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明細書 :マグネシウム・鉄合金の製造方法、マグネシウム・鉄合金及びそれを用いた生体医療材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-194095 (P2016-194095A)
公開日 平成28年11月17日(2016.11.17)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム・鉄合金の製造方法、マグネシウム・鉄合金及びそれを用いた生体医療材料
国際特許分類 C22C  33/02        (2006.01)
A61L  31/00        (2006.01)
C22C   1/04        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/14        (2006.01)
C22C  23/00        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
FI C22C 33/02 B
A61L 31/00 B
C22C 1/04 C
B22F 1/00 E
B22F 3/14 101B
B22F 3/14 D
B22F 1/00 F
C22C 23/00
C22C 38/00 304
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2015-073326 (P2015-073326)
出願日 平成27年3月31日(2015.3.31)
発明者または考案者 【氏名】謝 国強
【氏名】金高 弘恭
【氏名】高田 朝
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000626、【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4K018
Fターム 4C081AC03
4C081AC10
4C081BA16
4C081CG08
4K018AA13
4K018AA25
4K018AC03
4K018BA07
4K018BA14
4K018BB04
4K018BC12
4K018BC16
4K018EA01
4K018EA21
4K018KA70
要約 【課題】 本発明は、融点及び密度の差が大きいマグネシウムと鉄を用いつつも均質な合金を作製すること、単体では生体内での分解速度が速すぎるマグネシウムと遅すぎる鉄を均質に合金化することにより生体内での分解速度が制御可能な医療用生体材料を提供することを課題とする。
【解決手段】 マグネシウム粉末と鉄粉末を混合し、機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化し、さらに焼結することにより均質な焼結体を作製することによりマグネシウム・鉄合金を製造する。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウム粉末と鉄粉末を混合する工程と、
前記混合した粉末を機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程と、
前記合金化した混合粉末を焼結する工程と
を含む、マグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項2】
前記機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程が、メカニカルアロイニング法である、請求項1に記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項3】
前記焼結する工程が、放電プラズマ焼結法である、請求項1又は2に記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項4】
前記焼結する工程が、ホットプレス法である、請求項1又は2に記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項5】
前記メカニカルアロイング法が、回転速度250~650rpm、固相反応時間0.5~45時間の条件であることを特徴とする、請求項2に記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項6】
前記放電プラズマ焼結法が、加圧力10~800MPa、焼結温度到達後の保持時間0~20分、焼結温度200~600℃の条件であることを特徴とする、請求項3記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項7】
前記マグネシウム粉末の量が混合した粉末全量に対して10~90質量%であり、前記鉄粉末の量が混合した粉末全量に対して10~90質量%であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項8】
前記混合した粉末を機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程で得られる合金の粒子サイズが、150μm以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法で製造した、マグネシウム・鉄合金。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載のマグネシウム・鉄合金の製造方法で製造したマグネシウム・鉄合金を用いた生体医療材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、均質な焼結体を作製することにより得られるマグネシウム・鉄合金とその製造方法に関する。特に生体吸収性を有する医療用材料に用いられるマグネシウム・鉄合金とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え、医療現場では生体にやさしく安全な医療用生体材料の開発が求められている。なかでも、血管や食道などの管腔内狭窄部の治療に用いる管腔内ステントや骨折固定プレート、縫合糸などの医療用生体材料は、治療後に生体に吸収される性質を有することが求められている。生体に吸収されない場合には、治療後に該材料を撤去する再手術が必要となり、侵襲リスクや二次感染リスクの問題が生じるためである。
【0003】
生体吸収性を有する医療材料の原料としては、従来よりさまざまな物質が検討されている(非特許文献1参照)。たとえばポリ乳酸などの高分子材料は、生体吸収性を有するものの強度が低く加工性にも劣るため、チタンなどの金属材料の代替にはなりえないことが知られている。
【0004】
次に、金属材料のうち生体吸収性を有するマグネシウムや鉄について、医療用材料としての検討がなされた。
しかし、マグネシウムは活性が高く、生体内での分解速度が速すぎるという問題があった。このため、マグネシウムそのものを原料としプレートとして使用した場合、皮下に大量のガスが発生し空腔を形成してしまうことが知られている。
一方、鉄については純鉄製のステントが作製され、ウサギ血管内への埋入実験結果が報告された(非特許文献1、2参照)。しかし、鉄は生体内での分解速度が遅すぎるという問題があった。このため、医療用材料として生体内に埋入された鉄は、治療後も体内に異物として残っている期間が長く、該材料が腐食し周辺で炎症が起きることも指摘されている。
【0005】
その次に、上述した問題点、すなわち生体内での分解速度が速すぎる点と遅すぎる点を解決するため、生体吸収性を有する医療用材料としてマグネシウムと鉄の合金の適用が検討された。
しかしながら、マグネシウム/鉄の融点はそれぞれ650℃/1538℃であり、室温付近での密度はそれぞれ1.738g・cm-3/7.874g・cm-3であり、大きく異なる。これらの物性の違いにより、両金属を従来の溶融鋳造法により合金化することは極めて困難であり、たとえ合金化できたとしても均質な合金を得ることはできなかったため、医療材料の分野のみならず他の工業分野においてもマグネシウム・鉄合金の作成の例はほとんどなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】山本玲子:“マグネシウム合金の医療応用”,軽金属,58(11),2008,pp.570-576
【非特許文献2】M Peuster,et al,:Heart,86,2001,pp.563-569
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、融点及び密度の差が大きいマグネシウムと鉄を用いつつも均質な合金を作製すること、単体では生体内での分解速度が速すぎるマグネシウムと遅すぎる鉄を均質に合金化することにより生体内での分解速度が制御可能な医療用生体材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、均質な焼結体を作製することにより得られるマグネシウム・鉄合金とその製造方法を見出した。
【0009】
すなわち、マグネシウム粉末と鉄粉末を混合し、機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化し、さらに焼結することにより、上記マグネシウム・鉄合金は製造される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により製造されたマグネシウム・鉄合金を医療用生体材料の原料とした場合、生体内での分解速度の制御が可能となり、埋入部位により変化する分解速度や治療内容により要求される分解速度に対応することが可能となる。また、本発明により製造されたマグネシウム・鉄合金は均質で理論密度に近く硬いため、加工性が高い上に両金属の配合割合を調製することで延性等を含めて機械的特性を制御可能であり、複雑な形状の医療用生体材料への応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】メカニカルアロイング法によるマグネシウム・鉄合金粉末を作製する装置及び概念図。
【図2】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末の走査型電子顕微鏡写真(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h、Mg30Fe70粉末)。
【図3】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末のX線回折スペクトルの経時変化(回転速度250rpm)。
【図4】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末のX線回折スペクトルの経時変化(回転速度350rpm)。
【図5】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末のX線回折スペクトルの経時変化(回転速度650rpm)。
【図6】放電プラズマ焼結法に使用される装置の概念図。
【図7】放電プラズマ焼結法によるマグネシウム・鉄合金焼結体作製時の温度と加圧力プロセス。
【図8】放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の形状。
【図9】放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の外観(合金組成:Mg、Mg70Fe30、Mg50Fe50、Mg30Fe70、Fe。焼結温度:400℃、450℃、500℃、550℃)。
【図10】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末及び該合金粉末から放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の走査型電子顕微鏡写真の比較(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h、Mg30Fe70粉末、焼結温度500℃)。
【図11】メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末及び該合金粉末から放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体のX線回折スペクトルの比較(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h、Mg30Fe70粉末、焼結温度500℃)。
【図12】放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の機械的特性(Mg70Fe30合金粉末焼結体の圧縮試験、焼結温度400℃、450℃、500℃、550℃)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のマグネシウム・鉄合金の製造方法は、マグネシウム粉末と鉄粉末を混合する工程と、前記混合した粉末を機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程と、前記合金化した混合粉末を焼結する工程とを含むものである。

【0013】
前記マグネシウム粉末は、工業用、合成試薬用、農業用、食品用、医療用等いずれであってもよいが、製造する合金の使用目的により純度や含有不純物の観点から選択される。生体吸収性を有する医療用生体材料に使用する場合は、特に生体安全性を確保するため、医療用の純度99%以上のマグネシウムを選択することが好ましい。また粒子サイズは、機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程で処理しやすい50~200meshであることが好ましい。

【0014】
前記鉄粉末は、工業用、合成試薬用、医療用等いずれであってもよいが、製造する合金の使用目的により純度や含有不純物の観点から選択される。生体吸収性を有する医療用生体材料に使用する場合は、特に生体安全性を確保するため、医療材料用の純度99%以上の鉄を選択することが好ましい。また粒子サイズは、機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する工程で処理しやすい50~500meshであることが好ましい。

【0015】
前記マグネシウム粉末と前記鉄粉末は、作製する合金のモル比に対応するような重量比で混合される。重量比は、前記マグネシウム粉末がゼロを超える量から100質量%を下回る量であり、前記鉄粉末が粉末全量の合計100質量%を超えない量であれば理論的には合金が作製されることとなるが、材料加工性の観点から前記マグネシウム粉末の量が混合した粉末全量に対して10~90質量%であり、前記鉄粉末の量が粉末全量に対して10~90質量%であることが好ましく、生体吸収性や加工性の観点からは前記マグネシウム粉末の量が混合した粉末全量に対して30~90質量%であり、前記鉄粉末の量が粉末全量に対して10~70質量%であることがさらに好ましい。
また、前記マグネシウム粉末と前記鉄粉末に、製造する合金を使用する材料に通常添加するような金属粉末を微量添加してもよい。

【0016】
前記混合した粉末を機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する方法は、物理的な力により固体状態で合金にする方法であればよい。上述したとおり、マグネシウムと鉄の融点は大きく異なるため、溶融して鋳造する方法では合金を作製できないからである。
前記混合した粉末を機械的エネルギーを利用した固相反応により合金化する方法の例として、メカニカルアロイング法が挙げられる。メカニカルアロイング法は、複数の金属粉末をボールの入った容器に入れ、容器ごと回転させて激しくかき混ぜるものである。かき混ぜられた容器内の複数の金属粉末は、原子レベルでの固相反応により合金化する。
図1にメカニカルアロイング装置の外観、容器の写真、及び容器内の概念図を示す。

【0017】
メカニカルアロイング法で作製した合金粉末の粒子は、均質性を有することが必要である。均質である合金粉末を次の焼結工程に供することにより、均質なマグネシウム・鉄合金を製造することができるからである。そのため、該メカニカルアロイング法における合金化条件は、メカニカルアロイング後のマグネシウム・鉄合金粉末が150μm以下になるように設定される。
具体的には、回転速度250~650rpm、固相反応時間0.5~45時間、試料/ボールの重量比1/100~1/1等に設定される。容器内雰囲気をArガス等で置換してもよい。

【0018】
メカニカルアロイング後の粉末の形状や粒子サイズ及び合金化状態は、上述した固相反応条件の他、メカニカルアロイング装置の容器の形状や材質等にも依存する。そこで、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真等でメカニカルアロイング後の粉末の形状や粒子サイズを確認し、X線回折(XRD;X-ray Diffraction)装置等でメカニカルアロイング後の粉末の合金化状態を確認する。

【0019】
走査型電子顕微鏡の測定条件は、メカニカルアロイング後の粉末の粒子が観察できるように設定される。電子線の走査により得られた情報から画像を構築し、粉末の形状や粒子サイズを確認する。

【0020】
X線回折装置の測定条件は、X線の試料への入射角(θ)の2倍(2θ)に対するX線回折強度(任意目盛)を示すX線回折スペクトル(X線回折パターン)が得られるように設定される。メカニカルアロイング前にはマグネシウム単体、鉄単体の回折ピークが現れるが、メカニカルアロイング法によりマグネシウム・鉄粉末の合金化が進むと、回折ピークはブロードとなり消滅していく。このようなX線回折スペクトルの変化を利用し、メカニカルアロイング法による粉末の合金化状態を確認する。

【0021】
前記合金化した混合粉末を焼結する方法は、粉末冶金法、たとえば反応焼結法、常圧焼結法、加圧焼結法、再焼結法、プラズマを利用する焼結法等から目的によって選択される。

【0022】
加圧焼結法は、粉末試料を加圧しながら焼結する方法であり、試料を緻密化することができ、ホットプレス法、ガス圧焼結法、熱間静水圧焼結法等がある。ホットプレス(hot press)法は、一般に円筒形状の型に粉末試料を充填し、上下一対のパンチで圧縮する一軸加圧方式をとる加圧焼結法である。

【0023】
プラズマを利用する焼結法は、熱プラズマ焼結法、放電プラズマ焼結法等があり、目的によって選択される。

【0024】
放電プラズマ焼結法(SPS;Spark Plasma Sintering)は、機械的な加圧とパルス通電加熱によって試料を焼結する方法である。一般的には数千アンペアの平均電流のパルス電流を試料に通電させることで、試料は焼結される。パルス電流は粉末試料内の粉体粒子接触部に流れ、該接触部に発熱が集中し粉体粒子間のネック形成が促進されるため、低温かつ短時間で焼結可能な焼結法である。
図6に放電プラズマ焼結法に使用される装置の概要を示す。

【0025】
前記放電プラズマ焼結法で作製した焼結体、すなわち本発明におけるマグネシウム・鉄合金は、均質性を有すること、理論的密度に近いこと、材料の使用目的に合う硬さを有すること、焼結前後で微細構造に変化が少ないこと、材料の使用目的に合う機械的特性や加工性、延性を有すること等が必要である。そのため、該放電プラズマ焼結法にける焼結条件は、焼結後のマグネシウム・鉄合金(焼結体)が均質になり、かつ、理論密度に近く、材料の使用目的に合う硬さを有し、焼結前後で微細構造に変化が少なく、材料の使用目的に合う機械的特性や加工性を有するように設定される。
具体的には、加圧力10~800MPa、焼結温度到達後の保持時間0~20分、焼結温度200~600℃等に設定される。温度と加圧力プロセスの例を図8に示す。

【0026】
前記焼結体(合金)の均質性や粒子サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真等で確認する。走査型電子顕微鏡の測定条件は、焼結後の焼結体(合金)の粒子が観察できるように設定される。電子線の走査により得られた情報から画像を構築し、粉末の形状を確認する。

【0027】
前記焼結体(合金)の密度は、焼結体の形状のまま測定できる密度計で測定する。

【0028】
前記焼結体(合金)の硬さは、金属用の硬さ試験法等で測定する。金属用の硬さ試験法には、ブリネル硬さ(BHN)、ビッカース硬さ(VHN)、ロックウェル硬さ等があり、これらの硬さ試験法は、鋼球やダイヤモンドの角錐或いは円錐の圧子を焼結体(合金)の表面に押付けてその変形量を測定するものである。
ビッカース硬さ(VHN;Vickers Hardness)の試験方法は、JIS法(JIS Z 2244、JIS B 7725)に規定され、正四角錐のダイヤモンド圧子を,試料(試験片)の表面に押し込み,その試験力を解除した後,表面に残ったくぼみの対角線長さを測定するものである。

【0029】
前記焼結体(合金)の微細構造は、X線回折(XRD;X-ray Diffraction)装置等で確認する。X線回折装置の測定条件は、X線の試料への入射角(θ)の2倍(2θ)に対するX線回折強度(任意目盛)を示すX線回折スペクトル(X線回折パターン)が得られるように測定条件を設定する。焼結前後のマグネシウム・鉄合金のX線回折スペクトルの変化の有無から、微細構造の変化の有無を確認する。

【0030】
前記焼結体(合金)の機械的特性は、圧縮試験で降伏点を測定等して評価する。降伏点は、四角柱形状の試料を高さ方向に圧縮し、圧縮応力(MPa)に対する歪み(%)の測定を行うことによって得られる。一般的な焼結体(合金)や金属は、圧縮応力をゼロから増加させると歪みも大きくなるが、降伏点に達した後は歪みは大きくなっても応力が降下する現象が起きる。この現象を利用して、応力—歪み線図から降伏点を割り出す。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(粉末の混合)
マグネシウム粉末(株式会社レアメタリック製、純度99.9%、100mesh)と、鉄粉末(株式会社高純度化学研究所製、純度99.9%以上、~53μm)を、表1に記載した混合比に従い、混合した。
【実施例】
【0033】
【表1】
JP2016194095A_000002t.gif
【実施例】
【0034】
(メカニカルアロイング法による合金化)
混合した粉末約30gを、メカニカルアロイング装置(株式会社レッチェ製、遊星型ボールミルPM100型)にて合金化処理を行った。ボールミル容器及びボールはステンレス製のものを用い、混合した粉末試料/ボールの重量比を1/10とした。容器内をAr雰囲気に置換し、容器の回転速度は、250、350、650rpm、固相反応時間は45時間まで或いは合金化が認められるまでとした。
【実施例】
【0035】
図2は、実施例3の試料(Mg30Fe70粉末)をメカニカルアロイング法(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h)により合金化した、マグネシウム・鉄合金粉末の走査型電子顕微鏡写真である。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-4800形電界放出形走査電子顕微鏡)の測定条件は、加速電圧:10kV、エミッション電流:10μAである。
この走査型電子顕微鏡写真から、実施例3の混合粉末のメカニカルアロイング法による合金粉末は1-3μm程度の均質な形状であることが分かった。
図3~5は、実施例3の試料(Mg30Fe70粉末)をメカニカルアロイング法(回転速度はそれぞれ250rpm、350rpm、650rpm)により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末のX線回折スペクトル(X線回折パターン)の経時変化である。X線回折装置(株式会社リガク製、ビルドアップ型多機能X線回折装置、RINT-UltimaIIIsp)の測定条件は、管電圧:40kV、管電流:40mAである。
これらのX線回折スペクトルから、メカニカルアロイング前に観察された回折ピークは固相反応時間の経過とともにブロードになって消滅していくことが分かる。回折ピークの消滅は、混合粉末が合金化されていくことを示すため、実施例3の混合粉末は、回転速度350rpmであれば37.5時間、回転速度650rpmであれば17時間の固相反応時間で合金化されていることが分かった。
【実施例】
【0036】
(放電プラズマ焼結法による焼結)
走査型顕微鏡写真及びX線回折スペクトルの解析により合金化されていることが確認された、実施例1~3、比較例1及び2のマグネシウム・鉄合金粉末(回転速度350rpm、固相反応時間37.5時間メカニカルアロイング法で処理したもの)について、放電プラズマ焼結法により焼結を行った。
放電プラズマ焼結装置は、SPSシンテックス株式会社製SPS-3.20MK-IVを用いた。
図7は、放電プラズマ焼結法によるマグネシウム・鉄合金焼結体作製時の温度と加圧力プロセスである。本実施例及び比較例においては、加圧力を600MPa、保持時間を10分に設定し、焼結温度を400、450、500、550℃に振って、マグネシウム・鉄合金粉末の焼結を行った。
【実施例】
【0037】
図8は、放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の形状を示し、図9は、焼結体の外観を示す。
図10は、実施例3の試料について、メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末及び該合金粉末から放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の走査型電子顕微鏡写真を比較したものである(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h、Mg30Fe70粉末、焼結温度500℃)。焼結前後の走査型電子顕微鏡写真を比較すると、焼結前のマグネシウム・鉄合金粉末には存在した粒子の隙間は、焼結後のマグネシウム・鉄合金焼結体にはほぼなくなり、該焼結体は均質性を有していることが分かった。
図11は、実施例3の試料について、メカニカルアロイング法により合金化したマグネシウム・鉄合金粉末及び該合金粉末から放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体のX線回折スペクトルを比較したものである(回転速度350rpm、固相反応時間37.5h、Mg30Fe70粉末、焼結温度500℃)。焼結前後のX線回折スペクトルを比較すると、両者にほとんど差はなく、微細構造は保たれたまま焼結体を形成していることが分かった。
【実施例】
【0038】
表2に、放電プラズマ焼結法によるマグネシウム・鉄合金焼結体の密度測定結果を示す。本実施例及び比較例において、密度測定には島津製作所製の島津分析天びんAUW-D/AUW/AUX/AUYシリーズ用簡易比重測定キット(SMK-401)を用いた。
【実施例】
【0039】
【表2】
JP2016194095A_000003t.gif
【実施例】
【0040】
表2より、焼結温度を500℃にして焼結した焼結体の密度が理論密度に近い傾向が見られた。
【実施例】
【0041】
表3に、放電プラズマ焼結法によるマグネシウム・鉄合金焼結体の硬さ測定結果を示す。本実施例及び比較例において、硬さ測定には株式会社ミツトヨ製HM-200型微小硬さ試験機を用いた。
【実施例】
【0042】
【表3】
JP2016194095A_000004t.gif
【実施例】
【0043】
表3より、実施例1及び3では焼結温度を500℃にしたとき、実施例2では焼結温度を400℃にしたときに、焼結体の硬さがいちばん硬いことが分かった。
【実施例】
【0044】
図12は、実施例1の試料について放電プラズマ焼結法により作製したマグネシウム・鉄合金焼結体の機械的特性(Mg70Fe30粉末焼結体の圧縮試験、焼結温度400℃、450℃、500℃、550℃)を示したものである。圧縮試験は、幅2mm、厚み2mm、高さ4mmの四角柱形状の測定片を作製し、汎用機械式テスト機(島津製作所製、高温真空引張・圧縮試験機AG50VF)を用い、一軸加圧下で5×10-4-1の初期歪み速度に対応する一定のクロスヘッド速度で、圧縮強度と歪みとの関係を測定することで行った。
降伏点は、焼結温度400℃の焼結体では420MPa、焼結温度450℃の焼結体では380MPa、焼結温度500℃の焼結体では450MPa、焼結温度550℃の焼結体では240MPaであり、焼結温度500℃の焼結体の機械的特性すなわち加工性がいちばん優れていることが分かった。
【実施例】
【0045】
(ホットプレス法による焼結)
走査型顕微鏡写真及びX線回折スペクトルの解析により合金化されていることが確認された、実施例1のマグネシウム・鉄合金粉末(Mg70Fe30、回転速度350rpm、固相反応時間37.5時間メカニカルアロイング法で処理したもの)について、ホットプレス法により焼結を行った。
ホットプレス法の焼結条件は、焼結温度500℃、加圧力600MPa、保持時間10分とした。また、焼結体のサイズは直径15mm、高さ6mmとした。
【実施例】
【0046】
ホットプレス法により作製された焼結体は、走査型顕微鏡写真及びX線回折スペクトルの解析により緻密で均質なものであることが確認された。
焼結体の密度は島津製作所製の島津分析天びんAUW-D/AUW/AUX/AUYシリーズ用簡易比重測定キット(SMK-401)を用いて測定し、2.962g・cm-3であった。
焼結体の硬さは株式会社ミツトヨ製HM-200型微小硬さ試験機を用いて測定し、97.78VHNであった。
さらに圧縮試験は汎用機械式テスト機(島津製作所製、高温真空引張・圧縮試験機AG50VF)を用いて行い、降伏点は440MPaであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のマグネシウム・鉄合金の製造方法により製造された合金は、均質性を有し理論密度に近く硬いため、加工性が高い上に両金属の配合割合を調製することで延性等を含めて機械的特性を制御可能であり、複雑な形状の医療用生体材料への応用が可能となる。
【0048】
また、本発明のマグネシウム・鉄合金の製造方法は、粉末原料比を変えても、上記性質を有する合金を製造することができるものである。つまり、本発明により製造されたマグネシウム・鉄合金を医療用生体材料の原料とした場合、生体内での分解速度の制御が可能となり、埋入部位により変化する分解速度や治療内容により要求される分解速度に対応することが可能となる。
【0049】
生体吸収性を有するマグネシウム合金は、非常に魅力的な材料であるにもかかわらず研究開発が進んでいなかった分野である。本発明を利用すれば、新規医療用生体吸収性マグネシウム・鉄合金による、ステント、骨片固定用プレート、固定用ネジ、歯科用メンブレン等、各種医療機器に対応した合金設計が可能となり、さまざまな医療分野への応用が期待できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図12】
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