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明細書 :中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-210737 (P2016-210737A)
公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
発明の名称または考案の名称 中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤
国際特許分類 A61K  31/7016      (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI A61K 31/7016
A61P 25/00
A61P 25/00 101
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/28
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-096688 (P2015-096688)
出願日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明者または考案者 【氏名】篠田 陽
【氏名】古市 貞一
【氏名】中島 将博
【氏名】今堀 龍志
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
要約 【課題】ガラクト-N-ビオース、ラクト-N-ビオースI、又はそれらの誘導体を有効成分とする新規な中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤の提供。
【解決手段】式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグ。
JP2016210737A_000008t.gif
(Rは各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-OR;Rは各々独立に、H又はアルキル基)
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグを有効成分として含有する、中枢神経細胞保護剤。
【化1】
JP2016210737A_000006t.gif

(式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-ORを示す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Rがいずれもアルキル基である場合、R同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、アルキル基又はアリール基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は-Si(Rを示す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を示す。)
【請求項2】
下記式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグを有効成分として含有する、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤。
【化2】
JP2016210737A_000007t.gif

(式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-ORを示す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Rがいずれもアルキル基である場合、R同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、アルキル基又はアリール基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は-Si(Rを示す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を示す。)
【請求項3】
前記中枢神経変性疾患は、グルタミン酸興奮毒性が関与する疾患である、請求項2に記載の中枢神経変性疾患の予防又は治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、中枢神経系における興奮性神経伝達物質の1つであり、興奮性シナプス後電位、長期増強等の現象に関与する。他方、グルタミン酸は、内因性興奮毒としても作用し、過剰に遊離されたグルタミン酸が神経細胞死を誘発することが知られている。グルタミン酸興奮毒性は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の中枢神経変性疾患の危険因子の1つとしても注目されている(例えば、非特許文献1~6参照)。
【0003】
グルタミン酸による培養神経細胞の細胞死は、グルタミン酸受容体アンタゴニストの添加により減少する。このことは、グルタミン酸受容体及びその下流の機構が活性化することによってグルタミン酸興奮毒性が引き起こされることを示唆している。したがって、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、グルタミン酸興奮毒性が関与する中枢神経変性疾患の治療剤の候補化合物となり得る。
【0004】
しかし、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、ヒトにおいて精神異常が発現するという報告や齧歯類において異常な自発運動活性を引き起こすという報告があり、臨床応用はそれほど進んでいない。このため、グルタミン酸興奮毒性に対して保護作用を示す新たな中枢神経保護剤の開発が望まれていた。
【0005】
一方、ガラクト-N-ビオースは、ガラクトースとN-アセチルガラクトサミンとがβ1-3結合した二糖(Galβ1-3GalNAc)であり、腸管粘膜の糖タンパク質であるムチンのコア構造として知られている。また、ラクト-N-ビオースIは、ガラクトースとN-アセチルグルコサミンとがβ1-3結合した二糖(Galβ1-3GlcNAc)であり、ヒト母乳に含まれるオリゴ糖(ミルクオリゴ糖)を構成する二糖として知られている。
これまで、ラクト-N-ビオースIの薬理作用としては、抗肥満作用や腸管バリア機能の改善作用が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、ガラクト-N-ビオース、ラクト-N-ビオースI、又はそれらの誘導体が中枢神経細胞に対する保護作用を示すことは知られていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-116725号公報
【特許文献2】特開2014-210718号公報
【0007】

【非特許文献1】Van Den Bosch et al., Biochimica et biophysica acta, 1762, 1068-1082 (2006)
【非特許文献2】Shaw, C.E. et al., Current neurology and neuroscience reports, 1, 69-76 (2001)
【非特許文献3】Schubert, D. et al., The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 21, 7455-7462 (2001)
【非特許文献4】Dong, X.X. et al., Acta pharmacologica Sinica, 30, 379-387 (2009)
【非特許文献5】Blandini, F. et al., Molecular neurobiology, 12, 73-94 (1996)
【非特許文献6】Estrada Sanchez, A.M. et al., Archives of medical research, 39, 265-276 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ガラクト-N-ビオース、ラクト-N-ビオースI、又はそれらの誘導体を有効成分とする新規な中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグを有効成分として含有する、中枢神経細胞保護剤。
【化1】
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(式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-ORを示す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Rがいずれもアルキル基である場合、R同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、アルキル基又はアリール基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は-Si(Rを示す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を示す。)
【0010】
<2> 下記式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグを有効成分として含有する、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤。
【化2】
JP2016210737A_000004t.gif

(式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-ORを示す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Rがいずれもアルキル基である場合、R同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、アルキル基又はアリール基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は-Si(Rを示す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を示す。)
【0011】
<3> 上記中枢神経変性疾患は、グルタミン酸興奮毒性が関与する疾患である、<2>に記載の中枢神経変性疾患の予防又は治療剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラクト-N-ビオース、ラクト-N-ビオースI、又はそれらの誘導体を有効成分とする新規な中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1(MTTアッセイ)におけるガラクト-N-ビオースの中枢神経細胞に対する保護作用を示す図である。
【図2】実施例2(核染色アッセイ)におけるガラクト-N-ビオースの中枢神経細胞に対する保護作用を示す図である。
【図3】実施例3(MTTアッセイ)におけるガラクト-N-ビオースの中枢神経細胞に対する長期毒性を示す図である。
【図4】実施例4におけるガラクト-N-ビオースの興奮性シナプスの数(同図(A))及び抑制性シナプスの数(同図(B))に対する影響を示す図である。
【図5】実施例5(MTTアッセイ)におけるガラクト-N-ビオース及びラクト-N-ビオースIの中枢神経細胞に対する保護作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した中枢神経細胞保護剤、及び中枢神経変性疾患の予防又は治療剤の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。

【0015】
<中枢神経細胞保護剤>
本実施形態の中枢神経細胞保護剤は、下記式(1)若しくは(2)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらのプロドラッグ(以下、これらを纏めて「特定化合物」と略記することがある。)を有効成分として含有する。

【0016】
【化3】
JP2016210737A_000005t.gif

【0017】
上記式(1)及び(2)中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、-N(R、-NHCOR、又は-ORを示す。

【0018】
がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。

【0019】
がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1~20が好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。

【0020】
がアルケニル基である場合、アルケニル基の炭素数は2~20が好ましい。アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、イソブテニル基、4-ペンテニル基、イソペンテニル基、5-ヘキセニル基、イソヘキセニル基等が挙げられる。

【0021】
がアリール基である場合、具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。

【0022】
が-N(Rである場合、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Rがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1~18が好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。Rがいずれもアルキル基である場合、R同士が結合して環構造を形成していてもよい。R同士が結合して形成される基としては、ピペリジノ基等が挙げられる。

【0023】
が-NHCORである場合、Rは、アルキル基又はアリール基を示す。Rがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1~15が好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、Rにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。

【0024】
が-ORである場合、Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又は-Si(Rを示す。

【0025】
がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1~20が好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。

【0026】
がアラルキル基である場合、アラルキル基のアリール部分としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、アラルキル基のアルキル部分の炭素数は1~10が好ましい。アルキル部分は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。

【0027】
がアルキルカルボニル基である場合、アルキルカルボニル基のアルキル部分の炭素数は1~15が好ましい。アルキル部分は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキルカルボニル基の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。

【0028】
がアリールカルボニル基である場合、具体例としては、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。

【0029】
がアルキルスルホニル基である場合、アルキルスルホニル基のアルキル部分の炭素数は1~10が好ましい。アルキル部分は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基等が挙げられる。

【0030】
がアリールスルホニル基である場合、具体例としては、ベンゼンスルホニル基、ナフタレンスルホニル基等が挙げられる。

【0031】
が-Si(Rで表される基である場合、Rはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を示す。Rにおけるアルキル基の炭素数は1~6が好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、Rにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。-Si(Rで表される基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。

【0032】
に含まれるアルキル部分又はアリール部分は、置換基を有していてもよい。
例えば、Rに含まれるアルキル部分は、置換基として、ハロゲン原子を有していてもよい。
また、Rにおけるアラルキル基のアリール部分は、置換基として、炭素数1~4のアルキル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-COOR、-OR、-NR、又は-NRCOR10を有していてもよい。R、R、R、R、及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基又はアリール基(フェニル基、ナフチル基等)を示す。
また、Rにおけるアリールカルボニル基及びアリールスルホニル基は、置換基として、炭素数1~5のアルキル基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。

【0033】
上記式(1)又は(2)で表される化合物は、薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。例えば、上記式(1)又は(2)で表される化合物が塩基性官能基を有する場合には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩の形態であってもよく、酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩の形態であってもよい。
なお、「薬理学的に許容される塩」には、水、エタノール等の薬理学的に許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。

【0034】
上記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、プロドラッグの形態であってもよい。本明細書における「プロドラッグ」とは、生体内において上記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩に変換される化合物を意味する。
例えば、プロドラッグとしては、ヒドロキシ基がアシル化、アルキル化、リン酸化、又はホウ酸化された化合物が挙げられる。
また、上記式(1)又は(2)で表される化合物がアミノ基を有する場合、プロドラッグとしては、アミノ基がアシル化、アルキル化、又はリン酸化された化合物が挙げられる。

【0035】
上記式(1)又は(2)で表される化合物のうち、Rがいずれもヒドロキシ基である化合物(ガラクト-N-ビオース又はラクト-N-ビオースI)は、市販品として入手するほか、特開2008-154495号公報等の記載の方法によって製造することができる。また、ガラクト-N-ビオース及びラクト-N-ビオースI以外の上記特定化合物は、ガラクト-N-ビオース又はラクト-N-ビオースIを出発原料とし、常法に従ってエーテル化、エステル化等の工程を経ることによって製造することができる。

【0036】
上記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、中枢神経細胞に対する保護作用を示し、特に、グルタミン酸興奮毒性に基づく神経細胞死を抑制することができる。このため、上記特定化合物を用いることにより、中枢神経細胞保護剤を製造することができる。中枢神経細胞保護剤は、医薬用途に用いるものであってもよく、医薬以外の用途(研究用途等)に用いるものであってもよい。

【0037】
中枢神経細胞保護剤は、使用態様に応じて、上記特定化合物以外の成分を含有していてもよい。例えば、中枢神経細胞保護剤は、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体を含有していてもよい。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、中枢神経細胞保護剤は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を含有していてもよい。また、血液脳関門の通過性を向上させるため、中枢神経細胞保護剤は、上記特定化合物がリポソーム等に内包されたものであってもよい。

【0038】
中枢神経細胞保護剤を医薬用途に用いる場合、中枢神経細胞保護剤の剤形は特に制限されない。中枢神経細胞保護剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤等の経口剤;注射剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。

【0039】
中枢神経細胞保護剤を医薬用途に用いる場合、中枢神経細胞保護剤の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。

【0040】
<中枢神経変性疾患の予防又は治療剤>
本実施形態の中枢神経変性疾患の予防又は治療剤は、上記特定化合物を有効成分として含有する。上記特定化合物は中枢神経細胞保護剤の場合と同様であるため、詳細な説明を省略する。

【0041】
前述したように、上記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、中枢神経細胞に対する保護作用を示し、特に、グルタミン酸興奮毒性に基づく神経細胞死を抑制することができる。このため、上記特定化合物を用いることにより、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤を製造することができる。
なお、「予防」には、中枢神経変性疾患の発症を防ぐことのほか、発症の時期を遅らせることも含まれる。また、「治療」には、中枢神経変性疾患に起因する症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。

【0042】
中枢神経変性疾患としては、グルタミン酸興奮毒性が関与する疾患が好ましく、具体的には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳血管障害等の虚血神経障害、小脳失調、エイズ(AIDS)脳症などが挙げられる。

【0043】
中枢神経変性疾患の予防又は治療剤は、上記特定化合物以外の成分を含有していてもよい。例えば、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤は、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体を含有していてもよい。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を含有していてもよい。また、血液脳関門の通過性を向上させるため、中枢神経変性疾患の予防又は治療剤は、上記特定化合物がリポソーム等に内包されたものであってもよい。

【0044】
中枢神経変性疾患の予防又は治療剤の剤形は特に制限されない。中枢神経変性疾患の予防又は治療剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤等の経口剤;注射剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。

【0045】
中枢神経変性疾患の予防又は治療剤の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。

【0046】
中枢神経変性疾患の予防又は治療剤を投与対象者に投与することにより、中枢神経変性疾患の予防又は治療方法が提供される。すなわち、上記特定化合物を有効成分として含む医薬組成物を投与することを含む中枢神経変性疾患の予防又は治療方法が提供される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
[実施例1:ガラクト-N-ビオース(GNB)の中枢神経細胞に対する保護作用の確認(MTTアッセイ)]
胎生18日齢のウィスター系ラットに麻酔を施した後、頭部を切断して脳を取り出し、取り出した脳を氷冷したHEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸)緩衝塩溶液(Life Technologies Japan製)中に浸漬した。皮質組織をパパイン(Sigma-Aldrich Japan製)で処理し、組織を細分化した後、ポリエチレンイミン(Sigma-Aldrich Japan製)でコートされた96ウェルプレートに細胞を播種した。そして、37℃、5体積%COの条件下、B-27サプリメント(Life Technologies Japan製)及びGlutaMAX(Life Technologies Japan製)を添加したNeurobasal培地(Life Technologies Japan製)中で培養した。
【実施例】
【0049】
培養開始後15日目に、GNBをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したGNB溶液を、GNBの終濃度が0.1μMとなるように培地中に添加し、21時間培養した。その後、グルタミン酸の終濃度が30μMとなるように培地中にグルタミン酸水溶液を添加し、更に3時間培養した。このときの培養後の細胞を「GNB投与群」とする。また、GNB溶液の代わりにGNB投与群と同量のDMSOを添加する対照群と、GNB溶液及びグルタミン酸水溶液の代わりにGNB投与群と同量のDMSO及び水を添加する対照群とを準備した。
【実施例】
【0050】
その後、GNB投与群及び対照群の細胞について、MTT細胞増殖アッセイキット(Millipore製)を用いてMTTアッセイを行った。具体的には、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に5mg/mLのMTT(3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)を溶解した溶液を、MTTの終濃度が50μg/mLとなるように培地中に添加し、37℃、5体積%COの条件下で1時間培養した。その後、培地を除去し、ホルマザンを溶解するために100μLのDMSOを添加した。そして、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices製)を用い、対照波長630nmとして波長570nmにおける吸光度を測定し、細胞の生存率を求めた。
【実施例】
【0051】
MTTアッセイで測定された細胞の生存率を図1に示す。図1において、生存率は「平均値±標準誤差」で示している。ただし、GNB溶液及びグルタミン酸水溶液の代わりにDMSO及び水を添加した対照群における平均値が1.0となるように、各群の平均値を正規化している。対照群のサンプル数nはいずれもn=18であり、GNB投与群のサンプル数nはn=12である。
図1から分かるように、グルタミン酸(30μM)を添加した場合には、グルタミン酸を添加しない場合と比較して細胞の生存率が有意に低下した(p<0.01)。しかし、グルタミン酸(30μM)に加えてGNB(0.1μM)を添加した場合には、GNBを添加しない場合と比較して細胞の生存率が有意に上昇した(p<0.01)。この結果から、GNBは中枢神経細胞に対する保護作用を示すことが分かる。
【実施例】
【0052】
[実施例2:ガラクト-N-ビオース(GNB)の中枢神経細胞に対する保護作用の確認(核染色アッセイ)]
実施例1と同様にして、胎生18日齢のウィスター系ラットの脳から細胞を採取し、B-27サプリメント(Life Technologies Japan製)及びGlutaMAX(Life Technologies Japan製)を添加したNeurobasal培地(Life Technologies Japan製)中で培養した。
【実施例】
【0053】
培養開始後15日目に、GNBをDMSOに溶解したGNB溶液を、GNBの終濃度が0.1μMとなるように培地中に添加し、21時間培養した。培地を取り除き、0.01質量%のDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)((株)同仁化学研究所製)を含有するPBS溶液で細胞を1分間処理した後、細胞をPBSで洗浄した。取り除いた培地を戻し、グルタミン酸の終濃度が30μMとなるように培地中にグルタミン酸水溶液を添加し、更に3時間培養した。このときの培養後の細胞を「GNB投与群」とする。また、GNB溶液の代わりにGNB投与群と同量のDMSOを添加する対照群と、GNB溶液及びグルタミン酸水溶液の代わりにGNB投与群と同量のDMSO及び水を添加する対照群とを準備した。
【実施例】
【0054】
その後、0.05質量%のPI(ヨウ化プロピジウム)(AnaSpec製)を細胞に添加し、10分間処理した。PI処理後の細胞をPBSで洗浄し、4質量%のパラホルムアルデヒドを含有する0.1Mのリン酸バッファーで固定化した。固定化された細胞に退色防止剤入りの蛍光法組織染色用水系封入剤(Fluoromount/Plus、Diagnostic BioSystems製)をマウントし、デジタル冷却CCD(Charge Coupled Device)カメラ(CoolSNAP HQ2、Photometrics製)を備えた蛍光顕微鏡(Eclipse TE2000-E、(株)ニコン製)を用いて蛍光像を取得した。DAPIで核染色された細胞(DAPI陽性細胞)はグルタミン酸の処理前に死んでいる細胞であるため、細胞数の計測に際して除外した。死細胞は、細胞形状で確認するほか、核がPIで染色され、且つ、DAPIで染色されていないことを基準として確認した。生細胞は、PI及びDAPIのいずれによっても核が染色されていないことを基準として確認した。そして、生細胞数を全細胞数(DAPI陽性細胞を除く)で除することにより、生存率を求めた。
【実施例】
【0055】
核染色アッセイで測定された細胞の生存率を図2に示す。図2において、生存率は「平均値±標準誤差」で示している。GNB溶液及びグルタミン酸水溶液の代わりにDMSO及び水を添加した対照群のサンプル数nはn=20であり、GNB溶液の代わりにDMSOを添加した対照群のサンプル数nはn=21であり、GNB投与群のサンプル数nはn=12である。
図2から分かるように、グルタミン酸(30μM)を添加した場合には、グルタミン酸を添加しない場合と比較して細胞の生存率が有意に低下した(p<0.01)。しかし、グルタミン酸(30μM)に加えてGNB(0.1μM)を添加した場合には、GNBを添加しない場合と比較して細胞の生存率が有意に上昇した(p<0.01)。この結果から、GNBは中枢神経細胞に対する保護作用を示すことが分かる。
【実施例】
【0056】
[実施例3:ガラクト-N-ビオース(GNB)の長期曝露による中枢神経細胞に対する毒性の確認(MTTアッセイ)]
実施例1と同様にして、胎生18日齢のウィスター系ラットの脳から細胞を採取し、B-27サプリメント(Life Technologies Japan製)及びGlutaMAX(Life Technologies Japan製)を添加したNeurobasal培地(Life Technologies Japan製)中で培養した。
【実施例】
【0057】
培養開始後15日目に、GNBをDMSOに溶解したGNB溶液を、GNBの終濃度が0.1μM、1.0μM、10μM、又は100μMとなるように培地中に添加し、14日間培養した。そして、GNB溶液の添加後、1日目、2日目、5日目、及び14日目の時点で、MTT細胞増殖アッセイキット(Millipore製)を用いて、実施例1と同様にMTTアッセイを行った。
【実施例】
【0058】
MTTアッセイで測定された細胞の生存率を図3に示す。図3において、生存率は「平均値±標準誤差」で示している。ただし、GNB溶液の代わりにGNB投与群と同量のDMSOを添加した対照群における平均値が1.0となるように、各群の平均値を正規化している。対照群及びGNB投与群のサンプル数nはいずれもn=9である。
図3から分かるように、GNBの濃度が0.1μM~100μMである場合、生存率は有意な低下を示さなかった。この結果から、GNBの濃度が0.1μM~100μMの範囲である場合、少なくとも14日間は中枢神経細胞に対する毒性を示さないことが分かる。
【実施例】
【0059】
[実施例4:ガラクト-N-ビオース(GNB)によるシナプス結合への影響の確認]
実施例1と同様にして、胎生18日齢のウィスター系ラットの脳から細胞を採取し、B-27サプリメント(Life Technologies Japan製)及びGlutaMAX(Life Technologies Japan製)を添加したNeurobasal培地(Life Technologies Japan製)中で培養した。
【実施例】
【0060】
培養開始後15日目に、GNBをDMSOに溶解したGNB溶液を、GNBの終濃度が0.1μM、1.0μM、10μM、又は100μMとなるように培地中に添加し、2日間培養した。その後、4質量%のパラホルムアルデヒドを含有する0.1Mのリン酸バッファーで細胞を固定化し、PBSで洗浄した後、5質量%の正常ロバ血清を含有する2×PBS溶液でブロッキングを行った。ブロッキング後、各サンプルを1次抗体とともに4℃で一晩反応させ、PBSで洗浄後、2次抗体とともに室温(25℃)で1時間反応させた。各サンプルをPBSで洗浄後、細胞に退色防止剤入りの蛍光法組織染色用水系封入剤(Fluoromount/Plus、Diagnostic BioSystems製)をマウントし、デジタル冷却CCDカメラ(SPOT、Diagnostic Instruments製)を備えた蛍光顕微鏡(Eclipse E800、(株)ニコン製)を用いて蛍光像を取得した。
1次抗体としては、マウス抗vGluT1抗体(Synaptic Systems)、ウサギ抗vGAT抗体(Synaptic Systems)、又はニワトリ抗MAP2抗体(Merck Millipore)を用いた。vGluT1は興奮性シナプスのマーカーであり、vGATは抑制性シナプスのマーカーであり、MAP2は樹状突起を識別するためのマーカーである。2次抗体としては、Alexa色素で標識された2次抗体(Life Technologies Japan製)を用いた。
【実施例】
【0061】
樹状突起20μm当たりの興奮性シナプスの数及び抑制性シナプスの数をそれぞれ図4(A)、(B)に示す。図4(A)において、GNBの濃度が0μM、0.1μM、1.0μM、10μM、100μMである群のサンプル数nは、それぞれn=29、n=16、n=15、n=8、n=9である。また、図4(B)において、GNBの濃度が0μM、0.1μM、1.0μM、10μM、100μMである群のサンプル数nは、それぞれn=11、n=10、n=11、n=13、n=12である。
図4(A)、(B)から分かるように、GNBの濃度が0.1μM~100μMである場合、興奮性シナプスの数及び抑制性シナプスの数は有意な変化を示さなかった。この結果から、GNBの濃度が0.1μM~100μMの範囲である場合、シナプス結合に影響を与えないことが分かる。
【実施例】
【0062】
[実施例5:ガラクト-N-ビオース(GNB)及びラクト-N-ビオースI(LNB)の中枢神経細胞に対する保護作用の確認(MTTアッセイ)]
実施例1と同様にして、胎生18日齢のウィスター系ラットの脳から細胞を採取し、B-27サプリメント(Life Technologies Japan製)及びGlutaMAX(Life Technologies Japan製)を添加したNeurobasal培地(Life Technologies Japan製)中で培養した。
【実施例】
【0063】
培養開始後15日目に、GNB又はLNBをDMSOに溶解したGNB溶液又はLNB溶液を、GNB又はLNBの終濃度が10μMとなるように培地中に添加し、21時間培養した。培地を取り除き、0.01質量%のDAPI((株)同仁化学研究所製)を含有するPBS溶液で細胞を1分間処理した後、細胞をPBSで洗浄した。取り除いた培地を戻し、グルタミン酸の終濃度が30μMとなるように培地中にグルタミン酸水溶液を添加し、更に3時間培養した。GNB溶液を添加した細胞群を「GNB投与群」とし、LNB溶液を添加した細胞群を「LNB投与群」とする。また、GNB溶液又はLNB溶液の代わりにGNB投与群又はLNB投与群と同量のDMSOを添加する対照群と、GNB溶液、LNB溶液、及びグルタミン酸水溶液の代わりにGNB投与群又はLNB投与群と同量のDMSO及び水を添加する対照群とを準備した。
【実施例】
【0064】
その後、GNB投与群、LNB投与群、及び対照群の細胞について、MTT細胞増殖アッセイキット(Millipore製)を用いて、実施例1と同様にMTTアッセイを行った。
【実施例】
【0065】
MTTアッセイで測定された細胞の生存率を図5に示す。図5において、生存率は「平均値±標準誤差」で示している。ただし、GNB溶液、LNB溶液、及びグルタミン酸水溶液の代わりにDMSO及び水を添加した対照群における平均値が1.0となるように、各群の平均値を正規化している。対照群のサンプル数nはいずれもn=30であり、GNB投与群のサンプル数nはn=20であり、LNB投与群のサンプル数nはn=20である。
図5から分かるように、グルタミン酸(30μM)を添加した場合には、グルタミン酸を添加しない場合と比較して細胞の生存率が低下した。しかし、グルタミン酸(30μM)に加えてGNB(10μM)又はLNB(10μM)を添加した場合には、GNB又はLNBを添加しない場合と比較して細胞の生存率が上昇した。この結果から、GNBと同様にLNBも中枢神経細胞に対する保護作用を示すことが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4