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明細書 :アミド化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-175870 (P2016-175870A)
公開日 平成28年10月6日(2016.10.6)
発明の名称または考案の名称 アミド化合物の製造方法
国際特許分類 C07C 231/10        (2006.01)
C07C 233/07        (2006.01)
C07D 223/10        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 231/10
C07C 233/07
C07D 223/10
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-057937 (P2015-057937)
出願日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発明者または考案者 【氏名】山本 豪紀
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001612、【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 4C034
4H006
4H039
Fターム 4C034DE03
4H006AA02
4H006AC53
4H006BA02
4H006BA06
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA34
4H006BA36
4H006BA37
4H006BA55
4H006BV25
4H039CA71
4H039CJ90
要約 【課題】副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造できるアミド化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】オキシム化合物をベックマン転位反応させることによりアミド化合物を製造する方法において、(A)コバルト塩及びニッケル塩のうちいずれか1以上、(B)マグネシウム塩及びナトリウム塩のうちいずれか1以上、並びに(C)シリカゲルから構成される触媒の存在下でベックマン転位反応させることを特徴とするアミド化合物の製造方法である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
オキシム化合物をベックマン転位反応させることによりアミド化合物を製造する方法において、
(A)コバルト塩及びニッケル塩のうちいずれか1以上、(B)マグネシウム塩及びナトリウム塩のうちいずれか1以上、並びに(C)シリカゲルから構成される触媒の存在下でベックマン転位反応させることを特徴とするアミド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記触媒の(A)成分が、テトラフルオロホウ酸コバルト六水和物及びテトラフルオロホウ酸ニッケル六水和物のうちいずれか1以上であることを特徴とする請求項1記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の(B)成分が、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム六水和物、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムのうちいずれか1以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記ベックマン転位反応後に、塩基処理を行うことなくアミド化合物を回収することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のアミド化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物の製造する方法に関し、特に、オキシム化合物をベックマン転位反応させることによりアミド化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシム化合物のベックマン転位によるアミド化合物への変換反応は、出発原料と目的生成物とを構成する元素の種類と数とが全く同じである“アトムエコノミー(atom economy)”100%の反応である。工業的なアミド化合物の製造方法としては、液相中で濃硫酸や発煙硫酸などの強酸を使用してシクロヘキサノンオキシムをベックマン転位反応させてε-カプロラクタムを製造する方法が良く知られているが、該方法では生成したラクタムが添加した強酸と塩を形成するために、強酸を過剰に用いることが常である。従って、反応生成液からε-カプロラクタムを分離するときの中和工程で、アンモニア水溶液を用いるため、多量の硫酸アンモニウムが副生するという問題がある。
【0003】
上記問題を解決するために、本発明者らは、単独で用いた場合には活性の低い触媒量(10mol%程度)のコバルト塩やニッケル塩を、10~20mol%の触媒量のルイス酸、ブレンステッド酸、酸無水物、あるいは酸塩化物などと組み合わせて使用することにより、副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造できることを見出した。この方法においては、生成したアミド化合物を最も効率良く取り出すためには、従来法と同様に塩基処理をすることが好ましいが、塩基処理により副生する無機塩は1/5~1/3以下に減じることができる(特許文献1乃至4)。
【0004】
その他にも、ベックマン転位反応に用いる触媒に関しては、種々、検討されている。例えば、N,N-ジメチルホルムアミドとクロロスルホン酸から生成するイオン対(ビルスマイヤー錯体)からなる触媒(非特許文献1)、エポキシ化合物と強酸(三フッ化ホウ素・エーテラート等)から生成するアルキル化剤、及びN,N-ジアルキルホルムアミドからなる触媒(非特許文献2)、リン酸若しくは縮合性リン酸化合物からなる触媒(特許文献5)、N,N-ジアルキルホルムアミド等の化合物、五酸化リン、及び含フッ素強酸若しくはその誘導体からなる触媒(特許文献6)、インジウムトリフラート(非特許文献3)、イッテルビウムトリフラート(非特許文献4)等の触媒などが知られている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2011-178672号公報
【特許文献2】特開2011-190207号公報
【特許文献3】特開2011-173814号公報
【特許文献4】特開2011-184332号公報
【特許文献5】特開昭62-149665号公報
【特許文献6】特開平5-105654号公報
【0006】

【非特許文献1】M.A.Kira and Y.M.Shaker,Egypt.J.Chem.,16,551(1973)
【非特許文献2】Y.Izumi,Chemistry Letters,p.2171(1990)
【非特許文献3】J.S.Sandhu,et.al.,Indian Journal of Chemistry,pp.154-156(2002)
【非特許文献4】J.S.Yadav,et.al.,Journal of Chemical Research(S),pp.236-238(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、それらの方法では空気中で不安定な触媒を使用したり、分解することにより腐食性のガスを発生する触媒を使用する等の理由により、産業上利用するためには好ましくない。また、依然として塩基処理が必要であり、無機塩の副生を避けられない。そのため、取り扱いが容易な触媒を用いて、副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造する方法の開発が望まれる。
【0008】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、オキシム化合物をベックマン転位反応させることによりアミド化合物を製造する方法において、副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造できるアミド化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記(A)乃至(C)から構成される触媒の存在下でベックマン転位反応させることにより、副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、オキシム化合物をベックマン転位反応させることによりアミド化合物を製造する方法において、(A)コバルト塩及びニッケル塩のうちいずれか1以上、(B)マグネシウム塩及びナトリウム塩のうちいずれか1以上、並びに(C)シリカゲルから構成される触媒の存在下でベックマン転位反応させることを特徴とするアミド化合物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、副生成物の生成を抑制して高選択率でアミド化合物を製造できるアミド化合物の製造方法を提供することができる。また、反応後に、塩基処理をすることなく、単に濾過のみで生成物を単離することも可能で、無機塩を副生しないアミド化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(オキシム化合物)
本発明において用いられるオキシム化合物は、特に制限されず、製造目的とするアミド化合物に応じて適宜選択することができる。オキシム化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。

【0013】
【化1】
JP2016175870A_000002t.gif

【0014】
式(1)中、R及びRは、それぞれ有機基を示す。また、R及びRは、互いに結合して環を形成した2価の有機基であってもよい。

【0015】
、Rにおける前記有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基、並びに複素環基が挙げられる。

【0016】
アルキル基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数2~8のアルキル基であることがさらに好ましい。アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、及びペンタデシル基などが挙げられる。

【0017】
アルケニル基としては、例えば、炭素原子数2~20のアルケニル基が挙げられ、炭素原子数2~12のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数2~8のアルケニル基であることがさらに好ましい。アルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、及び1-オクテニル基などが挙げられる。

【0018】
アルキニル基としては、例えば、炭素原子数2~20のアルキニル基が挙げられ、炭素原子数2~12のアルキニル基であることが好ましく、炭素原子数2~8のアルキニル基であることがさらに好ましい。アルキニル基として、具体的には、エチニル基、及び1-プロピニル基などが挙げられる。

【0019】
シクロアルキル基としては、例えば、炭素原子数3~20のシクロアルキル基が挙げられ、炭素原子数3~15のシクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基として、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、及びシクロドデシル基などが挙げられる。

【0020】
シクロアルケニル基としては、例えば、炭素原子数3~20のシクロアルケニル基が挙げられ、炭素原子数3~15のシクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基として、具体的には、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、及びシクロオクテニル基などが挙げられる。

【0021】
アリール基としては、例えば、炭素原子数6~24のアリール基が挙げられる。アリール基として、具体的には、フェニル基、及びナフチル基などが挙げられる。

【0022】
アラルキル基としては、例えば、炭素原子数7~25のアラルキル基が挙げられる。アラルキル基として、具体的には、ベンジル基、2-フェニルエチル基、及び3-フェニルプロピル基などが挙げられる。

【0023】
複素環基としては、例えば、芳香族性の複素環基及び非芳香族性の複素環基が挙げられ、炭素数1~24の複素環基であることが好ましい。複素環基として、具体的には、2-ピリジル基、2-キノリル基、2-フリル基、2-チエニル基、及び4-ピペリジニル基などが挙げられる。

【0024】
及びRが、互いに結合して環を形成した有機基である場合、2価の有機基としては、例えば、直鎖若しくは分岐アルキレン基が挙げられ、直鎖アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基は、式(1)で表されるオキシム化合物の炭素原子を含めて、3~30員環を形成していることが好ましく、4~20員環を形成していることがさらに好ましく、5~14員環を形成していることが特に好ましい。2価のアルキレン基として、具体的には、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基などが挙げられる。

【0025】
有機基は、ベックマン転位反応を阻害しなければ特に限定されることなく、種々の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アミノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、及び複素環基などが挙げられる。

【0026】
式(1)中、R及びRが、それぞれ有機基であるオキシム化合物としては、例えば、アセトンオキシム、2-ブタノンオキシム、2-ペンタノンオキシム、3-ペンタノンオキシム、1-シクロヘキシル-1-プロパノンオキシム、アセトフェノンオキシム、p-メトキシアセトフェノンオキシム、o-メトキシアセトフェノンオキシム、p-フルオロアセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、及び4-ヒドロキシアセトフェノンオキシムが挙げられる。式(1)中、R及びRが、互いに結合して環を形成した2価の有機基であるオキシム化合物としては、例えば、シクロプロパノンオキシム、シクロブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロへプタノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、シクロノナノンオキシム、シクロデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、シクロトリデカノンオキシム、シクロテトラデカノンオキシム、シクロペンタデカノンオキシム、シクロヘキサデカノンオキシム、シクロオクタデカノンオキシム、及びシクロノナデカノンオキシムが挙げられる。これらのオキシム化合物の中では、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、p-メトキシアセトフェノンオキシム、o-メトキシアセトフェノンオキシム、p-フルオロアセトフェノンオキシムであることが好ましく、シクロドデカノンオキシム又はシクロヘキサノンオキシムであることがさらに好ましい。オキシム化合物は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。

【0027】
オキシム化合物は、式(1)で表されるオキシム化合物に対応するケトンとヒドロキシルアミンを反応させることによって得ることができる。また、オキシム化合物は、脂肪族多価カルボン酸無水物若しくは芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN-ヒドロキシイミド化合物、又はそのN-ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基(例えば、アセチル基等のアシル基)を導入することにより得られる化合物の存在下、メチル基又はメチレン基を有する化合物と、亜硝酸エステル又は亜硝酸塩とを反応させることによっても得ることができる。脂肪族多価カルボン酸無水物若しくは芳香族多価カルボン酸無水物としては、例えば、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシフタル酸イミド、N,N’-ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N-ヒドロキシグルタルイミド、N-ヒドロキシ-1,8-ナフタレンジカルボン酸イミド、及びN,N’-ジヒドロキシ-1,3,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを挙げることができる(例えば、特開2009-298706号公報)。

【0028】
((A)コバルト塩及びニッケル塩のうちいずれか1以上)
本発明において用いられるコバルト塩としては、例えば、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルト、過塩素酸コバルト、テトラフルオロホウ酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体のコバルト化合物など、並びにそれらの水和物が挙げられる。前記水和物としては、硝酸コバルト六水和物、過塩素酸コバルト六水和物、テトラフルオロホウ酸コバルト六水和物であることが好ましく、テトラフルオロホウ酸コバルト六水和物であることが特に好ましい。これらは、市販品を用いることができる。

【0029】
また、本発明において用いられるニッケル塩としては、例えば、酸化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、テトラフルオロホウ酸ニッケルなどの無機化合物;酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどの有機酸塩;ニッケルアセチルアセトナトなどの錯体のニッケル化合物など、並びにそれらの水和物が挙げられる。前記水和物としては、硝酸ニッケル六水和物、硫酸ニッケル六水和物、過塩素酸ニッケル六水和物、テトラフルオロホウ酸ニッケル六水和物であることが好ましく、テトラフルオロホウ酸ニッケル六水和物であることが特に好ましい。これらは、市販品を用いることができる。

【0030】
コバルト塩及びニッケル塩の使用量は、オキシム化合物の0.1~100mol%であることが好ましく、1.0~50mol%であることがさらに好ましい。

【0031】
((B)マグネシウム塩及びナトリウム塩のうちいずれか1以上)
本発明において用いられるマグネシウム塩としては、例えば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、並びにそれらの水和物が挙げられる。前記水和物としては、硝酸マグネシウム六水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム七水和物などが挙げられる。マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム六水和物であることが特に好ましい。これらは、市販品を用いることができる。

【0032】
また、本発明において用いられるナトリウム塩としては、例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられる。ナトリウム塩としては、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムであることが特に好ましい。これらは、市販品を用いることができる。

【0033】
マグネシウム塩及びナトリウム塩の使用量は、オキシム化合物の0.1~100mol%であることが好ましく、5.0~60mol%であることがさらに好ましい。

【0034】
((C)シリカゲル)
本発明において、シリカゲルは、市販品を用いることができ、特に限定はされないが、粒子径500μm以下のものが好ましい。また、シリカゲルの形状は、破砕状や球状などが挙げられるが、特に限定はされない。

【0035】
シリカゲルの使用量は、オキシム化合物の0.1mol%以上であることが好ましいが、多すぎると撹拌が容易でなくなる傾向にあるため、5.0~70mol%であることがさらに好ましい。

【0036】
(ベックマン転位反応)
本発明において、ベックマン転位反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行うことができる。溶媒を使用する場合、溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン、及びハイドロクメン等の脂肪族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びシクロドデカノン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド、スルホン類;蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、及びブタン酸エチル等のエステル類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びトリフルオロ酢酸等のカルボン酸類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、及びトリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、及びニトロエタン等のニトロ化合物;並びに、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、及びトリフルオロエタノール等のフッ素系アルコールを挙げることができる。これらの中では、ニトリル類であることが好ましく、アセトニトリルであることがさらに好ましい。溶媒は、単独で用いることもできるし、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。

【0037】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、オキシム化合物の0~100重量倍であることが好ましく、1~50重量倍であることがさらに好ましい。

【0038】
ベックマン転位反応条件は、使用する触媒、及び溶媒等の種類や量により適宜選択でき、特に制限はない。一般的には、反応温度は、20~120℃であることが好ましく、50~110℃がより好ましく、60~100℃が特に好ましい。反応圧力は、常圧又は加圧条件下で行うことができる。反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、空気や酸素雰囲気下で行ってもよい。反応時間は、一般的には、0.01時間以上であることが好ましいが、長すぎると製造効率が低下するために0.5~30時間であることがさらに好ましい。反応装置は、通常の撹拌装置を備えた反応器を用いることができる。

【0039】
本発明に係るアミド化合物の製造方法において、式(1)中、R及びRが、それぞれ有機基であるオキシム化合物をベックマン転位させた場合には、アミド結合部分が環状に含まれていないアミド化合物が得られる。例えば、アセトフェノンオキシムからは、アセトアニリドが得られる。R及びRが、互いに結合して環を形成した2価の有機基であるオキシム化合物をベックマン転位させた場合には、ラクタムが得られる。例えば、シクロアルカノンオキシムからは、員環数の1つ多いラクタムが得られる。具体的には、シクロヘキサノンオキシムからは、ε-カプロラクタムが、シクロヘプタノンオキシムからは、7-ヘプタンラクタムが、シクロオクタノンオキシムからは、8-オクタンラクタムが、シクロドデカノンオキシムからは、ラウロラクタムが得られる。

【0040】
ベックマン転位反応終了後、得られたアミド化合物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、又はカラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらの組み合わせにより分離精製してもよい。

【0041】
例えば、ベックマン転位反応後の分離精製としては、得られたアミド化合物含有液を、水洗浄(水を加えて水溶液として除去する方法)および/または塩基洗浄(塩基性の水溶液により、酸性の触媒成分等を除去する洗浄)し、触媒成分等を除去することにより、アミド化合物を得ることができる。さらに、蒸留・結晶化等により分離精製してもよい。

【0042】
また、本発明においては、ベックマン転位反応後に、上記のような洗浄処理をすることなく、単に濾過のみでアミド化合物を単離することも可能である。濾過のみでアミド化合物を単離すると、無機塩を副生しないため好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(実施例1~8)
下記式(2)に示すベックマン転位反応を行った。具体的には、ネジ付き試験管に、シクロヘキサノンオキシム(56.6mg,0.5mmol)、触媒(A)乃至(C)(触媒(C)は、富士シリシア化学株式会社製PSQ-100B)、およびアセトニトリル(1ml)を加え、窒素を封入した後に80℃に加熱・24時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(10ml)で希釈し、食塩を飽和させた0.4N水酸化ナトリウム水溶液(2ml)を加えて溶媒を減圧下で除去した。残渣にジクロロメタン(50ml)を加えて良く撹拌し、不溶分を濾別し、ジクロロメタン(50ml)で洗浄した。濾液と洗液とを併せて減圧下で濃縮し、得られた反応混合物のH NMRスペクトルから、生成物の組成比を求めた。それぞれの実施例において、用いた触媒の種類及び量、並びに結果を表1に示す。なお、収率の合計が100にならないのは、水層に生成物が移動して回収できていない(塩基処理)か、又は一部がシリカゲルに吸着したままで回収できていない(単純濾過)ことが理由だと考えられる。H NMRによる分析では、回収された生成物中にシクロヘキサノンオキシムとε-カプロラクタム以外のものは認められなかった。
【実施例】
【0045】
【化2】
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【実施例】
【0046】
(比較例1)
触媒(A)を用いなかったこと以外は実施例1と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0047】
(比較例2)
触媒(A)を用いなかったこと以外は実施例2と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0048】
(比較例3)
触媒(B)及び(C)を用いなかったこと以外は実施例1と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0049】
【表1】
JP2016175870A_000004t.gif
【実施例】
【0050】
上記表1より、触媒(A)を用いないとε-カプロラクタムが生成されないのに対し、触媒(A)乃至(C)を用いると良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。また、実施例2と実施例6、実施例4と実施例7、実施例5と実施例8をそれぞれ比較すると、触媒(C)の増加ばかりでなく、触媒(B)の増加によってもε-カプロラクタムの収率が向上することがわかる。
【実施例】
【0051】
(実施例9~10)
触媒(B)の種類を下記表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0052】
(比較例4)
触媒(A)を用いなかったこと以外は実施例9と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0053】
(比較例5)
触媒(A)を用いなかったこと以外は実施例10と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0054】
【表2】
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【実施例】
【0055】
上記表2より、触媒(A)を用いないとε-カプロラクタムの収率は12%未満であるのに対し、触媒(A)乃至(C)を用いると80%以上の良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。
【実施例】
【0056】
(実施例11~14)
触媒(B)の種類及び反応温度を下記表3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表3に示す。
【実施例】
【0057】
【表3】
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【実施例】
【0058】
上記表3より、反応温度を変えても、触媒(A)乃至(C)を用いると良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。
【実施例】
【0059】
(実施例15~18)
ネジ付き試験管に、シクロヘキサノンオキシム(56.6mg,0.5mmol)、触媒(A)乃至(C)、およびアセトニトリル(1ml)を加え、窒素を封入した後に80℃に加熱・3時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(10ml)で希釈し、食塩を飽和させた0.4N水酸化ナトリウム水溶液(2ml)を加えて溶媒を減圧下で除去した。残渣にジクロロメタン(50ml)を加えて良く撹拌し、不溶分を濾別し、ジクロロメタン(50ml)で洗浄した。濾液と洗液とを併せて減圧下で濃縮し、得られた反応混合物のH NMRスペクトルから、生成物の組成比を求めた。それぞれの実施例において、用いた触媒の種類及び量、並びに結果を表4に示す。
【実施例】
【0060】
【表4】
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【実施例】
【0061】
上記表4より、触媒(B)としてナトリウム塩を用いた場合でも、触媒(A)乃至(C)を用いると良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。
【実施例】
【0062】
(実施例19~21)
触媒(B)の種類を下記表5に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、生成物の組成比を求めた。結果を下記表5に示す。
【実施例】
【0063】
【表5】
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【実施例】
【0064】
上記表5より、触媒(A)としてニッケル塩を用いた場合でも、触媒(A)乃至(C)を用いると良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。
【実施例】
【0065】
(実施例22~23)
ネジ付き試験管に、シクロヘキサノンオキシム(56.6mg,0.5mmol)、触媒(A)乃至(C)、およびアセトニトリル(1ml)を加え、窒素を封入した後に80℃に加熱・24時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(10ml)で希釈し、不溶分を濾別した後に減圧下で濃縮し、得られた反応混合物のH NMRスペクトルから、生成物の組成比を求めた。それぞれの実施例において、用いた触媒の種類及び量、並びに結果を表6に示す。
【実施例】
【0066】
【表6】
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【実施例】
【0067】
上記表6より、触媒(A)乃至(C)を用いると、反応後に塩基洗浄(塩基処理)をすることなく、単に濾過のみでも良好な収率でε-カプロラクタムが得られることがわかる。