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明細書 :被検溶液のpH測定方法及びpH測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-188818 (P2016-188818A)
公開日 平成28年11月4日(2016.11.4)
発明の名称または考案の名称 被検溶液のpH測定方法及びpH測定装置
国際特許分類 G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/414       (2006.01)
FI G01N 27/46 353
G01N 27/30 301A
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-069185 (P2015-069185)
出願日 平成27年3月30日(2015.3.30)
発明者または考案者 【氏名】岡村 慶
出願人 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002251、【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査請求 未請求
要約 【課題】高塩分濃度被検体液や塩分汚濁被検体液や低塩分濃度被検体液のような各種被検溶液のpHを測定する際、ガラス電極や比較電極の内部液の塩化カリウムの濃度や液温によるpHの変化を補償して、真のpHとの間に誤差を生じさせない簡便で、高い精度で厳密かつ正確な被検溶液のpH測定方法を提供する。
【解決手段】被検溶液のpH測定方法は、塩化カリウム及びガラス電極用緩衝液が含有されたガラス電極内部液12を内包したガラス電極10、塩化カリウム及び比較電極用緩衝液が含有された比較電極内部液22を内包した比較電極20とからなる一対の電極間の電位差が、pH7.2~8.2の範囲外の溶液で0mVとなるように設定された電極10・20を用いて、被検溶液50に対して電極間に生じた電圧を検出し、比較電極内部液22中の前記塩化カリウムの濃度と被検溶液50の液温とで補償しつつ電圧から被検溶液50のpH値を検知するものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
塩化カリウム及びガラス電極用緩衝液が含有されたガラス電極内部液を内包したガラス電極と、塩化カリウム及び比較電極用緩衝液が含有された比較電極内部液を内包した比較電極とからなる一対の電極間の電位差が、pH7.2~8.2の範囲外の溶液で0mVとなるように設定された電極を用いて、被検溶液に対して前記電極間に生じた電圧を検出し、前記比較電極内部液中の前記塩化カリウムの濃度と前記被検溶液の液温とで補償しつつ前記電圧から前記被検溶液のpH値を検知することを特徴とする被検溶液のpH測定方法。
【請求項2】
前記被検溶液の液温を検出する工程と、
前記比較電極用緩衝液の固有pH値を、前記液温に応じ、前記比較電極用緩衝液の補正pH値へ演算し、前記比較電極内部液の電位変化値を、それの前記塩化カリウムの濃度に応じ演算し、その電位変化値から、前記液温に応じ、前記比較電極内部液の控除pH値へ演算した後、前記比較電極用緩衝液の補正pH値から、前記比較電極内部液の控除pH値を補償して、前記比較電極内部液の補償pH値を演算する工程と、
前記被検溶液中で前記電極間に生じた前記電圧を検出する工程と、
前記電圧から、前記液温に応じ、pH差を演算した後、前記比較電極内部液の補償pH値に基づき、前記pH差から、前記被検溶液のpH値を検知する工程とを、
有していることを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項3】
前記被検溶液のpH値を、所定の室温値に換算する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項4】
前記ガラス電極内部液と前記比較電極内部液とが、同質であることを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項5】
前記ガラス電極内部液と前記比較電極内部液とが、それぞれ前記塩化カリウムを飽和していることを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項6】
前記被検溶液が、海水、湖水及び河川水から選ばれる塩分含有被検体液又は淡水被検体液、若しくは塩分汚濁被検体液であることを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項7】
前記ガラス電極がガラス感応膜を有し、前記比較電極が液絡を有することを特徴とする請求項1に記載の被検溶液のpH測定方法。
【請求項8】
前記比較電極内部液の前記補正pH値と、前記被検溶液のpH値との差が、最大で2とすることを特徴とする請求項1に記載のpH測定方法。
【請求項9】
塩化カリウム及びガラス電極用緩衝液が含有されたガラス電極内部液を内包したガラス電極と、塩化カリウム及び比較電極用緩衝液が含有された比較電極内部液を内包した比較電極とからなり、それらの電極間の電位差が、pH7.2~8.2の範囲外の溶液で0mVとなるように設定された電極と、
前記電極を浸け、被検溶液での前記電極間に生じた電圧を検出する電圧検出器と、
前記被検溶液の液温を検出する温度検出器と、
前記比較電極内部液中の前記塩化カリウムの濃度で前記被検溶液の液温とで補償しつつ前電圧から前記被検溶液のpH値を演算する回路とを、
有することを特徴とする被検溶液のpH測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境を観測するために海洋の海水・汽水湖の湖水等の高塩分濃度被検体液や河川湖沼等の淡水被検体液や、環境保全のために工業排水原液等の塩分汚濁被検体液を始めとする各種被検溶液のpHを測定する方法、及びそれに使用されるpHの測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境の変化を観測するため、海洋の水面や深部で高塩分濃度被検体液を採取したり、陸地の河川湖沼で淡水被検体液を採取したりして、そのまま現場で、又は回収して測定室で、pHが測定される。
【0003】
近年、石油や石炭等の化石燃料の人為的な大量消費に起因して、大気中の二酸化炭素が徐々に増加してきており、地球温暖化が進行している。大気中の二酸化炭素は、海水や陸水や雲や雨水に溶けて炭酸水素イオンや炭酸イオンの濃度を増加させ、海洋等の酸性化を増長している。海洋の海水・汽水湖の湖水、河川湖沼の淡水等のpHを継続的に正確に測定して、地球環境の変化を観測し、地球規模での将来の環境を予測したり、更なる環境汚染・地球温暖化を防止する措置を講じたりするため、正確なpHデータを取得する必要がある。
【0004】
水道水や希薄な酸性・アルカリ性の試液やサンプルのような通常の被検溶液のpHを25℃程度の定温の室温で測定するのに、ガラス電極と比較電極との電気化学的な電圧から求める市販の汎用pHメーターが用いられている。この場合、被検溶液のpHは、水素イオン指数(pH=-log[H];[H]は溶液中の水素イオン濃度)として表されている。電気化学的に実際、測定されているのは、水素イオン濃度自体ではなく水素イオン活量であるが、通常の被検溶液では、両者が略等しいから、pHを水素イオン指数で表している。
【0005】
しかし、海水のような高塩分濃度被検体液では、高濃度共存イオンの存在や、共存イオンと水素イオンとの相互作用や、電極のイオン選択性や、溶存ガスの影響等のせいで、水素イオン濃度自体や水素イオン活量を正確に検出し難いため、そのpHを厳密に測定するのが困難である。
【0006】
そこで、海水のpHを表すのに、通常の被検溶液のような水素イオン指数の他に、例えば非特許文献1に、海水測定を前提とし海水組成と同じ又は近似の溶媒に緩衝液を溶解させた海水測定用校正溶液(Tris-HCl緩衝液、AMP緩衝液等)でガラス電極と比較電極との校正を行うことによる、トータルスケールpH(以下、pHという。pH=-log([H+]+[HSO4-]);[H+]は溶液中の水素イオン濃度、[HSO4-]は溶液中の硫酸イオン濃度)や、海水スケールpH(以下、pHswsという。pHsws=-log([H+]+[HSO4-]+[F-]);[H+]は溶液中の水素イオン濃度、[HSO4-]は溶液中の硫酸イオン濃度、[F-]は溶液中のフッ素イオン濃度)が定義されている。海水組成と同じ又は近似にした海水測定用校正溶液は、調製が面倒で手間がかかるばかりか、Tris-HCl緩衝液のように温度に依存してそのpHが大きく変動するので、液温が0~35℃まで広範に変化する海洋の海水採取現場での被検溶液のpH測定に向かない。
【0007】
簡易に精度良く被検溶液のpHを測定する方法として、特許文献1に、ガラス電極と比較電極とからなる一対の電極間の電位差がpH7.2~8.2の範囲の溶液で0mVとなるように設定された電極を用い、海水を測定溶液としこの電極間に生じた電圧に基づき測定溶液のpHを測定する方法が、開示されている。
【0008】
このように電極間の電位差を0mVにするという設定条件のために、ガラス電極の内部液を飽和塩化カリウム濃度でpH7.2~8.2と設定する必要がある。測定溶液が海水の場合、その真のpHに近いpH標準溶液を用いた内部液を、使用することが望ましい。本発明者の研究において、pH標準溶液に対して塩化カリウムを飽和させた場合、活量係数の変化により、内部液のpHがpH標準溶液本来のpHより0.5程度減少することが明らかとなった。そのため、特許文献1の方法における設定条件のためにpH7.2~8.2の範囲の要件を満たす内部液としては、pH7.7~8.7の標準溶液を用いる必要がある。市販されているpH標準溶液には、定温の25℃でpH4.01のフタル酸塩緩衝液やpH6.86の中性リン酸塩緩衝液やpH7.41のリン酸塩緩衝液やpH9.17ホウ酸塩緩衝液のようなJIS規格緩衝液があるが、pH7.7~8.7で安定なpH標準溶液は、市販されていない。しかも、ガラス電極内や比較電極内の内部液のpH緩衝液成分本来のpHを慎重に選択しなければ誤差を生じてしまう。
【0009】
従来、これらのガラス電極や比較電極の内部液に、3.3mol/L~飽和の塩化カリウムからなる水溶液や、海水等の被検体液のpHに近似するJIS規格緩衝液に塩化カリウムを共存させた水溶液が、用いられているが、海水のような被検溶液のpHを測定する際に、比較電極の内部液について塩化カリウムの濃度や液温を考慮することなくpH標準溶液本来のpHを基準として、電極間の電圧からpHを算出していた。
【0010】
大気中の二酸化炭素が海水に溶解すると生じる、炭酸水素イオン(HCO3-)や炭酸イオン(CO32-)が、酸(H+)を中和し緩衝するため、海水のpHが中性付近(凡そpH7.4~8.2)になり、地球環境の変化を正確に観測するのに、pH変動を小数点以下3桁まで正確かつ精密に検知する必要がある。また海洋の海水は地域や水深によって約0~35℃までの広範囲にまたがるが、ガラス電極や比較電極の内部液の塩化カリウムの濃度や液温によるpHの変化が考慮されていなかったため、真のpHとの間に誤差を生じ得るばかりか、観測現場でpH変動を小数点以下3桁まで正確かつ精密に検知できない。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2012-107986号公報
【0012】

【非特許文献1】DOE (1994) Handbook of methods for the analysis of the various parameter of the carbon dioxide system in sea water. Version 2, A.G.Dickson & C.Goyet, eds.ORNL/CDIAC-74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高塩分濃度被検体液や塩分汚濁被検体液のみならず低塩分濃度被検体液のような各種被検溶液のpHを測定する際、ガラス電極や比較電極の内部液の塩化カリウムの濃度や液温によるpHの変化を補償して、真のpHとの間に誤差を生じさせず、簡便で、高い精度で厳密かつ正確な被検溶液のpH測定方法、及びそれに使用される簡素なpHの測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するためになされた本発明の被検溶液のpH測定方法は、塩化カリウム及びガラス電極用緩衝液が含有されたガラス電極内部液を内包したガラス電極と、塩化カリウム及び比較電極用緩衝液が含有された比較電極内部液を内包した比較電極とからなる一対の電極間の電位差が、pH7.2~8.2の範囲外の溶液で0mVとなるように設定された電極を用いて、被検溶液に対して前記電極間に生じた電圧を検出し、前記比較電極内部液中の前記塩化カリウムの濃度と前記被検溶液の液温とで補償しつつ前記電圧から前記被検溶液のpH値を検知することを特徴とする。
【0015】
この被検溶液のpH測定方法は、さらに前記被検溶液のpH値を、所定の室温値に換算する工程を有することが好ましい。
【0016】
この被検溶液のpH測定方法は、前記被検溶液の液温を検出する工程と、前記比較電極用緩衝液の固有pH値を、前記液温に応じ、前記比較電極用緩衝液の補正pH値へ演算し、前記比較電極内部液の電位変化値を、それの前記塩化カリウムの濃度に応じ演算し、その電位変化値から、前記液温に応じ、前記比較電極内部液の控除pH値へ演算した後、前記比較電極用緩衝液の補正pH値から、前記比較電極内部液の控除pH値を補償して、前記比較電極内部液の補償pH値を演算する工程と、前記被検溶液中で前記電極間に生じた前記電圧を検出する工程と、前記電圧から、前記液温に応じ、pH差を演算した後、前記比較電極内部液の補償pH値に基づき、前記pH差から、前記被検溶液のpH値を検知する工程とを、有していることが好ましい。
【0017】
この被検溶液のpH測定方法は、前記被検溶液のpH値を、所定の室温値に換算する工程を有していてもよい。
【0018】
この被検溶液のpH測定方法は、前記ガラス電極内部液と前記比較電極内部液とが、同質であることが好ましい。
【0019】
この被検溶液のpH測定方法は、前記ガラス電極内部液と前記比較電極内部液とが、それぞれ前記塩化カリウムを飽和していてもよい。
【0020】
この被検溶液のpH測定方法は、前記被検溶液が、海水、湖水及び河川水から選ばれる塩分含有被検体液又は淡水被検体液、若しくは塩分汚濁被検体液であると、好ましい。
【0021】
この被検溶液のpH測定方法は、例えば、前記ガラス電極がガラス感応膜を有し、前記比較電極が液絡を有するものである。
【0022】
この被検溶液のpH測定方法は、前記比較電極内部液の前記補正pH値と、前記被検溶液のpH値との差が、最大で2とすると、一層好ましい。
【0023】
また、前記の目的を達成するためになされた本発明の被検溶液のpH測定装置は、塩化カリウム及びガラス電極用緩衝液が含有されたガラス電極内部液を内包したガラス電極と、塩化カリウム及び比較電極用緩衝液が含有された比較電極内部液を内包した比較電極とからなり、それらの電極間の電位差が、pH7.2~8.2の範囲外の溶液で0mVとなるように設定された電極と、前記電極を浸け、被検溶液での前記電極間に生じた電圧を検出する電圧検出器と、前記被検溶液の液温を検出する温度検出器と、前記比較電極内部液中の前記塩化カリウムの濃度で前記被検溶液の液温とで補償しつつ前電圧から前記被検溶液のpH値を演算する回路とを、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の被検溶液のpH測定方法は、高塩分濃度被検体液、特に海洋の表層・深部の海水や、汽水湖の湖水のような被検溶液のpHを、高い精度で厳密かつ正確に、再現性良く簡便に測定することができるものである。また、高塩分濃度被検体液のみならず、河川湖沼等の淡水被検体液や、プラントの塩分汚濁被検体液のような各種被検溶液のpHを、精度良く厳密かつ正確に測定できるようになる。
【0025】
この被検溶液のpH測定方法によれば、ガラス電極と比較電極との電極間に生じた電圧を検出し、比較電極内部液中の塩化カリウムの濃度と被検溶液の液温とで換算式を用いて補償しつつ電圧から被検溶液のpH値を検知している。そのため、被検溶液の液温が測定位置や測定時刻毎に変動していたとしても、適切に内部液pHを換算することができるので、ガラス電極や比較電極の内部液の塩化カリウムの濃度や液温によるpHの変化を補償して、真のpHとの間に差異を生じさせず、被検溶液の正確なpHを測定することができる。
【0026】
この被検溶液のpH測定方法によれば、深海の海洋など任意の観測現場で直にpHを正確に測定することができる。
【0027】
本発明の被検溶液のpH測定装置は、これら内部液として、pH7.41のpH標準溶液に塩化カリウムを飽和させたものを用いることで、pH6.9付近で電位が0mVとなる海洋等でのpHセンサーとなる。被検溶液のpHの応じpH4.01・pH6.86・pH9.17のpH標準溶液を使うことも可能である。この被検溶液のpH測定装置は、市販のpH標準溶液や塩化カリウムを用いつつ、市販のガラス電極や比較電極の構造を変更することなく用いることができるので、汎用性が高い。
【0028】
本発明の被検溶液のpH測定装置は、電気消費量が少なくて済み、pH測定のための指示薬のような特殊試薬が不要なものである。またこのpH測定装置は、小型であり、水深5000mのような深海でも安定して使用でき、温度ドリフトが少なく、精度良く厳密かつ正確にpHを測定できる。しかも、無人でも、長期間に渡り連続して安定にpHを測定できるため、深海の水深毎のpHや経時的なpHの変化を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法に使用するpH測定装置の概要図である。
【図2】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法に使用するガラス電極と比較電極との間を示す原理概要図である。
【図3】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法での校正の工程を示す図である。
【図4】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法でのpH測定の工程を示す図である。
【図5】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法中で用いる、pH7.41のpH標準緩衝液の液温とpHとの相関関係を示す図である。
【図6】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法中で用いる、飽和塩化カリウム濃度と液温との相関関係を示す図である。
【図7】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法中で用いる、塩化カリウム濃度と電位変化との相関関係を示す図である。
【図8】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法中で用いる、塩化カリウム濃度とネルンスト応答考慮後での電位変化との相関関係を示す図である。
【図9】本発明を適用する被検溶液のpH測定装置の概観概要斜視図である。
【図10】本発明を適用する被検溶液のpH測定方法における測定海域での水深と、被検溶液の液温である海水温度との相関を示す図である。
【図11】本発明を適用する実施例1の被検溶液のpH測定方法でのpH測定の結果のpH生データ、及び本発明を適用外の参考例1のpH測定の結果のpH生データと、水深との相関を示す図である。
【図12】本発明を適用する実施例1の被検溶液のpH測定方法でのpH測定の結果のpH生データと、参考例1のpH測定の結果の生データとの相関関係を、示す図である。
【図13】本発明を適用する実施例1の被検溶液のpH測定方法でのpH測定の結果のpH生データ、測定現場の海水温度でのpH(in situ pH)、及び25℃に換算したpHと、水深との相関を示す図である。
【図14】本発明を適用する実施例1の被検溶液のpH測定方法でのpH測定の結果を25℃に換算したpHと、事後的に船上又は陸上にて一定の25℃で実測したpHとの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。

【0031】
本発明の被検溶液のpH測定方法について、図1を参照しながら、被検溶液が海水である例により、説明する。

【0032】
この被検溶液のpH測定方法は、ガラス電極10及び比較電極20に接続されその電圧(電位差)を検出する電圧計のような電圧検出器30と、温度検出器40とが、それぞれ下端側を被検溶液50に漬けつつ上端側から接続コードを介して中央演算装置(CPU)60へ接続された、被検溶液のpH測定装置1を用いて、行われる。CPU60は、温度検出器40での温度を測定し検出する検出回路、ガラス電極10及び比較電極20の間を校正する校正回路及びそれの記憶回路、ガラス電極10及び比較電極20の間の電圧を測定し検出する検出回路、ガラス電極や比較電極の内部液の塩化カリウムの濃度や液温によるpHの変化を補償して、被検溶液の実際のpHを検知する演算回路、被検溶液のpH値を所定の室温値に換算する演算回路、及び得られたpHの結果を記憶する記憶回路を、備えている。

【0033】
ガラス電極10は、ガラス筒の下先端が薄いpH感応ガラスとなって封止されており、内部にガラス電極内部液12が充填され、それにAg/AgCl電極である内部電極11が浸されたものである。比較電極20は、ガラス筒の下先端が微小孔や多孔セラミックやガラスすり合わせスリーブである液絡23となって封止されており、内部に比較電極内部液22が充填され、それにAg/AgCl電極である内部電極21が浸されたものである。海水のpHは、凡そpH7.4~8.2であることが既に知られている。そこで、ガラス電極内部液12と比較電極内部液22として、海水のpHに近いpH7.41のリン酸塩緩衝液(JIS規格)に塩化カリウムを飽和させた内部液を用いる。

【0034】
海水は種々の塩類が溶解しているので、海水のpHを表すのに汎用されているpH(トータルスケール)を測定することとする。
pH=[H+]F(但しpHはフリースケールpH、[H+]Fは遊離水素イオン濃度)で表す時、
[H+]T=[H+]F(1+ST/Ks)≒[H+]F+[HSO4-] ・・・(1)
(式(1)中、ST=[HSO4-]+[SO42-]、KS=[H+]F[SO42-]/[HSO4-])であり、
pH=-log([H+]T/(molkg-soln-1)) ・・・(2)
となるので、pHは、式(1)及び(2)で定義される。

【0035】
ガラス電極10と比較電極20との間でのpH測定の原理を示す図2を参照すると、pH測定する際、ネルンストの式
Ee=E°+(RT/nF)loga0/aR ・・・(3)
(式中、Eeは、電極反応がOx+neとRedとの平衡状態[Oxは酸化状態の化合物、Redは還元状態の化合物]である場合の電極電位;a0,aRはOx及びRed状態の活動度、E°はa0=aR=1の場合のEeの値、Rはガス定数、Tは温度(K)、Fはファラデー定数である)が成り立つ。

【0036】
ガラス電極10内の内部液12(緩衝液+飽和KCl液)のpHを変えると等電位pHを変えることができる。ここで、ガラス電極10側と比較電極20側とのAg/AgCl電極11・21に電位の差が無く、液絡23の電位が無視できるほど小さければ、等電位pHは、ガラス電極10内の内部液12のpHとなる。即ち、ガラス電極10内の内部液12(緩衝液+飽和KCl液)と比較電極20内の内部液22(緩衝液+飽和KCl液)とが同質で、同じpHとなる同質の被検溶液を測定した場合、pH感応ガラス13を境界にして同じ組成の溶液を測定することになる。そのときガラス電極10と比較電極20との間に電位が生じず、電極対の0mVを示す等電位pHとなる。

【0037】
その後、図3のようにして、電極の校正を行う。被検溶液が海水である場合、電極の校正は、海水の組成に近い溶媒に緩衝液を溶解させて標準溶液とした校正溶液(Tris緩衝液、AMP緩衝液等)を用いて行なわれる。

【0038】
図2に示すように、本来、ガラス電極10と比較電極20とが電極対の0mVを示すように各内部液が同質となって等電位pHになっているからゼロ校正を兼ねることができるのだが、実際には液絡23に起因する不斉電位を生じる。そこで、先ず、pHの異なる2種類の校正液を用いて、スパン校正を行う(S11a工程)。次いで片方の校正液のpH値と一致するよう、ゼロ校正を行う(S11b工程)。CPU60に校正の結果を記憶する(S12工程)。

【0039】
次いで、被検溶液50のpH測定を、図4のようにして行なう。

【0040】
先ず、以下のように、被検溶液50の液温を、サーミスタや熱電対のような温度検出器40で検出する(S21工程)。温度に対応するサーミスタによる抵抗値や熱電対による起電力から、温度として測定し検出する検出回路により、液温を検知する。被検溶液50の液温は、ガラス電極内部液12と比較電極内部液22との液温に相当する。

【0041】
次いで、飽和塩化カリウム緩衝液である比較電極内部液22のpHを、以下のようにして補償する(S22工程)。

【0042】
比較電極内部液22の構成成分であって25℃でpH7.41という固有値を有するpH標準溶液自体について、その液温とpH標準溶液のpHとの相関関係を示す図5の通り、そのpHは液温に依存している。そこで、図5に従って、液温に応じこの比較電極用緩衝液であるpH標準溶液のpHを補正する(S22a工程)。例えば比較電極用緩衝液の補正pH値は、pH7.41のpH標準緩衝液のpH温度依存性を示す図5のように、液温に基づき、近似式(具体的にはy(pH)=2.0202×10-7×x(t)3+5.5245×10-5×x(t)2+6.4491×10-3×x(t)+7.5305; y(pH)は補正pH値、x(t)は液温、相関係数:R2=0.9958)に従って、演算する。なお、液温に対するpH標準緩衝液のpHの表を予め作成しておき、液温に基づいてその表から読み込んでもよい。

【0043】
飽和塩化カリウム濃度と液温との相関関係を示す図6に示す通り、その濃度は液温に依存している。そこで、図6に従って、比較電極内部液22の飽和塩化カリウム濃度を、液温に基づいて、演算する。例えば、飽和塩化カリウム濃度は、図6に示すように、液温に基づき、近似式(具体的には、y(satKCl)=0.040256×x(t)+3.7808; y(satKCl)は飽和塩化カリウム濃度、x(t)は液温、相関係数:R2=0.9993)に従って、演算する(S22b工程)。なお、温度に対する飽和塩化カリウム濃度の表を予め作成しておき、液温に基づいてその表から読み込んでもよい。

【0044】
pH7.41(25℃)のpH標準溶液と共存する塩化カリウム濃度による電位変化との相関関係は、温度毎に、図7に示す通り、塩化カリウム濃度や温度に依存している。前記式(3)のネルンストの式を変形すると、電気化学の要請により電位変化は絶対温度に比例しており、
25℃の時にpH1当たり、0.059160V ・・・(4)
t℃の時にpH1当たり、 0.059160V×(273.15+t℃)/(273.15+25.00℃) ・・・(5)
というネルンスト応答が、認められる。図7を元に、このネルンスト応答を考慮したところ、図8に示すように、全ての温度毎のプロットが略重なるようになり、25℃に統一した電位変化値と塩化カリウム濃度とは、相関性がある(25℃のプロット参照)。そこで、図8に従って、25℃での比較電極内部液22の電位変化値を、塩化カリウム濃度に基づいて演算する(S22c工程)。例えば、比較電極内部液22の電位変化値は、25℃換算で、近似式(具体的には、3.0から5.5mol/Lの範囲では、y(E)=0.093170×x(KCl)3+1.7201×x(KCl)2+10.245×x(KCl)+11.515; y(E)は電位変化値、x(KCl)は塩化カリウム濃度、相関係数:R2=0.9913)に従って、演算する。なお、塩化カリウム濃度に対する電位変化値の表を予め作成しておき、塩化カリウム濃度に基づいてその表から読み込んでもよい。

【0045】
その演算した電位変化値から、前記式(5)でのネルンスト応答に従い、被検溶液50の液温を元に、比較電極内部液22の控除pH値へ演算する(S22d工程)。より具体的には、室温(約25℃)での飽和塩化カリウム濃度から演算した電位変化値は、約30mV上昇するから、控除pH値は約0.5であるから、その場合の比較電極内部液22のpH低下は、約0.5に相当する。

【0046】
次いで、比較電極用緩衝液の補正pH値から、比較電極内部液22の控除pH値を補償するように演算する(S22e工程)。より具体的には、室温(約25℃)での飽和塩化カリウム濃度から演算した電位変化値(約30mV)に対応する控除pH値(約0.5)を、比較電極用緩衝液の補正pH値から減ずると、比較電極内部液22の補償pH値が演算できる。

【0047】
最後に、以下のようにして、被検溶液50のpH値を検知する(S23工程)。

【0048】
被検溶液50中で、ガラス電極10及び比較電極20の電極間に生じた電圧を、電圧検出器30で検出する(S23a工程)。この電圧は、電圧値としてCPU60へ入力される。

【0049】
この電圧値から、前記式(5)でのネルンスト応答に従い、被検溶液50の液温に応じ、ガラス電極10及び比較電極20の電極間で検出されるpH差を演算する(S23b工程)。

【0050】
比較電極内部液22の補正pH値に基づき、演算したpH差から、被検溶液50のpH値を演算する(S23c工程)と、被検溶液50のpHを検知することができる。

【0051】
得られた液温に応じた被検溶液50のpH値を、必要に応じ、前記式(5)でのネルンスト応答に従い又は非特許文献1による炭酸平衡の理論式を用い、25℃でのpH値に換算してもよい(S24工程)

【0052】
このとき、ガラス電極10と比較電極20との各電極電位から、被検溶液50のpHとして検知される海水pHは、以下のように、簡略して表される。

【0053】
ガラス電極10において、海水50とガラス電極内部液12との間で水素イオン濃度の差に比例した電位が、pH感応ガラス13にて発生しており、Ag/AgClの内部電極11にて塩素濃度に比例した電位が発生している。海水のpHを海水pH,ガラス電極内部液12のpHを内部液(g)pHとして表したとき、海水50の海水電位と、ガラス電極10の内部液電位gと、ガラス電極10の電極電位gとの間に、25℃の場合は、
内部液電位g=海水電位+(海水pH-内部液(g)pH)×0.059160 ・・・(6)
電極電位g=f(KCl濃度g)+内部液電位g ・・・(7)
電極電位g=f(KCl濃度g)+海水電位+(海水pH-内部液(g)pH)×0.059160・・・(8)
という関係式(但し、f(KCl濃度g)は、ガラス電極内部液中の塩化カリウム濃度に起因する電位補正項)が、成り立つ。

【0054】
一方、比較電極20において、海水50と比較電極内部液22との間は液絡23により電位が等しくなっており、Ag/AgClの内部電極21にて塩素濃度に比例した電位が発生している。海水50の海水電位と、比較電極20の内部液電位rと、比較電極20の電極電位gとの間に、
内部液電位r=海水電位 ・・・(9)
電極電位r=f(KCl濃度r)+内部液電位r ・・・(10)
電極電位r=f(KCl濃度r)+海水電位 ・・・(11)
という関係式(但し、f(KCl濃度r)は、比較電極内部液中の塩化カリウム濃度に起因する電位補正項)が、成り立つ。

【0055】
ガラス電極10のガラス電極内部液12と比較電極20の比較電極内部液22とは、同じ緩衝液を用いた飽和塩化カリウム溶液であるので、それらの濃度が同じとなる。従って、ガラス電極10と比較電極20との内部液12・22の塩化カリウム濃度がKCl濃度g=KCl濃度rとなるからf(KCl濃度g)=f(KCl濃度r)となり、内部液(g)pH=内部液(r)pHであるから緩衝液pHと表記すると、25℃の場合は、式(8)と式(11)とにより電極間の電圧(電位差)が、
(電極電位g-電極電位r)(V)=(海水pH-緩衝液pH)×0.059160(V)・・・(12)
として、求まる。

【0056】
内部液(g)pHと内部液(r)pHは、海水50の液温と、それに依存する塩化カリウム濃度とに、依存するから、海水pHの測定に必要な情報は、結局、ガラス電極10及び比較電極20の電極間に生じた電圧と、比較電極20の比較電極内部液のpHを導くための液温である。これらの情報から、式(12)と式(5)のネルンスト応答とに応じ、所定温度、例えば25℃で換算した海水pHが、正確に求められる。より具体的には炭酸平衡の理論式を用いて25℃でのpHを換算する。

【0057】
このように、本発明の被検溶液のpH測定方法によれば、ガラス電極10の内部液12や比較電極20の内部液22に、同質の飽和塩化カリウム緩衝液を用いていると、被検溶液50の液温と、ガラス電極10及び比較電極20の電極間の電圧とにより、正確な被検溶液50のpHを厳密に測定することができる。

【0058】
従来のpH測定方法に用いるガラス電極は、室温(例えば25℃)近傍でpH測定することを前提に内部液として塩化カリウムが0℃でも析出しない濃度である3.3mol/L塩化カリウム溶液のpH7付近の緩衝液が用いられていたり、深海でpH測定することを前提に内部液として3.3mol/L塩化カリウム溶液の0.1~0.0001mol/Lの塩酸含有溶液(pH1~4に相当)が用いられたりしている。

【0059】
これらのような従来の場合、正確な塩化カリウム濃度の保証が無く、そのため比較電極の内部液である飽和塩化カリウム水溶液との間で、ガラス電極と比較電極との内部液12・22の塩化カリウム濃度がKCl濃度g≠KCl濃度rとなるからf(KCl濃度g)≠f(KCl濃度r)となり、比較電極内部液中の塩化カリウム濃度に起因する電位補正項が残り、補正が必要となってしまう。また被検溶液のpHに応じpH標準緩衝液を用いて、通常、2点校正を行う。例えば被検溶液がpH7付近なら、pH6.86と4.01のpH標準緩衝液、又はpH6.86と9.17のpH標準緩衝液を用いて、校正を行うが、pH標準緩衝液のpHが比較電極内溶液のような塩化カリウムを含む場合のその塩化カリウム濃度に対する依存性を如何に補償して調整するのか、メーカー毎に経験に基づき幾分相違している。また、ガラス電極内部液として3.3mol/L塩化カリウム溶液の0.1~0.0001mol/Lの塩酸含有溶液を用いる場合、何時でもその内部濃度が一定、即ち内部pHが一定と推定できる。しかし、その内部液が塩酸0.0001mol(pH4)であるなら、被検溶液がpH7.4の海水の場合に電位差が(7.4-4.0)×0.0591=0.201V=201mVであり、被検溶液がpH8.2の海水の場合に電位差が(8.2-4)×0.059=0.248V=248mVであるから、約200~250mVの電位差を正確に計る必要がある。

【0060】
それに比べ、本発明の前記の態様では、ガラス電極内部液12や比較電極内部液22に所定の飽和塩化カリウムのpH緩衝液を用いているから、これらの従来の場合のような弱点を解消できている。

【0061】
なお、被検溶液が海水であり、ガラス電極内部液12や比較電極内部液22として25℃でpH7.41のリン酸塩緩衝液に塩化カリウムを飽和させた内部液を用いた例を示したが、同様にして、海水と同程度のpHを有する被検溶液についてpHを測定できる。また海水以外の被検溶液のpHを測定する場合、予備的にpHを測定しておきその予測pHに応じて、25℃でpH4.01のフタル酸塩緩衝液やpH6.86の中性リン酸塩緩衝液やpH9.17ホウ酸塩緩衝液に塩化カリウムを飽和させた内部液を、用いてもよい。その場合、塩化カリウム濃度に応じ、図8に対応するネルンスト応答考慮後の電位変化の近似式や検量線やそれに相当する対応表を用いて電位変化を演算する以外は、同様にして、pHを測定する。

【0062】
ガラス電極内部液12や比較電極内部液22として、塩化カリウムを飽和させた内部液に代えて、塩化カリウム不飽和のpH緩衝液を用いてもよいが、その場合、図7に対応して電位変化を演算する以外は、同様にして、pHを測定する。

【0063】
pH測定装置は、連続的に又は間欠的にpHを測定して、CPU60にpHデータ等を記録する記憶機器を備えていてもよいが船上や管理施設に有線又は無線でpHデータ等を送信する送信機器を備えていてもよい。またpH測定装置に、連続的に又は間欠的にpH測定すると共にその時の被検溶液を採取して持ち帰る採取機器を備えていてもよい。

【0064】
pH測定装置は、ガラス電極と比較電極と温度検出器とが独立している例を示したが、一体化した所謂複合電極とするものであってもよい。
【実施例】
【0065】
本発明の被検溶液のpH測定方法により、深海現場で直ちに海水のpHを測定した実施例と、本発明を適用外である従来のpH測定方法により深海現場で直ちに海水のpHを測定した参考例とについて、以下に示す。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
本発明の被検溶液のpH測定方法を、図1に示すpH測定装置1で、測定した。ガラス電極10と比較電極20とのpH電極は、Tris緩衝液とAMP緩衝液とを用いて2点校正により校正されたものであり(図3参照)、それらの先端のpH感応ガラス13と液絡23とが露出しつつ、図9のように多数の通水穴71の開いた円筒状開放カバー72内に収められ、CPU60が耐圧容器73内に納められたものである。海水用pHセンサーPH12(紀本電子工業株式会社製;商品名)ガラス電極10の内部液12と比較電極20の内部液22とは、25℃でpH7.41のリン酸塩緩衝液(JIS規格)に塩化カリウムを飽和させた内部液とした。
【実施例】
【0067】
太平洋沖合の水深350m付近に在る海底火山直上の海域で、船上からpH測定装置1を吊下げたまま、海水面から海底火山直上の水深約340mまで約0.5m/秒の速度で沈め、その後、海水面まで約0.5m/秒の速度で引き上げたときに、1秒毎にpH測定し、pHデータを取得した。また、同時に、温度検出器40でその海水の液温を測定した。併せて、被検溶液である海水を、水深300m迄50m毎と、300m以降20m毎に採取した。
【実施例】
【0068】
(参考例1)
海水用pHセンサーPH12での測定と同時に、ガラス電極及び比較電極を有するpHセンサー SBE27(Seabird社製;製品名)でpHを測定した。
【実施例】
【0069】
(pH測定データの対比)
(1) 海水温度の測定
測定海域での水深と、被検溶液の液温である海水温度との相関を図10に示す。この液温は、ガラス電極10及び比較電極20の内部液12・22の温度に相当している。
【実施例】
【0070】
(2) pH測定の生データ
実施例1のpH測定の結果の生データ(図4のS22~S23参照。)と、参考例1のpH測定の結果の生データを図11に示す。図11から明らかな通り、両者は、鉛直分布形状が略同一であり、絶対値が相違している。その理由は、両センサーの校正を同時に実施していなかったため、使用した校正液の差と、校正後の時間経過の差異が生じたためである。
【実施例】
【0071】
(3) pH測定の生データの相関性
実施例1のpH測定の結果の生データと、参考例1のpH測定の結果の生データとの相関関係を、図12に示す。図12から明らかな通り、両者は、水深260m以上深のpH変化の激しい部分のために幾分相関が乱れていたが、全体的に相関係数R2=0.9721であり、一次関数の高い相関関係が認められた。
【実施例】
【0072】
(4) 実施例1のpH測定の結果の各種pH表記
図13に、実施例1のpH測定の結果の生データ(電極の温度依存性を除去した補償後のpH)と、それから炭酸平衡の理論式を用いて25℃でのpHを演算(図4のS24参照)したpH換算値データとを、表記する。なお、併せて、in situ pH(測定現場の海水温度でのpH)を示す。
【実施例】
【0073】
(5) 25℃でのpH換算値の妥当性
採取した海水を引き上げて回収し、船上又は陸上にて、事後的に一定の25℃で実測pHを測定した。測定には、ガラス式pH電極PH2401C(ラジオメータ社製;商品名)を用いて行った。そのデータを図14に示す。図14から明らかな通り、25℃換算値は、事後的な25℃での実測pHと、略一致していた。従来は、海洋の深海でpHを測定した生データを25℃まで変換する手法が無かったが、本発明の被検溶液のpH測定方法によれば、被検溶液のpHを、真のpHとの誤差無く、高い精度で厳密かつ正確な測定できることが明らかとなった。また、実施例1では、参考例1よりも、真のpHとの誤差が少なかった。その理由は、本発明を適用する被検溶液のpH測定方法によれば、正確なpHの換算ができたためであると推察される。
【実施例】
【0074】
このように、本発明の被検溶液のpH測定装置を用いたpH測定方法によれば、簡便に、高い精度で厳密かつ正確な被検溶液のpHを、測定現場で検知することができ、採水して事後的にpHを測定しなくて済む。また、25℃の室温で測定する場合、通常、校正点は予想されるpH値を含む前後2種類の標準液を用いて行う面倒なものであったり、1種類の標準液を用いた時は校正しても誤差が大きくなったり、pHの変動が大きな海洋現場で測定誤差が大きくなったりして、正確なpHの測定は面倒でしかも困難である。しかし、本発明の被検溶液のpH測定装置によれば、測定液温から所定の計算式に基づいてpH値を校正できるので、正確であり簡便である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の被検溶液のpH測定方法は、ガラス電極や比較電極に市販の安定したpH標準溶液を使用し、温度依存性を利用することにより、被検溶液、とりわけ海水pHを、海洋深部の現地で測定するのに、用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1は被検溶液のpH測定装置、10はガラス電極、11は内部電極、12はガラス電極内部液、13はpH感応ガラス、20は比較電極、21は内部電極、22は比較電極内部液、23は液絡、30は電圧検出器、40は温度検出器、50は被検溶液、60はCPU、71は通水穴、72は開放カバー、73は耐圧容器である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図14】
12
【図13】
13