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明細書 :電磁ホーン型電子スピン共鳴装置(3)

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5417616号 (P5417616)
公開番号 特開2011-158348 (P2011-158348A)
登録日 平成25年11月29日(2013.11.29)
発行日 平成26年2月19日(2014.2.19)
公開日 平成23年8月18日(2011.8.18)
発明の名称または考案の名称 電磁ホーン型電子スピン共鳴装置(3)
国際特許分類 G01N  24/10        (2006.01)
FI G01N 24/10 510L
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2010-019956 (P2010-019956)
出願日 平成22年2月1日(2010.2.1)
審査請求日 平成24年11月22日(2012.11.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】小林 正
【氏名】榎園 正人
【氏名】戸高 孝
審査官 【審査官】藤田 都志行
参考文献・文献 特開2003-250777(JP,A)
小林 正, 氏家 誠司, 大賀 恭, 長屋 智之,「マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESR装置の開発・実用化」,大分大学VBL年報,2007年,No.8,p. 129-136
小林 正,「電子スピン共鳴(ESR)・電子スピン共鳴イメージング(ESRI)の動向と基礎・応用科学分野及び学際分野で,九州大学中央分析センターニュース,2007年 7月30日,Vol. 26, No. 3,p. 1-6
調査した分野 G01N 24/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の試料(14a)の周囲に設ける開磁路磁場発生器(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射器(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射器15から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記開磁路磁場発生器(200)として、前記試料載置台(14)上の試料(14a)の周囲の上方部、下方部、左方部、右方部、あるいはこれら間の他方部の何れか一方部の両側各々に、ヨーク(210)を平行に設け、この各ヨーク(210)に、前方の試料側に傾斜対向させて磁場変調コイル(240)と磁場掃引コイル(260)を設置すると共にその後方に平行対向させて磁化の方向成分を同一にした第一永久磁石(220)を平行配置し、この第一永久磁石(220)間に磁化方向を第一永久磁石と同一方向にした第二永久磁石(230)を配置し、前記第二永久磁石(230)の反試料側に磁性金属(231)を装着したことを有することを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【請求項2】
前記電磁ホーンの表面(射出口)に凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射器(15)に凹面型反射板(15a)を設け、
前記試料載置台(14)とマイクロ波反射器(15)に電磁ホーン方向への位置調節装置(RP1,RP2)を設け、
試料(14a)に放射する放射マイクロ波の出力を表示・記録する第一パワーモニター(22)とリファレンスアーム(02)のミキサー(42)直前でのマイクロ波の出力を表示・記録する第二パワーモニター(20)と凹面型反射板(15a)から試料(14a)、電磁ホーン(12)、サーキュレーター(6)を順次介した後の反射マイクロ波の出力を表示・記録する第三パワーモニター(21)を設け、これらパワーモニターからのマイクロ波の出力測定値を導入して、第三パワーモニター(21)からのマイクロ波出力値を、あるバランス用設定値になるように前記位置調節装置を調節して第二パワーモニター(20)からのマイクロ波出力値にバランスさせる制御装置(Co)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ホーン型ESR装置の感度/精度の改良、操作性と応用計測性を大幅に拡大(多目的性)した電磁ホーン型電子スピン共鳴装置(3)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数掃引方式でなく、磁場掃引方式に限っての事例であるが、電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の開発の先達は1983年大矢博昭氏によるX-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例と,1991年に相馬純吉・原秀元両氏によるK-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例のみである。
これに基く特許は、下記の特許文献1から特許文献4にて紹介されている。また最近では、発明者らが開発し非特許文献1により次に紹介する電磁ホーン型電子スピン共鳴装置が紹介され注目されている。
非特許文献1では、共振器型ESRでは、ESR計測時に高いQ値の維持が必要な為,少量・小型で誘電ロスの小さい試料でしか測定できなかった。このため、誘電ロスの大きな試料(含水試料・生体試料),導電性試料,金属含有試料,大型試料のESR測定は困難または不可能であり,多くの制約があった。
この問題を解決するために,第1段階として、マイクロ波透過方式電磁ホーン型ESRの場合にはマイクロ波出力側と入力側の2つの電磁ホーン間の空間を試料セルとして採用し,第2段階としては、マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESRの場合には電磁ホーンの開口部とマイクロ波反射板間の空間を試料セルとして採用し,マイクロ波定在波ではなくマイクロ波進行波を用い,共振器型ESRのもつ制約・困難を悉く改善したマイクロ波透過方式及び反射方式電磁ホーン型ESRを稼働させ,感度的にも球形または円筒形共振器の高Q値をもつ空洞共振器型ESRには及ばないものの、それに近づけるためにこの3年間で3桁ほど測定感度の改善を行い、初めて電磁ホーン型ESRとして実用のレベルにまで改良を行ってきた。
【0003】
<本発明者等が開発し発表した電磁ホーン型電子スピン共鳴装置>
電磁ホーン型電子スピン共鳴装置である反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図を図4に示す。
図4において、この反射方式電磁ホーン型ESR装置は、高周波域のマイクロ波を発振するマイクロ波発振器001と、設定出力のマイクロ波mw0を減衰器ATT1とサーキュレータcirculatorを介して試料sampleに放射する電磁ホーンhornと、試料sampleへの磁場発生装置002と、試料sampleを介したマイクロ波mw1を再び試料sampleを介して電磁ホーンhornに反射するマイクロ波反射板003と、リファレンスアームからのマイクロ波mw3と電磁ホーンhornからの反射マイクロ波mw2を導入し、マイクロ波mw3は、反射マイクロ波mw2と逆の位相を持ち強度の等しいマイクロ波にしこのマイクロ波でマイクロ波mw2を打ち消しバランスさせ、ある磁場で電子スピンが│-1/2>状態から│1/2>状態に遷移する所謂磁気共鳴によるスピン反転時に試料がその分だけマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによるマイクロ波の極微量変化を増幅してESRスペクトルとして記録するマイクロ波処理回路004とからなる。
マイクロ波処理回路004及びマイクロ波周波数計(Frequency Counter)への導入部において、WG-N,WG-SMA:同軸導波管交換器、ATT2:減衰器 Magic tee:マジックティー、Phase shifter:位相器、AMP:プリアンプとロックインアンプを各々示す。図中、ATT3は減衰器である。
【0004】
この反射方式電磁ホーン型ESR装置の電磁ホーンは、例えば断面が方形の導波管であれば、開口端の開ロ面積が徐々に広くなるよう、底面が開放された角錐台の形状又は円錐台の形状のホーンを取り付けたものである。原理としては、導波管の内部を伝送された電磁波が、開ロ端反射することなく、空間に放射されるための最も単純な形と言える。電磁ホーンの長さは長ければ長いほど指向性は鋭くなる。角錐・円錐をホーンの形の基準とした場合、その頂角を中心角と呼ぶ。これは指向性を鋭くするための最適値がある。
一方マイクロ波反射板の反射面は平坦面が一般的で中には立体的形状が定かでないが側面から見て湾曲したものである。
このように、電磁ホーンのマイクロ波放射面は平坦面であり、マイクロ波反射板の反射面は平坦面かそれに類似のものであるため、何れもマイクロ波の収斂/集束が好ましくなく、ノイズが多く、感度も満足するものでなかった。

【特許文献1】特公平3-78945号公報(発信受信電磁ホーンに反射板を対向配置させたタイプの基本)
【特許文献2】特公平3-78591号公報(発信電磁ホーンと受信電磁ホーンタイプの基本)
【特許文献3】特公平3-78944号公報(発信電磁ホーンと受信電磁ホーンの交差対向配置の基本)
【特許文献4】特公平3-78946号公報(受信電磁ホーンとマイクロ波反射板が無く試料からの反射マイクロ波を検出するタイプ
【非特許文献1】「電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)装置の開発とESR応用計測」小林正,桑田賢一・・・日本AEM学会誌Vol.17,No.1,2009年pp138-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者が従来開発した上記の装置は未だ感度が低く、パソコンとの結合もなくあくまでも試作の範囲である。
本発明は、2桁以上のESR測定感度の向上。パソコン自動化による操作性の向上。多目的仕様にして誘電ロスの大きな試料および大型/多量試料の計測が有利に可能で、基礎科学から材料工学・環境科学・医薬学分野での臨床現場での血液・組織検査、レドックス関連加齢現象・発癌機構の研究等に即応用可能にするマイクロ波反射方式電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR/EPR)装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を満足する本発明の特徴とするところは、次の(1)~(2)通りである。
(1)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の試料(14a)の周囲に設ける開磁路磁場発生器(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記開磁路磁場発生器(200)として、前記試料載置台(14)上の試料(14a)の周囲の上方部、下方部、左方部、右方部、あるいはこれら以外の他方部等の何れか一方部の両側各々に、ヨーク(210)を平行に設け、この各ヨーク(210)に、前方の試料側に所定角度(θ)傾斜対向させて磁場変調コイル(240)と磁場掃引コイル(260)を設置すると共にその後方に平行対向させて磁化の方向成分を同一にした第一永久磁石(220)を平行配置し、この第一永久磁石(220)間に磁化方向を第一永久磁石と同一方向にした第二永久磁石(230)を配置し、前記第二永久磁石(230)の反試料側に磁性金属(231)を装着したことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
(2)、前記電磁ホーンの表面(射出口)に凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射板(15)に凹面型反射板(15a)を設け、
前記試料載置台(14)とマイクロ波反射器(15)に電磁ホーン方向への位置調節装置(RP1,RP2)を設け、
試料(14a)に放射する放射マイクロ波の出力を表示・記録する第一パワーモニター(22)とリファレンスアーム(02)のミキサー(42)直前でのマイクロ波の出力を表示・記録する第二パワーモニター(20)と凹面型反射板(15a)から試料(14a)、電磁ホーン(12)、サーキュレーター(6)を順次介した後の反射マイクロ波の出力を表示・記録する第三パワーモニター(21)を設け、これらパワーモニターからのマイクロ波の出力測定値を導入して、第三パワーモニター(21)からのマイクロ波出力を、あるバランス用設定値になるように前記位置調節装置を調節して第二パワーモニター(20)からのマイクロ波出力値にバランスさせる制御装置(Co)を設けたことを特徴とする前記(1)に記載の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマイクロ波反射方式電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR/EPR)装置は、2桁以上のESR測定感度の向上。パソコン自動化による操作性の向上。多目的仕様にして誘電ロスの大きな試料および大型/多量試料の計測が有利に可能で、基礎科学から材料工学・環境科学・医薬学分野での臨床現場での血液・組織検査、レドックス関連加齢現象・発癌機構の研究等にも即応用可能である。
1.前記構成の開磁路磁場発生器(200)は、被験物(者)を磁石で挟まない形で磁気共鳴に必要な均一磁場が得られる開磁路型にしたため、試料の形状サイズ等に影響されずに、大型/多量試料の計測を有利に可能にした。
2.前記電磁ホーン12の表面の凸面型放射レンズ13と、凹面型反射板(15a)とによりマイクロ波の収斂放射と収斂反射を有利に可能にした。
3.前記位置調節装置(RP1,RP2)は、前記制御装置(Co)と共動して、電磁ホーン12に対する凹面型反射板(15a)と試料載置台(14)の最適な相対関係を調節制御可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
更に、本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の最良の形態を、図1~図3に示す実施例(具体例)により詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例である反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路等の実施例1を以下に詳細に説明する。
図1及び図4に示す反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路等の基本構成は、
○マイクロ波発信装置、
○マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台14上の試料14aに放射する電磁ホーン装置、
○電磁ホーン装置の電磁ホーン12から試料14aを介してのマイクロ波を再び試料14aを介して電磁ホーン12に反射する凹面型反射板15aを有するマイクロ波反射器15、
○凸面型放射レンズ13と凹面型反射板15aと試料14aの中心14acを結ぶ直線Xに対して試料14a中心14acを通る直交面YFにおいて、前記中心14acの沿直上・下方部D,U、水平左・右方部R,L、或いはこれらの中間部等の内、任意に設定した一方向部の両側各々に、ヨーク210を平行に設け、この各ヨーク210において、試料側に傾斜(θ)対向させて磁場変調コイル240と磁場掃引コイル260を設置すると共にその後方に平行対向させて磁化の方向成分を同一にした第一永久磁石220を配置し、第一永久磁石220間に試料14a域の磁場を調節するための第二永久磁石230を配置し、第二永久磁石230の反試料側に磁性金属231を装着してなる開磁路磁場発生器200、
○前記マイクロ波導波管のメインアーム01から分岐したリファレンスアーム02からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射器15の凹面型反射板15aから試料と電磁ホーン12とメインアーム01を介しての反射マイクロ波をミキサー42に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を差動増幅装置43で検出しロックイン増幅装置44で増幅し記録装置45で記録するマイクロ波処理装置、
とからなる。
このマイクロ波処理装置は、ミキサー42と差動増幅装置43とロックイン増幅装置44と記録装置45からなり、リファレンスアーム02からのマイクロ波からその逆の位相を持ち強度の等しいマイクロ波をつくりこのマイクロ波で電磁ホーン12からの反射マイクロ波を打ち消しバランスさせ、電子スピンの磁気共鳴時に電子スピンの反転に費やされるのに必要なエネルギーの分だけ試料がマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによる反射マイクロ波の変化を増幅してESRスペクトルとして記録するものである。
【0010】
1.マイクロ波発振装置
マイクロ波発振装置は、磁場掃引仕様と周波数掃引仕様の双方の機能を持たせたものであり、磁場掃引仕様に関しては、ガン発振器用電源31、ガン発振器32、単向管33、半固定式減衰器34、同軸導波管交換器35、アンプ電源36a付きのマイクロ波広帯域増幅器36、周波数掃引仕様に関してはスペクトラムアナライザー37a付きのYIGスイープオシレータ37(8GHz~12.5GHzマイクロ波周波数掃引可能 HP社製、又はアジレント社製品:E8257D等)、マイクロ波を同軸ケーブル020からメインアーム導波管01に交換する同軸導波管交換器38からなる大出力も可能でガン発振器32による磁場掃引の際の周波数固定と磁場固定でスイープオシレータ37による周波数掃引が可能なマイクロ波発生部と、
同軸導波管交換器38に接続のメインアーム導波管01に介在させたアイソレータ1、周波数カウンター2付きの同軸導波管交換器3、方向性結合器4、アテネータ減衰器5、サ-キュレータ6、試料入射前マイクロ波パワーモニター計測端子部7a、試料からの反射マイクロ波パワーモニター計測端子部7bからなるマイクロ波導波管メインアーム部とからなる。
前記マイクロ波発生部は、進行波と後退波の混じったマイクロ波を単向管33で進行マイクロ波のみに選択し、単向管33からの進行マイクロ波を半固定式減衰器34と同軸導波管交換器35によりマイクロ波用同軸ケーブル010にもってきて、マイクロ波広帯域増幅器36に導入する、同様にマイクロ波広帯域増幅器36はYIGスイープオシレータ(8GHz~12.4GHzマイクロ波周波数掃引可能 HP社製又はアジレント社製品:E8257D等)37からの数mWのマイクロ波を最大1Wまで広帯域増幅させて、同軸導波管交換器38を経て、メインアーム導波管01にマイクロ波を導入する。HP社製のYIGスイープオシレータ37からのマイクロ波はスペクトラムアナライザー37aでその周波数値がモニター確認され、ESRスペクトルの周波数掃引時の積算モニターとしても使用される。
次いで、マイクロ波導波管01に導入されたマイクロ波は、単向管(アイソレーター)1で進行マイクロ波のみに選択され、そのごく一部は同軸導波管交換器3を介して、周波数カウンター2に導入されて周波数をモニターする。
メインアーム導波管01は、方向性結合器4でリファレンスアーム導波管02を別に分岐する一方、マイクロ波パワー調整用の減衰器5をとおり、パワーを調整されてサーキュレーター6に入る。このマイクロ波はサーキュレーター6の特徴で、全てのマイクロ波が試料14aのある電磁ホーン12側に導かれる。途中にあるパワーモニター用の計測端子7aでこのマイクロ波の出力値が検知され、第一パワーモニター22で測定される。一方、試料14aを介して電磁ホーン12に戻ってきたマイクロ波はその出力値パワーモニター用の計測端子7bで検知され、パワーモニター23で測定される。
【0011】
2.電磁ホーン装置とマイクロ波反射器
電磁ホーン装置は、メインアーム導波管01に連結したスリースタブチューナー8、ツイスト導波管9、矩形円形導波管10、円形導波管11、電磁ホーン12、テフロン(登録商標)製のマイクロ波放射凸面型放射レンズ13からなる。
電磁ホーン装置は、パワーモニター用の計測端子7aを一部分岐させた残りのマイクロ波を、試料位置を仮想的位置に置ける働きのあるスリースタブチューナー8(通常使用時にはこれを全て抜いておいて無効化にしておく)に導入し、さらにマイク波振動面を90°回転するためにツイスト導波管9に導入し、続いて矩形円形導波管10で円形マイクロ波モードにし、円形導波管11の延長上の電磁ホーン12に導入しそのマイクロ波を凸面型放射レンズ13から試料14aを介してマイクロ波反射器15の凹面型反射板15aに向けて放射する。
これによりマイクロ波パワー計測端子7aでパワー計測されたマイクロ波はスリースタブチューナー8に入り、定在波モードのマイクロ波振動面をツイスト導波管9で90°回転された後、矩形から円形マイクロ波モードに矩形円形導波管10で交換されて、電磁ホーン12にて定在波から球面進行波になり試料空間に放出される。これは測定感度を上げるために電磁ホーン12のマイクロ波放射面に、ガラス製やプラスチック製等の透明レンズ或いはテフロン(登録商標)製等の半透明レンズ等の凸面型放射レンズ13を設けて極力収斂させる。中でもテフロン(登録商標)製の凸面型放射レンズは加工性が良く又マイクロ波透過率が大きく且つ屈折率も大きく収斂性が良いので好ましい。
誘電ロスが大きくて透過性の悪い試料14aでは試料14aで直ちに反射され、マイクロ波の透過性のよい試料では、さらに後方の凹面型反射板15aに達し、ここで凹面型反射板15aの反射効果で、収斂反射されて再度試料14aに入り、試料14aを抜けて凸面型放射レンズ13を介して電磁ホーン12に戻り、マイクロ波パワー計測端子7bにてパワー計測された後にサーキュレーター6に入り、サーキュレーター6の下向き矢印の様に進行し同軸導波管交換器16、減衰器17、同軸導波管交換器18を介してミキサー(マジックティー)42部へと導かれる。
【0012】
3.開磁路磁場発生器200
磁気共鳴を起こすためには大きさと磁化方向が均一で強力な磁場を必要とするまた、従来のMRIは被験者を磁石で挟む形で均一な磁場を実現している。そのため磁石同士のギャップより大きいものは検査できない欠点がある。また閑寒的な形となるため、閑所恐怖症の人や小さい子供が怖がる揚合や火葬場の様だと嫌がる人がいる。
この開磁路磁場発生器200は、これらの問題を解決するため、被験物(者)を磁石で挟まない形で核磁気共鳴に必要な均一磁場が得られる開磁路磁場発生器である。
開磁路磁場発生器200は、図1と図2に示す如く、凸面型放射レンズ13と凹面型反射板15aと試料14aの中心14acを結ぶ直線Xに対して試料14a中心14acを通る直交面YFにおいて前記中心14acの沿直下方部Dのみに配置され、その他の水平左・右方部R,Lと沿直上方部U等を解放したものであり、該下方部Dの両側に(言い換えると前記直交面YFにおいて好ましくは試料14a中心14acを円心とする直交円面YFCの任意方向半径線(本例は下方の沿直半径線Dr)の両側に対称的に)一対のヨーク210を平行配置し、この開磁路特殊ヨーク210の各先部に100kHzの磁場変調コイル240及び磁場掃引コイル260を傾斜対向設置し、その後方に平行対向させて磁化方向を同一にした第一永久磁石220を配置し、第一永久磁石220の対向間に磁化方向を第一永久磁石220と同一方向にした磁場掃引用の第二永久磁石230を配置し第二永久磁石230の反試料側に磁性金属として鉄板231等を装着してなる。第二永久磁石230と鉄板231の中心部は沿直半径線Dr上に位置する。
これら磁場変調コイル240及び磁場掃引コイル260、第一永久磁石220、第二永久磁石230の相対関係は、次に紹介する解析モデルと解析条件とその結果等から試料条件に応じた関係に適宜設定する。
周波数掃引方式電磁ホーンESRの場合は、開磁路磁場発生器200は磁場変調コイル240のみ使用して磁場掃引コイル260を使用せず電流を0とする。他方磁場掃引方式電磁ホーンESRの場合は、磁場変調コイル240と磁場掃引コイル260を用いて磁場掃引電磁石として使用する。
図1に示すアンプ250は100kHzのサイン波を増幅し、インピーダンス・マッチングさせた多巻きの磁場変調コイル240に導入されて、磁場掃引コイル260で磁場掃引を行い、磁場変調コイル240で発生させた磁場均一性のよい静磁場に100kHzの交流磁場を重畳させて、変調分光法にて3桁ほどの計測感度の改善を行っている。
また周波数掃引方式の電磁ホーン型ESR測定を行う場合には、磁場掃引コイル260を使用しない。
【0013】
<開磁路磁場発生器200の解析モデルと解析条件>
開磁路磁場発生器200の磁場分布を2次元有限要素法で解析をし、磁場の均一領域について検討を行った結果は次の通りである。
図3の(1)と(2)に解析モデルを示す。このモデルはMg1~Mg3の3つの永久磁石を用いて開磁路を形成し、均一磁場の領域をつくることができる。下記の条件に従って解析を行った。
(a)、永久磁石Mg2(230)の反試料側に鉄製ヨークFe(231)を配置し、永久磁石Mg2と鉄製ヨークのそれぞれの幅ならびに試料14aからの距離を変化させて、均一磁場の領域の広さとその磁場の強さの関係を調べた。
(b)、磁場を強くするために、所定間隔で平行対向させた一対の開磁路特殊ヨーク210を配置し、その形状を厚さtと先端の傾斜角度θを変化させて解析し、均一磁場の領域の広さとその磁場の強さへの影響を調べた。
(c)、永久磁石Mg2の磁化Mの値を変化させ、均一磁場の領域の広さとその磁場の強さへの影響を調べた。
【0014】
<解析結果から>
1)、均一領域の広さは永久磁石Mg2と試料14aとの距離ならびに永久磁石Mg2と鉄製ヨークのそれぞれの幅を変化させて均一となるように調整できた。永久磁石Mg2の厚みがゼロの場合には均一な領域は得られなかった。
2)、開磁路特殊ヨーク210を取り付けることで、均一領域の磁束密度を大きくすることができた。
3)、開磁路特殊ヨーク210は突き出ている高さが高いほど、均一領域の磁束密度を大きくすることができ、同じ高さならば磁気飽和の無い状態で厚さtが薄い方が大きくなる。磁束密度の大きさは最大で0.15[T]であり、目標の0.4[T]に届かなかった。しかし、L‐バンド電磁ホーン型ESR装置ならばおよそ0.035[T]程度で利用可能である。また、均一領域の広さは210がないときと比べて大きな変化はなかった。
4)、永久磁石Mg2の磁化Mの値を変化させても、永久磁石Mg2と試料14aとの距離と同様な傾向で、均一磁場の領域の広さを僅かながら調整することができた。
【0015】
4.位置調節装置とその制御装置(信号処理内容を含む)
マイクロ波放射凸面型放射レンズ13と凹面型反射板15aの間に設けた試料載置台14と、凹面型反射板15aには、各々ラックピニオン式の位置調節機構RP1、RP2を設ける。試料載置台14には別途昇降機構を内設し矢印方向に昇降して試料載置台14上に載せた試料14aの中心14acを凸面型放射レンズ13中心と凹面型反射板15a中心を結ぶ直線X上に一致させ測定感度精度の向上に貢献することができる。
位置調節装置は、手動でもよいが、本例は、自動制御機構を採用してあり、その構成は、前記各々ラックピニオン式の位置調節機構RP1、RP2とそのピニオン駆動用ステッピングモータM1、M2とそのGP-IB制御器Co1,Co2からなり、その制御装置は、GP-IB制御器Co1,Co2の統括制御装置Co並びに、統括制御装置Coに連結した第一パワーモニター22、第二パワーモニター20、第三パワーモニター21とからなる。この4台のパワーモニターはGPIB仕様(もしくはラボビューでのUSB仕様)でマイクロ波出力値を自動計測する。
【0016】
5.統括制御装置Coによる位置調節装置の自動制御
統括制御装置Coは、次の(1)~(6)を順次おこなう。
(1)、GP-IB制御器Co3により、第一パワーモニター22と連動している減衰器5に設置されたステッピングモーター(図示せず)をまわし、メインアーム導波管01へのマイクロ波出力値を所定値に設定する。(例えば300mW)
(2)、GP-IB制御器Co2により、ステッピングモーターM2を駆動させて、凹面型反射板15aを一番後方まで移動させ、同時にマイクロ波吸収板を試料14aと凹面型反射板15a間に挿入する。
(3)、次に第三パワーモニター21の読みが最大になるように、GP-IB制御器Co2によりモーターM2を回して凹面型反射板15aを試料14aに近づける。
(4)、第三パワーモニター21からのマイクロ波出力値が、あるバランス用設定値になるようにGP-IB制御器Co1によりM1モーターを回して設定する。
(5)、試料14aから反射してサーキュレーター6に導かれた反射マイクロ波を導入した第三パワーモニター21の値が、第二パワーモニター20からのマイクロ波出力値とバランスするようにGP-IB制御器Co4により第二マイクロ波モニター20の直前の同軸用の減衰器40のステッピングモーター(図示せず)を回して調整する。
(6)、この状態で差動増幅器43を通過後の一部の検出電流値が最小になるように、GP-IB制御器Co5によりリレファレンスアーム導波管02に設置の位相器41のステッピングモーター(図示せず)を回して位相調整する。
(7)、XYレコーダー45(XY記録装置もしくはディジタルオシロ)では、横軸に掃引磁場又は掃引周波数を入力し、縦軸に磁場変調で得たESR強度信号100を入力することで、磁場掃引方式ESRスペクトル及び周波数掃引方式ESRスペクトルを得る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明装置は、前述の優れた効果を呈する。このため以下に紹介の各種分野に適用でき、この種産業に多大な貢献をするものである。
1.物理学・化学の基礎科学分野での各種固相・液相・気相物質の基礎研究
2.医学での臨床検査室での血液・生体組織の迅速検査
3.医薬学分野でのレドックス関連の加齢現象及び難治疾患(癌・糖尿病・虚血・高血圧・アルツハイマー等)の機作解明と新薬の開発。
4.環境科学分野での大気処理、水処理・水質検査、ジーゼルエンジン等の粉塵検査。
5.MRIコイルを用いたESRイメージング、さらにはESR-STM (走査型トンネル顕微鏡)装置開発と選択された高分解能ESRイメージング像の獲得。
6.アラニン及びアラニンイメージングプレートを用いた放射線線量3次元計測システムの構築。試料の非破壊ESR年代測定法への応用。
7.他の診断機器(X線コンピュータトモグラフィー、超音波画像診断等、PET等)との同時/連続検査診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例である周波数掃引方式及び磁場掃引方式の双方を兼ねたX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図である。
【図2】磁路磁場発生装置の具体例を示すブロック線図である。
【図3】(1)と(2)は磁路磁場発生装置の解析モデルをしめす説明図である。
【図4】従来のK-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図である。
【符号の説明】
【0019】
図1において
01:メインアーム
02:リファレンスアーム
1:アイソレータ
4:方向性結合器
6:サ-キュレータ
12:電磁ホーン
13:放射凸面型レンズ
14a:試料
14:試料載置台
15a:凹面型反射板
20,21,22,23:パワーモニター
RP1、:試料載置台の位置調節機構(ラックピニオン式)
RP2:凹面型反射板の位置調節機構(ラックピニオン式)
Co:統括制御装置
200:開磁路磁場発生装置
210:開磁路特殊ヨーク
220:第一永久磁石
230:第二永久磁石
240:磁場変調コイル
260:磁場掃引コイル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3