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明細書 :導電性高強度高硬度コンポジットセラミックス及びその作製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-147780 (P2016-147780A)
公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
発明の名称または考案の名称 導電性高強度高硬度コンポジットセラミックス及びその作製法
国際特許分類 C04B  35/10        (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
FI C04B 35/10 E
C04B 35/64 E
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-025381 (P2015-025381)
出願日 平成27年2月12日(2015.2.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年10月29日に一般社団法人粉体粉末冶金協会が発行した「粉体粉末冶金協会講演概要集 平成26年度秋季大会」にて発表
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】加藤 将樹
【氏名】笠原 孝太
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G030
Fターム 4G030AA36
4G030AA49
4G030AA66
4G030BA02
4G030BA19
4G030BA20
4G030GA23
4G030GA24
4G030GA27
要約 【課題】導電性を有した高強度高硬度コンポジットセラミックスの作製法の提供。
【解決手段】アルミナ(Al2O3)粉体とカーボンナノファイバー(CNF)を、Al2O3:CNFが体積比で97~95:3~5となるように混合し、混合粉を調製する工程A、前記工程Aで得られた混合粉と窒化チタン(TiN)微粒子を、混合粉:TiNが体積比で96~93:4~7となるようにして湿式混合を行い、乾燥を行ってAl2O3-CNF-TiN粉体を調製する工程B、及び、前記工程Bで得られたAl2O3-CNF-TiN粉体を成形し、更に冷間静水圧プレスにて成形した後、パルス通電加圧焼結法で不活性ガス雰囲気下、昇温速度50℃/min以上、圧力30~60 MPa、1300~1400℃で3~30分の条件にて焼結する工程C、を含む製法である導電性高強度高硬質{(Al)/CNF/TiN}コンポジットセラミックス。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性を有した高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスを作製するための方法であって、当該方法が、
工程A:アルミナ(Al2O3)粉体とカーボンナノファイバー(CNF)を、Al2O3:CNFが体積比で97~95:3~5となるように混合し、混合粉を調製する工程、
工程B:前記工程Aで得られた混合粉と窒化チタン(TiN)微粒子を、混合粉:TiNが体積比で96~93:4~7となるようにして湿式混合を行い、乾燥を行ってAl2O3-CNF-TiN粉体を調製する工程、及び
工程C:前記工程Bで得られた Al2O3-CNF-TiN粉体を成形し、更に冷間静水圧プレスにて成形した後、パルス通電加圧焼結法で不活性ガス雰囲気下、昇温速度50℃/min以上、圧力30~60 MPa、1300~1400℃で3~30分の条件にて焼結する工程
を含むことを特徴とする導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスの作製法。
【請求項2】
前記請求項1記載の作製法を用いて作製されたAl2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスであって、電気抵抗率が10-2~10-4Ω・m、曲げ強度が500MPa以上、ビッカース硬度が19GPa以上、破壊靱性値が6.0MPa・m1/2以上、相対密度が98%以上であることを特徴とする導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高強度高硬度コンポジットセラミックス及び当該コンポジットセラミックスを作製するための方法に関し、特に酸化アルミニウム系コンポジットセラミックス(Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックス)及びその作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングセラミックスの1種である酸化アルミニウム(Al2O3)は、金属材料に比較して、軽量(密度D:3.987Mg/m3)で化学的安定性が高く、電気絶緑性(抵抗率ρ:1016Ω・m)で、高ビッカース硬度(Hv:18~20GPa)並びに高い弾性率(E:380GPa)等を有する優れた素材である。しかしながら、Al2O3は脆性であり高硬度であるために、精密加工が困難であり、その応用範囲が限定されている。このセラミックスに、機械的特性を維持または向上させながら、高電気伝導性(低電気抵抗)を付与することができれば放電加工が可能となり、精密加工を行うことが可能となる。
一方、窒化チタン(TiN)は、高融点(Tm:2950℃)、高硬度(ビッカース硬度Hv:20 GPa)、高電気伝導率(σe:3.0x108 S・m-1)を有するが、難焼結性であり、緻密なバルク体を得ることは難しいという問題点がある。
【0003】
これまでに、Al2O3系セラミックスに導電性を付与させる方法として、例えば下記の特許文献1には、TiN超微粒子が均一に被着した実質的に球状のAl2O3粒子を加圧成形、焼結することにより、Al2O3微粒子間に、TiN超微粒子の連続した相が存在する導電性アルミナ系複合セラミックスが開示されている。
しかしながら、この特許文献1に開示されている複合セラミックスの比抵抗は10-1Ω・mオーダーの値であるので導電性が十分とは言えず、又、導電性を付与させるために一定量以上のTiN超微粒子を被着させる必要があるので、90重量%を超えるAl2O3含有率とすることが難しく、これにより曲げ強度400MPa以上のものを製造することは困難であった。
【0004】
また、下記の非特許文献1には、TiH2粉末(粒子径6.5μm)とAl2O3微粒子(粒子径0.1μm)とカーボンナノファイバー(CNF: carbon nanofiber、直径150nm、長さ6μm)の混合物を脱水素した後、カプセルフリーN2-HIP(1200℃/20MPa/1h)にて窒化し、その後、得られた粉体を一軸加圧成形し、パルス通電加圧焼結(1500℃/50MPa/10min/Ar)を行うことによって(Al2O3/CNF)/TiNコンポジットを製造することが開示されているが、この方法で得られるコンポジットの曲げ強度σbは400MPa、ビッカース硬度Hvは17.4GPaで、破壊靭性値KICは4.99MPa・m1/2であり、機械的強度が充分ではなかった。
このように、高強度かつ電気導電性を持つセラミックスの作製法は提案されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平8-119721号公報
【0006】

【非特許文献1】K.Hirota, K.Kasahara, T.Ishiguro, H.Yagura, M.Kato, “Fabrication of dense Al2O3/TiN/CNF composites using both HIP and pulsed electric-current pressure sintering (PECPS)”, HIP’14 Proceeding
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術における前述の問題点を解決し、優れた導電性(電気抵抗率ρ: 10-2~10-4Ω・m)、高い曲げ強度(σb:500MPa以上)、高硬度(Hv:19 GPa以上)、高破壊靱性(6.0MPa・m1/2以上)、高密度(相対密度98%以上)を有するAl2O3系コンポジットセラミックスの作製法を提供することを課題とする。
本発明者等は、カーボンナノファイバー(CNF)が高い引張り強度、と弾性率及び、高い電気伝導率を有していることに注目し、Al2O3微粒子(粒子径0.1μm)粉体に低電気抵抗率(ρ:10-6Ω・m)と高引張り強度(σt:~220 GPa)を有するCNF(直径 150nm、長さ4~5μm)を均質に分散させ、1350℃/50MPa/10min/Arの条件でパルス通電加圧焼結(Pulsed Electric-Current Pressure Sintering:PECPS)すると、緻密で微細結晶粒子から構成されたAl2O3系コンポジットが作製でき、曲げ強度σbと破壊靭性値KICは向上し、電気抵抗が極端に低下して放電加工が可能となった。しかし、柔らかいCNFを添加したことにより、ビッカース硬度Hvが低下した。そこで、Al2O3粉体とCNFを所定の混合比率(体積比)となるように混合して混合粉を調製し、得られた混合粉と、高電気伝導性と高硬度のチッ化チタンTiN微粒子(粒子径約20nm)を、混合粉:TiNが所定の混合比率(体積比)となるようにして湿式混合して均質に分散添加し、乾燥を行ってAl2O3-CNF-TiN粉体を得、この粉体を金型成形し、更に冷間静水圧プレス(cold isostatic pressing:CIP)にて成形した後、高速昇温、短時間加圧焼結可能なパルス通電加圧焼結を行うことで、導電性高強度高硬度のAl2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスが得られることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決可能な本発明の導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスの作製法は、以下の工程A~C:
工程A:アルミナ(Al2O3)粉体とカーボンナノファイバー(CNF)を、Al2O3:CNFが体積比で97~95:3~5となるように混合し、混合粉を調製する工程、
工程B:前記工程Aで得られた混合粉と窒化チタン(TiN)微粒子を、混合粉:TiNが体積比で96~93:4~7となるようにして湿式混合を行い、乾燥を行ってAl2O3-CNF-TiN粉体を調製する工程、及び
工程C:前記工程Bで得られたAl2O3-CNF-TiN粉体を成形し、更に冷間静水圧プレスにて成形した後、パルス通電加圧焼結法で不活性ガス雰囲気下、昇温速度50℃/min以上、圧力30~60 MPa、1300~1400℃で3~30分の条件にて焼結する工程
を含むことを特徴とする。
【0009】
又、本発明は、上記の特徴を有した作製法を用いて作製された導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスであり、当該Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスは、電気抵抗率が10-2~10-4Ω・m、曲げ強度が500MPa以上、ビッカース硬度が19GPa以上、破壊靱性値が6.0MPa・m1/2以上、相対密度が98%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作製法を用いることにより、電気抵抗率ρ10-2~10-4Ω・mの優れた導電性を有し、かつ、曲げ強度σbが500MPa以上で、ビッカース硬度Hvが19GPa以上、破壊靱性値が6.0MPa・m1/2以上、相対密度が98%以上であるAl2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスを作製することができる。
高電気伝導性を有するAl2O3/ CNFコンポジットに微粒子TiNを添加分散させた本発明のAl2O3/TiN/CNF系コンポジットは、構造材料としての高強度、高硬度に加え、絶縁破壊の防止や放電加工による精密加工等が行える材料である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックス作製法における工程を示すフローチャートであり、実施例における各工程の製造条件が記載されている。
【図2】CNF添加量(x)とTiN添加量(y)を変化させて得られたセラミックスについての破面の走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】左側のグラフは、CNF添加量を変化させて得られたセラミックスについての曲げ強度σbの変化を示すグラフであり、右側のグラフは、TiN添加量を変化させて得られたセラミックスについての曲げ強度σbの変化を示すグラフである。
【図4】左側のグラフは、CNF添加量を変化させて得られたセラミックスについてのビッカース硬度Hvの変化を示すグラフであり、右側のグラフは、TiN添加量を変化させて得られたセラミックスについてのビッカース硬度Hvの変化を示すグラフである。
【図5】左側のグラフは、CNF添加量を変化させて得られたセラミックスについての破壊靭性値KICの変化を示すグラフであり、右側のグラフは、TiN添加量を変化させて得られたセラミックスについての破壊靭性値KICの変化を示すグラフである。
【図6】左側のグラフは、CNF添加量を変化させて得られたセラミックスについての電気抵抗率ρの変化を示すグラフであり、右側のグラフは、TiN添加量を変化させて得られたセラミックスについての電気抵抗率ρの変化を示すグラフである。
【図7】(CNF添加量x=3, TiN添加量y=5)の組成を有した(Al2O3/CNF)/TiN材料の破断表面のSEM(EDS) マッピング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスを作製することが可能な本発明の方法における工程A~Cについて説明する。
図1は、本発明の導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックス作製法における工程の一例を示すフローチャートであり、実施例にて使用した各工程の製造条件が記載されているが、本発明は、これら条件に限定されるものではない。

【0013】
まず、本発明における工程A(Al2O3-CNF混合粉の調製工程)では、原料粉末としてのα-Al2O3粉体とCNFを、α-Al2O3:CNFが体積比で97~95:3~5となるように混合して混合粉を調製するが、この際、α-Al2O3粉体としては粒子径Ps~0.15μm(好ましくは~0.10μm)で、純度99.9%以上(好ましくは99.99%)のものが使用され、CNFとしては、直径が100~200nm(好ましくは130~170nm、特に好ましくは150nm)、長さが2~10μm(好ましくは3~8μm、特に好ましくは6μm)のものが使用され、いずれも市販品を利用することができる。尚、本願明細書において記載されている粒子径はいずれもレーザー回折散乱法によって測定された値である。
本製法の工程Aにおいて、α-Al2O3:CNFの体積比が上記の範囲に限定されるのは、CNF添加量が3体積%未満になると、電気抵抗率が大きくなって十分な導電性が得られず、逆にCNF添加量が5体積%を超えると、曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靭性値が小さくなって機械的強度が低下するからである。
尚、α-Al2O3粉体とCNFの上記混合は、超音波ホモジナイザーを用いてアルコール(例えばエタノール)中で行うことが好ましい。

【0014】
そして、本発明における工程B(Al2O3-CNF-TiN粉体の調製工程)では、上記工程Aで得られた混合粉と窒化チタン(TiN)微粒子を、混合粉:TiNが体積比で96~93:4~7となるようにして湿式混合を行い、乾燥を行ってAl2O3-CNF-TiN粉体を調製するが、この際、TiN微粒子としては粒子径Ps~30nm(好ましくは~20nm)のものが使用され、市販品を利用することができる。尚、混合粉:TiNの体積比として上記の比率が選択されるのは、TiNの割合が4体積%よりも小さくなると、電気抵抗率が大きくなって十分な導電性が得られず、逆にTiNの割合が7体積%よりも大きくなると、曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靭性値が小さくなって機械的強度が低下し、電気抵抗率が大きくなるからである。
尚、Al2O3-CNF混合粉とTiN微粒子の上記混合は、ボールミルを用いてアルコール(例えばエタノール)中で行うことができるが、TiN微粒子の分散に超音波ホモジナイザーを使用することもでき、この場合には、ボールミルを用いた場合よりも、曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靱性値を更に向上させることが可能である。

【0015】
本発明における工程C(焼結工程)では、前記工程Bで得られたAl2O3-CNF-TiN粉体を金型等を用いて成形し、更に冷間静水圧プレスにて成形し、次いで、不活性ガス雰囲気下(例えばアルゴンガス又は窒素ガス雰囲気下)、昇温速度50℃/min以上、圧力30~60 MPa、焼結温度1300~1400℃で3~30分の条件にてパルス通電加圧焼結することによって、導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスを製造する。
本発明において、一軸加圧下、低電圧でパルス状直流電流を流し、火花放電現象により瞬時に高エネルギーを発生させて試料の焼結を行うパルス通電加圧焼結法が適しているのは、急激なジュール加熱により溶解と高速拡散が起こり、短時間で高速焼結できるので、比較的粒成長を抑えた緻密な焼結体(相対密度が98%以上)を得ることができるからである。

【0016】
本発明におけるパルス通電加圧焼結の特に好ましい条件は、アルゴンガス雰囲気下、昇温速度50~120℃/分、加圧力50~60 MPa、焼結温度1300~1400℃、保持時間7~15分の条件である。この際、焼結温度が1300℃未満になると、高い曲げ強度が得られず、焼結温度が1400℃を超えると、高い破壊靱性値が得られなくなるので好ましくない。保持時間については、3~30分で充分緻密化するが、加圧力が30MPa未満では焼結密度が低くなり、逆に60 MPaを超えると通電加圧焼結に使用する金型の強度に上限があり使用出来なくなるという問題がある。昇温速度については、50℃/分未満になると長時間の熱処理となり製造コストが高くなり、逆に120℃/分を超えると、焼結体内部の微細構造にムラが生じ、均質で大型の試料の作製が困難となるので好ましくない。
尚、本発明において、曲げ強度σbは、スパン長さ8 mm、クロスヘッドの送り0.5 mm/minの条件で測定された三点曲げ強度の値であり、破壊靱性値KICは、荷重20 kg(196N)で5秒間正四角錐のダイヤモンド圧子をセラミックス表面に押し込み、形成された圧痕の四隅に発生するクラックの長さから評価するインデンテーション(IF)法(K. Niihara et al., J. Master. Sci. Lett., 1, 13-16 (1982))に従って測定された値である。

【0017】
上記の工程A~Cを含む本発明の作製法では、CNFとTiNの最適添加組成を選択することにより、500MPa以上の曲げ強度を有し、低電気抵抗率(ρ≦1.0X10-1Ω・m)で、さらに破壊靱性値が6.0MPa・m1/2以上で、ビッカース硬度が19GPa以上で、相対密度が98%以上の導電性高強度高硬度のAl2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスが作製できる。
【実施例】
【0018】
導電性高強度高硬度のAl2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスの作製例(最適添加組成の検討実験)
〔実験方法〕
原料粉末としてα-Al2O3(粒子径Ps~0.10 μm、純度99.99%)とCNF(150 nmφ-4~5 μml)を超音波ホモジナイザーにて30 min分散・混合させた。この混合粉とTiN微粒子(Ps ~20 nm)とを、遊星Ball-Mill(ZrO2ポット45 ml,ZrO2ボール1 mmφ,200 rpm)により湿式混合した。そして、乾燥を行った後、金型成形(一軸加圧、16 mmφ/20MPa)し、更にCIPで加圧処理(245MPa)した。その後、得られた成形体を、市販のパルス通電加圧焼結装置(SPSシンテックス(株)/SPS-510Aを使用)を用いて、アルゴンガス雰囲気下、加圧圧力50 MPa、焼結温度1350℃、保持時間10分、昇温速度100℃/分の条件でパルス通電加圧焼結を行い、焼結および緻密化を行って焼結体を得た。微細構造観察にはFE-SEMを用い、機械的特性として、ビッカース硬度Hv、破壊靭性値KIC、曲げ強度σbの測定、電気的特性の評価として抵抗率ρを四端子法で測定した。
又、CNF添加量x=3, TiN添加量y=5の組成において、TiN微粒子の分散にボールミルを用いて作製されたAl2O3/CNF/TiNコンポジットと、超音波ホモジナイザーを用いて作製されたコンポジットの、それぞれの物性値を測定し、比較した。
【実施例】
【0019】
〔結果・考察〕
以下の表1には、CNF添加量とTiN添加量を変化させて得られた[(Al2O3/CNF)]/TiN= (100-y)[(100-x)/x]/y組成のコンポジットセラミックス(x=0,1,3,5,10:y=1,3,5,10)の理論密度(Dx)、実測密度(Dobs)及び相対密度(Dobs/Dx)が要約されている。
又、表2には、CNF添加量とTiN添加量を変化させて得られた上記コンポジットセラミックスの物性値(曲げ強度σb、ビッカース硬度Hv、破壊靭性値KIC)が要約されている。
更に、表3には、CNF添加量とTiN添加量を変化させて得られた上記コンポジットセラミックスの電気抵抗率ρが要約されており、表4は、ボールミル及び超音波ホモジナイザーを用いて混合された(x=3,y=5)のAl2O3/CNF/TiNコンポジットの各種物性値を要約した表である。
【実施例】
【0020】
【表1】
JP2016147780A_000003t.gif
【実施例】
【0021】
【表2】
JP2016147780A_000004t.gif
【実施例】
【0022】
【表3】
JP2016147780A_000005t.gif
【実施例】
【0023】
【表4】
JP2016147780A_000006t.gif
【実施例】
【0024】
図2には、各セラミックスの破断面のSEM画像(倍率20k)が示されており、この図2のSEM画像から、粒子の異常粒成長は観察されなかった。尚、[Al2O3/CNF]/TiN= 95[95/5]/5(体積%)の組成を有したコンポジットセラミックス(x=5, y=5)のSEM画像から、Al2O3マトリックスの結晶粒径は0.27μmであることがわかり、この結晶粒径は、TiH2を出発原料とする前記非特許文献1記載の製法にて作製されるコンポジットセラミックスの結晶粒径1.87μmよりもかなり小さい。
【実施例】
【0025】
図3に示されたCNF添加量(左側グラフ)及びTiN添加量(右側グラフ)を変化させた際のセラミックスの曲げ強度σbの変化を示すグラフから、TiN添加量が3体積%で、CNF添加量が5体積%である時、あるいは、TiN添加量が5体積%で、CNF添加量が3~7体積%である時に500MPa以上の曲げ強度が達成できることがわかった。又、CNF添加量が3体積%で、TiN添加量が5~7体積%である時、あるいは、CNF添加量が5体積%で、TiN添加量が3~8体積%である時に500MPa以上の曲げ強度が達成できることがわかった。
【実施例】
【0026】
図4に示されたCNF添加量(左側グラフ)及びTiN添加量(右側グラフ)を変化させた際のセラミックスのビッカース硬度Hvの変化を示すグラフから、TiN添加量が3体積%で、CNF添加量が5体積%以下である時、あるいは、TiN添加量が5体積%で、CNF添加量が7体積%以下である時に19GPa以上のビッカース硬度が達成できることがわかった。又、CNF添加量が3体積%で、TiN添加量が8体積%以下である時、あるいは、CNF添加量が5体積%で、TiN添加量が6体積%以下である時に19GPa以上のビッカース硬度が達成できることがわかった。
【実施例】
【0027】
図5に示されたCNF添加量(左側グラフ)及びTiN添加量(右側グラフ)を変化させた際のセラミックスの破壊靭性値KICの変化を示すグラフから、TiN添加量が3体積%で、CNF添加量が5体積%以下である時、あるいは、TiN添加量が5体積%で、CNF添加量が3~5体積%である時に6.0MPa・m1/2以上の破壊靭性値が達成できることがわかった。又、CNF添加量が5体積%で、TiN添加量が3~7体積%である時に6.0MPa・m1/2以上の破壊靭性値が達成できることがわかった。
【実施例】
【0028】
図6に示されたCNF添加量(左側グラフ)及びTiN添加量(右側グラフ)を変化させた際のセラミックスの電気抵抗率ρの変化を示すグラフから、CNFの添加により電気抵抗率が劇的に減少し、良好な導電性を有するコンポジットセラミックスとなることがわかり、TiN添加量が5体積%である時のCNF最適添加量は5体積%であり、CNF添加量が5体積%である時のTiN最適添加量は5体積%であることがわかった。
【実施例】
【0029】
図7に示された(CNF添加量x=3, TiN添加量y=5)の組成を有した(Al2O3/CNF)/TiN材料の破断表面のSEM(EDS)写真は、この材料が、CNFが均質に分散されたAl2O3とTiNとのコンポジットであることを示している。
【実施例】
【0030】
上記表1~表3に示された物性値及び、図3~図6のグラフは、本発明の作製法において好ましいα-Al2O3:CNFの体積比が97~95:3~5の範囲で、特に95:5が好ましいこと、及び、好ましい(α-Al2O3+CNF混合粉):TiNの体積比が96~93:4~7の範囲で、特に95:5が好ましいことを示している。
【実施例】
【0031】
尚、前記表4に示されたCNF添加量x=3, TiN添加量y=5の組成におけるTiN微粒子の分散にボールミルを用いた場合と超音波ホモジナイザーを用いた場合の比較実験の結果から、超音波ホモジナイザーを用いることによって、得られる(Al2O3/CNF)/TiN材料の物性値は、曲げ強度σe 及び電気抵抗率ρは大きく変化しないが、ビッカース硬度Hvは20.4→23.6GPaへと向上し、破壊靭性値KICも6.08→6.62MPa・m1/2へと向上することが確認された。
【実施例】
【0032】
〔結論〕
1.微粒子粉体であるAl2O3、CNF、TiNを出発原料とし、高速昇温、低温短時間焼結を特徴とする PECPS処理を行う本発明の作製法を用いることによって、Al2O3マトリックスの結晶粒径を 0.3μm以下の高密度コンポジットが得られる。
2.高電気伝導性で繊維状のCNFを少量(3~5体積%)添加し、均質分散させることで、セラミックスの電気抵抗率ρが1013Ω・mから10-5Ω・m程度にまで極端に低下し、放電加工に必要な低抵抗率(ρ≦1.0x10-1Ω・m)が達成できる。一般に繊維状のCNFは疑集性が高く、均一分散が非常に困難であるが、3~5体積%程度の少量で低電気抵抗率を確保できたのは、CNFの均一分散に起因するものものと考えられる(パーコレーション理論)。
3.TiNの粒径を、従来の約0.3μm(300nm)から30nm程度まで微細化してAl2O3マトリツクス中に均質分散させることによって、TiNとAl2O3マトリックスとの接触面積が、同一添加量にも関わらず、拡大されてTiNによる焼結時のAl2O3の粒成長抑制効果が大きくなり、Al2O3の結晶粒径を微細化することができ、19GPa以上のビッカース硬度Hvを有するコンポジットが作製できる。
4.CNFとTiNの最適添加量の組み合せを見出すことで、高い機械的特性(曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靭性値)と低電気抵抗率を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の作製法を用いて作製された導電性高強度高硬度Al2O3/CNF/TiNコンポジットセラミックスは、充分な曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靭性値を有し、かつ、電気抵抗率ρが10-2~10-4Ω・mである優れた導電性を有しているので、放電加工可能なエンジニアリングセラミックスとして非常に有用である。
図面
【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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