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明細書 :波力発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5695991号 (P5695991)
公開番号 特開2013-019270 (P2013-019270A)
登録日 平成27年2月13日(2015.2.13)
発行日 平成27年4月8日(2015.4.8)
公開日 平成25年1月31日(2013.1.31)
発明の名称または考案の名称 波力発電装置
国際特許分類 F03B  13/14        (2006.01)
B63B  39/02        (2006.01)
F16F  15/02        (2006.01)
FI F03B 13/14
B63B 39/02
F16F 15/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2011-150694 (P2011-150694)
出願日 平成23年7月7日(2011.7.7)
審査請求日 平成25年12月5日(2013.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】西村 功
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】佐藤 秀之
参考文献・文献 特開2002-68079(JP,A)
特開平9-277984(JP,A)
特開平6-135379(JP,A)
特開昭58-221038(JP,A)
特開平10-267076(JP,A)
特開平10-184780(JP,A)
特開2004-144299(JP,A)
調査した分野 F03B 13/14
B63B 39/02
F16F 15/02
特許請求の範囲 【請求項1】
波面に浮ぶ浮動体に設置され、前記浮動体に加わる波力エネルギーを吸収し、吸収した
波力エネルギーを発電エネルギーに変換する波力発電装置であって、
前記波力エネルギーを駆動重錘体の揺動運動に変換する波力エネルギー吸収手段と、
前記浮動体の揺動方向の加速度を検出する加速度検出手段と、
該加速度検出手段によって検出された加速度に基づくフィードバック制御によって、前
記浮動体の揺れを抑制する方向に前記駆動重錘体を駆動させる駆動制御手段と、
前記駆動重錘体の揺動運動を前記発電エネルギーに変換する減衰手段とを具備し、
前記減衰手段の減衰係数は、前記浮動体と前記駆動重錘体との質量比及び前記駆動制御
手段による前記加速度のフィードバックゲインに基づいて、前記駆動制御手段によって前
記駆動重錘体を駆動する制御エネルギーよりも、前記発電エネルギーが大きくなるように
設定され
【数1】
JP0005695991B2_000021t.gif
におけるCd又は、gv
【数14】
JP0005695991B2_000022t.gif
【数2】
JP0005695991B2_000023t.gif
により規定されることを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記駆動重錘体の駆動に必要な制御エネルギーが、前記発電エネルギーの1/3以下と
なるように前記駆動手段を制御する制御手段を具備することを特徴とする請求項1記載の
波力発電装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記浮動体の加速度と、前記駆動重錘体と前記浮動体との相対速度と
を用いた制御則に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項2記載の波力
発電装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記浮動体と前記駆動重錘体との相対加速度及び相対変位を用いた制
御則に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項2記載の波力発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、能動型動吸振器によって波力エネルギーを吸収し、吸収した波力エネルギーによって発電を行う波力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波力エネルギーによって振動する振動体を設け、振動体の移動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、船舶における振幅発生部に、弾性支持装置により共振するように支持された振動体と、該振動体の揺動運動を電気エネルギーに変換する発電機とからなる発電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-132112号公報
【特許文献2】特開平08-184214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、船舶における振幅発生部に弾性支持装置で支持された振動体を設けただけでは、船舶に作用する波力エネルギーを振動体の揺動運動として吸収する効率が悪く、十分な電力を確保することができないという問題点があった。
【0005】
なお、強風時及び地震時の制振対策として用いられるハイブリッド型の制振装置としては、可動質量を加力することで、強風や地震による外乱エネルギーの吸収効率を高め、可動質量の振動を減衰する減衰手段により可動質量の振動を電気エネルギーに変換する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、特許文献2では、減衰手段として通常用いられるオイルダンパーや摩擦を利用した減衰手段の代換えとして電動機を使用している。しかし、減衰手段である電動機で発電された電気エネルギーを可動質量を加力する制御エネルギーとして回生する点については言及されているが、可動質量を加力する制御エネルギーと減衰手段によって得られる発電エネルギーとの間歇については全く言及されておらず、発電装置として用いることができない。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動重錘体を駆動することで効率良く吸収した波力エネルギーによって発電を行うことで、駆動重錘体を駆動する制御エネルギーよりも大きい発電エネルギーを得ることができる波力発電装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る波力発電装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
請求項1記載の波力発電装置は、波面に浮ぶ浮動体に設置され、前記浮動体に加わる波力エネルギーを吸収し、吸収した
波力エネルギーを発電エネルギーに変換する波力発電装置であって、前記波力エネルギーを駆動重錘体の揺動運動に変換する波力エネルギー吸収手段と、前記浮動体の揺動方向の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段によって検出された加速度に基づくフィードバック制御によって、前記浮動体の揺れを抑制する方向に前記駆動重錘体を駆動させる駆動制御手段と、前記駆動重錘体の揺動運動を前記発電エネルギーに変換する減衰手段とを具備し、前記減衰手段の減衰係数は、前記浮動体と前記駆動重錘体との質量比及び前記駆動制手段による前記加速度のフィードバックゲインに基づいて、前記駆動制御手段によって前記駆動重錘体を駆動する制御エネルギーよりも、前記発電エネルギーが大きくなるように設定され
【数1】
JP0005695991B2_000002t.gif
におけるCd又は、gv
【数14】
JP0005695991B2_000003t.gif
【数2】
JP0005695991B2_000004t.gif
により規定されることを特徴とする。
さらに、本発明に係る波力発電装置は、前記駆動重錘体の駆動に必要な制御エネルギーが、前記発電エネルギーの1/3以下となるように前記駆動手段を制御する制御手段を具備することを特徴とする。
さらに、本発明に係る波力発電装置は、前記制御手段は、前記浮動体の加速度と、前記駆動重錘体と前記浮動体との相対速度とを用いた制御則に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする。
さらに、本発明に係る波力発電装置は、前記制御手段は、前記浮動体と前記駆動重錘体との相対加速度及び相対変位を用いた制御則に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の波力発電装置は、波力エネルギーを駆動重錘体の揺動運動に変換する波力エネルギー吸収手段と、浮動体の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出手段によって検出された加速度に基づくフィードバック制御によって、浮動体の揺れを抑制する方向に駆動重錘体を駆動させる駆動制御手段と、駆動重錘体の揺動運動を発電エネルギーに変換する減衰手段とを具備し、減衰手段の減衰係数を、浮動体と駆動重錘体との質量比及び駆動制御手段による加速度のフィードバックゲインに基づいて、駆動制御手段によって駆動重錘体を駆動する制御エネルギーが理論的には不必要となるように、駆動重錘体を駆動することで効率良く吸収した波力エネルギーによって発電を行うことで、駆動重錘体を駆動する制御エネルギーよりも大きい発電エネルギーを得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る波力発電装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す駆動系の構成を示す三面図である。
【図3】本発明に係る波力発電装置の実施の形態の力学モデルを説明するための説明図である。
【図4】本発明に係る波力発電装置の実施の形態における制御エネルギー量、発電エネルギー量及び入力エネルギー量の比較例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施の形態の波力発電装置10は、図1を参照すると、波面に浮ぶ船舶等の浮動体1に設置され、浮動体1に加わる波力エネルギーを吸収し、吸収した波力エネルギーによって発電を行う。波力発電装置10は、駆動重錘体2と、モータ11と、加速度センサ12と、速度センサ13と、制御部14と、発電機15と、充電器16と、蓄電池17と、インバータ18とを備え、駆動重錘体2と、モータ11と、発電機15とで駆動系20を構成している。

【0012】
駆動重錘体2は、浮動体1の質量に対して1/200~1/50程度の質量を有する錘であり、図2を参照すると、2本のリニアガイドレール11aに沿って矢印Xで示す方向に移動可能に設けられている。なお、図2(a)は、本実施の形態の波力発電装置10を上方から見た上面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す矢印Bから見た正面図であり、図2(c)は、図2(a)に示す矢印Cから見た側面図である。駆動重錘体2の移動方向(矢印Xで示す方向)は、波力によって浮動体1が揺れる方向に配置され、浮動体1が船舶の場合には、船幅方向(ロール方向)や船首尾方向(ピッチ方向)に配置すると良い。

【0013】
また、駆動重錘体2の側面には、駆動重錘体2の移動を規制し、定常状態に復元させる復元材としての4本のパッシブ型バネ材3が取り付けられている。パッシブ型バネ材3としては、例えば、積層ゴムを用いることができる。これにより、浮動体1に加わる波力エネルギーは、駆動重錘体2の揺動運動として吸収されることになり、駆動重錘体2及びパッシブ型バネ材3が運動エネルギーとして波力エネルギーを吸収する波力エネルギー吸収手段として、パッシブ型バネ材3がひずみエネルギーとして波力エネルギーを吸収する波力エネルギー吸収手段としてそれぞれ機能する。駆動重錘体2はマス(質量)であり、パッシブ型バネ材3は所謂ダンパーである。

【0014】
さらに、駆動重錘体2の下面側には、一対のネジ軸10aが駆動重錘体2の移動方向(矢印Xで示す方向)に回転可能に配置され、一対のネジ軸10aには、それぞれ駆動重錘体2の下面に取り付けられたナット部10bが環挿されている。ねじ軸10a及びナット部10bは、ボールねじを構成しており、駆動重錘体2の揺動運動がねじ軸10aの回転運動に効率良く変換される。従って、ねじ軸10a及びナット部10bは、駆動重錘体2の揺動運動をねじ軸10aの回転運動に変換する変換手段として機能することになる。

【0015】
さらに、駆動重錘体2の下面には、隣接するS磁極とN磁極とで構成される1対の磁極が、リニアガイドレール11aに沿って、複数対、直線状に配設されている可動子11bが取り付けられている。可動子11bとリニアガイドレール11a(固定子として機能)とでモータ11となるリニアモータを構成している。リニアガイドレール11aには、位相が異なる電流が印加される電磁コイルが並置され、可動子11bは、リニアガイドレール11aの電磁コイルに対向している。これにより、リニアガイドレール11aの電磁コイルを制御部14で制御することで、駆動重錘体2がリニアガイドレール11aに対して平行に移動させることができる。従って、リニアガイドレール11a及び可動子11bからなるモータ11は、駆動重錘体2を駆動する駆動手段として機能することになる。

【0016】
加速度センサ12は、浮動体1の加速度を検出する加速度検出手段であり、速度センサ13は、駆動重錘体2の速度を検出する速度検出手段である。

【0017】
制御部14は、加速度センサ12によって検出された浮動体1の加速度と、速度センサ13によって検出された駆動重錘体2の速度とに基づいて、モータ11を制御することで、波力による浮動体1の揺れを抑制する方向に駆動重錘体2を移動させる。

【0018】
発電機15は、ねじ軸10aの回転運動を電気エネルギー(電力)に変換するエネルギー変換手段であり、変換した電気エネルギーを充電器16に出力する。これにより、発電機15は、駆動重錘体2の運動エネルギーを消費することになるため、駆動重錘体2の揺動運動を減衰させるパッシブ減衰手段として機能する。

【0019】
充電器16は、発電機15に接続され、発電機15から入力される電気エネルギーを所定のレベルの直流電圧に変換する。また、充電器16は、蓄電池17に接続され、変換した直流電圧を蓄電池17に印加して、蓄電池17を充電する。

【0020】
蓄電池17は、コンデンサ、電気二重層コンデンサ、二次電池等の電力を蓄えることができる蓄電手段であり、充電器16によって充電され、蓄えた電力をインバータ18に供給する。

【0021】
なお、本実施の形態では、モータ11としてリニアガイドレール11a及び可動子11bからなるリニアモータを採用したが、モータの回転運動をボールねじや送りネジ等で直線運動に変換して駆動重錘体2を駆動するようにしても良い。また、本実施の形態の発電機15は、ねじ軸10aの回転運動を電気エネルギーに変換するように構成したが、駆動重錘体2の揺動運動を電気エネルギーに変換できれば発電機15の種類には限定はなく、例えば、駆動重錘体2の揺動運動を直接電気エネルギーに変換するリニア発電機を採用するようにしても良い。

【0022】
インバータ18は、蓄電池17の電力、すなわち直流電圧を所定の周波数及び電圧レベルの交流電圧に変換して、変換した交流電圧を制御部14や図示しない他の電気機器に出力する。

【0023】
次に、図3に示す波力発電装置10の力学モデルに基づき、制御方法について詳細に説明する。
図3において、mは浮動体1の重量、mは駆動重錘体2の質量、xは浮動体1の変位、yは浮動体1に対する駆動重錘体2の相対変位、cdは発電機15によって与えられる減衰係数(発電量)、u(t)はモータ11による制御力、kはパッシブ型バネ材3のバネ定数をそれぞれ表す。波力発電装置10は、浮動体1の変位を駆動重錘体2の駆動によって吸収するため、図3(a)に示すような能動型動吸振器の力学モデルとして表すことができ、モータ11による制御力:u(t)は、下式〔数1〕で表される。

【0024】
【数1】
JP0005695991B2_000005t.gif

【0025】
波力発電装置10では、モータ11によって動重錘体2を駆動することで波力エネルギーの吸収効率を上げる。これにより、振動制御効果が上がり、主振動系、すなわち浮動体1の減衰効果が高まり、波力エネルギーを効率よく取り込むことができ、減衰力の係数:g、周期の微調整の係数:gの最適パラメータは、下式〔数2〕で表される。

【0026】
【数2】
JP0005695991B2_000006t.gif

【0027】
このように、動重錘体2を駆動することで波力エネルギーの吸収効率を高めることができるが、動重錘体2を駆動するための制御エネルギーが余分に必要であり、発電機15によって得られる発電エネルギーより制御エネルギーが大きい場合には、波力発電装置10として機能しない。そこで、モータ11による制御力:u(t)と、発電機15による発電量:Cを分離して、最も発電エネルギーが大きくなるようにCを調節する。

【0028】
図3(a)に示す力学モデルの瞬間的なパワーの釣り合い式は、〔数3〕で表される。

【0029】
【数3】
JP0005695991B2_000007t.gif

【0030】
〔数3〕を時刻ゼロ~時刻Tで積分すると、〔数4〕で表されるエネルギーの釣り合い式が得られる。

【0031】
【数4】
JP0005695991B2_000008t.gif

【0032】
また、時刻Tを無限大とすると、〔数4〕に示すエネルギーの釣り合い式は、時間の経過と共に、波力エネルギーは、制御エネルギーとして消費される部分と、発電エネルギーとして蓄積される部分に分けられ、〔数5〕で表される。

【0033】
【数5】
JP0005695991B2_000009t.gif

【0034】
ここで、〔数5〕の左辺第1項は発電エネルギー、左辺第2項は制御エネルギー、右辺は波力エネルギーを表している。また、入力される波力エネルギーは一定なので、制御エネルギーが大きいと発電エネルギーは減ってしまう。従って、一番良い制御状態は、制御エネルギーが時間の経過とともにゼロに収束する場合であり、それは、以下の〔数6〕が満足されるときである。

【0035】
【数6】
JP0005695991B2_000010t.gif

【0036】
従って、もしも、どのような波〔f(t)の具体的な値〕が打ち寄せるのか事前に全てわかっていたとすると、最適制御則が決まっているので、〔数6〕が満足できるようにC(発電量)を決定しておけば良い。しかし、事前に波を予測できないので、これは実現することができない。そこで、波力を定常不規則外乱と考え、確率論的にアンサンブル平均を取ることによって、〔数6〕に対応する〔数7〕を評価することが可能となる。

【0037】
【数7】
JP0005695991B2_000011t.gif

【0038】
まず、非定常不規則外乱を定常不規則外乱に置き換え、確率論的に最適な発電量Cを求める。如何なるスペクトルを持つ定常不規則外乱に対しても、成り立つ発電量Cの最適値は、ホワイトノイズに対しても最適値にならなければならない。これは、必要条件である。〔数7〕の右辺の期待値を計算すると制御パワーを平均値の意味でゼロにする最適発電量Cが〔数8〕に示すように求まる。

【0039】
【数8】
JP0005695991B2_000012t.gif

【0040】
〔数8〕は、ホワイトノイズに対して制御パワー応答をアンサンブル平均の意味で零とする解析解であり、ホワイトノイズに対する最適発電量は、必要条件である。もしも、如何なる定常不規則外乱に対しても、パワー応答の期待値がアンサンブル平均の意味でゼロとなるならば、その最適発電量の解は十分条件になる。

【0041】
〔数8〕が成立すると仮定すれば、変位応答及び制御力の外力に対する伝達関数は、それぞれ〔数9〕、〔数10〕となる。

【0042】
【数9】
JP0005695991B2_000013t.gif

【0043】
【数10】
JP0005695991B2_000014t.gif

【0044】
従って、制御パワー応答の期待値を計算すると〔数11〕となり、波力のスペクトルと無関係に制御パワー応答はゼロとなる。すなわち、〔数8〕は定常不規則外乱下における制御パワー応答を、波力のスペクトルと無関係に、ゼロとするための必要十分条件であることが証明できる。

【0045】
【数11】
JP0005695991B2_000015t.gif

【0046】
また、図3(a)に示すような能動型動吸振器の力学モデルの制御力応答は〔数12〕を満足する。

【0047】
【数12】
JP0005695991B2_000016t.gif

【0048】
このとき、外乱が定常不規則過程とすれば、制御力応答の二乗平均期待値は〔数13〕となる。

【0049】
【数13】
JP0005695991B2_000017t.gif

【0050】
〔数13〕の制御力応答の2乗平均値を最小化するパッシブ減衰の期待値を計算すると、波力がいかなるスペクトルの場合にも、〔数8〕に示す最適発電量Cは、制御パワーをゼロとする値に等しい。なお、〔数13〕の右辺は、バネ定数kと減衰係数Cを変数とする2次関数と考えることができる。従って、〔数13〕を最小とする機械的なバネ定数kと減衰係数Cは、2次関数の最小値問題として求めることができる。

【0051】
結果として減衰係数Cの最適値は制御エネルギーを最適とする値に等しく、〔数14〕で与えられる。

【0052】
【数14】
JP0005695991B2_000018t.gif

【0053】
また、バネ定数kの最適値は〔数15〕で与えられる。

【0054】
【数15】
JP0005695991B2_000019t.gif

【0055】
このように、確率論的には、波力が如何なるスペクトルを有する定常不規則外乱であっても、アンサンブル平均の意味で制御エネルギーを最小化できる答えが存在する。また、〔数15〕からもわかるように、振動数微調整用のgは比較的小さいので、図3に示す実施例では、この部分を省略した。たとえこの制御力を省略しても、〔数14〕を満足するように制御を行えば、制御エネルギーは時間の経過とともにゼロに収束する。従って、駆動重錘体2の駆動制御に、浮動体1と駆動重錘体2との相対変位に比例した制御力を含めなくても、実質的には制御効果に影響が少なく、制御エネルギーの削減にも影響がほとんどない。
以上の考察の後、非定常不規則外乱に対して時間の経過と共に、必要制御エネルギーがゼロに収束する値は存在するか否かを数値解析により検証した。

【0056】
解析モデルのパラメータを決定し、最適発電量Cを〔数8〕を計算し、〔数5〕を用いて単位質量当たりの波力エネルギー応答(Total Input Energy)、制御エネルギー吸収応答(Control Energy)、発電エネルギー吸収応答(Damping Energy)をそれぞれ求めた。その結果、必ず制御エネルギー応答が時間の経過とともにゼロに収束することが示された。また、この結果は、運動方程式に代入した後に、エネルギーの釣り合い式を検討すると証明することができる。
信頼のできる波力外力のデータが存在しないので、非定常性の強い地震動(エルセントロ地震波、ピーク加速度100cm/sec2)を用い、各部の応答計算を行った結果を図4に示す。図4を参照すると判るように時間の経過と共に制御エネルギーはゼロに収まる。しかし、途中経過を見ると、制御エネルギーは外乱の非定常性によっては、必ずしもゼロではない。そこで、制御エネルギーが発電エネルギーの1/3を超えることがない程度に制御ゲインgを設定すれば、常に安定した発電を行うことが可能である。なお、図4中、Input Energyは地震力による入力エネルギー量であり、Control Energyは制御装置によって装置に加えられた制御エネルギー量であり、Damping Energyは発電エネルギー量である。

【0057】
このように本実施の形態によれば、駆動重錘体2を制御部14によって制御し、時間の経過と共に必要とする制御エネルギーをゼロに収束させることで、波力からの効率的なエネルギー回収を可能にしている。これにより、駆動重錘体2を制御することなく発電を行った場合得られる単位時間当たりの発電エネルギーよりも大きなエネルギーを取り出すことができる。

【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、浮動体1の加速度に基づくフィードバック制御によって、浮動体1の揺れを抑制する方向に駆動重錘体2を駆動させる制御部14と、駆動重錘体2の揺動運動を発電エネルギーに変換する発電機15とを具備し、発電機15の減衰係数を、浮動体1と駆動重錘体2との質量比及び制御部14による加速度のフィードバックゲインとに基づいて、制御部14によって駆動重錘体2を駆動する制御エネルギーよりも、発電エネルギーが大きくなるように設定することにより、駆動重錘体2を駆動することで効率良く吸収した波力エネルギーによって発電を行うことで、駆動重錘体1を駆動する制御エネルギーよりも大きい発電エネルギーを得ることができるという効果を奏する。

【0059】
なお、加速度フィードバックによる波力発電装置10の制御について、以上のとおりであるが、全く同じ制御効果は別の制御則を用いることによっても実現できる。すなわち、〔数11〕に着目すると、全ての項に「浮動体1に対する駆動重錘体2の相対速度」が含まれていることが分かる。従って、〔数11〕に基づいて、上述の加速度フィードバックによる制御と全く同じ効果の得られる制御即は、〔数16〕で表すことができる。

【0060】
【数16】
JP0005695991B2_000020t.gif

【0061】
〔数16〕によると、浮動体1に対する駆動重錘体2の相対的な加速度と相対的な変位とを用いたフィードバックによって、全く同じ制御効果が得られることがわかる。この制御即の物理的な意味は、負の剛性と負の質量を与えたことに等しく、この制御則では時間の経過と共に制御エネルギーがゼロに収束する意味も良く理解できる。また、この制御則によれば、周期の微調整もあわせて行うことが可能である。なぜなら、〔数11〕に示すように、βにはgの影響を含めることができるからである。

【0062】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0063】
1 浮動体
2 駆動重錘体(波力エネルギー吸収手段)
3 パッシブ型バネ材(波力エネルギー吸収手段、復元材)
10 波力発電装置
10a ネジ軸
10b ナット部
11 モータ
11a リニアガイドレール
11b 可動子
12 加速度センサ
13 速度センサ
14 制御部
15 発電機(減衰手段)
16 充電器
17 蓄電池
18 インバータ
20 駆動系
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3