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明細書 :イオン液体が付着した繊維

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-017236 (P2016-017236A)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 イオン液体が付着した繊維
国際特許分類 D01F   1/10        (2006.01)
B01J  20/22        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
D01F   6/48        (2006.01)
D01F   6/54        (2006.01)
C08L  33/12        (2006.01)
C08L  27/06        (2006.01)
C08K   5/43        (2006.01)
C08K   5/3415      (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
FI D01F 1/10
B01J 20/22 A
B01J 20/28 Z
D01F 6/48 A
D01F 6/54 Z
C08L 33/12
C08L 27/06
C08K 5/43
C08K 5/3415
C08L 101/00
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2014-138866 (P2014-138866)
出願日 平成26年7月4日(2014.7.4)
発明者または考案者 【氏名】堤 宏守
【氏名】注連 圭佑
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
審査請求 未請求
テーマコード 4G066
4J002
4L035
Fターム 4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB16B
4G066AB21B
4G066AC15C
4G066AC17C
4G066BA16
4G066CA07
4G066CA35
4G066DA01
4J002BD041
4J002BD101
4J002BD141
4J002BD161
4J002BE021
4J002BE041
4J002BE051
4J002BF021
4J002BG061
4J002BG071
4J002CF001
4J002CH021
4J002CL001
4J002CP031
4J002EU026
4J002EV266
4J002FA041
4J002FB086
4J002FD206
4J002GK00
4J002GT00
4L035AA04
4L035BB02
4L035DD13
4L035EE20
4L035JJ11
4L035JJ30
要約 【課題】本発明の課題は、COを吸収させるために加圧する必要がなく、また、COの輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険性を低減するCO吸着材を提供することにある。
【解決手段】ポリマーの表面にイオン液体が付着していることを特徴とする繊維を見出した。前記繊維は、加圧しなくてもCOを吸収し、また、COの輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険性がないCO吸着材として使用可能である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリマーにイオン液体が付着していることを特徴とする繊維。
【請求項2】
ポリマーとイオン液体を含む組成物を電界紡糸法により紡糸することにより得られる請求項1記載の繊維。
【請求項3】
イオン液体が1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド又は1-ブチル-1-メチルピロリジニウムジシアナミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維。
【請求項4】
ポリマーがポリ塩化ビニル又はポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の繊維。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の繊維を含むことを特徴とする酸性ガスの吸着材。
【請求項6】
酸性ガスがCOであることを特徴とする請求項5に記載の吸着材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーとイオン液体を含む組成物を紡糸して得られる繊維、特に、COを吸収可能な繊維に関する。また、該繊維を含むCOの吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題は、喫緊に解決しなければならない課題であることは周知の事実である。特に温室効果ガスの削減が重要であり、最も影響が大きいとされているのは二酸化炭素(CO)の削減である。近年、大気中の二酸化炭素の削減方法として、CO回収・貯留技術(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)が世界的に注目されており、温暖化緩和策のキーテクノロジーの一つとして期待されている。具体的には、CCSは、火力発電所等の大規模なCO排出源において発生するCOを分離・回収し、輸送した後、地中あるいは海洋などで貯留する技術であり、CO貯留の実証実験が進められている。しかし、CCS技術の全プロセスにおいて、大規模発生源でのCOの分離・回収に要するコストが全体の約60%を占めていると言われている(非特許文献1)。
【0003】
このような中で、最近注目されているのが、イオン液体によるCO固定化技術である(特許文献1~3)。イオン液体によるCO固定では、例えばイミダゾール系のイオン液体を用いた場合、イオン液体にCOを接触させながら加圧すると、ガスはイオン液体1分子に対して4~5倍も溶解することが報告されている(非特許文献1)。イオン液体には、室温以下に融点をもち蒸気圧が低いため大気へほとんど放出されない、リサイクルが容易、広い温度範囲で液体溶媒として使用できる、難燃性であるなどの特徴がある。この特徴により、イオン液体によるCO固定化技術は従来のCOの化学吸収法(アミン法)における吸収液の再生工程が簡略化でき、従来の1/3程度にまで消費エネルギーを低減できるとされている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、イオン液体は一般的に粘性が高く、COの吸収速度を上げるためには、加圧等の操作が必要である。また、イオン液体は「液体」として存在するため、CO吸収後の輸送・隔離等の際に、漏洩・流出等に伴う危険性がある。したがって、漏洩・流出等の観点から「固体」として存在するCOを吸着する担体が必要とされている。
【0005】
繊維の一つであるナノファイバーは、その直径が1~100nm程度、長さが直径の100倍以上のファイバー状物質と定義されている極細繊維で、通常の繊維よりも比表面積が飛躍的に増大する利点がある。また、ナノファイバーはミクロフィルターや電極剤等、様々の分野へ応用されている(非特許文献3)。ナノファイバーの製作方法の一つに電界紡糸法があり、ポリマー溶液にプラスの高電圧を与え、それがアースやマイナスに帯電した表面にスプレーされる過程で繊維化を起こさせる手法である。また、ポリマー溶液に機能性物質を配合し電界紡糸することで、配合した物質の特性が繊維に付与された複合繊維が得られることが知られている(非特許文献4)。しかし、イオン液体を含むナノファイバー、COを吸着する効果を繊維に付与すること及び該繊維をCOの吸着材として使用することは知られていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-248052号公報
【特許文献2】特開2008-296211号公報
【特許文献3】特開2009-106909号公報
【0007】

【非特許文献1】経済産業省「低品位廃熱を利用する二酸化炭素分離回収技術開発」事後評価報告
【非特許文献2】産総研TODAY 2008-03、p27
【非特許文献3】本宮達也、図説よくわかるナノファイバー、日刊工業新聞社(2006)
【非特許文献4】山下義裕、エレクトロスピニング最前線-ナノファイバー創製への挑戦-、繊新社(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、COを吸収させるために加圧する必要がなく、また、COの輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険性を低減するCO吸着材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決のために鋭意研究の結果、加圧しなくてもCOを吸収し、また、COの輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険性がない、CO吸着材として使用可能なポリマーにイオン液体が付着してなる繊維を見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)ポリマーにイオン液体が付着していることを特徴とする繊維。
(2)ポリマーとイオン液体を含む組成物を電界紡糸法により紡糸することにより得られる上記(1)記載の繊維。
(3)イオン液体が1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド又は1-ブチル-1-メチルピロリジニウムジシアンアミドであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の繊維。
(4)ポリマーがポリ塩化ビニル又はポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の繊維を含むことを特徴とする酸性ガスの吸着材。
(6)酸性ガスがCOであることを特徴とする上記(5)に記載の吸着材。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリマーにイオン液体が付着してなる繊維は、イオン液体とCOの接触面積を大きくすることができるため、加圧等の操作をしなくてもCOを吸収することができる。また、上記繊維は、固体として存在するのでCOの輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険性がないCO吸着材として利用でき、COの固定化技術に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電界紡糸装置の概略図である。
【図2】電界紡糸法の概略図である。
【図3】PVC/EMIMのSEM像である。
【図4】PVC/BMPのSEM像である。
【図5】PMMA/EMIMのSEM像である。
【図6】PMMA/BMPのSEM像である。
【図7】PVCのSEM像である。
【図8】PMMAのSEM像である。
【図9】(a)EMIM、(b)PVC、(c)PVC/EMIMのFT-IR-ATRスペクトルである。
【図10】(a)BMP、(b)PVC、(c)PVC/BMPのFT-IR-ATRスペクトルである。
【図11】(a)EMIM、(b)PMMA、(c)PMMA/EMIMのFT-IR-ATRスペクトルである。
【図12】(a)BMP、(b)PMMA、(c)PMMA/BMPのFT-IR-ATRスペクトルである。
【図13】QCM測定装置の概略図である。
【図14】PVC/EMIMの平均周波数変化を表すグラフである。
【図15】PVC/BMPの平均周波数変化を表すグラフである。
【図16】PMMA/EMIMの平均周波数変化を表すグラフである。
【図17】PMMA/BMPの平均周波数変化を表すグラフである。
【図18】PVCの平均周波数変化を表すグラフである。
【図19】PMMAの平均周波数変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(繊維)
本発明の繊維としては、ポリマーとイオン液体が複合した繊維であり、ポリマーにイオン液体が付着していれば特に制限されず、ポリマーの少なくとも一部が付着されている状態であればよい。
本発明において、「付着」とは、ポリマーとイオン液体とが、接触してくっつき合っていることを意味する。
繊維の直径は、1nm~100μm、好ましくは1nm~10μmであり、さらに好ましくは1nm~5μmである。繊維の長さは、直径の5倍以上であり、好ましくは直径の10倍以上であり、さらに好ましくは直径の100倍以上である。また、繊維は、電界紡糸によりナノファイバーとして得ることができるが、ナノファイバーは比表面積が大きく、好適に用いることができる。

【0014】
前記ポリマーとしては、イオン液体と複合して繊維となるものであれば特に制限されないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の酢酸ビニル系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化ビニル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル系ポリマー;ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル等のメタクリル酸の炭素数2~6のヒドロキシアルキルエステル系ポリマー;メタクリル酸のアルコキシアルキルエステル系ポリマー;メタクリル酸のヒドロキシオリゴアルキレングリコールエステル系ポリマー;メタクリル酸のアルコキシオリゴアルキレングリコールエステル系ポリマー;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル等のビニルエーテル系ポリマー;ポリメチルビニルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系ポリマー;ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー;ポリ(メタ)アクロレイン等のアクロレイン系ポリマー;ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6,12等のポリアミド系ポリマー;ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系ポリマー;ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー等を挙げることができ、好ましくは、ハロゲン化ビニル系ポリマー及びメタクリル酸アルキルエステル系ポリマーであり、さらに好ましくは、ポリ塩化ビニル及びポリメタクリル酸メチルである。前記ポリマーは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いても良く、市販品を使用することができる。

【0015】
前記ポリマーの分子量は、数平均分子量で1,000~2,000,000であることが好ましく、10,000~1,000,000であることがより好ましい。また、前記ポリマーの数平均分子量に対する重量平均分子量の比によって計算される分子量分布は、好ましくは、1.0~4.0、より好ましくは1.0~3.5、最も好ましくは1.0~3.0の範囲である。

【0016】
イオン液体としてはポリマーと複合して繊維となるものであれば制限されないが、該イオン液体は以下に示すアニオンとカチオンから成る液体の塩である。

【0017】
アニオンは、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、テトラフルオロボレート(BF)、p-トルエンスルホナート(p-CH-CSO)、トリフルオロメタンスルホナート(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[(CFSO]、ジシアナミド[(NC)]、トリス(トリフルオロメチルスルフォニル)メチド[(CFSO]、酢酸イオン(CHCOO)、トリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)、テトラアルキルホスホニウム、テトラアルキルアンモニウム、N-アルキルピリジニウム、カルボカチオン、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、及び1,2,3-トリアルキルイミダゾリウムから少なくとも1種類以上が選択される。前記アニオンの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[(CFSO]、ジシアナミド[(NC)]が好ましい。

【0018】
カチオンは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-メチル-3-(3-シアノプロピル)イミダゾリウム、1-メトキシエチル-3-メチルイミダゾリウム、N-ヘキシルピリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、メチル(トリオクチル)アンモニウム、及び(S)-4-イソプロピル-2-エチル-3-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-3-イウムから選択される1種以上を含むイオン液体を用いることができる。前記カチオンの中でも、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムが好ましい。

【0019】
前記イオン液体の中でも、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-3-(3-シアノプロピル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メトキシエチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムジシアナミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドが好ましく、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及び1-ブチル-1-メチルピロリジニウムジシアナミドがより好ましい。

【0020】
(製造方法)
本発明の繊維は、ポリマーとイオン液体を含む組成物の電界紡糸により製造できる。電界紡糸は、ポリマーとイオン液体を含む組成物に高電圧を印加する方法である。電界紡糸は図1に示す装置で行うことができ、ポリマーとイオン液体を含む組成物より、以下の段階を経てイオン液体がポリマーに付着した繊維が得られる。イオン液体がポリマーの表面に付着した繊維が生成する概略図を図2に示す。
(1)ポリマーとイオン液体を含む組成物を充填したシリンジの針先にプラスの高電圧が印加され該組成物に負荷がかけられる。
(2)高電圧により、針先の上記の組成物がテーラーコーンと呼ばれる円錐状になる。
(3)組成物中の分子同士が正電荷に帯電して反発し、針先の表面張力よりも分子同士の反発力が大きくなり、負に帯電しているアース電極へ向かって上記の組成物が霧状に噴射される。
(4)霧状に噴射された組成物は、繊維になってアース電極に堆積する。

【0021】
前記ポリマーとイオン液体を含む組成物は、前記ポリマーと前記イオン液体のみからなる組成物でもよく、さらに適当な溶媒を含んでいてもよい。
前記ポリマーと前記イオン液体の配合割合は、重量比で、1:0.1~0.8であり、1:0.3~0.5が好ましい。
溶媒としては、前記ポリマーと前記イオン液体を溶解するもので、前記繊維を生成するものであれば特に制限されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の塩素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。

【0022】
本電界紡糸法によれば、イオン液体がポリマーに付着した繊維が二次元的に広がった状態で形成されるため、不織布を直接作成することもできる。

【0023】
(COの吸着材)
本発明の繊維や不織布は、イオン液体を含んでおりCOを吸収することができるため、COの吸着材になる。本発明の繊維や不織布にCOを含むガスを接触させることによって、COを吸着させることができる。また、繊維や不織布に吸着されたCOは、COが吸着した繊維や不織布を、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスへ接触すること、減圧すること、加熱すること、及びそれらの組合せによって、繊維や不織布から放出させることができる。COが放出された繊維や不織布は再びCOの吸着材になる。また、イオン液体はCOに限らず、二酸化硫黄(SO)、三酸化硫黄(SO)、硫化水素(HS)、二酸化窒素(NO)、二硫化炭素(CS)等の酸性の気体を吸着するため、本発明の繊維や不織布は酸性ガスの吸着材としても好適である。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1.PVC/EMIM繊維の調製
PVCの重量パーセント濃度が9wt%、PVC:EMIM=10:4(wt/wt)となるように、サンプル管に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬株式会社製)2ml、テトラヒドロフラン(THF、ナカライテスク株式会社製)3ml、ポリ塩化ビニルポリマー(PVC、キシダ化学株式会社製)0.469g、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(EMIM、関東化学株式会社製)0.188gを加えて24時間攪拌し、PVC/EMIM紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPVC/EMIM紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PVC/EMIM繊維を得た。
【実施例】
【0026】
実施例2.PVC/BMP繊維の調製
PVCの重量パーセント濃度が9wt%、PVC:BMP=10:4(wt/wt)となるように、サンプル管に、DMF2ml、THF3ml、PVC0.469g、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムジシアンアミド(BMP、メルク株式会社製)0.188gを加えて24時間攪拌し、PVC/BMP紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPVC/BMP紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PVC/BMP繊維を得た。
【実施例】
【0027】
実施例3.PMMA/EMIM繊維の調製
PMMAの重量パーセント濃度が9wt%、PMMA:EMIM=10:4(wt/wt)となるように、サンプル管に、DMF2ml、THF3ml、メタクリル酸メチルポリマー(PMMA)0.469g、EMIM0.188gを加えて24時間攪拌し、PMMA/EMIM紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPMMA/EMIM紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PMMA/EMIM繊維を得た。
【実施例】
【0028】
実施例4.PMMA/BMP繊維の調製
PMMAの重量パーセント濃度が9wt%、PMMA:BMP=10:4(wt/wt)となるように、サンプル管に、DMF2ml、THF3ml、PMMA0.469g、BMP0.188gを加えて24時間攪拌し、PMMA/BMP紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPMMA/BMP紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PMMA/BMP繊維を得た。
【実施例】
【0029】
比較例1.PVC繊維の調製
PVCの重量パーセント濃度が9wt%となるように、サンプル管に、DMF2ml、THF3ml、PVC0.451gを加えて24時間攪拌し、PVC紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPVC紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PVC繊維を得た。
【実施例】
【0030】
比較例2.PMMA繊維の調製
PMMAの重量パーセント濃度が9wt%となるように、サンプル管に、溶媒であるDMF2ml、THF3ml、PMMA0.451gを加えて24時間攪拌し、PMMA紡糸溶液を調製した。次に、図1に示す電界紡糸装置で、印加電圧29kv、針先-アルミ箔距離10cmとし、流速0.3ml/h、回転速度1000rpmでアルミ箔上にPMMA紡糸溶液を紡糸した後、24時間乾燥させ、PMMA繊維を得た。
【実施例】
【0031】
実施例5.走査型電子顕微鏡(SEM)による繊維の表面の観察
実施例1~4、比較例1及び2で作製した繊維の表面をSEMにより観察した。SEMは、サーマル電界放出形走査型電子顕微鏡(JSM7600F日本電子株式会社製)を使用した。また、得られたSEM画像から繊維の平均直径を算出した。測定の際には、カーボンテープ(日新EM株式会社製)を使用して試料台に試料を貼り付けて観察を行った。
実施例1~4、比較例1及び2で作製した繊維の画像を図3~8に示す。また、平均直径及び標準偏差を表1に示す。さらに、各繊維の重量及び密度より算出した表面積を表1に示す。
【実施例】
【0032】
【表1】
JP2016017236A_000002t.gif
【実施例】
【0033】
実施例6.フーリエ変換分光法(FT-IR)による繊維中のイオン液体の確認
全反射吸収分光法(FT-IR-ATR)により作製した繊維中のイオン液体の存在確認を行った。測定装置として、フーリエ変換赤外分光光度計IR-Psestige-21(島津株式会社製)を使用した。また、付属品としてダイヤモンドATRアクセサリー(株式会社エス・ティ・ジャパン製)を使用した。
図9に(a)EMIM、(b)PVC、(c)PVC/EMIMのFT-IR-ATRスペクトルを示す。PVC/EMIMのスペクトルにおいて、EMIMのスルホン基(SO)の伸縮振動に帰属されるピーク(1350cm-1)、PVCのメチレン基(CH)の伸縮振動に帰属されるピーク(1430cm-1)を確認したことから繊維中にEMIMが存在していることを確認した。
図10に(a)BMP、(b)PVC、(c)PVC/BMPのFT-IR-ATRスペクトルを示す。PVC/BMPのスペクトルにおいてBMPのニトリル基(CN)の伸縮運動に帰属されるピーク(2230cm-1、2194cm-1、2194cm-1)とPVCのメチレン基(CN)の伸縮振動に帰属される(1430cm-1)を確認したことから繊維中にBMPが存在していることを確認した。
図11に(a)EMIM、(b)PMMA、(c)PMMA/EMIMのFT-IR-ATRスペクトルを示す。PMMA/EMIMのスペクトルにおいてEMIMのスルホン基(SO)の伸縮振動に帰属されるピーク(1350cm-1)、PMMAのカルボニル基(C=O)の伸縮運動に帰属されるピーク(1725cm-1)を確認したことから繊維中にEMIMが存在していることを確認した。
図12に(a)BMP、(b)PMMA、(c)PMMA/BMPのFT-IR-ATRスペクトルを示す。PMMA/BMPのスペクトルにおいてBMPのニトリル基(CN)の伸縮運動に帰属されるピーク(2230cm-1、2194cm-1、2194cm-1)とPMMAのカルボニル基(C=O)の伸縮運動に帰属されるピーク(1725cm-1)を確認したことから繊維中にBMPが存在していることを確認した。
また、全てのポリマー/イオン液体の繊維でイオン液体のピークが、ポリマーのピークより強く出ているためポリマーの表面にイオン液体が付着していると考えられる。
【実施例】
【0034】
実施例7.水晶振動子マイクロバランス法(QCM)によるCO吸収量の測定
QCM法では、質量の変化が周波数の変化を検出することで測定できる。具体的には、水晶振動子に一定の周波数を流し、水晶振動子に物質が付着すると振動エネルギーが低下するので、周波数の減少が検出される。一方、水晶振動子から物質が脱離すると振動エネルギーが上昇するので、周波数の上昇が検出される。
水晶振動子上に実施例1~4、比較例1及び2の繊維を紡糸し、窒素(N)とCOを1000(s)ごとに繰り返し供給することにより、CO吸収/脱離実験を行った。測定は最初にN、次にCOをそれぞれ1000sおきに注入し、これを計3サイクル繰り返した。得られた周波数変化量からCO吸収量を求めた。測定装置として図13に示す装置を用いた。実施例1~4、比較例1及び2で作製したファイバーのQCMによる周波数変化のグラフを図14~19に示す。
また、CO注入における単位表面積当たりの平均周波数変化の結果を表2に示す。
【実施例】
【0035】
【表2】
JP2016017236A_000003t.gif
【実施例】
【0036】
ポリマーのみからなる比較例1及び比較例2の繊維で周波数の変化が小さかったのに対し、ポリマーの表面にイオン液体が付着してなる実施例1~4のポリマー繊維は、N雰囲気下では周波数が上昇し、CO雰囲気下では周波数が降下した。すなわち、N雰囲気下では質量が減少し、CO雰囲気下では質量が増加したことを意味し、ポリマーの表面にイオン液体が付着してなるポリマー繊維にCOが吸着及び脱離することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の繊維は、ポリマーにイオン液体が付着した繊維であり、COを効率よく吸収することができる。イオン液体にCOを吸収させるためには加圧する必要があり、イオン液体が液体であるため輸送・隔離等の際に漏洩・流出の危険があったが、本発明の繊維は、常圧でCOを吸収し、漏洩・流出の危険がないCO吸着材として使用可能である。本発明の繊維はCOに加えて、二酸化硫黄(SO)、三酸化硫黄(SO)、硫化水素(HS)、二酸化窒素(NO)、二硫化炭素(CS)等の酸性の気体も吸着できるので、これら酸性の気体の分離・精製にも用いることができる。
図面
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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