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明細書 :除去標的DNAの除去方法、DNAカセット、及び発現ベクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-189761 (P2016-189761A)
公開日 平成28年11月10日(2016.11.10)
発明の名称または考案の名称 除去標的DNAの除去方法、DNAカセット、及び発現ベクター
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2015-073224 (P2015-073224)
出願日 平成27年3月31日(2015.3.31)
発明者または考案者 【氏名】房田 直記
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
Fターム 4B024AA20
4B024BA07
4B024CA04
4B024CA20
4B024DA05
4B024EA04
4B024HA08
要約 【課題】確実性が高く、かつ、操作性に優れた除去標的DNAの除去方法、このような除去標的DNAの除去方法に適したDNAカセット、及び発現ベクターを提供する。
【解決手段】本発明の除去標的DNAの除去方法は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞に、前記部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクターを導入し、前記宿主細胞内において前記部位特異的組換え酵素を発現させる発現工程を有する。また、本発明の宿主細胞は、好ましくは、細菌細胞であり、細菌細胞のうち、Rubrivivax gelatinosusの細胞がより好ましい。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞に、前記部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクターを導入し、前記宿主細胞内において前記部位特異的組換え酵素を発現させる発現工程を有する、除去標的DNAの除去方法。
【請求項2】
前記2つの認識配列のうち、一方が、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のDNAであり、他方が、以下の(d)から(f)のいずれかに記載のDNAである、請求項1に記載の除去標的DNAの除去方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(c)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(f)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
【請求項3】
前記発現工程の前に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞を得る工程を更に有する、請求項1又は2に記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項4】
前記宿主細胞を得る工程は、前記宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAと前記領域とを組み換え可能に構築されたターゲティングベクターを前記宿主細胞に導入する工程と、
前記ターゲティングベクターの導入後に、前記宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAが前記領域に組み換えられた宿主細胞を選択する第1の選択工程とを含み、
前記除去標的DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAであり、
前記ターゲティングベクターは、前記第1のマーカー遺伝子DNAと異なる第2のマーカー遺伝子DNAを有し、
前記第1の選択工程は、前記第1のマーカー遺伝子DNA及び前記第2のマーカー遺伝子DNAを指標として行われる、請求項3に記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項5】
前記第2のマーカー遺伝子DNAは、スクロース致死性遺伝子DNAである、請求項4に記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項6】
前記除去標的DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAであり、
前記発現ベクターは、前記第1のマーカー遺伝子DNAと、前記第1のマーカー遺伝子DNAと異なる第3のマーカー遺伝子DNAとを有し、
前記除去標的DNAの除去方法は、前記発現工程後に、前記第1のマーカー遺伝子DNA及び前記第3のマーカー遺伝子DNAを指標として、前記ゲノムDNA中における前記除去標的DNAが除去された前記宿主細胞を選択する第2の選択工程を更に有する、請求項1から5のいずれかに記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項7】
前記宿主細胞は、細菌細胞である、請求項1から6のいずれかに記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項8】
前記細菌細胞は、Rubrivivax gelatinosusの細胞である、請求項7に記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項9】
前記第1のマーカー遺伝子DNAは、カナマイシン耐性遺伝子DNAであり、
前記第3のマーカー遺伝子DNAは、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAである、請求項7又は8に記載の除去標的DNAの除去方法。
【請求項10】
φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれたマーカー遺伝子DNAとを含む領域を有する、DNAカセットであって、
前記2つの認識配列のうち、一方が、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のDNAであり、他方が、以下の(d)から(f)のいずれかに記載のDNAである、DNAカセット。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(c)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(f)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
【請求項11】
前記マーカー遺伝子DNAが、配列番号3に記載の塩基配列を有する、請求項10に記載のDNAカセット。
【請求項12】
φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAと、カナマイシン耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAとを有する発現ベクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、除去標的DNAの除去方法、DNAカセット、及び発現ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、宿主細胞のゲノム中の遺伝子破壊や、遺伝挿入を行う際には、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を用いて、遺伝子破壊や遺伝子挿入された宿主細胞を選択する手法が用いられてる。
【0003】
しかしながら、マーカー遺伝子DNAは、目的の形質転換体を選択した後は不要であり、マーカー遺伝子DNAが残ることにより、形質転換体の操作の妨げとなる場合がある。そこで、形質転換体を得た後に、このマーカー遺伝子DNAを取り除くために、部位特異的組換え酵素を用いることが知られている。
【0004】
部位特異的組換え酵素は、主に、チロシン型インテグラーゼと、セリン型インテグラーゼの2種類に分類される。
【0005】
チロシン型インテグラーゼは、組換え反応に宿主側の因子を必要とする、必要とする認識配列が長い等の操作性が低いという問題を有する。
【0006】
これに対し、セリン型インテグラーゼは、反応に宿主側の因子を必要としない、必要とする認識配列が短い等の、操作性において優れた性質を有することが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Paul C.M.Fogg et al.,“New Applications for Phage Integrases”,Journal of Molecular Biology,2014;426(15):2703-2716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セリン型インテグラーゼは、操作性に優れた性質を有する一方で、確実にDNAの除去ができるかが不明であり、セリン型インテグラーゼの操作性に優れた性質を有効に発揮したDNAの除去系は未だに存在しなかった。そのため、DNAの除去を確実に行うことができ、かつ、操作性に優れた方法が求められていた。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、確実性が高く、かつ、操作性に優れた除去標的DNAの除去方法、このような除去標的DNAの除去方法に適したDNAカセット、及び発現ベクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、宿主細胞におけるゲノムDNA中の除去標的DNAの除去に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素を用いることで、確実性が高い除去標的DNAの除去を可能とし、操作性において優れることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1) φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞に、前記部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクターを導入し、前記宿主細胞内において前記部位特異的組換え酵素を発現させる発現工程を有する、除去標的DNAの除去方法。
【0012】
(2) 前記2つの認識配列のうち、一方が、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のDNAであり、他方が、以下の(d)から(f)のいずれかに記載のDNAである、(1)に記載の除去標的DNAの除去方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(c)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(f)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
【0013】
(3) 前記発現工程の前に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞を得る工程を更に有する、(1)又は(2)に記載の除去標的DNAの除去方法。
【0014】
(4)前記宿主細胞を得る工程は、前記宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAと前記領域とを組み換え可能に構築されたターゲティングベクターを前記宿主細胞に導入する工程と、
前記ターゲティングベクターの導入後に、前記宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAが前記領域に組み換えられた宿主細胞を選択する第1の選択工程とを含み、
前記除去標的DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAであり、
前記ターゲティングベクターは、前記第1のマーカー遺伝子DNAと異なる第2のマーカー遺伝子DNAを有し、
前記第1の選択工程は、前記第1のマーカー遺伝子DNA及び前記第2のマーカー遺伝子DNAを指標として行われる、(3)に記載の除去標的DNAの除去方法。
【0015】
(5)前記第2のマーカー遺伝子DNAは、スクロース致死性遺伝子DNAである、(4)に記載の除去標的DNAの除去方法。
【0016】
(6) 前記除去標的DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAであり、
前記発現ベクターは、前記第1のマーカー遺伝子DNAと、前記第1のマーカー遺伝子DNAと異なる第3のマーカー遺伝子DNAとを有し、
前記除去標的DNAの除去方法は、前記発現工程後に、前記第1のマーカー遺伝子DNA及び前記第3のマーカー遺伝子DNAを指標として、前記ゲノムDNA中における前記除去標的DNAが除去された前記宿主細胞を選択する第2の選択工程を更に有する、(1)から(5)のいずれかに記載の除去標的DNAの除去方法。
【0017】
(7) 前記宿主細胞は、細菌細胞である、(1)から(6)のいずれかに記載の除去標的DNAの除去方法。
【0018】
(8) 前記細菌細胞は、Rubrivivax gelatinosusの細胞である、(7)に記載の除去標的DNAの除去方法。
【0019】
(9) 前記第1のマーカー遺伝子DNAは、カナマイシン耐性遺伝子DNAであり、
前記第3のマーカー遺伝子DNAは、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAである、(7)又は(8)に記載の除去標的DNAの除去方法。
【0020】
(10) φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれたマーカー遺伝子DNAとを含む領域を有する、DNAカセットであって、
前記2つの認識配列のうち、一方が、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のDNAであり、他方が、以下の(d)から(f)のいずれかに記載のDNAである、DNAカセット。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(c)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(f)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
【0021】
(11) 前記マーカー遺伝子DNAが、配列番号3に記載の塩基配列を有する、(10)に記載のDNAカセット。
【0022】
(12) φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAと、カナマイシン耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAとを有する発現ベクター。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、確実性が高く、かつ、操作性に優れた除去標的DNAの除去方法、このような除去標的DNAの除去方法に適したDNAカセット、及び発現ベクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】pJP CSKφのプラスミドマップを示す図である。
【図2】attB及びattPのそれぞれの付着末端付きのDNA断片の塩基配列を示す図である。(a)は、attBの付着末端付きのDNA断片の塩基配列を示す。(b)は、attPの付着末端付きのDNA断片の塩基配列を示す。
【図3】pJP CSKφの塩基配列のうち、attB-KmR-attPカセットのアタッチメントサイト周辺の塩基配列を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るターゲティングベクターpJP CSKφ△Xの作製の流れを示す図である。(a)は、標的遺伝子Xの上流域約1kbp(図4中の「A」)及び下流域約1kbp(図4中の「B」)が組み込まれる前のpJP CSKφを示し、(b)は、標的遺伝子Xの上流域A及び下流域Bが組み込まれたターゲティングベクターpJP CSKφ△Xを示す。
【図5】ゲノム中の標的遺伝子Xが組み替えられたRubrivivax gelatinosusの破壊株作製の流れを示す図である。(a)は、ターゲティングベクターpJP CSKφ△Xを示し、(b)は、2回組換え体のゲノムの組換えられた領域周辺を示す。
【図6】本発明の実施例に係る発現ベクターphiK38Int-pJRD215のプラスミドマップを示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る発現ベクターphiK38Int-pJRD215をRubrivivax gelatinosusの標的遺伝子Xの破壊株に形質転換した後に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の塩基配列中の上流側と下流側のプライマーを用いて、コロニーPCRを行った後のPCR産物についての、電気泳動の画像を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る発現ベクターphiK38Int-pJRD215を、ゲノム中の標的遺伝子Xが組み換えられたRubrivivax gelatinosusの破壊株に形質転換し、宿主細胞中でφK38-1由来の部位特異的組換え酵素を発現させ、該部位特異的組換え酵素により、破壊株ゲノム中の除去標的遺伝子DNAであるカナマイシン耐性遺伝子DNAを除去する流れを示す図である。
【図9】Rubrivivax gelatinosusのゲノム中の標的遺伝子Xの周辺のプライマーペア(標的遺伝子Xより上流側に位置する上流域のプライマーと、標的遺伝子Xより下流側に位置する下流域のプライマー)によりPCRを行った後のPCR産物についての、電気泳動の画像を示す図である。(1)は、Rubrivivax gelatinosusの野生型についてのPCR産物の電気泳動後のバンドであり、(2)は、1回組換え体についてのPCR産物の電気泳動後のバンドであり、(3)は、2回組換え体についてのPCR産物の電気泳動後のバンドであり、(4)は、発現ベクターの形質転換後のRubrivivax gelatinosusについてのPCR産物の電気泳動後のバンドである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらに本発明が限定されるものではない。

【0026】
<除去標的DNAの除去方法>
本発明の除去標的DNAの除去方法は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞に、部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクターを導入し、宿主細胞内において部位特異的組換え酵素を発現させる発現工程を有する。本発明の除去標的DNAの除去方法は、これにより、DNAの除去をより確実に行うことができ、かつ、操作性において優れる。

【0027】
[発現工程]
本発明における発現工程は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域をゲノムDNA中に有する宿主細胞に、部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクターを導入し、宿主細胞内において部位特異的組換え酵素を発現させる工程である。

【0028】
(部位特異的組換え酵素)
本発明における部位特異的組換え酵素は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素である。φK38-1由来の部位特異的組換え酵素は、例えば、配列番号4に記載された塩基配列のDNAによりコードされた部位特異的組換え酵素を用いることができる。ただし、部位特異的組換え酵素をコードするDNAは、これに特に限定されず、例えば、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の機能を損なわない程度に変異・欠失等されたものを用いることができるが、例えば、配列番号4に記載された塩基配列に対して、90%以上(好ましくは、92%以上、より好ましくは、95%以上、更に好ましくは、99%以上)の相同性を有する塩基配列からなるDNAや、配列番号4に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA等が挙げられる。配列番号4に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とハイブリダイズできる「ストリンジェントな条件」としては、例えば、通常のハイブリダイゼーション緩衝液中、40~70℃(好ましくは、50~67℃、より好ましくは、60~65℃)で反応を行い、塩濃度15~300mM(好ましくは、15~150mM、より好ましくは15~60mM、更に好ましくは、30~50mM)の洗浄液中で洗浄を行う条件が挙げられる。

【0029】
(認識配列)
本発明における認識配列は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される。

【0030】
上記認識配列は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識されるものであり、塩基配列が短いものであり、具体的には、150bp以下の長さの塩基配列を有する。認識配列は、150bp以下であれば、特に限定されない。ここで、認識配列が短いと、コドンを揃い、プライマーを設計しやすい等、様々な操作を行いやすいため、短いものが好ましい。他方で、認識配列が短いと、操作性においては優れている一方で、部位特異的組換え酵素により認識しにくくなるため、DNAの除去効率が低くなることが予想される。しかしながら、本発明の除去標的DNAの除去方法によると、認識配列が短くしたとしても、確実性の高い除去が行われる。このような観点で、確実性の高い除去を行いつつ、操作性に優れることから、認識配列は短い方が好ましく、より具体的には、50bp以下が好ましく、40bp以下がより好ましく、30bp以下が更に好ましく、20bp以下が最も好ましい。

【0031】
本発明における2つの認識配列の具体例としては、例えば、一方が、配列番号1に記載された配列であり、他方が配列番号2に記載された配列である場合が挙げられる。また、配列番号1の代わりに、配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNAや、配列番号1に記載の塩基配列と90%以上(好ましくは、92%以上、より好ましくは、95%以上、更に好ましくは、99%以上)の相同性を有する塩基配列からなるDNAを用いることができる。また、配列番号2の代わりに、配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNAや、配列番号2に記載の塩基配列と90%以上(好ましくは、92%以上、より好ましくは、95%以上、更に好ましくは、99%以上)の相同性を有する塩基配列からなるDNAが挙げられる。配列番号1又は2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とハイブリダイズできる「ストリンジェントな条件」としては、例えば、通常のハイブリダイゼーション緩衝液中、40~70℃(好ましくは、50~67℃、より好ましくは、60~65℃)で反応を行い、塩濃度15~300mM(好ましくは、15~150mM、より好ましくは15~60mM、更に好ましくは、30~50mM)の洗浄液中で洗浄を行う条件が挙げられる。

【0032】
特に、本発明の除去標的DNAの除去方法において、宿主細胞としてRubrivivax gelatinosusを用いた場合、上記の配列番号1又は2に記載された塩基配列や、配列番号1又は2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA、あるいは、配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有するDNAを認識配列として用いることで、より確実にDNAの除去が可能となるため、好ましい。

【0033】
(除去標的DNA)
本発明における「除去標的DNA」は、宿主細胞内において本発明における部位特異的組換え酵素が発現することで、該部位特異的組換え酵素により、宿主細胞のゲノムDNAから除去されるDNAである。

【0034】
除去標的DNAは、特に限定されず、目的や、本発明における各工程における条件に応じて適宜選択することができるが、代表的なものとして、マーカー遺伝子DNAが挙げられる。

【0035】
マーカー遺伝子DNAは、特に限定されず、目的、検出手段、後述の第2の選択工程等を考慮した上で、従来の公知のものを適宜選択することができる。マーカー遺伝子DNAとしては、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子、致死遺伝子等のDNAが挙げられる。薬剤耐性遺伝子としては、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられる。蛍光タンパク質遺伝子としては、緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子、赤色蛍光蛋白遺伝子等が挙げられる。発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子等が挙げられる。致死遺伝子としては、各種の宿主細胞の致死遺伝子を使用できるが、スクロース致死性遺伝子、コリシンE1遺伝子等が挙げられる。

【0036】
除去標的DNAは、特に、確実性が高く、操作性に優れることから、配列番号3に記載された塩基配列を有するカナマイシン耐性遺伝子DNAを用いることが好ましい。

【0037】
(宿主細胞)
本発明の発現工程における宿主細胞は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域(以下、本明細書において、「除去標的領域」ということある。)をゲノムDNA中に有する。このような宿主細胞であれば、種類は特に限定されないが、例えば、微生物細胞、植物細胞、動物細胞等を用いることができる。これらのうち、操作性に優れることから、微生物細胞を用いることが好ましい。宿主細胞は、目的に応じて適宜選択することができる。また、宿主細胞の種類に応じて、後述する第1の選択工程や、第2の選択工程の方法(例えば、培養方法、形質転換の方法、マーカー遺伝子の種類等)を、選択することができる。

【0038】
微生物細胞としては、細菌細胞、酵母、菌類の細胞等が挙げられる。これらのうち、操作性に優れることから、細菌細胞を用いることが好ましい。

【0039】
細菌細胞としては、特に限定されず、光合成細菌(Rubrivivax属(Rubrivivax gelatinosus等)、Rhodobacter属(Rhodobacter capsulatus、Rhodobacter sphaeroides等)、Rhodococcus属(Rhodococcus erythropolis等)、Chlorobaculum属(Chlorobaculum tepidum等))、放線菌(Streptomyces属、Mycobacterium属、Corynebacterium属等)、大腸菌(Escherichia属)、枯草菌(Bacillus subtilis)等が挙げられるが、これらのうち、光合成細菌は、特に本発明の除去標的DNAの除去方法に適していることから、好ましい。また、光合成細菌は、特に限定されず、本発明の除去標的DNAの除去方法に適していることから、Rubrivivax属を用いることが好ましい。Rubrivivax属は、特に限定されないが、認識配列として上記の配列番号1又は2に記載の塩基配列を用いた場合に、より確実にDNAの除去ができることから、Rubrivivax gelatinosusの細胞を用いることが好ましい。

【0040】
酵母細胞は、特に限定されないが、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Candida albicans、Yarrowia lipolytica、Kluyveromyces lactis、Hansenula polymorpha等の細胞が上げられる。

【0041】
植物細胞としては、特に限定されないが、Rhizobium radiobacterの菌株C58、GV2260、LBA4404等が挙げられる。

【0042】
動物細胞としては、特に限定されないが、哺乳類細胞(HEK293、CHO、COS、3T3等)、両生類細胞(アフリカツメガエル卵母細胞等)、昆虫細胞(Sf9、Sf21、High Five、S2、Tn5等)等が挙げられる。

【0043】
宿主細胞のゲノムDNA中における上記領域は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを有すれものであれば、特に限定されないが、例えば、後述するDNAカセットが好適である。

【0044】
(発現ベクター)
本発明の発現工程における発現ベクターは、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有するものであれば、特に限定されない。なお、「φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAを有する発現ベクター」とは、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素が、宿主細胞内において発現可能に構築されたものであり、宿主細胞内において発現可能となるように、上流側にプロモーター配列を有するものである。プロモーターは、宿主細胞内において発現できるようなものであれば、特に限定されず、宿主の種類に応じて、公知のプロモーターを用いることができる。

【0045】
発現ベクターの種類は、特に限定されず、宿主細胞や目的に応じて、公知の発現ベクターを用いることができる。例えば、細菌細胞用のベクターとしては、pJRD215、pRL25c、pACYC等に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAが発現可能に構築されたものを用いることができる。発現ベクターとしては、宿主細胞としてRubrivivax gelatinosusの細胞を用いた場合、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAに加え、マーカー遺伝子DNAとして、カナマイシン耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAとを有することが好ましい。このように、カナマイシン耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAとを含むことで、後述の第2の選択工程により発現工程後の宿主細胞を選択する際に、除去標的DNAの除去が行われた宿主細胞をより確実に選択することができ、すなわち、より確実なDNAの除去が可能である。

【0046】
(発現ベクターの宿主細胞への導入)
発現ベクターの宿主細胞への導入により、宿主細胞は形質転換される。導入方法は、宿主の種類に応じて、公知の方法を用いることができるが、例えば、接合、エレクトロポレーション法等により、導入することができる。

【0047】
(φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の発現)
本発明における発現工程においては、発現ベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞内において該部位特異的組換え酵素を発現させる。発現する手段は、特に限定されず、宿主細胞の種類や、発現ベクター内の部位特異的組換え酵素のプロモーターの種類又は発現の機構に応じて、適宜選択される。例えば、ある宿主細胞内において、通常の培養条件で発現できるプロモーターを、発現ベクター内の部位特異的組換え酵素のプロモーターとして用いた場合、そのプロモーターとその宿主細胞を組み合わせて用いることにより、通常の宿主細胞の培養条件で発現させることができる。あるいは、発現誘導剤や、温度変化に応じて発現するプロモータを使用する場合、そのような条件下で培養すれば、部位特異的組換え酵素を発現させることができる。

【0048】
このような培養の条件は、宿主細胞やプロモーターの条件に応じて、適宜変更されるが、例えば、宿主細胞として、Rubrivivax gelatinosusの細胞を用いた場合、PYS培地(例えば、培地組成は、1Lあたり、Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のものを用いることができる(Basal Salt solutionは、例えば、1lあたり、EDTA-3Na 4.12g,FeSO・7HO 1.11g,MgSO・7HO 24.65g,CaCl・2HO 2.94g,NaCl 23.4g, Trace element solution 10ml(Trace element solutionは、例えば、500mlあたり、MnSO・4HO 5.58g, ZnSO・7HO 1.44g, Co(NO・6HO 1.46g,CuSO・5HO 1.26g,NaMoO・2HO 1.21g,HBO 1.55g,EDTA-3Na 20.6gを含むものを用いることができる)を含むものを用いることができる))により、28~33℃で培養することで、発現させることができる。

【0049】
[発現工程前の宿主細胞を得る工程]
本発明の除去標的DNAの除去方法は、発現工程の前に、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域(上述の「除去標的領域」)をゲノムDNA中に有する宿主細胞を得る工程(以下、本明細書において「宿主細胞を得る工程」ということがある。)を有してもよい。

【0050】
宿主細胞を得る工程は、特に限定されないが、宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAと除去標的領域とを組み換え可能に構築されたターゲティングベクターを宿主細胞に導入する工程と、ターゲティングベクターの導入後に、宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAが上記領域に組み換えられた宿主細胞を選択する第1の選択工程とを含むことができる。

【0051】
(ターゲティングベクターを宿主細胞に導入する工程)
本発明の除去標的DNAの除去方法において、ターゲティングベクターを宿主細胞に導入することで、宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAと除去標的領域とが組み換えられる。

【0052】
ターゲティングベクターは、宿主細胞に導入後に、宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAと除去標的領域とが組み換え可能に構築されたものであり、除去標的領域を有するものである。ターゲティングベクターは、特に限定されないが、例えば、相同組換えを利用して、宿主細胞のゲノムDNA中の標的遺伝子DNAと、ターゲティングベクター中の除去標的領域とを組換え可能に構築される。相同組換え可能とするためには、例えば、宿主細胞のゲノムDNA中において、標的遺伝子DNAより上流側に位置する上流域(例えば、800~1500bp)、及び標的遺伝子DNAより下流側に位置する下流域(例えば、800~1500bp)のそれぞれの領域と相同性を有する塩基配列を有するDNAを、ターゲティングベクター中の除去標的領域より上流側及び下流側にそれぞれ位置するように挿入してターゲティングベクターを構築することができる。

【0053】
ターゲティングベクター中の除去標的領域は、上述のとおり、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれた除去標的DNAとを含む領域である。このターゲティングベクター中の除去標的領域に含まれる認識配列と、除去標的DNAは、それぞれ、上述の「発現工程」で述べたものと同様のものを用いる。特に、「除去標的DNA」は、後述の「第1の選択工程」において、組換えられた宿主細胞を選択するために、マーカー遺伝子DNAを用いることが好ましい。

【0054】
ターゲティングベクターの作製は、常法により行うことができるが、例えば、以下のような手順で構築することができる。まず、認識配列、及び、除去標的DNAのそれぞれのDNA断片を、PCRや化学合成、アニール等の手段を用いて作製し、その後、制限酵素処理、ライゲーション等を行うことで、除去標的領域を作製する。次いで、この除去標的領域を、ターゲティングベクターの元となるベクター(宿主細胞の種類によるが、例えば、細菌細胞を用いる場合、配列番号5や、配列番号6に記載された塩基配列を有するベクター、あるいは、pJP5603,pRL271等)に組み込む。このベクターを相同組換え可能なターゲティングベクターにするために、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子DNAの上流域及び下流域をPCRにより増幅し、そのPCR産物を、常法により(例えば、細菌細胞を用いる場合、In-Fusion(登録商標)酵素(タカラバイオ株式会社製)等を用いることにより)、ターゲティングベクター中の除去標的領域の上流及び下流に組み込むことにより行う。このような方法で、ターゲティングベクターを作製することができる。

【0055】
上述の、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子DNAの上流域及び下流域が組み込まれる前の、ターゲティングベクターの元となるベクターに除去標的領域が組み込まれたベクターとしては、In-Fusion(登録商標)酵素(タカラバイオ株式会社製)によるターゲティングベクターの作製に適していることから、除去標的領域として、後述の「DNAカセット」を含むことが好ましく、特に、除去標的領域のうち、除去標的DNAとして、配列番号3に記載された塩基配列を有するものが好ましい。このようなベクターの具体例としては、配列番号15に記載された塩基配列を有するものが挙げられる。

【0056】
ターゲティングベクターは、後述の「第1の選択工程」において、組換えられた宿主細胞をより確実に選択するために、上記除去標的DNAとは異なる、マーカー遺伝子DNAを有することが好ましい。本明細書において、「第1のマーカー遺伝子DNA」は、マーカー遺伝子DNAである「除去標的DNA」を指し、「第2のマーカー遺伝子DNA」は、ターゲティングベクターが有する、第1のマーカー遺伝子DNAと異なるマーカー遺伝子DNAを指す。

【0057】
第2のマーカー遺伝子DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAと異なるものであれば、特に限定されず、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子、致死遺伝子等のDNAが挙げられる。薬剤耐性遺伝子としては、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられる。蛍光タンパク質遺伝子としては、緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子、赤色蛍光蛋白遺伝子等が挙げられる。発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子等が挙げられる。致死遺伝子としては、各種の宿主細胞の致死遺伝子を使用できるが、スクロース致死性遺伝子、コリシンE1遺伝子等が挙げられる。これらのうち、第2のマーカー遺伝子DNAは、致死遺伝子を用いることが好ましい。また、致死遺伝子のうち、後述の「第1の選択工程」において、組換えられた宿主細胞をより確実に選択するために、スクロース致死性遺伝子DNAを用いることが好ましい。

【0058】
第2のマーカー遺伝子DNAは、ターゲティングベクターの元となるベクターに組み込んでもよく、あらかじめ第2のマーカー遺伝子DNAを有するベクターを用いてもよく、あるいは、ターゲティングベクターの作製後にこれに組み込んでもよい。

【0059】
宿主細胞へのターゲティングベクターの導入は、常法により行うことができ、例えば、接合、エレクトロポレーション法等により導入することができる。

【0060】
(第1の選択工程)
本発明における第1の選択工程は、宿主細胞のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAが除去標的領域に組み換えられた宿主細胞を選択する工程である。

【0061】
宿主細胞の選択は、マーカー遺伝子DNAである除去標的DNAを指標として行うことができる。除去標的DNAを指標として行う選択は、マーカー遺伝子DNAの種類に応じで、常法により行うことができる。

【0062】
宿主細胞の選択は、組換えられた宿主細胞をより確実に選択するためには、上述のとおり、ターゲティングベクターが第2のマーカー遺伝子DNAを有し、第1のマーカー遺伝子DNA(除去標的DNA)及び第2のマーカー遺伝子DNAを指標として行われることが好ましい。

【0063】
第1のマーカー遺伝子DNA及び第2のマーカー遺伝子DNAを指標とする宿主細胞を選択する方法は、特に限定されず、マーカー遺伝子DNAや宿主細胞の種類に応じて、適宜設定することができるが、例えば、宿主細胞として細菌細胞を用い、第1のマーカー遺伝子DNA及び第2のマーカー遺伝子DNAとして、薬剤耐性遺伝子DNAを用いた場合、以下のような手順で行うことができる。この場合において、第1のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤を、「第1の薬剤」といい、第2のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤を「第2の薬剤」ということがある。

【0064】
宿主細胞にターゲティングベクターを導入した後、第1の薬剤を含む固形培地で培養し、培地に生えてきたコロニーを得る。次に、得られたコロニーを数回継代して、組換え後のベクターを取り除いた後、いくつかのコロニーを、第1の薬剤と第2の薬剤を含む固形培地に接種して培養する。培養後、固形培地に生えてくるコロニーを選択する。これにより、ゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAが除去標的領域に組み換えられた宿主細胞を選択することができる。

【0065】
本発明の発現工程前の宿主細胞を得る工程は、得られた宿主細胞が目的とする組み換え体であるか否かを確認する工程を更に有してもよい。確認する方法は、従来の公知の方法を用いることができ、例えば、コロニーPCR及び電気泳動により確認することができる。

【0066】
[発現工程後に宿主細胞を選択する第2の選択工程]
本発明の除去標的DNAの除去方法は、発現工程後に、ゲノムDNA中における除去標的DNAが除去された宿主細胞を選択する第2の選択工程を更に有してもよい。

【0067】
第2の選択工程において、除去標的DNAは、第1のマーカー遺伝子DNAである。第1のマーカー遺伝子DNAは、上記の「宿主細胞を得る工程」と同様のものを用いることができる。

【0068】
第2の選択工程において、発現ベクターは、第3のマーカー遺伝子DNAを有する。本明細書において、「第3のマーカー遺伝子DNA」とは、第1のマーカー遺伝子DNAと異なるマーカー遺伝子DNAを指す。なお、「第3のマーカー遺伝子DNA」と上述の「第2のマーカー遺伝子DNA」とは同一であってもよく、異なっていてもよい。

【0069】
第2の選択工程において、発現ベクターは、第1のマーカー遺伝子DNAを更に有してもよい。この場合、第1のマーカー遺伝子DNAは、薬剤耐性遺伝子DNAであることが好ましい。これにより、第2の選択工程において、継続して、第1のマーカー遺伝子DNAによる薬剤耐性を利用することができる。第2の選択工程において、第1のマーカー遺伝子DNAは、カナマイシン耐性遺伝子DNAを用いることが好ましい。

【0070】
第2の選択工程において、宿主細胞の選択は、第1のマーカー遺伝子DNA及び第3のマーカー遺伝子DNAを指標として行われる。

【0071】
第1のマーカー遺伝子は、特に限定されないが、上記の「宿主細胞を得る工程」で用いられた「第1のマーカー遺伝子」と同様のものを用いることができる。

【0072】
第3のマーカー遺伝子は、特に限定されないが、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子、致死遺伝子等のDNAが挙げられる。薬剤耐性遺伝子としては、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられる。蛍光タンパク質遺伝子としては、緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子、赤色蛍光蛋白遺伝子等が挙げられる。発光や呈色反応を触媒する酵素の遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子等が挙げられる。致死遺伝子としては、各種の宿主細胞の致死遺伝子を使用できるが、スクロース致死性遺伝子、コリシンE1遺伝子等が挙げられる。

【0073】
宿主細胞の選択する方法は、第1のマーカー遺伝子DNA及び第3のマーカー遺伝子DNAを指標として行うことができる。その方法は、特に限定されず、例えば、宿主細胞として細菌細胞を用い、第1のマーカー遺伝子DNA及び第3のマーカー遺伝子DNAが、薬剤耐性遺伝子DNAであった場合、発現後の宿主細胞を、第1のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤と、第3のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤の両方を含む固形培地で培養し、生えてきたコロニーを選択することで、選択を行うことができる。このように選択されたコロニーに含まれる宿主細胞は、ゲノム中の除去標的DNAが除去されたものである。なお、選択後の宿主細胞を、数回継代し、第3のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤を含む固形培地と、この薬剤を含まない固形培地とでそれぞれ培養し、第3のマーカー遺伝子DNAに関する薬剤を含む固形培地でコロニーが生えてこないことを確認することで、発現ベクターが宿主細胞から取り除かれたことを確認することができる。

【0074】
特に、宿主細胞が、Rubrivivax gelatinosusの細胞である場合は、第1マーカー遺伝子DNAとして、カナマイシン耐性遺伝子DNAを用い、第3のマーカー遺伝子DNAとしてストレプトマイシン耐性遺伝子DNAを用いることが好ましい。宿主細胞とマーカー遺伝子DNAをこのような組み合わせで用いた場合、発現工程後に、カナマイシンとストレプトマイシンとを含む固形培地で培養した後の宿主細胞のコロニーのうち、早く生えてきたもののみをピックアップすることで、より確実に、ゲノム中の除去標的DNAが除去された宿主細胞を選択することができる。また、発現ベクターを導入することで、カナマイシン耐性遺伝子が当該株のゲノムから除去されるが、この除去と入れ替わりで発現ベクター中のカナマイシン耐性遺伝子が存在するため、第2の選択工程においては継続してカナマイシン耐性を利用でき、かつ、ストレプトマイシン耐性により、発現ベクターの導入株のみを選択することが可能である。

【0075】
本発明における第2の選択工程は、得られた宿主細胞のゲノムから、除去標的DNAが除去されたか否かを確認する工程を更に有してもよい。確認する方法は、従来の公知の方法を用いることができ、例えば、コロニーPCR及び電気泳動により確認することができる。

【0076】
<DNAカセット>
本発明は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される2つの認識配列と、該2つの認識配列に挟まれたマーカー遺伝子DNAとを含む領域を有する、DNAカセットであって、2つの認識配列のうち、一方が、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のDNAであり、他方が、以下の(d)から(f)のいずれかに記載のDNAである、DNAカセットを包含する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(c)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列を有するDNA
(f)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA

【0077】
本発明のDNAカセットの用途は、特に限定されず、例えば、宿主細胞の形質転換に用いることができる。宿主細胞への形質転換は、ベクターに組み込み、そのベクターを宿主細胞に形質転換することで行うことができる。特に、本発明のDNAカセットによると、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法における除去標的領域として、宿主細胞への形質転換に用いることが好ましい。これにより、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法は、より確実にDNAの除去を行うことができる。本発明のDNAカセットを、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法における除去標的領域として用いた場合、宿主細胞は、Rubrivivax gelatinosusの細胞を用いることが好ましい。すなわち、本発明のDNAカセットは、特に、Rubrivivax gelatinosusの細胞からのゲノム中のDNAの除去に適している。

【0078】
マーカー遺伝子DNAは、特に限定されず、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法における第1のマーカー遺伝子と同様のものを用いることができるが、本発明の除去標的DNAの除去方法に用いた場合、より確実にDNAの除去を行うことができることから、配列番号3に記載の塩基配列を有することで好ましい。

【0079】
<発現ベクター>
本発明は、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAと、カナマイシン耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン耐性遺伝子DNAとを有する発現ベクターを包含する。

【0080】
本発明の発現ベクターの用途は、特に限定されず、例えば、形質転換に用いることができる。特に、本発明の発現ベクターを、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法における発現ベクターとして用いた場合、より確実にDNAの除去を行うことができる。発現ベクターを、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法に用いた場合、宿主細胞は、Rubrivivax gelatinosusの細胞を用いることが好ましい。すなわち、本発明の発現ベクターは、特に、Rubrivivax gelatinosusの細胞からのゲノム中のDNAの除去に適している。

【0081】
本発明の発現ベクターにおけるφK38-1由来の部位特異的組換え酵素をコードするDNAは、上述の本発明の除去標的DNAの除去方法と同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0082】
<ターゲティングベクターの作製>
宿主としてRubrivivax gelatinosusを用い、宿主中のゲノムDNA中における組換え標的遺伝子DNAの組み換えを行うための、ターゲティングベクターの作製を行った。標的遺伝子DNAは、Rubrivivax gelatinosusのゲノム中のpucBA(以下、「標的遺伝子X」ということがある。)とした。ターゲティングベクターの作製は、まず、pJP CSKφを作製し、以下に示すとおり手順で行った。
【実施例】
【0083】
[pJP CSKφの作製]
図1に、pJP CSKφのプラスミドマップを示す。このpJP CSKφは、以下の手順で作製した。
【実施例】
【0084】
(pJP Cm-KU-SacRBの作製)
pJP Cm-KU(配列番号5)に、SacRB遺伝子(スクロース致死性遺伝子)DNAをライゲーションにより組み込み、pJP Cm-KU-SacRB(配列番号6)を作製した。
【実施例】
【0085】
(attB-KmR-attPカセットの作製)
まず、KmR(カナマイシン耐性)遺伝子DNAを作製した。この際、JP5603プラスミド(ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)から入手)を鋳型としてPCRを行い、KmR(カナマイシン耐性)遺伝子DNAから、制限酵素サイトPstIサイト及びSphIサイトを除去したDNA(以下、「pJP5603 Km-m2」ということがある。)を得た。PstIサイトを除去するために、フォワードプライマーとして配列番号7のプライマーを用い、リバースプライマーとして配列番号8のプライマーを用いた。SphIサイトを除去するために、フォワードプライマーとして、配列番号9のプライマーを用い、リバースプライマーとして配列番号10のプライマーを用いた。この、制限酵素サイトPstIサイト及びSphIサイトが除去されたKmR(カナマイシン耐性)遺伝子DNAの塩基配列は、配列番号3に記載されたとおりである。
【実施例】
【0086】
pJP5603 Km-m2を鋳型とし、フォワードプライマーとして配列番号11のプライマーを用い、リバースプライマーとして配列番号12のプライマーを用いてPCRを行い、DNA断片を得た後に、ClaI、PstIによる制限酵素処理を行った(以下、この制限酵素処理後のDNA断片を「制限酵素処理DNA断片」ということがある。)。
【実施例】
【0087】
φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の認識配列であるattB(配列番号1)及びattP(配列番号2)のそれぞれの付着末端付きのDNA断片を、オリゴDNAをアニールすることで調製した。調製したそれぞれの付着末端付きのDNA断片の配列を、図2に示す。図2中、(a)は、attBの付着末端付きのDNA断片の塩基配列を示し、(b)は、attPの付着末端付きのDNA断片の塩基配列を示す。図2中の塩基配列の下線部は、後述する、配列番号13のプライマー、配列番号14のプライマーに含まれる配列である。図2に示すように、attBの付着末端付きのDNA断片は、両端がそれぞれSalI及びClaIに付着できるように設計されている。また、attPの付着末端付きのDNA断片は、両端がそれぞれPstI及びSacIに付着できるように設計されている。なお、attB及びattPは、それぞれ、38bpのφK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識される認識配列(アタッチメントサイト)である。
【実施例】
【0088】
制限酵素処理DNA断片と、上記のattB及びattPの付着末端付きのDNA断片についてライゲーションを行った。次いで、ライゲーション産物を鋳型とし、PCRを行った。フォワードプライマーとして配列番号13のプライマーを用い、リバースプライマーとして配列番号14のプライマーを用いた。この操作により、attB-KmR-attPカセットを作製した。
【実施例】
【0089】
(pJP CSKφの作製)
attB-KmR-attPカセットについて、SalI、SphIで制限酵素処理を行い、また、pJP Cm-KU-SacRBプラスミドのSalIサイト、SphIサイトに、制限酵素処理後のattB-KmR-attPカセットを挿入し、pJP CSKφを作製した(図1)。作製したpJP CSKφの塩基配列は、配列番号15に示されたとおりである。pJP CSKφの塩基配列のうち、attB-KmR-attPカセットのアタッチメントサイト周辺の塩基配列を、図3に示す。
【実施例】
【0090】
[ターゲティングベクターの作製]
Rubrivivax gelatinosusのゲノムDNAの標的遺伝子Xを、相同組換えにより組み替えて破壊株を作製するために、標的遺伝子Xより上流側に位置する約1kbpの上流域、及び、下流側に位置する約1kbpの下流域のそれぞれの領域をPCRで増幅し、それぞれのDNA断片を作製した。上流域のPCRには、フォワードプライマーとして配列番号16のプライマーと、リバースプライマーとして配列番号17のプライマーを用いた。下流域のPCRには、フォワードプライマーとして配列番号18のプライマーと、リバースプライマーとして配列番号19のプライマーを用いた。得られた上流域及び下流域のそれぞれのDNA断片を、In-Fusion(登録商標)酵素(タカラバイオ株式会社製)を用いて、pJP CSKφにおけるattB-KmR-attPカセットより上流側と下流側の位置に組み込み、ターゲティングベクターpJP CSKφ△X(配列番号20)を作製した。ターゲティングベクターの作製の流れを、図4に示す。図4中、(a)は、標的遺伝子Xの上流域約1kbp(図4中の「A」)及び下流域約1kbp(図4中の「B」)が組み込まれる前のpJP CSKφを示し、(b)は、標的遺伝子Xの上流域A及び下流域Bが組み込まれたターゲティングベクターpJP CSKφ△Xを示す。図4に示すように、ターゲティングベクターは、pJP CSKφ中のattB-KmR-attPカセットの上流側及び下流側に、目標遺伝子Xの上流域Aと下流域Bとがそれぞれ組み込まれたものである。
【実施例】
【0091】
<破壊株の作製>
ターゲティングベクターを用いて、標的遺伝子Xが組換えられたRubrivivax gelatinosusの破壊株の作製を行った。破壊株の選択には、まず、Rubrivivax gelatinosusにターゲティングベクターを大腸菌S17-1λ pir株を用いた接合により形質転換した後に、カナマイシンを含む固形培地(成分:PYS培地(Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のもの))で培養し、カナマイシン耐性遺伝子を有する株を選択し、組み換え体(以下、「1回組換え体」ということがある。)を含むコロニーを得た。次に、1回組換え体を含むコロニーを、数回継代した後に、カナマイシンとスクロースを含む固形培地(成分:PYS培地(Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のもの))で培養し、生えてきたコロニーを選択することで、目的とする組換え体(以下、「2回組換え体」ということがある。)である破壊株を得た。得られた破壊株が、ゲノム中の標的遺伝子XとattB-KmR-attPカセットとが組換えられた破壊株であるかを、コロニーPCRにより確認したところ、組換えが正常に行われたことが確認された。図5に、ゲノム中の標的遺伝子Xが組み替えられたRubrivivax gelatinosusの破壊株作製の流れを示す。図5中、(a)は、ターゲティングベクターpJP CSKφ△Xを示し、(b)は、2回組換え体のゲノムの組換えられた領域周辺を示す。図5に示すように、ターゲティングベクターpJP CSKφ△Xを用いることで、Rubrivivax gelatinosusの野生型ゲノム中の標的遺伝子Xが、attB-KmR-attPカセットと組換えられた。なお、後述の図9の(2)に示すとおり、「1回組換え体」として得たコロニーについて、コロニーPCR及び電気泳動を行ったところ、実際には、コロニーに「1回組換え体」と「2回組換え体」の両方が含まれることを示すバンドが確認された。
【実施例】
【0092】
このように、カナマイシン耐性を利用して選択して1回組換え体を得た後に、スクロース致死性とカナマイシン耐性を利用して選択を行うことで、2回組換え体を確実に選択できることが確認された。
【実施例】
【0093】
<発現ベクターの作製>
φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の発現ベクターの作製を行った。まず、pJRD215(ATCC(非営利バイオリソースセンター)から入手)にカナマイシン耐性遺伝子のプロモーターをNdeIサイト及びXbaIサイトに挿入した。挿入後のプラスミドに対し、NdeIサイト及びBamHIサイトに、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の遺伝子DNA(配列番号4)を組み込み、発現ベクターであるphiK38Int-pJRD215(配列番号21)を作製した。phiK38Int-pJRD215のプラスミドマップを、図6に示す。phiK38Int-pJRD215は、カナマイシン(Km)耐性遺伝子DNAと、ストレプトマイシン(Sm)耐性遺伝子DNAを有する。
【実施例】
【0094】
<破壊株からのカナマイシン耐性遺伝子DNAの除去>
Rubrivivax gelatinosusの標的遺伝子Xの破壊株からカナマイシン耐性遺伝子DNAの除去を行うために、まず、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の発現ベクターであるphiK38Int-pJRD215を有する大腸菌(XL1 blue pDPT51)を、接合により破壊株に導入し、培地(成分:PYS培地(Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のもの))で培養して、破壊株中でφK38-1由来の部位特異的組換え酵素を発現させた。次いで、カナマイシンとストレプトマイシンを含むPYS(成分:(Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のもの))のプレート培地(PYS Km/Smプレート)にプレーティングし、早く成長したコロニーを3~4個選択した。その後、選択したコロニーを、カナマイシンを含むPYS(成分:(Yeast Extract 1g, Polypeptone 5g,Na-Succinate 5g,Basal Salt Solution 10mlを含み、pH 7.0のもの))のプレート培地(PYS Kmプレート)にストリークした。各コロニーのストリークについて更に、それぞれシングルコロニーをピックアップして、コロニーPCRを行い(プライマーは、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素の塩基配列中の上流側と下流側のプライマーを用いた)、発現ベクターをRubrivivax gelatinosusに形質転換したことを確認した。コロニーPCR後の電気泳動の写真を図7に示す。図7中の(1)~(5)は、ピックアップしたRubrivivax gelatinosusのコロニーについてのPCR後のバンドであり、(C)は、コントロール(phiK38Int-pJRD215を有する大腸菌XL1 blue pDPT51)についてのPCR後のバンドである。なお、(M)は、マーカー(λ-EcoT14I)である。図7に示すように、部位特異的組換え酵素のDNAのバンドは、(1)~(5)の全てにおいて確認されたことから、発現ベクターがRubrivivax gelatinosusの標的遺伝子Xの破壊株に確実に形質転換されたことが確認された。
【実施例】
【0095】
図8は、発現ベクターを、ゲノム中の標的遺伝子Xが組み換えられたRubrivivax gelatinosusの破壊株に形質転換し、宿主細胞中でφK38-1由来の部位特異的組換え酵素を発現させ、該部位特異的組換え酵素により、破壊株ゲノム中の除去標的遺伝子DNAであるカナマイシン耐性遺伝子DNAを除去する流れを示す図である。図8に示すように、発現ベクターが破壊株に形質転換されると、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素が発現して、破壊株ゲノムからカナマイシン耐性遺伝子DNAを除去する。
【実施例】
【0096】
上記コロニーPCRと同時に、得られたRubrivivax gelatinosusのゲノムを用いて、ゲノム中の標的遺伝子Xの周辺のプライマーペア(標的遺伝子Xより上流側に位置する上流域のプライマーと、標的遺伝子Xより下流側に位置する下流域のプライマー)によりPCRを行い、バンドのサイズを確認し、カナマイシン耐性遺伝子DNAを除去したことを確認した。また、Rubrivivax gelatinosusの野生型のゲノム、1回組換え体のゲノム、及び2回組換え体のゲノムについても、同様の操作を行った。そのPCR後の電気泳動の結果を、図9に示す。図9中、(1)は、Rubrivivax gelatinosusの野生型についてのバンドであり、(2)は、1回組換え体についてのバンドであり、(3)は、2回組換え体についてのバンドであり、(4)は、発現ベクターの形質転換後のRubrivivax gelatinosusについてのバンドである。なお、(M)は、マーカー(λ-EcoT14I)である。図9に示すように、(4)の発現ベクターの形質転換後のバンドは、(1)~(3)より、短いバンドが得られていることは明らかであり、Rubrivivax gelatinosusの破壊株から、カナマイシン耐性遺伝子DNAが除去されたことが確認できた。なお、上記(4)のバンドをクローニングし、シークエンス解析を行ったところ、目的とする組換えが生じ、カナマイシン耐性遺伝子DNAが除去されたことを確認できた。
【実施例】
【0097】
また、上記コロニーPCRによる確認と同時に、ピックアップしたコロニーについて、抗生物質を含まないPYS培地の培養液にイノキュレートした。そして、上記のとおり、カナマイシン耐性遺伝子が除去されたことを確認できたコロニーの培養液を、抗生物質を含まないPYSプレートにストリークした。このプレートから、シングルコロニー4個程度を更に別のPYS(抗生物質を含まない)プレートとPYS Kmプレートに接種し、レプリカを作成した。そして、PYS Kmプレート側でコロニーが生えてこず、抗生物質を含まないPYSプレートにのみコロニーが生えてくることを確認することで、phiK38Int-pJRD215が破壊株から脱離したことを確認した。
【実施例】
【0098】
以上で述べたとおり、当該破壊株のゲノム上からのカナマイシン耐性遺伝子DNAの除去と、発現ベクターの脱離を確認することができた。
【実施例】
【0099】
このように、本発明のDNAの除去方法によると、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素を用いることで、高い確実性で、カナマイシン耐性遺伝子DNAがゲノムDNAから除去されたRubrivivax gelatinosusの破壊株を選択することができた。特に、Rubrivivax gelatinosusは、若干のストレプトマイシン耐性を有することから、早く成長したコロニーのみを選択したことにより、より確実にDNAの除去が可能となったものと推測される。また、DNAの除去に用いた、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素により認識されるattB及びattPは、38bpと短いにもかかわらず、上記のとおり、確実性が高いDNAの除去が可能となった。また、認識配列が38bpと短いため、コドンを揃えやすい、プライマーを設計しやすい等、様々な操作を行いやすい。これらのことから、本発明によると、確実性が高いのみならず、部位特異的組換え酵素の認識配列を短くすることができるため、操作性に優れたDNAの除去が可能となることが示された。
【実施例】
【0100】
また、認識配列が38bpのように短いと、宿主細胞中のゲノム中に、組換え部以外に、認識配列を有する可能性が高く、目的とする部分の除去を確実に組替えるのは困難である。しかし、上記2つの認識配列をRubrivivax gelatinosusのゲノムに組み込んで、φK38-1由来の部位特異的組換え酵素を反応させても、予想外なことに、目的とする部分の除去を確実に行うことができた。このことから、本発明のDNAの除去方法において、宿主細胞としてRubrivivax gelatinosusの細胞を用い、認識配列として上記のattB及びattPを用いる組合せが、特に適していることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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