である。また、オリゴペプチド等を構成する個々のアミノ酸は、公知の方法により製造可能であり、市販品を用いることも可能である。

【0030】
上述のように本発明のペプチド誘導体に際しては、C末端のアミド化が必要である。このアミド化の方法として好適な方法として、アミド形成に適した合成用樹脂を用いた合成が挙げられる。当該合成用樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4-ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)フェノキシ樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノエチル)フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)フェノキシ樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノエチル)フェノキシ樹脂が好適である。このような樹脂を用い、α-アミノ基と側鎖官能基を適切に保護したアミノ酸を目的とするペプチドの配列通りに、公知の縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種の保護基を除去し、目的のC末端がアミド化した本発明のペプチド誘導体を得ることができる。

【0031】
また、カルボキシル末端アミノ酸であるアルギニンのα-カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を本発明のペプチド誘導体のアミノ酸配列通りにペプチドを延ばすことによっても、本発明のペプチド誘導体を得ることができる。上記アミド化は、常法、例えば、水溶液中におけるアンモニアとの接触等により行うことができる。

【0032】
上記した保護されたアミノ酸の縮合においては、ペプチド合成に使用できる公知の各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類が好適である。カルボジイミド類としてはDCC、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミド等が挙げられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt等)と共に保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとして予め保護されたアミノ酸の活性化を行った後に樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の酸アミド類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;トリフルオロエタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ピリジン等の三級アミン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;又は、これらの混合物等が用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応において採用される-20℃~50℃程度である。

【0033】
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、t-ペンチルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、2-Cl-ベンジルオキシカルボニル基、2-Br-ベンジルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、フタロイル基、ホルミル基、2-ニトロフェニルスルフェニル基、ジフェニルホスフィノチオイル基、N-9-フルオレニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基、2-アダマンチル基、4-ニトロベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-クロロベンジル基、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド基、t-ブトキシカルボニルヒドラジド基、トリチルヒドラジド基等が挙げられる。

【0034】
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばベンジル基、Cl-ベンジル基,2-ニトロベンジル基、Br-ベンジルオキシカルボニル基、t-ブチル基等が挙げられる。

【0035】
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd-黒あるいはPd-炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等が挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に-20℃~40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニア等によるアルカリ処理によっても除去される。

【0036】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は、公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。

【0037】
上述のように合成した本発明のペプチド誘導体は常法に従い、脱保護等の工程後に、逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)等の常法により、本発明のペプチド誘導体の精製品として得ることが可能である。そして、質量分析法(matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight:MALDI-TOF、又は、liquid chromatography-electro spray ionization:LC-ESI)により同定を行うことが可能である。最終的にはペプチド誘導体を加水分解して、アミノ酸組成と含有量の確認を行うことができる。

【0038】
本発明のペプチド誘導体は、生理的に許容される塩であってもよい。このような塩は、通常の塩生成反応を介して得ることが可能であり、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩等の酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニン等のアミンとの塩が挙げられる。このような塩も本発明のペプチド誘導体の範疇である。

【0039】
以上のようにして、本発明のペプチド誘導体を製造することができる。なお、今日においては、本発明のペプチド誘導体は、ペプチド合成の受託サービスに外注して得ることも可能である。例えば、和光純薬株式会社(http://wako-chem.co.jp/siyaku/jutaku/peptide/index.htm)、株式会社東レリサーチセンター(http://www.toray-research.co.jp/bio/taishouta/tai_002.html)等において、ペプチド合成の受託サービスが行われており、C末端をアミド化したペプチド誘導体の製造の受託が可能である旨が記載されている。

【0040】
(2)本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤
上記の本発明のペプチド誘導体は、これを「骨形成促進用途」、及び、「骨疾患治療用途」、すなわち、「骨形成促進剤」、及び、「骨疾患治療剤」として用いることができる。

【0041】
「骨形成促進用途」、及び、「骨疾患治療用途」の内容は、上述の「課題を解決する手段」において開示した通りである。本発明のペプチド誘導体は、これらの用途を伴って用いることができる。また、本発明のペプチド誘導体は、既存の骨や歯の形成促進成分、例えば、前述したBMP-2等と組み合わせて骨形成促進剤や骨疾患治療剤として用いることができる。特に、本発明のペプチド誘導体とBMP-2を組み合わせて用いることにより、局所における骨形成をいっそう促進させることが可能である。

【0042】
(3)本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤の実施態様
[複合担体]
上述したように本発明の複合担体は、「本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤が担体に固定されている、医療用複合担体」である。特に損傷部や病変部の特定部分の骨形成を促す骨形成用途にこの態様は好適である。具体的には、生体と適合性が認められる素材の担体、特に好ましくは生体内分解性で加工、成形が容易である素材の担体に、本発明のペプチド誘導体を結合させてなる医療用複合担体である。担体の素材としては、各種のセラミックス、人工骨の他、アルギン酸の共有結合架橋ゲル(Suzuki,Y.et al.,J.Biomed.Mater.Res.,39,317(1998))、ヒアルロン酸ゲル等の多糖類ゲル、コラーゲン等の蛋白質ゲル、硫酸カルシウム、ポリ乳酸、ポリ乳酸/ゼラチン複合体、ポリグリコール酸、ヒドロキシアパタイト、リン酸トリカルシウム等の単独使用又は組み合わせ使用が例示されるが、これらに限定されるものではない。本発明の効果を損なわない限り、現状提供されている担体は無論のこと、将来提供される担体も用いることができる。これらの担体への本発明のペプチド誘導体の固定化方法は、具体的な素材に応じて適宜選択することが可能であり、共有結合、イオン結合、疎水結合、水素結合、SS結合等を形成する固定化方法、例えば、ペプチド誘導体含有溶液を用いる、浸漬、含浸、噴霧、塗布、滴下等の方法を用いることができる。これらの固定化方法のうち、特に共有結合による固定化方法が、安定性と作用の持続性の点から好適であり、通常、酵素等の生理活性蛋白質の固定化のために用いる方法によって所望の共有結合固定を行うことができる(Scouten,W.H.,Method in Enzymol.,135,Mosbach,K.Ed.,1987,Academic Press,NY,pp30-65等)。本発明の複合担体において本発明のペプチド誘導体は、乾燥担体100質量部に対して0.01~50質量部程度が好適である。さらに、BMP-2を組み合わせて用いる場合は、当該ペプチド誘導体の使用と共に、BMP-2を10-5~1質量部程度を用いることが好適である。

【0043】
また、本発明の複合担体は、局所への埋植であっても、注射による注入であっても、極めて優れた骨の形成促進効果や骨新生効果を発揮することが可能である。

【0044】
すなわち本発明の複合担体は、骨欠損部位や歯槽骨の補完部位等に、埋植又は注入されて、骨折の治療や歯槽骨の再生のために用いることができる。

【0045】
[医薬品組成物]
上述のように本発明の医薬品組成物は、「本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤を含有する、医薬品組成物」である。

【0046】
上述したように本発明の骨形成促進剤又は骨疾患治療剤である本発明のペプチド誘導体は、「医薬組成物」の有効成分として人体に投与される。当該ペプチド誘導体の直接投与の場合も、注射剤等を用時混合することになるので、これも医薬品組成物に含められる。

【0047】
本発明の医薬品組成物は、有効成分である本発明のペプチド誘導体と共に適切な医薬製剤担体を配合して製剤組成物の形態に調製される。当該製剤担体としては、使用形態に応じて選択することが可能であり、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、界面活性剤等の賦形剤ないし希釈剤を使用することができる。組成物の形態は、本発明のペプチド誘導体を効果的に含有可能な形態であれば特に限定されるものではなく、錠剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤等の固剤や軟膏剤であってもよいが、通常は、液剤、懸濁剤、乳剤等の注射剤形態とするのが好適である。また、本発明のペプチド誘導体を適切な担体の添加によって使用時に液状となし得る乾燥品とすることも可能である。さらに本発明の医薬品組成物において、シクロデキストリン含有ポリマーで構成されたナノ粒子、高分子ミセル、安定核酸脂質粒子(SNALP)、多機能エンベローブ型ナノ構造体(MEND)等のドラッグデリバリーシステムを活用して、本発明のペプチド誘導体の有効成分としての効果をより向上させることも可能である。

【0048】
得られた医薬品組成物は、その形態に応じた適切な投与経路、例えば、注射剤形態の医薬品組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内投与等により、固剤形態の医薬品組成物は、経口ないし経腸にて投与される。医薬品組成物中の本発明のペプチド誘導体の量は、当該組成物の投与方法、投与形態、使用目的、患者の症状等に応じて適宜選択され一定ではないが、通常、本発明のペプチド誘導体を、0.1~95質量%程度含有する組成物形態に調製して、適切な投与量(1日成人1人当たり0.01μg~10mg程度であり、一日1回ないし2~5回、さらに数日おきに行うことも可能である)、にて投与を行うことが好ましい。一日1回ないし2~5回、さらに数日おきに投与を行うことも可能である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を開示する。
【実施例】
【0050】
[実施例1] ペプチド誘導体の製造と入手
(1)本発明のペプチド誘導体、比較例として用いた「非アミド化ペプチドOP3-4」、及び、「W9:Tyr-Cys-Trp-Ser-Gln-Tyr-Leu-Cys-Tyr(配列番号2)」は、いずれもアメリカンペプチドカンパニー(AMERICAN PEPTIDE COMPANY:CA USA)に委託して製造したものを用いた。それぞれの委託製造物質が、確かに企図したものである証明は、下記の物性値と、HPLCデータ、及び、MSスペクトルデータによってなされている。
【実施例】
【0051】
(a)本発明のペプチド誘導体
分子量:1448.7
MSスペクトル:図1
HPLCデータ:図2(ペプチド純度は97.8%)
溶解度:1.0mg/ml(30%アセトン水溶液)
外観:白色の凍結乾燥品
【実施例】
【0052】
なお、以下の図面等において、本発明のペプチド誘導体を、OP3-4(NH2)、OP3-4 NH2、又は、単に、NH2と略称することがある。
【実施例】
【0053】
(b)非アミド化ペプチドOP3-4
分子量:1449.7
MSスペクトル:図3
HPLCデータ:図4(ペプチド純度は96.4%)
溶解度:1.0mg/ml(30%アセトン水溶液)
外観:白色の凍結乾燥品
【実施例】
【0054】
なお、以下の図面等において、非アミド化ペプチドOP3-4を、OP3-4、OP3-4(COOH)、OP3-4 COOH、又は、単に、COOHと略称することがある。
【実施例】
【0055】
(c)W9
分子量:1226.4
MSスペクトル:図5
HPLCデータ:図6(ペプチド純度97.7%)
溶解度:1mg/ml(20%アセトン水溶液)
外観:白色の凍結乾燥品
【実施例】
【0056】
(2)リコンビナントヒトBMP-2
分子量が26KDのリコンビナントヒトBMP-2の1mg/ml溶液として入手した(もともと山之内製薬より入手したものであるが、現在、Bioventus社(米国)から入手可能である)。この溶液は、リコンビナントヒトBMP-2を、LF6緩衝液(5mM glutamic acid, 5mM NaCl, 2.5% glycine, 0.5% sucrose, 0.01% Tween 80:pH4.5)中に溶解したものである。
当該ヒトBMP-2のアミノ酸配列を、配列番号3に示す。
【実施例】
【0057】
なお、以下の図面等において、リコンビナントヒトBMP-2を、BMPと略称することがある。
【実施例】
【0058】
以下試験例3までは、試験対象として用いる本発明のペプチド誘導体をはじめとするペプチドは担体を使用せずに、培地の中にそれぞれの濃度に応じた量を溶かして用いた。試験例4、5においては、それぞれ担体を用いた試験を行った。
【実施例】
【0059】
また、各々の試験における定量データの統計処理は全て、ANOVAによる分散分析を行い、その後posthocテストとしてFisher's PLSD testを用いて各群間の有意差を検定した。解析データは、平均値±標準偏差(SD)として表し、危険率5%以下を有意差ありと判定した。
【実施例】
【0060】
[試験例1] インビトロにおける破骨細胞の分化誘導系を用いた試験
図7では、マウス骨髄細胞から破骨細胞を誘導する常法に従った4日間の培養結果を示す。
【実施例】
【0061】
まず、αMEMに10FBSを用いた培地に50ng/ml RANKL及び25ng/ml M-CSFを添加し破骨細胞を誘導した。培養の初日からペプチドの溶媒であるDMSO(Dimethyl sulfoxide)を0.05%の濃度となるように添加した群をvehicle control(Veh Ctr)群とし、RANKL結合ペプチドであるW9ペプチドを5μM添加した群をポジティブコントロールとして使用した。また、C端をアミド化させたOP3-4を10μM、30μMの濃度で、C端をアミド化させていないOP3-4を同じく10μM、30μMの濃度で添加し、3日目に培地交換した。翌日ホルマリンで固定し、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)染色を施した結果が図7である。すべて用いたペプチドはDMSOを溶媒として使用している。
【実施例】
【0062】
図8は、図7に示したそれぞれの染色後結果の代表的な拡大図である。濃く染まっている細胞がTRAP染色陽性細胞である。図9は、図8で示したTRAP染色陽性かつ核を3核以上所有する細胞(TRAP Positive MNCs)の数を、破骨細胞数として数えた際の定量結果である。明らかに、C端をアミド化させた本発明のペプチド誘導体を添加した培地で誘導した破骨細胞数は、当該多核細胞の形成がほとんどゼロに抑えられている。一方、アミド化させていないOP3-4を添加した群では、当該多核細胞の形成の抑制度合いは、アミド化した本発明のペプチド誘導体に比べて明らかに低かった。
【実施例】
【0063】
[試験例2]インビトロにおける骨芽細胞分化系を用いた試験
生後1日令のC57BL/6Jマウス頭蓋骨から単離した骨芽細胞様細胞を用いてOP3-4の骨芽細胞分化に対する作用を検討した。骨芽細胞分化促進培地(αMEM培地、10% FBS、10nM デキサメサゾン、50ng/mlアスコルビン酸、10μM βグリセルフォスフェート)を用いて7日間培養後、固定し、骨芽細胞の分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ染色を行った結果が図10であり、その染色濃度を定量化した結果が図11である。図11の棒グラフの上部の記号は、それぞれ、以下の統計的数値を表している。
【実施例】
【0064】
*, p< 0.05 vs vehicle
**, p< 0.01 vs vehicle
$, p< 0.05 vs 200μM OP3-4 NH2
$$, p< 0.01 vs 200μM OP3-4 NH2
【実施例】
【0065】
本発明のペプチド誘導体は濃度依存的に骨芽細胞分化を促進したが、アミド化させていないOP3-4の骨芽細胞分化促進作用は、アミド化させた本発明のペプチド誘導体よりも有意に低かった。この条件では、200μMの本発明のペプチド誘導体は、25ng/ml BMP-2と同等以上の骨芽細胞分化促進作用を示した。
【実施例】
【0066】
[試験例3] 関節炎モデルを用いた検討
DBA/1Jマウス尾根部に、ウシ2型コラーゲンのアジュバンドとのエマルジョンを皮内注射することにより最初の感作を行い、また3週間後に2回目の感作を行うことによって関節炎を発症させるCIAモデルでは、明らかな骨量減少が2回目の感作後3週間で引き起こされる。2回目の感作後、7日目に、本発明のペプチド誘導体等の薬剤を填入した浸透圧ポンプ(Alzet pump)をマウス皮下に埋め込み、3週間薬剤を徐放させ、感作後28日目に屠殺した。CIAモデルでは2回目の感作後5日目頃には関節炎が発症するため、薬剤投与を始めた時にはすでに、関節炎が発症している状態であった。
【実施例】
【0067】
(1) マイクロCT像
図12は、屠殺後取り出した脛骨の近心2次海綿骨部のマイクロCT像である。コラーゲンで感作させていないマウスの骨(a)に比べて、CIAモデルマウスの骨(b)は明らかに骨量が少なかった。本発明のペプチド誘導体投与群(c)(d)では、CIA群(b)に比べて明らかな骨量の増加が認められた。これらのうち、本発明のペプチド誘導体の低用量(9mg/kg/day)群(c)、同高用量群(18mg/kg/day)(d)、では骨量の差は認められなかった。一方、C端をアミド化していないOP3-4を投与した群(e)では、(c)や(d)に比べて骨が少なく観察された。なお、コラーゲンに感作させていないマウスと薬剤を投与していないCIAマウスには、OP3-4の溶媒である20%DMSOを填入した浸透圧ポンプを皮下に埋入した。
【実施例】
【0068】
(2) pQCTを用いる骨密度の定量
次に図13に、pQCT(末梢骨用定量的CT)を用いた同部位の骨密度定量結果を示す。これは、脛骨近心2次海綿骨部における骨密度の計測結果である。
【実施例】
【0069】
CIAモデルマウスでは、感作させていないマウスの骨密度に比べて有意な減少を示したが、本発明のペプチド誘導体では、用量依存的に減少した骨密度を回復させた。一方、C端をアミド化させていないOP3-4ペプチドでは、本発明のペプチド誘導体のような骨密度の回復は認められなかった。図13の棒グラフの上部の記号は、それぞれ、以下の統計的数値を表している。
【実施例】
【0070】
$$, p< 0.01 vs Ctr + vehicle
$,p< 0.05 vs Ctr + vehicle
#, p< 0.05 vs CIA + vehicle
&, p< 0.05 vs CIA + NH2 18mg/kg/day(アミド化させたOP3-4)
【実施例】
【0071】
なお、この試験を含め、以下すべての試験でも1群6匹のマウスを用い、同様の統計解析手法を用いて検討を加えている。
【実施例】
【0072】
(3) CTX値を用いた骨吸収活性の定量
図14は、CIAモデルマウス等の屠殺時の骨吸収活性を示したグラフである。
【実施例】
【0073】
血清中の骨吸収マーカーであるCTX値(1型コラーゲンの分解産物)は、CIAモデルでは感作させていないマウスに比べて有意な高値を示した。本発明のペプチド誘導体では、溶媒投与のCIAマウスに比べて用量依存的に骨吸収マーカーの減少が認められた。一方、C端をアミド化させていないOP3-4でも、18mg/kg/dayという高用量では、骨吸収活性の抑制が認められた。しかしながら、骨吸収の阻害程度は、C端をアミド化させた本発明のペプチド誘導体の方が、強く現れた。
【実施例】
【0074】
(4) 動的パラメーターを用いた評価
図15は、脛骨近心2次海綿骨部の蛍光顕微鏡写真像を表す。
【実施例】
【0075】
マウスの屠殺7日前と2日前に皮下注射した、蛍光物質であるカルセインの骨形成活性部位への沈着を観察した。
【実施例】
【0076】
白い矢印に示すように2本のカルセインラベルの間は、5日間で骨が石灰化した長さを示すが、CIAマウスでは対照群と比べて短くなり、本発明のペプチド誘導体の投与により、その短くなった幅の回復が観察された。C端をアミド化させていないOP3-4の投与では、殆ど回復していないように観察された。この2重ラベルを計測し、定量化した結果を表しているのが図16と図17である。
【実施例】
【0077】
図16は、カルセインの2重ラベルの幅を計測した結果を示すものである。すなわち、これは脛骨2次海綿骨部の海綿骨にラベルされたカルセイン間の幅を計測した結果であり、5日間で形成された骨の幅を示しており、骨芽細胞の骨形成能力を示している。
【実施例】
【0078】
CIAモデルマウスでは2重ラベルの幅は減少するが、本発明のペプチド誘導体では用量依存的に回復し、高用量では完全に対照群(control)のレベルにまで回復した。一方、C端をアミド化させていないOP3-4では、CIAモデルマウスで示された骨形成活性の減少を回復させることはできなかった。
【実施例】
【0079】
図17は、図16で示された一つ一つの骨芽細胞の骨形成能力の結果と、骨表面上に並んで骨を形成している骨芽細胞の長さの骨表面長さに対する割合を示す指標(石灰化面と呼ぶが、ここでは示していない)との掛け算で計算される骨形成率(Bone Formation Rate)を示している。
【実施例】
【0080】
Bone Formation Rateは計測部位全体の骨形成活性を示す指標であり、1日当たりに形成された骨の量を反映する。CIAモデルマウスでは対照群(control)に比べて有意な骨形成率の減少を認めたが、その減少は本発明のペプチド誘導体の投与により有意な回復を認めた。一方、C端をアミド化させていないOP3-4の投与では、CIAモデルマウスで減少した骨形成率の減少は回復させることはできなかった。
【実施例】
【0081】
[試験例4] 局所の骨再生試験
5週令オスC57BL/6Jマウスの頭蓋骨に、直径3.5 mmの皮膚生検用のカッター(Biopsy Punch, Kai medical)で骨欠損を作成した。ゼラチンハイドロゲル(Medgel PI9 京都大学田畑泰彦先生供与、現在はメドジェル(メドジェル社)として入手可能)を担体 (Carrier) として用い、BMP-2、W9ペプチド(0.56mg)、本発明のペプチド誘導体(0.28mg、0.56mg)を含ませ、欠損部上に置き、皮膚を閉じたのち4週間後に屠殺しマイクロCTを撮影した(図18)。ペプチドの溶媒はDMSO(5μL)を用いた。W9ペプチドに比べて、C末端をアミド化させた本発明のペプチド誘導体により形成された骨の量は、他よりも多く観察された。分子量は本発明のペプチド誘導体の方が大きいにもかかわらず、同じ0.56mgでも倍ほどの骨新生が認められた。
【実施例】
【0082】
この新生骨の骨密度をDXA(二重エネルギーX線測定法)により計測した結果を示したものが図19である。被験数は、各々の群において4である。
【実施例】
【0083】
図19における、有意差記号は下記の通りである。
#:p< 0.05 vs BMP-2
$:p< 0.05
$$:p<0.01 vs W9(0.56mg)
【実施例】
【0084】
本発明のペプチド誘導体を、担体を介して局所に投与した場合の、優れた骨再生作用が認められた。
【実施例】
【0085】
[試験例5] 注射による担体の注入による局所の骨形成試験
(1)マイクロCTを用いた検証
マウスの上顎骨に対して、本発明のペプチド誘導体とBMP-2を含ませた担体を注射で局部に注入した場合の骨形成に対する効果を検討した。
【実施例】
【0086】
(a)溶媒(5μL DMSO+1μL LF6緩衝液)、(b)BMP-2(1μg)、(c)BMP-2(1μg)とC末端をアミド化させた本発明のペプチド誘導体(0.56mg)を混ぜたもの、をそれぞれリン酸緩衝溶液で50μLまで薄めた後、ゼラチンハイドロゲル(pI9粒子タイプ、京都大学田端泰彦供与、現在メドジェル社から入手可能)に含ませ、5週令オスC57BL/6Jマウスの上顎骨の骨膜下に注射を行った。注射から4週間後に当該マウスを屠殺し、その際のマイクロCTによる解析を行った結果を示す図が、図20である。
【実施例】
【0087】
(a)溶媒を含ませた担体を注入した群(担体+溶媒)では骨新生は全く認められず、(b)BMP-2を含ませた担体を注入した群(担体+BMP-2)であっても僅かな骨新生が認められるのみであった。これらに対して、(c)BMP-2と本発明のペプチド誘導体を含ませた担体(担体+BMP-2+OP3-4 NH2)を注入した群においては、明らかな骨造成が認められた。
【実施例】
【0088】
(2)末梢骨用定量的CT(pQCT)を用いた検証
上記のマウスの上顎骨を用いた担体注射の試験系において、pQCTを用いてハイドロキシアパタイト量395mg/cmを新生骨の閾値として、新生骨の骨密度(図21(1))と骨量(図21(2))について解析を行った。その結果、骨密度においては、本発明のペプチド誘導体とBMP-2の併用群は、BMP-2の単独群に対して有意に高い骨密度が認められた。骨量においても、本発明のペプチド誘導体とBMP-2の併用群は、BMP-2の単独群に対して有意に高い値が認められた。
【実施例】
【0089】
なお、図21の有意差記号は以下の通りである。
#: p<0.05 vs 担体+溶媒
*: p<0.05 vs 担体+BMP-2
【実施例】
【0090】
(3)蛍光顕微鏡を用いた検証
上記のマウスの上顎骨を用いた担体注射の試験系において、マウス上顎部非脱灰切片の蛍光顕微鏡像(図22)を用いた骨新生の検証を行った。図22において、向かって左側の列は蛍光顕微鏡の全体像であり、右側の列は当該全体像のそれぞれ四角囲いで示した瘤状の骨新生領域の拡大像である。
【実施例】
【0091】
この試験系は、マウスの屠殺16日前に緑色の蛍光色を示すカルセインと、2日前に黄色の蛍光色を示すデメクロサイクリンを、マウスに対して皮下投与し、骨形成部位に沈着させた。図22は白黒画像であり、薄黒い部分が緑色のカルセイン染色部分であり、白い部分が黄色のデメクロサイクリン染色部分である。
【実施例】
【0092】
対照として用いた溶媒(+担体)群には、いずれの蛍光染色部分も認められなかった。BMP-2単独群、及び、本発明のペプチド誘導体とBMP-2の併用群ではいずれも骨新生領域が認められたが、併用群の方が単独群よりも当該領域が大きく、しかも、デメクロサイクリン染色部分が際立っており、屠殺2日前以降においても旺盛に骨新生が行われていたことが示されている。
【実施例】
【0093】
図23は、このデメクロサイクリンの蛍光色を示す部分の面積を計測した結果を示している。図22において視覚的に示された通りに、本発明のペプチド誘導体とBMP-2の併用群は、BMP-2単独群に比べて有意にデメクロサイクリンの蛍光色の面積が大きく、際だって旺盛に骨新生が行われていたことが示されている。図23において、#は、p<0.05 vs 担体+BMP-2を表している。
【実施例】
【0094】
[試験例6] 異所性骨形成活性の検討
5週令オスC57BL/6Jマウスの背部筋膜下にコラーゲン(CollaPlug(登録商標)、Zimmer社)を担体として、BMP-2、BMP-2とW9ペプチド(0.56mg)の組み合わせ、BMP-2と本発明のペプチド誘導体(0.28mg、0.56mg)の組み合わせ、を加えたものを埋め、12日後にマウスを屠殺した。その後、当該部分取り出し、撮影したマイクロCT像が図24である。筋膜下にできる骨の量は、BMP-2よりもW9ペプチドを加えたほうが多く形成されたが、BMP-2と本発明のペプチド誘導体(OP3-4 NH2)を加えた場合は、W9ペプチドを加えた場合と比べても、さらに大きな骨が形成された。なお、担体のみを埋めた場合には骨の形成は認められなかった(図示せず)。
【実施例】
【0095】
筋膜下に形成された骨の量を、DXAにより骨塩量として計測した結果を図25に示した。被験数は、各々の群において4である。
【実施例】
【0096】
図25における、有意差記号は下記の通りである。
#:p< 0.05 vs BMP-2
$:p< 0.05
$$:p<0.01 vs W9(0.56mg)
【実施例】
【0097】
本発明のペプチド誘導体とBMP-2を、担体を介して局所に投与した場合の、異所性の優れた骨形成作用が認められた。この優れた作用は、例えば、インプラント治療に際して必要な歯槽骨の形成に非常に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図9】
6
【図11】
7
【図13】
8
【図14】
9
【図16】
10
【図17】
11
【図19】
12
【図21】
13
【図23】
14
【図25】
15
【図7】
16
【図8】
17
【図10】
18
【図12】
19
【図15】
20
【図18】
21
【図20】
22
【図22】
23
【図24】
24