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明細書 :デカルバモイルサキシトキシン及びその類縁体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-204270 (P2016-204270A)
公開日 平成28年12月8日(2016.12.8)
発明の名称または考案の名称 デカルバモイルサキシトキシン及びその類縁体の製造方法
国際特許分類 C07D 487/20        (2006.01)
FI C07D 487/20
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2015-084042 (P2015-084042)
出願日 平成27年4月16日(2015.4.16)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 繁
【氏名】藤田 紗和衣
【氏名】森 美貴
出願人 【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
審査請求 未請求
テーマコード 4C050
Fターム 4C050AA04
4C050BB05
4C050CC04
4C050DD02
4C050EE04
4C050FF02
4C050GG03
4C050GG04
4C050GG05
4C050HH01
要約 【課題】デカルバモイルサキシトキシン及びその類縁体を効率よく製造するために有用な、中間体化合物の製造方法の提供。
【解決手段】式(2)で表される化合物等を、塩基性条件下で処理して、式(3)で表される化合物等を得る工程Iと、式(3)で表される化合物等を、SH基を有する化合物とを反応させて、式(4)で表される化合物等を得る工程IIと、を含む式(4)で表される化合物の製造方法。式(4)で表される化合物は、貝類の毒性評価の為の標品化合物として利用され得る。
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(RはH又は水酸基;Rはアミノ基等;Rは一価の有機基)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iと、
下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させることにより下記一般式(4)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程IIと、
を含むことを特徴とする、下記一般式(4)で表される化合物の製造方法。
【化1】
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[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を表し、Rはアミノ基、-NHSOHで表される基、又は-NHR4aで表される基(R4aは一価の有機基を表す。)を表し、Rは一価の有機基を表す。]
【化2】
JP2016204270A_000027t.gif
[式(3)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
【化3】
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[式(4)中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【請求項2】
更に、下記一般式(1)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)とを反応させて、前記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程を含む、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【化4】
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[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基を表し(但し、R及びRの少なくとも一方は-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基である)、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
【請求項3】
前記SH基を有する化合物(S1)が下記一般式(5-1)又は下記一般式(5-2)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(2-1)又は下記一般式(2-2)で表される化合物である、請求項2に記載の化合物の製造方法。
【化5】
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[式(5-1)中、Rはアルキレン基を表す。]
【化6】
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[式(5-2)中、Rはアルキレン基を表す。]
【化7】
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[式(2-1)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。式(2-2)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。]
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物を、pH9以上の条件下に置くことで、前記塩基性条件下で処理を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iを含むことを特徴とする、下記一般式(3)で表される化合物の製造方法。
【化8】
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[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を表し、Rはアミノ基、-NHSOHで表される基、又は-NHR4aで表される基(R4aは一価の有機基を表す。)を表し、Rは一価の有機基を表す。]
【化9】
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[式(3)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、デカルバモイルサキシトキシン及びその類縁体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麻痺性貝毒は、サキシトキシン(STX)と、20を超えるその類縁体の総称である(図1参照)。毒化貝や貝毒原因プランクトンにはこれらのうちの複数の成分が含まれる。毒化貝による致死的な食中毒の発生を防ぐため、貝を食用とする各国では、検査機関によるマウス試験法、あるいはHPLC法などで貝類の毒性を監視する貝毒モニタリングが定期的に実施されている。STXは化学的に安定で毒性が強いため、合衆国食品医薬品局(FDA)から世界各地の検査機関に、STX溶液が毒分析用標準品として、配布されてきた。標準品は、マウス試験法でのマウスの感度を補正するために必須であり、また、マウス試験の代替となるHPLC法においても、STXの標準品は不可欠のものである。しかしSTXは、化学兵器禁止条約により特定化合物に指定され、現在その製造、譲渡、保管、使用が著しく制限されている。STX以外の麻痺性貝毒成分は安定性を欠くものが多いが、唯一デカルバモイルサキシトキシン(dcSTX)は、STXと同様に化学的に安定であり、STXに替わる麻痺性貝毒標準品の第1候補である。しかしdcSTXは毒化貝や有毒プランクトンにはほとんど含まれず、標準毒として供給する体制を整えるためには、他の麻痺性貝毒成分から化学的に変換して調製せざるを得ない。
【0003】
主な麻痺性貝毒の化学構造は図1に示す一般式で表される。位置番号を図1の一般式中に示す。
STX、dcSTX、GTX群などの麻痺性貝毒成分は塩基性水溶液中では著しく不安定で、下記式に示すように、速やかに酸化され、別の骨格構造へと分解されてしまうことが知られている。
【0004】
【化1】
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【0005】
非特許文献1(Ghazarossian et al. (1976))には、STXをdcSTXに変換して、dcSTXを製造する方法が記載されている。この方法は、側鎖のカルバメートのエステル加水分解を伴うものである。
【0006】
【化2】
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【0007】
非特許文献2(Watanabe et al. (2011))には、有毒藍藻を大量培養してC-toxins (C1, C2)を分離し、既報の方法でデカルバモイルゴニオトキシン(dcGTX)2およびdcGTX3、もしくはGTX5に変換したのち、これらをさらに化学的に変換することによりdcSTXが調製する工程が提案されている(図2参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Ghazarossian, V. E. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1976, 68, 776-780.
【非特許文献2】Watanabe, R. et al. Mar. Drugs 2011, 9, 466-477.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非特許文献1に記載の方法では、得られるdcSTXの収率が低く、出発原料のSTXに対しておそらく10%未満しかdcSTXが得られないという問題がある。また、STXを出発原料としなければならないため、取扱い上不都合である。
また、非特許文献2に記載の方法では、藍藻を培養する手間や、変換反応の各段階での収率が低いこと、副産物として規制化合物のSTXが生じてしまうなどの点で、必要量のdcSTXを十分量確保することは困難である。
発明者らは、天然の毒化貝に多量に含まれており、毒化貝から容易に得ることが出来るゴニオトキシン群(GTXs)をdcSTXに変換することができれば、必要量のdcSTXの確保が容易となると考えた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、dcSTX等の化合物を高効率に製造可能な化合物の製造方法の提供と、dcSTX等の化合物を製造するために有用な中間体の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、下記の特徴を有する化合物の製造方法を提供する。
【0011】
<1>下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iと、
下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させることにより下記一般式(4)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程IIと、
を含むことを特徴とする、下記一般式(4)で表される化合物の製造方法。
【0012】
【化3】
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【0013】
[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を表し、Rはアミノ基、-NHSOHで表される基、又は-NHR4aで表される基(R4aは一価の有機基を表す。)を表し、Rは一価の有機基を表す。]
【0014】
【化4】
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【0015】
[式(3)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
【0016】
【化5】
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【0017】
[式(4)中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0018】
<2>更に、下記一般式(1)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)とを反応させて、前記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程を含む、前記<1>に記載の化合物の製造方法。
【0019】
【化6】
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【0020】
[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基を表し(但し、R及びRの少なくとも一方は-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基である)、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
【0021】
<3>前記SH基を有する化合物(S1)が下記一般式(5-1)又は下記一般式(5-2)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(2-1)又は下記一般式(2-2)で表される化合物である、前記<2>に記載の化合物の製造方法。
【0022】
【化7】
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【0023】
[式(5-1)中、Rはアルキレン基を表す。]
【0024】
【化8】
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【0025】
[式(5-2)中、Rはアルキレン基を表す。]
【0026】
【化9】
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【0027】
[式(2-1)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。式(2-2)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。]
【0028】
<4>前記一般式(2)で表される化合物を、pH9以上の条件下に置くことで、前記塩基性条件下で処理を行う、前記<1>~<3>のいずれか一つに記載の化合物の製造方法。
【0029】
<5>下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iを含むことを特徴とする、下記一般式(3)で表される化合物の製造方法。
【0030】
【化10】
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【0031】
[式(2)中、Rは水素原子又は水酸基を表し、Rはアミノ基、-NHSOHで表される基、又は-NHR4aで表される基(R4aは一価の有機基を表す。)を表し、Rは一価の有機基を表す。]
【0032】
【化11】
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【0033】
[式(3)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。]
【発明の効果】
【0034】
本発明の化合物の製造方法によれば、前記一般式(4)で表されるdcSTX等の化合物を高効率に製造可能である。また、本発明の化合物の製造方法によれば、前記一般式(4)で表されるdcSTX等の化合物を製造するために有用な中間体を高効率に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】代表的な麻痺性貝毒成分の構造を示す図である。
【図2】従来法による、dcSTXの製造方法のフローを示す図である。
【図3】実施例において製造されたME-dcSTX(及びdcSTX)の収量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<化合物(4)の製造方法>
一般式(4)で表される化合物(「化合物(4)」と略記することがある。)は、以下に示す一実施形態の製造方法により製造することができる。

【0037】
1.化合物(2)の製造
まず、下記一般式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」と略記することがある。)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)とを反応させて、下記一般式(2)で表される化合物(以下「化合物(2)」と略記することがある。)又はそのイオン若しくは塩を得る工程を行う。

【0038】
【化12】
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【0039】
[式中、Rは水素原子又は水酸基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基を表し(但し、R及びRの少なくとも一方は-OSOHで表される基、又は-OSOで表される基である)、Rはアミノ基、-NHSOHで表される基、又は-NHR4aで表される基(R4aは一価の有機基を表す。)を表し、Rは一価の有機基を表す。]

【0040】
4a、Rにおける一価の有機基は、それぞれ独立に、構成原子として炭素原子を含む1価の基であり、置換基を有していてもよい炭化水素基を例示できる。ここで「炭化水素基が置換基を有する」とは、炭化水素基を構成する1個以上の水素原子が、水素原子以外の基(置換基)で置換されているか、又は炭化水素基を構成する1個以上の炭素原子が、若しくは前記炭素原子がこれに結合している1個以上の水素原子と共に、これ(炭素原子又は1個以上の水素原子が結合している炭素原子)とは異なる基(置換基)で置換されていることを意味する。

【0041】
4a、Rにおける前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)のいずれでもよく、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。

【0042】
4a、Rにおける前記有機基を構成する原子は、前記工程Iの反応を阻害しない範囲において、その他の基と結合していてもよい。例えば、Rにおける前記有機基を構成する原子は12位の水酸基の両方又は片方と一緒になって環を形成していてもよい。形成される前記環は単環状および多環状のいずれでもよい。

【0043】
SH基を有する化合物(S1)としては、分子内にSH基を有するものであれば特に制限されず、エタンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、アリルメルカプタン、チオ酢酸、ベンゼンチオール、1-ナフタレンチオール、2-メルカプトエタノール、N-アセチルシステイン、1,2-エタンジチオール、還元型グルタチオン等が挙げられる。

【0044】
前記SH基を有する化合物(S1)は、下記一般式(5-1)で表される化合物(以下「化合物(5-1)」と略記することがある。)、又は下記一般式(5-2)で表される化合物(以下「化合物(5-2)」と略記することがある。)であることが好ましい。また、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2-1)で表される化合物(以下「化合物(2-1)」と略記することがある。)又は下記一般式(2-2)で表される化合物(以下「化合物(2-2)」と略記することがある。)であることが好ましい。

【0045】
【化13】
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【0046】
[式(5-1)中、Rはアルキレン基を表す。]

【0047】
【化14】
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【0048】
[式(5-2)中、Rはアルキレン基を表す。]

【0049】
【化15】
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【0050】
[式(2-1)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。式(2-2)中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0051】
、Rにおけるアルキレン基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよい。
前記アルキレン基は、炭素数が1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~5であることが特に好ましく、前記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、-CH(CH)-で表される基等が挙げられる。
化合物(5-1)としては、2-メルカプトエタノールが挙げられる。化合物(5-2)としては、1,2-エタンジチオールが挙げられる。

【0052】
化合物(1)のイオンとしては、化合物(1)がカチオンとなったものでもよく、化合物(1)がアニオンとなったものでもよい。
化合物(1)がカチオンとなったものとしては、化合物(1)において「-NH-」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「—NH-」で表されるカチオン部となったものや、化合物(1)において「=NH」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「=NH」で表されるカチオン部となったものが挙げられる。

【0053】
化合物(1)のイオンとしては、例えば下記一般式(1-i)で表される化合物が挙げられる。

【0054】
【化16】
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【0055】
[式(1-i)中、R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0056】
化合物(1)の塩としては、化合物(1)がカチオンとなってアニオン(無機アニオン又は有機アニオン)とともに形成された塩であってもよく、化合物(1)がアニオンとなってカチオン(無機カチオン又は有機カチオン)とともに形成された塩であってもよい。

【0057】
化合物(1)がカチオンとなったものと共に化合物(1)の塩を形成する前記アニオンは、特に限定されない。
前記アニオンのうち、好ましい無機アニオンとしては、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が例示できる。
前記アニオンのうち、好ましい有機アニオンとしては、カルボン酸のアニオン等が例示できる。

【0058】
化合物(1)がアニオンとなったものと共に化合物(1)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されない。
前記カチオンのうち、好ましい無機カチオンとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が例示できる。

【0059】
化合物(2)のイオンとしては、化合物(2)がカチオンとなったものでもよく、化合物(2)がアニオンとなったものでもよい。
化合物(2)がカチオンとなったものとしては、化合物(2)において「-NH-」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「—NH-」で表されるカチオン部となったものや、化合物(2)において「=NH」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「=NH」で表されるカチオン部となったものが挙げられる。

【0060】
化合物(2)のイオンとしては、例えば下記一般式(2-i)で表される化合物が挙げられる。

【0061】
【化17】
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【0062】
[式(2-i)中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0063】
化合物(2)の塩としては、化合物(2)がカチオンとなってアニオン(無機アニオン又は有機アニオン)とともに形成された塩であってもよく、化合物(2)がアニオンとなってカチオン(無機カチオン又は有機カチオン)とともに形成された塩であってもよい。

【0064】
化合物(2)がカチオンとなったものと共に化合物(2)の塩を形成する前記アニオンは、特に限定されず、前記化合物(1)がカチオンとなったものと共に塩を形成するアニオンと同様のものが例示できる。

【0065】
化合物(2)がアニオンとなったものと共に化合物(2)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されず、前記化合物(1)がアニオンとなったものと共に塩を形成するカチオンと同様のものが例示できる。

【0066】
原料物質である化合物(1)として代表されるGTX2、GTX3等のゴニオトキシン群(GTXs)は天然の毒化貝に多量に含まれており、入手可能であるという利点がある。なお、デカルバモイルゴニオトキシンであるdcGTX2やdcGTX3は、天然にはほとんど存在しない。

【0067】
化合物(1)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)との反応は、適当な溶媒中で行うことができ、溶媒としては、水を含む溶媒が好ましい。化合物(1)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)との反応は、リン酸緩衝液、リン酸アンモニウム緩衝液等の生化学分野において一般に使用される緩衝液中で行うことができる。
化合物(1)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)との反応は、pH3~9の範囲内で行うことが好ましく、pH6~8の範囲内で行うことがより好ましい。

【0068】
反応時の化合物(1)又はそのイオン若しくは塩、並びにSH基を有する化合物(S1)の総使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
SH基を有する化合物(S1)の総使用量は、例えば、化合物(1)中の、R及びRにおける-OSOHで表される基又は-OSOで表される基のモル数に対して、1~100000倍モル量であることが好ましく、10~10000モル量であることがより好ましく、100~1000倍モル量であることが特に好ましい。

【0069】
化合物(1)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)とを反応させるときの温度(反応温度)は、これら化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。なかでも、前記反応温度は0~100℃の範囲であることが好ましく、20~40℃の範囲であることがより好ましい。

【0070】
化合物(1)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S1)とを反応させる時間(反応時間)は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよいが、1分~72時間であることが好ましく、6~42時間であることがより好ましい。

【0071】
2.化合物(3)の製造: (工程I)
次いで、下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」と略記することがある。)又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iを行う。

【0072】
【化18】
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【0073】
[式中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0074】
前記一般式(2)で表される化合物が前記一般式(2-1)で表される化合物である場合、次のようにして下記一般式(3-1)で表される化合物を得ることができる。

【0075】
【化19】
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【0076】
[式中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0077】
本実施形態において、工程Iは塩基性条件下で行われる。
麻痺性貝毒成分はpH8以上の塩基性条件下では著しく不安定であり、容易に酸化され分解されてしまう。したがって、麻痺性貝毒成分の製造にあたり、麻痺性貝毒成分を塩基性条件下に置くことはなされてこなかった。
しかし、発明者らは、麻痺性貝毒成分を包含する前記化合物(1)を、前記化合物(2)へと変換することにより、非常に驚くべきことに、前記化合物(2)の塩基性条件下での安定性が著しく向上することを見出した。そして、骨格部分の分解を伴うことなしに、前記化合物(2)におけるエステルのアルカリ加水分解が可能となることを見出した。

【0078】
一般に、塩基性条件下での加水分解は、酸性条件下での加水分解よりも反応効率がよい。したがって、前記化合物(1)を、前記化合物(2)へと変換することにより、これを塩基性条件下で処理することが可能となり、非特許文献1及び2で示される従来法よりも格段に高効率で、前記化合物(1)から前記化合物(3)への製造を行うことができる。

【0079】
なお、このことは、前記化合物(1)のイオン若しくは塩、化合物(2)のイオン若しくは塩、及び化合物(3)のイオン若しくは塩についても、同様にあてはめることができる。

【0080】
工程Iにおける、化合物(2)のイオン及び塩としては、前記と同様のものが例示できる。

【0081】
化合物(3)のイオンとしては、化合物(3)がカチオンとなったものでもよく、化合物(3)がアニオンとなったものでもよい。
化合物(3)がカチオンとなったものとしては、化合物(3)において「-NH-」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「—NH-」で表されるカチオン部となったものや、化合物(3)において「=NH」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「=NH」で表されるカチオン部となったものが挙げられる。

【0082】
化合物(3)のイオンとしては、例えば下記一般式(3-i)で表される化合物が挙げられる。

【0083】
【化20】
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【0084】
[式(3-i)中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0085】
化合物(3)の塩としては、化合物(3)がカチオンとなってアニオン(無機アニオン又は有機アニオン)とともに形成された塩であってもよく、化合物(3)がアニオンとなってカチオン(無機カチオン又は有機カチオン)とともに形成された塩であってもよい。

【0086】
化合物(3)がカチオンとなったものと共に化合物(3)の塩を形成する前記アニオンは、特に限定されない。
前記アニオンのうち、好ましい無機アニオンとしては、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が例示できる。
前記アニオンのうち、好ましい有機アニオンとしては、カルボン酸のアニオン等が例示できる。

【0087】
化合物(3)がアニオンとなったものと共に化合物(3)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されない。
前記カチオンのうち、好ましい無機カチオンとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が例示できる。

【0088】
工程Iにおける反応時の化合物(2)の反応は、適当な溶媒中で行うことができ、溶媒としては、水を含む溶媒が好ましい。工程Iにおける反応時の化合物(2)の反応は、リン酸緩衝液、リン酸アンモニウム緩衝液等の生化学分野において一般に使用される緩衝液中で行うことができる。

【0089】
工程Iにおける反応時の化合物(2)又はそのイオン若しくは塩の総使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。

【0090】
化合物(2)又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理するにあたり、前記化合物(2)又はそのイオン若しくは塩を反応させる塩基性条件は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよい。塩基性条件とは、エステルの加水分解が進行可能な塩基性条件であり、前記塩基性条件は、エステルの加水分解を効率よく進行させるとの観点から、pH9以上とすることが好ましく、pH9以上pH13以下とすることがより好ましく、pH11以上pH12以下とすることがさらに好ましい。特にpHが11以上であれば、目的物の収率の顕著な低下を伴わずに、短時間に高収率に化合物(3)又はそのイオン若しくは塩を得ることができる。

【0091】
化合物(2)又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理するにあたり、前記化合物(2)又はそのイオン若しくは塩を塩基性条件下に置く時間(反応時間)は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよいが、1分~24時間であることが好ましく、5分~1時間であることがより好ましく、7~15分であることがさらに好ましい。

【0092】
塩基性条件下とは、塩基性条件を達成可能な適当な塩基の存在下であってもよく、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられ、これらに制限されない。

【0093】
化合物(2)又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理するときの温度(反応温度)は、これら化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。なかでも、前記反応温度は50~100℃の範囲であることが好ましく、95~100℃の範囲であることがより好ましい。

【0094】
3.化合物(4)の製造: (工程II)
続いて、化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させることにより下記一般式(4)で表される化合物(以下「化合物(4)」と略記することがある。)又はそのイオン若しくは塩を得る工程IIを行う。

【0095】
【化21】
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【0096】
[式中、Rは前記と同じ意味を表し、Rは一価の有機基を表す。]

【0097】
SH基を有する化合物(S2)のRは、SH基を有する化合物(S1)のRと同じ意味を表し、前記Rと前記Rはそれぞれ互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
SH基を有する化合物(S2)としては、前記SH基を有する化合物(S1)と同様のものが例示できる。

【0098】
化合物(3)と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させることにより、式(3)における-S-R基中のS原子とSH-R(S2)中のS原子とがジスルフィド結合を形成してR-S-S-Rで表される化合物(S3)となり、化合物(4)が得られる。

【0099】
なお、このことは、前記化合物(3)のイオン若しくは塩、及び化合物(4)のイオン若しくは塩についても、同様にあてはめることができる。

【0100】
化合物(4)のイオンとしては、化合物(4)がカチオンとなったものでもよく、化合物(4)がアニオンとなったものでもよい。
化合物(4)がカチオンとなったものとしては、化合物(4)において「-NH-」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「—NH-」で表されるカチオン部となったものや、化合物(4)において「=NH」で表される基の少なくとも一つにプロトンが付加して式「=NH」で表されるカチオン部となったものが挙げられる。

【0101】
化合物(4)のイオンとしては、例えば下記一般式(4-i)で表される化合物が挙げられる。

【0102】
【化22】
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【0103】
[式(4-i)中、Rは前記と同じ意味を表す。]

【0104】
化合物(4)の塩としては、化合物(4)がカチオンとなってアニオン(無機アニオン又は有機アニオン)とともに形成された塩であってもよく、化合物(4)がアニオンとなってカチオン(無機カチオン又は有機カチオン)とともに形成された塩であってもよい。

【0105】
化合物(4)がカチオンとなったものと共に化合物(4)の塩を形成する前記アニオンは、特に限定されない。
前記アニオンのうち、好ましい無機アニオンとしては、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ハロゲン化物イオン等が例示できる。
前記アニオンのうち、好ましい有機アニオンとしては、カルボン酸のアニオン等が例示できる。

【0106】
化合物(4)がアニオンとなったものと共に化合物(4)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されない。
前記カチオンのうち、好ましい無機カチオンとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が例示できる。

【0107】
化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)との反応は、適当な溶媒中で行うことができ、溶媒としては、水を含む溶媒が好ましい。化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)との反応は、リン酸緩衝液リン酸アンモニウム緩衝液等の生化学分野において一般に使用される緩衝液中で行うことができる。
化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)との反応は、pH5~8の範囲内で行うことが好ましく、pH7~7.5の範囲内で行うことがより好ましい。

【0108】
反応時の化合物(3)又はそのイオン若しくは塩、並びにSH基を有する化合物(S2)の総使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
SH基を有する化合物(S2)の総使用量は、例えば、化合物(3)中の、-S-Rで表される基のモル数に対して、過剰に使用することが好ましく、10~100000倍モル量であることが好ましく、100~100000倍モル量であることがより好ましく、1000~10000倍モル量であることが特に好ましい。

【0109】
化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させるときの温度(反応温度)は、これら化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。なかでも、前記反応温度は30~100℃の範囲であることが好ましく、90~100℃の範囲であることがより好ましい。

【0110】
化合物(3)又はそのイオン若しくは塩と、SH基を有する化合物(S2)とを反応させる時間(反応時間)は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよいが、1分~1時間であることが好ましく、3~10分であることがより好ましい。

【0111】
以上で説明した本実施形態の化合物(4)の製造方法において、生成物の存在及び構造は、NMR、IR、マス等の解析により得られたスペクトルの測定や、元素分析等によって確認可能である。また、必要に応じて、生成物を精製してもよく、精製方法としては、蒸留、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によって生成可能である。

【0112】
本実施形態の化合物(4)の製造方法によれば、貝類の毒性を監視する際に使用される標品化合物として使用可能な前記化合物(4)を、高効率に製造することが可能である。

【0113】
<化合物(3)の製造方法>
一般式(3)で表される化合物(「化合物(3)」と略記することがある。)は、以下に示す一実施形態の製造方法により製造することができる。

【0114】
下記一般式(2)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を、塩基性条件下で処理することにより下記一般式(3)で表される化合物又はそのイオン若しくは塩を得る工程Iを行う。

【0115】
【化23】
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【0116】
[式中、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。]

【0117】
本実施形態における、工程Iについては、前記<化合物(4)の製造方法>において説明した前記工程Iの方法により行うことができるため、説明を省略する。

【0118】
本実施形態の化合物(3)の製造方法によれば、貝類の毒性の監視に使用される標品化合物として使用可能な前記化合物(4)を製造するための、中間体として有用な化合物(3)を、高効率に製造することが可能である。
【実施例】
【0119】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0120】
<1> 試料(出発物質)
出発物質には、毒化ホタテガイ抽出液から、活性炭、Bio-Gel-P-2およびBio-Rex 70各カラムクロマトグラフィーを用いて単離したゴニオトキシン2+3(GTX2+3) (GTX2とGTX3との混合物)を使用した。以下、試薬には、特に断りがない限り和光純薬製の特級を使用した。
【実施例】
【0121】
<2> 毒の分析
麻痺性貝毒の検出には文献(Oshima Y (1995) Post-column derivatization HPLC methods for paralytic shellfish poisons. In: Hallegraeff GM, Anderson, DM, Cembella AD (eds) Manual on harmful marine microalgae. IOC (Intergovnt Oceanogr Comm) Manuals and Guides No 33, UNESCO, Rome, p 81-94)に記載のHPLC蛍光法を一部改変して使用した。検出に用いたHPLC蛍光分析装置の構成を下記に示す。
【実施例】
【0122】
(装置構成)
移動相用ポンプ:PU-2080 (Jasco)
反応液用ポンプ:PU-1580 (Jasco)
中和液用ポンプ:PU-2080 (Jasco)
蛍光検出計:FP-1520S (Jasco)
反応ヒーター:2329 (Unity)、湯浴65℃
反応コイル:テフロン(登録商標) i.d.0.5 mm x 10m
HPLCカラム: Wakosil-II 5C18HG, 4.6 x 150mm (Wako)
移動相(GTX群用):2mM 1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム/10mM リン酸アンモニウム (pH 7.1):アセトニトリル (HPLC用、Wako) = 100:1、流速0,8mL/min 水産庁貝毒安全対策事業配布標準品(GTX1:3.01μM、GTX2 :1.02μM、GTX3: 0.38μM、GTX4: 1.16μMの混合液)を比較標準として使用
移動相(STX群用):2mM 1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム/30mM リン酸アンモニウム (pH 7.1):アセトニトリル (HPLC用、Wako) = 100:5、流速0.8mL/min 水産庁貝毒安全対策事業配布標準品(dcSTX: 2.0μM、neoSTX: 1.51μMの混合液)を比較標準として使用
反応液:7mM 過ヨウ素酸/50mM リン酸カリウム (pH 9.0)、流速0.4mL/min
中和液:0.5M酢酸、流速 0.4 mL/min
【実施例】
【0123】
<3> ME-STXの合成
凍結乾燥したGTX2+3 (約40μmol)を、50mLの0.05Mリン酸アンモニウム緩衝液(pH 7.2)に溶解した。これに200μLの2-メルカプトエタノール(ME, Wako 1級)を添加混合して、20℃付近の室温で1晩静置した。これを水で充てんしたBio-Gel P-2(Bio-Rad, fine)のカラム(2.5 × 15cm)に添加した後、カラムを水300mLで洗浄後、0.1M酢酸で溶出する成分を10mLずつ分取した。各画分をHPLC蛍光法で分析し、GTX2およびGTX3がカラムから溶出したのを確認後、0.5M酢酸300mLを流しME-STX結合体を溶出させて凍結乾燥したところ、12.6mgの黄色粉末を得た。
ME-STX結合体は、GTX2にMEを作用させてSTXに還元される一連の反応の中間体であるが、上記の条件下では最終産物であるSTXは生じず、60%程度の収率でME-STXを回収することができた。
【実施例】
【0124】
<4> ME-dcSTXの合成
凍結乾燥したME-STX2μmolをそれぞれ、0.05M重炭酸ナトリウムに0.05M炭酸ナトリウムまたは0.05M水酸化ナトリウムを加えて作製したpH9.5~11.5の水溶液1mLに溶解し、沸騰浴中で5ないし10分加熱した後、濃塩酸10μLを添加して反応を停止した。冷却後、下記の手順で生じたME-dcSTXを定量した。
【実施例】
【0125】
<5> ME-dcSTXの定量、及びdcSTXの合成
上記<4>において、ME-STXを塩基性条件下で加温処理して得られた各溶液(煮沸前に2000μMのME-STXを含む) 5μLを、995μLの0.1Mリン酸アンモニウム緩衝液(pH7.2):2-メルカプトエタノール(Wako1級)(9:1 v/v)と混合し、沸騰浴中で5分間加温した後、上述のSTX群分析用HPLC蛍光法で生じたdcSTX量を測定した。チオール(RSH)とSTXの11位での結合体(RS-STX)は、過剰量のチオールで処理するとSTXとなる。上記の条件ではこの変換は定量的に進行することが知られている。
【実施例】
【0126】
【化24】
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【実施例】
【0127】
結果を図3に示す。図3は沸騰浴中で5分加熱後、又は10分間加熱後のME-dcSTXの収率を継時的に示したグラフである。図3に示す結果から、係る方法によりdcSTXが高収率に得られることが明らかとなった。また、ME-STXの処理pHの上昇に伴いdcSTXの収率が向上することが明らかとなった。特に、pH11又はpH11.5の条件下では、ME-STX添加量までME-dcSTXが生成しており、反応系中のME-STXのほとんどが、ME-dcSTXへと変換されたことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、貝類の毒性を監視する貝毒モニタリングのために実施され、マウス試験法、HPLC法などで使用可能な標品化合物を、高効率に製造可能とすることができ、毒化貝による食中毒の発生防止に資する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2