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明細書 :樹脂成形用金型、該樹脂成形用金型の製造方法及び樹脂成形品の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5967834号 (P5967834)
登録日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発行日 平成28年8月10日(2016.8.10)
発明の名称または考案の名称 樹脂成形用金型、該樹脂成形用金型の製造方法及び樹脂成形品の製造方法
国際特許分類 B29C  33/38        (2006.01)
FI B29C 33/38
請求項の数または発明の数 16
全頁数 24
出願番号 特願2013-507612 (P2013-507612)
出願日 平成24年3月27日(2012.3.27)
国際出願番号 PCT/JP2012/057930
国際公開番号 WO2012/133406
国際公開日 平成24年10月4日(2012.10.4)
優先権出願番号 2011077762
優先日 平成23年3月31日(2011.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月23日(2015.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
【識別番号】504010017
【氏名又は名称】株式会社積層金型
発明者または考案者 【氏名】松葉 朗
【氏名】藤井 敏男
【氏名】池田 慎哉
【氏名】西田 裕紀
【氏名】山崎 拓哉
【氏名】山崎 久男
個別代理人の代理人 【識別番号】100128277、【弁理士】、【氏名又は名称】専徳院 博
審査官 【審査官】宮本 靖史
参考文献・文献 特開平07-284189(JP,A)
特開昭62-282798(JP,A)
国際公開第2006/136743(WO,A1)
特開平10-249862(JP,A)
特開平08-039571(JP,A)
特開昭63-095919(JP,A)
特開昭60-168620(JP,A)
調査した分野 B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/26 - 39/36
B29C 41/38 - 41/44
B29C 43/36 - 43/42
B29C 43/50
B29C 45/26 - 45/44
B29C 45/64 - 45/68
B29C 45/73
B29C 49/48 - 49/56
B29C 49/70
B29C 51/30 - 51/40
B29C 51/44
B23K 35/00 - 35/12
B23K 35/16 - 35/22
B23K 35/24
B23K 35/26
B23K 35/28
B23K 35/30 - 35/34
B23K 35/40
特許請求の範囲 【請求項1】
発熱体上に少なくとも高熱伝導性金属層及び前記高熱伝導性金属層に比較して熱伝導度の小さい材料で形成された層が積層され、上面にキャビティー面が形成された複合層を備え、
前記キャビティー面上の全域又は任意の領域を急速に所定温度に成さしめるべく、前記高熱伝導性金属層及び/又は熱伝導度の小さい材料で形成された層の厚さが場所に応じて異なる厚さに設定されており、
前記発熱体、前記発熱体上に積層された前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を含む複数の金属層、前記複数金属層中における各金属層間の境界部、又は前記発熱体と前記複数金属層との境界部のうち、少なくとも一つに冷却媒体の流路が設けられていることを特徴とする樹脂成形用金型。
【請求項2】
前記冷却媒体の流路が、キャビティー面を急速かつ均一に冷却可能に前記キャビティー面の近傍に立体的に配置されていることを特徴とする請求項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項3】
前記高熱伝導性金属層が、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金から選択される材種により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形用金型。
【請求項4】
電磁誘導加熱式の樹脂成形用金型であり、
前記発熱体が磁性金属層であり、前記磁性金属層中又は前記磁性金属層の反複合層側にインダクタを備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項5】
前記熱伝導度の小さい材料で形成された層が高硬度金属層からなり、該高硬度金属層の上面に前記キャビティー面が形成され、該高硬度金属層、前記高熱伝導性金属層、前記磁性金属層の順にそれぞれ冶金接合されていることを特徴とする請求項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項6】
前記インダクタが同一平面上に設けられていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項7】
さらに非磁性材料及び/又は低熱伝導性材料で形成された層を有し、
前記インダクタは、前記磁性金属層と該非磁性材料及び/又は低熱伝導性材料で形成された層とで挟まれ、かつこれらで囲まれていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項8】
前記磁性金属層が、純鉄、鉄鋼、純ニッケル、ニッケル合金から選択される材種により形成されていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項9】
前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が、所定の形状に加工された複数枚の板を積層し、該積層体を拡散接合することにより形成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項10】
少なくとも前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され、又は前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が電気めっき法により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項11】
前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され、又は前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が電気めっき法により形成され、
前記磁性金属層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され、又は前記磁性金属層が電気めっき法により形成されていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型。
【請求項12】
同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、
所定の組み合わせと順序で積層された熱伝導度の小さい材料の板と高熱伝導性金属板とからなる積層体に生じる加熱時の熱ひずみ、及び加圧により生じる積層方向に対して直交方向のひずみを外形部において拘束することによって、積層方向に対して平行な異材界面にも接合圧力を生じせしめ、拡散接合を行うことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型の製造方法。
【請求項13】
同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、
所定の組み合わせと順序で積層された熱伝導度の小さい材料の板と高熱伝導性金属板とからなる積層体の外側を囲むように、前記熱伝導度の小さい材料の板及び前記高熱伝導性金属板よりも線膨張係数の小さい材料で製作された外枠材を設置し、前記積層体と前記外枠材との間にくさび形状をした少なくとも一対の板材を挟んで加熱することにより、加熱時における前記外枠材、前記熱伝導度の小さい材料の板、前記高熱伝導性金属板及び前記くさび形板材のそれぞれの熱膨張差を利用して外力を負荷することなく積層方向に対して平行な異材界面の拡散接合を行うことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型の製造方法。
【請求項14】
同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、
前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層をそれぞれ、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、外周を拘束した状態で積層方向に荷重を加え拡散接合し製作し、拡散接合した前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を積層し、又は拡散接合した前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層との接合面を形状加工した後に積層し、外周を拘束した状態で積層方向に荷重を加え拡散接合することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型の製造方法。
【請求項15】
同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、
前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を積層し、該積層体に生じる加熱時の熱ひずみ、及び加圧により生じる積層方向に対して直交方向のひずみを外形部において拘束することによって、積層方向に対して平行な異材界面にも接合圧力を生じせしめ、拡散接合を行うことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型の製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の樹脂成形用金型を利用して、樹脂成形品を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティー面上の温度均一性、温度制御性及び加熱冷却時間の短縮化に優れた樹脂成形用金型及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形、すなわち、プラスチックや繊維強化プラスチック部品を対象とした射出成形及びプレス成形においては、成形時間短縮のために金型の加熱冷却の高速化が強く求められており、金型の高速加熱の一手法として、近年高周波電磁誘導加熱を利用した技術が多数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、上金型及び下金型を囲むようにインダクタを配置し、該インダクタに高周波電流を印加することによって、キャビティー面のある金型表面部にうず電流を発生させ、それにより生じるジュール熱によりキャビティー面を加熱する技術が開示されている。この方法を用いれば、成形時の直接の作用面ではない金型内部までを加熱する必要がないため、成形に必要なキャビティー面近傍のみを高速かつ効率的に加熱できる。
【0004】
また、同様の電磁誘導加熱式金型において、冷却工程の高速化を主目的として、キャビティー面の直下に熱伝導性に優れる銅やアルミニウムなどの高熱伝導性金属層を設けることにより、冷却時の熱交換を促進して冷却時間を短縮し、加熱と冷却の両面で高速化を図る方法が提案されている。(例えば特許文献2参照)
【0005】
このように、電磁誘導加熱方式は成形時間の短縮に有効であるが、一方で被加熱面において均一なうず電流場を生成することが難しいため、被加熱面では均一な加熱ができず、結果としてキャビティー面上では顕著な温度むらが生じることが知られている。このような温度むらの発生によって、樹脂充填の不良や、そりや割れの発生などの各種成形不良が生じやすい。
【0006】
そこで、キャビティー面を直接加熱するのではなく、まずキャビティー面から少し離れた金型内部の一領域を加熱し、該発熱部からの熱伝導によってキャビティー面を加熱する手法が提案されている。例えば、特許文献3では、金型の内部にインダクタを設置し、インダクタ近傍における金型の一部を加熱して、その熱伝導によりキャビティー面を昇温する手法が開示されている。これにより、金型内部の発熱部においては温度が不均一であるものの、キャビティー面までの熱伝導過程において熱拡散を伴うため、キャビティー面を直接加熱する特許文献1や特許文献2の手法と比較して、キャビティー面上の温度分布を軽減できる利点がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2007-535786号公報
【特許文献2】特開平8-39571号公報
【特許文献3】特表2008-546570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のように熱伝導により間接的にキャビティー面を加熱するインダクタ内装型電磁誘導加熱式金型の場合、キャビティー面を直接加熱する方法に比べて、熱伝導を伴う分だけ加熱時間が長く、エネルギー効率も悪化するなど、電磁誘導加熱方式の長所が十分得られない。熱伝導時間短縮のためには、インダクタをキャビティー面のできるだけ近傍に設置し、内部の発熱部からキャビティー面までの距離、すなわち、熱伝導距離を短縮すればよいが、その場合には熱拡散が不十分となり、キャビティー面の温度不均一が解消されにくい。さらに、キャビティー面形状に対応させたインダクタの配置によってキャビティー面上温度の均一化を図る特許文献3の場合、キャビティー面が緻密で高低差の大きい複雑な凹凸形状である場合には、インダクタの取り回しが困難であるために金型内における熱伝導距離のばらつきが大きくなり、キャビティー面温度の不均一が増加しやすいという問題が生じる。このように、キャビティー面の加熱時間短縮と温度均一化の両立が求められている。
【0009】
本発明の目的は、急速に、かつ温度分布が生じないようにキャビティー面を加熱可能な、またキャビティー面上の任意の領域を所定温度に制御することも可能な樹脂成形用金型、及びその金型の好適な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発熱体上に少なくとも高熱伝導性金属層及び前記高熱伝導性金属層に比較して熱伝導度の小さい材料で形成された層が積層され、上面にキャビティー面が形成された複合層を備え、前記キャビティー面上の全域又は任意の領域を急速に所定温度に成さしめるべく、前記高熱伝導性金属層及び/又は熱伝導度の小さい材料で形成された層の厚さが場所に応じて異なる厚さに設定されており、前記発熱体、前記発熱体上に積層された前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を含む複数の金属層、前記複数金属層中における各金属層間の境界部、又は前記発熱体と前記複数金属層との境界部のうち、少なくとも一つに冷却媒体の流路が設けられていることを特徴とする樹脂成形用金型である。
本発明の樹脂成形用金型は、発熱体上に少なくとも熱伝導度の異なる材料で形成された2種の層が積層された複合層を有し、この熱伝導度の異なる材料で形成された層の厚さを場所に応じて変えることでキャビティー面上の温度を制御するので、凹凸が大きい複雑なキャビティー面形状の場合及び/又は発熱体の温度が場所によって異なる場合であっても、キャビティー面上に温度分布が生じないように加熱することができる。またキャビティー面上の任意の領域を所定温度に制御することも可能であり、これらを急速に行うことができる。
【0011】
発明の樹脂成形用金型が電磁誘導加熱式の樹脂成形用金型の場合、発熱体は、磁性金属層であり、通常、該磁性金属層の上に高熱伝導性金属層及び熱伝導度の小さい材料で形成された層が積層され樹脂成形用金型が形成され、発熱体にパイプヒータ、電熱ヒータ等を使用する場合、該発熱体は、高熱伝導性金属層内、あるいは高熱伝導性金属層の下に積層された金属層内に埋設され、高熱伝導性金属層の上部に熱伝導度の小さい材料で形成された層が積層されることが多い。さらに発熱体に加熱蒸気、熱媒、温水などの加熱媒体を使用する場合、加熱媒体を流通させるための流路を穿設した金属層を準備し、該金属層の上に高熱伝導性金属層及び熱伝導度の小さい材料で形成された層を積層し、あるいは高熱伝導性金属層に加熱媒体を流通させるための流路を穿設し、該高熱伝導性金属層の上に熱伝導度の小さい材料で形成された層を積層し樹脂成形用金型が形成される場合が多い。このような樹脂成形用金型の場合、磁性金属層、高熱伝導性金属層、熱伝導度の小さい材料で形成された層、さらにはパイプヒータ、電熱ヒータ等を埋設あるいは加熱媒体を流通させるための流路を穿設した金属層、又はこれら金属層の境界部に冷却媒体の流路(冷却流路)を設けることができるが、特に冷却流路を高熱伝導性金属層に配置することでキャビティー面を均一に冷却することができる。また発熱体に加熱蒸気、熱媒、温水などの加熱媒体を使用する場合、加熱媒体を流通させるための流路を冷却媒体の流路として使用してもよい。
【0012】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記冷却媒体の流路が、キャビティー面を急速かつ均一に冷却可能に前記キャビティー面の近傍に立体的に配置されていることを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型は、冷却媒体の流路がキャビティー面近傍に立体的に配置されているので、キャビティー面を急速かつ均一に冷却することができる。
【0013】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記高熱伝導性金属層が、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金から選択される材種により形成されていることを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型において、高熱伝導性金属層として、熱伝導性及び熱拡散率に優れる純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金を好適に使用することができる。
【0014】
また本発明の樹脂成形用金型は、電磁誘導加熱式の樹脂成形用金型であり、前記発熱体が磁性金属層であり、前記磁性金属層中又は前記磁性金属層の反複合層側にインダクタを備えることを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型は、磁性金属層上に少なくとも熱伝導度の異なる材料で形成された2種の層が積層された複合層を有し、この熱伝導度の異なる材料で形成された層の厚さを場所に応じて変えることでキャビティー面上の温度を制御するので、従来の電磁誘導加熱式金型の短所であるキャビティー面上に発生する温度不均一の問題を解決するとともに、電磁誘導加熱式金型の加熱時間の短縮という長所を最大限活用することができる。
【0015】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層が高硬度金属層からなり、該高硬度金属層の上面に前記キャビティー面が形成され、該高硬度金属層、前記高熱伝導性金属層、前記磁性金属層の順にそれぞれ冶金接合されていることを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型は、各金属層が冶金接合されているので、熱伝達に優れ、また強度的にも優れる。
【0016】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記インダクタが同一平面上に設けられていることを特徴とする。
一般的に電磁誘導加熱式金型の場合、磁性金属層において均一なうず電流場を生成することが難しいため、キャビティー面上に温度分布が生じる。このため従来、キャビティー面の位置に応じてインダクタの位置を変えることもなされているが、キャビティー面の形状が複雑な場合及び/又は樹脂成形品が小さい場合には、インダクタの取り回しも限定され、キャビティー面上を均一に、又は任意の場所を任意の温度に加熱することはできない。これに対して、本発明の樹脂成形用金型は、磁性金属層上に少なくとも熱伝導度の異なる材料で形成された2種の層が積層された複合層を有し、この熱伝導度の異なる材料で形成された層の厚さを場所に応じて変えることでキャビティー面上の温度を制御するので、インダクタを同一平面上に配置することが可能であり、結果、金型の設計自由度が増し、製作も容易となる。
【0017】
また本発明の樹脂成形用金型は、さらに非磁性材料及び/又は低熱伝導性材料で形成された層を有し、前記インダクタは、前記磁性金属層と該非磁性材料及び/又は低熱伝導性材料で形成された層とで挟まれ、かつこれらで囲まれていることを特徴とする。
本発明の電磁誘導加熱式の樹脂成形用金型において、インダクタは、磁性金属層と非磁性材料及び/又は低熱伝導性材料で形成された層とで挟まれ、かつこれらで囲まれているので、うず電流が磁性金属層に集中して生じ、発生した熱を損失することなくキャビティー面側へ移動させることができる。非磁性材料又は低熱伝導性材料には、非磁性ステンレス鋼又はセラミックプレートなどを用いるのが好ましい。
【0018】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記磁性金属層が、純鉄、鉄鋼、純ニッケル、ニッケル合金から選択される材種により形成されていることを特徴とする。
【0019】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が、所定の形状に加工された複数枚の板を積層し、該積層体を拡散接合することにより形成されていることを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型は、キャビティー面上を急速に所定温度にすべく、熱伝導度の小さい材料で形成された層及び高熱伝導性金属層の厚さが、それぞれ場所に応じて適正に設定されるので、熱伝導度の小さい材料で形成された層及び高熱伝導性金属層が複雑な形状となり易いが、これらの製作に板を積層、接合する積層接合法を採用することで所望の金型を得ることができる。積層金型で用いられる複数枚の板を積層、接合してなる積層接合法は、積層、接合する1枚1枚の板の形状が比較的単純なため、金型内部で熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は高熱伝導性金属層の厚さが変化する金型であっても対応が容易であり、接合に拡散接合法を用いることで接合を確実に行うことができる。
【0020】
また本発明の樹脂成形用金型において、少なくとも前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され、又は前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が電気めっき法により形成されていることを特徴とする。
【0021】
また本発明の樹脂成形用金型において、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され又は、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は前記高熱伝導性金属層が電気めっき法により形成され、前記磁性金属層と前記高熱伝導性金属層とが拡散接合又はろう付けにより接合され、又は前記磁性金属層が電気めっき法により形成されていることを特徴とする。
【0022】
また本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、所定の組み合わせと順序で積層された熱伝導度の小さい材料の板と高熱伝導性金属板とからなる積層体に生じる加熱時の熱ひずみ、及び加圧により生じる積層方向に対して直交方向のひずみを外形部において拘束することによって、積層方向に対して平行な異材界面にも接合圧力を生じせしめ、拡散接合を行うことを特徴とする。
【0023】
また本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、所定の組み合わせと順序で積層された熱伝導度の小さい材料の板と高熱伝導性金属板とからなる積層体の外側を囲むように、前記熱伝導度の小さい材料の板及び前記高熱伝導性金属板よりも線膨張係数の小さい材料で製作された外枠材を設置し、前記積層体と前記外枠材との間にくさび形状をした少なくとも一対の板材を挟んで加熱することにより、加熱時における前記外枠材、前記熱伝導度の小さい材料の板、前記高熱伝導性金属板及び前記くさび形板材のそれぞれの熱膨張差を利用して外力を負荷することなく積層方向に対して平行な異材界面の拡散接合を行うことを特徴とする。
【0024】
本発明の樹脂成形用金型では、熱伝導度の小さい材料で形成された層及び/又は高熱伝導性金属層の各層厚さが金型内で変化するため、金型内の同一平面上において熱伝導度の小さい材料で形成された層と高熱伝導性金属層とが混在する領域が発生する。該領域では、平板状に加工された熱伝導度の小さい材料の板あるいは高熱伝導性金属板のどちらか一方に対して、ある特定部分を除去した後、該部分に同一の輪郭形状に加工されたもう一方の材種の板をはめ込んだ複合板を作製し、それらを複数積層して拡散接合することにより、熱伝導度の小さい材料で形成された層と高熱伝導性金属層が任意面積及び任意厚さで混在する異種材料複合積層金型を製作できる。しかし、前記方法で異種材料を積層して拡散接合する場合、加圧のための外力は積層方向であり、前記嵌合部、すなわち、熱伝導度の小さい材料の板と高熱伝導性金属板との界面は負荷方向と平行であるために、該界面には外力が直接負荷されない。特に、線膨張係数が大きい高熱伝導性金属板の内側に、線膨張係数の小さい板を嵌合した場合には、拡散接合時の熱膨張は外側の高熱伝導性金属板の方が大きいために前記嵌合部にすき間が生じ、接合が困難となる。
【0025】
これに対し本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、拡散接合時における板積層体の最外郭部、すなわち、金型外形部の熱変形を拘束する。これにより、最外郭部を有する各積層板は加熱により熱膨張するものの、最外郭での寸法が増加しないよう熱変形が拘束されているため、前記嵌合部の寸法は熱ひずみにより縮小する結果となり、外側の板は内側にはめ込まれた異種材料の板と圧力を伴いながら接触し、拡散接合がなされる。このように、板の積層方向には外力による加圧によって、また、負荷方向と平行な異種材嵌合部の界面においては金型外形部の熱変形を拘束することによって、全方向において完全な加圧がなされた拡散接合が実現できる。
【0026】
また本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層をそれぞれ、所定の厚さと輪郭形状に加工された複数枚の平板を積層し、外周を拘束した状態で積層方向に荷重を加え拡散接合し製作し、拡散接合した前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を積層し、又は拡散接合した前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層との接合面を形状加工した後に積層し、外周を拘束した状態で積層方向に荷重を加え拡散接合することを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、熱伝導度の小さい材料で形成された層及び高熱伝導性金属層をそれぞれ積層接合法で製作し、その後、この熱伝導度の小さい材料で形成された層及び高熱伝導性金属層を拡散接合するので、複雑な形状の、熱伝導度の小さい材料で形成された層及び高熱伝導性金属層を備える樹脂成形用金型であっても、確実に製作することができる。
【0027】
また本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、同一高さに異種材料である前記熱伝導度の小さい材料で形成された層と前記高熱伝導性金属層とが混在する領域を、積層方向に圧力を加えて拡散接合することにより製作する場合において、前記熱伝導度の小さい材料で形成された層及び前記高熱伝導性金属層を積層し、該積層体に生じる加熱時の熱ひずみ、及び加圧により生じる積層方向に対して直交方向のひずみを外形部において拘束することによって、積層方向に対して平行な異材界面にも接合圧力を生じせしめ、拡散接合を行うことを特徴とする。
本発明の樹脂成形用金型の製造方法は、拡散接合時に積層体の最外郭部、すなわち、金型外形部の熱変形を拘束する。この方法は、ブロック状素材を形状加工し形成した高熱伝導性金属層と熱伝導度の小さい材料で形成された層とを拡散接合し樹脂成形用金型を製造する場合にも好適に用いることができ、全方向において完全な加圧がなされた拡散接合が実現できる。
【0028】
また本発明は、前記樹脂成形用金型を利用して樹脂成形品を製造する方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の樹脂成形用金型は、キャビティー面上の全域又は任意の領域を急速に所定温度に成さしめるべく、熱伝導度の異なる材料で形成された層が金型の場所に応じて厚さを変えて積層されているので、凹凸が大きい複雑なキャビティー面形状を有する金型及び/又は発熱体の温度が場所によって異なる金型であっても、キャビティー面上に温度分布が生じないように加熱することができる。またキャビティー面上の任意の領域を所定温度に制御することも可能であり、樹脂成形用金型として好適に使用することができる。これを電磁誘導加熱式樹脂成形用金型に適用することで、従来の電磁誘導加熱式金型の最大の弱点である発熱不均一の問題を克服し、なおかつ内部の熱伝導を速めることによって、高速かつ均一にキャビティー面を昇温できる、樹脂成形用金型の理想的な電磁誘導加熱が可能となる。
【0030】
また本発明の樹脂成形用金型を、板を積層、拡散接合する積層接合法を用いて製作することで、金型内部で熱伝導度の異なる2つの層の厚さが変化しても容易に製作することができる。また冷却流路をキャビティー面近傍の最適な位置へ立体的に配置することが可能となり、冷却工程においても、均一かつ急速な冷却が実現できる。また本発明の樹脂成形用金型を、積層接合法を用いて製作するとき、本発明の製造方法を用いることで、確実な接合を実現することができる。
【0031】
加熱と冷却の両方で均一かつ急速な金型の温度調節を行うことにより、通常の射出成形やプレス成形時では実用上困難であった高温域での成形が可能となる。これにより、例えば射出成形では、ウエルドラインを低減あるいは消失させることができるだけでなく、表面性向上による塗装工程の削減が可能になるとともに、樹脂流動性向上により薄肉部品や複雑形状品などが成形できる。また、繊維強化樹脂などのプレス成形では、樹脂粘度低下に伴う賦形性向上により、従来では難しかった厚肉かつ複雑形状を有する物の成形が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態としての樹脂成形用金型1の断面図である。
【図2】図1の樹脂成形用金型1の製造手順を説明するフローチャートである。
【図3】図1の樹脂成形用金型1の拡散接合工程における金属板積層体と接合治具との組み付け方法を示した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての樹脂成形用金型30の断面図である。
【図5】本発明の実施例1で使用したモデル金型50の断面図である。
【図6】本発明の実施例1の加熱実験時の温度経時変化を示す図である。
【図7】本発明の実施例2で使用したモデル金型60の断面図である。
【図8】本発明の比較例1で使用したモデル金型70の断面図である。
【図9】本発明の実施例2及び比較例1の加熱・冷却実験時の温度経時変化を示す図である。
【図10】本発明の実施例3及び比較例2の加熱・冷却実験時の温度経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態としての樹脂成形用金型1の断面図である。ここでは金型の下側半分、すなわち下金型のみを示しており、反対側の上金型は表示されない。

【0034】
樹脂成形用金型1は、電磁誘導加熱式の樹脂成形用金型であり、キャビティー面10が上部に形成された高硬度金属層2、高硬度金属層2の下側に高熱伝導性金属層3、高熱伝導性金属層3の下側に磁性金属層4がそれぞれ冶金接合された複合層5を有し、磁性金属層4の下側にインダクタ6を備える。

【0035】
キャビティー面10を有する高硬度金属層2は、目的の成形に必要な成形温度や加圧条件および使用回数に耐えられる十分な強度や耐久性を有するよう、必要な硬度を有する金属により製作される。材質は、成形の種類や条件によって異なるが、例えば各種鉄鋼材に必要な熱処理を施し、所定の硬度及び機械的性質が得られるよう調質したものを用いるとよい。また高硬度金属層2は、熱伝導度が高熱伝導性金属層3の熱伝導度に比較し小さいものを使用する。

【0036】
高硬度金属層2の下側、すなわち、キャビティー面10の反対側には高熱伝導性金属層3が設けられている。高熱伝導性金属層3は、熱伝導性及び熱拡散性に優れた材料を使用する。定常温度分布状態にある材料中では、Δx(m)離れた2点間の温度差がΔT(K)であるとき、2点間の熱流束q(W/m)は式(1)のようなフーリエの法則によって表される。なお、熱流束とは、2点間を移動する単位面積および単位時間当たりの熱量である。
q=-λ・(ΔT/Δx)・・・(1)
ここで、λ:熱伝導度(W/(m・K))である。
このように、定常状態において熱流束qの値を一定とすると、熱伝導度λが小さければ温度勾配ΔT/Δxが大きくなるが、λが大きい、すなわち、熱伝導度の高い材料では温度勾配ΔT/Δxが小さくなり、材料中の温度分布が小さくなることから、熱伝導度の高い材料を使用することにより、本質的に金型に生じる温度分布を軽減できる。

【0037】
また、実際の成形過程では、金型内の温度は位置だけでなく時間によっても変化する非定常状態であるので、該高熱伝導性金属層3には、式(2)によって表される熱拡散率a(m/s)が大きい材料を用いることが望ましい。
a=λ/(c・ρ)・・・(2)
ここで、c:比熱(J/(kg・K))、ρ:密度(kg/m)である。この値aが大きいほど、温度分布が材料中を非定常的に広がっていく速度が速く、短時間のうちに温度分布が緩和しやすいことを示している。

【0038】
熱伝導度λ及び熱拡散率aが大きい材料として、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金が例示され、高熱伝導性金属層3としてこのような材料を使用することが好ましい。高熱伝導性金属層3と高硬度金属層2との接合については、良好な熱伝導性を得るために、拡散接合による冶金接合が好ましい。例えば、鉄鋼材により製作した高硬度金属層2との接合を高温・加圧を伴う拡散接合により行う場合には、鉄との親和性がよく、金属間化合物を生じない純銅及び銅合金を使用するのが好ましい。なお、高硬度金属層2及び/又は高熱伝導性金属層3は、電気めっきにより形成してもよい。

【0039】
高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3は、後述する方法により最適な層厚さが決定され、各層の厚さは金型内において変化する。例えば、図1中の金型1のようにキャビティー面10が自由曲面を含む複雑な三次元形状をしている場合には、キャビティー面10上の温度分布を抑制するため、該キャビティー面10の形状に対応して、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3の境界、すなわち、異種材料の接合界面14も三次元的に起伏を伴った複雑な形状となることが多い。

【0040】
磁性金属層4は、高熱伝導性金属層3の下側に位置する。高熱伝導性金属層3の下側に接合される磁性金属層4は、純鉄、鉄鋼、純ニッケル、ニッケル合金から選択される材種により製作されることが好ましい。一般に導電体に高周波電流が流れる場合、電流は表皮効果により導電体の表面近傍のみに生じることが知られている。したがって、磁性金属層4の厚さは、うず電流の表皮深さδの数倍程度あればよく、熱エネルギーの損失低減や金型軽量化の観点から、できるだけ薄い層であることが望ましい。表皮深さδ(μm)は式(3)により得られる。
δ=√(2P/(2π・f・μ))×1,000,000・・・(3)
ここで、Ρ:体積抵抗率(Ω・m)、f:電流の周波数(Hz)、μ:絶対透磁率(H/m)である。例えば、電流周波数fが1kHzの場合、表皮深さδは純鉄で約71μm、ニッケルで約172μmであり、電流周波数fが100kHzの場合では、表皮深さδは純鉄で約7μm、ニッケルで約17μmとなる。種々の電流周波数を使用する場合を考慮し、数百μm以上の厚さがあればよい。図1は厚さ1mm程度の薄鋼板を拡散接合したものを記載しているが、周波数が高い場合には200~300μm程度のニッケル皮膜をめっきなどにより作製して用いても良い。

【0041】
インダクタ6は、磁性金属層4の下に、同一平面上に配置されている。ここでいう同一平面上とは、完全な同一の他、ほぼ同一の高さに配置されている場合も含む。通常、インダクタ6には銅などで製作される金属製パイプに絶縁被膜を施したものを用い、パイプ内部には冷却媒体が流れ、高周波電流印加時の過熱を防止するように使用される。また、使用条件によっては冷却が不要な場合もあり、その際には銅ロッドあるいは銅撚り線などに絶縁被膜したものを用いるとよい。従来、キャビティー面10を均一加熱するために、キャビティー面10の凹凸に応じてインダクタ6を立体的に配置することがなされているが、インダクタ6を立体的に配置することは容易ではない。特に金型が小さくなると、インダクタ6の取り回しが非常に難しくなる。これに対し、本樹脂成形用金型1では、高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3の厚さを適正に制御することで、キャビティー面10の温度を制御するので、インダクタ6を同一平面上に配置することができる。このためインダクタ6の設置、取り回しが簡単となり、金型を設計する点及び製作する点からも非常に好ましい。キャビティー面形状に合わせたインダクタの配置によって、キャビティー面上温度の均一化を図る特許文献3とは、この点において異なる。

【0042】
またインダクタ6の下方には、非磁性・低熱伝導層8が設けられ、インダクタ6は、磁性金属層4と非磁性・低熱伝導層8との間に挟まれ、かつこれらで囲まれる。図1では、非磁性・低熱伝導層8にインダクタ収納用の溝7を設け、該溝内にインダクタ6を設置しているが、変形として、高熱伝導性金属層3及び磁性金属層4の側に該収納用溝を設けても良い。非磁性・低熱伝導層8は、板状に製作して、金型基材9と磁性金属層4との間に挿入するか、あるいは非磁性・低熱伝導層8を金型基材9とともに一体として用いるなどして、キャビティー面10を有する複合層5とインダクタ6とをボルトなどで機械的に締結しても良い。

【0043】
非磁性・低熱伝導層8は、インダクタ6への高周波電流印加により発生する磁界が磁性金属層4の反対側へ透過するのを防ぎ、磁性金属層4において効率的なうず電流場を生成してジュール熱の発生を促すこと、また、磁性金属層4に生じた熱がキャビティー面10の反対側に拡散するのを防ぐ目的で設置される。したがって、磁界及び熱の遮蔽効果のある材料が適しているため、非磁性ステンレス鋼などの金属またはセラミックスを使用することが好ましい。

【0044】
さらに非磁性・低熱伝導層8の下には、金型基材9が設置されている。金型基材9は、金型としての必要な剛性や強度を得るために用いるものであり、所定の硬度を有する鉄鋼材を使用するのが望ましい。また、非磁性・低熱伝導層8が十分な剛性・強度・じん性を有する材料である場合、非磁性・低熱伝導層8と金型基材9とを同一の材料により一体で用いてもよい。

【0045】
また本金型1には、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との境界面14に金型1を冷却するための冷却流路11が設けられている。冷却流路11は、キャビティー面10の近傍であって、キャビティー面10に沿うように設けられている。このような配置は、キャビティー面10を迅速に冷却することができる好ましい配置である。キャビティー面10が複雑となるとキャビティー面10に沿うように冷却流路11を設けることは容易ではないが、樹脂成形用金型1は、厚さの薄い複数枚の金属板を輪郭形状加工した後に、積層、接合する積層接合法を用いて製作するので、複雑な冷却流路11の製作も容易である。

【0046】
上記構成からなる金型1は、不均一に加熱される磁性金属層4から収受した熱を拡散させながら高硬度金属層2へ伝達し、かつ凹凸が大きい複雑なキャビティー面形状の場合でも該面上に温度分布が生じないようにするため、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3のそれぞれの厚さを金型内で適切に変化させて製作される。すなわち、キャビティー面10が発熱部である磁性金属層4に比較的近い領域では、高熱伝導性金属層3の厚さを薄く、かつ高硬度金属層2の厚さを厚くしてキャビティー面10の過度な温度上昇を抑制する一方で、キャビティー面10が発熱部である磁性金属層4から離れた領域では昇温不足が懸念されるため、逆に高熱伝導性金属層3を厚く、高硬度金属層2を薄くして温度上昇を促し、結果としてキャビティー面10上の温度がほぼ均一となるようにする。

【0047】
図2及び図3は、図1の樹脂成形用金型1の製造要領、特に樹脂成形用金型1の複合層5の製造要領を説明するための図であり、図2は製造手順を説明するフローチャート、図3は、拡散接合工程における金属板積層体25と接合治具との組み付け方法を示した断面図である。

【0048】
樹脂成形用金型1の複合層5は、厚さの薄い複数枚の金属板を輪郭形状加工した後に、積層、接合されたいわゆる積層金型である。積層金型は、積層、接合する1枚1枚の金属板の形状が比較的単純なため、金型内部で高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3の厚さが変化する金型であっても対応が容易であり、特にキャビティー面10の凹凸が複雑な場合には、好ましい製作方法である。図3では、高硬度金属層2を形成する金属板22が6枚、高熱伝導性金属層3を形成する金属板23が6枚、磁性金属層4を形成する金属板24が1枚となっているが、金属板の枚数は、特定の枚数に限定されるものではない。キャビティー面10の形状等に応じて適宜設定することができる。一般的にキャビティー面10の凹凸が単純であれば、金属板の枚数は少なく、逆にキャビティー面10の凹凸が複雑であれば枚数は多くなる。例えば、キャビティー面10の凹凸が非常に単純であれば、高硬度金属層2を形成する金属板22及び高熱伝導性金属層3を形成する金属板23を各2枚とすることもできる。

【0049】
まず、ステップS1では、金型1の外形形状、キャビティー面10の形状、高硬度金属層2の厚さ、高熱伝導性金属層3の厚さ、磁性金属層4の厚さ、さらには、インダクタ6や冷却流路11の形状からなる各情報を与えて、金型の初期形状を3次元CADでモデリングする。ここでの形状は最適設計がなされる前の初期段階のものであり、インダクタ6及び冷却流路11の形状は暫定的に与える。また、高硬度金属層2、高熱伝導性金属層3、磁性金属層4の各層厚さも、金型1内で全て均一な厚さとして暫定的に定める。

【0050】
ステップS2では、コンピュータによる有限要素法シミュレーション(CAE)などの手法を用いて、電磁場解析及び熱伝導解析を行い、金型内部に生じるうず電流場を求めるとともに、うず電流によって生じる金属の発熱と熱伝導を計算し、キャビティー面10上の温度分布を予測する。本ステップの目的は、キャビティー面10上に生じる温度分布を抑制しながら高速に加熱冷却できる金型各構成要素の形状寸法を最適に設計することである。そのための手法は種々あるが、好ましい一例として、まず、磁性金属層4での発熱状態に注目し、磁性金属層4上で顕著な温度分布が生じないようにインダクタ6の配置形状を変更する。次に、高熱伝導性金属層3の厚さを一定として熱伝導解析を行い、キャビティー面10上の温度分布を予測する。その結果から、キャビティー面10の温度が高い領域周辺においては高熱伝導性金属層3の厚さを薄く、かつ高硬度金属層2の厚さを厚くする。また一方で、キャビティー面10が該磁性金属層4から遠い領域では昇温不足となるため、逆に高熱伝導性金属層3を厚く、高硬度金属層2を薄くして温度上昇を促すことにより、キャビティー面上の温度が均一になるような、金型内における高熱伝導性金属層3及び高硬度金属層2の最適な層厚さの分布を導出する。

【0051】
また、冷却過程の熱伝導解析も同様に行い、キャビティー面10上の温度が均一かつ急速に下がるような、最適な冷却流路11の形状を決定する。本目的を達成するために、冷却流路11はキャビティー面10のできるだけ近傍に設置するのが好ましいため、キャビティー面10の形状に対応した立体的な配置とするのがよい。なお、前記冷却流路11の設計は当然ながら加熱時の熱伝導にも影響を与えるので、加熱時における高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3の厚さの設計は冷却流路11の存在とその形状を考慮して行われる。冷却流路11の形状を変更した場合、それにより加熱時のキャビティー面10上温度分布に許容しがたい変化が生じていないかどうか確認する必要がある。

【0052】
金型構成要素の設計が終了後、ステップS3では、3次元CADデータを基にスライスデータの作成を行う。スライスデータの作成は予めスライスデータを作成するためのプログラムをインストールしたコンピュータを用いて行う。コンピュータはインストールされたプログラムに従い、入力された3次元CADデータから、所定の厚さのスライスデータを作成する。ここで所定の厚さが、金属板の厚さとなる。金属板の厚さは、樹脂成形用金型1の形状、キャビティー面10の形状、高熱伝導性金属層3及び高硬度金属層2の厚さ、さらには冷却流路11の配置に基づき、加工容易性等を考慮し、所望の金型が容易に製作できるように決定する。このとき金属板の規格(寸法)、入手性、価格を考慮することが好ましい。高硬度金属層2を形成する金属板22は、通常、同一の厚さの金属板を使用するが、厚さの異なる金属板22を使用してもよい。高熱伝導性金属層3を形成する金属板23についても同様である。この点については、公知の積層金型(例えば特開2010-94903号公報)と同様に考えればよい。

【0053】
ステップS4では、ステップS3で作成したスライスデータに基づいて、各金属板22、23、24の加工を行う。金属板22は、高硬度金属板、金属板23は、高熱電導性金属板、金属板24は、磁性金属板であり、それぞれ高硬度金属層2、高熱電導性金属層3、磁性金属層4に対応する。金属板の加工は、輪郭形状、冷却流路のための溝27、及び積層時における位置決め用の基準穴(図示省略)を行う。ここで、同一高さに異なる材料の金属板22、23を組み合わせて積層する場合、例えば、どちらか一方の金属板22(23)の一部を機械加工により除去し、該除去部分に同一輪郭形状に切出した他方の金属板23(22)をはめ込んで使用する場合には、該嵌合部のすき間が所定の値になるように、両金属板22、23の輪郭を精度よく加工する必要がある。該嵌合部のすき間は両金属板22、23の熱膨張係数や金属板の寸法および加工温度を考慮して適宜決定するとよい。また、両異種金属の拡散接合の際にインサート材を用いる場合には、インサート材厚さを考慮して、嵌合部すき間を決定するのが望ましい。なお、後述のように、拡散接合時において金型外形を変形拘束するので、金型外形に相当する部分についても、各金属板22、23、24を所定の寸法交差内で精度よく加工しておくのがよい。

【0054】
ステップS5では、加工した金属板22、23、24を所定の組み合わせにより所定の順序で積層する。金属板22、23、24は位置決め用基準穴(図示省略)が設けられているので、基準ピン(図示省略)を使用することで、正確に位置決めすることができる。

【0055】
次ステップS6では、積層した金属板積層体25を拡散接合法により接合する。拡散接合は、加熱炉内に金属板積層体25を設置し、真空雰囲気下で所定の温度になるように加熱しながら積層方向に荷重を負荷し、一定時間保持した後に冷却して金属板積層体25(金属板接合体)を炉外へ搬出する。拡散接合時の加熱温度、加熱時間等は、使用する金属板の種類などにより適宜設定すればよい。ここで、金属板同士を重ね合わせる積層面12には荷重が直接負荷されるために拡散接合が可能であるが、同一高さに異種材である高硬度金属板22と高熱伝導性金属板23とを嵌合させた領域では、嵌合部の異種金属界面13は荷重の負荷方向16に対して平行であるために、該異種金属界面13には外力は直接負荷されない。特に、高熱伝導性金属板23の内側の一部を除去して、線膨張係数が相対的に小さい高硬度金属板22を嵌合した場合には、界面に生じる隙間が拡大する傾向となり、事実上接合が困難となる。

【0056】
そこで、図3に記載のような治具を用いて拡散接合を行う。高硬度金属板22及び高熱伝導性金属板23よりも線膨張係数の小さい材料で製作された外枠材17の中に前記金属板積層体25を設置し、金属積層体25と外枠材17との間に一対のくさび形状をした板材を挿入する。ここで、2つのくさび形板材18のうちどちらか一方の挿入深さを調節することによって、金属板積層体25、外枠材17、くさび形板材18をすき間なく接触する状態にすることができる。なお、図3は金属板積層体25、外枠材17及びくさび板材18のある一断面を示した図であるが、本図と直交する任意の断面においても、同様にすき間なく金属板積層体25と外枠材17とが接触するよう、もう一対のくさび形板材18を用いるとよい。すなわち、合計2対のくさび形板材18を使用し、縦横両方向に対して金属板積層体25と外枠材17とをすき間なく接触および固定するのが好ましい。

【0057】
ここで、外枠材17にはグラファイトなど金属よりも線膨張係数の小さい材料を使用し、くさび形板材18は繰り返しの使用に耐えうる適度な一般機械用炭素鋼および機械構造用炭素鋼などを用いるとよい。ただし、拡散接合過程において金属板積層体25とくさび形板材18が相互に接合されないよう、くさび形板材18の表面には離型材を塗布しておく必要がある。

【0058】
上記の固定状態で加熱すると、線膨張係数が金属よりも小さい外枠材17の熱ひずみは金属板積層体25及びくさび形板材18のそれと比較して小さいため、結果として、くさび形板材18を経由して金型外形部19の熱膨張を拘束する。これにより、外形部を有する各積層金属板22、23、24は、加熱により熱膨張するものの、外形部での熱変形が治具である外枠材17及びくさび形板材18により拘束されるため、前記嵌合部の寸法は熱ひずみにより縮小する結果となり、内側にはめ込まれた異種金属板と圧力を伴いながら界面13において接触し、拡散接合がなされる。事実、無拘束状態では加熱時において嵌合部にすき間が生じやすい異種複合金属板、例えば、高熱伝導性金属板23の内側に高硬度金属板22を嵌合した場合において、外形部の変形を拘束した状態で加熱すると、嵌合部の寸法は熱ひずみにより収縮し、嵌合部を境界13として両異種金属同士が圧力を伴いながら接触することを有限要素解析により確認している。

【0059】
このように、金属板積層体25の積層面12には外力による加圧により、また、積層面12と直交する嵌合部の異種金属界面13においては金型最外郭部の熱変形の拘束を利用することによって、全方向において完全な加圧がなされた拡散接合が実現できる。

【0060】
続くステップS7では、拡散接合した金属板積層体(金属板接合体)を熱処理する。本工程は金属板接合体のうち、特にキャビティー面10を有する高硬度金属層2を硬化させ、強度及び耐摩耗性の向上を目的として行う熱処理であり、樹脂成型用金型で一般的に行われる焼入れ及び焼戻しである。ここでは、最終的にキャビティー面10が所定の硬度となるように処理を行う。なお、本熱処理工程は金型の用途によっては必ずしも実施する必要はなく、次工程のステップS8の形状加工後に熱処理を行い、その後必要に応じて再度形状加工を行ってもよい。

【0061】
ステップS8では、樹脂成形用金型1の仕上げ工程として、形状加工を行う。ここでは、一般的な樹脂成形用金型と同様に、汎用のCAD/CAM装置及びNCあるいはCNC装置を用いることで容易かつ高精度に加工することができる。ここでは、公知の切削加工及び研削加工の使用が可能である。なお、前記熱処理を形状加工後に行う場合には、その後の熱処理に伴う変形分を考慮して仕上げ代を残して加工を行い、熱処理後に仕上げの最終形状加工を行うことが効率的である。

【0062】
最終ステップのS9では、上記製作された複合層5と、インダクタ6、非磁性・低熱伝導層8及び金型基材9とを結合する。好ましい結合形態としては、ボルト締結などにより脱着が可能な構造とし、インダクタ6の挿入及び取り外しや各種メンテナンスが容易となるようにするとよい。

【0063】
以下、上記構成の動作を説明する。
本金型を目的の成形機、すなわち、射出成形機あるいはプレス機に装着し、インダクタ6を成形機の外部に設置した高周波電源に接続して、インダクタ6に所定の高周波電流を印加することにより、磁性金属層4が加熱される。ここで、インダクタ6を挟んで磁性金属層4の反対側には非磁性・低熱伝導層8が設置されているため、磁性金属層4での熱損失が抑制された効率的な発熱状態が実現できる。ただし、磁性金属層4内に発生するうず電流場は均一ではないために、発熱も不均一となるが、金型内で層厚さの分布が最適に構成された高熱伝導性金属層3により、磁性金属層4に生じた熱は拡散しながら急速に表面の高硬度金属層2に伝わり、最表面のキャビティー面10上では、温度分布が抑制された均一な加熱状態が短時間のうちに実現できる。

【0064】
また、冷却時においても、冷却流路11がキャビティー面10近傍の最適な位置に立体的に配置されているため、均一かつ急速に冷却が可能である。これにより、加熱、保持、冷却から脱型に至るまでの一連のサイクルタイムを短縮するとともに、これまで困難とされてきた高温域での樹脂成型が可能となるため、成形不良が少ない、薄肉化が可能などの高品位な樹脂成形が実現できる。

【0065】
図4は、本発明の第2実施形態としての樹脂成形用金型30の断面図である。図1に示す第1実施形態としての樹脂成形用金型1と同一の部材には、同一の符号を付して説明を省略する。樹脂成形用金型30は、第1実施形態に示す樹脂成形用金型1と同様に電磁誘導加熱式の金型であり、構成は、樹脂成形用金型1と基本的に同じであるが、キャビティー面10の形状が自由曲面ではなく、金型基準面に対して水平及び垂直な面を主体とした比較的単純な形状である。ここで、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との間に存在する異種金属界面14も平坦な単純形状とすることが可能である場合には、高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3ともにブロック状素材から機械加工により削り出すなどしたのちに、第1実施形態に示す樹脂成形用金型1と同様の加熱及び加圧条件で拡散接合してもよい。

【0066】
また、本実施形態の場合、負荷方向と平行な界面13にテーパ角度を設けると、拡散接合時に積層方向に圧力を負荷した場合、該界面13にも圧力が負荷されるため、拡散接合が可能となる。ただし、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との間の界面12及び13を合わせた異種金属界面全域で必要な圧力が負荷されるよう、適切な寸法精度で界面部の形状を加工しておくことが必要である。

【0067】
高硬度金属層2又は高熱伝導性金属層3及び両層間の界面14の周辺では、第1実施形態に示す樹脂成形用金型1と同様に冷却流路11が作製される。本実施形態では、高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3をブロック材より削り出していることから、立体的かつ複雑な冷却流路配置はできないため、キャビティー面10の形状が比較的平坦で、かつ冷却時の温度分布発生が比較的問題となりにくい場合にのみ適用される。

【0068】
さらに、本実施形態においては、高熱伝導性金属層3の下部にインダクタ6を収納するための溝7を機械加工などにより作製するとともに、該インダクタ収納溝7の内壁を含む高熱伝導性金属層3の下面全域に、めっきにより磁性金属層4を作製している。このように、インダクタ収納用溝7の内壁に磁性金属層4を形成することによって、インダクタ6近傍の全周にわたる広い面積を均等に加熱でき、発熱後の熱拡散も方向依存性が少ないため、効率的に均一加熱を実現できる長所がある。

【0069】
本発明に係る樹脂成形用金型は、上記実施形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で変形することが可能である。また本発明に係る樹脂成形用金型の製造方法も上記製造方法に限定されるものではない。

【0070】
例えば、上記実施形態では、金属板積層体25を拡散接合する際、金属板積層体25の外形部の変形拘束手段として、金属よりも熱膨張係数が小さい外枠材17とくさび形板材18を用いたが、HIPなどの手段を用いて、積層方向及びその直角方向のいずれにも圧力をかけるなど、別の手段で外力をかけてもよい。

【0071】
さらに、第1実施形態の複合層5を製作する場合、高硬度金属層2又は高熱伝導性金属層3を別々に製作し、その後これらを拡散接合し製作してもよい。さらには高硬度金属層2又は高熱伝導性金属層3を別々に製作した後、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3と接合面(境界面)14を、段差をなくす形状加工を行った後に、これらを拡散接合し製作してもよい。

【0072】
以下、製作手順の一例を示す。第1実施形態の樹脂成形用金型1と同様に、図2に示すステップS1からステップS5の手順により加工した高硬度金属板22を所定の順序で積層し、高硬度金属板22の積層体を得る。この積層体を拡散接合するに際し、積層体の外周に、外周と僅かな隙間を有した状態で外周拘束用の金属板を配置する。これらを加熱炉内に設置し、加熱炉内を真空とし、加熱しながらプレス装置を用いて積層体にのみ積層方向に荷重を加えて積層体を拡散接合する。この拡散接合方法では、積層体の外周に金属板が配置されているので、加圧方向と直交する方向への変形量が拘束され、接合強度の高い接合体が得られる。

【0073】
高熱伝導性金属板23の接合体も同様の方法により製作する。その後、高硬度金属板22の接合体と高熱伝導性金属板23の接合体を積層し、接合体の製作と同様に外周に金属板、又は金属ブロックを配置し、接合体と同様の方法で高硬度金属板22の接合体と高熱伝導性金属板23の接合体を拡散接合する。

【0074】
強度、熱膨張係数、クリープ特性等が大きく異なる2種類の金属材料の場合、拡散接合条件、例えば温度、加える荷重も異なる。金属材料を拡散接合する場合、高い接合強度を得るにはその金属材料特性に合った条件で拡散接合することが好ましい。上記方法は、高硬度金属板接合体と高熱伝導性金属板接合体とを別々に製作するので、各々高い接合強度が得られる。高硬度金属板22の接合体と高熱伝導性金属板23の接合体とを拡散接合するときは、接合面は一つであるので、拡散接合も容易である。

【0075】
高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3の形状によっては、高硬度金属板接合体と高熱伝導性金属板接合体との段差をなくした後に拡散接合した方が、接合が容易となり、かつ接合強度が高まる場合もある。このような場合には、高硬度金属板接合体及び高熱伝導性金属板接合体を製作する際、形状加工代を考慮した接合体とし、各々の接合体の接合面(境界面14)を、段差をなくす形状加工を行った後に拡散接合する。

【0076】
また上記実施形態では、樹脂成形用金型1、30を拡散接合法を用いて製造するが、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3、さらには高熱伝導性金属層3と磁性金属層4とを、ろう付けにより接合し樹脂成形用金型を製造することもできる。

【0077】
上記実施形態に示す樹脂成形用金型1、30は、キャビティー面10上の全領域を均一温度にすることを目的としたものであるが、成形によっては、キャビティー面10の特定の領域のみについて意図的に温度を変化させたい状況も存在する。例えば、射出成形においては、樹脂が流れにくい薄肉部分周辺のみを高温にすることにより、樹脂粘度を下げて流動性を改善したり、繊維強化複合材料のプレス成形では、賦形が難しい微小な凹凸部分を高温にし、材料を柔らかくして賦形性を向上する一方で、しわが生じやすいブランク素材外周部付近の温度を逆に下げることで材料を硬くして、適度な張力を発生させてしわを抑制する場合などがある。このように、キャビティー面10における特定の部位のみ他の領域とは異なる温度に制御したい場合には、目的とする温度が異なる個々の領域において、それぞれが所定の温度となるように、高熱伝導性金属層3と高硬度金属層2の厚さを制御したり、個々の領域で個別のインダクタと高周波電源を用いるなどしてもよい。

【0078】
また、上記実施形態に示す樹脂成形用金型1では、冷却流路11がキャビティー面10近傍の最適な位置に立体的に配置されているため、均一かつ急速に冷却が可能であり、加熱、保持、冷却から脱型に至るまでの一連のサイクルタイムの短縮には非常に好ましい。一方で、キャビティー面10近傍に冷却流路11を設ける場合、適切に配置しないとキャビティー面10が不均一に冷却される。キャビティー面10を均一に冷却することを特に重視するときや、キャビティー面10を均一に冷却するための冷却流路11の配置が複雑となり、製造コストが増加するようなときは、冷却流路11を高熱伝導性金属層3に配置すればよい。

【0079】
また上記実施形態では、発熱体である磁性金属層4上に熱伝導度の異なる2つの層を積層しているが、場合によっては、熱伝導度の異なる層を3層積層してもよい。例えば、キャビティー面10が設けられる高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との冶金接合が難しい場合、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との間に他の金属層を介在させることで、3層間の接合強度を高めることができる。

【0080】
また発熱体である磁性金属層4上に熱伝導度の異なる2つの層を積層する場合、キャビティー面10の形状に応じて領域で積層する金属層の材質を変えてもよい。例えば中央部には、高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3とを積層し、周辺部は、高硬度金属層2の代わりに異なる熱伝導度の高硬度金属層と高熱伝導性金属層3とを積層してもよい。このように熱伝導度の異なる金属層を用いることで、金型の設計自由度が高まり、よりサイクルタイムを短縮することもできる。

【0081】
また上記実施形態では、磁性金属層4上に積層する積層材に金属材料を使用しているが、強度、熱伝導度などの物性値、接合性等を満足すれば金属材料以外の材料、さらには金属材料と他の材料とからなる複合材料を使用してもよい。

【0082】
また上記実施形態では樹脂成形用金型として、電磁誘導加熱式の金型を示したが、本発明に係る樹脂成形用金型は、電磁誘導加熱式の金型に限定されるものではない。例えば発熱体としてパイプヒータ、電熱ヒータを用いる場合、加熱流路を配置し、加熱流路内に加熱媒体を流通させ加熱するような場合も、上記実施形態と同様に、パイプヒータ、電熱ヒータ等の上に熱伝導度の異なる層を所定の厚さ積層することで、急速に、かつ温度分布が生じないようにキャビティー面10を加熱可能な、またキャビティー面10上の任意の領域を任意温度に制御することも可能な樹脂成形用金型を得ることができる。

【0083】
発熱体にパイプヒータ、電熱ヒータ等を使用する場合、該発熱体は、高熱伝導性金属層3内に埋設され、高熱伝導性金属層3の上部に高硬度金属層2が積層されることが一般的である。また、パイプヒータ、電熱ヒータ等を高熱伝導性金属層3の下に積層された金属層内に埋設し、高熱伝導性金属層3の上部に熱伝導度の小さい材料で形成された層を積層してもよい。このような樹脂成形用金型の場合、電磁誘導加熱式の金型と同様に、キャビティー面10を急速かつ均一に冷却するときは、冷却流路11をキャビティー面10の近傍の高硬度金属層2又は高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との境界部に立体的に配置し、キャビティー面10を均一に冷却することを特に重視するときや、キャビティー面10を均一に冷却するための冷却流路11の配置が複雑となり、製造コストが増加するようなときは、冷却流路11を高熱伝導性金属層3に配置すればよい。

【0084】
発熱体に加熱蒸気、熱媒、温水などの加熱媒体を使用する場合、加熱媒体を流通させるための加熱流路を穿設した金属層を準備し、該金属層の上に高熱伝導性金属層3及び高硬度金属層2を積層し、あるいは高熱伝導性金属層3に加熱媒体を流通させるための加熱流路を穿設し、該高熱伝導性金属層3の上に高硬度金属層2を積層し樹脂成形用金型が形成される場合が多い。このような樹脂成形用金型の場合、電磁誘導加熱式の金型と同様に、キャビティー面10を急速かつ均一に冷却するときは、冷却流路11をキャビティー面10の近傍の高硬度金属層2又は高硬度金属層2と高熱伝導性金属層3との境界部に立体的に配置し、キャビティー面10を均一に冷却することを特に重視するときや、キャビティー面10を均一に冷却するための冷却流路11の配置が複雑となり、製造コストが増加するようなときは、冷却流路11を高熱伝導性金属層3又は加熱媒体を流通させるための加熱流路を穿設した金属層と高熱伝導性金属層3との境界部に配置すればよい。さらには、加熱流路を冷却媒体の流通させるための冷却流路として使用してもよい。
【実施例】
【0085】
実施例1:モデル金型50を用いた誘導加熱実験
モデル金型を製作し、下記要領で誘導加熱実験を行った。図5にモデル金型50の断面図を示した。モデル金型50は、図5に示すように正面視において上面が階段状となっており、奥行き方向は、各段とも底面に平行である。モデル金型の概略寸法は、底面部の長さが150mm、各段の高さが100mm、80mm、65mm、奥行きが100mmである。
【実施例】
【0086】
モデル金型50は、高硬度金属層2がSKD61、高熱伝導性金属層3が無酸素銅、磁性金属層4がSKD61であり、これらが拡散接合法により接合された複合層5からなる。高硬度金属層2及び高熱伝導性金属層3の厚さは、磁性金属層4に設置されたインダクタ6を介してモデル金型50における4つのインダクタ収納溝7周辺を均等に加熱したとき、上段、中段、下段の上面中央部温度が同一温度となるように、コンピュータによる有限要素法シミュレーション(CAE)手法を用いて熱伝導解析を行い決定した。高硬度金属層2の厚さは、下段>中段>上段であり、高熱伝導性金属層3の厚さは、下段<中段<上段である。磁性金属層4の厚さは同じである。
【実施例】
【0087】
インダクタ6は、磁性金属層4に等間隔で穿設された4つのインダクタ収納溝7に、インダクタ(銅パイプ)6の周囲を絶縁材(ガラス繊維布)51で覆った状態で挿入した。また、今回の加熱実験では使用していないが、モデル金型50の中央部には冷却流路11を穿設し、モデル金型50を冷却できるようにした。
【実施例】
【0088】
以下の要領で加熱実験を行った。加熱に先立ち、下段、中段、上段の上面の中央部(図5のA点、B点、C点)及びインダクタ収納溝7近傍の磁性金属層4表面(図5のD点)に熱電対を設置した。銅パイプ6内に水を流しながら、高周波電源装置(定格容量25kW)を介して、D点が300℃となるまで高速に誘導加熱を行った後、当該部が300℃で一定となるように加熱を制御し、B点が220℃となった時点で加熱実験を終了した。
【実施例】
【0089】
加熱実験時のA点、B点、C点の温度経時変化を図6に示した。約4分でB点が220℃に達した。加熱途中を含めA点、B点、C点の温度差は非常に小さく、加熱終了時点でA点は216.4℃、B点は220.0℃、C点は220.5℃であり、最大温度差は、4.1℃であった。本実験に使用したモデル金型50は、中央部に冷却流路11を設けているためにA点の温度が少し低くなる傾向があり、隣接段のB点と比較すると加熱終了時点で2点の温度差は3.6℃であったが、冷却流路11を設けない場合には、さらに温度差が小さくなる(0.5℃程度)ことを熱解析シミュレーションで確認済みである。
【実施例】
【0090】
実施例2:モデル金型60を用いた蒸気加熱及び冷却実験
図5とほぼ同じ大きさ、形状のモデル金型を用いて蒸気加熱及び冷却実験を行った。図7にモデル金型60の断面図を示した。モデル金型60の構成は、基本的にモデル金型50と同一であるので詳細な説明は省略する。高硬度金属層2(材質:SKD61)及び高熱伝導性金属層3(材質:無酸素銅)の厚さは、磁性金属層4(材質:SKD61)に設けられた加熱流路61に蒸気を供給したとき、下段、中段、上段の上面中央部温度が同一温度となるように、コンピュータによる有限要素法シミュレーション(CAE)手法を用いて熱伝導解析を行い決定した。磁性金属層4に設けられた加熱流路61は、蒸気を供給する加熱路であると共に冷却水を供給する冷却路でもある、加熱冷却流路61である。
【実施例】
【0091】
以下の要領で加熱及び冷却実験を行った。加熱に先立ち、下段、中段、上段の上面の中央部(図7のA点、B点、C点)に熱電対を設置した。加熱冷却流路61に155℃の蒸気を5分間供給しモデル金型60を加熱した後、加熱冷却流路61に15℃の冷却水を10分間供給し、モデル金型60を冷却した。
【実施例】
【0092】
比較例1:モデル金型70を用いた蒸気加熱及び冷却実験
実施例2で使用したモデル金型60と全く同一の大きさ、形状からなる、高硬度金属層2(材質:SKD61)のみからなるモデル金型70を用いて蒸気加熱及び冷却実験を行った。図8にモデル金型70の断面図を示した。加熱及び冷却要領は、実施例2と同一である。
【実施例】
【0093】
実施例2及び比較例1のA点、B点、C点の温度経時変化を図9に示した。また表1に加熱終了時点のA点、B点、C点の温度を、表2に冷却終了時点のA点、B点、C点の温度を示した。
【実施例】
【0094】
【表1】
JP0005967834B2_000002t.gif
【実施例】
【0095】
【表2】
JP0005967834B2_000003t.gif
【実施例】
【0096】
図9に示すように金属複合層からなる実施例2のモデル金型60は、鋼単体からなる比較例1のモデル金型70に比較して、加熱・冷却の応答性がよい。また、金属複合層からなる実施例2のモデル金型60の場合、図9に示すように加熱・冷却の全過程において、A点、B点、C点の温度差が極めて小さい。加熱終了時点及び冷却終了時点の温度をモデル金型60とモデル金型70とで比較すると、モデル金型60の加熱終了時点の最大温度差は、1.1℃、冷却終了時点の最大温度差は、0.5℃であったのに対して、モデル金型70の加熱終了時点の最大温度差は、44.7℃、冷却終了時点の最大温度差は、20.1℃であった。
【実施例】
【0097】
実施例3:モデル金型60を用いた蒸気加熱及び冷却実験
実施例2で使用したモデル金型60を使用し、次の要領で蒸気加熱及び冷却実験を行った。加熱冷却流路61に155℃の蒸気を供給し、B点が120℃に達した時点で蒸気の供給を停止し、直ちに加熱冷却流路61に15℃の冷却水を供給し、B点が30℃に達した時点で冷却実験を終了した。
【実施例】
【0098】
比較例2:モデル金型70を用いた蒸気加熱及び冷却実験
比較例1で使用したモデル金型70を使用し、実施例3と同じ要領で蒸気加熱及び冷却実験を行った。
【実施例】
【0099】
実施例3及び比較例2のA点、B点、C点の温度経時変化を図10に示した。また表3に120℃に達するに要した加熱時間及び加熱・冷却全過程に要した時間を示した。
【実施例】
【0100】
【表3】
JP0005967834B2_000004t.gif
【実施例】
【0101】
図10及び表3に示すように金属複合層からなる実施例3のモデル金型60は、鋼単体からなる比較例2のモデル金型70に比較して、加熱時間及び冷却時間が大幅に短縮された。また金属複合層からなる実施例3のモデル金型60の場合、図10に示すように加熱・冷却の全過程において、A点、B点、C点の温度差が極めて小さかった。
【符号の説明】
【0102】
1:樹脂成形用金型
2:高硬度金属層
3:高熱伝導性金属層
4:磁性金属層
5:複合層
6:インダクタ
7:インダクタ収納溝(溝)
8:非磁性・低熱伝導層
9:金型基材
10:キャビティー面
11:冷却流路
12:異種金属の積層面(界面)
13:積層方向に平行な異種金属界面
14:異種金属材料の境界面(接合面)
16:負荷方向
17:外枠材
18:くさび形板材対
19:金型外形部
22:金属板(高硬度金属板)
23:金属板(高熱伝導性金属板)
24:金属板(磁性金属板)
25:金属板積層体
27:溝
30:樹脂成形用金型
50:モデル金型
51:絶縁材
60:モデル金型
61:加熱冷却流路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9