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明細書 :骨形成促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-190842 (P2016-190842A)
公開日 平成28年11月10日(2016.11.10)
発明の名称または考案の名称 骨形成促進剤
国際特許分類 A61K  31/198       (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI A61K 31/198
A61P 19/10
A61P 19/08
C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2016-067077 (P2016-067077)
出願日 平成28年3月30日(2016.3.30)
優先権出願番号 2015069222
優先日 平成27年3月30日(2015.3.30)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】窪木 拓男
【氏名】大野 充昭
【氏名】ファン タン ハイ
【氏名】ハラ サトシ エミリオ
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002206、【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C206
Fターム 4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR62
4B063QS25
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA96
4C206ZA97
要約 【課題】安全性が高く、骨形成を促進する効果に優れた骨形成促進剤を提供する。
【解決手段】トリプトファン若しくはその代謝産物である下記式(1)で示されるキヌレニン又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分として含有する骨形成促進剤である。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
トリプトファン若しくはその代謝産物である下記式(1)で示されるキヌレニン又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分として含有する骨形成促進剤。
【化1】
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発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴って、骨折、骨粗鬆症等の骨疾患が増加する傾向にあり、このような骨疾患に対しては、骨形成を促進させる医薬による治療が期待されている。骨形成の促進は、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を促進させる因子により達成されると考えられ、代表的なものとして、BMP-2(Bone Morphogenetic Protein-2)等の生理活性物質が知られている。しかしながら、BMP-2等の生理活性物質は生産コストが高く、また治療が必要な部位に局所投与するための手術が必要となるため、臨床応用への課題があった。
【0003】
一方、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、分化多能性を有することから、目的の細胞に分化誘導して再生医療に応用することが期待されている。特許文献1には、培地中に、アミノ酸として少なくとも必須アミノ酸であるスレオニン、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン及びヒスタミンを含み、かつメチオニン、ロイシン、システイン、チロシン及びアルギニンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミノ酸を含まない分化培地で、哺乳動物由来の多能性幹細胞を培養することを含む、多能性幹細胞を分化誘導する方法が記載されており、哺乳動物由来の多能性幹細胞が、ヒト又はマウス由来のES細胞又はiPS細胞であることが記載されている。これによれば、簡便な手段で、ES細胞やiPS細胞を効率よく分化誘導でき、未分化細胞の混入を軽減又は除去できるとされている。しかしながら、特許文献1には、骨芽細胞への分化を促進することについての記載はなく、安全性の高い骨形成促進剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2012/56997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、安全性が高く、骨形成を促進する効果に優れた骨形成促進剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、トリプトファン若しくはその代謝産物である下記式(1)で示されるキヌレニン又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分として含有する骨形成促進剤を提供することによって解決される。
【0007】
【化1】
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【発明の効果】
【0008】
本発明の骨形成促進剤は、安全性が高く、骨形成を促進する効果に優れている。したがって、骨折治療、骨粗鬆症治療等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一次スクリーニングの結果を示した図である。
【図2】二次スクリーニングの結果を示した図である。
【図3】実施例1において、FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(CD146)の結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図4】実施例1において、細胞遊走アッセイ及び細胞生存率の結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図5】実施例1において、骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化の結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図6】実施例2において、FACS解析及び定量性RT-PCRの結果を示した図である(D-トリプトファン)。
【図7】実施例3において、FACS解析及び定量性RT-PCRの結果を示した図である(D-トリプトファン、L-トリプトファン)。
【図8】実施例3において、細胞遊走アッセイ及び骨芽細胞分化の結果を示した図である(D-トリプトファン、L-トリプトファン)。
【図9】実施例4において、コロニー形成アッセイ及びFACS解析の結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図10】実施例4において、定量性RT-PCRの結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図11】実施例4において、骨芽細胞分化及び脂肪細胞分化の結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図12】実施例4において、骨再生量の評価結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図13】実施例4において、海綿骨量の評価結果を示した図である(L-トリプトファン)。
【図14】実施例5において、FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(NANOG)の結果を示した図である(L-キヌレニン)。
【図15】実施例5において、コロニー形成アッセイ、免疫染色(Ki-67)及び細胞遊走アッセイの結果を示した図である(L-キヌレニン)。
【図16】実施例5において、骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化の結果を示した図である(L-キヌレニン)。
【図17】実施例6において、骨再生量の評価結果を示した図である(L-キヌレニン)。
【図18】実施例6において、海綿骨量の評価結果を示した図である(L-キヌレニン)。
【図19】実施例7及び8において、骨再生量の評価結果を示した図である(L-トリプトファン、L-キヌレニン)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の骨形成促進剤は、その有効成分として、トリプトファン若しくはその代謝産物である下記式(1)で示されるキヌレニン又はそれらの薬学的に許容される塩を含有することを特徴とするものである。

【0011】
【化2】
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【0012】
後述する実施例からも分かるように、本発明の骨形成促進剤により、骨髄由来間葉系幹細胞の脂肪細胞分化が抑制される一方で、骨芽細胞分化や軟骨細胞分化が促進されており、また、骨欠損マウスにおける骨再生量及び海綿骨量が著しく増加していたことが本発明者らにより確認された。したがって、本発明の骨形成促進剤は、骨形成を促進する効果に優れていることが分かる。また、本発明の骨形成促進剤は、アミノ酸であるトリプトファン、その代謝産物である上記式(1)で示されるキヌレニン、又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とするものであるため、安全性の高いものであることが分かる。したがって、ヒトを含む哺乳類動物に対して本発明の骨形成促進剤を大量に投与することも可能となる。

【0013】
上記薬学的に許容される塩としては特に限定されないが、例えば、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩等の無機酸との塩;ギ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩等の無機酸との塩が好適である。

【0014】
本発明の骨形成促進剤は、医薬組成物として単独で投与する実施形態であってもよいし、薬理学的に許容される担体を含有する製剤とともに投与する実施態様であってもよい。投与方法としては、経口投与であってもよいし、腹腔内注射等の非経口投与であってもよい。前記担体としては、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液等の溶媒;デンプン、デキストリン、ゼラチン等の結合剤;殺菌剤;界面活性剤;pH調整剤;乳化剤;酸化防止剤;増粘剤等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて使用することも好適な実施態様である。また、当該製剤としては、注射剤、懸濁剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、フィルム剤、シロップ剤、外用剤、坐剤、徐放剤等が挙げられる。

【0015】
本発明の骨形成促進剤の投与量としては特に限定されず、ヒトを含む哺乳類動物の年齢、症状等に応じて適宜決定することができる。ヒト以外の哺乳類動物としては、マウス、ラット、イヌ、ウマ等が挙げられる。中でも経口投与又は非経口投与の場合、1日あたり5~1000mg/kg体重の量で投与されるように用いられる骨形成促進剤であることが本発明の好適な実施態様であり、1日あたり20~800mg/kg体重の量で投与されるように用いられる骨形成促進剤であることが本発明のより好適な実施態様である。例えば、成人の場合には、1日あたり250mg~50gの量で投与されるように用いられる骨形成促進剤であることが本発明の好適な実施態様であり、1日あたり1~40gの量で投与されるように用いられる骨形成促進剤であることが本発明のより好適な実施態様である。

【0016】
本発明の骨形成促進剤は、アミノ酸であるトリプトファン、その代謝産物である上記式(1)で示されるキヌレニン、又はそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とするものである。トリプトファンとしては、L-トリプトファンであってもD-トリプトファンであってもよいが、骨芽細胞分化をより促進する観点から、L-トリプトファンであることが好ましい。また、キヌレニンとしては、L-キヌレニンであってもD-キヌレニンであってもよいが、生体を構成しているのがL体のアミノ酸であるという観点から、L-キヌレニンであることが好ましい。

【0017】
後述する実施例からも分かるように、本発明の骨形成促進剤により、骨髄由来間葉系幹細胞の脂肪細胞分化が抑制される一方で、骨芽細胞分化や軟骨細胞分化が促進されていた。したがって、骨芽細胞分化促進剤であることが本発明の好適な実施態様であり、軟骨細胞分化促進剤であることも本発明の好適な実施態様である。また、本発明の骨形成促進剤により、骨欠損マウスにおける骨再生量及び海綿骨量が著しく増加していたことが本発明者らにより確認されている。したがって、本発明の骨形成促進剤は、高齢化に伴って発症する骨疾患の予防や治療に用いることができ、骨折治療又は骨粗鬆症治療に用いられる骨形成促進剤であることが本発明の好適な実施態様である。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0019】
(A)ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)の培養
Lonza社から購入したヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs;PT-2501)を、15%ウシ胎児血清(FBS;Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)、2mM L-グルタミン(Invitrogen)、100 units/ml ペニシリン(Sigma)及び100μg/ml ストレプトマイシン(Sigma)を含有するα-MEM(Gibco BRL)にて培養して本実施例で使用した。
【実施例】
【0020】
(B)基礎培地
基礎培地として、20 %ウシ胎児血清(FBS;Invitrogen)、抗生物質(100 units/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)、2mM グルタミン、0.1mM L-アスコルビン酸(Wako;013-12061)及び55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco;12571-063)を含有するα-MEM培地(Invitrogen)を用いた。
【実施例】
【0021】
(C)骨欠損マウスの作製と骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)の採取
5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でトリプトファン又はキヌレニンを腹腔内注射により投与し、投与開始から1週間後に、直径1 mmの骨欠損を作製した。骨欠損を作製してから2週間後に組織を回収し、X線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)にて解析を行った。また、投与開始から3週間後に、マウスの大腿骨骨髄から骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を採取した。
【実施例】
【0022】
(D)FACS解析
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を細胞剥離用溶液「Accutase」(Innovative Cell Technologies Inc.,San Diego,CA,USA)を用いて回収し、70μmのセルストレーナーを通して単一細胞にした。抗human/mouse SSEA-4抗体(Biosciences)に30分間反応させ、フローサイトメーター(AccuriTM C6, BD Biosciences)を用いてFACS解析を行った。
【実施例】
【0023】
(E)定量性RT-PCR
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)からTotal RNAを「RNA purification kit:PureLinkTM RNA Minit Kit」(Life Technologies,Gaithersburg,MD,USA)を用いて精製した。各遺伝子の発現量は、配列番号1~26で示されるプライマーを用いて、定量性RT-PCRキット「KAPA SYBR FAST Universal qPCR kit (Kapa Biosystems)」により定量した。内部標準遺伝子として、Ribosomal protein S29遺伝子を用いた。
(1)Ribosomal protein S29遺伝子定量用プライマー
sense:ACACTGGCGCACATATTGAGG(配列番号1)
anti-sense:TCTCGCTCTTGTCGTGTCTGTTC(配列番号2)
(2)Oct-4遺伝子定量用プライマー
sense:CCGAGTGTGGTTCTGTAAC(配列番号3)
anti-sense:GAAAGGGACCGAGGAGTA(配列番号4)
(3)Nanog遺伝子定量用プライマー
sense:TCTCCAACATCCTGAACCT(配列番号5)
anti-sense:GCGTCACACCATTGCTAT(配列番号6)
(4)ALP(alkaline phosphatase)遺伝子定量用プライマー
sense:GCACCGCCACCGCCTACC(配列番号7)
anti-sense:CCACAGATTTCCCAGCGTCCTTG(配列番号8)
(5)DSPP(dentinsialophosphoprotein)遺伝子定量用プライマー
sense:TGGAGCCACAAACAGAAGCAACAC(配列番号9)
anti-sense:TGGACAACAGCGACATCCTCATTG(配列番号10)
(6)OPN(osteopontin)遺伝子定量用プライマー
sense:ATGTGATTGATAGTCAGGAACTT(配列番号11)
anti-sense:GTCTACAACCAGCATATCTTCA(配列番号12)
(7)OCN(osteocalcin)遺伝子定量用プライマー
sense:CAGAGTCCAGCAAAGGTG(配列番号13)
anti-sense:AGCCATTGATACAGGTAGC(配列番号14)
(8)LPL(Lipoprotein lipase)遺伝子定量用プライマー
sense:GAAATGACAGGTAGCCACGGACTC(配列番号15)
anti-sense:CCGCCGCCGACCAAAGAAG(配列番号16)
(9)PPAR-γ(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma)遺伝子定量用プライマー
sense:GGAGGTCAGCGGACTCTGGATTC(配列番号17)
anti-sense:CTGTCGGTTTCAGAAATGCCTTGC(配列番号18)
(10)ADIPOQ(Adiponectin)遺伝子定量用プライマー
sense:TATACCGCTCAGCATTCA(配列番号19)
anti-sense:CCTTCACATCCTTCATATAGAC(配列番号20)
(11)Sox-9遺伝子定量用プライマー
sense:TGAAATCTGTTCTGGAATGTT(配列番号21)
anti-sense:ACTGCTGGTGTTCTGAGA(配列番号22)
(12)ACAN(Aggrecan)遺伝子定量用プライマー
sense:GGCATTTCAGCGGTTCCTTCTC(配列番号23)
anti-sense:CAGCAGTTGTCTCCTCTTCTAC(配列番号24)
(13)Col2(Collagen type2)遺伝子定量用プライマー
sense:TGGAGCAGCAAGAGCAAGGAGA(配列番号25)
anti-sense:CCGTGGACAGCAGGCGTAGG(配列番号26)
【実施例】
【0024】
(F)免疫染色
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を96 wellプレートにて播種し、トリプトファン又はキヌレニンにて刺激した。刺激してから2日後に細胞をPFA(Paraformaldehyde)にて固定し、抗CD146抗体(Abcam)、抗Nanog抗体(Abcam)、又は抗Ki-67抗体(Abcam)にて1時間反応後、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート抗マウス抗体(Invitrogen)にて染色した。核染色には、4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI;Invitrogen)を用いた。
【実施例】
【0025】
(G)骨芽細胞分化
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を10-8M デキサメタゾン(dexamethasone;Sigma)、β-グリセロフォスフェート(β-glycerophosphate;Sigma)を含有する基礎培地にて7、14、21日間それぞれ培養し、各遺伝子の発現量を定量性RT-PCR法にて解析した。また、アリザリンレッドにてカルシウム沈着を染色した。
【実施例】
【0026】
(H)軟骨細胞分化
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を10-7Mデキサメタゾン(dexamethasone;Sigma)、1% (100U/ml each)ペニシリン(Sigma)、1% (2mM)グルタミン(Sigma)、5 mg/ml リン酸L-アスコルビン酸(L-ascorbic acid phosphate)、1% ITS(ITS Premix Universal Culture Supplement,Corning)、100 μg/ml ピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate)、10 ng/ml TGF-b3 (R&D systems,Minneapolis,MN,USA)を含有するDMEM(high glucose, Invitrogen)培地にて、マイクロマス培養を行った。培養3週間後に細胞を回収して切片を作製し、サフラニンO染色を行った。また、各遺伝子の発現量を定量性RT-PCR法にて解析した。
【実施例】
【0027】
(I)脂肪細胞分化
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を1 μg/mlインシュリン(Sigma)、0.5 mM 1-メチル-3-イソブチルキサンチン(1-methyl-3-isobutylxanthine;Sigma)、60 μMインドメタシン(indomethacin;Sigma)を含有する基礎培地にて培養し、各遺伝子の発現量を定量性RT-PCR法にて解析した。また、オイルレッドOにて細胞内の脂肪滴を染色した。
【実施例】
【0028】
(J)ヒト骨髄液を用いたコロニー形成アッセイ
ヒト骨髄液から得られたヒト骨髄(hBM)細胞1x106個を6cm2培養皿に播種し、キヌレニンを用いて刺激し、基礎培地にて培養した。培養3週間後にトルイジンブルー染色を行い、50個以上細胞が存在するコロニーの数を計測した。
【実施例】
【0029】
(K)細胞遊走アッセイ(Migration assay)
Boyden chamber法(8 μm microporous membrane、BD Falcon(登録商標) HTS FluoroBlokTM inserts,BD Biosciences)を用い、細胞遊走アッセイを実施した。細胞播種24時間後に遊走した細胞をAlexa Fluor(登録商標)546ファロイジン色素(Invitrogen)にて染色し、その細胞数を計測した。
【実施例】
【0030】
(L)細胞生存率(Cell viability)
CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay kit(Promega,Madison,WI,USA)を用いて細胞生存率を評価した。具体的には、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)又は骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を96 wellプレートにて播種し、トリプトファン又はキヌレニンにて刺激し、15%ウシ胎児血清(FBS;Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)、2mM L-グルタミン(Invitrogen)、100 units/ml ペニシリン(Sigma)及び100 μg/ml ストレプトマイシン(Sigma)を含有するα-MEM(Gibco BRL)培地にて5%CO2存在下37℃で培養した。1時間後に490nmの吸光度を測定することにより細胞生存率(Cell viability)を評価した。
【実施例】
【0031】
(M)一次スクリーニング
20種類のアミノ酸(orphan ligand library,enzo life science)を用いて一次スクリーニングを実施した。具体的には、5x104 cells/well(24 well plates)の濃度にてヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を播種した。hBMSCsを播種した次の日に、20種類のアミノ酸(10μM)をそれぞれ用いて刺激し、刺激から2日後に幹細胞マーカー(SSEA-4)をフローサイトメトリー法により解析した(FACS解析)。その結果、トリプトファン、メチオニン、プロリン刺激により幹細胞マーカー(SSEA-4)の上昇が認められた。得られた結果を図1に示す。
【実施例】
【0032】
(N)二次スクリーニング
一次スクリーニングにより選択されたトリプトファン、メチオニン、プロリンを用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激し、Nanog遺伝子、Oct-4遺伝子、Sox-2遺伝子の発現量を定量性RT-PCR法により測定した。その結果、トリプトファンがNanog遺伝子、Oct-4遺伝子、Sox-2遺伝子の発現を最も促進していた。得られた結果を図2に示す。
【実施例】
【0033】
実施例1
[in vitroにおけるL-トリプトファンの効果]
(1)FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(CD146)
L-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(D)、(E)及び(F)に記載した方法により、FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(CD146)を行った。定量性RT-PCRにおいては、Nanog遺伝子、Sox-2遺伝子及びOct-4遺伝子の発現量を解析した。コントロールと比較して、L-トリプトファンにより発現量が著しく増加したことが確認された。得られた結果を図3に示す。
【実施例】
【0034】
(2)細胞遊走アッセイ(Migration assay)及び細胞生存率(Cell viability)
L-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(K)及び(L)に記載した方法により、細胞遊走アッセイ及び細胞生存率の評価を行った。得られた結果を図4に示す。
【実施例】
【0035】
(3)骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化
L-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(G)、(H)及び(I)に記載した方法により、骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化の確認を行った。骨芽細胞分化の確認では、OPN(osteopontin)遺伝子及びOCN(osteocalcin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。軟骨細胞分化の確認では、Col2(Collagen type2)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。脂肪細胞分化の確認では、PPAR-γ(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma)遺伝子、LPL(Lipoprotein lipase)遺伝子及びADIPOQ(Adiponectin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。得られた結果を図5に示す。L-トリプトファンにより骨芽細胞分化及び軟骨細胞分化が促進され、一方で、脂肪細胞分化が抑制されていることが分かる。
【実施例】
【0036】
実施例2
[in vitroにおけるD-トリプトファンの効果]
(1)FACS解析及び定量性RT-PCR
D-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 153-94-6)を用いて(10,50,100μM)、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(D)及び(E)に記載した方法により、FACS解析及び定量性RT-PCRを行った。定量性RT-PCRにおいては、Nanog遺伝子及びOct-4遺伝子の発現量を解析した。コントロールと比較して、D-トリプトファンにより発現量が著しく増加したことが確認された。得られた結果を図6に示す。
【実施例】
【0037】
実施例3
[in vitroにおけるD-トリプトファンとL-トリプトファンの効果の比較]
(1)FACS解析及び定量性RT-PCR
D-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 153-94-6)及びL-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(D)及び(E)に記載した方法により、FACS解析及び定量性RT-PCRを行った。定量性RT-PCRにおいては、Nanog遺伝子及びOct-4遺伝子の発現量を解析した。得られた結果を図7に示す。
【実施例】
【0038】
(2)細胞遊走アッセイ(Migration assay)
D-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 153-94-6)及びL-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(K)に記載した方法により、細胞遊走アッセイを行った。得られた結果を図8に示す。
【実施例】
【0039】
(3)骨芽細胞分化
D-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 153-94-6)及びL-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(G)に記載した方法により、骨芽細胞分化の確認を行った。骨芽細胞分化の確認では、OPN(osteopontin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。得られた結果を図8に示す。
【実施例】
【0040】
実施例4
[in vivoにおけるL-トリプトファンの効果]
(1)骨欠損マウスの作製と骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)の採取
5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でL-トリプトファン(Sigma-Aldrich,CAS number 73-22-3)を腹腔内注射により投与した。投与開始から1週間後に、直径1 mmの骨欠損を作製した。骨欠損を作製してから2週間後に組織を回収し、X線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)にて解析を行った。また、投与開始から3週間後に、マウスの大腿骨骨髄から骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を採取した。また、5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与する代わりに、1日あたり10 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与した以外は、上記と同様にして、マウスの大腿骨骨髄から骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を採取した。
【実施例】
【0041】
(2)コロニー形成アッセイ及びFACS解析
上記(1)で採取されたそれぞれの骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)を基礎培地にて培養し、培養3週間後にトルイジンブルー染色を行い、50個以上細胞が存在するコロニーの数を計測した。また、上記(D)に記載した方法により、FACS解析を行った。得られた結果を図9に示す。
【実施例】
【0042】
(3)定量性RT-PCR
上記(1)で採取された骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs;50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与)を基礎培地にて培養し、培養2週間後、上記(E)に記載した方法により、定量性RT-PCRを行った。定量性RT-PCRにおいては、Nanog遺伝子、Oct-4遺伝子及びSox-2遺伝子の発現量を解析した。コントロール(PBS)と比較して、L-トリプトファンにより発現量が著しく増加したことが確認された。得られた結果を図10に示す。
【実施例】
【0043】
(4)骨芽細胞分化及び脂肪細胞分化
上記(1)で採取された骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs;50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与)を基礎培地にて培養し、培養2週間後、上記(G)及び(I)に記載した方法により、骨芽細胞分化及び脂肪細胞分化の確認を行った。骨芽細胞分化の確認では、ALP(alkaline phosphatase)遺伝子、OPN(osteopontin)遺伝子及びOCN(osteocalcin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。脂肪細胞分化の確認では、PPAR-γ(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma)遺伝子及びLPL(Lipoprotein lipase)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。得られた結果を図11に示す。L-トリプトファンにより骨芽細胞分化が促進され、一方で、脂肪細胞分化はコントロール(PBS)と同程度であった。
【実施例】
【0044】
(5)骨再生量の評価
上記(1)の骨欠損マウス(50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与)の大腿骨における骨再生量をX線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)を用いて解析した。骨欠損を作製した直後、及びコントロール(PBS)と比較して、L-トリプトファンにより骨再生量が著しく増加していた。得られた結果を図12に示す。
【実施例】
【0045】
(6)海綿骨量の評価
上記(1)の骨欠損マウス(50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを投与)において、骨欠損手術を行っていない方の大腿骨における海綿骨量をX線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)を用いて解析した。コントロール(PBS)と比較して、L-トリプトファンにより海綿骨量が著しく増加していた。得られた結果を図13に示す。
【実施例】
【0046】
実施例5
[in vitroにおけるL-キヌレニンの効果]
(1)FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(NANOG)
L-キヌレニン硫酸塩(Sigma-Aldrich,CAS number 16055-80-4)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(D)、(E)及び(F)に記載した方法により、FACS解析、定量性RT-PCR及び免疫染色(NANOG)を行った。定量性RT-PCRにおいては、Nanog遺伝子、Sox-2遺伝子及びOct-4遺伝子の発現量を解析した。コントロールと比較して、L-キヌレニンにより発現量が著しく増加したことが確認された。得られた結果を図14に示す。
【実施例】
【0047】
(2)コロニー形成アッセイ
L-キヌレニン硫酸塩(Sigma-Aldrich,CAS number 16055-80-4)を用いて、上記(J)に記載した方法により、コロニー形成アッセイを行った。得られた結果を図15に示す。
【実施例】
【0048】
(3)免疫染色(Ki-67)及び細胞遊走アッセイ(Migration assay)
L-キヌレニン硫酸塩(Sigma-Aldrich,CAS number 16055-80-4)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(F)及び(K)に記載した方法により、免疫染色(Ki-67)及び細胞遊走アッセイを行った。得られた結果を図15に示す。
【実施例】
【0049】
(4)骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化
L-キヌレニン硫酸塩(Sigma-Aldrich,CAS number 16055-80-4)を用いて、2日間ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)を刺激した。上記(G)、(H)及び(I)に記載した方法により、骨芽細胞分化、軟骨細胞分化及び脂肪細胞分化の確認を行った。骨芽細胞分化の確認では、OPN(osteopontin)遺伝子及びOCN(osteocalcin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。軟骨細胞分化の確認では、Col2(Collagen type2)遺伝子、Sox-9遺伝子及びACAN(Aggrecan)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。脂肪細胞分化の確認では、PPAR-γ(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma)遺伝子、LPL(Lipoprotein lipase)遺伝子及びADIPOQ(Adiponectin)遺伝子の発現量を上記(E)に記載した定量性RT-PCR法にて解析した。得られた結果を図16に示す。L-キヌレニンにより骨芽細胞分化及び軟骨細胞分化が促進され、一方で、脂肪細胞分化が抑制されていることが分かる。
【実施例】
【0050】
実施例6
[in vivoにおけるL-キヌレニンの効果]
(1)骨欠損マウスの作製
5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でL-キヌレニン硫酸塩(Sigma-Aldrich,CAS number 16055-80-4)を腹腔内注射により投与した。投与開始から1週間後に、直径1 mmの骨欠損を作製した。骨欠損を作製してから2週間後に組織を回収し、X線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)にて解析を行った。
【実施例】
【0051】
(2)骨再生量の評価
上記(1)の骨欠損マウスの大腿骨における骨再生量をX線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)を用いて解析した。骨欠損を作製した直後、及びコントロール(PBS)と比較して、L-キヌレニンにより骨再生量が著しく増加していた。得られた結果を図17に示す。
【実施例】
【0052】
(3)海綿骨量の評価
上記(1)の骨欠損マウスにおいて、骨欠損手術を行っていない方の大腿骨における海綿骨量をX線Micro-CT(SkyScan 1174 compact micro-CT,SkyScan,Aartselaar,Belgium)を用いて解析した。コントロール(PBS)と比較して、L-キヌレニンにより海綿骨量が著しく増加していた。得られた結果を図18に示す。
【実施例】
【0053】
実施例7
[in vivoにおけるL-トリプトファンの効果]
実施例4において、5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でL-トリプトファンを腹腔内注射により投与する代わりに、経口投与により投与した以外は実施例4と同様にして骨欠損マウスを作製し、骨再生量の評価を行った。得られた結果を図19に示す。
【実施例】
【0054】
実施例8
[in vivoにおけるL-キヌレニンの効果]
実施例6において、5週齢のマウスに1日あたり50 mg/kgの用量でL-キヌレニンを腹腔内注射により投与する代わりに、経口投与により投与した以外は実施例6と同様にして骨欠損マウスを作製し、骨再生量の評価を行った。得られた結果を図19に示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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