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明細書 :層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-162805 (P2016-162805A)
公開日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体及びその製造方法
国際特許分類 H01G  11/46        (2013.01)
H01G  11/40        (2013.01)
H01G  11/34        (2013.01)
H01G  11/02        (2013.01)
H01G  11/86        (2013.01)
FI H01G 11/46
H01G 11/40
H01G 11/34
H01G 11/02
H01G 11/86
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-037918 (P2015-037918)
出願日 平成27年2月27日(2015.2.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成26年11月8日に2014年日本化学会中国四国支部大会実行委員会が発行した「2014年日本化学会中国四国支部大会講演要旨集」にて発表 (2)平成26年11月8日に2014年日本化学会中国四国支部大会の口頭発表にて発表
発明者または考案者 【氏名】中山 雅晴
【氏名】阿部 光
【氏名】小峰 恭平
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
審査請求 未請求
テーマコード 5E078
Fターム 5E078AA01
5E078AA10
5E078AB04
5E078BA14
5E078BA27
5E078BB06
5E078BB13
5E078BB30
要約 【課題】本発明の課題は、電気化学キャパシタ等に使用できる、容量が大きく急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極材料及びその製造方法、並びに容量が大きく急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極及び電気化学キャパシタを提供することにある。
【解決手段】表面に層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体であり、前記層状マンガン酸化物がマンガンを含む化合物の電気分解により炭素繊維集合体の表面に担持されたことを特徴とする束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体であり、前記層状マンガン酸化物がマンガンを含む化合物の電気分解により炭素繊維集合体の表面に担持されたことを特徴とする束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体。
【請求項2】
賦活処理された表面に層状マンガン酸化物が担持されたことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維集合体。
【請求項3】
賦活処理が、炭素繊維集合体を酸化処理し、その後還元処理する処理であることを特徴とする請求項2記載の炭素繊維集合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維集合体を備えることを特徴とする電極。
【請求項5】
請求項4記載の電極、電解質層及び対極を備えることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項6】
束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体を、2価のマンガンイオン又は過マンガン酸イオンを含む溶液中に浸漬し、前記溶液中の2価のマンガンイオンを電気化学的に酸化することにより、又は過マンガン酸イオンを電気化学的に還元することにより、炭素繊維集合体の表面に層状マンガン酸化物を析出させることを特徴とする表面に層状マンガン酸化物が担持された束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体及びその製造方法並びに前記炭素繊維集合体を備える電極及び該電極を備える電気化学キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の代替、ハイブリッド自動車等の補助電源、太陽光発電のエネルギーバッファ等に用いるデバイスとして、大容量でありながらパワー密度が高く急速充放電が可能でサイクル安定性が高いとの特徴を有する電気化学キャパシタが注目されている。また、最近では、電子機器等に対するフレキシブル化、ウェアラブル化の要求から、電池のフレキシブル化が求められており、フレキシブルな電極の必要性が高まってきている。このような状況下、上記の特徴を有する電気化学キャパシタをフレキシブル化することが検討され、電気化学キャパシタに用いることができるフレキシブルな電極の開発が要請されている。
【0003】
電気化学キャパシタは、その蓄電メカニズムによって大きく2つに分けられる。一つは、イオンを物理的に吸脱着させることにより電荷を蓄える電気二重層キャパシタ、もう一つは速く可逆なレドックス反応により電荷を蓄える擬似キャパシタ(レドックスキャパシタ)である。電気二重層キャパシタでは、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料が電極活物質として使用されている。そして電極は、これらの電極活物質に導電材とバインダーを混合し、この混合物からなるシートを集電体に接着する方法や、この混合物を含むペーストや分散液を金属箔等の集電体に塗布する方法により作製されている(特許文献1)。しかし、このように作製された電極は、絶縁性物質であるバインダーを含むことによる内部抵抗の増加、電極活物質と集電体の界面抵抗等により速度特性が著しく妨げられ、内部抵抗を下げるためのカーボンブラック等の導電材のために電極活物質の配合割合が低くなりキャパシタ容量の減少を招くなどの問題点があった。さらに、上記の方法では、フレキシブルな電極を作製することは難しかった。
【0004】
一方、他の炭素材料として、従来から様々な分野で用いられている炭素繊維がある。炭素繊維とは、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られる、質量比で90%以上が炭素で構成される繊維のことである(JIS L0204-2:2010)。しかし、炭素繊維は、比キャパシタンスが、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン等に比べて著しく小さいため、電気二重層キャパシタの電極活物質として使用することはできなかった。最近、炭素繊維でできたカーボンクロスを賦活処理して、単位面積あたりのキャパシタンスを高めたことが報告されているが、まだ満足する特性は得られていない(非特許文献1)。
【0005】
また、電気化学キャパシタのもう一つの方式である擬似キャパシタでは、酸化ルテニウム、酸化マンガン、酸化ニッケル等の金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子などの炭素材料とは異なる材料が電極活物質として検討されている。本発明者らも、二次電池やキャパシタに用いることができる層状マンガン酸化物を電気化学的に製造する方法(特許文献2及び3)や、層状マンガン酸化物を用いた光電極(特許文献4)を提案している。しかしながら、擬似キャパシタにおいても、フレキシブルな電極やデバイスは得られていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2000-124079号公報
【特許文献2】特許第4547495号公報
【特許文献3】特許第5598844号公報
【特許文献4】特開2014-137968号公報
【0007】

【非特許文献1】G.Wang et al.,Adv.Mater.,26,2676(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、電気化学キャパシタ等に使用できる、容量が大きく急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極材料及びその製造方法、並びに容量が大きく急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極及び電気化学キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、電気化学キャパシタ等に使用できるフレキシブルな電極を作製することを目指して開発を開始した。そして、導電性が高く、機械的な柔軟性と強度に優れながらも、比キャパシタンスが小さいため、従来は電気化学キャパシタの電極材料として用いられてこなかった炭素繊維に着目した。本発明者らは、電気化学キャパシタの性能は、電極活物質の性能だけではなくセルとしての性能を考える必要があり、電極活物質の単位質量あたりの指標で、電極へのローディング量が多くなると使用効率が低下するため、ローディング量が少ない方が大きな値を示す傾向にある比キャパシタンスよりも、電極の単位面積あたりのキャパシタンスを重視して開発を進めた。こうして検討を重ねたところ、炭素繊維を束状、織布状、不織布状等の集合体とし、その表面に層状マンガン酸化物を電気化学的処理により担持させ、炭素繊維の集合体と層状マンガン酸化物を複合化することにより、単位面積あたりのキャパシタンスを非常に大きくできることを見いだした。このようにして得られた炭素繊維と層状マンガン酸化物の複合体は、導電材やバインダーを用いる必要はなく、導電性及び機械的な柔軟性と強度に優れるため、必ずしも集電体を必要とせずに、それ自体をフレキシブルな電極として使用することも可能であることを見いだしたものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)表面に層状マンガン酸化物が担持された炭素繊維集合体であり、前記層状マンガン酸化物がマンガンを含む化合物の電気分解により炭素繊維集合体の表面に担持されたことを特徴とする束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体。
(2)賦活処理された表面に層状マンガン酸化物が担持されたことを特徴とする上記(1)記載の炭素繊維集合体。
(3)賦活処理が、炭素繊維集合体を酸化処理し、その後還元処理する処理であることを特徴とする上記(2)記載の炭素繊維集合体。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の炭素繊維集合体を備えることを特徴とする電極。
(5)上記(4)記載の電極、電解質層及び対極を備えることを特徴とする電気化学キャパシタ。
(6)束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体を、2価のマンガンイオン又は過マンガン酸イオンを含む溶液中に浸漬し、前記溶液中の2価のマンガンイオンを電気化学的に酸化することにより、又は過マンガン酸イオンを電気化学的に還元することにより、炭素繊維集合体の表面に層状マンガン酸化物を析出させることを特徴とする表面に層状マンガン酸化物が担持された束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、単位面積あたりのキャパシタンスが大きく、急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極材料、電極及び電気化学キャパシタを提供することができる。また、本発明の製造方法によると、炭素繊維集合体の表面に、バインダー等を必要とせずに層状マンガン酸化物を均一に担持させることができ、その担持量を調整することができるので、単位面積あたりのキャパシタンスが大きく、急速充放電が可能であり、機械的な柔軟性と強度に優れる電極材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量0.44mg/cm)及び比較例1で得られたカーボンクロスのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量4.27mg/cm)及び比較例2で得られたカーボンクロスのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。
【図3】図3は、賦活処理後のカーボンクロス及び脱脂処理後のカーボンクロスのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量4.27mg/cm)、比較例2で得られたカーボンクロス及び賦活処理後のカーボンクロスの掃引速度に対する単位面積あたりのキャパシタを示すグラフである。
【図5】図5(a)は、実施例3で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量0.24mg/cm)及び賦活処理後のカーボンクロスのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフであり、図5(b)は、実施例3で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量0.24mg/cm)及び賦活処理後のカーボンクロスの掃引速度に対する単位面積あたりのキャパシタを示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で得られたカーボンクロスについて、層状マンガン酸化物の各担持量における掃引速度と比キャパシタンスの関係を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1で得られたカーボンクロスについて、層状マンガン酸化物の各担持量における掃引速度と単位面積あたりのキャパシタンスの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭素繊維集合体は、表面に層状マンガン酸化物が担持されたことを特徴とする束状、織布状又は不織布状の炭素繊維集合体である。本発明における炭素繊維は、炭素繊維であれば特に限定されるものではないが、例えば、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等を挙げることができる。本発明における炭素繊維集合体は、炭素繊維を束状、織布状又は不織布状の形態にしたものである。本発明における束状の炭素繊維集合体は、炭素繊維を集合させて束状の形態にしたものであれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維の長繊維の原糸(単繊維)の束、炭素繊維の短繊維の原糸をステープル紡績により糸としたもの等を挙げることができ、一般にフィラメント、トウ、ステープルなどと呼ばれるものを使用することができる。本発明における織布状の炭素繊維集合体は、炭素繊維を集合させて織布状の形態にしたものであれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維の長繊維の束を織ったもの、炭素繊維の短繊維をステープル紡績により糸としたものを織ったもの等を挙げることができ、一般にカーボンクロスと呼ばれるものを使用することができる。また、本発明における不織布状の炭素繊維集合体は、炭素繊維を集合させて不織布状の形態にしたものであれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維を積層したもの、ニードルパンチ加工をしたもの等を挙げることができ、フェルト状、マット状及びペーパー状のものも含まれる。

【0014】
本発明における層状マンガン酸化物は、マンガン酸化物の層が形成され、各層の間に間隙があるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、バーネサイト型層状マンガン酸化物等を挙げることができる。バーネサイト型層状マンガン酸化物は、マンガンを中心とし頂点に6つの酸素を配置したMnOで示される八面体構造が、互いに頂点と稜を共有して広がった層を形成し、その層が積み重なった層状化合物であり、Mn3+/Mn4+の混合原子価をもつマンガン酸化物(MnO)である。本発明における層状マンガン酸化物は、一つの層の厚みとその次の層との間の間隔を加えた値(層間距離)が、物理化学的及び機械的安定性の観点から0.4~5nmが好ましく、0.5~3nmが更に好ましく、0.7~1.5nmがより好ましい。また、本発明においては、層状マンガン酸化物が炭素繊維集合体の少なくとも表面に担持されていればよく、さらに炭素繊維集合体の内部に担持されていてもよい。ここで、表面に担持とは、層状マンガン酸化物が炭素繊維集合体の表面に付着していればよく、要求されるキャパシタ特性を発現できれば必ずしも表面全体に付着していなくてもよいが、キャパシタ特性を向上させる観点から、炭素繊維集合体の表面に均一に担持されていることが好ましい。また表面を被覆するように担持されていることが好ましい。本発明においては、層状マンガン酸化物の担持量は、要求されるキャパシタ特性に合わせて調製することができ、特に限定されるものではないが、キャパシタ特性を向上させる観点から、3mg/cm以上が好ましく、4mg/cm以上が更に好ましく、9mg/cm以上がより好ましい。

【0015】
層状マンガン酸化物を白金板等の平板な基体上に担持させると、層状マンガン酸化物は、基体上に水平方向に担持される。このため、電気化学キャパシタ等の電極として用いようとした場合、電気化学的に利用されるのは、マンガン酸化物の外表面のみとなり、マンガン酸化物の層間は利用されない。一方、本発明の場合、炭素繊維を集合させて束状、織布状又は不織布状の形態としているため、炭素繊維自身の曲面に加え、集合体を構成する炭素繊維の間に炭素繊維同士により形成される窪みや凹凸がある。この炭素繊維集合体上にマンガン化合物の電気分解により層状マンガン酸化物を析出させると、析出したマンガン酸化物上にマンガン酸化物が成長するため、層状マンガン酸化物が一定方向に平面的に並ぶのではなく、三次元的にランダムに配向して担持されると考えられる。そのため、本発明の炭素繊維集合体は、マンガン酸化物の外表面だけでなく層間も電気化学的に利用されることにより、イオン拡散が速く大きなキャパシタ応答性が得られると考えられる。また、層状マンガン酸化物が水平方向に重なって担持された場合、電気化学的に利用されるのは、積層されたマンガン酸化物の表面部分のみであり、下方にあるマンガン酸化物は利用されないため、マンガン酸化物の担持量を増やしてもキャパシタンスは一定以上増加しない。これに対し、本発明の炭素繊維集合体においては、層状マンガン酸化物が三次元的にランダムに配向して担持され、その外表面だけでなく層間の内表面も電気化学的に利用できることにより、担持されたマンガン酸化物を有効に利用でき、マンガン酸化物の担持量を増加させることにより、単位面積当たりのキャパシタンスを増加させることができるものと考えられる。さらに、本発明の炭素繊維集合体は、炭素繊維を束状、織布状又は不織布状の集合体として用いているので、導電性が高く、機械的な柔軟性と強度に優れ、また大面積化も可能となるので、フレキシブルな電極用の電極材料及び電極として好適である。水熱処理により層状マンガン酸化物を析出させる方法もあるが、水熱処理による反応は、過マンガン酸イオンと炭素間の酸化還元反応により反応が進行するため、マンガン酸化物上にマンガン酸化物は形成されず、本発明とはマンガン酸化物の担持状態が異なる。

【0016】
本発明の炭素繊維集合体は、マンガンを含む化合物の電気分解により炭素繊維集合体の表面に層状マンガン酸化物を析出させて担持させる電気化学的方法により製造される。前記電気化学的方法としては、例えば、2価のマンガンイオンを電気化学的に酸化することにより、層状マンガン酸化物をアノード側に析出させる方法(以下、アノード電解法ともいう。)、過マンガン酸イオンを電気化学的に還元することにより、層状マンガン酸化物をカソード側に析出させる方法(以下、カソード電解法ともいう。)等が挙げられる。また、2価のマンガンイオン又は過マンガン酸イオンの存在する溶液中には、アルカリ金属イオンを共存させることが好ましい。アノード電解法において使用されるマンガン化合物は、電解液に可溶な2価のマンガン化合物であれば特に限定されず、例えば、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン等の無機酸の塩、蓚酸マンガンアンモニウム、蓚酸マンガンカリウム等の有機マンガン化合物などを挙げることができる。なかでも電気分解による層状マンガン酸化物の析出のしやすさや、入手の容易性等から硫酸マンガンを好適に例示できる。カソード電解法において使用されるマンガン化合物は、特に限定されず、例えば、過マンガン酸塩を挙げることができ、過マンガン酸塩としては、過マンガン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。なかでも、ナトリウム塩又はカリウム塩を好適に例示できる。本発明の炭素繊維集合体は、上記マンガン化合物が溶解した溶液中に炭素繊維集合体を浸漬し、アノード電解法の場合は、炭素繊維集合体をアノード電極として用い、カソード電解法の場合は、炭素繊維集合体をカソード電極として用い、対極に白金電極等を用いて電気分解を行うことにより、炭素繊維集合体上に層状マンガン酸化物を析出させることにより製造することができる。本発明の炭素繊維集合体を製造する方法としては、使用するマンガン酸化物の取扱いの容易さ、電気分解による析出のコントロールの容易さの観点からアノード電解法が好ましい。水熱処理により層状マンガン酸化物を析出させる方法もあるが、水熱処理による反応は、過マンガン酸イオンと炭素間の酸化還元反応により反応が進行するため、本発明のように層状マンガン酸化物を炭素繊維集合体の表面に定量的にコントロールして担持させることはできない。また、水熱処理法の場合、炭素表面での反応のため、表面が完全に被覆されると反応が自己停止し、層状マンガン酸化物の析出量を増やすことはできない。

【0017】
本発明の炭素繊維集合体は、賦活処理された表面に層状マンガン酸化物が担持されていることが好ましい。炭素材料における賦活処理とは、炭素材料に細孔又は凹凸を付与する処理をいう。本発明における賦活処理は、特に限定されるものではないが、例えば、ガス賦活法、薬品賦活法等を挙げることができる。ガス賦活法とは、水蒸気、二酸化炭素、空気、酸素、燃焼ガス等を用いて高温で炭素材料と反応させ、炭素材料中の揮発成分や炭素原子をガス化する方法であり、薬品賦活法とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属化合物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛等の脱水性の塩、リン酸、硫酸、硝酸等の酸などの薬品を用いて賦活処理する方法であり、本発明における賦活処理は、これら一般的に行われる賦活方法によることができる。また、薬品を用いて賦活処理する方法として、炭素繊維を酸化処理し、その後還元処理する方法を挙げることができる。使用する酸化剤や還元剤は、特に限定されるものではないが、酸化剤としては、例えば、硫酸、硝酸、硫酸と硝酸の混合物、過マンガン酸カリウム等を挙げることができ、還元剤としては、例えば、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。具体的には、炭素繊維を、硫酸、硝酸及び過マンガン酸カリウムを含む溶液中で酸化処理し、その後、ヒドラジンガス、続いてアンモニアガスを用いて2段階で還元処理する方法や、炭素繊維を、硫酸、硝酸及び過マンガン酸カリウムを含む溶液中で酸化処理し、その後、水素化ホウ素ナトリウムを溶解した溶液中で還元処理する方法を挙げることができる。水素化ホウ素ナトリウムはヒドラジンよりも還元力が強く、1段階で炭素繊維の還元処理ができるため、炭素繊維を、硫酸、硝酸及び過マンガン酸カリウムを含む溶液中で酸化処理し、その後、水素化ホウ素ナトリウム溶液中で還元処理する方法が好ましい。炭素繊維集合体の表面が賦活処理されることにより、炭素繊維集合体を構成する炭素繊維の表面に細孔や凹凸が形成され、層状マンガン酸化物が、より一層、三次元的にランダムに配向して担持されるため、更にキャパシタ応答性を大きくでき、単位面積当たりのキャパシタンスを増加させることができる。本発明においては、炭素繊維を束状、織布状又は不織布状の集合体にした後に賦活処理を行ってもよく、賦活処理した炭素繊維を束状、織布状又は不織布状の形態にしてもよい。

【0018】
本発明の電極は、本発明の炭素繊維集合体を備えていれば特に限定されない。本発明の炭素繊維集合体をそのまま電極として用いてもよく、本発明の炭素繊維集合体を他の導電性シート、導電板等に固定して電極としてもよい。本発明の電気化学キャパシタは、本発明の電極、電解質層及び対極を備えていれば特に限定されない。本発明における電解質層を形成する電解質は、特に限定されないが、例えば、硫酸水溶液等の水系の電解質、TEABF(ホウフッ化テトラエチルアンモニウム)/PC(プロピレンカーボネート)、LiPF/EC(エチレンカーボネート)+DEC(ジエチルカーボネート)等の有機系の電解質、イオン液体などを挙げることができる。また、本発明における対極は、特に限定されず、アルミニウム、ステンレス、導電性樹脂等の一般的に電極として用いられるものを用いることができる。本発明の電気化学キャパシタは、本発明の電極と対極との間に電解質層を形成することにより製造することができる。
【実施例1】
【0019】
硫酸20mlに硝酸10mlをゆっくりと加え、室温になるまで放冷し、放冷後の混酸に過マンガン酸カリウム3gを溶解させた。カーボンクロス(商品名カーボンクロス・テフロン処理なし(EC-CC1-060)、東陽テクニカ(Electrochem社in USA)社製)を、得られた溶液に浸漬し、溶液を撹拌しながら35℃で3時間保持した。その後、蒸留水100mlを加え、さらに3時間保持した。さらに、過酸化水素を、溶液が透明になり、泡が発生しなくなるまで加えた。その後、浸漬したカーボンクロスを溶液から取り出し、蒸留水で洗浄した。次に、洗浄したカーボンクロスを、水酸化ホウ素ナトリウム0.5gを溶かした0.1M水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、90℃で3時間還流した。その後、浸漬したカーボンクロスを溶液から取り出し、蒸留水で洗浄した。このようにしてカーボンクロスを賦活処理した後、50mM塩化カリウムを含む2mM硫酸マンガン水溶液にカーボンクロスを浸漬し、対極として白金板を用いて、+1.0V vs Ag/AgCl sat.KClでアノード電解して、カーボンクロス上に層状マンガン酸化物を析出させ担持させた(担持量:0.44mg/cm、4.27mg/cm)。
【実施例2】
【0020】
電解酸化の際の通過電気量の条件以外は、実施例1と同じにして、層状マンガン酸化物の担持量の異なるカーボンクロスを得た(担持量:0.93mg/cm、1.72mg/cm、2.52mg/cm、4.27mg/cm、9.75mg/cm、13.0mg/cm)。
【実施例3】
【0021】
実施例1と同じ賦活処理を行ったカーボンクロスを、50mM塩化カリウムを含む2mM過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬し、対極として白金板を用いて、0V vs Ag/AgCl sat.KClでカソード電解して、カーボンクロス上に層状マンガン酸化物を析出させ担持させた(担持量:0.24mg/cm)。
【実施例3】
【0022】
[比較例1]
白金板を、50mM塩化カリウムを含む2mM硫酸マンガン水溶液に浸漬し、対極として白金板を用いて、+1.0V vs Ag/AgCl sat.KClでアノード電解し、白金板上に層状マンガン酸化物を析出させた(担持量:0.44mg/cm)。
【実施例3】
【0023】
[比較例2]
実施例1と同じ賦活処理を行ったカーボンクロスを、5mM過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬し、オートクレーブ中で、120℃で12時間保持して、カーボンクロス上に層状マンガン酸化物を析出させ担持させた(担持量:2.0mg/cm)。なお、実施例1~3並びに比較例1及び2で析出した層状マンガン酸化物は、バーネサイト型層状マンガン酸化物であった。
【実施例3】
【0024】
実施例1で得られた層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロス(担持量:0.44mg/cm)、比較例1で得られた層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロスを、それぞれ電極としてそのまま用いて、0.5M硫酸ナトリウム水溶液中でサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果を図1に示す(図中、実施例1で得られたカーボンクロスをMnO2/A-CC、比較例1で得られたカーボンクロスをMnO2/Pt plateと表示した)。図1では、担持されたマンガン酸化物そのものの性質を比較するため、電流密度はマンガン酸化物の単位質量あたりの値として見積もっている。図1からわかるとおり、層状マンガン酸化物を担持したカーボンクロスは、層状マンガン酸化物を担持した白金板に比べてはるかに大きなキャパシタ応答を示している。比キャパシタは、それぞれ231F/g(MnO2/A-CC)、4F/g(MnO2/Pt plate)と見積もられる。
【実施例3】
【0025】
実施例1で得られたカーボンクロス(担持量:4.27mg/cm)、並びに比較例2で得られたカーボンクロスを、それぞれ電極としてそのまま用いて、0.5M硫酸ナトリウム水溶液中でサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果を図2に示す(図中、実施例1で得られたカーボンクロスをAnodic-MnO2、比較例2で得られたカーボンクロスをH.T.-MnO2と表示した)。また、実施例1における賦活処理後のカーボンクロスと、実施例1で用いたものと同じ種類のカーボンクロスを、アセトンに浸漬させ15分間超音波洗浄し、その後エタノールに浸漬させて15分間超音波洗浄して脱脂を行ったものを電極としてそのまま用いて、0.5M硫酸ナトリウム水溶液中でサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果を図3に示す(図中、賦活処理したものをActivated-CC、脱脂処理のみのものをUntreated-CCと表示した)。図2及び図3からわかるとおり、実施例1で得られた電気化学的に層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロスは、賦活処理や脱脂処理したカーボンクロスに比べて、はるかに大きな電流応答を示している。また、比較例2で得られた水熱処理により層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロスに比べても優れた電流応答を示している。さらに、掃引速度に対する単位面積あたりのキャパシタをプロットしたものを図4に示す。図4からわかるとおり、実施例1の電気化学的に層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロスは、層状マンガン酸化物を担持しないカーボンクロスや水熱処理により層状マンガン酸化物が担持されたカーボンクロスに比べて、いずれの掃引速度においても単位面積あたりのキャパシタンスが増加している。また、図5で示されるように、実施例3で得られたカーボンクロスは、マンガン酸化物の担持量が極めて少ないにもかかわらず、賦活処理したカーボンクロスに比べて、大きなキャパシタ応答を示し(図5(a))、いずれの掃引速度においても単位面積あたりのキャパシタンスが増加している(図5(b))。
【実施例3】
【0026】
実施例1で得られたカーボンクロス(層状マンガン酸化物の担持量:0.93mg/cm、1.72mg/cm、2.52mg/cm、4.27mg/cm、9.75mg/cm、13.0mg/cm)をそれぞれ用いて、掃引速度の違いによる比キャパシタンスを測定した結果を図6に示す。また、掃引速度の違いによる単位面積あたりのキャパシタンスを測定した結果を図7に示す。図6からわかるように、低掃引速度において、比キャパシタンスは、ローディング量が1.72mg/cmで最大となり、それ以降はローディング量が増加するにつれ低下した。これは、マンガン酸化物に一般的にみられる傾向で。1.72mg/cmを境に、マンガン酸化物の電気化学的利用効率が低下することを表している。一方、単位面積あたりのキャパシタンスでみると、図7からわかるように、本発明の炭素繊維集合体は、ローディング量の増加に伴いキャパシタンスは増加した。そして、2mV/sの掃引速度において、最大1200mFの単位面積あたりのキャパシタンスが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の炭素繊維集合体は、単位面積あたりのキャパシタンスが大きく、キャパシタ応答性に優れ、高い導電性と優れた機械的な柔軟性と強度を有するため、フレキシブルな電極の材料として好適である。特に、電気化学キャパシタ用の電極材料、電極として好適であり、本発明の炭素繊維集合体を用いると、容量が大きく、急速充放電可能で、フレキシブルな電気化学キャパシタを作製することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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