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明細書 :材料試験装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-105083 (P2016-105083A)
公開日 平成28年6月9日(2016.6.9)
発明の名称または考案の名称 材料試験装置
国際特許分類 G01N   3/18        (2006.01)
FI G01N 3/18
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2015-225936 (P2015-225936)
出願日 平成27年11月18日(2015.11.18)
優先権出願番号 2014235695
優先日 平成26年11月20日(2014.11.20)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】田中 和人
【氏名】片山 傳生
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100121186、【弁理士】、【氏名又は名称】山根 広昭
【識別番号】100121500、【弁理士】、【氏名又は名称】後藤 高志
審査請求 未請求
テーマコード 2G061
Fターム 2G061AA01
2G061AB01
2G061AC03
2G061BA18
2G061CA10
2G061DA01
要約 【課題】引張試験を適正に行うことが可能な材料試験装置を提供する。
【解決手段】材料試験装置100は、第1保持部10と、第2保持部20と、ヒータ61,62とを備えている。第1保持部10は、試験片5の一端部5aを保持する。第2保持部20は、第1保持部10と対向するように配置され、試験片5の他端部5bを保持する。ヒータ61,62は、熱を照射する照射部61a,62aを備え、照射部61a,62aを第1保持部10と第2保持部20との間の空間に向けて配置されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
試験片の一端部を保持する第1保持部と、
前記第1保持部と対向するように配置され、前記試験片の他端部を保持する第2保持部と、
ヒータと
を備え、
前記ヒータは、
熱を照射する照射部を備え、
前記照射部が前記第1保持部と前記第2保持部との間の空間に向くように配置されている、材料試験装置。
【請求項2】
複数の前記ヒータが、前記第1保持部と前記第2保持部との間の空間を挟んで対向するように配置されている、請求項1に記載された材料試験装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記照射部の周縁を囲み、前記第1保持部と前記第2保持部との間の空間に向けて延びたヒータ用カバーを備えている、請求項1または2に記載された材料試験装置。
【請求項4】
前記ヒータは、セラミックヒータ、遠赤外線ヒータ、近赤外線ヒータ、または、ハロゲンヒータである、請求項1から3までの何れか一項に記載された材料試験装置。
【請求項5】
前記第1保持部および前記第2保持部によって保持された試験片を覆うカバー体を備え、
前記ヒータは、前記カバー体の内部に向かって熱を付与する、請求項1から4までの何れか一項に記載された材料試験装置。
【請求項6】
前記第1保持部によって保持された試験片の一端部を冷却する第1冷却部と、
前記第2保持部によって保持された試験片の他端部を冷却する第2冷却部と
を備えた、請求項1から5までの何れか一項に記載された材料試験装置。
【請求項7】
前記第1冷却部は、前記第1保持部と別体に設けられ、
前記第2冷却部は、前記第2保持部と別体に設けられている、請求項6に記載された材料試験装置。
【請求項8】
前記第1冷却部は、前記第1保持部によって保持された試験片に接触する第1接触部材を備え、
前記第1接触部材には、第1の孔が形成され、
前記第2冷却部は、前記第2保持部によって保持された試験片に接触する第2接触部材を備え、
前記第2接触部材には、第2の孔が形成され、
前記第1の孔と前記第2の孔とに冷却媒体を供給する供給装置を備えた、請求項7に記載された材料試験装置。
【請求項9】
前記第1冷却部は、前記第1保持部と一体に設けられ、
前記第2冷却部は、前記第2保持部と一体に設けられている、請求項6に記載された材料試験装置。
【請求項10】
前記第1保持部には、第1の孔が形成され、
前記第2保持部には、第2の孔が形成され、
前記第1の孔と前記第2の孔とに冷却媒体を供給する供給装置を備えた、請求項9に記載された材料試験装置。
【請求項11】
前記第1保持部または前記第1冷却部を覆う上部カバーと、
前記第2保持部または前記第2冷却部を覆う下部カバーと
を備えた、請求項1から10までの何れか一つに記載された材料試験装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、材料試験装置(引用文献1では、引張試験機が例示されている。)が開示されている。特許文献1に記載された材料試験装置は、ジェットエンジンのタービンなどの高温部分に使用される部品(金属)である試験片(特許文献1では、供試体と称されている。)の引張試験を行うものである。高温部分に使用される試験片の引張試験を行う際には、クリープなどの影響を考慮すべく使用状態の温度となるように、試験片を加熱した上で、引張試験を行っている。
【0003】
特許文献1に記載された材料試験装置では、内部に油圧シリンダを備えた立方体形状の箱体が地面に固定されている。箱体の上面の中央部分には、クロスヘッドが滑動自在に設けられている。クロスヘッドの上端には、第1支持軸が上向きに設けられている。第1支持軸の上端には、第1チャック部が連結されている。箱体の上面の四隅には、垂直方向に延びた4本のビームが設けられている。ビームの上部には、固定部が固定されている。固定部の中央部分には、第2支持軸が下向きに固定されている。第2支持軸の下端には、第2チャック部が連結されている。試験片の両端は、第1チャック部および第2チャック部によって支持されている。試験片、第1チャック部および第2チャック部を覆うような状態で加熱炉が設けられている。
【0004】
試験片の引張試験を行う際、第1チャック部および第2チャック部によって両端が支持された試験片を加熱炉によって所望の温度まで加熱している。その後、油圧シリンダを駆動させることによって、クロスヘッドを押し下げて第1支持軸を介して試験片を下方に引っ張っている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-185548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願出願人は、熱可塑性樹脂を試験片として用いて、熱可塑性樹脂の溶融温度近傍の高温雰囲気における試験片の引張試験を行うことを検討している。特許文献1のように、試験片およびチャック部を加熱炉で覆い、熱可塑性樹脂の溶融温度近傍の高温雰囲気における試験片の引張試験を行った場合、試験片を適切に引っ張ることができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで提案される材料試験装置は、試験片の一端部を保持する第1保持部と、第1保持部と対向するように配置され、試験片の他端部を保持する第2保持部と、ヒータとを備えている。ヒータは、熱を照射する照射部を備えており、照射部が第1保持部と第2保持部との間の空間に向くように配置されている。
【0008】
かかる態様によれば、試験片が保持される第1保持部と第2保持部との間の空間に向けて熱が照射され、試験片を局所的に加熱しつつ試験が行える。
【0009】
例えば、複数のヒータが、第1保持部と第2保持部との間の空間を挟んで対向するように配置されていてもよい。
【0010】
上記態様によれば、第1保持部および第2保持部によって保持された試験片に熱を効率的に付与することができる。
【0011】
ヒータは、照射部の周縁を囲み、第1保持部と第2保持部との間の空間に向けて延びたヒータ用カバーを備えていてもよい。
【0012】
また、ヒータは、例えば、セラミックヒータ、遠赤外線ヒータ、近赤外線ヒータ、または、ハロゲンヒータであるとよい。
【0013】
上述した種類の何れかのヒータを使用することによって、第1保持部および第2保持部によって保持された試験片に熱を効率的に付与することができる。
【0014】
第1保持部および第2保持部によって保持された試験片を覆うカバー体を備え、ヒータは、カバー体の内部に向かって熱を付与してもよい。
【0015】
上記態様によれば、試験片はカバー体に覆われているため、第1保持部および第2保持部によって保持された試験片をヒータで加熱する際、試験片に熱を効率的に付与することができる。
【0016】
ここで提案される材料試験装置は、第1保持部によって保持された試験片の一端部を冷却する第1冷却部と、第2保持部によって保持された試験片の他端部を冷却する第2冷却部とを備えていてもよい。
【0017】
第1冷却部は、第1保持部と別体に設けられていてもよい。また、第2冷却部は、第2保持部と別体に設けられていてもよい。
【0018】
上記態様によれば、材料試験の内容によって、第1冷却部および第2冷却部を試験片に取り付けるか否かを選択することができる。
【0019】
第1冷却部は、第1保持部によって保持された試験片に接触する第1接触部材を備えており、当該第1接触部材には、第1の孔が形成されていてもよい。また、第2冷却部は、第2保持部によって保持された試験片に接触する第2接触部材を備えており、第2接触部材には、第2の孔が形成されていてもよい。第1の孔と第2の孔とに冷却媒体を供給する供給装置を備えていてもよい。
【0020】
上記態様によれば、供給装置が第1の孔および第2の孔に冷却媒体を供給するという比較的簡単な方法で、第1保持部によって保持された試験片の一端部、および、第2保持部によって保持された試験片の他端部を冷却することができる。
【0021】
また、他の形態として、第1冷却部は、第1保持部と一体に設けられ、かつ、第2冷却部は、第2保持部と一体に設けられていてもよい。この場合、例えば、第1保持部には、第1の孔が形成され、第2保持部には、第2の孔が形成され、第1の孔と第2の孔とに冷却媒体を供給する供給装置を備えていてもよい。
【0022】
上記態様によれば、冷却部を設ける場合に、材料試験装置の部品点数を少なくすることができる。
【0023】
また、第1保持部または第1冷却部を覆う上部カバーと、第2保持部または第2冷却部を覆う下部カバーとを備えていてもよい。
【0024】
上記態様によれば、上部カバーおよび下部カバーによって、第1保持部または第1冷却部、および、第2保持部または第2冷却部が加熱されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、第1実施形態に係る引張試験装置を模式的に示した正面図である。
【図2】図2は、第1つかみ具、第2つかみ具、第1冷却部および第2冷却部を示す側面図である。
【図3】図3は、第1冷却部を示す平面図である。
【図4】図4は、図1のIV-IV断面矢視図であり、引張試験装置を模式的に示した平面図である。
【図5】図5は、引張試験装置のブロック図である。
【図6】図6は、試験片を模式的に示した図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係る引張試験装置の正面図である。
【図8】図8は、第1つかみ具および第2つかみ具の側面図である。
【図9】図9は、第1つかみ具の平面図である。
【図10】図10は、他の実施形態にかかる材料試験装置を示す正面図である。
【図11】図11は、試験された材料試験装置の模式図である。
【図12】(a)と(b)は、試験片とヒータとの位置関係を示す模式図である。
【図13】図13は、本引張試験における温度測定結果を示すグラフである。
【図14】図14は、試験片を加熱した際の温度測定結果を示すグラフである。
【図15】図15は、試験片5の温度分布を示すグラフである。
【図16】図16は、試験片5の温度分布を示すグラフである。
【図17】図17は、試験片5の内部の温度履歴を測定した結果を示すグラフである。
【図18】図18は、荷重を付加して引張試験を行なった際の、応力-ひずみ線図の一例を示すグラフである。
【図19】図19は、引張試験によって測定されたひずみの平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る材料試験装置について説明する。以下の説明において、材料試験装置に関し、前、後、左、右、上、下というときは、それぞれ材料試験装置を正面から見た方向を基準にしている。図面には、前(F)、後(Rr)、左(L)、右(R)、上(U)、下(D)に対応させて、それぞれ符号F、Rr、L、R、U、Dが適宜に付されている。また、各図において同じ作用を奏する部材や部位には、同じ符号を付し、適宜に重複する説明を省略している。

【0027】
<第1実施形態>
<引張試験装置(材料試験装置)100>
図1は、第1実施形態に係る材料試験装置100を模式的に示した模式図であり、材料試験装置100の正面図である。図2は、第1つかみ具10、第2つかみ具20、第1冷却部30および第2冷却部40の側面図である。図3は、第1冷却部30の平面図である。図4は、図1のIV-IV断面矢視図であり、引張試験装置100を模式的に示した平面図である。図5は、引張試験装置100のブロック図である。

【0028】
図1に示すように、材料試験装置100は、試験片5の引張試験を行う引張試験装置100である。引張試験装置100は、第1保持部としての第1つかみ具10と、第2保持部としての第2つかみ具20と、第1冷却部30と、第2冷却部40と、供給装置50と、ヒータ61~64(図4参照)とを備えている。本実施形態では、引張試験装置100は、油圧シリンダ6aと、カバー体80と、撮影装置70(図4参照)と、温度センサ88(図5参照)と、制御部90(図5参照)とを更に備えている。以下、第1つかみ具10、第2つかみ具20、油圧シリンダ6a、第1冷却部30、第2冷却部40、供給装置50、ヒータ61~64、カバー体80、撮影装置70、温度センサ88および制御部90を順に説明する。

【0029】
<第1つかみ具(第1保持部)10>
図2に示すように、第1つかみ具10は、試験片5の一端部(ここでは、上端部)5aを保持する部材である。ここでは、第1つかみ具10は、2つの第1つかみ歯11、12と、締付け機構(図示せず)とを備えている。第1つかみ歯11、12は、試験片5の一端部5aを挟むことで、試験片5の一端部5aを保持する部材である。第1つかみ歯11、12は、前後方向に対向している。ただし、第1つかみ歯11、12は、左右方向に対向していてもよい。上記締付け機構は、第1つかみ歯11、12を締め付ける機構である。

【0030】
<第2つかみ具(第2保持部)20>
第2つかみ具20は、試験片5の他端部(ここでは、下端部)5bを保持する部材である。第2つかみ具20は、第1つかみ具10と対向するように配置されている。ここでは、第1つかみ具10と第2つかみ具20とは、垂直方向(上下方向)に対向している。第2つかみ具20は、第1つかみ具10の下方に配置されている。ただし、第1つかみ具10と第2つかみ具20とは、水平方向(左右方向)に対向していてもよい。本実施形態では、図1に示すように、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間には、空間Aが形成されている。第1つかみ具10は、空間Aに配置された試験片5の一端部5aを保持する。第2つかみ具20は、試験片5の他端部5bを保持する。

【0031】
図2に示すように、第2つかみ具20は、2つの第2つかみ歯21、22と、締付け機構(図示せず)とを備えている。第2つかみ歯21、22は、試験片5の他端部5bを挟むことで、試験片5の他端部5bを保持する部材である。第2つかみ歯21、22は、前後方向に対向している。ただし、第2つかみ歯21、22は、左右方向に対向していてもよい。第2つかみ具20の上記締付け機構は、第1つかみ具10の締付け機構と同様に、第2つかみ歯21、22を締め付ける機構である。

【0032】
なお、第1つかみ歯11、12および第2つかみ歯21、22の材質は特に限定されない。ここでは、第1つかみ歯11、12および第2つかみ歯21、22は、金属によって構成されている。特に、第1つかみ歯11、12および第2つかみ歯21、22は、強度が高い材質、例えば、鉄鋼材料によって構成されていることが好ましい。第1つかみ歯11、12および第2つかみ歯21、22の形状は特に限定されず、例えば、矩形状である。

【0033】
本実施形態では、図1に示すように、引張試験装置100は、矩形状の底部材6を備えている。底部材6の四隅には、底部材6から上方に延びた4本の支持棒7(図4参照)が設けられている。4本の支持棒7の上部には、矩形状の上部材8が固定されている。上部材8には、底面の中央部分から下方に延びた第1支持軸9aが設けられている。第2支持軸9aの下端には、第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12が設けられている。

【0034】
<油圧シリンダ6a>
油圧シリンダ6aは、試験片5の端部を引っ張る部材である。ここでは、油圧シリンダ6aは、試験片5の他端部5bを下方に引っ張る部材である。油圧シリンダ6aは、底部材6の内部に設けられている。ここでは、底部材6の上面の中央部分には、円柱状のクロスヘッド6bが摺動自在に設けられている。クロスヘッド6bには、上端から上方に延びた第2支持軸9bが設けられている。第2支持軸9bの上端には、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22が設けられている。本実施形態では、油圧シリンダ6aが駆動することによって、クロスヘッド6bは、上下方向に移動する。例えば、クロスヘッド6bが下方に移動することによって、第2支持軸9bおよび第2つかみ歯21、22を介して、試験片5の他端部5bは下方に引っ張られる。なお、図示は省略するが、引張試験装置100は、油圧シリンダ6aが試験片5を引っ張った際の荷重を測るロードセルを備えていてもよい。

【0035】
<第1冷却部30>
第1冷却部30は、第1つかみ具10によって保持された試験片5の一端部5aを冷却する部材である。第1冷却部30は、第1つかみ具10と別体に設けられている。ここでは、図2に示すように、第1冷却部30は、第1接触部材31、32を備えている。第1接触部材31、32は、第1つかみ具10によって保持された試験片5と接触する部材である。第1冷却部30の第1接触部材31、32は、試験片5の一端部5aを挟む部材である。ここでは、第1接触部材31、32は、試験片5のうち第1つかみ具10によって保持された箇所よりも中央部分側の箇所を挟んでいる。第1接触部材31、32は、前後方向に対向している。なお、第1接触部材31、32の材質は特に限定されない。ここでは、第1接触部材31、32は、金属によって構成されている。特に、第1接触部材31、32は、熱伝導がよく軽量であることがよいため、アルミ合金で構成されていることが好ましい。第1接触部材31、32の形状は、特に限定されず、例えば、矩形状である。

【0036】
ここでは、図3に示すように、第1冷却部30の第1接触部材31には、第1の孔33が形成され、第1接触部材32には、第1の孔34が形成されている。第1の孔33、34には、冷却媒体が流れる。第1接触部材31、32が互いに対向する面に対して平行になるように、第1接触部材31、32には、それぞれ第1の孔33、34が形成されている。第1の孔33、34のそれぞれの貫通方向は同じ方向である。ここでは、第1の孔33、34のそれぞれの貫通方向は、第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5が延びた方向(ここでは、上下方向)に対して、横切る方向(ここでは、左右方向)である。なお、第1の孔33、34の貫通方向は特に制限されず、例えば、第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5が延びた方向と同じ方向であってもよい。また、第1の孔33、34同士の貫通方向は異なってもよい。第1の孔33、34の数も特に限定されず、第1接触部材31、32には、それぞれ第1の孔33、34が複数形成されていてもよい。

【0037】
第1の孔33、34同士は、可撓性を有する第1の連通管39によって連通している。ここで、第1の孔33の一端部、他端部、および、第1の孔34の一端部、他端部には、それぞれ接続ポート35、36、37、38がそれぞれ設けられている。第1の連結管39の一端は、第1の孔33の接続ポート35に接続され、他端は、第1の孔34の接続ポート37に接続されている。

【0038】
<第2冷却部40>
図2に示すように、第2冷却部40は、第2つかみ具20によって保持された試験片5の他端部5bを冷却する部材である。第2冷却部40は、第2つかみ具20と別体に設けられている。ここでは、第2冷却部40は、第2接触部材41、42を備えている。第2接触部材41、42は、第2つかみ具20によって保持された試験片5と接触する部材である。第2冷却部40の第2接触部材41、42は、試験片5の他端部5bを挟む部材である。ここでは、第2接触部材41、42は、第2つかみ具20によって保持された箇所よりも中央部分側の箇所を挟んでいる。第2接触部材41、42は、前後方向に対向している。なお、第2接触部材41、42は、第1接触部材31、32と同様に、金属、特にアルミ合金で構成されていることが好ましい。また、第2接触部材41、42の形状は矩形状である。ただし、第2接触部材41、42の材質および形状は特に限定されない。第2の孔43、44の数も特に限定されず、第2接触部材41、42には、それぞれ第2の孔43、44が複数形成されていてもよい。

【0039】
第2接触部材41、42の構成は、第1接触部材31、32と同様の構成をしている。ここでは、第2接触部材41、42の説明は、図3を用いて行う。なお、図3において、括弧内の符号は、第2接触部材41、42に関連する部位の符号である。ここでは、第2接触部材41には、第2の孔43が形成され、第2接触部材42には、第2の孔44が形成されている。第2接触部材41、42が互いに対向する面に対して平行になるように、第2接触部材41、42には、それぞれ第2の孔43、44が形成されている。第2の孔43、44のそれぞれの貫通方向は同じ方向である。ここでは、第2の孔43、44のそれぞれの貫通方向は、第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5が延びた方向に対して、横切る方向(左右方向)である。また、第2の孔43、44のそれぞれの貫通方向は、第1冷却部30の第1接触部材31、32の第1の孔33、34の貫通方向と同じ方向である。ただし、第2の孔43、44の貫通方向は、第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5が延びた方向と同じ方向であってもよい。また、第2の孔43、44同士の貫通方向は異なってもよい。第2の孔43、44の貫通方向は特に制限されない。

【0040】
第2の孔43、44同士は、可撓性を有する第2の連通管49によって連通している。ここでは、第2の孔43の一端部、他端部、および、第2の孔44の一端部、他端部には、接続ポート45、46、47、48がそれぞれ設けられている。第2の連結管49の一端は、第2の孔43の接続ポート45に接続され、他端は、第2の孔44の接続ポート47に接続されている。

【0041】
<供給装置50>
供給装置50は、第1冷却部30の第1接触部材31、32に形成された第1の孔33、34と、第2冷却部40の第2接触部材41、42に形成された第2の孔43、44とに冷却媒体を供給する装置である。冷却媒体の種類は特に限定されない。本実施形態では、冷却媒体は冷却水であり、例えば、水道水である。ここでは、供給装置50は、第1の接続管51、52を介して、第1接触部材31、32の第1の孔33、34と接続している。第1の接続管51、52は、第1の孔33、34のうち第1の連通管39が接続された端部とは反対の端部にそれぞれ接続されている。ここでは、第1の接続管51の一端は、第1の孔33の他端に設けられた接続ポート36に接続されている。第1の接続管52の一端は、第1の孔34の他端に設けられた接続ポート38に接続されている。また、供給装置50は、第2の接続管53、54を介して、第2接触部材41、42の第2の孔43、44と接続している。第2の接続管53、54は、第2の孔43、44のうち第2の連結管49が接続された端部とは反対の端部にそれぞれ接続されている。ここでは、第2の接続管53の一端は、第2の孔43の他端に設けられた接続ポート46に接続されている。第2の接続管54の一端は、第2の孔44の他端に設けられた接続ポート48に接続されている。

【0042】
ここでは、供給装置50は、第1の接続管51を介して第1接触部材31の第1の孔33に向かって冷却媒体を流す。第1の孔33に流れた冷却媒体は、第1の連結管39を介して第1接触部材32の第1の孔34に流れる。第1の孔34に流れた冷却媒体は、第1の接続管52を介して供給装置50に流れる。同様に、供給装置50は、第2の接続管53を介して第2接触部材41の第2の孔43に向かって冷却媒体を流す。第2の孔43に流れた冷却媒体は、第2の連結管49を介して第2接触部材42の第2の孔44に流れる。第2の孔44に流れた冷却媒体は、第2の接続管54を介して供給装置50に流れる。供給装置50は、第1冷却部30および第2冷却部40に対して、それぞれ一方向に冷却媒体を流している。

【0043】
<ヒータ61~64>
図4に示すように、ヒータ61~64は、第1つかみ具10と第2つかみ具20(図1参照)との間において、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5が配置される空間Aに熱を付与するものである。ヒータ61~64は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5が配置される空間Aを挟んで対向するように設けられている。ヒータ61~64は、熱を照射する照射部61a~64aを備えている。ヒータ61~64は、照射部61a~64aが第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに向くように配置されている。本実施形態では、平面視において、第1ヒータ61(典型的には、照射部61a)と第3ヒータ63(典型的には、照射部63a)とが対向し、第2ヒータ62(典型的には、照射部62a)と第4ヒータ64(典型的には、照射部64a)とが対向するように配置されている。ヒータ61~64は、試験片5に対して非接触のヒータであり、例えば、セラミックヒータである。ここでは、ヒータ61~64は、試験片5が空間Aに配置された状態において、試験片5の中央部分に熱を局所的に付与する。ここでは、4つのヒータ61~64によって、試験片5を加熱することによって、試験片5の中央部分の表面は均一に加熱しされ易い。なお、試験片5を加熱するヒータの数は特に限定されない。例えば、ヒータの数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、ヒータ61~64は、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに対する角度を調節する機構を備えていてもよい。

【0044】
ヒータ61~64には、それぞれヒータ用カバー89が設けられていてもよい。ヒータ用カバー89は、照射部61a~64aの周縁を囲み、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに向けて延びている。ここでは、ヒータ用カバー89は、例えば、箱状であり、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに向かって開口している。ヒータ61~64は、ヒータ用カバー89内に収納されている。熱を照射する照射部61a~64aは、ヒータ用カバー89の開口から外方に向けられている。このことによって、ヒータ61~64の熱が拡散することを防止されている。そして、ヒータ用カバー89の開口を、試験片5に向けることによって、ヒータ61~64から照射された熱を効率的に試験片5に照射することができる。図4では、ヒータ用カバー89は、模式的に示されているが、ヒータ用カバー89は、試験片5の近くまで延びているとよい。

【0045】
<カバー体80>
カバー体80は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5を囲むものである。図1および図4では、カバー体80は、模式的に示されている。カバー体80は、図1および図4に示すように、第1つかみ具10、第2つかみ具20、第1冷却部30および第2冷却部40を囲んでいる。しかし、カバー体80は、試験片5のみを囲み、第1つかみ具10、第2つかみ具20、第1冷却部30および第2冷却部40を囲んでいなくてもよい。カバー体80は、第1保持部10と第2保持部20との間において、熱が付与された空間Aを囲むことによって、空間A内の空気を冷えにくくするものである。カバー体80の構造は特に限定されない。カバー体80は、図4に示すように、断熱部材81、82と、透明部材85、86とを備えている。断熱部材81、82は、平面視において、空間Aを挟んで対向するように配置されている。断熱部材81、82は、平面視において、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5を挟んで対向するように配置されている。ここでは、断熱部材81は、空間Aの左方に配置され、断熱部材82は、空間Aの右方に配置されている。断熱部材81は、第1ヒータ61および第3ヒータ63と連続している。断熱部材82は、第2ヒータ62および第4ヒータ64と連続している。また、透明部材85、86は、平面視において、空間Aを挟んで対向するように配置されている。透明部材85、86は、平面視において、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5を挟んで対向するように配置されている。ここでは、透明部材85は、空間Aの前方に配置されている。透明部材86は、空間Aの後方に配置されている。透明部材85は、第1ヒータ61および第2ヒータ62と連続している。透明部材86は、第3ヒータ63および第4ヒータ64と連続している。なお、図示は省略するが、断熱部材81、82の上部、および、透明部材85、86の上部と連続するように、上面部材が設けられていてもよいし、断熱部材81、82の下部、および、透明部材85、86の下部と連続するように、下面部材が設けられていてもよい。上面部材および下面部材の中央部分には、試験片5が挿入される孔が形成されていてもよい。なお、カバー体80は、省略することが可能である。

【0046】
本実施形態では、ヒータ61~64は、カバー体80に設けられている。ヒータ61~64の照射部61a~64aは、カバー体80の内部であって、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに向かって配置されている。ヒータ61~64は、カバー体80の内部であって、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aに向かって熱を照射している。そのため、ヒータ61~64およびカバー体80によって、恒温槽としての機能を有している。

【0047】
なお、図1に示すように、第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12、および、第1冷却部30の第1接触部材31、32を覆うように、上部カバー88aが設けられていてもよい。同様に、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22、および、第2冷却部40の第2接触部材41、42を覆うように、下部カバー88bが設けられていてもよい。なお、上部カバー88aおよび下部カバー88bの形状は特に限定されず、例えば箱状である。また、上部カバー88aは上部が開口していてもよい。下部カバー88bは下部が開口していてもよい。上部カバー88aおよび下部カバー88bは、断熱部材によって形成されていることが好ましい。上部カバー88aおよび下部カバー88bが設けられているため、ヒータ61~64の輻射熱によって、第1つかみ歯11、12、第1接触部材31、32、第2つかみ歯21、22、および、第2接触部材41、42が加熱されることを防ぐことができる。なお、上部カバー88aは、第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12のみを覆い、第1冷却部30の第1接触部材31、32を覆っていなくてもよい。また、上部カバー88aは、第1接触部材31、32のみを覆い、第1つかみ歯11、12を覆っていなくてもよい。同様に、下部カバー88bは、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22のみを覆い、第2冷却部40の第2接触部材41、42を覆っていなくてもよい。また、下部カバー88bは、第2接触部材41、42のみを覆い、第2つかみ歯21、22を覆っていなくてもよい。

【0048】
<撮影装置70>
図4に示すように、撮影装置70は、引張試験装置100によって、試験片5の引張試験を行っている際、試験片5の表面を撮影する装置である。そして、撮影した試験片5の表面の画像に基づいて、試験片5の歪み度合いを測定する。

【0049】
ここでは、撮影装置70は、2つ設けられている。2つの撮影装置70は、平面視において、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間の空間Aを挟んで対向するようにそれぞれ配置されている。ここでは、2つの撮影装置70は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5の前方および後方に配置されている。前側の撮影装置70は、透明部材85よりも前方に配置され、後側の撮影装置70は、透明部材86よりも後方に配置されている。ただし、撮影装置70の配置位置は特に限定されない。また、撮影装置70の数も特に限定されない。例えば、撮影装置70は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、図1において、撮影装置70の図示は省略されている。

【0050】
<温度センサ88>
図5に示すように、温度センサ88は、第1つかみ具10と第2つかみ具20によって保持された試験片5の温度を測定するものである。温度センサ88の種類は、特に限定されず、例えば、赤外線サーモグラフィである。温度センサ88を赤外線サーモグラフィにすることによって、試験片5に接触することなく、試験片5の温度を測定することができる。また、温度センサ88の配置位置は特に限定されず、例えば、カバー体80の透明部材85よりも前方であってもよい。なお、温度センサ88は、第1つかみ具10と第2つかみ具20によって保持された試験片5に接触した状態で、試験片5の表面温度を測定する温度計であってもよい。

【0051】
<制御部90>
制御部90は、引張試験装置100の各部材および部位を制御するものである。例えば、制御部90は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御部90は、底部材6の内部に設けられた油圧シリンダ6a、供給装置50、ヒータ61~64、撮影装置70、および、温度センサ88と電気的に接続されている。ここでは、制御部90は、図1に示すように、油圧シリンダ6aを駆動させてクロスヘッド6bが下方に移動することで、第2つかみ具20を下方へ移動させる。制御部90によって、供給装置50を制御することによって、図4に示すように、供給装置50は、冷却媒体を第1冷却部30の第1接触部材31、32に形成された第1の孔33、34、および、第2冷却部40の第2接触部材41、42に形成された第2の孔43、44に供給する。また、制御部90は、温度センサ88から試験片5の温度情報を取得する。そして、試験片5の温度情報に基づいて試験片5の温度が所定の温度になるように、ヒータ61~64を制御する。制御部90は、撮影装置70を制御することによって、撮影装置70は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5の中央部分の表面を撮影する。なお、本実施形態では、制御部90は、1つのコンピュータで構成され、油圧シリンダ6a、供給装置50、ヒータ61~64、撮影装置70、および、温度センサ88などの構成部品を集中的に制御するものである。しかし、制御部90は、複数のコンピュータで構成され、それぞれのコンピュータが油圧シリンダ6a、供給装置50、ヒータ61~64、撮影装置70、および、温度センサ88などの構成部品を個々に制御するものであってもよい。制御部90の構成は特に限定されない。

【0052】
次に、引張試験装置100の使用方法について説明する。本実施形態において引張試験を行う試験片5は、自動車部材などとして使用される熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック(Fiberglass reinforced thermoplastic:FRTP)である。なお、引張試験装置100で引張試験を行う試験片5の材質は特に限定されない。ここでは、FRTPによって構成された試験片5が溶融する温度まで試験片5を加熱した上で、試験片5の引張試験を行う。図6は、試験片5を模式的に示した模式図である。図6に示すように、ここでは、試験片5は、矩形状の板である。試験片5の歪み度合い(歪み分布)を画像相関法によって測定するため、試験片5の中央部分の表面5sには、白色の塗料が塗られている。白色の塗料が塗られた試験片5の中央部分の表面5sには、黒い斑点5cが塗られている。そして、黒い斑点5cを構成する点同士の間隔は、異なっており、ランダムに配置されている。ただし、試験片5の中央部分の表面5sには、白色の塗料が塗られていなくてもよいし、斑点5cの色は、黒色に限定されない。

【0053】
本実施形態における引張試験では、先ず、図1に示すように、引張試験の対象となる試験片5を引張試験装置100に取り付ける。詳しくは、図2に示すように、試験片5の一端部5aを第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12が挟むと共に、試験片5の他端部5bを第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22が挟む。そして、試験片5の一端部5aであって、第1つかみ歯11、12によって挟んだ箇所よりも試験片5の中央部分側の箇所を、第1冷却部30の第1接触部材31、32が挟む。試験片5の他端部5bであって、第2つかみ歯21、22によって挟んだ箇所よりも試験片5の中央部分側の箇所を、第2冷却部40の第2接触部材41、42が挟む。

【0054】
そして、図3に示すように、制御部90によって、供給装置50を駆動させることで、第1冷却部30の第1接触部材31、32の第1の孔33、34、および、第2冷却部40の第2接触部材41、42の第2の孔43、44に冷却媒体を流す。

【0055】
その後、制御部90によって、ヒータ61~64を制御することで、ヒータ61~64が第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5の中央部分に熱を局所的に付与する。ヒータ61~64によって熱せられた試験片5の温度は、FRTPによって構成された試験片5の溶融温度近傍の温度である。制御部90は、温度センサ88から試験片5の温度情報を取得する。そして、制御部90は、取得した温度情報に基づいて、試験片5の温度が溶融温度近傍になるように、ヒータ61~64に付与される熱の強さを制御する。

【0056】
本実施形態では、試験片5の一端部5aは第1冷却部30によって冷却され、試験片5の他端部5bは第2冷却部40によって冷却されている。そのため、試験片5の中央部分の熱は、試験片5の両端部5a、5bに伝わりにくく、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された箇所は、加熱されにくい。よって、本実施形態では、試験片5の中央部分は温度が上昇するが、両端部5a、5bは温度上昇が鈍い。したがって、試験片5の両端部5a、5bは、それぞれ第1つかみ具10および第2つかみ具20に対して滑りにくい。このため、試験片5の両端部5a、5bは、それぞれ第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された状態が維持される。

【0057】
試験片5が保持され、かつ、加熱された状態で、制御部90によって、油圧シリンダ6aを駆動させて第2つかみ具20を下方に移動させることで、試験片5の他端部5bを下方に引っ張る引張試験が行われる。引張試験が行われている間、試験片5の中央部分が下方に延びる。なお、引張試験が行われている間、撮影装置70によって試験片5の中央部分の表面を撮影するとよい。撮影装置70によって、試験片5を撮影する間隔は特に制限されないが、例えば、1秒ごとである。制御部90は、時間の経過と共に撮影された試験片5の画像に基づいて、試験片5の歪み度合いについて測定する。具体的には、撮影された試験片5の画像について、試験片5の表面5sの黒い斑点5c(図6参照)のうち任意の複数の点の集合体(以下、任意の集合体という。)に着目する。そして、時間の経過と共に、任意の集合体が引張試験によってどれくらい移動したかを、画像相関法を用いて測定することで、試験片5の歪み度合い(歪み分布)を測定している。

【0058】
なお、上述した引張試験装置100の使用方法では、試験片5の歪み度合いを、画像相関法を用いて測定するため、試験片5の中央部分の表面5sには、黒い斑点5cが塗られている。しかし、試験片5の歪み度合いを画像相関法で測定しない場合、試験片5の中央部分の表面5sには、黒い斑点5cが塗られていなくてもよい。試験片5の歪み度合いの測定方法は、画像相関法に限定されない。例えば、試験片5の引張試験を行っている際、試験片5が引っ張られる動画を撮影し、撮影した動画に基づいて、試験片5の歪み度合いを測定してもよい。この場合、試験片5の表面における歪み度合いを測定する箇所には、線が描かれていてもよい。試験片5の表面に描かれた線が、時間の経過に伴って、どの程度移動したかを測定することで、試験片5の歪み度合いを測定してもよい。

【0059】
上述した引張試験装置100の使用方法では、ヒータ61~64によって熱せられた試験片5の温度は、FRTPによって構成された試験片5の溶融温度近傍の温度であった。しかしながら、試験片5への加熱温度は、FRTPによって構成された試験片5の溶解温度近傍の温度以上であってもよいし、FRTPによって構成された試験片5の溶解温度近傍の温度以下であって室温以上であってもよい。引張試験を行う際の試験片5への加熱温度は特に限定されない。

【0060】
以上のように、本実施形態の引張試験装置100は、図1に示すように、第1つかみ具10と、第2つかみ具20と、第1冷却部30と、第2冷却部40とを備えている。第1つかみ具10は、試験片5の一端部5aを保持する。第2つかみ具20は、第1つかみ具10と対向するように配置され、試験片5の他端部5bを保持する。第1冷却部30は、第1つかみ具10によって保持された試験片5の一端部5aを冷却する。第2冷却部40は、第2つかみ具20によって保持された試験片5の他端部5bを冷却する。試験片5が加熱された場合、第1つかみ具10によって保持された試験片5の一端部5aは、第1冷却部30によって冷却される。そして、第2つかみ具20によって保持された試験片5の他端部5bは、第2冷却部40によって冷却される。よって、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって試験片5を保持して、試験片5を加熱した場合(例えば、FRTPの溶融温度近傍に加熱した場合)、FRTPで構成された試験片5の一端部5aおよび5bの表面は融けない。したがって、試験片5の一端部5aおよび5bが、それぞれ第1つかみ具10および第2つかみ具20に対して滑りにくくなる。よって、FRTPによって構成された試験片5を溶融温度近傍の温度になるように加熱した場合であっても、引張試験を適切に行うことができる。

【0061】
第1冷却部30は、第1つかみ具10と別体に設けられている。第2冷却部40は、第2つかみ具20と別体に設けられている。引張試験装置100を用いて、ヒータ61~64を使用せずに常温の状態で試験片5の引張試験を行う場合、試験片5に第1冷却部30および第2冷却部40を取り付けることなく、試験片5の引張試験を行うことができる。よって、引張試験を行う際の試験片5への加熱温度に応じて、第1冷却部30および第2冷却部40を使用するか否かを選択することができる。

【0062】
図2に示すように、第1冷却部30は、第1つかみ具10によって保持された試験片5に接触する第1接触部材31、32を備えている。第1接触部材31、32には、第1の孔33、34が形成されている。また、第2冷却部40は、第2つかみ具20によって保持された試験片5に接触する第2接触部材41、42を備えている。第2接触部材41、42には、第2の孔43、44が形成されている。引張試験装置100は、図1に示すように、第1の孔33、34と第2の孔43、44とに冷却媒体を供給する供給装置50を備えている。以上のような構成にすることによって、供給装置50が第1の孔33、34および第2の孔43、44に冷却媒体を供給するという比較的簡単な方法で、第1つかみ具10によって保持された試験片5の一端部5a、および、第2つかみ具20によって保持された試験片5の他端部5bを冷却することができる。

【0063】
引張試験装置100は、第1つかみ具10と第2つかみ具20との間において、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5が配置される空間Aに熱を付与するヒータ61~64を備えている。ヒータ61~64によって、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5に熱を均一に付与し易い。

【0064】
ヒータ61~64は、セラミックヒータである。図4に示すように、第1ヒータ61および第3ヒータ63は、平面視において、空間Aを挟んで対向するように設けられていている。また、第2ヒータ62および第4ヒータ64は、平面視において、空間Aを挟んで対向するように設けられている。ヒータ61~64を上述したように配置することによって、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5に熱を効率的に付与することができる。

【0065】
以上、第1実施形態に係る引張試験装置100について説明した。しかし、本発明の材料試験装置は、第1実施形態に係る引張試験装置100に限定されない。

【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る引張試験装置200について説明する。図7は、第2実施形態に係る引張試験装置200の正面図である。図8は、第1つかみ具10および第2つかみ具20の側面図である。図9は、第1つかみ具10の平面図である。

【0067】
図7に示すように、第1冷却部30は、第1つかみ具10と一体に設けられている。ここでは、図8および9に示すように、第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12には、それぞれ第1の孔33、34が形成されている。第1つかみ歯11、12が互い対向する面に対して平行になるように、第1つかみ歯11、12に、それぞれ第1の孔33、34が形成されている。そして、第1の孔33、34同士は、可撓性を有する第1の連通管39によって連通している。

【0068】
ここでは、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22の構成は、第1つかみ歯11、12と同様の構成をしている。そのため、ここでは、第2つかみ歯21、22の説明は、図9を用いて行う。なお、図9において、括弧内の符号は、第2つかみ歯21、22に関連する部位の符号である。ここでは、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22には、それぞれ第2の孔43、44が形成されている。第2の孔43、44は、第2つかみ歯21、22が互いに対向する面に対して、それぞれ平行になるように第2つかみ歯21、22を貫通している。本実施形態では、第2の孔43、44のそれぞれの貫通方向は、第1つかみ歯11、12に形成された第1の孔33、34の貫通方向と同じ方向である。第2の孔43、44同士は、可撓性を有する第2の連通管49によって連通している。

【0069】
本実施形態において、試験片5の引張試験を行う際、試験片5の一端部5aを第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12が挟むと共に、試験片5の他端部5bを第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22が挟む。そして、供給装置50を駆動させることで、第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12に形成された第1の孔33、34、および、第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22に形成された第2の孔43、44に冷却媒体を流す。

【0070】
その後、ヒータ61~64(図4参照)が第1つかみ具10と第2つかみ具20とによって保持された試験片5の中央部分に局所的に熱を付与する。試験片5の中央部分の熱は試験片5の中央部分から両端部5a、5bに伝わろうとする。しかし、本実施形態では、試験片5の一端部5aは第1つかみ歯11、12に形成された第1の孔33、34に流れる冷却媒体によって冷却され、試験片5の他端部5bは第2つかみ歯21、22に形成された第2の孔43、44に流れる冷却媒体よって冷却されている。そのため、試験片5の中央部分の熱は、試験片5の両端部5a、5bに伝わらず、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5の両端部5a、5bは、熱くならない。

【0071】
以上のように、本実施形態では、第1冷却部30および第2冷却部40は、それぞれ第1つかみ具10および第2つかみ具20と一体に設けられている。第1つかみ具10の第1つかみ歯11、12には、それぞれ冷却媒体が流れる第1の孔33、34が形成されている。第2つかみ具20の第2つかみ歯21、22には、それぞれ冷却媒体が流れる第2の孔43、44が形成されている。以上のような構成にすることによって、引張試験装置200の部品点数を少なくすることができ、引張試験を行う試験片5を引張試験装置200に容易に取り付けることができる。

【0072】
<他の実施形態>
第1実施形態では、第1冷却部30および第2冷却部40は、第1接触部材31、32および第2接触部材41、42で試験片5の両端部5a、5bを挟むことで、試験片5の両端部5a、5bを冷却していた。しかしながら、本発明の第1冷却部および第2冷却部の構造は、上記各実施形態に記載された構造に限定されない。例えば、第1冷却部30の第1接触部材31、32、および、第2冷却部40の第2接触部材41、42には、それぞれ第1の孔33、34および第2の孔43、44が形成されておらず、熱伝導などで第1接触部材31、32および第2接触部材41、42が冷却されるような構造であってもよい。また、本発明の第1冷却部および第2冷却部は、それぞれ可撓性を有するフレキシブルパイプを備えていてもよい。そして、上記フレキシブルパイプは、試験片5の両端部に巻き付けられていてもよい。このような第1冷却部および第2冷却部の構成であっても、上記フレキシブルパイプに冷却媒体が流れることで、試験片5の両端部5a、5bを冷却することができる。

【0073】
上記各実施形態では、ヒータ61~64は、セラミックヒータであった。しかし、ヒータ61~64は、セラミックヒータに限定されない。例えば、ヒータ61~64は、遠赤外線ヒータ、近赤外線ヒータ、または、ハロゲンヒータであってもよい。上述した種類の何れかのヒータを使用した場合であっても、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5に熱を効率的に付与することができる。特に、遠赤外線ヒータで試験片5に熱を付与する場合、試験片5をより均一に温め易い。よって、試験片5に熱をより効率的に付与することができる。

【0074】
第1実施形態では、図1および図4に示すように、カバー体80は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5を覆っていた。ヒータ61~64は、カバー体80に設けられ、カバー体80の内部に向かって熱を付与していた。カバー体80およびヒータ61~64の位置関係は、一例に過ぎず、図1および図4に示す例に限定されない。本発明の材料試験装置では、カバー体80は、恒温槽を構成するものであってもよい。この場合、恒温槽は、第1つかみ具10と、第2つかみ具と、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5とが配置された空間を覆っていてもよい。恒温槽を用いる場合、第1冷却部30は、第1つかみ具10と一体に設けられ、第2冷却部40は、第2つかみ具20と一体に設けられていることが好ましい。この場合、第1つかみ具10と第1冷却部30とが一体に設けられ、かつ、第2つかみ具20と第2冷却部40とが一体に設けられているため、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5の両端部5a、5bを冷却することができる。すなわち、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5の両端部5a、5bの温度上昇を抑制することができる。このため、恒温槽を用いた場合であっても、試験片5の引張試験を適切に行うことができる。なお、第1つかみ具10および第2つかみ具20は、それぞれ第1冷却部30および第2冷却部40と一体に設けられているため、第1つかみ具10および第2つかみ具20自体が冷却される。恒温槽内において、引張試験を行う場合、第1つかみ具10および第2つかみ具20が冷却されると、第1つかみ具10および第2つかみ具20に結露が生じる。このため、引張試験中、恒温槽内を乾燥状態にすることが好ましい。恒温槽内を乾燥状態にすることによって、第1つかみ具10および第2つかみ具20が結露しにくくなる。

【0075】
なお、上述した恒温槽は、第1つかみ具10と、第2つかみ具と、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5とが配置された空間を覆っていた。しかし、恒温槽は、第1つかみ具10および第2つかみ具20によって保持された試験片5が配置された空間を覆い、第1つかみ具10および第2つかみ具20が配置された空間を覆っていなくてもよい。この場合、第1冷却部30は、第1つかみ具10と一体であってもよいし別体であってもよい。第2冷却部40は、第2つかみ具20と一体であってもよいし別体であってもよい。

【0076】
カバー体80の透明部材85、86は、第1つかみ具10および第2つかみ具20に保持された試験片5と撮影装置70との間に設けられていることが好ましい。特に、透明部材85、86は、第1つかみ具10および第2つかみ具20に保持された試験片5の正面に配置されているとよい。また、透明部材85、86の幅は特に限定されないが、例えば、試験片5の幅よりも若干長くてもよいし、短くてもよい。透明部材85、86の幅は、撮影装置70が透明部材85、86を通じて、第1つかみ具10および第2つかみ具20に保持された試験片5の中央部分の表面を撮影できる程度であることが好ましい。また、カバー体80は、第1つかみ具10および第2つかみ具20に保持された試験片5、および、ヒータ61~64を囲むように構成されていてもよい。

【0077】
上記各実施形態では、図1に示すように、第1つかみ具10は、上部材8に固定され、第2つかみ具20は、油圧シリンダ6aが駆動することによって、試験片5の他端部5bを下方に引っ張っていた。すなわち、上記各実施形態の引張試験装置100は、試験片5の他端部5bを下方に引っ張ることによって、試験片5の引張試験を行う装置であった。しかし、本発明の材料試験装置は、試験片5の一端部5aを上方に引っ張ることで引張試験を行う装置であってもよい。この場合、第2つかみ具20は、底部材6に固定され、上部材8の内部に油圧シリンダ6aが設けられているとよい。そして、油圧シリンダ6aが駆動することによって、第1つかみ具10は、試験片5の一端部5aを上方に引っ張るような構造であってもよい。

【0078】
上記各実施形態では、油圧シリンダ6aによって、試験片5の端部は引っ張られていた。すなわち、上記各実施形態では、油圧式の駆動機構によって試験片5の端部を引っ張るような機構であった。しかしながら、試験片5の端部を引っ張る機構は、電気式、例えば、モータが駆動することによって、試験片5の端部を引っ張るような機構であってもよい。

【0079】
上記各実施形態では、材料試験装置は、試験片5の引張試験を行う引張試験装置であった。しかし、材料試験装置は、試験片5の圧縮試験を行う圧縮試験装置であってもよい。この場合、例えば、油圧シリンダ6aが駆動することによって、第2つかみ具20が試験片5の他端部5bを上方に押すようなものであってもよい。

【0080】
ここで提案される材料試験装置について、さらに他の実施形態を説明する。
上述した実施形態では、材料試験装置100は、第1冷却部30と、第2冷却部40と、供給装置50を備えている。図10は、他の実施形態にかかる材料試験装置100を示す正面図である。図10で例示される材料試験装置100は、第1冷却部30と、第2冷却部40と、供給装置50とを備えていない。

【0081】
ここで提案される材料試験装置100は、図10に示すように、必ずしも第1冷却部30と、第2冷却部40と、供給装置50を備えていなくてもよい。例えば、材料試験においてヒータ61~64で加熱する温度が、例えば、試験片の中心部において170℃程度に加熱される場合でも、第1つかみ具10や第2つかみ具20で捕まれた部位の温度が70℃以下程度に抑えられる場合がある。このような場合には、試験対象となる試験片に用いられた樹脂の溶融温度や耐熱温度や熱変形温度などを考慮すると、冷却が不要である場合がある。つまり、材料試験装置100は、必ずしも第1冷却部30と、第2冷却部40と、供給装置50を備えていなくてもよい。これにより、装置を簡素化できる。例えば、上述した形態で、第1冷却部30と第2冷却部40を取り付けずに用いるとよい。ここで提案される材料試験装置100は、ヒータ61,62によって試験片5を局所的に加熱することができ、加熱された試験片5の性能を評価できる。以下、ここで提案される材料試験装置100のように、ヒータ61,62によって、試験片5を局所的に加熱する方法を採用した材料試験装置を、適宜に「高温変形解析システム」と称する。

【0082】
次に、本発明者が行なった試験例を説明する。

【0083】
図11は、試験された材料試験装置の模式図である。図11では、試験片5、第1冷却部30、第2冷却部40、ヒータ61,62(遠赤外線セラミックヒータ)の配置が模式的に示されている。

【0084】
ここで用意される試験片5の寸法は長さ250mm×幅20mm×厚さ2mmとした。試験片5の強化材には、45度に配向させたポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維と-45度に配向させたポリアクリルニトリル系炭素繊維とを交互に積層し、ポリエステル縫糸によりスティッチしたノンクリンプファブリック(NCF,300g/m2、積層構成[+45°/-45°]、東邦テナックス製)を用いた。試験片5のマトリックスには、ポリアミド6樹脂(PA6、1013B、融点210℃、宇部興産製)を目付50g/m2の不織布(クラレ製)に加工したものを用いた。成形は,ホットプレス成形により、成形温度を280℃、成形圧力を2MPa、保持時間を90sとして、繊維の体積含有量がVf50%となるように成形した。

【0085】
なお、積層板の構成は、[+45°/-45°]3sである。つまり、+45°と-45°が1層にセットされているノンクリンプファブリックが、繊維の配向が面対称(シンメトリーになるよう)に重ねられる。かかるノンクリンプファブリックの面対称積層体が、さらに繊維の配向の角度が交互に異なるように3枚積層されている。積層された繊維の配向の角度を順に羅列すると(+45-45)(+45-45)(+45-45)(-45+45)(-45+45)(-45+45)となる。ここで、括弧内は、+45°と-45°が1層にセットされているノンクリンプファブリックを示している。

【0086】
また、試験片5の内部温度を測るため、上記のノンクリンプファブリックを厚さ1mmになるように積層体を成形する。そして、2枚の積層板の間にk型熱電対を挟み込む。かるk型熱電対によって試験片5の内部の温度を測定した。k型熱電対を挟み込んだ試験片は、試験片5の温度変化を推定するための温度測定用に用いられるが、引張試験には用いられていない。

【0087】
ひずみ測定には三次元変形計測装置(ARAMIS GOM社(ドイツ)製)を用い、デジタル画像相関法により測定対象物の表面のランダム模様からひずみ分布を測定することが可能なシステムを用いた。本試験例では炭酸カルシウムとエタノールを混ぜた塗料を用い、ランダム模様を作成した。またランダム模様のコントラストを強調するために下地に白色、ランダム模様に黒色のスプレーを用いて試験へ塗布した。

【0088】
図12(a)と図12(b)は、試験片5とヒータ61、62との位置関係を示す。ここでは、ヒータ61,62と試験片5との距離や照射方向が、試験片5の温度に及ぼす影響を調べた。ヒータ61,62は、試験片5の長さ方向の中心に、長さ方向の中心を合わせて(つまり、高さ方向を合わせて)配置されている。ヒータ61,62と試験片5との距離d(mm)は、ヒータ61,62の照射部の中心を結ぶ直線D1に沿って、試験片5の幅方向の中心とヒータ61,62の照射部の中心との距離として規定した。また、ヒータ61,62の照射方向は、試験片5の表面の法線方向D2と、ヒータ61,62の照射部の中心を結ぶ直線D1とのなす角αで規定した。ここで、図12(a)に示すように、試験片5の表面の法線方向D2にヒータ61,62の照射部が配置されている場合には、ヒータ61,62の照射角度を0°とした。この試験例では、ヒータ61,62には、長さ120mm×幅60mmの遠赤外線セラミックヒータ(H7GS-66192、日本ガイシ株式会社製)を用いた。

【0089】
試験条件は、試験片温度を100℃、試験片5とヒータ61,62との距離を50mm、80mm、100mm、120mm、150mmとした。なお、本試験例における試験片温度は、目標温度に対して±3℃の範囲として定義した。

【0090】
また高温変形解析システムでの試験片のひずみ測定を想定して、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを45°、ヒータ61,62と試験片5との距離dを100mmとしたときの温度測定も行った。試験片温度は100℃、170℃とした。なお、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを45°とした時には、引張試験を想定して第1冷却部30および第2冷却部40を試験片5に取り付けたときの温度測定も行った。第1冷却部30、第2冷却部40の位置は、第1つかみ具10、第2つかみ具20が試験片5を保持した位置から10mmとした。

【0091】
試験片5の表面の温度分布を赤外線サーモグラフィ(TVS-500EX、日本アビオニクス株式会社製)によって測定した。また試験片5の予め定められた位置での温度はk型熱電対およびポータブルマルチロガー(ZR-RX40、オムロン株式会社製)によって測定した。熱電対による温度測定箇所は、試験片5の長さ方向の中心(0mmとする)を基準として、0mm(中心)、中心から25mm上方の位置、中心から75mm上方の位置とした。このうち0mm(中心)と中心から25mm上方の位置については表面と内部の温度を測定した。中心から75mm上方の位置については表面の温度のみを測定した。

【0092】
引張試験には万能精密試験機(オートグラフ AG-100kN、株式会社島津製作所製)を用い、試験速度を5mm/minとした。ヒータ61,62によって加熱する本引張試験では、100℃、170℃、200℃、220℃とした。また、本引張試験に対する比較として、引張試験用の恒温槽内での引張試験も実施した。恒温槽を用いた引張試験では、試験片5の温度を100℃、110℃、120℃とした。

【0093】
なお、本引張試験では、試験片5を加熱してから15分後に赤外線サーモグラフィによって表面温度を確認した。また試験片5の長さ方向の中央の表面温度が200℃、220℃となるように加熱する場合には、外気を遮断するために、ヒータ用カバー89(図4参照,図11において図示省略)で、ヒータ61,62の照射部の周囲を覆った。これによりヒータ61,62の熱がより効率良く試験片5に供給されるようにした。

【0094】
図13は、本引張試験における温度測定結果を示すグラフである。図13では、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを0°とし、ヒータ61,62と試験片5との距離d(図12参照)を、50mm、80mm、100mm、120mm、150mmと変えて温度を測定した。そして、長さ方向の中心における表面温度が大凡100℃となるように試験片5を加熱したときの温度測定結果を示すグラフが示されている。図13では、縦軸に温度、横軸にヒータ61,62と試験片5との距離d毎に、試験片の長さ方向の中心における0mm、25mmでの表面(Suface)および内部(Inside)の温度が示されている。図13に示すように、ヒータ61,62と試験片5との距離dが100mmのとき、試験片の0mm、25mmでの表面(Suface)と内部(Inside)の温度差が最も小さいことがわかる。

【0095】
図14は、試験片5を加熱した際の温度測定結果を示すグラフである。図14では、試験片5の温度を100℃、ヒータ61,62と試験片5とのなす角αを0°、45°としたときの温度測定結果を示すグラフである。試験片5の0mm、25mmでの表面および内部の温度差は、目標温度に対して±3℃以内の範囲に収まっており、ヒータ61,62と試験片5とのなす角αが0°の温度測定結果と比較しても、問題のない範囲であることがわかる。そして、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを0°とした場合でも45°とした場合でも、試験片5の温度は、同等の環境でひずみが測定できることが確認された。このため、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを、例えば、45°とし、試験片5に対して遠赤外線ヒータを正面に配置して、試験片5のひずみを測定してもよい。また、ヒータ61,62と試験片5のなす角αを45°とした場合、ヒータ61,62と試験片5との距離が同じである場合には、試験片5の正面が広く開かれる。このため、遠赤外線ヒータによるひずみの観測が容易になる。かかる観点において、ヒータ61,62と試験片5のなす角αは、例えば、20°以上70°以下の範囲、より好ましくは30°以上60°以下の範囲で任意に設定しうる。また、試験片5が局所的に加熱されるとよく、試験片5の周りに配置するヒータの数も、2つに限定されず、3つあるいは4つなど、種々変更可能である。

【0096】
図15は、試験片5の長さ方向の中心において、表面の温度が大凡100℃になるように加熱した時の試験片5の温度分布を示すグラフである。図16は、試験片5の長さ方向の中心において、表面の温度が大凡170℃になるように加熱した時の試験片5の温度分布を示すグラフである。図15および図16は、冷却部30,40を試験片5に取り付けたときの温度測定結果と、冷却部30,40が試験片5に取り付けられていないときの温度測定結果を示すグラフである。

【0097】
図15および図16に示すように、試験片5の長さ方向の中心から0mm、25mmでの表面および内部の温度分布において、冷却部30,40の有無が試験片5の温度分布に及ぼす影響はあまりないことが分かる。他方で、試験片5の長さ方向の中心から75mmの位置(各保持部10,20の近傍)での温度は、試験片5の長さ方向の中心を約100℃に加熱したのとき、冷却部30,40なしの場合、47.9℃であったのに対して、冷却部30,40を機能させた場合、32.8℃であった。また、試験片5の長さ方向の中心を約170℃に加熱したとき、冷却部30,40なしの場合、66.5℃であったのに対して、冷却部30,40を機能させた場合、41.2℃であった。このように、冷却部30,40を機能させることによって、保持部10,20の温度を低く抑えることができる。

【0098】
図17は、試験片5の内部の温度履歴を測定した結果を示すグラフである。図17では、縦軸は温度、横軸は時間であり、試験片5の表面温度が100℃または170℃になるように加熱したときの、試験片5の内部の温度上昇が記録されている。図17に示すように、試験片5の内部の温度は、ヒータ61,62によって加熱を開始してから上昇し、やがて収束することがわかる。試験片5の内部の温度はヒータ加熱後大凡15分で安定していることが確認された。したがって、試験片5を加熱してから大凡15分経過後に引張試験を行なうとよいことがわかる。

【0099】
また、試験片5の表面温度が170℃になるように、荷重が負荷されていない状態で加熱を開始し、15分後のひずみ分布を測定した。このとき、加熱前後でひずみ測定用塗料の移動が生じない。荷重が付加されていない状態で加熱のみである場合には、ひずみ分布は加熱前とほぼ変わらないことが確認された。

【0100】
図18は、荷重を付加して引張試験を行なった際の、応力-ひずみ線図の一例を示すグラフである。図18では、縦軸が応力(Stress)であり、横軸がひずみ(Strain)である。図18では、試験片5の中心の表面温度を100℃に加熱した場合と、170℃に加熱した場合とが示されている。図18に示すように、ヒータ61,62によって、試験片5を局所的に加熱する高温変形解析システムでは、170℃という高温下での引張試験中においてもひずみ測定が可能であることが分かる。

【0101】
図19は、引張試験によって測定されたひずみの平均値を示すグラフである。図19では、ヒータ61,62によって、試験片5を局所的に加熱する高温変形解析システムにおいて測定されている。ここでは、長さ方向の中心における表面温度が170℃になるように試験片5を加熱して引張試験を行なった。図19では、引張試験中の試験片5の長さ方向の中心(0mm)付近と、中心から25mm上方付近、中心から25mm下方付近において算出されたひずみの平均値が示されている。より具体的には、ここでは、試験片5の長さ方向の中心(0mm)と、中心から25mm上方の位置と、中心から25mm下方の位置とで、それぞれ試験片の幅方向におけるひずみの平均値が算出されている。この結果、標点間領域内でのひずみの値は有意水準5%で有意差は認められなかった。このように、ここで提案される材料試験装置によれば、引張試験において標点間距離を50mmとしたひずみ測定が可能である。

【0102】
また、ここで提案される高温変形解析システムによれば、試験片5の長さ方向の中心の表面温度が220℃になるように加熱した場合でも、冷却部30,40を機能させることによって、試験片5を保持する保持部10,20にすべりは生じず、試験片5は破断されることが確認された。このようにポリアミド6をマトリクスとする試験片に対しては、220℃に加熱した引張試験が可能であった。

【0103】
ところで、比較対象として実施した恒温槽を用いた引張試験では、温度が100℃では、試験片5の保持部10,20ではすべりは生じず、試験片5は破断された。これに対して、温度が110℃のときや120℃のときでは、保持部10,20ですべりが生じタブが剥がれた。このように、恒温槽を用いた引張試験では、試験片5の温度が全体として上昇するため、高温での引張試験では保持部10,20で滑りが生じ、適切な試験が行えなかった。これに対して、ヒータ61,62によって試験片5を局所的に加熱する高温変形解析システムによれば、保持部10,20に滑りが生じにくいので、試験片5を所望の温度に加熱した引張試験が可能になる。また、ヒータ61,62によって試験片5を局所的に加熱することができるので、試験片5を加熱する温度条件がそれほど高くない場合には、冷却部30,40を機能させなくてもよい。したがって、試験片5を加熱する温度条件によっては、冷却部30,40は必須ではない。また、保持部10,20に滑りが生じる程度に試験片5を加熱する温度条件が高い場合には、冷却部30,40を機能させることによって、保持部10,20に滑りが生じるのをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0104】
5 試験片
10 第1つかみ具(第1保持部)
11、12 第1つかみ歯
20 第2つかみ具(第2保持部)
21、22 第2つかみ歯
30 第1冷却部
31、32 第1接触部材
33、34 第1の孔
40 第2冷却部
41、42 第2接触部材
43、44 第2の孔
50 供給装置
61~64 ヒータ
70 撮影装置
80 カバー体
88a 上部カバー
88b 下部カバー
89 ヒータ用カバー
90 制御部
100、200 引張試験装置(材料試験装置)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18