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明細書 :pH依存性蛍光化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-193897 (P2016-193897A)
公開日 平成28年11月17日(2016.11.17)
発明の名称または考案の名称 pH依存性蛍光化合物
国際特許分類 C07D 493/22        (2006.01)
C09B  11/28        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C07D 493/22 CSP
C09B 11/28 N
C09K 11/06
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2016-068416 (P2016-068416)
出願日 平成28年3月30日(2016.3.30)
優先権出願番号 2015070516
優先日 平成27年3月31日(2015.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】柴田 孝之
出願人 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4C071
Fターム 4C071AA04
4C071AA08
4C071BB03
4C071BB08
4C071CC14
4C071EE05
4C071FF17
4C071HH28
4C071JJ01
4C071LL04
4C071LL05
要約 【課題】特定のpH領域でのみ強い蛍光を発する化合物およびその前駆体化合物を提供すること。
【解決手段】式(I’):
JP2016193897A_000022t.gif
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基またはカルボキシル基を示す。)で表される化合物。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I’):
【化1】
JP2016193897A_000021t.gif
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基またはカルボキシル基を示す。)
で表される化合物。
【請求項2】
Rが水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rがアセチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
およびRがともに水素原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
がアミノ基であり、かつRが水素原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がカルボキシル基であり、かつRが水素原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、pH依存的に蛍光を発する化合物およびその前駆体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素は、感度が良く取り扱いが安全なことから、放射性物質を用いる従来のトレーサー技術に替わる手法として、基礎研究から臨床検査まで広く利用されている。これまでに数多くの蛍光色素が発見されてきたが、これらはその機能から「Always ON」型(特許文献1)と「ON/OFF Switch」型(非特許文献1)の2種に大別される。
Always ON型は、環境の変化に影響され難く常に一定の蛍光を常に発する色素で、核酸・タンパク質・抗体・低分子リガンドなどの標的分子を認識するプローブへ標識することで、標的分子の追跡を可能にする。一方、非特異的結合を起こしたプローブや標的に結合しない遊離型プローブも蛍光を発するため、バックグラウンドシグナルが高くなりやすく、大量投与が必要なin vivoでの使用は制限される。
ON/OFF Switch型は、標的分子の濃度勾配によって発光と消光が調節される色素で、代表的なものとしてHイオン(pH)やCa2+イオンなどのイオン濃度に感受性の色素が挙げられる。しかし、これらの色素は測定対象の濃度に閾値が存在し、閾値以上と以下で発光/消光が調節されるため、通常の生体成分の様に基準濃度範囲が存在する標的分子の測定はできない。β-ガラクトシダーゼをはじめとする酵素を対象とした色素もこの型に当てはまるが、蛍光の発光/消光が非可逆性であるため利用が制限される。
【0003】
また、最近の研究では、がん細胞は正常細胞と比較して酸性であることが分かってきている。これは、がん細胞の代謝が正常細胞より異常に速く、ATPの産生能の向上、Hポンプの発現量の増加と機能更新などに起因すると考えられている。すなわち、通常の細胞や血液のpHである7.4付近と、上半身の中心に位置し大容量を占める胃のpHである1.5~1.0付近で蛍光を与えず、がん細胞の弱酸性領域でのみ蛍光を発するという、極めて特異な性質を提供する蛍光色素が望まれている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-219258号公報
【0005】

【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,6085-6089
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、pH依存的に蛍光を発する化合物およびその前駆体化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のpH領域でのみ強い蛍光を発する化合物およびその前駆体化合物を発見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
[1]式(I’):
【0008】
【化1】
JP2016193897A_000003t.gif

【0009】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基またはカルボキシル基を示す。)
で表される化合物(以下、化合物(I’)と略記することがある。);
[2]Rが水素原子である、[1]に記載の化合物;
[3]Rがアセチルである、[1]に記載の化合物;
[4]RおよびRがともに水素原子である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物;
[5]Rがアミノ基であり、かつRが水素原子である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物;
[6]Rがカルボキシル基であり、かつRが水素原子である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
【0010】
また、本発明は、以下に関する。
[1A]式(I):
【0011】
【化2】
JP2016193897A_000004t.gif

【0012】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示す。)
で表される化合物(以下、化合物(I)と略記することがある。);
[2A]Rが水素原子である、[1A]に記載の化合物;
[3A]Rがアセチルである、[1A]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、測定対象の濃度が特定領域内にある場合のみ蛍光を発する、第3の型と言える蛍光化合物およびその前駆体化合物として有用である。測定対象はpH(Hイオン)であり、本発明の化合物を水に溶解させると、pH 14の強塩基性~pH 7の中性にかけて蛍光を発しないが、pHを6以下に下げると徐々に蛍光を発し、pH 4前後で最大の蛍光を与える(なお、アミノ基を導入した場合、最大蛍光強度を与えるpHは中性領域(6.5~7.0)にシフトする。)。pHを更に下げると蛍光は徐々に減少し、pHが2以下になると溶液は無蛍光となる。さらに、本発明の化合物は、弱酸性領域で活性化され、細胞や組織における弱酸性領域と中性領域とを、又は弱酸性領域と強酸性領域とを区別する技術に応用が可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られた化合物(I)(R=水素原子)の2μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0~pH 12.0までのpH 0.5刻みのデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)に315nmの励起光を照射し、発せられた蛍光をデジタルカメラで撮影した結果を示す。
【図2】実施例1で得られた化合物(I)(R=水素原子)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0およびpH 12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 3.0~pH 6.5のpH 0.1刻みのデータは50mMフタル酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)の、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を示す。
【図3】実施例1で得られた化合物(I)(R=水素原子)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpH 4.5での励起・蛍光スペクトルを示す。
【図4】実施例1で得られた化合物(I)(R=水素原子)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpHと蛍光強度とのグラフを示す。
【図5】実施例2で得られた化合物(I)(R=アセチル)の分子構造を示すORTEP図である。
【図6】実施例2で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いた細胞染色を蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。
【図7】実施例2で得られた化合物(I)(R=アセチル)、Hoechst 33342およびAcidifluor Orangeを用いた細胞の多重染色を共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。
【図8】実施例2で得られた化合物(I)(R=アセチル)およびAcidifluor Orangeを用いた細胞の二重染色を倒立型蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。
【図9】実施例3で得られた化合物(I’)(R=水素原子、R=アミノ基、R=水素原子)の塩酸塩の5μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)の、励起波長484nmおよび蛍光波長534nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を示す。
【図10】実施例4で得られた化合物(I’)(R=水素原子、R=カルボキシル基、R=水素原子)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)の、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の化合物は、式(I’):

【0016】
【化3】
JP2016193897A_000005t.gif

【0017】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基またはカルボキシル基を示す。)
で表される。
また、本発明の化合物は、式(I):

【0018】
【化4】
JP2016193897A_000006t.gif

【0019】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を示す。)
で表される。
Rで示される「アシル基」としては、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、3-メチルブタノイル、2-メチルブタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル)、C6-14アリール-カルボニル基(例、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル)、C7-16アラルキル-カルボニル基(例、フェニルアセチル、フェニルプロピオニル)などが挙げられ、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、3-メチルブタノイル、2-メチルブタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル)が好ましく、アセチルがより好ましい。
Rとしては、水素原子またはC1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、3-メチルブタノイル、2-メチルブタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル)が好ましく、水素原子またはアセチルがより好ましい。
およびRとしては、RおよびRがともに水素原子である態様、Rがアミノ基であり、かつRが水素原子である態様、およびRがカルボキシル基であり、かつRが水素原子である態様が好ましい。

【0020】
次に、本発明の化合物の製造方法について説明する。
本発明の化合物(I’)は、出発原料として化合物(1’)

【0021】
【化5】
JP2016193897A_000007t.gif

【0022】
(式中、RおよびRは上記で定義した通りである。)
を用い、以下で説明する本発明の化合物(I)の製造方法またはこれに準ずる方法と同様にして、もしくは実施例に記載の方法で製造することができる。

【0023】
なお、Rおよび/またはRがアミノ基である化合物(I’)は、アミノ基が当該分野で公知の保護基で保護された化合物(1’)を用い、得られたアミノ基が保護された化合物(I’)を自体公知の方法により脱保護することにより、あるいは、化合物(1’)の前駆体としてRおよび/またはRがニトロ基である化合物を用い、得られたRおよび/またはRがニトロ基である化合物(I’)を自体公知の方法により還元することにより、製造することもできる。

【0024】
また、本発明の化合物(I)は、以下のスキームに示す方法またはこれに準ずる方法もしくは実施例に記載の方法で製造することができる。

【0025】
【化6】
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【0026】
(工程1)
1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸)(1)を、必要に応じて反応に不活性な溶媒中、あるいは粉末の状態で加熱処理し、酸無水物(2)を得る工程である。
1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸)(1)は市販品にて入手でき、また、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することもできる。
該「溶媒」としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサンなどの炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ルチジン、キノリンなどの含窒素芳香族炭化水素類、無水酢酸などの酸無水物、および水などの溶媒またはこれらの混合溶媒などが好ましい。
反応温度は、溶媒の種類によって異なるが、通常、0~180℃、好ましくは140~150℃であり、反応時間は、通常、1~48時間、好ましくは6~24時間である。

【0027】
(工程2)
酸無水物(2)とレゾルシノール(3)とを酸存在下、必要に応じて反応に不活性な溶媒中、反応させ、化合物(I)(R=水素原子)を得る工程である。
レゾルシノール(3)の使用量は、酸無水物(2)に対し、通常2~8当量、好ましくは3~5当量である。
該「酸」としては、例えば、鉱酸類(塩酸、臭化水素酸、硫酸など)、カルボン酸類(酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)、ルイス酸(塩化アルミニウム、塩化スズ、臭化亜鉛など)などが用いられ、必要に応じ2種類以上を混合しても良い。
該「酸」の使用量は、酸無水物(2)に対し、通常4~800当量、好ましくは40~80当量であり、溶媒として用いることもできる。
該「溶媒」としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサンなどの炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ルチジン、キノリンなどの含窒素芳香族炭化水素類および水などの溶媒またはこれらの混合溶媒などが好ましい。
反応温度は、酸や溶媒の種類によって異なるが、通常、0~120℃、好ましくは80~100℃であり、反応時間は、通常、1~120時間、好ましくは24~72時間である。

【0028】
(工程3)
化合物(I)(R=水素原子)の水酸基を、必要に応じて反応に不活性な溶媒中、アシル化剤を用いてアシル化し、化合物(I)(R=アシル基)を得る工程である。
該「アシル化剤」としては、例えば、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物などが用いられる。
該「アシル化剤」の使用量は、化合物(I)(R=水素原子)に対し、通常4~800当量、好ましくは4~40当量であり、溶媒として用いることもできる。
該「溶媒」としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサンなどの炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ルチジン、キノリンなどの含窒素芳香族炭化水素類および水などの溶媒またはこれらの混合溶媒などが好ましい。
反応温度は、アシル化剤や溶媒の種類によって異なるが、通常、0~180℃、好ましくは20~140℃であり、反応時間は、通常、1~24時間、好ましくは1~3時間である。

【0029】
本発明の化合物(I’)および(I)(R=水素原子)は、弱酸性領域(pH 3.0~6.5)でのみ強い蛍光を発し、強酸性領域(pH 1.0~2.5)および中性~強塩基性領域(pH 7.0~14.0)では微弱な蛍光しか発しない。
また、本発明の化合物(I’)および(I)(R=アシル基)は、化合物(I’)および(I)(R=水素原子)の前駆体化合物であり、それ自体は蛍光を発せず、脱アシル化されて化合物(I’)および(I)(R=水素原子)に変換されることにより、上記のように弱酸性領域でのみ強い蛍光を発するようになる。

【0030】
本発明の化合物(I’)および(I)(R=水素原子)は、その水酸基をアシル化することによって、すなわち、化合物(I’)および(I)(R=アシル基)に変換することによって、脂溶性が向上し、細胞膜を透過して細胞内に取り込まれ易くなる。細胞内に取り込まれた化合物(I’)および(I)(R=アシル基)は、細胞質に存在する酵素(エステラーゼ)によって脱アシル化されて化合物(I’)および(I)(R=水素原子)に変換され、弱酸性領域で強い蛍光を発する。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
なお、各種測定には、以下の測定機器を用いた。
超伝導核磁気共鳴装置 Varian製 UNITYplus500
質量分析装置 JEOL製 JMS-700
高輝度X線単結晶構造解析装置 RIGAKU製 Varimax Saturn/1200S
紫外可視分光光度計 JASCO製 V-630BIO
分光蛍光光度計 JASCO製 FP-8200
倒立型蛍光顕微鏡 Leica製 DM IRB
共焦点レーザー顕微鏡 Carl Zeiss製 LSM710
【実施例】
【0032】
実施例1
(1)化合物(I)(R=水素原子)の合成
メロファン酸4.2gをテトラヒドロフラン100mLに溶解し、氷浴につけながら減圧下溶媒を留去した。得られた粉末を140℃にて24時間加熱した。減圧下室温に戻した後、レゾルシノール7.3gとメタンスルホン酸66mLを加え、80℃で3日間撹拌した。反応液を室温に戻した後、氷冷した水700mLに撹拌しながら徐々に加えた。析出した固体をろ取し、水で洗浄後、凍結乾燥して濃赤色粉末12.4gを得た。この粉末を少量のメタノールに懸濁させ、撹拌しながら加熱還流した。室温に戻して粉末をろ取した後、得られた粉末を更にメタノールで再結晶し、目的化合物7.2g(収率74%)を橙色粉末として得た。以下合成した化合物(I)(R=水素原子)の分析結果を示す。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.34 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.63 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 6.82 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 6.695 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 6.687 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 6.59 (dd, 2H, J = 2.4, 8.6 Hz), 6.57 (dd, 2H, J = 2.4, 8.6 Hz), 6.43 (d, 2H, J = 8.6 Hz); 13C-NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 167.3, 164.5, 160.0, 159.7, 152.0, 151.9, 149.7, 132.0, 128.8, 128.6, 127.0, 121.2, 112.9, 112.6, 108.6, 102.5, 102.3; FAB-HRMS (m/z) calcd for C34H19O10: 587.0973; found: 587.0981 [M+H]+
【実施例】
【0033】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I)の蛍光特性を評価した。
化合物(I)の2μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0~pH 12.0までのpH 0.5刻みのデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)に315nmの励起光を照射し、発せられた蛍光をデジタルカメラで撮影した。その結果を図1に示す。図1から、強酸性領域および中性~強塩基性領域では蛍光を発せず、弱酸性領域でのみ蛍光を発したことが分かる。
また、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0およびpH 12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 3.0~pH 6.5のpH 0.1刻みのデータは50mMフタル酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を図2に示す。図2から、最大蛍光強度はpH 4.2~4.5で得られたことが分かる。
また、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpH 4.5での励起・蛍光スペクトルを図3に示す。図3から、吸収極大は460nmおよび484nmであることが分かる。これらの吸収極大がArレーザーの励起光(458nmおよび488nm)にほぼ一致することから、化合物(I)は、レーザー蛍光顕微鏡を用いた細胞・組織の蛍光観察に最適であると考えられる。
さらに、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpHと蛍光強度とのグラフを図4に示す。図4から、pH 4.5~6.0の間で、pH変化と蛍光強度との間に良好な直線関係が得られたことが分かる。このことから、化合物(I)は、細胞内pHセンサーとして応用可能であると考えられる。
【実施例】
【0034】
実施例2
(1)化合物(I)(R=アセチル)の合成
化合物(I)(R=水素)1.17gと無水酢酸8mLの混合物を100℃で20時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、ジクロロメタン50mLと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLの混合液に激しく撹拌しながら注いだ。ガスの発生が消失した時点で分液ロートに移し、水層を除去した後、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル=195/5~95/5)にて精製した。目的物が含まれるフラクションを回収し、減圧下溶媒を少量まで留去し、酢酸エチルを加えて氷冷した。析出した粉末をろ取し、氷冷した酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して目的化合物1.14g(収率76%)を白色粉末として得た。以下合成した化合物(I)(R=アセチル)の分析結果を示す。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.48 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.32 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.31 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.24 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.99 (dd, 2H, J = 2.4, 8.7 Hz), 6.97 (dd, 2H, J = 2.4, 8.7 Hz), 6.79 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 2.29 (s, 6H), 2.28 (s, 6H); 13C-NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 168.7, 166.8, 164.3, 158.4, 152.4, 152.2, 151.0, 150.8, 149.0, 132.9, 129.0, 128.8, 127.7, 120.7, 118.8, 118.3, 115.0, 114.8, 110.7, 110.3, 82.8, 81.1, 20.9, 20.8; FAB-HRMS (m/z) calcd for C42H27O14: 755.1395; found: 755.1400 [M+H]+
【実施例】
【0035】
(2)分子構造
上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)の分子構造を、単結晶X線構造解析により決定した。化合物(I)(R=アセチル)・CHCOの結晶学的データ、回折X線強度測定データおよび精密構造解析データを表1~3に示す。
【実施例】
【0036】
【表1】
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【実施例】
【0037】
【表2】
JP2016193897A_000010t.gif
【実施例】
【0038】
【表3】
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【実施例】
【0039】
また、化合物(I)(R=アセチル)の分子構造を、図5のORTEP図に示す。図5から、2つのキサンテン骨格の結合位置がメタ位であることが分かる。
【実施例】
【0040】
(3)細胞染色
上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて細胞染色を行った。
細胞培養用ディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、89%(v/v)ダルベッコ改変イーグル培地と10%(v/v)ウシ胎児血清と1%(v/v)ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB混合溶液から構成される細胞培養用培地(以下、細胞培養液)2mL中にて、5%CO雰囲気下37℃で3~4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、5μMの化合物(I)(R=アセチル)を含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO雰囲気下37℃で24時間培養した後、倒立型蛍光顕微鏡でブルーフィルターを用いて観察した。
染色した細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を図6に示す。細胞膜を透過した化合物(I)(R=アセチル)は、細胞質に存在するエステラーゼによって脱アセチル化され、化合物(I)(R=水素原子)に変換される。pHが中性(~7.4)である細胞質中では蛍光が観察されず、酸性オルガネラであるリソソーム(pH 5前後)中でのみ、強い蛍光が観察された。
また、上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて細胞の多重染色を行った。
ガラスボトムディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、細胞培養液2mL中にて、5%CO雰囲気下37℃で3~4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、1μMの化合物(I)(R=アセチル)、1μMのHoechst 33342および1μMのAcidifluor Orangeを含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO雰囲気下37℃で24時間培養した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いてアルゴンレーザー(405nm、488nmおよび543nm)で励起して観察した。
細胞核を青色に染色するHoechst 33342(1μMジメチルスルホキシド溶液)、リソソームをオレンジ色に染色するAcidifluor Orange(1μM水溶液)および化合物(I)(R=アセチル)(1μMジメチルスルホキシド溶液)をHela細胞に添加して、37℃で24時間培養した後、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(波長405nm、488nmおよび543nm)で観察した。その結果を図7に示す。図7から、化合物(I)(R=アセチル)は、リソソーム中で強い蛍光を発し、細胞の多重染色に応用可能であることが分かる。
また、上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて強酸性条件下での細胞染色を行った。
ガラスボトムディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、細胞培養液2mL中にて、5%CO雰囲気下37℃で3~4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、25μMの化合物(I)(R=アセチル)および5μMのAcidifluor Orangeを含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO雰囲気下37℃で24時間培養した。倒立型蛍光顕微鏡でブルーフィルターおよびグリーンフィルターを用いて画像を取得した後、1mLの0.2M塩酸をガラスボトムディッシュに添加し、直ちにブルーフィルターおよびグリーンフィルターを用いて観察した。
その結果を図8に示す。図8から、化合物(I)(R=アセチル)は、強酸の影響でHeLa細胞がディッシュから剥離し始めているものの、細胞中のリソソーム由来の蛍光は維持されており、強酸性条件下でも細胞染色が可能であることが示された。一方、Acidifluor Orangeは、中性付近からpH 3付近まで蛍光強度が増加しpH 3以下で最大蛍光を保つという一般的な酸感受性色素としての性質を示すことから、強酸性条件下では細胞培養液に溶解した色素が発光し細胞が観察できない。
【実施例】
【0041】
実施例3
(1)化合物(I’)(R=水素原子、R=アミノ基、R=水素原子)の塩酸塩の合成
(A)1,4-ジメチル-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物(1)の合成:
【実施例】
【0042】
【化7】
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【実施例】
【0043】
2,5-ジメチルフラン(12.7g)のジエチルエーテル(13mL)溶液に、攪拌しながら無水マレイン酸(12.9g)を窒素雰囲気下で加えた。無水マレイン酸が完全に溶解した後、反応液をさらに3時間攪拌した。反応液を氷浴で冷却し、析出した沈殿物をろ取し、氷冷したジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥して、目的化合物1を白色~薄黄色の針状結晶(15.3g、収率66%)として得た。
【実施例】
【0044】
(B)3,6-ジメチルフタル酸無水物(2)の合成:
【実施例】
【0045】
【化8】
JP2016193897A_000013t.gif
【実施例】
【0046】
氷冷した濃硫酸(56.4ml)に、濃硫酸の温度が10℃を超えないように、化合物1(15.3g)を少量ずつ攪拌しながら溶解させた。化合物1を完全に添加し終えた後、反応液をさらに2時間氷冷下で攪拌した。反応液を300gの氷に注ぎ、析出した沈殿物をろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物2を薄黄色の粉末(7.7g、収率33%)として得た。
【実施例】
【0047】
(C)3,6-ジメチル-4-ニトロフタル酸無水物(3)の合成:
【実施例】
【0048】
【化9】
JP2016193897A_000014t.gif
【実施例】
【0049】
氷冷した化合物2(7.7g)の濃硫酸(40mL)溶液に、濃硫酸の温度が10℃を超えないように、発煙硝酸(7.4mL)を滴下した。反応液を150gの氷に注ぎ、析出した沈殿物をろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物3を薄黄色の粉末(8.6g、収率89%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 2.85 (s, 3H), 2.79 (s, 3H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C10H8NO5: 222.0397; found: 222.0402 [M+H]+
【実施例】
【0050】
(D)ニトロメロファン酸(4)の合成:
【実施例】
【0051】
【化10】
JP2016193897A_000015t.gif
【実施例】
【0052】
過マンガン酸カリウム(66.9g)の水(250mL)溶液を80℃に加温し、撹拌しながら化合物3を少量ずつ添加し、80℃にて反応を継続した。1日後、過マンガン酸カリウム(11.2g)を添加し、水を全量が400mLとなるまで追加し、80℃にて反応を継続した。1日後、さらに過マンガン酸カリウム(11.2g)を添加し、水を全量が400mLとなるまで追加し、80℃にて反応を継続した。反応開始から3日後、反応液を冷却し、メタノール(20mL)を添加して3時間撹拌した。析出した黒色沈殿をろ去し、ろ液に発泡が止まるまで濃塩酸を添加し、1時間加熱還流した。水を減圧下留去した後、凍結乾燥した。残渣を100mLの酢酸と共に加熱還流し、熱いうちに上清を注意深く分離した。この抽出操作を3回繰り返した。上清を合わせて減圧下溶媒を留去し、真空乾燥した後、残渣を50mLのテトラヒドロフランで2回抽出した。抽出液を合わせて減圧下溶媒を留去し、真空乾燥した。残渣にジクロロメタンを加え、懸濁液を室温で1日撹拌し、沈殿物をろ取し、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥して、目的化合物4を白色粉末(10.2g、収率48%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.46 (s)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C10H4NO10: 297.9841; found: 297.9839 [M-H]-
【実施例】
【0053】
(E)化合物6の合成:
【実施例】
【0054】
【化11】
JP2016193897A_000016t.gif
【実施例】
【0055】
メタンスルホン酸(26mL)に化合物4(3.0g)とレゾルシノール(4.4g)を加え、90℃にて2日間撹拌した。反応液を250mLの冷水に注ぎ、生じた沈殿をろ取し、冷水で洗浄し、凍結乾燥して、化合物5の粗生成物をオレンジ色粉末(1.74g)として得た。これを無水酢酸(20mL)と共に1日加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて2回精製し(1回目;ジクロロメタン/酢酸エチル=98/2→95/5、2回目;ジクロロメタン/酢酸エチル=98/2→96/4)、目的化合物6を薄黄色の粉末(1.71g、収率21%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.23 (s, 1H), 7.41 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.02 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.95 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.29 (s, 6H), 2.27 (s, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C42H26NO16: 800.1246; found: 800.1242 [M+H]+
【実施例】
【0056】
(F)化合物5の合成:
【実施例】
【0057】
【化12】
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【実施例】
【0058】
化合物6(568mg)のメタノール(14mL)懸濁液に1M水酸化ナトリウム水溶液(14mL)を添加し、50℃にて1日撹拌した。反応液のメタノール分画のみをエバポレーターにて留去し、残りの溶液に5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物5をオレンジ色粉末(440mg、収率98%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.19 (s, 2H), 10.18 (s, 2H), 9.03 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.69 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 6.67 (s, 2H), 6.57 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.49 (s, 4H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C34H18NO12: 632.0824; found: 632.0814 [M+H]+
【実施例】
【0059】
(G)化合物7の塩酸塩の合成:
【実施例】
【0060】
【化13】
JP2016193897A_000018t.gif
【実施例】
【0061】
硫化ナトリウム9水和物(2.0g)の水(30mL)溶液に化合物5(950mg)、水硫化ナトリウム(841mg)を順に添加し、全ての試薬が溶解するまで室温にて撹拌し、その後100℃にて1日撹拌した。水硫化ナトリウム(120mg)を追加し、100℃にて更に1日撹拌した。反応液に5M塩酸を添加し、3時間加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去し、凍結乾燥した。残渣に少量のメタノールを加え撹拌しながら氷冷し、不溶物をろ去し、更に不溶物を冷メタノールで洗浄した。ろ液を合わせ、減圧下溶媒を留去し、真空乾燥し、目的化合物7の塩酸塩を濃赤色粉末(1.0g、定量的)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.46 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.75 (bs, 2H), 6.69 (bs, 2H), 6.62 (bs, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C34H20NO10: 602.1082; found: 602.1092 [M+H]+
【実施例】
【0062】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I’)の蛍光特性を評価した。
化合物(I’)の塩酸塩の5μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長484nmおよび蛍光波長534nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を図9に示す。図9から、最大蛍光強度はpH 6.5~7.0で得られたことが分かる。
【実施例】
【0063】
実施例4
(1)化合物(I’)(R=水素原子、R=カルボキシル基、R=水素原子)の合成
(A)化合物2’の合成:
【実施例】
【0064】
【化14】
JP2016193897A_000019t.gif
【実施例】
【0065】
ベンゼンペンタカルボン酸(894mg)をテトラヒドロフランに懸濁させ、超音波にて粉末を粉砕した後に、減圧下溶媒を留去した。得られた粉末を140℃にて24時間加熱した。減圧下室温に戻した後、レゾルシノール(1.32g)とメタンスルホン酸(10mL)を加え、90℃で2日間撹拌した。反応液を室温に戻した後、氷冷した水(100mL)に撹拌しながら徐々に加えた。析出した固体をろ取し、水で洗浄後、凍結乾燥して濃赤色粉末(1.88g)を得た。これを無水酢酸(14mL)と共に1日加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて3回精製し(1回目および2回目;ジクロロメタン/メタノール=95/5→93/7→90/10、3回目;酢酸エチル/メタノール=100/0→95/5→90/10)、目的化合物2’を薄黄色粉末(1.6g、収率67%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.81 (s, 1H), 7.29 (s, 2H), 7.26 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.14 (s, 2H), 6.98 (d, J=8.3 Hz, 2H), 6.81 (d, J=8.3 Hz, 2H), 6.61 (d, J=8.3 Hz, 2H), 2.29 (s, 6H), 2.26 (s, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C43H27O16: 799.1294; found: 799.1302 [M+H]+
【実施例】
【0066】
(B)化合物1’の合成:
【実施例】
【0067】
【化15】
JP2016193897A_000020t.gif
【実施例】
【0068】
化合物2’(800mg)のメタノール(4mL)懸濁液に5M水酸化ナトリウム水溶液(4mL)を添加し、50℃にて1日撹拌した。反応液のメタノール分画のみをエバポレーターにて留去し、残りの溶液に5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し凍結乾燥した。この粉末を少量のメタノールに懸濁させ、撹拌しながら加熱還流した。室温に戻して粉末をろ取した後、得られた粉末を少量の5M水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し凍結乾燥して目的化合物1’を橙色粉末(518mg、収率79%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.18 (bs, 4H), 8.66 (s, 1H), 6.62 (bs, 6H), 6.49 (bs, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C35H19O12: 631.0871; found: 631.0891 [M+H]+
【実施例】
【0069】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I’)の蛍光特性を評価した。
化合物(I’)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を図10に示す。図10から、最大蛍光強度はpH 4.5で得られたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の化合物は、特定のpH領域でのみ強い蛍光を発する化合物およびその前駆体化合物として有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9