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明細書 :核酸検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-202037 (P2016-202037A)
公開日 平成28年12月8日(2016.12.8)
発明の名称または考案の名称 核酸検出方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
C12M 1/00 A
G01N 33/53 M
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2015-085377 (P2015-085377)
出願日 平成27年4月17日(2015.4.17)
発明者または考案者 【氏名】川瀬 三雄
【氏名】伊藤 隆広
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100119183、【弁理士】、【氏名又は名称】松任谷 優子
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
【識別番号】100173185、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 裕
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B029
4B063
Fターム 4B024AA11
4B024CA09
4B024CA20
4B024HA08
4B024HA12
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC03
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
要約 【課題】
複雑な装置を必要とすることなく、標的核酸を簡易かつ高精度に検出するための方法及びそのためのキットを提供すること。
【解決手段】
標的核酸特異的な配列を末端に含み、その間にタグ配列と相補な配列を含む一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして環状化する工程;増幅プライマーと鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う工程;合成された一本鎖核酸に、修飾物質を含む修飾プローブを作用させる工程、タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを作用させ、標的核酸を検出する工程、を含む核酸検出方法、及び前記核酸検出方法のためのキット。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
標的核酸を増幅するための環状プローブの作製方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、
a)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列を含む一本鎖核酸を合成する工程;及び
b)前記一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして、環状プローブを合成する工程、を含む方法。
【請求項2】
前記一本鎖核酸が、配列R1及びR2の間にさらに制限酵素認識配列と相補な配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記環状プローブが80~150塩基長であり、前記タグ配列は、標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一本鎖核酸がさらに標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列Pを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき:
1)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列を含む一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして環状プローブを得る工程;
2)前記環状プローブに、当該環状プローブ上の任意の領域に相補的な配列を含む増幅プライマーをアニールさせ、鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う工程;
3)合成された核酸に、前記環状プローブ上の任意の領域と同一の配列と修飾物質とを含む修飾プローブを作用させる工程;および
4)前記タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを作用させ、標的核酸を検出する工程、
を含む方法。
【請求項6】
標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき:
1)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間に制限酵素認識配列及びタグ配列とそれぞれ相補な配列を含む一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして環状プローブを得る工程;
2)前記環状プローブに、当該環状プローブ上の任意の領域に相補的な配列を含む増幅プライマーをアニールさせ、鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う工程;
3)合成された核酸に、前記制限酵素認識配列に相補な配列と修飾物質とを含む修飾プローブ及び制限酵素を作用させ、前記一本鎖核酸を切断して核酸断片にする工程;および
4)前記核酸断片を、前記タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを固定した固相担体に展開させ、標的核酸を検出する工程、
を含む方法。
【請求項7】
前記工程4)において、前記修飾物質に特異的に結合しうる修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を添加し、目視検出することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾物質と修飾物質結合分子が、ビオチンとアビジン、抗ジゴキシゲニンとジゴキシゲニン、又は抗FITCとFITCである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の標的核酸に対して、それぞれ異なるタグ配列を有する環状プローブと検出プローブを用意し、複数の標的核酸を同時に検出することを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記一本鎖核酸が80~150塩基長であり、前記タグ配列は、標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列からなることを特徴とする、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記環状プローブがさらに標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列Pを含み、増幅プライマーが配列Pに相補な配列を含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
鎖置換型ポリメラーゼが、φ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、DNA ポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(Exo-)DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo-)DNAポリメラーゼ、96-7 DNAポリメラーゼ、Aac DNAポリメラーゼ及びCsa DNA ポリメラーゼからなる群から選ばれるいずれかである、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
核酸検出用のキットであって、標的核酸中5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、
i)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列、標的核酸とは無関係な配列Pとを含む1本鎖核酸、を含む核酸検出用キット。
【請求項14】
前記1本鎖核酸が、配列R1及びR2の間にさらに前記制限酵素認識配列に相補な配列を含む、請求項13記載の核酸検出用キット。
【請求項15】
さらに、下記ii)~v)から選ばれるいずれか1又は2以上を含む請求項14記載のキット:
ii)前記配列Pに相補的な配列を含む増幅プライマー;
iii)前記制限酵素認識配列と修飾物質を含む修飾プローブ;
iv)前記タグ配列に相補的な配列を含む検出プローブを固定化した固相担体;
v)前記修飾物質に特異的に結合する分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を含む検出試薬。
【請求項16】
前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記環状プローブが80~150塩基長であり、前記タグ配列は標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列であり、前記配列Pは標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列である、請求項13~15のいずれか1項に記載のキット。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は核酸検出方法に関する。より詳細には、標的核酸を増幅するための1本鎖環状プローブ並びにこれを利用した核酸検出方法及び核酸検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の遺伝子配列の同時解析や、ウイルスや細菌等の存在を網羅的に検出、同定、定量する方法が提案されている。こうした方法においては、予め標的配列に関連付けられたプローブを準備しておき、増幅した標的領域を含む核酸断片にプローブをハイブリダイズさせることで、プローブ又は核酸断片に予め結合させておいた標識物質で標的核酸を検出する。
【0003】
標的核酸は、通常検出に先立ってPCRで増幅するが、PCRによる増幅工程は厳密な温度サイクルの制御が必要であり、そのための高価な装置も必要となる。この問題を解決するために、等温条件で実施可能な核酸増幅法として、SDA法(特許文献1)、LAMP法(特許文献2)、ICAN法(特許文献3)、RCA法(特許文献4)等が開発されている。これらの方法では、鎖置換型ポリメラーゼを用いることで、増幅産物を鋳型核酸から解離させつつ、相補鎖合成を行うため、熱変性等による一本鎖核酸の再生工程を必要せず、複雑な温度サイクルも必要としない。
【0004】
一方、標的核酸の検出においては、増幅産物を熱変性やアルカリ変性により一本鎖としてプローブとハイブリダイズさせるが、変性した増幅断片は、徐々に二重鎖に戻るため、ハイブリダイゼーション効率が低下する場合がある。また、熱変性過程はDNA合成酵素の活性を低下させ、増幅効率の低下につながる。
【0005】
この問題を解決するため、DNA二本鎖の核酸5’末端に一本鎖(以下、タグ鎖ともいう)を有するDNA部分二本鎖を、核酸増幅反応の増幅産物をとして得る方法が考えられる。この方法では、熱変性することなく、DNA部分二本鎖の一方のタグ鎖をプローブとのハイブリダイズに用い、他方のタグ鎖を標識プローブとのハイブリダイズ等に用いることができるが、タグ鎖の塩基配列の設計難易度が高い。すなわち、一方のタグ鎖は、当該標的核酸と特異的にハイブリダイズする配列とする一方、他方のタグ鎖は、当該標的核酸とはハイブリダイズせず、前記一方のタグ鎖と標的核酸とのハイブリダイズとを阻害しない(干渉しない)配列とする必要がある。また、同時に多数個の標的核酸の検出を意図する場合、双方のタグ鎖を、他の標的核酸と干渉しないようにしたり、双方のタグ鎖が互いにハイブリダイズしないように塩基配列を設計する必要がある。
【0006】
さらに、この方法では増幅には寄与しない余分なタグ鎖をフォワードとリバースの両プライマーにそれぞれ結合させる必要があるため、増幅条件の設定の困難性が極めて高くなる。
【0007】
発明者らは、こうした従来のプローブハイブリダイゼーションにおける問題を解決する標的核酸の検出方法として、STH-PAS(Single Tag Hybridization - Printed Array Strip)という遺伝子検出方法を開発した(特許文献5)。この方法では、標的核酸のPCRプライマーに一本鎖DNAタグを結合させてPCR増幅し、その増幅産物を、タグと相補なオリゴDNAをライン上にプリントしたメンブレンストリップ(PAS)に展開し、一本鎖タグDNA同士のハイブリダイゼーション反応でPCR増幅産物をトラップ検出することで、複数の標的核酸を同時検出することができる。しかし、前述のように、PCR増幅には温度サイクルの制御のために高価な装置が必要となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】US5824517号
【特許文献2】WO2000/28082号
【特許文献1】WO2000/56877号
【特許文献2】WO1997/19193号
【特許文献3】WO2013/039228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、複雑な装置を必要とすることなく、標的核酸を簡易かつ高精度に検出するための方法及びそのためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、タグ配列と制限酵素認識配列を含む環状プローブを設計し、このプローブと鎖置換型ポリメラーゼを用いて標的核酸を増幅することにより、温度制御装置(サーマルサイクラー)を使用することなく標的核酸を高効率に増幅できることを見出した。得られる増幅産物は、タグ配列と制限酵素認識配列を反復して含む一本鎖核酸であるため、そのまま、あるいは、制限酵素で切断・断片化して、従来のプローブハイブリダイゼーション法により検出することができる。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]~[16]を提供する。
[1] 標的核酸を増幅するための環状プローブの作製方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、
a)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列を含む一本鎖核酸を合成する工程;及び
b)前記一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして、環状プローブを合成する工程、を含む方法。前記配列F1及びF2は標的核酸特異的な配列であってもよい。
[2] 前記一本鎖核酸が、配列R1及びR2の間にさらに制限酵素認識配列と相補な配列を含む、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記環状プローブが80~150塩基長であり、前記タグ配列は、標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列からなることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記一本鎖核酸がさらに標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列Pを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき:
1)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列を含む一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして環状プローブを得る工程;
2)前記環状プローブに、当該環状プローブ上の任意の領域に相補的な配列を含む増幅プライマーをアニールさせ、鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う工程;
3)合成された核酸に、前記環状プローブ上の任意の領域と同一の配列と修飾物質とを含む修飾プローブを作用させる工程;および
4)前記タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを作用させ、標的核酸を検出する工程、
を含む方法。前記配列F1及びF2は標的核酸特異的な配列であってもよく、前記増幅プライマーは前記配列F1及びF2でもよい。
[6] 標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき:
1)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間に制限酵素認識配列及びタグ配列とそれぞれ相補な配列を含む一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして環状プローブを得る工程;
2)前記環状プローブに、当該環状プローブ上の任意の領域に相補的な配列を含む増幅プライマーをアニールさせ、鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う工程;
3)合成された核酸に、前記制限酵素認識配列に相補な配列と修飾物質とを含む修飾プローブ及び制限酵素を作用させ、前記一本鎖核酸を切断して核酸断片にする工程;および
4)前記核酸断片を、前記タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを固定した固相担体に展開させ、標的核酸を検出する工程、
を含む方法。前記配列F1及びF2は標的核酸特異的な配列であってもよい。
[7] 前記工程4)において、前記修飾物質に特異的に結合しうる修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を添加し、目視検出することを特徴とする、上記[5]又は[6]に記載の方法。
[8] 前記修飾物質と修飾物質結合分子が、ビオチンとアビジン、抗ジゴキシゲニンとジゴキシゲニン、又は抗FITCとFITCである、上記[7]に記載の方法。
[9] 複数の標的核酸に対して、それぞれ異なるタグ配列を有する環状プローブと検出プローブを用意し、複数の標的核酸を同時に検出することを特徴とする、上記[5]~[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記一本鎖核酸が80~150塩基長であり、前記タグ配列は、標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列からなることを特徴とする、請求項4~9のいずれかに記載の方法。
[11] 前記環状プローブがさらに標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列Pを含み、増幅プライマーが配列Pに相補な配列を含む、上記[5]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 鎖置換型ポリメラーゼが、φ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、DNA ポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(Exo-)DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo-)DNAポリメラーゼ、96-7 DNAポリメラーゼ、Aac DNAポリメラーゼ及びCsa DNA ポリメラーゼからなる群から選ばれるいずれかである、上記[5]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 核酸検出用のキットであって、標的核酸中5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、
i)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列、標的核酸とは無関係な配列Pとを含む1本鎖核酸、を含む核酸検出用キット。
[14] 前記1本鎖核酸が、配列R1及びR2の間にさらに前記制限酵素認識配列に相補な配列を含む、上記[13]記載の核酸検出用キット。
[15] さらに、下記ii)~v)から選ばれるいずれか1又は2以上を含む上記[14]記載のキット:
ii)前記配列Pに相補的な配列を含む増幅プライマー;
iii)前記制限酵素認識配列と修飾物質を含む修飾プローブ;
iv)前記タグ配列に相補的な配列を含む検出プローブを固定化した固相担体;
v)前記修飾物質に特異的に結合する分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を含む検出試薬。
[16] 前記F1及びF2がそれぞれ15~30塩基長であり、前記環状プローブが80~150塩基長であり、前記タグ配列は標的核酸とは無関係な10~50塩基長の配列であり、前記配列Pは標的核酸とは無関係な15~30塩基長の配列である、上記[13]~[15]記載のキット。前記配列F1及びF2は標的核酸に特異的な配列であってもよい。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複雑な温度制御を必要とすることなく標的核酸を簡便かつ高精度で増幅できる。増幅産物は一本鎖核酸であり、それ自体新たな増幅の鋳型となりうるため、増幅は指数関数的に進行し、標的核酸を短時間で効率よく増幅できる。本発明で使用されるプライマーやプローブは、環状プローブ以外は、標的核酸とは無関係に設計されているため、ユニバーサルに利用できる。また、標的核酸に応じて異なるタグ配列を用いることで、複数核酸の同時検出が可能となる。
【0013】
本発明の方法で得られる増幅産物は、タグ配列と制限酵素認識配列を反復して含む一本鎖核酸であるため、制限酵素で切断・断片化することで、標的核酸特異的なタグ配列を含む核酸断片が得られる。断片化した増幅サンプルは、STH-PASをはじめとする固相担体を利用した核酸ハイブリダイゼーション法により簡便に検出できる。すなわち、本発明の方法を発明者らが開発したSTH-PASに適用することで、サーマルサイクラーを必要としない、より安価で簡便なマルチ遺伝子検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の環状プローブの設計と合成を示す。
【図2】図2は、本発明の核酸検出方法の各工程を示す。
【図3】図3は、検出用プローブ、プライマーの設計を示す(上段:環状プローブ(プローブ1)、中段:増幅プライマー、下段:修飾プローブ(ビオチンプローブ)。
【図4】図4は、本発明の方法によるDNA増幅産物の検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.環状プローブ
本発明では、標的核酸特異的な配列と、制限酵素認識配列及びタグ配列とそれぞれ相補な配列を含む「環状プローブ」使用する。

【0016】
図1に環状プローブ(制限酵素認識配列(相補鎖)、配列Pを含む場合)の設計と合成を示す。本発明の「環状プローブ」は、標的核酸において5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、配列R1及びR2を隣接して含み、かつ、制限酵素認識配列と相補な配列、タグ配列と相補な配列を含む、1本鎖の環状プローブとして設計される。本発明の環状プローブは、さらに、標的核酸とは無関係な配列Pを含んでいてもよい。前記配列F1及びF2は標的核酸に特異的な配列であってもよい。

【0017】
なお本発明において用いられる「同一」、あるいは「相補(的)」という用語は、いずれも完全に同一、あるいは完全に相補的であることを意味しない。すなわち、ある配列と同一とは、ある配列に対してアニールすることができる塩基配列に対して相補的な配列をも含むことができる。他方、相補的とは、ストリンジェントな条件下でアニールすることができる配列を意味する。

【0018】
(1)配列F1/F2及びR1/R2
配列F1及びF2の長さは、特に限定されないが、15~30塩基長程度が好ましい。前記配列F1及びF2は標的核酸に特異的な配列であってもよい。

【0019】
上記配列F1及びF2は、標的核酸上に5’末端及び3’末端に向かって、この順で存在する。隣接する各末端には、1~3塩基程度のギャップがあってもよいが、各末端が直接隣接していること(すなわち、ギャップ0)が好ましい。

【0020】
「配列R1」及び「配列R2」は、それぞれ前記配列F1及び配列F2に相補な配列として設計される。

【0021】
(2)制限酵素認識配列
「制限酵素認識配列」は、用いる制限酵素に応じて決定される。使用可能な制限酵素は特に限定されないが、認識部位内かそのごく近傍でDNA鎖を切断するII型制限酵素が好ましい。切断面は平滑末端であっても、突出末端であってもよい。例えば、使用可能な制限酵素としてはEcoRI、EcoRV、SacI、XbaI等を挙げることができる。環状プローブは、この制限酵素認識配列と相補な配列を含むように設計される。

【0022】
(3)タグ配列
「タグ配列」は、標的核酸の配列とは無関係に、タグ間のクロスリアクションを排除した設計がなされた配列であり、好ましくは、10塩基以上50塩基以下、より好ましくは、10塩基以上25塩基以下である。環状プローブは、このタグ配列と相補的な配列を含むように設計される。その他、タグ配列の設計については、WO2013/039228号を参照することができる。

【0023】
(4)増幅プライマー用配列P
本発明の「1本鎖環状プローブ」には、「配列R1」、「配列R2」、「制限酵素認識配列」及び「タグ配列」に相補な配列に加えて、増幅プライマーのアニール部位となる配列Pを含んでいてもよい。配列Pは、標的核酸とは無関係な15~30塩基長程度の配列である。

【0024】
環状プローブを鋳型として増幅反応を行うための増幅プライマーは、この配列Pに相補な配列を含むプライマーとして設計することができ、これにより、本発明の検出方法で用いられる増幅プライマーを、標的核酸とは無関係なユニバーサルプライマーとして設計できる。

【0025】
本発明の「環状プローブ」において、「制限酵素認識配列」、「タグ配列」、「配列P」の順序は特に限定されず、それぞれの配列の間に連結部位を有していてもよいし、「配列P」が、「制限酵素認識配列」あるいは「タグ配列」の一部を含むように設計されてもよい。

【0026】
(5)標的核酸
「標的核酸」は天然に存在するものでも人工的に合成されたものでもよく、また1種類でも2種類以上であってもよい。通常検体中の標的核酸は微量であることが多いため、本発明では前記した環状プローブにより増幅するが、その際増幅産物にタグ配列が導入される。標的核酸が複数の場合、各標的核酸ごとに異なるタグ配列が付加され、これにより後述する複数配列の同時検出が可能となる。

【0027】
(6)環状プローブの合成
本発明の「環状プローブ」は、a)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間に制限酵素認識配列及びタグ配列とそれぞれ相補な配列を含む一本鎖核酸を合成し、b)前記一本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションすることにより合成することができる。

【0028】
ライゲーションは、常法にしたがい、T4 DNA Ligase等のDNAリガーゼ用いて行うことができる。ライゲーションを容易にするため、a)の一本鎖核酸には5’末端にはあらかじめリン酸基を導入しておく。この方法に限定されず、本発明の目的を損なわない限り、一本鎖核酸の末端にはライゲーションのための他の修飾を施したり、市販のライゲーション試薬等を用いてライゲーションを効率化してもよい。

【0029】
その他、分子内ライゲーション反応による環状化が進行しやすいように、R1とR2領域近傍に相補配列領域を持たせるような配列の工夫も有効となる。

【0030】
2.標的核酸の検出方法
本発明は、上記環状プローブを用いて、標的核酸を簡便かつ高精度に検出する方法を提供する。本発明の検出方法の概要を図2に示し(制限酵素認識配列を含む場合)、各工程の詳細について以下に説明する。

【0031】
工程1:環状化工程
まず、標的核酸を含む試料に、前述した配列R1及びR2をそれぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、タグ配列と相補な配列を含む1本鎖核酸を標的核酸にアニールさせ、ライゲーションして1本鎖の環状プローブを得る。1本鎖核酸は、前述のとおり、制限酵素認識配列と相補な配列や、標的核酸とは無関係な配列Pを含んでいてもよい。

【0032】
反応は、同一一本鎖核酸の標的核酸へのアニールとライゲーションが促進される条件下で行う。ライゲーションは、上記したとおり、市販のキット等を用いて、公知の方法にしたがって実施することができる。

【0033】
工程2:増幅工程
次に、工程1で生成した環状プローブに、当該環状プローブ上の任意の領域に相補な配列を含む増幅プライマーをアニールさせ、鎖置換型ポリメラーゼを用いて相補鎖合成を行う。
(1)増幅プライマー
「増幅プライマー」は、環状プローブ上の任意の領域に相補な配列を含み、環状プローブを増幅するためのプライマーである。任意の領域は、環状プローブ上の15~30塩基長程度の領域である。環状プローブに配列Pを導入した場合には、増幅プライマーは配列Pに相補な配列を有するプライマーとして設計される。

【0034】
(2)鎖置換型ポリメラーゼ
「鎖置換型ポリメラーゼ」とは、鋳型となる二本鎖DNAの水素結合を自ら解離しつつ、新しいDNA鎖を合成する酵素であり、例えば、φ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、DNA ポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(Exo-)DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo-)DNAポリメラーゼ、96-7 DNAポリメラーゼ、Aac DNAポリメラーゼ及びCsa DNA ポリメラーゼ等を挙げることができる。鎖置換型ポリメラーゼは、二本鎖の解離を必要としないため、等温でのDNA 合成が可能であり、またDNAの二次構造による合成阻害を受けないという利点がある。

【0035】
増幅反応は、鋳型となる1本鎖の環状プローブに対して、増幅プライマー、鎖置換型ポリメラーゼ、基質となるヌクレオチドを加え、増幅プライマーが環状プローブに対して安定な塩基対結合を形成することができ、かつ酵素活性を維持しうる温度でインキュベートするだけで進行する。PCRのような複雑な温度制御は必要ない。安定な塩基対結合ができる温度とは、たとえば反応温度を融解温度(Tm)以下、すなわち互いに相補的な塩基配列を持つ核酸の50%が塩基対結合した状態となる温度以下を意味する。鋳型とすべき核酸が2本鎖である場合、増幅工程では、通常これを解離し相補鎖がアニール可能な状態とする必要があり、そのためには熱変性が行われるが、本発明では増幅反応開始前の前処理(環状プローブの合成段階)において1度だけ行えば良い。

【0036】
反応は、酵素反応に好適なpHを与える緩衝剤、酵素の触媒活性の維持やアニールのために必要な塩類、酵素の保護剤、更には必要に応じてTm調整剤等の共存下で行う。緩衝剤としては、Tris-HCl等の中性から弱アルカリ性に緩衝作用を持つものが用いられる。pHは使用する鎖置換型ポリメラーゼに応じて調整する。塩類としてはKCl、NaCl、あるいは(NH4)2SO4等が、酵素の活性維持とTm調整のために適宜添加される。酵素の保護剤としてはウシ血清アルブミンや糖類が、Tm調整剤としてはDMSOやホルムアミドが一般に利用される。さらにベタインやテトラアルキルアンモニウム塩を、増幅反応の促進のために加えてもよい。

【0037】
環状プローブに増幅プライマーがアニールし、鎖置換型ポリメラーゼにより相補鎖合成が進むことにより、環状プローブの配列と相補な配列(すなわち、配列F1及びF2、制限酵素認識配列、タグ配列、配列P)を繰返し含む一本鎖核酸が合成される。

【0038】
工程3:修飾・断片化工程
次に、合成された一本鎖核酸に、修飾プローブを作用させ、前記一本鎖核酸に修飾物質を導入する。
環状プローブが制限酵素認識配列に相補な配列を含む場合には、工程3は、合成された一本鎖核酸に、修飾プローブを作用させ、前記一本鎖核酸に修飾物質と制限酵素とが導入された核酸断片に切断する工程となる。

【0039】
(1)修飾プローブ
「修飾プローブ」は、修飾物質を含むプローブであり、切断された核酸断片が後述する検出プローブとハイブリダイズしたときに目視可能になるような修飾を核酸断片に導入するためのプローブである。例えば、「修飾物質」が目視可能な物質と結合した「修飾物質結合物質」と特異的に結合することで生じる蛍光、発光又は発色により、目視検出を可能にする方法が提示できる。環状プローブが制限酵素認識配列に相補な配列を含む場合には、修飾プローブは制限酵素認識配列に相補な配列と修飾物質を含むプローブとして設計することができる。

【0040】
「修飾物質」と「修飾物質結合物質」の組合せとしては、例えば、ビオチンとアビジン、抗ジゴキシゲニンとジゴキシゲニン、又は抗FITCとFITC等を挙げることができる。

【0041】
「目視可能な物質(蛍光、発光又は発色分子)」は、目視(肉眼で)で検出可能な蛍光、発光又は発色を提示する物質である。このような物質としては、各種染料、各種顔料、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム化合物、オレフィン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、ルシゲニン、ルシフェリン及びエクリオンを包含する化学発光物質が挙げられる。まさらに、金コロイド若しくはゾル又は銀コロイド若しくはゾルを包含するコロイド若しくはゾル、金属粒子、無機粒子等が挙げられる。

【0042】
増幅産物は、前述のとおり、環状プローブの配列と相補な配列(配列F1及びF2、タグ配列、(あるいは前記に加えて、制限酵素認識配列及び/又は配列P))を繰返し含む一本鎖核酸である。それゆえ、制限酵素を作用させることで、(配列F1及びF2、タグ配列(あるいは前記に加えて、制限酵素認識配列及び/又は配列P))を含む核酸断片が得られる。

【0043】
工程4:検出工程
最後に、前記タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを作用させ、標的核酸を検出する。
環状プローブが制限酵素認識配列に相補な配列を含む場合には、工程3で得られた核酸断片を含む反応液を、タグ配列に相補な配列を含む検出プローブを固定した固相担体上に展開させて、標的核酸を検出することが好ましい。以下、固相担体を用いた場合の検出について詳述する。

【0044】
(1)固相担体
検出に用いられる「固相担体」は、タグ配列に相補な配列を含み、タグ配列と検出対象である標的核酸とを含む核酸断片に特異的にハイブリダイズしうる検出プローブを保持する担体である。前記固相担体は、多孔質材料から構成されてもよいし、多孔質材料(多孔質シート)とこれを支持するバッキング部材から構成されてもよい。固相担体を構成する多孔質材料は当該分野で周知であり、例えば、セルロース、ニトロセルロース、ナイロン等が挙げられる。また、バッキング部材は、水を通さない(蒸発させない)性質を有するものであれば特に限定されず、当該分野で周知の素材を使用することができる。

【0045】
固相担体の形状は、本発明の目的に適するように適宜設計される。例えば、容量1.5μl程度のマイクロチューブ内で検出を実施する場合には、当該チューブ内の試験溶液に固相担体の末端が浸漬されるサイズ及び形状に設計される。また、サンプルポート等を介して試験溶液を固相担体にアプライする場合には、試験溶液の展開後、各標的核酸が識別可能なサイズ及び形状に設計される。限定するものではないが、固相担体のサイズは、典型的には、平面積が150mm以下、アスペクト比が1.5以上20以下で、厚みは0.01mm以上0.3mm以下とすることができる。

【0046】
試験溶液(展開液)は、固相担体の末端にアプライされ、検出プローブはこの末端部から一定程度離れた位置に、対応する標的核酸ごとにライン状に平行に固定される。

【0047】
固相担体上には、複数の標的核酸を同時に検出する場合においても、標的核酸に対応するプローブ領域を容易に特定できるように、位置マーカーを配置してもよい。位置マーカーの存在により、目視検出の場合であっても、簡便に標的核酸の存在不存在を検出することができる。

【0048】
(2)検出プローブ
「検出プローブ」は、標的核酸と特異的にハイブリダイズしうる配列を有するように設計される。上記配列の長さは、特に限定されないが、各標的核酸に対する特異性とハイブリダイゼーション効率を確保するため、15塩基以上50塩基以下であることが好ましい。より好ましくは、15塩基以上25塩基以下である。

【0049】
検出プローブの固相担体上への固定化方法は特に限定されず、その3’末端で固相担体に結合されていてもよいし、5’末端で結合されていてもよい。例えば、ニトロセルロース等を固相担体に使用する場合、プローブを固相担体にインクジェット方式でプリントした後、UV照射などにより固着性を高める。この方法の場合、プローブはUVの届く固相担体表面のみに固定化される。

【0050】
(3)修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体
標的核酸の検出は、修飾プローブによって核酸断片に目視確認可能な物質を結合させることにより、あるいは核酸断片と検出プローブにこれらが結合したときに蛍光、発光又は発色分子を呈するような修飾を施すことによって可能になる。本発明では、その一例として、修飾プローブの修飾物質に特異的に結合しうる修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を用いて、目視検出する方法を提示する。

【0051】
ここで「修飾物質結合物質」は、前述した修飾物質に応じて決定され、ビオチンと結合するためのアビジン、抗ジゴキシゲニンと結合するためのジゴキシゲニン、又は抗FITCと結合するためのFITC等を挙げることができる。蛍光、発光又は発色分子としては、「目視可能な物質」として記載した物質を使用することができる。

【0052】
修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体は、ラテックス粒子等に固定してもよい。複合体の一部を構成する粒子の平均粒子径は、特に限定するものではないが、例えば、20nm以上20μm以下、典型的には、40nm~10μm、好ましくは0.1μm以上10μm以下、特に好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上2μm以下である。平均粒子径は、固相担体の孔径によっても適宜調整される。

【0053】
(4)試験溶液の適用・展開
増幅された標的核酸を含む試験溶液は、固相担体の末端を試験溶液に浸漬させることで、あるいは、サンプルポート等を介して固相担体に適用される。適用された試験溶液は、固相担体を構成する多孔質材料内にキャピラリー現象によって展開される。

【0054】
試験溶液は、固相担体中での標的核酸の展開を容易にするように、「展開媒体」を含むことが好ましい。展開媒体は、特に限定されないが、例えば、水、水と相溶する有機溶媒、又は水と1種又は2種以上の前記有機溶媒の混液が挙げられる。水と相溶する有機溶媒はとしては、例えば、炭素数1~4程度の低級アルコール、DMSO、DMF、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン等が挙げられる。展開媒体は、好ましくは水を主体とする。

【0055】
展開媒体は、pHを調整するための緩衝成分を含むことができる。緩衝成分は、意図するpHにもよるが、通常は6.0以上8.0以下の範囲である。より好ましくは、7.0以上8.0以下である。こうしたpHを得るための成分は、例えば、酢酸と酢酸ナトリウム(酢酸緩衝液)、クエン酸とクエン酸ナトリウム(クエン酸緩衝液)、リン酸とリン酸ナトリウム(リン酸緩衝液)等である。さらに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等が挙げられる。なお、展開媒体として、増幅反応液をそのまま採用してもよい。また、増幅反応液に対して、界面活性剤や適当な塩等の追加の成分や溶媒を加えたりすることで、組成や濃度の調整をして展開媒体として使用してもよい。展開時間は特に限定されず、固相担体の形態や形状、展開媒体の性質に応じて適宜設定される。なお、展開後には、適宜洗浄工程をさらに含んでいてもよい。

【0056】
(5)発色・検出
増幅産物は固相担体中に展開される途中で、標的核酸に導入されたタグ配列に相補的な配列を有する検出プローブに捕捉される。
核酸断片自体が修飾物質によって目視可能であれば、核酸断片が結合した検出プローブのラインの発光等により検出ができる。修飾プローブ中の修飾物質と修飾物質結合分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体が結合して、発色を生じる場合には、複合体を含む試薬の添加によって、核酸断片が結合した検出プローブのラインが発色する。かくして、各標的核酸(タグ配列)に対応した検出プローブを固定化したラインの発色により、複数の核酸を一度に目視検出することができる。

【0057】
検出工程においては、非特異的なハイブリダイゼーションによる誤信号(フォールスポジティブ)がしばしば見られる。発明者らは、非特異的ハイブリダイゼーションの原因が、試験溶液が核酸クロマトストリップ上に展開される段階での水分蒸発に伴う塩濃度の上昇にあることを確認している。

【0058】
必要であれば、展開及び検出(ハイブリダイゼーション)工程が、固相担体と外部環境との間の気体の流通が妨げられ、前記検出プローブと核酸断片とのハイブリダイゼーション反応環境の気密性が維持された条件下で行われるようにすることで、固相担体表面での塩濃度の上昇を防止し、非特異ハイブリダイゼーションを抑制することができる。固相担体表面の気密性が維持する手段は特に限定されず、前述のように、固相担体表面を透明フィルムで被覆する方法、固相担体全体を外装部材で被覆する方法などを利用することができる。

【0059】
3.核酸検出用キット
本発明は、上述した核酸検出用のキットであって、標的核酸中5’側から3’側に向かって隣接して存在する配列F1及びF2について、前記F1及びF2と相補な配列をそれぞれR1及びR2とするとき、i)配列R1及びR2を、それぞれ5’末端及び3’末端に含み、かつ、その間にタグ配列と相補な配列、標的核酸とは無関係な配列Pとを含む1本鎖核酸、を含む。
前記1本鎖核酸は、配列R1及びR2の間にさらに前記制限酵素認識配列に相補な配列を含んでいてもよい。
本発明のキットは、さらに、下記ii)~v)から選ばれるいずれか1又は2以上を含んでいてもよい。
ii)前記配列Pに相補的な配列を含む増幅プライマー;
iii)前記制限酵素認識配列と修飾物質を含む修飾プローブ;
iv)前記タグ配列に相補的な配列を含む検出プローブを固定化した固相担体;
v)前記修飾物質に特異的に結合する分子と蛍光、発光又は発色分子との複合体を含む検出試薬。

【0060】
上記したi)一本鎖核酸、ii)増幅プライマー、iii)修飾プローブ、iv)検出プローブ、v)検出試薬は、前述した方法で調製することができる。なお、前記一本鎖核酸は環状プローブ合成用の核酸である。

【0061】
さらに、本発明のキットは、上記した構成要素のほか、必要に応じて反応溶液、鎖置換型ポリメラーゼ、DNAリガーゼ、制限酵素、Tm調整剤、核酸基質等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
1.プローブ・プライマーの設計と合成
(1)環状プローブ
ターゲット遺伝子の特異配列をその両端で認識し、PASにトラップされるタグ配列と制限酵素認識配列をその中に配置したプローブDNAをインシリコで設計した(図3上段:配列番号1)。ライゲーション反応を行うため、5’末端にリン酸基を修飾した。全長を100塩基とするため、反応に影響しないウシミトコンドリアゲノムから配列を選択し、プローブに組み込んだ。
【実施例】
【0064】
(2)増幅プライマー
増幅反応に用いるプライマーは環状プローブ配列の一部に対して相補となるように設計した(図3中段:配列番号2)。
【実施例】
【0065】
(3)修飾プローブ(ビオチンプローブ)
断片化に用いるビオチンプローブは、環状プローブ配列中の制限酵素配列を含む部分配列と同配列となるように設計し、PAS検出のためにビオチンを5’末端に修飾した(図3下段:配列番号3)。
【実施例】
【0066】
2.RCA-PAS法によるDNA増幅産物の検出
(1)プローブの環状化
プローブの環状化にはLigation Convenience kit(ニッポンジーン)を用い、100μMプローブを1uμL、100μMのターゲットオリゴDNAを1μL添加して試験を行った。ネガティブコントロールとして、TEバッファーを等量添加した。3μLの蒸留水と5μLのLigation Convenience kitを加えて、16℃で30分インキュベートした後、95℃3分熱処理をして酵素活性を失活させた。環状化反応の条件を表1に示す。
【実施例】
【0067】
【表1】
JP2016202037A_000003t.gif

【実施例】
【0068】
(2)増幅反応
この反応液を用いて等温増幅反応を行った。5μLのLigation反応液に1μLの5μMプライマー、4μLの2mM dNTP、酵素に添付されているバッファーを2μL、8unit Bst DNAポリメラーゼを加えて60℃で2時間反応させた後、95℃で3分インキュベートして失活させた。増幅反応の条件を表2に示す。
【実施例】
【0069】
【表2】
JP2016202037A_000004t.gif

【実施例】
【0070】
(3)検出
増幅産物の検出を行うために、5μLの反応液をに、5μLのTEバッファー、1μLの5μMビオチンプローブ、10μLの展開液、1μLのラテックス溶液(着色ラテックス粒子を結合したストレプトアビジンを含む溶液)を加えて、タグ配列に相補な検出プローブを固定したクロマトストリップ(PAS)に展開し、増幅産物の発色を行った(詳細は、WO2013/039228号を参照のこと)。結果を図4に示す。
【実施例】
【0071】
図4に示されるように、標的核酸が存在する場合のみ、対応する検出プローブのラインが発色し、試料中の標的核酸の存在を検出できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、温度制御のための複雑な装置を必要としない簡便かつ高精度な核酸検出方法、として有用である。本発明で使用されるプライマーやプローブは、環状プローブ以外は、標的核酸とは無関係に設計されているため、ユニバーサルに利用できる。また、標的核酸に応じて異なるタグ配列を用いることで複数核酸の同時検出が可能である。本発明の方法はSTH-PASに適用することで、サーマルサイクラーを必要としない、安価で簡便なマルチ遺伝子解析技術として有用である。
【配列表フリ-テキスト】
【0073】
配列番号1:環状プローブ(プローブ1)
配列番号2:増幅プライマー
配列番号3:修飾プローブ(ビオチンプローブ)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3