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明細書 :凍結装置、凍結方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-182103 (P2016-182103A)
公開日 平成28年10月20日(2016.10.20)
発明の名称または考案の名称 凍結装置、凍結方法
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12N   1/04        (2006.01)
A23L   3/375       (2006.01)
A23L  17/30        (2016.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   5/0735      (2010.01)
C12N   5/04        (2006.01)
C12N   5/078       (2010.01)
FI C12M 1/00 Z
C12N 1/04
A23L 3/375
A23L 1/328
C12N 5/00 102
C12N 5/00 202C
C12N 5/00 203
C12N 5/00 202J
C12N 5/00 103
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2015-065561 (P2015-065561)
出願日 平成27年3月27日(2015.3.27)
発明者または考案者 【氏名】石本 淳
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000626、【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B022
4B029
4B042
4B065
Fターム 4B022LA06
4B022LB01
4B022LF10
4B022LN08
4B022LP07
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB12
4B029BB20
4B042AC06
4B042AD39
4B042AE02
4B042AG12
4B042AH09
4B042AK01
4B042AP18
4B042AT10
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065BD12
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA53
要約 【課題】解凍時に高い細胞生存率となるように、凍結時に極低温微細固体粒子を含む噴霧流により、細胞などの凍結対象を急速にガラス化凍結する凍結装置、その凍結方法を提供する。
【解決手段】細胞などの凍結対象を凍結する凍結装置であって、凍結対象として細胞などを収容する凍結保存容器60と、凍結保存容器60に極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流を連続的に噴霧して、凍結保存容器に収容された凍結対象を凍結させる噴霧部を有する。この凍結装置は、凍結保存容器60を支持する支持部71と、支持部71に支持された凍結保存容器に対する高速噴霧流の噴霧位置を変更する噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)を有する。
【選択図】図10
特許請求の範囲 【請求項1】
凍結対象として水分を含む弾性体膜包の凍結装置であって、
前記凍結対象を収容する凍結保存容器と、
前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、前記凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させる噴霧部と、を有することを特徴とする
凍結装置。
【請求項2】
前記凍結保存容器は、前記凍結対象として細胞を収容し、
前記噴霧部は、前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、前記凍結保存容器に収容された細胞をガラス化凍結させることを特徴とする
請求項1に記載の凍結装置。
【請求項3】
前記凍結保存容器を前記噴霧部から噴射される前記極低温微細固体粒子を含む噴霧流の下流側に支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記凍結保存容器に対する前記噴霧流の噴霧位置を変更する噴霧位置変更手段と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の凍結装置。
【請求項4】
前記極低温微細固体粒子は、窒素、二酸化炭素、アルゴン、水素のいずれか1つ、又は、2つ以上の組み合わせにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の凍結装置。
【請求項5】
前記凍結対象は、iPS細胞、ES細胞、血液、植物細胞、食品のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の凍結装置。
【請求項6】
前記噴霧部は、一成分極低温微細固体粒子連続生成装置であり、
極低温の過冷却液体と、該過冷却液体と同一の元素で構成される極低温気体の高速流とを混合して一成分混相流を生成する混合部と、
前記混合部の下流に設けられ、該混合部で生成された前記一成分混相流から極低温微細固体粒子を含む噴霧流を生成するラバルノズル部と、を有し、
前記ラバルノズル部は、前記混合部で生成された前記一成分混相流を導入する導入部と、
前記導入部の下流側に設けられ該導入部の開口断面積よりも小さい開口断面積の縮径部と、
前記縮径部の下流側に設けられ該縮径部より開口断面積よりも大きい開口断面積に形成され、且つ、下流側に向かって拡開した形状の噴射部と、を有し、
前記噴射部にて、前記一成分混相流を音速を超えた状態で断熱膨張させて、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の凍結装置。
【請求項7】
前記ラバルノズル部に超音波を印加する超音波振動子を有することを特徴とする請求項6に記載の凍結装置。
【請求項8】
前記凍結保存容器は、前記凍結対象と微量の凍結保存液を収容していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の凍結装置。
【請求項9】
前記凍結装置の噴霧部は、二成分極低温微細固体粒子連続生成装置であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の凍結装置。
【請求項10】
凍結対象として水分を含む弾性体膜包の凍結装置の凍結方法であって、
前記凍結装置は、前記凍結対象を収容する凍結保存容器と、
前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を噴霧する噴霧部と、を有し、
前記凍結対象を収容する凍結保存容器を支持部により噴霧流の下流側に支持し、
前記噴霧部が、前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、前記凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させることを特徴とする
凍結方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結装置、凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己複製機能と他の細胞へ分化する特性を兼ね備えた幹細胞は、例えば人間の細胞の供給源となることから多大な産業貢献が期待されている。幹細胞などの細胞の凍結保存方法としては、緩慢凍結法、ガラス化凍結法などが知られている。
【0003】
一般的な緩慢凍結法は、凍結保護剤を加えた保存液に細胞を懸濁し、緩やかに温度を低下させ、液体窒素温度で保存する。しかし、冷却速度を適切にコントロールする必要があり、冷却速度が適切でないと、あるタイミングで細胞に氷晶が多量に形成され、細胞が物理的に損傷を受ける場合がある。また、緩慢凍結法は、霊長類の胚性幹細胞(ES細胞:Embryonic Stem Cells)、iPS細胞(induced pluripotent stem Cells)、生殖細胞などの細胞の凍結保存には適さず、解凍時の細胞生存率が1%以下となり非常に低い値を示す。
これらの細胞にはガラス化凍結法(Vitrification)が用いられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
従来の一般的なガラス化凍結法は、高濃度の特殊な凍結保護液を含むガラス化保存液に細胞を懸濁し、それを容器に収容し、細胞の懸濁をはじめてから約15秒以内に液体窒素に浸して、ガラス転移点以下まで急速に冷却し、細胞内外の水分を結晶化させることなく、非晶質のガラス状態で固化、凍結させる方法である。このガラス化凍結法によれば、水の体積膨張がなく、細胞へのダメージが少ない。尚、ガラス化凍結された細胞を解凍する時、水の再結晶化を避けるために、温培地を添加して急速に解凍することを要する。
【0005】
ガラス化凍結方法としては、細胞を凍結保護液に懸濁し、それを収容した容器に液体窒素を吹き付けて凍結する方法、懸濁液を収容した容器を液体窒素に直接投入して凍結する方法、などが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第4705473号公報
【特許文献2】特開2012-217342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の一般的なガラス化凍結法では、高い溶質濃度の凍結保存液を必要とするため、溶質による細胞毒性が高いという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された凍結方法として挙げられている、液体窒素を容器に吹き付ける方法では冷却速度が約-72℃/min程度であり、細胞を収容した容器を液体窒素に直接投入する方法では冷却速度が約-300℃/min程度であり、それぞれ温度降下速度が比較的小さい。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、解凍時に高い細胞生存率となるように、凍結時に極低温微細固体粒子を含む噴霧流により急速に細胞をガラス化凍結する凍結装置を提供すること、少量の凍結保存液で細胞をガラス化凍結する凍結装置を提供すること、温度降下速度の大きい凍結装置を提供すること、その凍結装置の凍結方法を提供すること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明の凍結装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
凍結対象として水分を含む弾性体膜包の凍結装置であって、
前記凍結対象を収容する凍結保存容器と、
前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、前記凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させる噴霧部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の凍結方法は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
凍結対象として水分を含む弾性体膜包の凍結装置の凍結方法であって、
前記凍結装置は、前記凍結対象を収容する凍結保存容器と、
前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を噴霧する噴霧部と、を有し、
前記凍結対象を収容する凍結保存容器を支持部により噴霧流の下流側に支持し、
前記噴霧部が、前記凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、前記凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、解凍時に高い細胞生存率となるように、凍結時に極低温微細固体粒子を含む噴霧流により、細胞などの凍結対象を急速にガラス化凍結する凍結装置を提供することができる。
また、本発明によれば、少量の凍結保存液で細胞をガラス化凍結する凍結装置を提供することができる。
また、本発明によれば、温度降下速度の大きい凍結装置を提供することができる。
また、本発明によれば、その凍結装置の凍結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る凍結装置の一例を示す正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る凍結装置の極低温微細固体粒子連続生成装置の要部の一例を示す図。
【図3】極低温微細固体粒子連続生成装置の要部の拡大図。
【図4】極低温微細固体粒子連続生成装置のノズル部付近の拡大断面図。
【図5】極低温微細固体窒素粒子の冷却熱流束値の一例を示す図。
【図6】一成分極低温微細固体窒素粒子の噴霧衝突圧力値およびシミュレーションによる噴霧衝突圧力値の一例を示す図。
【図7】ラバルノズル部の先端部にスパイラルノズルを備えた極低温微細固体粒子連続生成装置の一例を示す図。
【図8】極低温微細固体粒子連続生成装置により生成される一成分極低温微細固体粒子の粒子径の分布の一例を示す図、(a)は超音波をラバルノズル部に印加しない場合の一例を示す図、(b)は超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加した場合の一例を示す図。
【図9】極低温微細固体粒子連続生成装置により生成される一成分極低温微細固体粒子の粒子速度分布の一例を示す図、(a)は超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加しない場合の一例を示す図、(b)はラバルノズル部に超音波を印加した場合の一例を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る凍結装置の一例を示す概念図。
【図11】細胞の顕微鏡写真の一例を示す図。
【図12】極低温微細固体窒素粒子の噴霧時間と細胞生存率の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る凍結装置は、細胞などの凍結対象を収容する凍結保存容器と、凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して高速噴霧して、凍結保存容器に収容された細胞などの凍結対象をガラス化凍結させる噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置を有する。凍結対象としては、本発明の実施形態に係る凍結装置によりガラス化凍結することができれば特に限定されるものではなく、細胞などの水分を含有する弾性体膜包、詳細には、iPS細胞、ES細胞、生殖細胞、生体組織、血液、植物細胞、食品(冷凍食品)などを挙げることができる。

【0015】
極低温微細固体粒子連続生成装置としては、一成分極低温微細固体粒子連続生成装置であってもよいし、二成分極低温微細固体粒子連続生成装置であってもよい。
一成分極低温微細固体粒子連続生成装置は、例えば、極低温微細固体窒素粒子を含む噴霧流を連続して高速噴霧する。尚、一成分極低温微細固体粒子連続生成装置は、窒素の代わりに、二酸化炭素、アルゴン、水素などの極低温微細固体粒子の噴霧流を噴霧してもよい。
二成分極低温微細固体粒子連続生成装置は、例えば、寒剤としての極低温のヘリウムガス及び過冷却液体窒素などの二流体をノズル内で混合して生成した極低温微細固体窒素粒子を含む噴霧流を連続的に高速噴霧する。尚、二成分極低温微細固体粒子連続生成装置により生成される極低温微細固体粒子は、窒素、二酸化炭素、アルゴン、水素のいずれか1つ、又は、2つ以上の組み合わせにより構成されていてもよい。

【0016】
以下、本発明の実施形態に係る凍結装置を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。なお、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
本実施形態では、噴射部の極低温微細固体粒子連続生成装置として一成分極低温微細固体粒子連続生成装置を採用している。

【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る凍結装置200の凍結保存容器60と噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置100(微細粒子生成装置)の一例を示す正面図である。図2は微細粒子生成装置100の要部の一例を示す図である。図3は図2に示した微細粒子生成装置100の要部の拡大図である。図4は微細粒子生成装置100のノズル付近の拡大断面図である。

【0018】
凍結保存容器60は、細胞61などの凍結対象を収容する。支持装置70は凍結保存容器60を極低温微細固体粒子連続生成装置100により噴霧される噴霧流の下流側に支持する。

【0019】
微細粒子生成装置100は、極低温の過冷却液体と、その過冷却液体と同一の元素で構成される極低温気体とにより、一成分極低温微細固体粒子を連続して生成する。詳細には、微細粒子生成装置100は、過冷却液体と、極低温気体の高速流とを混合して一成分混相流を生成する混合部10と、混合部10の下流に設けられ、その混合部10で生成された一成分混相流から極低温微細固体粒子を含む噴霧流を生成するノズル1であるラバルノズル部11と、を有する。

【0020】
本実施形態では、過冷却液体として過冷却液体窒素(LN2)を採用し、過冷却液体窒素と同一の元素で構成される極低温気体として極低温気体窒素(GN2)を採用する。

【0021】
上記ラバルノズル部11では、過冷却窒素液体(LN2)と極低温窒素ガス(GN2)とによる二相流(LN2-GN2)が縮径部11b(スロート部)から噴射部11c(拡開部)を通過して、断熱膨張に基づく固相形成が行われることにより、微細固体窒素粒子(SN2)が生成されて、微細固体窒素粒子(SN2)を含む噴霧流が噴射される。

【0022】
次に、図1~図4を参照しながら、極低温微細固体粒子連続生成装置100(微細粒子生成装置)を採用した凍結装置200を詳細に説明する。

【0023】
図1に示したように、枠体210には、その上部付近に微細粒子生成装置100が設けられ、略中央部に、細胞61などを収容する凍結保存容器60を支持する支持装置70が設けられている。凍結保存容器60は、支持装置70により所定方向に移動自在に、および/または回転自在に支持されている。

【0024】
微細粒子生成装置100は、その下部に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を噴出するノズル1が配置されている。ノズル1は、凍結保存容器60に向けて噴霧流を噴射するように構成されている。

【0025】
ノズル1には、液体窒素導管3、窒素ガス導管4などが配設されている。
液体窒素導管3は、例えば、液体窒素タンク(不図示)などから、極低温に過冷却された液体窒素(LN2)をノズル1に供給する。液体窒素導管3は、バルブ3aを備え、そのバルブ3aにより液体窒素の供給量や圧力などを制御可能に構成されている。

【0026】
窒素ガス導管4は、例えば、窒素ガスタンク(不図示)などから、極低温の窒素ガス(GN2)をノズル1に供給する。窒素ガス導管4は、バルブ4aを備え、そのバルブ4aにより窒素ガス(GN2)の供給量を制御可能に構成されている。

【0027】
<断熱部5>
ノズル1は、全部または一部分が断熱部5内に収容され、ノズル1の先端部が断熱部5の外部に突出するように構成されている。本実施形態では、断熱部5は、ノズル1と外気とを断熱するように真空断熱構造となっている。ノズル1、液体窒素導管3、窒素ガス導管4の先端部付近が真空断熱部5内に収容されており、ノズル1や液体窒素導管3、窒素ガス導管4の温度上昇を低減する構造となっている。

【0028】
<可動皿部7>
本実施形態では、図2に示したように、ノズル1の下方に、可動皿部7が設けられている。可動皿部7がノズル1と凍結保存容器60の間に配置された場合、ノズル1から凍結保存容器60への噴霧流や冷気の放射を防止し、可動皿部7がそれ以外の位置に配置された場合、ノズル1からの噴霧流が凍結保存容器60に噴霧するように、可動皿部7が構成されている。

【0029】
図4に示したように、極低温微細固体粒子連続生成装置100は、同心混合型高速二流体ノズルを採用している。ノズル1は、混合部10と、ラバルノズル部11と、などを有する。

【0030】
<混合部10>
図4に示したように、ノズル1の混合部10は、同心状に組み合わされた内管14と外管15とを有する。内管14の外径は、外管15の内径よりも小さく構成されている。内管14と外管15の間には、隙間45が形成されている。

【0031】
内管14は、窒素ガス導管4に連通しており、内管14の先端部14aは、先細り形状に形成されている。
外管15の側壁には、液体窒素導管3に連通する連通部15aが形成され、外管15の内壁に形成された開口部15bに連通部15aが接続されている。この開口部15bは、内管14の先端部14a近傍の側面付近に位置するように構成されている。

【0032】
図4に示したように、高圧、極低温の窒素ガス(GN2)は、内管14の先端部14aから高速に噴射される。過冷却液体(LN2)は、液体窒素導管3、連通部15a、開口部15bを介して、内管14と外管15の間の隙間45に供給される。このため、内管14の先端部14aの下流側付近の混合部10にて、過冷却液体窒素(LN2)と、極低温気体(GN2)の高速流とが混合して、一成分混相流(LN2-GN2)が生成される。
この一成分混相流(LN2-GN2)は、混合部10の下流に設けられたラバルノズル部11に導入される。

【0033】
<ラバルノズル部11>
ラバルノズル部11は、本実施形態では、混合部10の下流側、且つ、外管15の先端部付近に設けられている。詳細には、ラバルノズル部11は、導入部11aと、縮径部11b(スロート部)と、噴射部11c(拡開部)と、を有する。

【0034】
導入部11aは、上流側の内径が、混合部10の外管15の内径と略同じとなるように形成されている。この導入部11aには、混合部10で生成された高速の一成分混相流(LN2-GN2)が導入される。

【0035】
縮径部11bは、導入部11aの下流側に設けられ、その導入部11aの開口断面積よりも小さい開口断面積となるように形成されている。詳細には、縮径部11bは、導入部11aから縮径部11bの最小の内径部分に近づくほど、内径が小さくなる形状に形成されている。

【0036】
噴射部11c(拡開部)は、縮径部11bの下流側に設けられ、その縮径部11bの開口断面積よりも大きい開口断面積に形成されている。詳細には、噴射部11cは、縮径部11bから下流側に向かって開口断面積が大きくなる拡開した形状に形成されている。

【0037】
導入部11aおよび縮径部11bの最小内径部分より上流の範囲では、高圧・高速の一成分混相流は、音速以下の速度であり、上流から下流へ内径が小さくなるほど速度が増加する。そして、縮径部11bの最小の内径部分では、一成分混相流が略音速となる。
そして、縮径部11bから噴射部11cの下流側先端部にかけて、開口断面積が大きくなるほど、一成分混相流の断熱膨張により、その流れが音速を超えた状態となり、氷核が成長して、一成分極低温微細固体粒子が生成され、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流が連続して噴射部11cから噴射される。
また、高圧・高速の一成分混相流は極低温となっており、ラバルノズル部11の縮径部11bから噴射部11cの下流側先端部では、一成分混相流が断熱膨張することで、その流れが音速を超えた速度となり、且つ、導入部11aと比較して温度が著しく低下した状態となり、一成分極低温微細固体粒子の生成が促進される。

【0038】
例えば、上述した混合部10の外管15の内径は2.5mm程度、内管14の外径は1.4mm程度、内管14の内径は0.5mm程度、ラバルノズル部11の導入部11aの上流側端部の内径は2.5mm程度、縮径部11bの内径は1.0mm程度、噴射部11cの射出口の先端部分の内径は、2.2mm程度である。
混合部10、ラバルノズル部11の各サイズは、上記形態に限られるものではなく、適宜、設定することが好ましい。

【0039】
<超音波振動子6>
本実施形態では、極低温微細固体粒子連続生成装置100は、超音波振動子6を有する。
超音波振動子6は、図4、図1に示したように、ラバルノズル部11に超音波を印加する。超音波振動子6により生成された超音波をラバルノズル部11に印加することで、ラバルノズル部11内の一成分混相流にキャビテーションを発生させ、一成分極低温微細固体粒子(SN2粒子)の氷核生成を促進し、且つ、微小均一粒子径の略球形状の一成分極低温微細固体粒子(SN2粒子)の微細化を促進することができる。キャビテーションとは、流体の中で、圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象である。キャビテーションによる気泡の崩壊時に、短寿命の高温・高圧の局所場(ホットスポット)が形成される。これを利用することにより、SN2粒子の氷核生成の促進、SN2粒子の微細化の促進などを行うことができる。微細化されたSN2粒子は、微細な略球形状に形成されている。

【0040】
超音波振動子6は、詳細には、超音波振動生成部6aと超音波伝達部6bとを有する。
超音波振動生成部6aは、制御装置(不図示)の制御により、規定の振動数、規定の振幅の超音波を生成する。超音波伝達部6bは、略棒形状の金属部材で構成され、超音波振動生成部6aで生成された超音波をラバルノズル部11に伝達する。

【0041】
超音波振動子6からラバルノズル部11に印加される超音波は、具体的には、例えば、振動数30kHz~2MHz程度、振幅10μm~50μm程度であり、好ましくは、振動数40kHz~950kHz程度、振幅20μm~40μm程度であり、最適には、45kHz、振幅30μm程度である。このラバルノズル部11に印加される超音波の振動数や振幅については、ラバルノズル部11で生成される一成分極低温微細固体粒子の粒径、個数などに応じて適宜、設定する。
尚、超音波振動子6からラバルノズル部11に印加される超音波として、例えば1MHz~数10MHz、または、数10MHz~数100MHz程度の高周波数(メガソニック)の超音波を採用した場合、極低温微細固体粒子に関する、氷核生成や微粒化促進特性がさらに向上する。

【0042】
超音波振動子6で生成した超音波を印加する位置は、例えば、ラバルノズル部11の一成分極低温微細固体粒子の氷核形成が行われる位置付近が好ましく、詳細には、ラバルノズル部11の縮径部11bから僅かに下流側の位置が好ましい。また、超音波振動子6で生成した超音波を印加する位置は、ラバルノズル部11の縮径部11bから下流側の噴射部11cの任意の位置であってもよく、また、ラバルノズル部11全体であってもよく、ラバルノズル部11で生成する一成分極低温微細固体粒子の粒径、個数などに応じて適宜、設定してもよい。
また、超音波振動子6は超音波を直接または間接的にラバルノズル部11に印加してもよいし、真空断熱部としての断熱部5内からラバルノズル部11に印加してもよい。

【0043】
<極低温微細固体粒子連続生成装置100の動作>
次に、極低温微細固体粒子連続生成装置100の動作を説明する。

【0044】
液体窒素タンク(不図示)から極低温の過冷却液体窒素(LN2)が液体窒素導管3、外管15の連通部15a、開口部15bを介して外管15内の混合部10に導入される。
窒素ガスタンク(不図示)から高圧・高速の極低温の窒素ガス(LN2)が窒素ガス導管4、内管14を介して混合部10に導入される。極低温の窒素ガス(LN2)の圧力は、例えば、0.1MPa~1.0MPa程度であり、本実施形態では0.4MPa程度である。極低温の窒素ガス(LN2)の圧力が高いほど、混合部10での流速が高速となり、好ましい。尚、この極低温の窒素ガス(LN2)の圧力は、0.5MPa~1000MPa程度であってもよいし、1.0~10MPa程度であってもよい。

【0045】
そして、図4に示したように、高圧・高速の極低温の窒素ガス(GN2)が、内管14の先端部14aから高速に噴射され、過冷却液体(LN2)が内管14と外管15の間の隙間45から混合部10に導入されて、混合部10にて、過冷却液体窒素(LN2)と極低温気体(GN2)の高速流とが混合して、一成分混相流(LN2-GN2)が生成される。

【0046】
そして、混合部10で生成された高圧・高速の極低温の一成分混相流(LN2-GN2)が、ラバルノズル部11の導入部11aに導入され、縮径部11bの最小の内径部分では、一成分混相流が略音速となり、縮径部11bから噴射部11cの下流側先端部にかけて、開口断面積が大きくなるほど、一成分混相流の断熱膨張により、その流れが音速を超えた状態となり、噴射部11cにて、一成分混相流が音速を超えた状態で断熱膨張して、一成分極低温微細固体粒子(SN2粒子)を含む噴霧流が連続して生成される。

【0047】
また、超音波振動子6により生成された超音波(45kHz程度、振幅30μm程度)をラバルノズル部11に印加することで、ラバルノズル部11内の一成分混相流にキャビテーションを発生させ、一成分極低温微細固体粒子(SN2粒子)の氷核生成を促進し、且つ、微小均一粒子径の略球形状の一成分極低温微細固体粒子(SN2粒子)の微細化を促進することができる。

【0048】
<冷却熱流束値>
図5は極低温微細固体粒子連続生成装置100により、極低温の窒素ガス(GN2)と過冷却した液体窒素(LN2)とで生成した極低温微細固体窒素粒子(SN2)の冷却熱流束値qwを示す図である。
図5においては、縦軸に冷却熱流束値〔W/m2〕を示し、横軸に時間t(sec)を示す。

【0049】
図5に示したように、噴霧を開始すると、冷却熱流束値qwは、急激に大きくなり、短時間で最大冷却熱流束値に達し、その後、緩やかに低下する。

【0050】
極低温の窒素ガス(GN2)と過冷却状態の液体窒素(LN2)とにより生成した微細固体窒素粒子(SN2粒子)を含む噴霧流中のSN2粒子の数密度が比較的大きいので、冷却熱流束値の減衰率が小さい。
また、上述したように、極低温微細固体粒子連続生成装置から噴射される極低温微細固体粒子を含む噴霧流は、105W/m2レベルの熱流束であり、冷却能が非常に高い。

【0051】
<SN2粒子の衝突圧力>
図6は一成分極低温微細固体窒素粒子(SN2)の噴霧衝突圧力値およびシミュレーションによる噴霧衝突圧力値の一例を示す図である。図6において、横軸(x軸)に無次元時間t*を示し、縦軸(y軸)に衝突圧力を無次元化した圧力p*を示す。
詳細には、一成分極低温微細固体窒素粒子(SN2粒子)をピエゾ圧電型圧力センサに衝突させて、そのSN2粒子の噴霧衝突圧力値を点線で示す。実験において窒素ガス(GN2)タンクの圧力を0.4MPa、液体窒素(LN2)タンクの圧力を0.2MPaに設定した。
シミュレーションとして単一粒子衝突数値計算(CFD)によって得られた衝突圧力値を実線で示す。図6に示したように、SN2粒子が圧力センサに衝突した直後、衝突圧力p*が急激に増加した後、減少した。また、数値計算結果でも同様に、衝突圧力p*が衝突直後に立ち上がり、減少する傾向を有していることが分かる。

【0052】
図7は、ラバルノズル部の先端部にスパイラルノズル18を備えた極低温微細固体粒子連続生成装置100のノズル1の一例を示す図である。
図7に示したように、例えば、特開2011-171691号に示したようなスパイラルノズル18を、ノズル1のラバルノズル部11の先端部に設ける。スパイラルノズル18に一成分極低温微細固体窒素粒子(SN2粒子)の高速ジェット流が通過することにより、適度な乱流を生じさせ、SN2粒子をより細粒子化させることができ、且つ、SN2粒子がノズルに付着するのを防止して、連続的にSN2粒子を含む噴霧流を生成することができる。

【0053】
<一成分極低温微細固体粒子(SN2)の粒子径分布および粒子速度分布>
極低温微細固体粒子連続生成装置100により生成された一成分極低温微細固体粒子(SN2)の粒子径分布、粒子速度分布に関しては、粒子の撮影画像の解析、例えば、直接撮影法(Direct-Imaging Techniques)による粒子径分布・数密度分布計測を行う二色レーザーPIA(Particle Image Analyzer)光学計測システムを使用した二次元化可視化画像計測などにより解析できる。PIAでは、例えば、図7に示したように規定領域CR(Control region)にて、飛翔しているSN2粒子を顕微鏡レンズ等を用いて拡大撮影し、粒子像を画像解析することで粒子径と速度を測定する。例えば、二色レーザーPIA光学計測システムでは、二色レーザー、例えば、デュアルパルスYAGレーザー、被写界深度チェック用色素レーザーなど、PIA用高解像度カラーカメラ、PIA画像解析ソフトウェアなどを使用できる。また、数値解析などの解析に、クラスタ型高速ワークステーションを使用した超並列計算による高負荷分散型コンピューティング(Grid Computing)手法を使用することが好ましく、ノズルの微粒化特性、例えば、粒径分布、数密度分布、流速・温度分布等を適切に定量的に評価することができる。
また、粒子速度の定量化には、PTV(Particle Tracking Velocimetry)アルゴリズムを使用することができる。使用するPTVアルゴリズムは、着目粒子像とその近傍の粒子像とから構成される粒子像群の分布パターンを考え、その類似性を利用して粒子追跡(Particle Tracking)を行うものである。

【0054】
<粒子径分布>
図8は、極低温微細固体粒子連続生成装置100により生成される一成分極低温微細固体粒子の粒子径の分布の一例を示す図である。詳細には、図8(a)は超音波をラバルノズル部11に印加しない場合の一例を示す図、図8(b)は超音波振動子による超音波をラバルノズル部11に印加した場合の一例を示す図である。
ここでは、図7に示したように、噴孔直下から4.5mmだけ下方位置から視野としての規定領域(横0.92mm、縦0.7mm)で上記PIA-PTVによる解析を行った。
図8(a)、図8(b)においては、横軸(x軸)に粒子直径dp〔μm〕を示し、左縦軸(y1軸)に頻度ff〔%〕を示し、右縦軸(y2軸)に累積fa〔%〕を示している。

【0055】
超音波を印加しない場合と比較して、超音波振動子による超音波をラバルノズル部に加えて微粒化促進させた場合、最小粒子径の占める分布割合が大きいことが分かった。

【0056】
超音波を印加しない場合(non-ULA)と比較して、超音波振動子をノズルに設置した場合(ULA)では、平均粒子径が約2.5%程度減少していることが分かった。
詳細には、超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加させない場合(non-ULA)、平均粒子径は4.1μmであり、超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加した場合(ULA)、平均粒子径が3.9μmであった。

【0057】
<粒子速度分布>
図9は、極低温微細固体粒子連続生成装置100により生成される一成分極低温微細固体粒子の粒子速度分布の一例を示す図である。詳細には図9(a)は超音波振動子による超音波をラバルノズル部11に印加しない場合の一例を示す図、図9(b)はラバルノズル部に超音波を印加した場合の一例を示す図である。
図9(a)、図9(b)においては、横軸(x軸)に粒子速度Vp〔m/s〕を示し、左縦軸(y1軸)に頻度ff〔%〕を示し、右縦軸(y2軸)に累積fa〔%〕を示している。
同様に、図7に示したように、噴孔直下から4.5mmだけ下方位置から視野としての規定領域(横0.92mm、縦0.7mm)で上記PIA-PTVによる解析を行った。

【0058】
超音波を印加しない場合(non-ULA)と比較して、超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加した場合(ULA)の粒子速度は小さいことが分かる。詳細には、超音波を付加すると粒径は小さくなり、“粒子に作用する空気抵抗力>粒子に作用する慣性力”となるので、流速は減少する。しかし、超音波付加条件下では、氷核生成促進により凍結粒子を形成しやすくなり、微粒化促進効果も加わるので粒子数密度が増大し、噴霧照射部におけるトータルの接触伝熱面積が増大し、結果的に冷却効果が増大する。また、粒子径が小さくなったことで蒸発しやすくなり、粒子凝集による膜沸騰状態をさらに形成しにくくし、固体粒子の高速蒸気相変化を利用した潜熱冷却が促進される。つまり、超音波付加条件下では、流速が小さくなったことで強制対流冷却効果は若干減少するが、接触熱伝達と潜熱熱伝達特性は増加し、冷却効果が増大する。

【0059】
図10は、本発明の実施形態に係る凍結装置200の一例を示す概念図である。図10に示したように、凍結装置200は、凍結保存容器60を支持する支持装置70を有する。支持装置70は、支持部71、噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)、などを有する。
支持部71は、噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置のノズル1(スパイラルノズル18)から噴霧される極低温微細固体粒子を含む噴霧流の下流側に、凍結保存容器60を着脱自在に支持する。
本実施形態では、支持部71は先端部に凍結保存容器60を把持する把持部71aを有する。把持部71aの形状は凍結保存容器60を着脱自在に支持できれば任意の形状でよく、本実施形態では、断面略C字形状に形成されている。
凍結保存容器60は、筒形状など任意の形状であってよい。本実施形態では、凍結保存容器60は、凍結ムラなく高効率で冷却可能させるために、丸底の有底筒形状に形成されており、凍結保存液に細胞61を懸濁させた懸濁液を収容し、蓋部により密閉可能な構造を有する。

【0060】
噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)は、凍結保存容器に対する凍結ムラの低減や、凍結時間の短縮のために、支持部71に支持された凍結保存容器60に対する噴霧流の噴霧位置を変更する。詳細には、噴霧位置変更部72には、モータなどの駆動部81が接続されており、制御部82の制御により、支持部71により支持された凍結保存容器60を、上下方向、左右方向、前後方向、筒状の凍結保存容器の軸方向など所定の方向に移動可能に構成されている。また、噴霧位置変更部72は、所定の回転方向、例えば、筒状の凍結保存容器の軸方向を回転軸として、支持部71により支持された凍結保存容器60を回転可能に構成されている。尚、噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)は、極低温微細固体粒子連続生成装置のノズルからの噴霧角度を変更することで、凍結保存容器への噴霧位置を変更してもよい。

【0061】
制御部82は、凍結装置200の各構成要素を統括的に制御する。詳細には、制御部82は、凍結装置200の極低温微細固体粒子連続生成装置の噴霧流の速度、圧力、噴霧時間などを制御可能に構成されている。また、制御部82は、噴霧位置変更部72により凍結保存容器への噴霧位置を適宜制御する。尚、凍結装置は、例えば、凍結保存容器の温度を検出する温度センサや赤外線カメラなどの温度検出部を備え、制御部82が温度検出部により検出された凍結保存容器の温度に応じて、噴霧位置変更部72による噴霧位置の制御や極低温微細固体粒子連続生成装置による噴霧時間などを制御するように構成されていてもよい。

【0062】
本願発明者は、本願発明に係る凍結装置の効果を確認するために、実際に、凍結対象としてA549細胞に対して凍結、および、解凍を行った。A549細胞は、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞である。図11は細胞(A549細胞)の顕微鏡写真の一例を示す図である。

【0063】
<凍結前準備工程>
先ず、凍結対象の細胞としてA549細胞を準備する(収穫する)。
次に、5.08×106cellsの細胞とRPMI1640培地4mlにより、濃度1×106cells/mLとする。これを、凍結保存容器としての各クライオチューブに1500μL分注し、2本のチューブを予備として保管し、10本のチューブ(凍結保存容器)を凍結対象とした。
この凍結保存容器は、丸底の有底筒状の容器であり、直径約10mm、容量1.8mL、アウターキャップ型のものを用いた。尚、凍結保存容器は、高い熱伝導性と低温強度の高い、凍結保存用の樹脂材料や金属材料で形成されたものであってもよい。

【0064】
<凍結工程>
微量の凍結保存液に上記細胞を直接懸濁させた懸濁液を収容した凍結保存容器を、凍結装置の支持部により支持し、極低温微細固体粒子連続生成装置により、極低温微細固体窒素粒子を含む高速噴霧流を、細胞等を収容した凍結保存容器に連続噴霧して、凍結保存容器内の細胞を急速にガラス化凍結する。本具体例では、凍結保存液としては、日本全薬工業株式会社のCELLBANKER 1 plusを用い、凍結保存液の使用量は1アンプルあたり1.5mLである。凍結保存液の成分は表1に示したように規定されている。

【0065】
【表1】
JP2016182103A_000003t.gif

【0066】
詳細には、液体窒素N2タンクの圧力0.252~0.253MPa程度、噴射ノズル付近の圧力0.33~0.44MPa程度で、凍結保存液に直接細胞を懸濁させた懸濁液を収容した各凍結保存容器に、噴霧時間10、20、30、45、50、60、90、120秒で、極低温微細固体窒素粒子を含む高速噴霧流を連続噴霧して、凍結保存容器内の細胞を急速にガラス化凍結した後、液体窒素に浸けて保存した。比較例として、極低温微細固体窒素粒子を凍結保存容器に噴霧せずに(噴霧時間0秒)、液体窒素に浸けて凍結保存したものを用意した。

【0067】
<解凍工程>
ガラス化凍結保存した細胞を収容するクライオチューブ(凍結保存容器)を、温度37℃水浴で解凍する。そして、それぞれ5回ピペッティングした後、RPMI1640培地9mLに希釈する。次に、遠心分離器にて1500rpmで2分間、遠心分離処理を行う。そして、培地を吸引除去し、RPMI1640培地2mlに懸濁する。この懸濁液10μLと染色剤としてのトリパンブルー(BioRad)10μLをピペッティングにより混和させ、セルカウンターで細胞数を計測した。
表2は極低温微細固体窒素粒子の噴霧時間と細胞生存率(%)の実験結果の一例を示す。

【0068】
【表2】
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【0069】
図12は極低温微細固体窒素粒子の噴霧時間と細胞生存率(%)の一例を示す図である。図12において横軸に極低温微細固体窒素粒子の噴霧時間(sec)を示し、縦軸に細胞の生存率を示す。
図12および表2において、極低温微細固体窒素粒子を含む高速噴霧流を噴霧せずに、細胞を収容した容器を単に液体窒素に浸けて冷却した場合の細胞生存率を、噴霧時間0秒の値として示している。
本発明の実施形態に係る噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置100による、極低温微細固体窒素粒子を含む噴霧流を連続して所定秒数噴霧して、容器内の細胞をガラス化凍結させたものは、いずれも解凍時に高い細胞生存率となった。具体的には、液体窒素浸漬のみによる凍結法と比較して、本発明の実施形態に係る凍結装置の凍結方法では、細胞生存率が23%程度増加した(噴霧時間90秒)。
また、噴霧時間が長いほど、細胞生存率が高くなる傾向となった。これは噴霧時間を長くするほど、冷却速度が高くなり、細胞が短時間に高品質でガラス化凍結すると考えられる。

【0070】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る凍結装置200は、凍結対象として、細胞61などの水分を含む弾性体膜包を凍結する。この凍結装置は、凍結対象を収容する凍結保存容器60と、凍結保存容器60に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して高速噴霧して、凍結保存容器60に収容された凍結対象をガラス化凍結させる噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置100とを有する。
このように、極低温微細固体粒子連続生成装置100により、極低温微細固体粒子を含む噴霧流を、細胞などの凍結対象を収容した凍結保存容器60に、極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して高速噴霧し、衝突熱伝達・対流熱伝達・蒸発潜熱熱伝達の相乗効果により、凍結保存容器60に収容した細胞61など凍結対象をガラス凍結状態にする。詳細には、凍結装置は、細胞内の氷核形成を抑えて、細胞をガラス状態で急速凍結させる。
本発明の実施形態に係る凍結装置の極低温微細固体窒素粒子を含む高速噴霧流の連続噴霧による凍結速度の最大値は、約-25.8K/Sec程度(1秒間に25.8℃降下)であり、約63K(-210.15℃)まで急速に冷却することができる。常に新しい極低温微細固体粒子が冷凍保存容器に衝突するので、凍結速度が速いまま維持され、細胞のガラス化凍結が短時間で完了する。
その後、ガラス化凍結した細胞を収容する凍結保存容器を液体窒素に浸けて、比較的長時間保存する。そして、所定時間後の解凍時には、凍結保存容器60に収容されていた解凍液により細胞を急速に温めることで再核形成を抑えつつ高品質に解凍することができ、上述したように、高い細胞生存率となる。

【0071】
このように、凍結時に、極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流を次々に連続的に凍結保存容器に噴霧することにより、衝突熱伝達・対流熱伝達・蒸発潜熱熱伝達の相乗効果により、凍結保存容器内の細胞などの凍結対象を急速にガラス化凍結する凍結装置200を提供することができる。
また、凍結対象の細胞などを凍結保存容器内に収容した状態でガラス化凍結させるので、凍結時に不純物の混入がなく、高速噴霧流による損傷がない。比較例として、例えば、液体窒素に細胞を直接浸けて冷却する方法では不純物混入の虞がある。

【0072】
また、凍結保存容器60に収容される凍結対象の細胞に凍結保存液を極少量だけ添加した場合であっても、極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流を連続して凍結保存容器60に噴霧させて極めて短時間にガラス化凍結させることで、解凍時の細胞生存率が高くなる。

【0073】
本発明の実施形態に係る極低温微細固体粒子による噴霧による急速ガラス化凍結について、詳細に説明する。
極低温微細固体粒子による噴霧の場合、潜熱熱伝達による冷却の際、固体から液体に相変化する際の融解潜熱が付加される。

【0074】
融解潜熱と潜熱熱伝達の相違点を説明する。液体(液滴)の場合、液相から気相へ相変化する際の蒸発潜熱のみとなる(液体窒素だと214.0kJ/kgの蒸発潜熱を有する)。
極低温微細固体粒子の場合、固相から液相への融解潜熱(固体窒素だと25.56kJ/kgの融解潜熱を有する)と、上記の液相から気相変化時の蒸発潜熱の相乗効果となる。固体窒素を使用した場合、液体窒素に比較して12%程度潜熱熱伝達による冷却特性が上昇する。実際、固体窒素が相変化を行う場合、固体から気体へ高速度で相変化を行うため、昇華に近い現象となる。固体粒子の場合、昇華潜熱熱伝達による冷却が行われるともいえる。
極低温固体粒子の噴霧の場合、物体に衝突した極低温固体粒子は蒸気相へ高速で相変化を行うため、伝熱面(バイアル表面)が殆どぬれることなく、冷却が完了する。相変化速度は粒子径が小さいほど高速となる。

【0075】
比較例として、極低温液体を直接接触させて冷却する方式の場合、極低温液体が伝熱面に接触した瞬間、伝熱面近傍(細胞近傍)で局所的な沸騰が発生し冷媒である極低温液体と伝熱面との間に蒸気膜が発生し、蒸気膜(気体)の熱伝導率は小さいことから、伝熱面から極低温液体への冷却熱伝達特性は著しく低下する。つまり、伝導冷却のみでは時間とともに冷却速度が遅くなる。
伝熱面近傍において局所的に蒸気膜が生じる現象を遷移沸騰から膜沸騰状態と呼び、遷移沸騰から膜沸騰状態においては熱伝達特性が劣化することが知られている。特に、極低温液体の場合、冷却対象物との温度差が大きくなりやすいことから膜沸騰状態が生じやすいので液体を用いた冷却の欠点となり得る。また、液体窒素は表面張力が小さいので噴霧状態を作り出すことが困難である。
また、水の場合、適度な表面張力を有するため少量では球形を維持しやすく、ノズル等の噴孔から噴出させた場合には容易に微小液滴を形成することが可能であるが、液体窒素の場合表面張力が水の1/6程度であり、また粘度が小さいため細長い噴流は形成可能でも液滴群からなる噴霧状態を作り出すことはきわめて困難である。
また、水の場合、高圧を利用して噴霧を形成するが、極低温液体の場合高圧にすると液温が上昇し液相状態を維持できなくなるという困難さも有している。
従って、本発明の実施形態に係る凍結装置による微細固体粒子の噴霧冷却と同様の冷却性能を、比較例としての液体状態による冷却で得ることは極めて困難といえる。

【0076】
また、極低温窒素ガス(GN2)の圧力を上げるなどの処理を行うことにより、極低温微細固体窒素粒子(SN2粒子)の粒子数密度を大きくする、高い粒子速度とする、などにより、冷却能力の向上、詳細には、温度降下速度を大きくすることができ、短時間で細胞をガラス化凍結させることができる。

【0077】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置200は、凍結保存容器60を噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置100から噴射される極低温微細固体粒子を含む噴霧流の下流側に支持する支持部71と、支持部71に支持された凍結保存容器60に対する噴霧流の噴霧位置を変更する噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)を有する。
支持部71により、凍結対象の細胞などを収容した凍結保存容器60を、極低温微細固体粒子連続生成装置100から噴射される極低温微細固体粒子を含む噴霧流の下流側に支持し、噴霧位置変更部72(噴霧位置変更手段)により、凍結保存容器60内の凍結対象に対する凍結ムラを低減するように、凍結保存容器60に対する噴霧流の噴霧位置を変更する。このように、凍結保存容器に対する噴霧位置をずらしながら、極低温微細固体粒子を含む噴霧流を噴霧することで、凍結保存容器内の細胞などの凍結対象を凍結ムラなく、短時間にガラス化凍結することができる。

【0078】
例えば、噴霧位置変更部72は、支持部71により支持された凍結保存容器を、上下方向、左右方向、前後方向など所定の方向に移動可能、所定の回転軸方向に回転可能に構成することで、凍結保存容器に対する噴霧位置を容易にずらすことができる。
具体的には、底円筒状の細長の凍結保存容器を回転させる場合、例えば、細長円筒状の容器の軸を回転軸として回転させてもよい。また、底円筒状の細長の凍結保存容器の側面に対して、垂直に噴霧流を当てる場合と比較して、極低温微細固体粒子連続生成装置100から噴射流を容器の側面に対して斜めに連続的に高速噴霧することで凍結速度が大きくなり、凍結時間を短くすることができる。
また、底円筒状の細長の凍結保存容器の側面に対して、極低温微細固体粒子連続生成装置100から噴射流を容器の側面に対して斜めに連続的に高速噴霧し、且つ、細長円筒状の凍結保存容器の軸を回転軸として回転させることで、凍結速度がさらに大きくなり、凍結時間をさらに短くすることができる。

【0079】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置に用いられる極低温微細固体粒子は、窒素、二酸化炭素、アルゴン、水素のいずれか1つ、又は、2つ以上の組み合わせにより構成されている。特に、極低温微細固体粒子として窒素を用いることで、低い冷却コスト、高い効率で細胞などをガラス化凍結することができる。
極低温微細固体窒素粒子の噴霧流は、現存する冷媒の中でも非常に高い寒冷エンタルピ(冷却能)を有し、生体組織に対して無害であり、高速急冷によるガラス凍結用の冷媒として適している。

【0080】
本発明の実施形態に係る凍結装置の凍結対象は、iPS細胞、ES細胞、血液、植物細胞、食品(魚卵等)、などを挙げることができ、凍結対象の適用範囲が広い。冷凍食品などの食品に対して、本発明の実施形態に係る凍結装置により凍結保存することにより、凍結保存液を極微量、または、全く使用せずに凍結することができる。

【0081】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置の噴霧部は、一成分極低温微細固体粒子連続生成装置である。詳細には、極低温微細固体粒子連続生成装置100は、極低温の過冷却液体と、その過冷却液体と同一の元素で構成される極低温気体の高速流とを混合して一成分混相流を生成する混合部10と、混合部10の下流に設けられ、その混合部で生成された一成分混相流から極低温微細固体粒子を含む噴霧流を生成するラバルノズル部11を有する。このラバルノズル部11は、混合部10で生成された一成分混相流を導入する導入部11aと、導入部11aの下流側に設けられ、導入部11aの開口断面積よりも小さい開口断面積の縮径部11bと、縮径部11bの下流側に設けられ、縮径部11bより開口断面積よりも大きい開口断面積に形成され、且つ、下流側に向かって拡開した形状の噴射部11cと、を有する。噴射部11cにて、一成分混相流を音速を超えた状態で断熱膨張させて、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成する。
このため、極低温微細固体粒子連続生成装置100は、簡単な構造で、窒素などを用いた一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成することができる。
また、一成分方式(LN2-GN2)によって生成された微細固体窒素噴霧では、極低温ヘリウムガスを使用する二成分方式(LN2-GHe)によって生成された微細固体窒素噴霧に比べるとSN2粒子の数密度が増大するため、冷却効果が大きい。
また、一成分方式(LN2-GN2)の極低温微細固体粒子連続生成装置は、寒剤として極低温ヘリウムを用いることなく、簡単な構成で、安価に、一成分で極低温の微細固体粒子を連続生成することができる。

【0082】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置200の極低温微細固体粒子連続生成装置100は、ラバルノズル部11の先端部にスパイラルノズル18を備えていてもよい。ラバルノズル部11の先端部にスパイラルノズル18を設けることにより、さらに、極低温微細固体粒子を微細化させることができる。

【0083】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置200の極低温微細固体粒子連続生成装置100はラバルノズル部11に超音波を印加する超音波振動子6を有する。
この超音波振動子6で生成した超音波をラバルノズル部11に印加することで、ラバルノズル部11内の一成分混相流にキャビテーションを発生させ、極低温微細固体粒子の氷核生成を促進し、且つ、微小均一粒子径の略球形状の一成分極低温微細固体粒子の微細化を促進することができる。
また、上述したように、超音波振動子による超音波をラバルノズル部に印加した場合、極低温微細固体粒子の粒径が小さくなり、流速は減少が、超音波付加条件下では、氷核生成促進により凍結粒子を形成しやすくなり、微粒化促進効果も加わるので粒子数密度が増大し、噴霧照射部におけるトータルの接触伝熱面積が増大し、結果的に冷却効果が増大する。また、粒子径が小さくなったことで蒸発しやすくなり、粒子凝集による膜沸騰状態をさらに形成しにくくし、固体粒子の高速蒸気相変化を利用した潜熱冷却が促進される。つまり、超音波付加条件下では、流速が小さくなったことで強制対流冷却効果は若干減少するが、接触熱伝達と潜熱熱伝達特性は増加し、冷却効果が増大する。

【0084】
また、本発明の実施形態に係る凍結装置200の極低温微細固体粒子連続生成装置100は、ラバルノズル部11の全部または一部を外気に対して真空断熱する断熱部5を有する。詳細には、ノズル1、液体窒素導管3、窒素ガス導管4の先端部付近が真空断熱部5内に収容されており、ノズル1や液体窒素導管3、窒素ガス導管4の温度上昇を低減した構造となっている。このため簡単な構造で、比較的長時間、安定して極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流をノズル1のラバルノズル部11から噴射させることができる。

【0085】
また、上記実施形態では、凍結装置の噴霧部は、一成分極低温微細固体粒子生成連続装置であったが、この形態に限られるものではなく、凍結装置の噴霧部は、二成分極低温微細固体粒子連続生成装置であってもよい。二成分極低温微細固体粒子連続生成装置は、例えば、過冷却状態の液体窒素などを液体ヘリウムなどの冷媒で冷却することで、極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流を生成してもよい。

【0086】
また、本発明の実施形態に係る凍結方法は、凍結対象を収容する凍結保存容器を支持部により噴霧流の下流側に支持し、噴霧部としての極低温微細固体粒子連続生成装置100が、凍結保存容器60に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させることで、解凍時に高い細胞生存率となるように、簡単に、細胞などの凍結対象を急速にガラス化凍結することができる。

【0087】
尚、上記実施形態では、凍結装置は、噴霧部により、凍結保存容器に極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、凍結保存容器に収容された凍結対象をガラス化凍結させたが、この形態に限られるものではない。例えば、凍結装置は、噴霧部により、凍結対象に対して直接、極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して噴霧して、凍結対象をガラス化凍結させてもよい。

【0088】
尚、上記実施形態では、窒素(N2)を用いた極低温微細固体粒子連続生成装置100を示したが、この形態でなくともよい。例えば、水素(H2)、酸素(O2)、アルゴン(Ar)などを採用してもよい。
例えば、水素(H2)を採用した場合、極低温の過冷却液体水素(GH2)と極低温水素ガス(LH2)の一成分混相流を高速にラバルノズル部内に導入し、ラバルノズル部の噴射部にて、一成分混相流を音速(混相流の音速)を超えた状態で断熱膨張させて、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成する。
酸素(O2)を採用した場合、極低温の過冷却液体酸素(GO2)と極低温酸素ガス(LO2)の一成分混相流を高速にラバルノズル部内に導入し、ラバルノズル部の噴射部にて、一成分混相流を音速(混相流の音速)を超えた状態で断熱膨張させて、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成する。
アルゴン(Ar)を採用した場合、極低温の過冷却液体アルゴンと極低温アルゴンガスの一成分混相流を高速にラバルノズル部内に導入し、ラバルノズル部の噴射部にて、一成分混相流を音速(混相流の音速)を超えた状態で断熱膨張させて、一成分極低温微細固体粒子を含む噴霧流を連続して生成する。

【0089】
尚、極低温とは、一般的な低温(0℃)よりも低い温度であり、且つ、窒素、水素、ヘリウム、アルゴンなどの標準気圧での沸点程度以下の温度である。詳細には、例えば、窒素(N2)を用いた場合、標準気圧での窒素の沸点である77.36K(-195.79℃)程度以下の温度であり、水素(H2)を用いた場合、標準気圧での水素の沸点である20.28K(-252.87℃)程度以下の温度であり、酸素(O2)を用いた場合、標準気圧での酸素の沸点である90.2K(-182.96℃)程度以下の温度であり、アルゴン(Ar)を用いた場合、83.80K(-189.35℃)程度以下の温度である。

【0090】
また、本実施形態では、極低温の過冷却液体を用いたが、この形態に限られるものではなく、例えば、過冷却状態でない、極低温の液体を用いてもよい。尚、極低温の過冷却液体を用いることにより、短時間に、容易に、一成分極低温微細固体粒子を生成することが可能である。

【0091】
本発明の実施形態に係る凍結装置によれば、極低温微細固体粒子を含む高速噴霧流の活用により、超高熱流速による細胞のガラス化凍結制御を行うことができる。氷核規模縮小と凍結保存剤等不純物の混入を極力減らすことが可能となり、高生存率のiPS細胞やES細胞などの各種細胞を、高品質に氷核生成を抑え、急速に冷凍することによりガラス化、凍結保存技術の確立が可能となる。
マイクロ・ナノレベルの極低温微細固体粒子の有する超高熱流束冷却効果により、従来のiPS細胞凍結法では不可能であった、凍結保護液不要かつ氷核生成を極力抑えた超高速ガラス凍結法を可能にし、生命化学領域、医用工学領域、各種医療産業へのこの新技術を提供することができる。また、この技術は、医学・医工学・生命科学分野のみならず、広範囲の異分野産業領域にわたって貢献度の高い技術となる。

【0092】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 ノズル
3 液体窒素導管
3a バルブ
4 窒素ガス導管
4a バルブ
5 断熱部(真空断熱部)
6 超音波振動子
6a 超音波振動生成部
6b 超音波伝達部
7 可動皿部
10 混合部
11 ラバルノズル部(ラバール・ノズル)
11a 導入部
11b 縮径部(スロート部)
11c 噴射部(拡開部)
18 スパイラルノズル
60 凍結保存容器
61 凍結対象
70 支持装置
71 支持部
72 噴霧位置変更部(噴霧位置変更手段)
81 駆動部
82 制御部
100 極低温微細固体粒子連続生成装置(噴霧部)
200 凍結装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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