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明細書 :導電性ダイヤモンド電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-008334 (P2016-008334A)
公開日 平成28年1月18日(2016.1.18)
発明の名称または考案の名称 導電性ダイヤモンド電極の製造方法
国際特許分類 C25B  11/12        (2006.01)
C01B  31/06        (2006.01)
FI C25B 11/12
C01B 31/06
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-130477 (P2014-130477)
出願日 平成26年6月25日(2014.6.25)
発明者または考案者 【氏名】衣本 太郎
【氏名】市來 龍大
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100080919、【弁理士】、【氏名又は名称】田崎 豪治
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
4K011
Fターム 4G146AA04
4G146AB07
4G146AC16B
4G146AC30B
4G146AD22
4G146AD23
4G146CB11
4G146CB12
4G146CB16
4G146CB19
4G146CB22
4G146CB32
4K011AA01
4K011AA16
4K011DA03
4K011DA11
要約 【課題】ダイヤモンド電極の表面積の増大、さらにはダイヤモンドへの窒素ドープによる高速な導電性のダイヤモンド電極を得ることを目的とする。
【解決手段】大気圧において、窒素を作動ガスとして、これにホウ素、水素および/または希ガスを含有させて窒素プラズマジェットを生成し、この窒素プラズマジェットをダイヤモンド薄膜の表面に照射してホウ素と窒素をドープするとともに表面積を増大させることを特徴とするダイヤモンド電極の製造方法。ダイヤモンド薄膜は、予めホウ素をドープされていてもよい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
大気圧下において、窒素を作動ガスとして、これにホウ素、水素および/または希ガスを含有させて窒素プラズマジェットを生成し、この窒素プラズマジェットをダイヤモンド薄膜の表面に照射してホウ素と窒素をドープするとともに表面積を増大させることを特徴とするダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項2】
ダイヤモンド薄膜が、予めホウ素をドープされてなる請求項1に記載のダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られたダイヤモンド電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ダイヤモンド電極の製造方法および導電性ダイヤモンド電極に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、機械的強度、化学的安定性に優れるが、電流を流せない難点がある。しかし、ダイヤモンドにホウ素を高濃度にドープしたホウ素ドープダイヤモンド(Boron Doped Diamond;以下、単にBDDとも称する)は、金属的導電性が付与され、広い電位窓と、小さいバックグラウンド電流、ダイヤモンド由来の高い物理的・化学的安定性などの特徴を持ち、貴金属や炭素などの電極材料に比べ、電気化学分析や電気分解に有効な機能性電極材料として注目されている。そして、BDD電極は、燃料電池用酸素還元電極やガスセンサの検出電極などへの応用が期待されている。さらに、BDD電極は、電位窓が広く、バックグラウンド電流が小さいといった電気化学的特性を有することから、高感度な電気化学センサや高効率な電解用電極(例えば、水処理などで使用する電解用電極)としての利用が期待されている。しかしながら、この電極は、平滑な結晶面が表面に露出し、表面積が小さく、さらなる用途開発には表面積を増大させる技術が必要とされている。しかしながら、ダイヤモンドの機械的強度は極めて高いため、物理的処理が困難であり、化学的処理が主に用いられる。
【0003】
従来、ダイヤモンド電極の表面処理方法には、気相法(特許文献1)、溶液法、および低圧プラズマ処理が知られている(特許文献2)。しかしながら、気相法では金属触媒が必要で処理が高温であり、かつ触媒の除去が必要であり;溶液法では、基板への影響が大きくなること、さらには含酸素官能基が多く生成し、親水性は向上するが、ダイヤモンド電極の特長である電位窓(ある電気化学系(溶媒・支持塩・電極の組み合わせ)において、有意義な電気化学測定が可能な電位領域)や安定性が大きく損なわれること;そして低圧プラズマ処理においては、酸素プラズマの場合は含酸素官能基が生成するため、親水性は向上するが、ダイヤモンド電極の特長である電位窓や安定性が大きく損なわれること、水素、フッ素終端ダイヤモンドを作製できる特徴もあるが、一般的には処理コストが大きいことが問題となる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-183102号公報
【特許文献2】特開2010-96623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決し、ダイヤモンド電極の表面積を増大させるとともに、ダイヤモンドへの窒素等の導入により高速な導電性のダイヤモンド電極を確実に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
(1)大気圧下において、窒素を作動ガスとして、これにホウ素、水素および/または希ガスを含有させて窒素プラズマジェットを生成し、この窒素プラズマジェットをダイヤモンド薄膜の表面に照射してホウ素と窒素をドープするとともに表面積を増大させることを特徴とするダイヤモンド電極の製造方法。
(2)ダイヤモンド薄膜が、予めホウ素をドープされてなる上記(1)に記載のダイヤモンド電極の製造方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の製造方法により得られたダイヤモンド電極。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ダイヤモンド電極の表面積が増大し、さらにはダイヤモンドへの窒素等の導入を効率的に行い得る。たとえば、本発明によれば、BDD電極の電位窓は安定し、電気化学的に測定されうる電気容量から見積もられる表面積が未処理に比較して好適には0.5V~0.6Vの間で1.5~4倍,0.2V~1.2Vの間で20~30倍程度まで向上し得る。
【0008】
すなわち、本発明のダイヤモンド電極は、母材がホウ素ドープダイヤモンドの場合、大気圧下でプラズマジェットノズルに窒素、水素および/または希ガスを含有する作動ガスを供給して、電極間にパルス高電圧を印加してプラズマジェットを生成し、このプラズマジェット生成時に外気からの侵入酸素を水素で還元除去して窒素およびダイヤモンド電極の酸化を防止し、窒素主体のプラズマジェットとしてダイヤモンド薄膜の表面に照射することにより、ダイヤモンド薄膜の表面に微細な凹凸を形成して表面積を大幅に増大するとともに、既ドープBに加えてNを若干ドープして導電性を増大させる処理をするのである。これにより高速な導電性のダイヤモンド電極を確実に得ることができるものである。
【0009】
一方、母材がホウ素をドープしていないダイヤモンドの場合は大気圧下でプラズマジェットノズルに窒素、ホウ素、水素および/または希ガスを含有する作動ガスを供給して、窒素主体のプラズマジェットを生成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】窒素プラズマ処理後の試料のSEM画像。
【図2】窒素プラズマ処理後の試料の顕微レーザーラマン分光測定(Raman)スペクトル。
【図3】窒素プラズマ処理後の試料のXPS測定結果。
【図4】窒素プラズマ処理後の試料のEDS測定結果。
【図5】窒素プラズマ処理後の試料のCV測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のダイヤモンド電極は、大気圧下において、窒素を作動ガスとして、これにホウ素、水素および/または希ガスを含有させた混合ガスで、窒素プラズマジェットを生成し、この窒素プラズマジェットをダイヤモンド薄膜の表面に照射してホウ素と窒素をドープするとともに表面積を大幅に増大させることにより得られる。

【0012】
ダイヤモンド薄膜の製造には、CVD(化学蒸着)法や、PVD(物理蒸着)法等を使用し得るが、マイクロ波プラズマ化学蒸着(MPCVD)法が好適である。

【0013】
窒素プラズマジェットを生成する窒素、ホウ素、水素および/または希ガスを含有する混合ガスは、窒素80%~99.9%,混入酸素還元用の水素0.1%~20%の窒素/水素混合ガスをベースとし,そこにホウ素含有物質や希ガスを微量添加するのが好適である。

【0014】
窒素源としては、アンモニア、窒素/水素混合ガスが好適であり、ホウ素源としては、ジボラン(B)、ホウ酸、固体ホウ素等が挙げられる。

【0015】
また、希ガスの添加により放電が生じやすくなるペニング効果が誘発され,生成される活性種やラジカル種密度を上昇し得る。

【0016】
ダイヤモンド薄膜として、予めホウ素がドープされた、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)を用いてもよく、この場合には、窒素、水素および/または希ガスを含有する混合ガスで窒素プラズマジェットを生成する。窒素プラズマジェットは、プラズマ発生量を増加させて効率的処理をおこなうために、大気圧(常圧)窒素プラズマジェットが好適である。ダイヤモンド薄膜の昇温も同時に達成する熱プラズマ,例えばアーク型プラズマ,パルスアーク型プラズマが用いられ得る。非熱プラズマである誘電体バリア放電プラズマを用いることもでき,ダイヤモンド薄膜の温度制御は外部ヒーターにより達成し得る。

【0017】
真空装置の不使用,取り回しの良さ,活性種やラジカル種の高密度生成の観点から、大気圧窒素プラズマジェットが最適に用いられる。すなわち、窒素プラズマジェット吹き付けを組み込んだライン処理により,高速な導電性ダイヤモンド電極の生成が可能となる。

【0018】
たとえば、大気圧窒素プラズマジェットは、好適には、次のような条件で実施される。プラズマ生成電力が10W~1kW,照射時間は1 秒~1 時間,窒素に水素を1%~20%混合することにより,プラズマ内でNHラジカルが生成される。

【0019】
本発明において、得られるダイヤモンド電極は、最も好ましくは窒素およびホウ素をドープされてなる。

【0020】
ダイヤモンド薄膜の厚さは、用途等により異なるが、通常20nm~50μm程度から選択される。

【0021】
ダイヤモンド薄膜にドープするホウ素および窒素の量は、用途等により異なるが、通常、少なくともダイヤモンドの炭素に対してホウ素を100ppm以上、好ましくは、1000ppm以上、さらに好ましくは5000ppm以上である。

【0022】
本発明により得られるダイヤモンド電極は、各種電解反応に用いられ、たとえばフッ化物イオンを含有する電解浴を用いた電解フッ素化反応や食塩電解のような無機電解反応、電解めっき等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
ペルメレック電極株式会社製ボロンドープダイヤモンド薄膜(Nb-BDD,ボロン濃度9000ppm)の表面に,大気圧窒素プラズマ発生装置を用いて、5,10,20,25,および30分間、窒素を含有する雰囲気中で、プラズマジェットと接触させて賦活化処理を行った。基盤温度:520℃、アーク電圧:4.5kV/A,パルスアーク:21kHZ,ガス:窒素20slmおよび水素0.22sccmであった。三極式セルを用い、電解液として0.5M硫酸水溶液を用いた。処理後に、得られたダイヤモンド薄膜を、顕微レーザーラマン分光測定(Raman),電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM),エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDS),およびX線光電子分光分析(XPS)で評価した。また、電気化学特性を0.5M硫酸水溶液中でのサイクリックボルタンメトリー(CV)により試験した。
【実施例】
【0024】
1)SEM画像(表面形態観察)
図1に窒素プラズマ処理を10~30分間行った試料のSEM画像を示す。窒素プラズマ処理されていない試料との比較から,処理によって,ダイヤモンド構造由来の三角錐の形態が壊され,未処理では確認されなかった孔が確認された。その孔の径は,処理時間が長くなるにつれ大きくなった.よって,窒素プラズマ処理で,表面が微細に凹凸形成され表面積が増大することが示された。
【実施例】
【0025】
2)Raman測定(微細構造の評価)
図2のスペクトルにおいて、480cm-1におけるピークは、基盤に由来し、1200cm-1におけるピークは、不規則なダイヤモンド構造に由来するピークである。I/Iは,sp炭素に起因するDバンド(1300cm-1)強度/sp炭素に起因するGバンド(1520cm-1)強度比を示す。
【実施例】
【0026】
Raman測定から,プラズマ処理後もダイヤモンド構造由来のピークであるDバンドが確認されたので、ダイヤモンド構造が維持されていることがわかった。
【実施例】
【0027】
3)XPS測定(結合状態の評価)
図3のXPS測定結果から、5分間の窒素プラズマ処理で窒素が導入されたことが確認された。
【実施例】
【0028】
4)EDS測定(元素分析)
図4は、EDS測定結果を示す。5分間の窒素プラズマ処理で窒素の含有量が最大であった。
【実施例】
【0029】
5)CV測定(表面積の評価)
図5は、CV測定結果を示す。二重層容量を用いて比較した結果、窒素プラズマ処理で表面積が増大したことが確認された。二重層容量の増加率(未処理に対する)は、0.5V~0.6Vの間で5分間:174%;10分間:143%;20分間:263%、25分間:148%;および30分間:389%、であった。
【実施例】
【0030】
また、0.2V~1.2Vの間で5分間:112%;10分間:1340%;20分間:2930%;25分間:2930%;30分間:1940%であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ダイヤモンド電極の表面積の増大とBドープ,Nドープにより高速に導電性のダイヤモンド電極を容易に達成し得て、燃料電池用酸素還元電極やガスセンサの検出電極などに有利に活用されこの種産業に貢献すること多大なものがある。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図1】
4