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明細書 :形状記憶合金アクチュエータ制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-232777 (P2015-232777A)
公開日 平成27年12月24日(2015.12.24)
発明の名称または考案の名称 形状記憶合金アクチュエータ制御装置
国際特許分類 G05D   3/00        (2006.01)
FI G05D 3/00 C
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-119001 (P2014-119001)
出願日 平成26年6月9日(2014.6.9)
発明者または考案者 【氏名】山本 隆栄
【氏名】佐久間 俊雄
【氏名】竹田 悠二
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100092624、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴田 準一
【識別番号】100114018、【弁理士】、【氏名又は名称】南山 知広
【識別番号】100165191、【弁理士】、【氏名又は名称】河合 章
【識別番号】100151459、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 5H303
Fターム 5H303BB01
5H303BB06
5H303BB11
5H303CC01
5H303DD15
5H303DD22
5H303EE03
5H303GG04
5H303JJ09
要約 【課題】可動部材が障害物によって拘束された状態で生じる過電流による形状記憶合金部材の過熱破損が生じない形状記憶合金アクチュエータ制御装置を提供する。
【解決手段】抵抗値フィードバック制御部2は、抵抗値検出部5が検出した抵抗値及び指令抵抗値出力部7が出力した指令抵抗値に基づいてSMAワイヤsmaの抵抗値のフィードバック制御を行う。駆動部3は、フィードバック制御に応じた形状記憶合金アクチュエータの駆動を行うために、SMAワイヤsmaに電圧を印加して加熱することによって、SMAワイヤsmaの抵抗値を予め決定された変位量に対応する抵抗値に設定して予め決定された変位量だけSMAワイヤsmaを収縮させる。電流制限部6は、電流検知部4によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときにSMAワイヤsmaに印加される電圧を低減することによって、SMAワイヤsmaに流れる電流を制限する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
形状記憶合金部材を介して動かされる可動部材を有する形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置であって、
形状記憶合金部材の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、
形状記憶合金部材の抵抗値を形状記憶合金部材の予め決定された変位量に対応する抵抗値に設定するための指令抵抗値を出力する指令抵抗値出力部と、
前記抵抗値検出部が検出した抵抗値及び前記指令抵抗値に基づいて形状記憶合金部材の抵抗値のフィードバック制御を行う抵抗値フィードバック制御部と、
前記フィードバック制御に応じた形状記憶合金アクチュエータの駆動を行うために、形状記憶合金部材に電圧を印加して加熱することによって、形状記憶合金部材の抵抗値を前記予め決定された変位量に対応する抵抗値に設定して前記予め決定された変位量だけ形状記憶合金部材を収縮させる駆動部と、
形状記憶合金部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
前記電流検知部によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときに形状記憶合金部材に印加される電圧を低減することによって、形状記憶合金部材に流れる電流を制限する電流制限部と、
を有することを特徴とする形状記憶合金アクチュエータ制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金部材を介して動かされる可動部材を有する形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
形状記憶合金は、低温で塑性変形させた後に高温にすると変形前の形に戻り、再び低温にすると、塑性変形された形になる。形状記憶合金としては、Ti-Ni系合金のものが代表的であり、Ti-Zr-Ni系合金、Ti-Ni-Cu合金、Ti-Ni-Zn合金、Ti-Ni-Al合金等が用いられる。Ti-Ni-Cu合金の場合、450℃~700℃の温度で100時間以内に熱処理して、発生力向上のためのTiCu結晶粒の微小化(1μm未満)と、形状記憶効果のための変位量を担うTiNi結晶粒(500nm以下)の確保を行う。
【0003】
形状記憶合金アクチュエータは、形状記憶合金の形状及び回復力を利用したアクチュエータである。形状記憶合金アクチュエータは、10mW程度の非常に小さい消費電力、センサレス、機械的ノイズレス、電気的ノイズレス、小型、軽量、簡便な操作性等の利点を有するので、形状記憶合金を用いないアクチュエータに比べて多くの優位性を有している。これらの優位性のために、形状記憶合金アクチュエータは、精密機器、医療機器、ロボット等の産業機器、玩具等の分野での実用化が期待でき、特に、医療分野では、任意の位置での位置決め可能な能動内視鏡の実用化が期待できる。
【0004】
従来、形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行うために、形状記憶合金部材の抵抗値を予め決定された一定の抵抗値に維持するための定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置が用いられている。
【0005】
このような定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置として、形状記憶合金部材の抵抗値の単位時間当たりの変化(変化速度)と指示抵抗値とを比較する形状記憶合金アクチュエータ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置の別の例として、検出した形状記憶合金部材の抵抗値と指令値とを比較する形状記憶合金アクチュエータ制御装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
また、定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置の別の例として、形状記憶合金部材の抵抗値が大きく変化する二つの変化点を基準にしこの変化点間を直線化しこの間のみの狭い領域を可動部材の位置制御域とする形状記憶合金アクチュエータ制御装置も提案されている(例えば、特許文献3)。
【0008】
さらに、定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置の別の例として、PWMパルスが供給され、PWMパルスのオフピリオドの間に形状記憶合金部材の抵抗値を測定する形状記憶合金アクチュエータ制御装置が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2011-157923号公報
【特許文献2】特開2010-128552号公報
【特許文献3】特開2008-276750号公報
【特許文献4】特表2003-507625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、形状記憶合金部材の抵抗値と変位は非線形のため抵抗値の指令値と変位の関係をリニアライズしてmm単位の位置制御を精度良く可能とする方法を提供する。
【0011】
一方、定抵抗制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置によって形状記憶合金部材を介して可動部材を動かす際に可動部材が障害物によって拘束された場合、形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、拘束された状態に逆らって可動部材を動かそうとする。
【0012】
このように拘束された状態に逆らって可動部材を動かそうとすると、予め決定された変位量よりも大きい変位量の形状記憶合金部材の収縮を行うのに必要な電流、すなわち、過電流がSMA部材に流れ、SMA部材が過熱破損されるおそれがある。
本発明の他の目的は、形状記憶合金でなる可動部材(形状記憶合金部材と言う)が障害物によって拘束された状態で生じる過電流による形状記憶合金部材の過熱破損が生じない形状記憶合金アクチュエータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、形状記憶合金部材を介して動かされる可動部材を有する形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行う形状記憶合金アクチュエータ制御装置であって、形状記憶合金部材の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、形状記憶合金部材の変位量との関係で示す非直線抵抗値曲線を複数分割して近似直線化しこの近似直線の各分割区分毎に形状記憶合金部材のmm単位変位量に対応する抵抗値を設定するための指令抵抗値出力部と、抵抗値検出部が検出した抵抗値及び指令抵抗値に基づいて形状記憶合金部材の抵抗値のフィードバック制御を行う抵抗値フィードバック制御部と、フィードバック制御に応じた形状記憶合金アクチュエータの駆動を行うために、形状記憶合金部材に電圧を印加して加熱することによって、形状記憶合金部材の抵抗値を予め決定された変位量に対応する抵抗値に設定して予め決定された変位量だけ形状記憶合金部材を収縮させる駆動部と、形状記憶合金部材に流れる電流を検知する電流検知部と、電流検知部によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときに形状記憶合金部材に印加される電圧を低減することによって、形状記憶合金部材に流れる電流を制限する電流制限部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
即ち本発明は、前記構成における前記指令抵抗値出力部により第一の課題を解決し、及び前記電流制限部により第二の課題を解決するものである。
前記指令抵抗値出力部の機能設定理由は次の通りである。
【0015】
<指令抵抗値出力部について>
SMAワイヤを通電加熱すると温度変化による相変態により伸 縮(変位)させることが出来るが単なる通電のON/OFFでは伸縮(変位)の量を任意に変えることは出来ない。温度によりSMAの抵抗値は図2のように変化する。加熱と冷却(自然冷却)ではヒステリ シスが有り温度をフィードバックして位置制御をするとヒステリシスがあるため加熱時と冷却時には位置がずれることになり位置制御精度が悪い。
【0016】
一方、SMAの抵抗値と変位の関係ではヒステリシスはない。従ってSMAの抵抗値をフィードバックしてリアルタイムで変位を 制御すれば外部位置センサ不要のSMAアクチュエータとしての精密な位置制御を可能とする。
【0017】
そこで、SMAアクチュエータを位置制御する場合、位置指令を単に抵抗値指令ですると抵抗値と位置の関係が曖昧のため目標位置の設定が困難であり位置制御精度が悪い。よって指令抵抗値をSMAアクチュエータのmm単位変位に変換する事により通常のアクチュエータ同様の操作で位置決めが可能となる。しかしながらSMAアクチュエータの抵抗値と変位は非線形のため抵抗値の指令値と変位の関係をリニアライズ する必要がある。
【0018】
本発明の指令抵抗値出力部では、形状記憶合金部材の変位量との関係で示す非直線抵抗値曲線を複数分割して近似直線化しこの近似直線の各分割区分毎に形状記憶合金部材のmm単位変位量に対応する抵抗値を設定することにより指令通りの位置制御を可能とする。 この非直線部の分割数は多い方が良いが例えば実験結果より4区間に分割して位置決めした精度は0.05mmであり実用上問題なかった。
【0019】
<電流制限部について>
次に前記電流制限部は、電流検知部によって検知された電流、すなわち、形状記憶合金部材に流れる電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときに形状記憶合金部材に印加される電圧を低減することによって、形状記憶合金部材に流れる電流を制限するものである。
このため、前記電流制限部は、前記機能により、可動部材が障害物によって拘束されても形状記憶合金部材に過電流が流れなくなり、可動部材が障害物によって拘束された状態で生じる過電流による形状記憶合金部材の過熱破損を皆無にする作用効果を呈するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による形状記憶合金アクチュエータ制御装置の一実施の形態の回路図である。
【図2】SMAワイヤの収縮及び伸長を説明するための図である。
【図3】SMAワイヤの加熱による抵抗の変化及び冷却による抵抗の変化を示すグラフである。
【図4】可動部材としてのワンウェイクラッチをSMAワイヤで軸回転駆動して連続変位の位置決め制御を行う形状記憶合金アクチュエータの動作を説明するための図である。
【図5】リングレバーをSMAワイヤで軸回転駆動して位置(角度)決め制御を行う形状記憶合金アクチュエータの動作を説明するための図である。
【図6】SMAワイヤの抵抗値と変位量との関係を示すグラフである。
【図7】SMAワイヤに対する指令抵抗値の設定を説明するための図である。
【図8】図1の指令抵抗値出力部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による形状記憶合金アクチュエータ制御装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明による形状記憶合金アクチュエータ制御装置の一実施の形態の回路図である。図1に示す形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、形状記憶合金によって構成される形状記憶合金部材としての形状記憶合金(SMA)ワイヤsmaを介して動かされる図1に示さない可動部材を有する形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行う。このために、図1に示す形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、指令抵抗値設定部1と、抵抗値フィードバック制御部2と、駆動部3と、電流検知部4と、抵抗値検出部5と、電流制限部6と、指令抵抗値出力部7と、を有し、駆動部3と電流検知部4との間にSMAワイヤsmaが配置される。

【0022】
指令抵抗値設定部1は、図7に示すように当該形状記憶合金部材の変位量との関係で示す非直線抵抗値曲線を複数分割して近似直線化しこの近似直線の各分割区分毎に形状記憶合金部材の所定の単位変位量に対応する抵抗値を設定し出力する。
本例の指令抵抗値設定部1は、当該形状記憶合金部材で形成したSMAワイヤsmaの変位量Dを所定の単位(この場合、mm単位変位量)で規定するために、SMAワイヤsmaの抵抗値Rsmaを、SMAワイヤsmaの予め決定された変位量Dmに対応する抵抗値Rsに設定するための指令抵抗値として指令抵抗値出力部7からmm指令電圧信号W1を設定する。
本実施の形態において、指令抵抗値設定部1は、ポテンショメータPT1,PT2,PT3と、バッファアンプBF1,BF2、BF3と、を有する。

【0023】
ポテンショメータPT1は、基準電圧+Vs(Vs>0)と接地点との間に配置され、抵抗値Rsの上限値R1を規定する。バッファアンプBF1は、上限値R1を表す電圧信号がポテンショメータPT1から入力され、当該電圧信号の負荷変動の影響を吸収する。

【0024】
ポテンショメータPT2は、基準電圧+Vsと接地点との間に配置され、抵抗値Rsの下限値R5を規定する。バッファアンプBF2は、下限値R5を表す電圧信号がポテンショメータPT2から入力され、当該電圧信号の負荷変動の影響を吸収する。

【0025】
ポテンショメータPT3は、バッファアンプBF1の出力部とバッファアンプBF2の出力部との間に配置され、上限値R1及び下限値R5の他に上限値R1と下限値R5との間にある抵抗値R2,R3,R4を設定する。バッファアンプBF3は、上限値R1、抵抗値R2,R3,R4及び下限値R5のいずれか一つを表す電圧信号がポテンショメータPT3から入力され、当該電圧信号の負荷変動の影響を吸収する。

【0026】
抵抗値フィードバック制御部2は、抵抗値検出部5が検出した抵抗値Rsmaを表す電圧信号V4及び指令抵抗値に相当するmm指令電圧信号W1に基づいて抵抗値Rsmaのフィードバック制御を行う。本実施の形態において、抵抗値フィードバック制御部2は、スイッチSW1と、反転増幅器IC1,IC2と、抵抗R1,R2,R3,R4,R5と、ポテンショメータPT4と、コンデンサC1と、を有する。

【0027】
スイッチSW1は、指令抵抗値設定部1、すなわち、バッファアンプBF3の出力部と指令抵抗値出力部7のいずれか一方を抵抗値フィードバック制御部2に接続するために、図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等の操作部によって切替制御される。すなわち、指令抵抗値の設定を行う場合には、バッファアンプBP3の出力部が抵抗値フィードバック制御部2に接続され、形状記憶合金アクチュエータの位置制御を行う場合には、指令抵抗値出力部7が抵抗値フィードバック制御部2に接続される。

【0028】
反転増幅器IC1は、バッファアンプBF3から出力された電圧信号又はmm指令電圧信号W1に対応する電圧信号V1と電圧信号V4を反転した信号である電圧信号V5との差分を表す差分信号が入力される反転入力部と、接地された非反転入力部と、反転された差分信号を出力する出力部と、を有する。反転増幅器IC2は、電圧信号V4が入力される反転入力部と、接地された非反転入力部と、電圧信号V5を出力する出力部と、を有する。

【0029】
抵抗R1は、抵抗値検出部5と反転増幅器IC2の反転入力部との間に配置される。抵抗R2は、反転増幅器IC2の反転入力部と出力部との間に配置される。抵抗R3は、スイッチSW1と反転増幅器IC1の反転入力部との間に配置される。抵抗R4は、抵抗R2と反転増幅器IC2の出力部との間の接続点と、抵抗R3と反転増幅器IC1の反転入力部との間の接続点との間に配置される。抵抗R5は、反転増幅器IC1の出力部と駆動部3との間に配置される。

【0030】
ポテンショメータPT4及びコンデンサC1はそれぞれ、抵抗値フィードバック制御に用いられる比例ゲイン及び積分ゲインをそれぞれ設定するために、反転増幅器IC1に並列に接続される。

【0031】
抵抗値フィードバック制御部2は、図1に示す構成を有することによって、抵抗値Rsmaを一定の値に維持する定抵抗制御を行うために、電圧信号V1と電圧信号V5との差すなわち抵抗値Rsと抵抗Rsmaとの差がゼロになるようにフィードバック制御を行う。

【0032】
図2は、SMAワイヤの収縮及び伸長を説明するための図である。図2において、SMAワイヤsmaの一端は、固定され、他端は、図示しない回転体等の可動部材に接続される。SMAワイヤsmaは、通電加熱することによって、図2の下側に示すように加熱されて収縮し、通電をオフにして冷却することによって、図2の上側に示すように冷却されて伸長する。

【0033】
SMAワイヤsmaに接続された図示しない可動部材は、SMAワイヤsmaの収縮に応じた動作を行い、弾性部材としてのバイアスばねsprが接続されている。バイアスばねsprは、SMAワイヤsmaが伸長する方向に外力を生じるように形成される。

【0034】
SMAワイヤsmaを通電加熱すると温度変化による相変態により伸縮させることができるが、単なる通電のオンオフでは伸縮量すなわち変位量を任意に変えることはできない。抵抗値Rsmaは、図3に示すように、温度θに応じて変化する。加熱と冷却(自然冷却)ではヒステリシスがあり、温度θをフィードバックして位置制御を行うと、ヒステリシスがあるために加熱時と冷却時では位置がずれることになる。

【0035】
抵抗値Rsmaと変位量Dの関係ではヒステリシスがない。したがって、抵抗値Rsmaをフィードバックしてリアルタイムで変位量Dを制御すれば、外部位置センサ不要の形状記憶合金アクチュエータとしての精密な位置制御を可能とする。

【0036】
駆動部3は、フィードバック制御に応じた形状記憶合金アクチュエータの駆動を行うために、SMAワイヤsmaに電圧を印加して加熱することによって、SMAワイヤsmaの抵抗値Rsmaを抵抗値Rsに設定して変位量DmだけSMAワイヤsmaを収縮させる。本実施の形態において、駆動部3は、抵抗R6と、スイッチSW2と、フォトトダイオードPC2と、フォトトランジスタPC1’,PC2’と、トランジスタQ1と、を有する。

【0037】
抵抗R6は、フォトダイオードPC2のアノードと基準電圧+Vsとの間に配置される。フォトダイオードPC2は、フォトトランジスタPC2’とともにフォトカプラを構成し、図示しない操作部によってスイッチSW2がオンに切り替わって電源が投入されると光を出力する。フォトトランジスタPC2’は、抵抗R5に接続されたコレクタ及びNPN型トランジスタQ1のゲートに接続されたエミッタを有し、フォトダイオードPC2から出力された光を受光するとオン状態になる。

【0038】
NPN型トランジスタQ1は、フォトトランジスタPC2’のエミッタに接続されたベース、基準電圧+Vsに接続されたコレクタ及びSMAワイヤsmaに接続されたエミッタを有する。したがって、フォトトランジスタPC2’がオン状態になるとNPN型トランジスタQ1がオン状態となり、基準電圧+Vs及びNPN型トランジスタQ1のベース電流に応じて決定される電圧がSMAワイヤsmaに印加される。すなわち、SMAワイヤsmaに印加される電圧は、NPN型トランジスタQ1のベース電流が減少するに従って減少する。

【0039】
フォトトランジスタPC1’は、後に説明するフォトダイオードPC1とともにフォトカプラを構成し、フォトダイオードPC2’のエミッタとNPN型トランジスタQ1のゲートとの間の接続点に接続したコレクタ及びNPN型トランジスタQ1のエミッタに接続されたエミッタを有し、フォトダイオードPC1から出力された光を受光するとオン状態になる。したがって、フォトトランジスタPC1がオン状態になるとNPN型トランジスタQ1のベース電流が減少し、SMAワイヤsmaに印加される電圧が減少する。

【0040】
本実施の形態では、フォトダイオードPC1及びフォトトランジスタPC1’によって構成されるフォトカプラ及びフォトダイオードPC2及びフォトトランジスタPC2’によって構成されるフォトカプラを用いることによって、図1に示す形状記憶合金アクチュエータ制御装置の電源と他の制御系の電源とを絶縁することができる。

【0041】
また、本実施の形態では、電源が投入されるとすぐに抵抗値フィードバック制御を行えるようにするために、スイッチSW2がオフ状態であるときにSMAワイヤsmaに微小電流を流す。このような微小電流をSMAワイヤsmaに流すために、例えば、定電流ダイオードを用いる。

【0042】
電流検知部4は、SMAワイヤsmaに流れる電流を検知する。本実施の形態において、電流検知部4は、電流検知抵抗crtを有する。電流検知抵抗crtは、一定の抵抗値Rcrtを有し、SMAワイヤsmaと接地点との間に配置される。電流検知部4は、SMAワイヤsmaに流れる電流の電流値に対応する電圧値、すなわち、電流検知抵抗crtの両端間の電圧を表す電圧信号V3を出力する。

【0043】
抵抗値検出部5は、抵抗値Rsmaを検出する。本実施の形態において、抵抗値検出部5は、差動増幅器IC3,IC4と、割り算演算部IC5と、抵抗R7,R8,R9,R10,R11,R12と、を有する。

【0044】
差動増幅器IC3は、電圧信号V3が入力される反転入力部と、SMAワイヤsmaと電流検知抵抗crtとの直列接続部の両端間の電圧を表す電圧信号V2が入力される非反転入力部と、電圧信号V3と電圧信号V2との差分信号V3-V2を出力する出力部と、を有する。

【0045】
差動増幅器IC4は、接地された反転入力部と、電圧信号V3が入力される非反転入力部と、電圧信号V3を出力する出力部と、を有する。

【0046】
割り算演算部IC5は、差動増幅器IC3の出力部に接続された第1の入力部IN1と、差動増幅器IC4の出力部に接続された第2の入力部IN2と、抵抗R1に接続された出力部Outと、を有する。

【0047】
SMAワイヤsmaと電流検知抵抗crtとの直列接続部の両端間の電圧をV2とし、電流検知抵抗crtの両端間の電圧をV3とした場合、割り算演算部IC5は、(V2-V2)/V3の割り算を計算し、抵抗値Rsmaに相当する(V2-V3)Rcrt/V2を表す電圧信号V4を出力する。

【0048】
抵抗R7は、差動増幅器IC3の反転入力部と出力部との間に配置される。抵抗R8は、差動増幅器IC3の反転入力部と抵抗R7との間の接続部と、差動増幅器IC4の非反転入力部とSMAワイヤsmaの一端との接続部との間に配置される。抵抗R9は、差動増幅器IC3の非反転入力部とSMAワイヤsmaの他端との間に配置される。抵抗R10は、差動増幅器IC3の非反転入力部と抵抗R9との間の接続部と、接地点との間に配置される。抵抗R11は、差動増幅器IC4の反転入力部と出力部との間に配置される。抵抗R12は、差動増幅器IC4の反転入力部と抵抗R11との間の接続部と、接地点との間に接続される。

【0049】
電流制限部6は、電流検知部4によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときにSMAワイヤsmaに印加される電圧を低減することによって、SMAワイヤsmaに流れる電流を制限(制御)する。本実施の形態において、電流制限部6は、ポテンショメータPT5と、コンパレータIC6と、フォトダイオードPC1と、抵抗R13,R14,R15,R16,R17と、を有する。

【0050】
ポテンショメータPT5は、基準電圧+Vsと接地点との間に配置され、電流制限設定(トルク制限)のために、予め決定された電流値に対応するしきい値を表す電圧信号V6を生成する。コンパレータIC6は、電圧信号V3が入力される反転入力部と、電圧信号V6が入力される非反転入力部と、電圧信号V3によって表される電圧値が上記しきい値より大きいとき、すなわち、電流検知部4によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときにローレベルの信号を出力する出力部と、を有する。

【0051】
フォトダイオードPC1は、コンパレータIC6がローレベルの信号を出力したときに光を出力する。したがって、電流検知部4によって検知された電流の電流値が予め決定された電流値を超えたときに、SMAワイヤsma及び電流検知抵抗crtの直列接続部に印加される電圧が低減され、SMAワイヤsmaに流れる電流が制限される。

【0052】
これによって、形状記憶合金アクチュエータの位置制御において可動部材が目標位置に到達する過程で可動部材が障害物等によって拘束されてもSMAワイヤsmaに過電流が流れなくなる。したがって、可動部材が障害物によって拘束された状態で生じる過電流によるSMAワイヤsmaの加熱破損が生じなくなる。

【0053】
また、このように電流を制限することによって、抵抗値Rsmaが必要以上に低減しない、すなわち、変位量Dが必要以上に大きくならないので、形状記憶合金アクチュエータが取り扱う対象物を損傷するおそれがなくなる。例えば、形状記憶合金アクチュエータをクランパーとして使用する場合、クランパーの把握力を適切に制御できるので、クランパーが把握する対象物を損傷するおそれがなくなる。

【0054】
形状記憶合金アクチュエータの使用としては、SMAワイヤsmaの直線変位をそのまま直動機構での使用と、CCDカメラの旋回/仰角の位置制御のようなSMAワイヤsmaの直線変位を回転機構での使用とがある。図4に示すように、可動部材としての回転体であるワンウェイクラッチ11をSMAワイヤsmaで軸回転駆動して連続変位の位置決め制御を行う場合、回転半径RとSMAワイヤsmaに加える力Fとの積であるトルクNが力Fと逆方向に生じる。本実施の形態によれば、電流制限部6により電流を制限(制御)することによって、力Fと逆方向に生じるトルクNを制限(制御)することができる。

【0055】
図5の上側に示すように、可動部材としての回転体であるリングレバー12をSMAワイヤsmaで軸回転駆動して位置(角度)決め制御を行う場合、SMAワイヤsmaが収縮すると、図5の下側に示すように、トルクNがリングレバー12の回転方向に生じる。本実施の形態によれば、電流制限部6により電流を制限(制御)することによって、リングレバー12の回転方向に生じるトルクNを制限(制御)することができる。

【0056】
また、SMAワイヤsmaの直線変位をそのまま直動機構で使用する場合、電流制限部6により電流を制限(制御)することによって、直動機構で生じる推力を制限(制御)することができる。

【0057】
指令抵抗値出力部7は、mm指令電圧信号W1を出力する。本実施の形態において、指令抵抗値出力部7は、マイクロプロセッサによって構成される。

【0058】
図6に示すように、SMAワイヤsmaの変位量Dと抵抗値Rsmaとの関係は非線形的である。すなわち、変位量Dは、抵抗値Rsmaの変化に対して直線的に変化しない。したがって、抵抗値Rsmaに基づいて変位量Dを制御する場合、目標位置の制御が曖昧である。すなわち、抵抗値Rsmaを一定量ごとに変化させても変位量Dが一定量ごとに変化しない。

【0059】
本実施の形態では、図6に示す非線形部分を複数に分割し各分割毎に直線化することによって近似直線化して、所定の単位(この場合、mm単位)でのアクチュエータの位置決めを可能にする。このために、指令抵抗値出力部7は、図7に示すように、先ず、自由長を有する無通電のSMAワイヤsmaの状態に対応するRsma=R0及びDm=d0(すなわちゼロ)の点P0を除く複数の任意の点の抵抗値及び変位量を記憶する。例えば、指令抵抗値出力部7は、複数の任意の点として、図7に示すように、P1=(R1,d1),P2=(R2,d2),P3=(R3,d3),P4=(R4,d4)及びP5=(R5,d5)の5点を記憶する。したがって、図7に示す例では、近似直線化される区間の数が5個となる、すなわち、非線形部分が5分割される。近似直線化される区間の数すなわち非線形部分の分割数が多くなるに従って位置決め精度が向上するが、4区間以上であれば位置決め精度が±0.05mm以下になり、位置決めを良好に行うことができる。

【0060】
次に、指令抵抗値出力部7は、mm指令電圧信号W1すなわち指令抵抗値に対応する変位量Dmがどの区間にあるかを判定し、近似直線化された区間を表す関係式に基づいて変位量Dmを決定し、決定した変位量Dmに対応する抵抗値Rs(すなわち、指令抵抗値)を表すmm指令電圧信号W1を作成する。

【0061】
d1≦Dm≦d2である場合、R1≦Rs≦R2であり、近似直線化された区間P1-P2において、(Dm-d1)/(R1-Rs)=(d2-d1)/(R1-R2)の関係式が成立する。したがって、Dm=(R1-Rs)・(d2-d1)/(R1-R2)+d1の関係式が成立する。

【0062】
図7に示すようにd2≦Dm≦d3である場合、R2≦Rs≦R3であり、近似直線化された区間P2-P3において、(Dm-d2)/(R2-Rs)=(d3-d2)/(R2-R3)の関係式が成立する。したがって、Dm=(R2-Rs)・(d3-d2)/(R2-R3)+d2の関係式が成立する。

【0063】
d3≦Dm≦d4である場合、R3≦Rs≦R4であり、近似直線化された区間P3-P4において、(Dm-d3)/(R3-Rs)=(d4-d3)/(R3-R4)の関係式が成立する。したがって、Dm=(R3-Rs)・(d4-d3)/(R3-R4)+d3の関係式が成立する。

【0064】
d4≦Dm≦d5である場合、R4≦Rs≦R5であり、近似直線化された区間P4-P5において、(Dm-d4)/(R4-Rs)=(d5-d4)/(R4-R5)の関係式が成立する。したがって、Dm=(R4-Rs)・(d5-d4)/(R4-R5)+d4の関係式が成立する。

【0065】
図8は、図1の指令抵抗値出力部の動作を説明するための図である。図8において、指令抵抗値出力部7は、CPU21と、D/Aコンバータ22と、A/Dコンバータ23と、メモリ24と、I/Oポート25と、を有する。また、指令抵抗値出力部7には、デジタルマイクロゲージ31と、デジタル設定器32と、ポジション選択スイッチ33と、メモリボタン34と、起動ボタン35と、が接続される。

【0066】
図1のスイッチSW2がオンに切り替わって電源が投入されると、形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、SMAワイヤsmaの抵抗値Rsmaを、ポテンショメータPT3で設定した抵抗値Rsmaを上限値R1から下限値R5まで変化させる。抵抗値Rsmaを上限値R1から下限値R5まで変化させる間、電圧信号V5に対応する現在抵抗値電圧W2が、A/Dコンバータ23に入力されて抵抗値Rsmaを表すデジタルデータに変換される。CPU21は、変換されたデジタルデータをメモリ24に記憶させる。

【0067】
また、デジタルマイクロゲージ31は、SMAワイヤsmaの伸縮する部分に取り付けられ、変位量Dを計測する。計測された変位量Dは、デジタル値としてCPU21によって読み取られ、CPU21によってI/Oポート25を通じてメモリ24に記憶される。

【0068】
次に、CPU21は、メモリ24に記憶されたデジタルデータに基づいて、上述した関係式を決定する。上述した関係式を設定するに際し、図7のグラフの点P1,P2,P3,P4,P5における抵抗値R1,R2,R3,R4,R5及び変位量d1,d2,d3,d4,d5を決定するために、先ず、ポジション選択スイッチ33でP1を選択し、起動ボタン35をオンにした状態でポテンショメータPT3を徐々に回す。そして、デジタルマイクロゲージ31の(変位量Dを表す)デジタル表示が所望の値になったところでメモリボタン34を押し、点P1における抵抗値R1及びd1をメモリ24に記憶させる。

【0069】
点P2,P3,P4においても同様の操作を行うことによって、点P2,P3,P4,P5における抵抗値R2,R3,R4,R5及び変位量d2,d3,d4,d5がメモリ24に記憶される。そして、CPU21は、メモリ24に記憶された抵抗値R1,R2,R3,R4,R5及び変位量d1,d2,d3,d4,d5に基づいて、上記関係式を決定する。

【0070】
指令抵抗値出力部7がmm指令電圧信号W1を出力する際には、デジタル設定器32によって、SMAワイヤsmaの変位量Dmを設定し、起動ボタン35をオンすることによって、CPU21は、変位量Dmに対応する抵抗Rsを上記関係式の一つに基づいて決定し、Rsを表すデジタルデータを生成する。生成したデジタルデータは、D/Aコンバータ22に入力されてRsを表すアナログデータに変換され、Rsを表すmm指令電圧信号W1が作成される。このように作成されたmm指令電圧信号W1をフィードバック制御に用いることによって、SMAワイヤsmaは、設定した変位量Dmだけ変位する。
【符号の説明】
【0071】
1 指令抵抗値設定部
2 抵抗値フィードバック制御部
3 駆動部
4 電流検知部
5 抵抗値検出部
6 電流制限部
7 指令抵抗値出力部
11 ワンウェイクラッチ
12 リングレバー
21 CPU
22 D/Aコンバータ
23 A/Dコンバータ
24 メモリ
25 I/Oポート
31 デジタルマイクロゲージ
32 デジタル設定器
33 ポジション選択スイッチ
34 メモリボタン
35 起動ボタン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7