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明細書 :超音波画像表示装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-179125 (P2016-179125A)
公開日 平成28年10月13日(2016.10.13)
発明の名称または考案の名称 超音波画像表示装置
国際特許分類 A61B   8/08        (2006.01)
A61B   8/14        (2006.01)
FI A61B 8/08
A61B 8/14
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-062204 (P2015-062204)
出願日 平成27年3月25日(2015.3.25)
発明者または考案者 【氏名】眞野 功
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4C601
Fターム 4C601BB09
4C601DD10
4C601EE30
4C601JB31
4C601JC19
4C601KK02
要約 【課題】Bモードの断層画像から骨の位置を簡単に確認できる超音波画像表示装置を提供する。
【解決手段】生体に対して放射された超音波ビームのエコー波をトランスデューサで電気信号に変換した信号のうち、高周波成分の占める割合の少ない領域を抽出すると共に、エコー波に基づいて生成されたBモード画像のうち、高周波成分の占める割合の少ない領域の色を他の領域の色と変えて表示する。骨面より深い組織部分は高周波成分の占める割合が少ないため、他の部分と異なる色で表示される。このため、従来のBモード画像では難しかった骨面の位置を、経験を積むことなく簡単に確認できる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
生体に対して超音波ビームを送信し、かつ生体から受信したエコー波を電気信号に変換して第1のエコー信号のデータを生成するプローブと、
前記プローブから送信される超音波ビームの位置を変える走査部と、
前記走査部により走査され、複数の位置において生成された前記第1のエコー信号のデータを、位置の情報と共に記憶する記憶部と、
前記第1のエコー信号のデータから高周波成分を取り出して第2のエコー信号のデータを生成するデータ処理部と、
前記第1および第2のエコー信号のデータに基づいて第1および第2のBモード画像データを生成し、更に、当該第1および第2のBモード画像データの差分のデータ、または前記第1および第2のエコー信号の差分の第3のエコー信号のデータに基づいて第3のBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部と、
前記第2のBモード画像データと第3のBモード画像データに異なる色を付与した後、それぞれのデータを重ね合わせて第4のBモード画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部で生成された第4のBモード画像データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項2】
生体に対して超音波ビームを送信し、かつ生体から受信したエコー波を電気信号に変換して第1のエコー信号を生成するプローブと、
前記プローブから送信される超音波ビームの位置を変える走査部と、
前記走査部により走査され、複数の位置において生成された前記第1のエコー信号のデータを、位置の情報と共に記憶する記憶部と、
前記第1のエコー信号から高周波成分を取り出して第2のエコー信号のデータを生成し、かつ前記第1のエコー信号から低周波成分を取り出して第3のエコー信号のデータを生成するデータ処理部と、
前記第1、第2および第3のエコー信号のデータに基づいて第1、第2および第3のBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部と、
前記第2のBモード画像データと第3のBモード画像データに異なる色を付与した後、それぞれのデータを重ね合わせて第4のBモード画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部で生成された第4のBモード画像データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項3】
前記第1~第3のエコー信号は、エコー波の距離に応じて減衰の補正が行われた後、前記第1~第3のBモード画像データの生成に用いられる、請求項1または2に記載の超音波画像表示装置。
【請求項4】
前記プローブは、薄板状の圧電振動子の両面に電極が形成されたトランスデューサを備え、当該トランスデューサに方形波1波の駆動信号を印加してパルス状の超音波ビームを発生させる、請求項1または2に記載の超音波画像表示装置。
【請求項5】
前記プローブとして、単一のトランスデューサを用いて超音波の送受信を行うプローブを用い、当該プローブを機械的に移動させることによって前記超音波ビームの送信位置を変える、請求項1または2に記載の超音波画像表示装置。
【請求項6】
骨情報算出部を更に備え、当該骨情報算出部は、前記第1または第3のエコー信号のデータのうち生体内の骨の中心付近を通る超音波ビームのエコー信号のデータに基づいて前記骨の外径と厚みを算出する、請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波画像表示装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて生体内の組織の画像を表示する超音波画像表示装置に関し、特に、骨の位置を確認するのに適した超音波画像表示装置する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体内の骨の状態を見るのにX線が使用されているが、設備が高価であり、また被曝の問題がある。またMRI(Magnetic Resonance Imaging)もあるが、極めて高価で、かなりの設置場所をとり、簡便さに欠ける。
【0003】
これに対し、超音波は生体への影響がなく、操作が簡単で比較的安価であることから、生体内の組織の画像診断に広く用いられている。
【0004】
発明者等は、先に、超音波により生体内の骨密度を診断する装置を提案した(非特許文献1参照)。この装置は、超音波の送受信を行なうトランスデューサを内蔵した一対のプローブを、生体を挟んで対向する位置に配置し、その状態で超音波の送受信を行い、骨面や骨内部で反射したエコー波の信号を解析することにより、骨密度の診断に必要な情報を得るものである。
【0005】
上述した装置では、超音波の照射位置を機械的に移動させて、生体の断面を表示したBモード画像を生成し、その画像を見ながら骨の位置を確認すると共に、骨に照射された超音波のエコー波を解析することによって骨の外径や厚みに関する情報を得ている。
【0006】
図9に、人の前腕部の手首付近の断面を示す。前腕部100は、皮膚、筋肉等の軟組織130がとう骨110と尺骨120で支持されている。骨密度の診断に必要な情報を取得する際には、検査のやり易さから、とう骨110に超音波を照射する場合が多い。図示するように、とう骨110は、軟組織を含む海綿骨112を中心にして皮質骨111がそれを取り巻くように配置されている。
【0007】
骨の外径や厚みに関する情報を取得する際には、超音波の放射方向をとう骨110の長手方向と直交する方向に移動させながら、とう骨110に超音波を照射し、ディスプレイに表示されたエコー波のBモード画像からとう骨110の位置を確認し、骨面および骨内部からのエコー波の到達時間により骨の外径や厚みを算出している。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】:Japanese Journal of Applied Physics 52 (2013)07HF05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の装置では、骨面の状態や傾斜によって骨面からのエコー波が不鮮明で、他の組織の境界からのエコー波と区別がつかない場合がある。従って、Bモードの断層画像から骨面の位置を確認するには、画像の読み取りに関して経験を積む必要があるため、骨の外径や厚みを算出する際の妨げとなっていた。
【0010】
本発明は上述の状況に鑑みてなされたもので、経験を積むことなく、Bモードの断層画像から骨の位置を簡単に確認できる超音波画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明にかかる超音波画像表示装置は、
生体に対して超音波ビームを送信し、かつ生体から受信したエコー波を電気信号に変換して第1のエコー信号のデータを生成するプローブと、
前記プローブから送信される超音波ビームの位置を変える走査部と、
前記走査部により走査され、複数の位置において生成された前記第1のエコー信号のデータを、位置の情報と共に記憶する記憶部と、
前記第1のエコー信号のデータから高周波成分を取り出して第2のエコー信号のデータを生成するデータ処理部と、
前記第1および第2のエコー信号のデータに基づいて第1および第2のBモード画像データを生成し、更に、当該第1および第2のBモード画像データの差分のデータ、または前記第1および第2のエコー信号の差分の第3のエコー信号のデータに基づいて第3のBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部と、
前記第2のBモード画像データと第3のBモード画像データに異なる色を付与した後、それぞれのデータを重ね合わせて第4のBモード画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部で生成された第4のBモード画像データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
または本発明にかかる超音波画像表示装置は、
生体に対して超音波ビームを送信し、かつ生体から受信したエコー波を電気信号に変換して第1のエコー信号のデータを生成するプローブと、
前記プローブから送信される超音波ビームの位置を変える走査部と、
前記走査部により走査され、複数の位置において生成された前記第1のエコー信号のデータを、位置の情報と共に記憶する記憶部と、
前記第1のエコー信号から高周波成分を取り出して第2のエコー信号のデータを生成し、前記第1のエコー信号から低周波成分を取り出して第3のエコー信号のデータを生成するデータ処理部と、
前記第1、第2および第3のエコー信号のデータに基づいて第1、第2および第3のBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部と、
前記第2のBモード画像データと第3のBモード画像データに異なる色を付与した後、それぞれのデータを重ね合わせて第4のBモード画像データを生成する画像処理部と、
前記画像処理部で生成された第4のBモード画像データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
上述のそれぞれの超音波画像表示装置において、前記第1~第3のエコー信号は、エコー波の距離に応じて減衰の補正が行われた後、前記第1~第3のBモード画像データの生成に用いられることが好ましい。
【0014】
また前記プローブは、薄板状の圧電振動子の両面に電極が形成されたトランスデューサを備え、当該トランスデューサに方形波1波の駆動信号を印加してパルス状の超音波ビームを発生させるものであることが好ましい。
【0015】
なお、前記プローブとして、単一のトランスデューサを用いて超音波の送受信を行うプローブを用い、当該プローブを機械的に移動させることによって前記超音波ビームの送信位置を変えるものを用いてもよい。
【0016】
また、本発明にかかる超音波画像表示装置は骨情報算出部を更に備え、当該骨情報算出部は、前記第1または第3のエコー信号のデータのうち生体内の骨の中心付近を通る超音波ビームのエコー信号のデータに基づいて前記骨の外径と厚みを算出してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる超音波画像表示装置では、骨面より深い組織部分の画像が、他の部分と異なる色で表示されるため、従来のBモード画像では難しかった骨の位置を簡単に確認できる。結果として、骨の外径や厚みの算出に必要なエコー波の抽出が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかる超音波画像表示装置のうち生体に対して超音波を送受信する部分の基本的な構成を示す図である。
【図2】生体内に放射された超音波の周波数の対する減衰の程度を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態にかかる超音波画像表示装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図4】Bモード画像データ生成部、データ処理部および画像処理部におけるデータ処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】エコー信号により生成されたBモード画像を示す図である(その1)。
【図6】エコー信号により生成されたBモード画像を示す図である(その2)。
【図7】エコー信号により生成されたBモード画像を示す図である(その3)。
【図8】エコー信号により生成されたBモード画像を示す図である(その4)。
【図9】人の前腕部の手首付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態にかかる超音波画像表示装置について、図面を参照して説明する。

【0020】
図1に、本実施の形態にかかる超音波画像表示装置1のうち生体に対して超音波を送受信する部分の基本的な構成を示す。

【0021】
本実施の形態では、人の前腕部100を、水Wで満たした水槽2中に浸漬した状態において、その上下に配置されたプローブ3aおよび3bから、生体に向けてパルス状の超音波ビームUBを放射している。そして、生体内で反射したエコー波を、再度、プローブ3aおよび3bで受信して電気信号に変換して、エコー波の信号を得ている。

【0022】
プローブ3aおよび3bは鉛直線上の対向する位置に設置されており、超音波プローブ3aから下向きに超音波が送信され、超音波プローブ3bから上向きに超音波が送信される。

【0023】
また図1には示されていないが、プローブ3aおよび3bを、移動手段を用いて水平方向(図中矢印で示す)に機械的に走査し、一定の間隔(例えば1mm)ずらしながら、超音波ビームの送信とエコー波の受信を繰り返す。このようにして得られたエコー波の信号に基づいて、前腕部手首付近の断面のBモード画像を生成し、液晶ディスプレイ等の画面に表示する。

【0024】
そして、Bモード画像に基づいて生体内の骨の位置を確認し、超音波ビームが骨の中心付近に放射された一対のエコー波の信号を取り出し、その波形を解析することによって骨密度の診断に必要な骨の外径や厚みを算出している。

【0025】
<骨の位置確認の方法>
本実施の形態にかかる超音波画像表示装置の構成と動作について説明する前に、本発明において骨の位置を確認するための方法について説明する。

【0026】
生体内に超音波を送信する際には、圧電振動子で構成されたトランスデューサが用いられるが、このトランスデューサは、一般に、中心周波数が数MHz~数十MHzであり、エコー波に含まれる周波数は、その周波数をピークとした周辺の帯域となる。

【0027】
図2のグラフは、生体内に放射された超音波の周波数に対する減衰の程度を、軟組織と骨組織(図では皮質骨)で比較して示したものである。図2から明らかなように、生体内を超音波が伝搬すると、おおよそ2MHz以上の周波数は徐々に減衰する。そして減衰の程度は、皮膚、筋肉、脂肪等の軟組織に比べ骨組織で顕著である。

【0028】
以後の説明では、便宜上、2MHz以上の周波数を高周波、それ未満の周波数を低周波とするが、被験者によってエコー信号の周波数特性が若干異なるため、それに応じて境界の周波数を変動させてもよい。

【0029】
実測したところ、骨面より深い組織部分のエコー波には、2MHz以上の高周波成分はほとんど含まれない。逆に、骨面より浅い軟組織部分のエコー波は、中心周波数である高周波成分の占める割合が多く、相対的に2MHz未満の低周波成分の割合は小さい。

【0030】
本発明は、上述したエコー波の特性を有効に利用したものである。すなわち、エコー波をトランスデューサで電気信号に変換した信号のうち、高周波成分の占める割合の少ない領域を抽出すると共に、エコー波の信号に基づいて生成されたBモード画像のうち、上述の高周波成分の占める割合の少ない領域の色を他の領域の色と変えて表示する。

【0031】
上述したように、骨面より深い組織部分は高周波成分の占める割合が少ないため、他の組織部分と異なる色で表示される。このため、従来のBモード画像では難しかった骨面の位置を簡単に確認できる。

【0032】
本発明では、Bモード画像データから高周波成分の占める割合の少ない領域を抽出する方法として、以下のいずれかの方法を採用している。

【0033】
第1の方法は、エコー波の信号(以降、これを「第1のエコー信号」という)から、HPF(ハイパスフィルター)を通して高周波成分を取り出した信号を生成する(以降、これを「第2のエコー信号」という)。この第2のエコー信号には、骨面より深い組織部分のエコー波の成分が殆ど含まれていない。

【0034】
従って、第1のエコー信号に基づいて第1のBモード画像データを生成し、第2のエコー信号に基づいて第2のBモード画像データを生成し、更に、この2つのBモード画像データから差分の第3のBモード画像データを生成すると、骨面より深い組織部分のエコー波が主体となったBモード画像が抽出される。

【0035】
そして第2のBモード画像データと第3のBモード画像データとを、それぞれに異なる色を付与して重ね合わせると、骨面より深い組織部分の画像が、他の部分と異なる色で表示される。

【0036】
なお、上述した第1の方法では、第3のBモード画像データを生成する方法として、第1および第2のエコー信号のデータに基づいて生成された第1および第2のBモード画像データの差分をとる方法を用いたが、第1のエコー信号から第2のエコー信号を引いて差分のエコー信号(以降、これを「第3のエコー信号」という)を生成し、その第3のエコー信号に基づいて第3のBモード画像データを生成するようにしてもよい。

【0037】
第3のエコー信号は、骨面より深い組織部分のエコー波が主体となった信号であるため、Bモード画像データの差分をとる場合と同様の画像データが得られる。

【0038】
第2の方法は、第1のエコー信号から、HPFを通して第2のエコー信号を生成すると共に、第1のエコー信号からLPF(ローパスフィルター)を通して低周波成分を取り出して第3のエコー信号を生成する。この第3のエコー信号は、上述した第1の方法と生成方法が異なるが、実質同一の信号である。

【0039】
この第3のエコー信号に基づいて生成されたBモード画像データは、第1の方法において、第1および第2のBモード画像データの差分をとる方法で生成された第3のBモード画像データと実質変わらない。従って、このようにして生成した第3の第Bモード画像データと前述の第2のBモード画像データに異なる色を付与した後、それぞれのデータを重ね合わせて表示すると、骨面より深い組織部分の画像が、他の部分と異なる色で表示される。

【0040】
<超音波画像表示装置の構成と動作>
次に、図3に基づいて、本実施の形態にかかる超音波画像表示装置1の信号処理系の構成を説明する。超音波画像表示装置1は、前述したプローブ3a、3b以外に、制御部11、操作部12、駆動信号発生部13、プローブ走査部14、モータ15、エンコーダ16、信号処理部17、第1記憶部18、Bモード画像データ生成部19、データ処理部20、第2記憶部21、画像処理部22、表示部23、骨情報算出部24および第3記憶部25で構成されている。

【0041】
これらの構成部材のうち、制御部11、Bモード画像データ生成部19、データ処理部20および画像処理部22のそれぞれの機能は、図示しないマイクロプロセッサにより実現される。マイクロプロセッサは、CPU、ROM、RAMおよび不揮発性メモリで構成され、不揮発性メモリに格納されたソフトウェア(プログラム)を読み出してCPUで実現することにより、上記各部材の機能を実現する。

【0042】
また第1記憶部18、第2記憶部21および第3記憶部25の機能は、ハードディスクドライブやメモリカード等の外部記憶装置によって実現される。

【0043】
なお、図では、1台のモータ15を用いて、超音波プローブ3aおよび3bを水平方向に走査、すなわち一定間隔で移動させているが、超音波プローブ3aおよび3bを、それぞれ専用のモータを用いて移動させるようにしてもよい。

【0044】
次に、各構成部材について説明する。以下、前述した第1の方法によりBモード画像データを生成することを前提として説明を行う。

【0045】
超音波プローブ3aおよび3b(以降、総称して「超音波プローブ3」ともいう)は、生体内に超音波ビームを送信し、また生体から超音波エコーを受信して電気信号に変換するもので、図1に示すように、プローブ本体32の先端に、トランスデューサ31が取り付けられている。

【0046】
本実施の形態では、PVDF(polyvinylidene difluoride)製の薄板状の圧電振動子の両面に電極を形成したトランスデューサ31を、前部に湾曲面が形成された直径20mmのプローブ本体32の表面に貼り付けている。トランスデューサ31の焦点距離は40mm、トランスデューサ31から送信される超音波の中心周波数は約11MHzである。

【0047】
上述したトランスデューサ31の電極に、パルス状の駆動信号を送って電圧を印加すると圧電振動子が伸縮し、この伸縮によってパルス状の超音波が発生して超音波ビームUBが形成される。また圧電振動子は、生体組織から反射したエコー波を受信することによって伸縮し、エコー波に対応した強さの電気信号を発生させる。

【0048】
図3の説明に戻って、制御部11は、操作部12から入力されたデータに従って、超音波画像表示装置1の各部の動作を制御する。なお、制御部11と各構成部材の間は制御用の配線で結ばれているが、図では、煩雑さを避けるために省略している。

【0049】
操作部12は、操作者が、Bモード画像の生成に必要なデータ(例えば、プローブ3の1回の移動距離)や画像生成の指示等を入力するのに用いられ、キーボードやスイッチで構成されている。

【0050】
駆動信号発生部13は、プローブ3の駆動信号を発生させるもので、本実施の形態では、電圧50V、幅0.25μsの方形波1波を発生させ、トランスデューサ31の電極間に印加している。

【0051】
プローブ走査部14は、超音波ビームUBの送信位置を走査するもので、プローブ3aおよび3bを一定間隔で水平方向に移動させる。図示しないが、プローブ3aおよび3bは、それぞれボールネジに取り付けられたフレームに支持されており、モータ15を回転すると、フレームおよびこれに支持されたプローブ3aおよび3bが水平方向に移動する。

【0052】
プローブ3aおよび3bの移動距離は、モータ15の回転軸に取り付けられたエンコーダ16によってモータ15の回転数を数えることにより制御される。

【0053】
プローブ走査部14は、エンコーダ16からの信号に基づいてプローブ3aおよび3bの移動量を制御し、プローブ3aおよび3bからの超音波ビームUBの送信とエコー波の受信を終える毎に、プローブ3aおよび3bを一定距離(本実施の形態では1mm)水平方向に移動させる。

【0054】
プローブ3aおよび3bで発生したエコー波の受信信号は信号処理部17に入力される。図示しないが、信号処理部17は、ノイズ除去フィルター、信号増幅器およびA/D変換器で構成されており、ノイズ除去フィルターおよび信号増幅器で不要なノイズの除去と信号の増幅がなされた後、A/D変換器によってデジタル信号に変換されて第1のエコー信号となる。

【0055】
なお、A/D変換器のサンプリング周波数としては、少なくともエコー波に含まれる周波数の10倍程度の周波数が必要であり、エコー波の周波数の16倍程度の周波数が好ましい。

【0056】
第1記憶部18は、信号処理部17によってデジタル信号に変換された第1のエコー信号を、プローブ3の駆動毎に、エンコーダ16から出力されたモータ15の回転数、すなわちプローブ3の水平方向の位置情報と共に記憶する。

【0057】
図1において、第1記憶部18へのエコー信号のデータの記憶は、プローブ3が左端から移動を開始し、右端において移動を終了するまで続けられ、最終的にBモードの1画面分のデータが第1記憶部18に記憶される。

【0058】
続いて、Bモード画像データ生成部19、データ処理部20および画像処理部22における処理の内容について、図4のフローチャートを参照して説明する。前述したように、これらの構成部材における処理は、図示しないマイクロプロセッサにおいて専用のソフトウェアを実行することにより実現される。

【0059】
Bモード画像データ生成部19は、第1記憶部18に記憶された1画面分の第1のエコー信号のデータを読み出し(ステップS1)、それぞれのエコー信号に対してSTC(sensitivity time control)機能を用いて距離による減衰の補正を行った後、包絡線検波処理を施して、第1のBモード画像データを生成する(ステップS2)。生成された第1のBモード画像データは、第2記憶部21に記憶される。

【0060】
一方、データ処理部20は、前述したHPF(カットオフ周波数:2MHz)を用いて第1のエコー信号から高周波成分を取り出して第2のエコー信号を生成する(ステップS3)。

【0061】
前述したように、本実施の形態では、HPFやLPFの機能をソフトウェアで実現しており、図示しない不揮発性メモリに格納されたソフトウェアを読み出し、CPUで演算を行なうことによりHPFの機能が実現される。エコー信号の差分の計算についても、同様にソフトウェアによって実現している。

【0062】
演算により生成された第2のエコー信号のデータは、Bモード画像データ生成部19に転送され、第1のエコー信号のデータと同様に処理されて、第2のBモード画像データが生成され(ステップS4)、第2記憶部21に記憶される。

【0063】
Bモード画像データ生成部19は、更に、第1のBモード画像データと第2のBモード画像データの差分の第3のBモード画像データを生成する(ステップS5)。差分の画像データは、第1のBモード画像データの各画素の輝度の値から第2のBモード画像データの対応する画素の輝度の値を引くことにより作成される。

【0064】
次に、画像処理部22は、第2記憶部21に記憶されたBモード画像データに各種の画像処理、具体的には、後述する色を変えた画像を重ね合わせる等の処理を施して第4のBモード画像データを生成する(ステップS6)。画像処理が施された第4のBモード画像データは、LCDディスプレイ等で構成された表示部23に転送された後(ステップS7)、表示部の画面に表示される。

【0065】
図5に、図4のステップS2において、第1のエコー信号に基づいて生成した第1のBモード画像を示す。図5(a)は、水槽2の上部に設置されたプローブ3aによるエコー信号の画像、図5(b)は、水槽2の下部に設置されたプローブ3bによるエコー信号の画像である。

【0066】
図1に示したように、プローブ3aと3bは同じ鉛直線上に位置し、かつ超音波ビームの放射方向も鉛直線の方向と一致するため、図5(a)の画像と図5(b)の画像の水平位置は一致しており、図5(a)(b)により前腕部全体の断層画像が得られる。

【0067】
超音波が、生体内の音響インピーダンスの小さい軟組織を通って音響インピーダンスの大きい骨や骨間膜に当たると、音響インピーダンスの差が大きいために強い反射や散乱が生じて、輝度の高い部分が生じる。しかし、図5から分かるように、軟組織内の筋肉や脂肪などの境界からの反射や散乱によって、輝度の高い部分が画像内に点在しているため、どこに骨があるのか、経験を積んだ者でなければ判断が難しい。

【0068】
図6に、図4のステップS4において、第2のエコー信号に基づいて生成した第2のBモード画像を示す。図6(a)はプローブ3aによるエコー信号の画像、図6(b)はプローブ3bによるエコー信号の画像である。

【0069】
図中、白丸で囲んだ部分は、骨面とそれより深い組織部分のエコー波の画像を示し、右側の2つの白丸はとう骨の画像、左側の2つの白丸は尺骨の画像を示す。図から明らかなように、骨面より深い組織部分の輝度が低く、高周波成分が減衰していることが分かる。

【0070】
図7に、図4のステップS5で生成した、第1のBモード画像と第2のBモード画像の差分の第3のBモード画像を示す。図7(a)はプローブ3aによるエコー信号の画像、図7(b)はプローブ3bによるエコー信号の画像である。

【0071】
図7の画像には、HPFを用いて第1のエコー信号から取り除かれた、主として骨面より深い組織部分の画像が表示されている。

【0072】
図8に、図4のステップS6で生成した、第2のBモード画像に第3のBモード画像の色を変えて重ね合わせた第4のBモード画像を示す。図8(a)はプローブ3aによるエコー信号の画像、図8(b)はプローブ3bによるエコー信号の画像である。

【0073】
図8では、図7の画像に対応した箇所、すなわち別の色(例えば黄色)で表示された箇所を白の枠で囲っている。図8から明らかなように、輝度の高い骨面の近傍に色の違う部分、すなわち骨面より深い組織部分を示す画像があることから、骨の位置を簡単に確認できる。

【0074】
なお、図8では、とう骨を示す箇所(右側)と尺骨を示す箇所(左側)の間に輝度が比較的高く、かつ色が異なる細長い画像が表示されているが、これは骨間膜を表している。骨間膜は比較的固い組織で音響インピーダンスが高いため、第3のBモード画像の色が表示されるが、骨面より深い組織部分と異なり、高周波成分による第2のBモード画像の色の輝度も高く(図6参照)、かつ形状も異なるため、骨を表す箇所と簡単に区別できる。

【0075】
なお、図4に示した処理の流れは、前述の第1の方法を実現するものであるが、第2の方法を用いても、第4のBモード画像と同様の画像が得られる。第2の方法を用いる場合、データ処理部20においてLPF(カットオフ周波数:2MHz)を用いて第3のエコー信号を生成し、更にBモード画像データ生成部19において、第3のエコー信号に基づいて第3のBモード画像を生成すると、図7に示した画像とほぼ同様の画像が得られる。以後の処理は、第1の方法と変わりがない。

【0076】
図3の説明に戻り、骨情報算出部24および第3記憶部25の機能について説明する。図8の画像から骨の中心付近を通るエコー信号の位置が分かるため、操作者は、操作部12を操作して、骨情報の算出に用いるエコー信号のデータ抽出を制御部11に指示する。

【0077】
制御部11は、操作部12に入力されたデータに基づいて、第1記憶部18に記憶された第1のエコー信号から骨の中心付近を通るエコー信号のデータを読み出し、もしくはこの第1のエコー信号から、データ処理部20において、LPFを通して第3のエコー信号を生成し、そのデータを骨情報算出部24に転送する。

【0078】
骨情報算出部24は、転送されたエコー信号のデータから、とう骨の表面および皮質骨と海綿骨との境界からのエコー波の位置を特定する。第3のエコー信号は高周波成分が取り除かれており、第3のエコー信号のデータを用いると骨の位置をより確実に特定できる。

【0079】
とう骨の外径については、予め、プローブ3aおよび3bの鉛直線方向の位置情報が与えられているため、とう骨の骨面からのエコー波の位置情報および超音波の速度情報を用いて算出できる。またとう骨の皮質骨の厚みについても、とう骨の骨面および皮質骨と海綿骨との境界からのエコー波の位置情報および超音波の速度情報を用いて算出できる。

【0080】
算出されたとう骨の外径と厚みを示すデータは、第3記憶部25に記憶され、骨密度を診断する際に基礎データとして用いられる。

【0081】
以上説明したように、本発明にかかる超音波画像表示装置を用いれば、Bモード画像に表示される色の違いによって、骨の位置を簡単に確認できるため、経験を積まなくても、骨の外径や厚みの算出に用いるエコー信号のデータを簡単に抽出できる。

【0082】
なお、本実施の形態では、高周波成分の占める割合が少ない領域を抽出するため、HPFを用いて第1のエコー信号から高周波成分を取り出しているが、短時間フーリエ変換やウェーブレット変換等を用いてエコー波の周波数解析を行うことにより、2MHz以上の周波数の占める割合の少ない領域を抽出するようにしてもよい。第1のエコー信号から低周波成分を取り出す場合も同様である。

【0083】
また、本実施の形態では、本発明の超音波画像表示装置を、とう骨の外径と厚みを算出する際の補助手段として用いているが、本発明の用途はこれに限定されない。例えば、本発明の手法を、単独のトランスデューサの代わりに複数の短冊状のトランスデューサを直線状に配置したプローブを用いて超音波ビームを電子的に走査する、リニアスキャンまたはセクタスキャンのプローブを用いた装置に採用すれば、骨組織の識別が容易になるため、骨を含む生体の超音波診断において効果を発揮する。
【符号の説明】
【0084】
1 超音波画像表示装置
2 水槽
3 プローブ
11 制御部
12 操作部
13 駆動信号発生部
14 プローブ走査部
15 モータ
16 エンコーダ
17 信号処理部
18 第1記憶部
19 Bモード画像データ生成部
20 データ処理部
21 第2記憶部
22 画像処理部
23 表示部
24 骨情報算出部
25 第3記憶部
100 前腕部
110 とう骨
120 尺骨
130 軟組織
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図9】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8