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明細書 :粉末冶金鉄鋼材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-156062 (P2016-156062A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 粉末冶金鉄鋼材料及びその製造方法
国際特許分類 B22F   1/00        (2006.01)
C22C  33/02        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
B22F   3/14        (2006.01)
C22C  38/42        (2006.01)
C22C  38/24        (2006.01)
FI B22F 1/00 V
C22C 33/02 A
C22C 38/00 304
B22F 1/00 F
B22F 3/14 101B
C22C 38/42
C22C 38/24
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-035182 (P2015-035182)
出願日 平成27年2月25日(2015.2.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 粉体粉末冶金協会講演概要集 平成26年度秋季大会 Abstracts of Autumn Meeting of the Japanese Society of Powder and Powder metallurgy,2014 発行日:平成26年10月29日 発行者:一般社団法人 粉体冶金協会 〔刊行物等〕 一般社団法人 粉体冶金協会主催の平成26年度秋季大会(第114回講演大会にて平成26年10月31日にOHPにて公開した。
発明者または考案者 【氏名】藤原 弘
【氏名】▲続▼木 雄基
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4K018
Fターム 4K018AA24
4K018BA15
4K018BA16
4K018BB04
4K018BC12
4K018BC16
4K018EA21
4K018FA06
4K018KA18
要約 【課題】粉末冶金技術を用いた微細組織制御を行い、低レアメタル含有率で低硬度にもかかわらず優れた耐摩耗特性を有する粉末冶金鉄鋼材料を提供すること目的とする。
【解決手段】ハイス鋼の微細結晶粒と低炭素鋼の粗大結晶粒をメカニカルミリングして得られたハイス鋼/低炭素鋼複合化粒をプレス成形したのち、放電プラズマ燒結法を用いて燒結して、3次元のネットワーク状に形成されたハイス鋼の微細結晶粒領域と、この微細結晶粒領域のネットワーク内に包含された状態で分散配置された低炭素鋼の粗大結晶粒領域からなり、ハイス鋼の割合が粉末冶金鉄鋼材料全体の25質量%を超え50質量%未満である粉末冶金鉄鋼材料を得るようにした。
【選択図】 図5
特許請求の範囲 【請求項1】
3次元のネットワーク状に形成されたハイス鋼の微細結晶粒領域と、この微細結晶粒領域のネットワーク内に包含された状態で分散配置された低炭素鋼の粗大結晶粒領域からなる粉末冶金鉄鋼材料であって、
ハイス鋼の割合が粉末冶金鉄鋼材料全体の25質量%を超え50質量%未満であることを特徴とする粉末冶金鉄鋼材料。
【請求項2】
ハイス鋼の微細結晶粒が平均粒径1μm以下である請求項1に記載の粉末冶金鉄鋼材料。
【請求項3】
低炭素鋼の粗大結晶粒が平均粒径10μm以上30μm以下である請求項1または請求項2に記載の粉末冶金鉄鋼材料。
【請求項4】
ハイス鋼の微細結晶粒と低炭素鋼の粗大結晶粒をメカニカルミリングして前記ハイス鋼の微細結晶が前記低炭素鋼の粗大結晶粒の周囲を囲むように付着したハイス鋼/低炭素鋼複合化粒化するメカニカルミリング工程と、
このメカニカルミリング工程を経て得られた前記ハイス鋼/低炭素鋼複合化粒をプレス成形したのち、燒結する工程を備えている請求項1~請求項3のいずれかに記載の粉末冶金鉄鋼材料の製造方法。
【請求項5】
放電プラズマ燒結法を用いて燒結する請求項4に記載の粉末冶金鉄鋼材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金鉄鋼材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐摩耗性に優れるハイス鋼(高速度工具鋼)は,硬さの向上を目的に鉄をベースにモリブデン,バナジウム,タングステンなど多くのレアメタルを添加した合金鋼である。
上記のような耐摩耗性材料は、全般的に硬さが上がれば上がるほど耐摩耗特性が向上することが知られており、上記ハイス鋼の場合、耐摩耗特性を向上させるためには多くのレアメタルが必要である。
【0003】
しかしながら、レアメタルの供給は諸外国に依存しているため、できる限り使用量を減らしつつ、耐摩耗特性を維持できる材料の開発が望まれている。
【0004】
一方、多結晶金属材料において,ホールペッチの関係に示されるように,その結晶粒径と機械的性質との間には密接な関係がある。
すなわち、結晶粒径を微細にすればするほど,その金属材料は高強度となる。しかしながら,均一微細結晶粒を有する金属材料は,ナノオーダーまで結晶粒を微細化させると,塑性不安定の早期発現により,十分な延性が得られないことが近年報告されている(非特許文献1、2参照)。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、3次元のネットワーク状に形成されたハイス鋼の微細結晶粒領域(以下,「ネットワーク部」と記す)と、ネットワーク部のネットワーク内に分散配置された低炭素鋼の粗大結晶粒領域(以下,「分散部」と記す)からなり、微細組織内のあらゆる方向において一定間隔で同じ組織が繰り返されることから,調和組織(Harmonic Structure)と呼ばれている構造を備えた粉末冶金技術を用いて形成された粉末冶金鉄鋼材料をすでに提案している(非特許文献3参照)。
すなわち、上記粉末冶金鉄鋼材料は、分散部を構成する低炭素鋼の粗大結晶粒子が高強度なハイス鋼の微細結晶粒領域によって周囲を囲まれているので、強度的に弱い低炭素鋼が含まれていても、高強度な鉄鋼材料とすることができる。また、レアメタルが多く含まれる高価なハイス鋼の使用量を少なくすることができ、低コスト化できる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】N.Tsuji,N.Kamikawa,R.Ueji,N.Takata,H.Koyama,D.Terada''Managing Both Strength and Ductility in Ultrafine Grained Steels'',ISIJ Int,48(2008) 1114-1121
【非特許文献2】N.Tsuji,Y.Ito,Y.Saito,Y.Minamino:''Strength and Ductility of Ultrafine Grained Aluminum and Iron Produced by ARB and Annealing'',Scripta Mater.,47(2002) 893-899.
【非特許文献3】山田 雄介,藤原 弘,宮本 博之,飴山 ▲恵▼ 粉体と粉末冶金第60巻第4号(2013年1月)一般社団法人粉体粉末冶金協会)、160-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明の発明者らが先に提案した上記非特許文献3に記載の粉末冶金鉄鋼材料の場合、十分な耐摩耗特性を確保するまでには到っていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて粉末冶金技術を用いた微細組織制御を行い、低レアメタル含有率で低硬度にもかかわらず優れた耐摩耗特性を有する粉末冶金鉄鋼材料を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる鉄鋼材料は、3次元のネットワーク状に形成されたハイス鋼の微細結晶粒領域と、この微細結晶粒領域のネットワーク内に包含された状態で分散配置された低炭素鋼の粗大結晶粒領域からなる粉末冶金鉄鋼材料であって、ハイス鋼の割合が粉末冶金鉄鋼材料全体の25質量%を超え50質量%未満であることを特徴としている。
【0010】
本発明の鉄鋼材料は、ハイス鋼の割合が鉄鋼材料全体の25質量%を超え50質量%未満に限定されるが、その理由は、25質量%以下では、十分な耐摩耗性が得られず、50質量%以上になると低炭素鋼を配合する効果(ネットワーク構造の優位性)が損なわれるためである。
本発明において、ハイス鋼としては、JIS G 4403の高速度工具鋼材 SKH2、SKH3、SKH4、SKH10、SKH51、SKH52、SKH53、SKH54、SKH55、SKH56、SKH57、SKH58、SKH59が挙げられ、ハイス鋼の中でもより高硬度・高靱性のものが好ましい。
本発明において、低炭素鋼とは、炭素含有量が0.030質量%以下の鋼材を意味する。
なお、低炭素鋼においても、炭素量が多くなると、低硬度である特性が維持できなくなり,高硬度になり、炭素量が少なくなると,より低硬度になることが予測される。しかし、あまり低炭素量の低炭素鋼を用いると,分散領域を構成する低炭素鋼と、ネットワーク領域を構成するハイス鋼との間の炭素濃度差が大きくなり,拡散現象によりハイス鋼の炭素濃度が著しく低下することによって、ネットワーク領域のハイス鋼自体の摩耗特性が低下するおそれがある。したがって,低炭素鋼としては、炭素濃度が多すぎず少なすぎないS25Cあたりが最適であると思われる。
【0011】
本発明にかかる鉄鋼材料は、特に限定されないが、ハイス鋼の微細結晶粒が平均粒径1μm以下であることが好ましく、小さければ小さいほど良い。
すなわち、ハイス鋼の微細結晶粒の平均粒径が1μmを超えると、耐摩耗特性値の低減のおそれがある。
【0012】
本発明の鉄鋼材料は、特に限定されないが、低炭素鋼の粗大結晶粒が平均粒径10μm以上30μm以下であることが好ましい。
すなわち、低炭素鋼の粗大結晶粒の平均粒径が10μm未満であると、低硬度が維持できなくなるおそれがあり、平均粒径が30μmを超えると、ハイス鋼のネットワーク形成に悪影響を及ぼすおそれがある。
なお、本発明において、上記平均粒径は、JISG0551の切断法で求められる。
【0013】
本発明の鉄鋼材料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記す)は、ハイス鋼の微細結晶粒と低炭素鋼の粗大結晶粒をメカニカルミリングして前記ハイス鋼の微細結晶が前記低炭素鋼の粗大結晶粒の周囲を囲むように付着したハイス鋼/低炭素鋼複合化粒化するメカニカルミリング工程と、このメカニカルミリング工程を経て得られた前記ハイス鋼/低炭素鋼複合化粒をプレス成形したのち、燒結する工程を備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明の製造方法において、燒結は、特に限定されないが、放電プラズマ燒結法を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる金属材料は、以上のように、3次元のネットワーク状に配置されたハイス鋼の微細結晶粒領域とそのネットワーク内に分散配置された低炭素鋼の粗大結晶粒領域からなる鉄鋼材料であって、ハイス鋼の割合が鉄鋼材料全体の20質量%以上50質量%未満であるので、レアメタルの使用量を低減できて、安価に得られるとともに、耐摩耗特性に優れものとすることができる。
そして、ハイス鋼の量が低減できることにより,ハイス鋼を利用した金型などの開発にかかるコストの削減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複合化粉末外観のSEM写真の写しである。
【図2】複合化粉末の組織のSEM写真の写しである。
【図3】放電プラズマ焼結装置の概略図である。
【図4】図3の放電プラズマ焼結装置を用いた燒結体の燒結工程を説明するグラフである。
【図5】図4の燒結工程を経て得られた燒結体3の組織のSEM写真の写しである
【図6】図4の燒結工程を経て得られた燒結体1~7の引張試験結果である。
【図7】引張試験に用いた試料片の各部の寸法を説明する平面図である。
【図8】引張試験後の燒結体4の試料片についての組織観察のSEM写真の写しである。
【図9】引張試験後の燒結体7の試料片についての組織観察のSEM写真の写しである。
【図10】燒結体3,5,6,7の試料片のビッカース硬さと比摩耗量の測定結果を対比してあらわす図である。
【図11】焼結体4の摩耗試験前の試験片の表面状態と、摩耗試験後の試験片の表面状態を対比して示すSEM写真の写しである。
【図12】焼結体7の摩耗試験前の試験片の表面状態と、摩耗試験後の試験片の表面状態を対比して示すSEM写真の写しである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を、具体的な実験例を参照しつつ詳しく説明する。
(実験)
初期粉末として,以下の表1に示す化学組成のガスアトマイズ法により作製したハイス鋼粉末(SKH53 平均粒子径 35μm,山陽特殊製鋼社製)及び表1に示す化学組成のプラズマ回転電極法により作製した低炭素鋼粉末(S25C平均粒子径 142μm ,福田金属箔粉工業社製)をそれぞれ用意した。
【表1】
JP2016156062A_000003t.gif
【表2】
JP2016156062A_000004t.gif

【0018】
上記ハイス鋼の初期粉末(平均粒子径:35μm)と、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)製ボール(重さ3.6g)を、重量比でハイス鋼粉末:ボール=1:22~43となるように、SKD11(合金工具鋼鋼材)製ミリング容器に入れたのち、このミリング容器を、遊星型ボールミル装置(ドイツ製・フリッチュ社 遊星型ボールミル クラシックラインP-6、以下、「ミル装置」とのみ記す)にセットし、回転速度300rpmで、90000秒間、メカニカルミリング(以下、「MM」と記す)処理を行い、ハイス鋼の微細粉末(平均粒子径:6μm)を得た。

【0019】
つぎに、このハイス鋼の微細粉末と、上記低炭素鋼粉末を、ハイス鋼の微細粉末の体積率が11.5%,13%,15.5%,18.5%,20%,25%,30%となるようにそれぞれ配合するとともに、この配合物とSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)製ボール(重さ3.6g)を、配合物とボールが重量比で配合物:ボール=1:7.2となるようにSKD11(合金工具鋼鋼材)製ミリング容器に入れたのち、このミリング容器を、上記ボールミル装置にセットし、回転速度100rpmで、90000秒間、MM処理を行って、ハイス鋼/炭素鋼複合化粉末(以下、「複合化粉末」と記す)1(11.5%)、複合化粉末2(13.0%)、複合化粉末3(15.5%)、複合化粉末4(18.5%)、複合化粉末5(20%)、複合化粉末6(25%)、複合化粉末7(30%)を得た。
上記複合化粉末2をSEM(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM7001F)で観察したところ、図1に示すように、平均150μmの粒子径の球状をした粒子が観察できた。

【0020】
また、上記複合化粉末2を機械研磨により仕上げ、粉末断面をエッチング液(C2H5OH:HNO3=10:1)で腐食させたのち、上記SEMを用いて組織観察を行った。
SEMでの観察結果を図2に示す。

【0021】
図2から、上記球状粒子は、表面近傍と内部では異なる組織構造を呈していることがわかる。
また、エネルギー分散型X線分析装置(Energy dispersion x-ray Spectrometer ; EDS )を用いて、上記断面部分の分析対象元素であるW,Mo,Cr,Vの元素分析を行ったところ、W,Mo,Cr,Vの元素濃度が球状粒子の表面近傍でそれぞれ高濃度となっていることがわかった。
すなわち、図2及び上記元素分析の結果から、上記複合化粉末2は、内部が低炭素鋼で構成され、その表面近傍がハイス鋼の微細粒子でコーティングされた構造をしていると判断される。

【0022】
つぎに、上記複合化粉末1~7を、それぞれ図3に概略的に示すような構造を有する住友石炭鉱業社製の放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)装置(SPS-510L)のグラファイトダイ中に充填するとともにグラファイトパンチで上下から80MPaの圧力で加圧プレスした。
そして、プレス状態で、10Paの減圧雰囲気下で、図4に示すように、焼結圧力は80MPa,昇温速度58℃/分で900℃まで昇温し,900℃で30分間保持した後,800℃で30分間保持し,降温速度1.3℃/分で室温まで冷却することによって、SPS焼結体の燒結体1(ハイス鋼体積率11.5%)、燒結体2(ハイス鋼体積率13%)、燒結体3(ハイス鋼体積率15.4%)、燒結体4(ハイス鋼体積率18.5%)、燒結体5(ハイス鋼体積率20%)、燒結体6(ハイス鋼体積率25%)、燒結体7(ハイス鋼体積率30%)を得た。

【0023】
得られた燒結体3を機械研磨により仕上げ、粉末断面をエッチング液(C2H5OH:HNO3=10:1)で腐食させたのち、上記SEMを用いて組織観察を行い、その結果を図5に示した。
図5から、燒結体3は、分散領域(図5の黒い部分)とネットワーク領域(図5の白い部分)とを備えた調和組織をしており、ネットワーク領域は、粒径1μm以下のハイス鋼であること、分散領域は、20μm程度のフエライト+パーライト組織(拡大図中、明るいコントラスト部分がパーライト)であることがわかる。

【0024】
つぎに、得られた焼結体1~7について、それぞれ引張強度、伸びを以下のようにして調べ、その結果を、図6に示した。

【0025】
〔引張強度及び伸び〕
燒結体から、各部が図7に示す寸法形状をして、厚さ1mmの試料を作製し、卓上型万能試験機(島津製作所社製オートグラフAGS-10KNDを用い、ゲージ長さ:3mm、初期歪み速度:5.6×10-4/sで測定した。

【0026】
図6から、引張強度(図6中、■)は、ハイス鋼の体積率の増大に伴い、ほぼ線形的に大きくなり、伸び(図6中、○)は、ハイス鋼の体積率の増大に伴い、ほぼ線形的に小さくなることがわかる。

【0027】
また、引張試験後の燒結体3(ハイス鋼15.4%)の試料片について組織観察をSEMで行いその結果を図8に示し、引張試験後の燒結体7(ハイス鋼30%)の試料片について組織観察をSEMで行いその結果を図9に示した。

【0028】
図8及び図9から、上記結体3及び燒結体7のどちらの試験片においても破壊メカニズムは同じと考えられる.
すなわち、ネットワーク部で発生したクラックが軟質である低炭素鋼粒子で形成された分散部においてその進展を抑制されると見られる。
したがって、本発明の鉄鋼材料によれば、高強度かつ高延性が実現できると考えられる。

【0029】
また、燒結体3,5.6.7について以下のようにして比摩耗量とビッカース硬さを調べ、その結果を、表3に、低炭素鋼(S25C)とハイス鋼(SKH53)の測定値とともに示し、また、比摩耗量を縦軸にビッカース硬さを横軸にして、対比して図10に示した。
なお、図10中、×は低炭素鋼(S25C)のみ(ハイス鋼0%)、●は燒結体4(ハイス鋼15.4%)、◇は燒結体5(ハイス鋼20%)、▲は燒結体6(ハイス鋼25%)、○は燒結体7(ハイス鋼30%)、■はハイス鋼(SKH53)のみ(ハイス鋼100%)の試料の測定値をそれぞれあらわす。

【0030】
〔比摩耗量の測定〕
ボールオンディスク摩擦摩耗試験機(ナノテック社製TRB12-289)を用いて以下の条件で比摩耗量を測定した。
(条件)
・負荷荷重:10N
・摩擦直径:10mm
・摺動距離 4000m
・ボール(高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)製)直径 6mm
・回転速度 300mm/s
・試験環境:ドライ
なお、比摩擦量は、以下の式により求めた。
比摩耗量=V/PL
V: 摩耗体積[m3]
P: 負荷荷重[N]
L: 摺動距離[m]
〔ビッカース硬さの測定〕
マツザワ社ビッカース硬さ試験機VMT-7を用い、荷重196.1N、保持時間:15secで測定した。

【0031】
【表3】
JP2016156062A_000005t.gif
表3、図10から、硬度は、ハイス鋼の体積率が大きくなっても飛躍的に大きくなることはないが、比摩耗量は25%を境にして飛躍的に小さくなり、柔らかく、耐摩耗性に優れた鉄鋼材料となることがわかる。

【0032】
図11(a)に焼結体3の摩耗試験前の試験片の表面状態のSEM写真写しを、図11(b)に焼結体3の摩耗試験後の試験片の表面状態のSEM写真写しを示した。
また、図12(a)に焼結体7の摩耗試験前の試験片の表面状態のSEM写真写しを、図12(b)に焼結体7の摩耗試験後の試験片の表面状態のSEM写真写しを示した。

【0033】
図11及び図12から、燒結体3(ハイス鋼15.4%)と燒結体7(ハイス鋼30%)とを比較すると、燒結体7の試験片の方が摩耗試験後でも分散領域,ネットワーク領域の形状が変化しておらず,摩耗量が少ないのがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の鉄鋼材料は、例えば、複雑形状の金型の開発の用途に好適である。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図10】
4
【図1】
5
【図2】
6
【図5】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図11】
10
【図12】
11