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明細書 :レジスト剥離方法およびレジスト剥離装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-213328 (P2016-213328A)
公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
発明の名称または考案の名称 レジスト剥離方法およびレジスト剥離装置
国際特許分類 H01L  21/027       (2006.01)
H01L  21/677       (2006.01)
H01L  21/304       (2006.01)
FI H01L 21/30 572A
H01L 21/68 A
H01L 21/304 645Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2015-095977 (P2015-095977)
出願日 平成27年5月8日(2015.5.8)
発明者または考案者 【氏名】堀邊 英夫
【氏名】山本 雅史
【氏名】鹿間 共一
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100134979、【弁理士】、【氏名又は名称】中井 博
【識別番号】100167427、【弁理士】、【氏名又は名称】岡本 茂樹
審査請求 未請求
テーマコード 5F131
5F146
5F157
Fターム 5F131AA02
5F131AA32
5F131BA15
5F131CA32
5F131EA04
5F131EB81
5F131EB82
5F131KA16
5F131KA23
5F131KA54
5F131KB12
5F131KB30
5F131KB46
5F131KB60
5F146AA17
5F146DA26
5F146DA27
5F146DB05
5F146DC10
5F146MA13
5F157AA64
5F157AA91
5F157AB02
5F157AB33
5F157BG04
5F157BG05
5F157BG39
5F157BG72
5F157BG73
5F157BH15
5F157BH18
5F157BH21
5F157CF34
5F157DA21
5F157DB02
5F157DB18
要約 【課題】レジスト剥離速度を高速化するレジスト剥離方法およびレジスト剥離装置を提供する。
【解決手段】レジストRが形成されたシリコン基板Sを所定の圧力以下に維持された空間2h内に配置した状態で、空間2h内に水素源を含有する混合気体Aを供給し、空間2h内に配置された加熱された触媒体10に混合気体Aを接触させる方法であって、混合気体Aが酸素を含有している。混合気体Aが酸素を含有しているので、混合気体Aを触媒体10に接触させれば、水素ラジカルとともに水酸基ラジカルを発生させることができる。すると、水素ラジカルと水酸基ラジカルの相乗効果により、水素ラジカルだけの場合に比べて、レジストRの剥離速度を速くすることができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
レジストが形成された基板を所定の圧力以下に維持された空間内に配置した状態で、該空間内に水素源を含有する混合気体を供給し、該空間内に配置された加熱された触媒体に混合気体を接触させる方法であって、
前記混合気体が酸素を含有している
ことを特徴とするレジスト剥離方法。
【請求項2】
前記混合気体に含有されている酸素の量が、水素源の流量に対して0.1~2vol%である
ことを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離方法。
【請求項3】
前記空間内の圧力を20Pa未満に調整し、前記基板を90℃以上に加熱する
ことを特徴とする請求項1または2記載のレジスト剥離方法。
【請求項4】
前記基板の加熱温度が、90~250℃である
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のレジスト剥離方法。
【請求項5】
水素ラジカルを使用してレジストを剥離する装置であって、
レジストが形成された基板を収容する収容部と、
該収容部内に配置された、加熱可能に設けられた触媒体と、
前記収容部内の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記収容部内に水素源と酸素を含有する混合気体を供給する混合気体供給部と、を備えて
いる
ことを特徴とするレジスト剥離装置。
【請求項6】
前記混合気体供給部は、
水素源を含有する気体に酸素を添加する酸素添加部を備えている
ことを特徴とする請求項5記載のレジスト剥離装置。
【請求項7】
前記酸素添加部は、
前記混合気体中の酸素の量が、水素源の流量に対して0.1~2vol%となるように調整するものである
ことを特徴とする請求項6記載のレジスト剥離装置。
【請求項8】
前記基板のレジスト層の厚さを測定する膜厚測定手段を備えており、
該膜厚測定手段は、
前記収容部外から該収容部内の空間に対して光を照射する膜厚測定計と、
前記収容部内に設けられた、前記膜厚測定計から照射された光を前記基板に照射し、かつ、前記基板で反射した光を前記膜厚測定計に照射する光学系と、を備えている
ことを特徴とする請求項5、6または7記載のレジスト剥離装置。
【請求項9】
前記触媒体が、
線状材料からなる螺旋状の螺旋状構造部を有しており、
該螺旋状構造部は、
中央部から両端部に向かってピッチが短くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項5、6、7または8記載のレジスト剥離装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト剥離方法およびレジスト剥離装置に関する。さらに詳しくは、水素ラジカルの還元作用を利用してレジストを剥離するレジスト剥離方法およびレジスト剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、基板に微細なパターンを作製する際には、リソグラフィープロセスが採用される。このリソグラフィープロセスでは、基板表面にレジスト層を形成し、所定のパターンを有するマスクを通してレジスト層を露光し現像する。すると、レジスト層にフォトレジストパターンが形成される。フォトレジストパターンが形成されたレジスト層をマスクとして基板のエッチングを行えば、基板においてレジスト層が形成されていない部分が削られる。そして、エッチング後にレジスト層を剥離すれば、所定のパターンが形成された基板を得ることができる。
【0003】
従来、レジスト剥離には、薬品を用いたウェット方式が採用されていた。ウェット方式は、レジストを溶解または剥離する薬液を使用する方法である。このウェット方式は、レジスト層が形成された基板に薬液を接触させるだけであり、簡便にレジスト層を基板から剥離できる。しかも、レジスト層を剥離する速度が速い(3μm/min.以上、非特許文献8、9参照)ので、基板の製造効率が高くなる。
【0004】
しかし、ウェット方式は、使用する薬液が人体や環境に有害であり、処理後の基板に薬液が残留することを防ぐために、基板の洗浄工程が必要である。しかも、使用した薬液や洗浄に使用した洗浄液の浄化処理に多大な労力を要する。さらに、ウェット方式では、イオン注入工程でマスクとして利用されたレジスト剥離は極めて困難である(非特許文献9参照)。
【0005】
このウェット方式の問題を解決するために、近年では酸素プラズマを用いたドライアッシングが採用されるようになっている。しかし、酸素プラズマを用いたドライアッシングでは、酸素プラズマを発生させるために高額で複雑な装置が必要になる。また、酸素プラズマによる基板や金属配線の酸化劣化が生じたり、酸素プラズマ中の荷電粒子によって基板がダメージを受けたりするという問題も存在している。
【0006】
酸素プラズマによるドライアッシングの問題を解決する方法として、原子状水素(水素ラジカル)を使用したドライアッシングが開発されている(例えば、特許文献1、2)。特許文献1、2には、水素原子を有する分子を含む剥離ガスと加熱した高融点触媒体を接触させる接触分解反応で水素ラジカルを生成し、生成した水素ラジカルとレジストの接触によりレジストをガス化して剥離する技術が開示されている。
【0007】
特許文献1、2の技術で使用する水素ラジカルは、複雑な装置を使用しなくても発生させることができるので、酸素プラズマによるドライアッシングに比べて、簡易な工程や設備でレジストを剥離することができる。また、プラズマが発生しないので、荷電粒子による基板のダメージがない。しかも、水素ラジカルと基板との反応は還元反応となるため、基板や金属配線の酸化劣化が生じない。そして、優れた還元力により有機物を低分子量の炭化水素化合物に分解できるので、レジスト剥離後に下地膜の表面を清浄化することができるという利点も得られる。さらに、水素ラジカルを使用すれば、イオン注入工程でマスクとして使用されたレジストであっても剥離できる(非特許文献6、7)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第3893447号
【特許文献2】特許第4926639号
【0009】

【非特許文献1】A. Izumi, H. Matsumura, Jpn. J. Appl. Phys., 41 (2002) 4639.
【非特許文献2】K. Hashimoto, A. Masuda, H. Matsumura, T. Ishibashi, K. Takao, Thin Solid Films, 501 (2006) 326.
【非特許文献3】M. Yamamoto, H. Horibe, H. Umemoto, K. Takao, E. Kusano, M. Kase, S. Tagawa, Jpn. J. Appl. Phys., 48 (2009) 026503.
【非特許文献4】M. Yamamoto, T. Maruoka, A. Kono, H. Horibe, H. Umemoto, Jpn. J. Appl. Phys., 49 (2010) 016701.
【非特許文献5】M. Yamamoto, T. Maruoka, A. Kono, H. Horibe, H. Umemoto, Appl. Phys. Exp., 3 (2010) 026501
【非特許文献6】M. Yamamoto, T. Maruoka, Y. Goto, A. Kono, H. Horibe, M. Sakamoto, E. Kusano, H. Seki, S. Tagawa, J. Electrochem. Soc., 157 (2010) H361.
【非特許文献7】T. Maruoka, Y. Goto, M. Yamamoto, H. Horibe, E. Kusano, K. Takao, S. Tagawa, J. Photopolym. Sci. Technol., 22 (2009) 325.
【非特許文献8】M. Yamamoto, R. Kitai, H. Horibe, A. Sekiguchi, H. Tanaka, J. Photopolym. Sci. Technol., 22 (2009) 357.
【非特許文献9】M. Yamamoto, M. Igarashi, A. Kono, H. Hideo, H. Ohta, M. Yanagi, IEICE Trans. Electron., J93-C (2010), 353.
【非特許文献10】K. Shinagawa, H. Shindo, K. Kusaba, T. Koromogawa, J. Yamamoto, M. Furukawa, Jpn. J. Appl. Phys., 40 (2001) 5856.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、水素ラジカルによるレジスト剥離では、上述したようなメリットはあるものの、レジスト層を剥離する速度が遅いという問題がある。種々の研究により、水素ラジカルを発生させる触媒体や基板を加熱することによって、2.5μm/min.程度の剥離速度は達成されている(非特許文献3参照)。しかし、上述したように、薬液方式の剥離速度は3.0μm/min.以上(非特許文献8、9参照)、酸素プラズマによるアッシング方式でも約3.0μm/min.(非特許文献10参照)である。このことを考慮すれば、水素ラジカルによるレジスト剥離は剥離速度が遅いという問題がある。今後、水素ラジカルを用いたレジスト剥離を実用化する上では、レジスト剥離速度の更なる向上が求められる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、レジスト剥離速度を高速化できるレジスト剥離方法およびレジスト剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(レジスト剥離方法)
第1発明のレジスト剥離方法は、レジストが形成された基板を所定の圧力以下に維持された空間内に配置した状態で、該空間内に水素源を含有する混合気体を供給し、該空間内に配置された加熱された触媒体に混合気体を接触させる方法であって、前記混合気体が酸素を含有していることを特徴とする。
第2発明のレジスト剥離方法は、第1発明において、前記混合気体に含有されている酸素の量が、水素源の流量に対して0.1~2vol%であることを特徴とする。
第3発明のレジスト剥離方法は、第1または第2発明において、前記空間内の圧力を20Pa未満に調整し、前記基板を90℃以上に加熱することを特徴とする。
第4発明のレジスト剥離方法は、第1、第2または第3発明において、前記基板の加熱温度が、90~250℃であることを特徴とする。
(レジスト剥離装置)
第5発明のレジスト剥離装置は水素ラジカルを使用してレジストを剥離する装置であって、レジストが形成された基板を収容する収容部と、該収容部内に配置された、加熱可能に設けられた触媒体と、前記収容部内の圧力を調整する圧力調整手段と、前記収容部内に水素源を含有する混合気体を供給する混合気体供給部と、を備えており、該混合気体供給部は、前記混合気体に酸素を添加する酸素添加部を備えていることを特徴とする。
第6発明のレジスト剥離装置は、第5発明において、前記混合気体供給部は、水素源を含有する気体に酸素を添加する酸素添加部を備えていることを特徴とする。
第7発明のレジスト剥離装置は、第6発明において、前記酸素添加部は、前記混合気体中の酸素の量が、水素源の流量に対して0.1~2vol%となるように調整するものであることを特徴とする。
第8発明のレジスト剥離装置は、第5、第6または第7発明において、前記基板のレジスト層の厚さを測定する膜厚測定手段を備えており、該膜厚測定手段は、前記収容部から該収容部内の空間に対して光を照射する膜厚測定計と、前記収容部内に設けられた、前記膜厚測定計から照射された光を前記基板に照射し、かつ、前記基板で反射した光を前記膜厚測定計に照射する光学系と、を備えていることを特徴とする。
第9発明のレジスト剥離装置は、第5、第6、第6または第8発明において、前記触媒体が、線状材料からなる螺旋状の螺旋状構造部を有しており、該螺旋状構造部は、中央部から両端部に向かってピッチが短くなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(レジスト剥離方法)
第1発明によれば、混合気体が酸素を含有しているので、混合気体を触媒体に接触させれば、水素ラジカルとともに水酸基ラジカルを発生させることができる。すると、水素ラジカルと水酸基ラジカルの相乗効果により、水素ラジカルだけの場合に比べて、レジストの剥離速度を速くすることができる。
第2発明によれば、酸素の量が相乗効果を得る上で適切な量に調整されているので、触媒体の酸化劣化や水素ラジカル量の低下を招くことなく、レジストの剥離をより効果的に行うことができる。
第3発明によれば、レジストの剥離速度を飛躍的に上昇させることができる。
第4発明によれば、基板の温度を低くした状態でもレジストの剥離速度を速くできるので、基板が熱に弱いものでも生産性を高くすることができる。
(レジスト剥離装置)
第5および第6発明によれば、混合気体に酸素が含有されているので、混合気体が触媒体に接触すれば、水素ラジカルとともに水酸基ラジカルも発生する。すると、水素ラジカルと水酸基ラジカルの相乗効果により、水素ラジカルだけの場合に比べて、レジストの剥離速度を速くすることができる。
第7発明によれば、酸素の量が相乗効果を得る上で適切な量に調整されているので、触媒体の酸化劣化や水素ラジカル量の低下を招くことなく、レジストの剥離をより効果的に行うことができる。
第8発明によれば、レジストの厚さを正確に測定できるので、レジスト剥離の終了を適確に把握することができ、基板がエッチングされることを回避できる。しかも、収容部内に測定装置を設ける必要がないし、測定装置に特別な保護をしなくてもよい。したがって、収容部の大型化や装置の構造が複雑になることを防ぐことができる。
第9発明によれば、螺旋状構造部の螺旋構造は、中央部分は疎になり、端部にいくにつれて密になるので、螺旋状構造部の温度を均一にすることができる。すると、螺旋状構造部のどの位置でも、生成する水素ラジカルや水酸基ラジカルの量を同じにすることができる。したがって、基板表面のどの位置でもほぼ同じ状態の水素ラジカルや水酸基ラジカルを接触させることができるので、レジストを基板表面のどの位置でも均一に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のレジスト剥離装置1の概略説明図である。
【図2】他の実施形態のレジスト剥離装置1の概略説明図である。
【図3】実験結果のグラフである。
【図4】実験結果のグラフである。
【図5】実験結果のグラフである。
【図6】実験結果のグラフである。
【図7】水素ラジカルおよび水酸基ラジカルとベンゼン環との反応過程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のレジスト剥離方法は、水素ラジカルによって基板の表面に形成されたレジストを剥離する方法であり、レジストの剥離速度を高速化できるようにしたことに特徴を有している。

【0016】
本実施形態のレジスト剥離方法によって基板の表面から剥離されるレジストはとくに限定されない。例えば、ノボラック系、フェノール系、アクリル系、エポキシ系、ゴム系等の樹脂によって形成されたレジストを挙げることができる。

【0017】
本実施形態のレジスト剥離方法によってレジストを剥離する基板もとくに限定されない。例えば、微小電気機械システム、半導体素子、液晶、プリント基板、フレキシブル基板等に使用される基板を挙げることができる。基板材料もとくに限定されない。例えば、Cu、Al、Ti、Wなどの金属材料、Si、C、GaN、GaAsなどの半導体材料、SiO、Si、ZnO、ITO(In-SnO)などの無機絶縁材料、プリント基板やフレキシブル基板などに用いられる有機絶縁材料を、基板の材料として挙げることができる。
なお、以下では、レジストを剥離する基板として、一般的なシリコン基板にレジストを形成した場合を代表として説明する。

【0018】
(本実施形態のレジスト剥離方法)
つぎに、本実施形態のレジスト剥離方法について説明する。

【0019】
まず、本実施形態のレジスト剥離方法に使用するレジスト剥離装置1を簡単に説明する。

【0020】
図1に示すように、レジスト剥離装置1は、レジストRが形成されたシリコン基板Sを収容するための中空な空間2hを有する収容部2を備えている。この収容部2の空間2hは、外部から気密に隔離することができるようになっている。なお、この収納部2の内壁にはガラスコーティングを施している。かかるガラスコーティングを施すことによって、水素ラジカルをはじめとする各種ラジカルが内壁表面上で再結合し、ラジカル濃度が低下することを抑制することができるようにしている。

【0021】
この収容部2には、シリコン基板Sが載せられるテーブル5が設けられている。このテーブル5には、基板温度調節器6が設けられており、テーブル5上のシリコン基板Sを所定の温度(90~250℃程度)に調整できるようになっている。

【0022】
図1に示すように、収容部2には、圧力調整手段3と混合気体供給部20が接続されている。圧力調整手段3は、収容部2の空間2h内の気体を排出して、収容部2の空間2h内の圧力を所定の圧力(例えば、20Pa未満)に調整するものである。混合気体供給部20は、水素源に微量の酸素(水素源の流量に対し酸素の流量が0.1~2vol%程度)が混合された混合気体Aを収容部2の空間2hに供給するものである。したがって、圧力調整手段3を作動させている状態で、混合気体供給部20から収容部2の空間2hに混合気体Aを供給すれば、所定の圧力の混合気体Aで収容部2の空間2h内を満たした状態に維持することができる。

【0023】
なお、本明細書において水素源とは、水素ガスはもちろん、水素原子を組成に含む気体も含む概念である。例えば、HOやSiH、CH、NH、B、PH、AsH等も本明細書における水素源に相当する。

【0024】
また、図1に示すように、テーブル5の上方には触媒体10の螺旋状構造部10aが配置されている。この触媒体10の螺旋状構造部10aは、通電加熱等によって、所定の温度に加熱できるものである。具体的には、混合気体A中の水素源及び酸素が接触すると、水素ラジカルや水酸基ラジカルが生成される温度(1,000~3,000℃程度)まで螺旋状構造部10aを加熱できるように、触媒体10は構成されている。

【0025】
(本実施形態のレジスト剥離方法)
以上のごとき構造を有するレジスト剥離装置1を使用して、本実施形態のレジスト剥離方法によりレジストRを剥離する作業を説明する。

【0026】
まず、収容部2の空間2h内のテーブル5上にレジストRが形成されたシリコン基板Sを配置する。その後、収容部2の空間2hを外部と気密に隔離し、圧力調整手段3を作動させて空間2h内の気体を排出する。

【0027】
空間2h内が所定の圧力になると、基板温度調節器6を作動し、テーブル5上のシリコン基板Sを加熱する。シリコン基板Sが所定の温度になると、混合気体供給部20から収容部2の空間2hに混合気体Aを供給する。この間、圧力調整手段3は作動しているので、空間2h内は所定の圧力の混合気体Aに満たされた状態となる。すると、レジストRの剥離の準備が完了する。

【0028】
レジストR剥離の準備が完了すると、触媒体10の螺旋状構造部10aを加熱する。触媒体10の螺旋状構造部10aが所定の温度まで加熱されると、混合気体Aの水素源が分解され、水素ラジカルが生成する。しかも、混合気体Aには水素源だけでなく微量の酸素も含有されているので、水素ラジカルとともに、水酸基ラジカルも生成される。

【0029】
触媒体10の螺旋状構造部10aで生成された水素ラジカルと水酸基ラジカルは、その分子運動によってレジストRと接触する。水素ラジカルや水酸基ラジカルが接触したレジストRは、水素ラジカルの還元反応と水酸基ラジカルの酸化反応によって分解されて気化し(非特許文献1参照)、レジストRがシリコン基板Sから剥離される。

【0030】
例えば、レジストRがノボラック樹脂の場合には、例えば、図7に示す反応によってレジストRが剥離される。なお、水素ラジカルおよび水酸基ラジカルと樹脂との反応過程は複雑であり、未解明な部分も多い。図7には、一例として、ノボラック樹脂の構造内で最も化学的安定であり、剥離が困難なため律速となる部位であるベンゼン環との反応過程を模式的に示している(非特許文献4、5参照)。もちろん、図7に示した反応以外の反応もレジストRの表面では生じている。

【0031】
また、図7に示すように、ベンゼン環との反応過程は、水素ラジカルと水酸基ラジカルで似通ったものがある。しかし、ベンゼン環との反応速度は水酸基ラジカルの方が水素ラジカルよりも16~55倍程度速い。例えば、反応速度定数(cm/s)で比較すると、水素ラジカルが4.8±2.6×10-14cm/s(文献A参照)であるのに対し、水酸基ラジカルは1.2±0.1×10-12cm/s(文献B参照)であることが報告されている。
文献A:J. A. Kerr and M. J. Parsonage, Butterworths, 384, London 1972; K. Hoyermann, A.W. Preuss and H.G. Wagner, Ber. Bunsenges. Phys. Chem., 79(2): 156-65 (1975); J.M. Nicovich and A.R Ravishankara, J. Phys. Chem., 88(12), 2534-2541 (1984); D. L. Baulch, C. J. Cobos, R. A. Cox RA, C. Esser, P. Frank, Th. Just, J. A. Kerr, M. J. Pilling, J. Troe, R. W. Walker, J. Warnatz, J. Phys. Chem. Ref. Data, 21(6), 411-429 (1992).
文献B:D. L. Baulch, C. J. Cobos, R. A. Cox, P. Frank, G. Hayman, Th. Just, J. A. Kerr, T. Murrells, M. J. Pilling, J. Troe, R. W. Walker and J. Warnatz, J. Phys. Chem. Ref. Data, 23, 847-1033 (1994); M. Tappe, V. Schliephake, H. Cg. Wagner, Z. Phys. Chem., 162(2), 129-145(1989); J. M. Nicovich, C. A. Gump, A. R. Ravishankara, J. Phys. Chem., 86(9), 1690-1694(1982).

【0032】
シリコン基板Sの表面から全てのレジストRが剥離されると、触媒体10の加熱を停止し、その後、混合気体Aの供給と気体の排出を停止する。その後、収容部2の空間2h内にパージ用のガス(例えば、NやArなどの不活性ガス)を供給し空間2h内を大気圧に戻し、空間2h内からシリコン基板Sを取り出せば、レジストRの剥離作業が終了する。

【0033】
以上のように、本実施形態のレジスト剥離方法は、混合気体Aに水素源だけでなく微量の酸素を含有させているので、混合気体Aを触媒体に接触させれば、水素ラジカルとともに水酸基ラジカルを発生させることができる。そして、水素ラジカルと水酸基ラジカルが共存する状態(酸化・還元複合反応場)でレジストRを剥離するので、両者の相乗効果により、水素ラジカルだけの場合に比べて、レジストRの剥離速度を速くすることができる。具体的には、シリコン基板Sの温度を110℃程度とした場合でも、レジストRの剥離速度を4μm/min.程度にすることができる。

【0034】
しかも、水素ラジカルと水酸基ラジカルが共存する状態でレジストRを剥離するので、レジストRと水素ラジカルおよび水酸基ラジカルの反応は酸化・還元複合反応プロセスになる。すると、レジストRの剥離とほぼ同時に、水酸基ラジカルによる酸化反応によってシリコン基板S上に保護膜(SiO)が形成されるので、この保護膜によってシリコン基板Sが水素ラジカルによって損傷することを防止できる。つまり、水素ラジカルのみによるレジストR剥離において問題となる、水素ラジカルの還元反応によるシリコン基板Sのエッチング(水素ラジカルによりシリコンが一方的にSiHに分解する反応)を防止することができる。

【0035】
(酸素濃度について)
混合気体Aにおいて、水素源の流量(つまり水素源中の水素原子の流量)に対する酸素の量(酸素の流量)は、上述したように、水素源の流量の0.1~2vol%が好ましい。水素源の流量に対する酸素の量が2vol%よりも多ければ、過剰な酸素の影響で水素ラジカルが消費されてしまい、レジスト剥離速度が低下する。また、触媒体10の螺旋状構造部10aの酸化劣化が生じて、水素ラジカルや水酸基ラジカルの生成効率も低下する。逆に、水素源の流量に対する酸素の量が0.1vol%よりも少なければ、酸素添加の効果がほとんど得られなくなる。したがって、酸素添加により発生する水酸基ラジカルと水素ラジカルの相乗効果を適切に発揮させる上では、水素源の流量に対して添加する酸素の量は、0.1~2vol%が好ましく、0.3~1vol%がより好ましい。

【0036】
(収容部2の空間2h内の気圧について)
収容部2の空間2h内の圧力は、低圧が好ましく、1000Pa以下であればよく、とくに限定されない。収容部2の空間2h内の圧力を低圧にすることが好ましい理由は以下のとおりである。

【0037】
本発明の方法の場合、2000K以上の触媒体10の螺旋状構造部10aの表面に混合気体Aが接触し、螺旋状構造部10a上で水素ラジカル等が生成される。生成された直後の水素ラジカルは1000K程度の高いエネルギーを持つ。このような高いエネルギーの水素ラジカルをレジスト剥離に利用することで、剥離速度を向上することができると期待される。

【0038】
一方で、そのような高温の水素ラジカルは気相中において数10~数100回衝突することで雰囲気の温度にまで容易に冷却される(J. Park, N. Shafer, R. Bersohn, J. Chem. Phys., 91 (1989) 7861.)。衝突により水素ラジカルのエネルギーを低下させないためには、衝突回数を低減させることが必要となる。

【0039】
衝突回数を低減させる方法の一つが減圧することである。これにより、水素ラジカルの高いエネルギーを損なうことなく水素ラジカルをレジストR表面に到達させることができ、レジスト剥離反応に水素ラジカルを有効に利用することが可能となる。

【0040】
触媒体10の螺旋状構造部10aと基板Sとの距離を近づけることも、衝突回数を低減させるのに有効である。ただし、基板Sの近くに高温の螺旋状構造部10aが設置されることになり、螺旋状構造部10aからの輻射熱等による基板S加熱の影響が強くなるため、基板Sへの熱的ダメージに配慮する必要がある。

【0041】
また、収容部2の空間2h内の圧力を低くすれば、衝突回数の低減以外にも、レジストRが気化した物質をシリコン基板S近傍から迅速に剥離することができるという利点も得られる。

【0042】
一方、収容部2の空間2h内の圧力を低くすれば、混合気体Aの濃度が低くなるので、レジストRの剥離速度は低下する可能性がある。つまり、圧力の低下は、必ずしもレジストRの剥離速度の高速化につながらない可能性がある。このため、従来の水素ラジカルによるレジスト剥離では、収容部2の空間2h内の圧力は、せいせい50Pa程度までしか低下させないことが一般的であった(例えば、非特許文献2、3参照)。

【0043】
これに対し、本実施形態のレジストRの剥離方法では、従来の水素ラジカルによるレジスト剥離と比べて、収容部2の空間2h内の圧力を低圧にしても、レジストRの剥離速度を向上させることができる。具体的には、収容部2の空間2h内の圧力を20Pa未満、好ましくは、10Pa以下、より好ましくは5Pa以下とすることによって、レジストRの剥離速度を向上させることができる。とくに、シリコン基板Sの温度を90℃以上とした状態で、収容部2の空間2h内の圧力を20Pa未満以下、好ましくは、10Pa以下、より好ましくは5Pa以下とすれば、レジストRの剥離速度を飛躍的に上昇させることができる。つまり、本実施形態のレジストRの剥離方法では、収容部2の空間2h内の圧力を低くしても、レジストRの剥離速度が低下することを防止できる。しかも、収容部2の空間2h内を上記のごとき低圧とすれば、シリコン基板Sの温度が低くても(90~110℃程度でも)、レジストRを高速で剥離することが可能となる。

【0044】
(シリコン基板Sの加熱温度)
シリコン基板Sの加熱温度はとくに限定されず、レジストRの剥離が促進でき、熱によるシリコン基板Sの損傷が生じない温度であればよい。シリコン基板Sの温度が高いほどレジストRを剥離する時間を短くできるので、通常のシリコン基板Sであれば、150~250℃程度に加熱することが望ましい。

【0045】
一方、熱に弱い基板(例えばプリント基板等)の場合には、上記温度まで加熱すると基板が損傷する可能性があるので、かかる基板の場合には120℃未満となるように加熱される。この温度の場合、従来の酸素ラジカルによるレジスト剥離や水素ラジカルのみによるレジスト剥離を行った場合には、レジストRの剥離速度が遅くなり、生産性が大幅に低下する。

【0046】
しかし、上述したように、本実施形態のレジスト剥離方法を採用すれば、基板の温度が120℃未満であっても、収容部2の空間2h内の圧力がある程度低くなっていれば、レジストRの剥離速度を速くできる。したがって、本実施形態のレジスト剥離方法を採用すれば、基板が熱に弱いものであっても、その生産性を高くすることができる。

【0047】
(本実施形態のレジスト剥離装置)
つぎに、上述したレジスト剥離装置1の一例について、詳細に説明する。

【0048】
(収容部2)
図1に示すように、レジスト剥離装置1は、収容部2を備えている。この収容部2は、レジストRが形成されたシリコン基板Sを収容するために中空な空間2hを有している。この収容部2は、空間2h内を後述する圧力調整手段3によって気体を排出すれば、空間2h内を所定の圧力に維持できるように形成されている。例えば、収容部2の空間2h内の気圧を、10-7~10Pa程度の状態にできるように収容部2は形成されている。

【0049】
(圧力調整手段3)
この収容部2には、収容部2の空間2h内の圧力を調整する圧力調整手段3が設けられている。この圧力調整手段3は、収容部2の空間2hと配管等によって連通された真空ポンプ3pと、収容部2の空間2h内の圧力を測定する圧力計3sと、を備えている。また、圧力調整手段3は、真空ポンプ3pの作動を制御する制御部3cを備えている。この制御部3cは、圧力計3sからの信号に基づいて、収容部2の空間2h内を設定された圧力に維持するように真空ポンプ3pの作動を制御する機能を有している。例えば、収容部2の空間2h内が所定の圧力よりも高くなると、制御部3cは、真空ポンプ3pを作動させて、空間2h内を所定の圧力まで低下させる機能を有している。

【0050】
(基板温度調節器6)
図1に示すように、収容部2内には、シリコン基板Sを配置するためのテーブル5が設けられている。このテーブル5には、基板温度調節器6が設けられている。この基板温度調節器6は、テーブル5上に載せられたシリコン基板Sを加熱する加熱器6hと、シリコン基板Sを冷却する冷却器6rと、シリコン基板Sの温度を測定する温度計6sと、を備えている。そして、温度計6sの信号に基づいて、加熱器6hおよび冷却器6rの作動を制御する制御部6cを備えている。この基板温度調節器6を設けることによって、テーブル5上に載せられたシリコン基板Sを所定の温度に維持することができる。

【0051】
(触媒体10)
図1に示すように、テーブル5の上方には、触媒体10が設けられている。この触媒体10の螺旋状構造部10aは、タングステンやチタン、タンタル、コバルト、白金、ニッケル、ルテニウム(ルテニウム被膜付タングステン)、イリジウム等の金属からなる線材によって形成されており、螺旋状に形成された螺旋状構造部10aを有している。
なお、触媒体10の螺旋状構造部10aの素材には、酸化劣化を抑制する上では、高温でも耐酸化性の強いルテニウムやイリジウムを用いることが有効である。ルテニウムやイリジウムを用いれば、高温下で酸素濃度を高くしても酸化劣化しにくくなるため、より水酸基ラジカルの生成量を増加させることが期待できる。

【0052】
この触媒体10の螺旋状構造部10aは、収容部2外に設けられた電源部11と電気的に接続されている。この電源部11は、触媒体10の螺旋状構造部10aに直流電流を供給する機能を有するものである。例えば、外部に供給する電流量を調整できる一般的な直流電源を電源部11として使用することができる。

【0053】
この電源部11は、触媒体10の螺旋状構造部10aの温度を測定する温度計測部12の信号に基づいて、触媒体10に供給する電流量を制御する機能を有している。言い換えれば、電源部11は、温度計測部12の信号に基づいて、触媒体10の螺旋状構造部10aの温度が所定の温度となるように、螺旋状構造部10aに供給する電流量を制御する機能を有している。

【0054】
(螺旋状構造部10aについて)
なお、螺旋状構造部10aは、その直径や軸長はとくに限定されず、レジストRを剥離するシリコン基板Sの大きさに合わせて適切な大きさのものを使用すればよい。例えば、シリコン基板Sが直径76.2mmの場合には、螺旋状構造部10aは、直径10mm、軸長60mm程度が好ましい。

【0055】
また、螺旋状構造部10aは、その全長でそのピッチが一定でもよい。しかし、螺旋状構造部10aは、軸方向の中央部から両端部に向かってピッチが短くなるように形成されていることが望ましい。螺旋状構造部10aは、その全長でピッチが一定であれば、その軸方向において、中央部分で温度が最も高くなり、両端部では中央部分に比べて300℃ほど低温となる。しかし、螺旋状構造部10aを、その軸方向の中央部から両端部に向かってピッチが短くなるように形成すれば、螺旋構造は、中央部分は疎になり、端部にいくにつれて密になる。すると、螺旋状構造部10aの軸方向において、その温度を均一にすることができる。なぜなら、両端部の螺旋構造を密にすれば、両端部では隣接する線材同士を相互に加熱させることができるので、両端部の温度を高くできるからである。

【0056】
そして、螺旋状構造部10aの軸方向において温度が均一になれば、螺旋状構造部10aのどの位置でも、混合気体Aと接触した際に生成する水素ラジカルや水酸基ラジカルの量をほぼ同じにすることができる。すると、シリコン基板Sの表面のどの位置でもほぼ同じ状態の水素ラジカルや水酸基ラジカルをレジストRに接触させることができるので、レジストRをシリコン基板Sの表面のどの位置でもほぼ均一に剥離することができる。

【0057】
また、螺旋状構造部10aからシリコン基板Sまでの距離はとくに限定されないが、短い方が望ましい。両者間の距離が短ければ、螺旋状構造部10a近傍で生成された水素ラジカルや水酸基ラジカルを高濃度かつ高エネルギーの状態でシリコン基板Sに到達させやすくなる。
一方、上述したように、シリコン基板Sと螺旋状構造部10aとの距離を近づけすぎると、螺旋状構造部10aからの輻射熱等による基板加熱の影響が強くなるため、シリコン基板Sへの熱的ダメージに配慮する必要がある。
したがって、レジスト剥離効率とシリコン基板Sの損傷防止を両立させる上では、シリコン基板Sと螺旋状構造部10aの距離は、10~200mm程度が好ましく、20~60mm程度がより好ましい。

【0058】
(温度計測部12)
温度計測部12は、螺旋状部10aの温度を測定できるものであればどのようなセンサーを使用してもよい。螺旋状部10aは非常に高温(2000℃以上)となるので、温度計測部12は非接触で螺旋状部10aの温度を測定できるものが好ましい。例えば、赤外放射温度計等を温度計測部12として使用することができる。赤外放射温度計を温度計測部12として使用する場合、螺旋状部10aから放射される赤外光を温度計測部12が受光できる構成であれば、どのような装置構成を採用してもよい。例えば、図1に示すように、収容部2に石英窓等の光を透過する窓12aを設ければ、その窓12aを通して螺旋状部10aから放射される赤外光を温度計測部12が受光できるので、螺旋状部10aの温度を測定することができる。

【0059】
(混合気体供給部20)
図1に示すように、収容部2には、混合気体供給部20が接続されている。この混合気体供給部20は、収容部2の空間2hに水素源を含有する混合気体Aを供給するものであり、水素源が充填された水素源ボンベ21と、水素源ボンベ21と収容部2の空間2hとの間を連通する配管22を備えている。なお、配管22には、バルブ22vが設けられており、水素源ボンベ21と収容部2の空間2hとの間を連通遮断することができるようになっている。

【0060】
この配管22には、酸素添加部25が設けられている。この酸素添加部25は、酸素が充填された酸素ボンベ26と、この酸素ボンベ26から供給される酸素を配管22に供給する混合部27を備えている。この混合部27は、水素源ボンベ21から供給される水素源に対して、酸素ボンベ26から供給される酸素を所定の量だけ添加することができるものである。

【0061】
例えば、流量計を内蔵した市販のガス混合装置やスタティックミキサー等を混合部27として使用することができる。かかる市販のガス混合装置等を使用すれば、水素源に添加する酸素の量を簡便かつ精度よく調整できるので、混合気体Aを簡便に供給することができる。

【0062】
また、酸素ボンベ26と配管22とを接続する接続配管を設け、その接続配管と接続配管に設けられたバルブおよび流量計によって混合部を構成してもよい。この場合でも、配管22内を流れる水素源の流量に対して所定の流量の酸素が混合されるようにバルブの開度を調整すれば、所定の混合気体Aを供給することができる。

【0063】
なお、混合気体供給部20は、上述したような構成に限定されず、水素源に微量の酸素が混合された混合気体Aを収容部2の空間2hに供給できるのであれば、どのような構成を採用してもよい。

【0064】
また、酸素添加部25を設けずに、水素源及び酸素を、水素源ボンベ21と酸素ボンベ26から直接収容部2の空間2hに供給して、空間2h内で混合気体Aが形成されるようにすることもできる。しかし、この場合には、収容部2の空間2h内において、水素源と酸素の混合割合にバラつきが生じる可能性がある。したがって、収容部2の空間2hには、水素源と酸素を予め混合した混合気体Aを供給することが望ましい。

【0065】
また、水素源と微量の酸素が予め混合された混合気体Aが封入されたボンベを、混合気体供給部として使用してもよい。この場合には、所定の混合気体Aを収容部2の空間2hに供給できるし、収容部2の空間2h内において、水素源と酸素の混合割合にバラつきが生じることもない。

【0066】
しかし、酸素添加部25を設けて水素源に後から酸素を添加するようにすれば、混合気体A中の酸素の量を自在に調整できるという利点が得られる。

【0067】
(膜厚測定手段40)
通常の水素ラジカルによるレジスト剥離では、水素ラジカルによるシリコン基板Sのエッチングが生じる可能性がある。このため、レジストRの剥離状況(レジストRの残り厚さ)を監視して、処理の終了タイミングをコントロールすることが重要になる。

【0068】
一方、本実施形態のレジスト剥離方法では、上述したように、シリコン基板Sに保護膜が形成されるので、一定以上の期間、レジスト剥離処理を実施すれば、レジストRの剥離状況を監視しなくてもシリコン基板Sのエッチングを防ぐことができる可能性がある。

【0069】
しかし、本実施形態のレジスト剥離方法でも、処理時間を短くして生産性を向上させる上では、レジストRの残り厚さを確認して、処理の終了タイミングをコントロールすることが望ましい。

【0070】
したがって、レジスト剥離装置1は、レジストRの剥離状況、つまり、シリコン基板S上のレジストRの厚さを測定する膜厚測定手段を備えていることが望ましい。膜厚測定手段には、顕微鏡(SEM、TEM、レーザ等)による断面観察や段差計(プロファイラ)による膜厚測定、光干渉式膜厚計、分光エリプソメーター等の種々の装置等を使用することができる。

【0071】
しかし、膜厚測定手段40に以下のような構成を採用すれば、収容部2内に測定装置を設ける必要がないから、測定装置に特別な保護をしなくてもよい。したがって、収容部2の大型化やレジスト剥離装置1の構造が複雑になることを防ぐことができる。そして、レジストRの厚さを正確に測定でき、レジスト剥離の終了を適確に把握することができ、基板がエッチングされることを回避できる。

【0072】
図1に示すように、膜厚測定手段40は、膜厚測定計41と、光学系42とから構成されている。

【0073】
膜厚測定計41は、測定対象に光を照射して測定対象表面の膜厚を測定するものである。例えば、測定対象に光を照射して、レジストR表面での反射光とレジストRの下地面(シリコン基板Sの表面)での反射光による干渉から膜厚を測定する光干渉式膜厚測定計や、入射光と試料の相互作用を経て反射してきた光の偏光状態の変化を入射光と比較して解析することで膜厚を測定する分光エリプソメーター等を使用できる。なお、以下に説明する光学系42は、膜厚測定計41として簡便な光干渉式膜厚測定計を使用した場合を説明している。

【0074】
光学系42は、収容部2の側面に設けられた石英窓43と、収容部2の空間2h内に設けられた複数枚のミラー44~47とから構成されている。
複数枚のミラー44~47は、石英窓43から収容部2内に照射された光をテーブル5の上方に反射するミラー44と、ミラー44が反射した光をテーブル5に向けて(つまりテーブル5上のシリコン基板Sに向けて)反射するミラー45とを備えている。また、テーブル5上のシリコン基板Sで反射した光を下方に反射するミラー46と、ミラー46で反射した光を、石英窓43を通して膜厚測定計41に向けて反射するミラー47とを備えている。

【0075】
かかる構成の光学系42を設けておけば、収容部2外に設置した膜厚測定計41から石英窓43を通してミラー44に光を照射すれば、シリコン基板S表面のレジストRに照射された光の反射光を膜厚測定計41に受光させることができる。すると、受光した光に基づいて、膜厚測定計41はレジストRの厚さを測定することができる。

【0076】
(他の膜厚測定手段40)
なお、光学系42の構成は、図1に示す構成に限定されず、図2に示すような構成としてもよい。具体的には、収容部2の上面に石英窓43を設けており、収容部2の外部に、石英窓43を通して膜厚測定計41から照射された光をテーブル5上のシリコン基板Sに向けて反射するミラー44と、テーブル5上のシリコン基板Sで反射した光を膜厚測定計41に向けて反射するミラー45とを設けている。この構成とすれば、ミラーの枚数を減らすことができるし、収容部2の空間2h内にミラーを設置しなくてもよくなるので、装置の構成をより簡素化できる。しかも、収容部2の空間2h内にレジストRの剥離に必要な物体以外を設けないので、ラジカル流の不均一化によるレジストRの剥離が不均一化したり収容部2内のスペース利用効率が低下したりする等の問題が生じることもない。
【実施例】
【0077】
本発明のレジスト剥離方法によるレジスト剥離効果を確認した。
実験では、水素に酸素を添加した混合ガスを使用してレジスト剥離を行った場合において、種々の条件を変化させて、各条件がレジストの剥離速度に与える影響を確認した。
【実施例】
【0078】
(実験装置)
実験では、上述したレジスト剥離装置(図1参照)と同等の構造を有する装置を使用した。レジスト剥離装置は、収容部内に直流電流源(高砂(株)、EX-750L2)に接続された触媒体(タングステン製フィラメント;純度99.95%、直径0.7mm、長さ500mm、ニラコ(株))を有するものを使用した。
【実施例】
【0079】
レジスト剥離装置には、油回転真空ポンプ(ULVAC JAPAN、D-330DK)が設けられている。この油回転真空ポンプによって、収容部内の気体(例えば、レジストが分解・剥離された分解生成物)を排気するとともに、収容部内の圧力を所定の圧力に維持した。
【実施例】
【0080】
レジスト剥離装置の収容部に供給する混合気体には、微量の酸素(純度99.5%岩谷産業(株))を添加した水素(純度99.998%住友精化(株))を使用した。この混合気体をレジスト剥離装置の側面から収容部に供給した。なお、酸素および水素の流量は、それぞれ質量流量計(SEC-400MK3 STEC(酸素)、SEC-400MK2 STEC(水素))により調整した。
【実施例】
【0081】
処理対象となる基板には、シリコン基板に一般的なノボラック系ポジ型レジスト(東京応化工業(株)、OFPR-800)を形成したものを使用した。レジストは、シリコン基板上に2600rpmで20秒間回転塗布(KYOWARIKEN、K-359 S-1)したのち、ホットプレートにて100℃で1分間ベークした。なお、初期膜厚は表面形状測定器(TOKYO SEIMITSU、SURFCOM 480A)で測定した。
【実施例】
【0082】
なお、レジスト剥離処理中の触媒体の温度は、2波長赤外放射温度計(IMPAC ELECTRONIC製、ISR12-L0)により計測した。
また、基板温度は、熱電対式温度計で測定した。そして、この測定温度に基づいて、基板温度調整器(冷却器:EYELA製、CCA-1100、加熱器:ヒータ線)によって基板温度を所定の温度に維持した。
また、レジスト膜厚は、光干渉計測で測定した。測定光源には波長532nmのレーザ(LASER-ELEMENT、LCM-RGB-011LN)を使用し、受光素子にはフォトトランジスタ(新日本無線(株)、NJL7502L)を使用した。なお、レーザ光のレジストへの入射角は約70°、入射偏光はs偏光とした。
【実施例】
【0083】
(予備試験)
まず、上述したようなレジスト剥離装置によってレジストを剥離した際のレジスト剥離速度および平均基板温度を決定するために、予備試験を行った。予備実験における実験条件を表1に示す。
【表1】
JP2016213328A_000003t.gif

【実施例】
【0084】
予備実験において、レジスト剥離中の反射光強度および基板温度の変化を測定したところ、図3(A)に示すような結果が得られた。この結果から、レジスト剥離速度およびそのときの平均基板温度を次の数1、数2で定義した。以下の実験結果において、レジスト剥離速度および平均基板温度は、数1、数2を用いて算出したものである。
なお、nはレジストの屈折率(1.66)、λはレーザ波長(532nm)である。
【実施例】
【0085】
レジスト剥離速度:
【数1】
JP2016213328A_000004t.gif

平均基板温度
【数2】
JP2016213328A_000005t.gif

【実施例】
【0086】
(酸素添加量の影響)
つぎに、レジスト剥離速度に酸素添加量が与える影響を確認した。
実験では、酸素添加量を、0、0.3、0.5、1.0、2.0vol%と変化させて、各添加量でのレジスト剥離速度を確認した。なお、その他の条件は、表1の条件で行った。
【実施例】
【0087】
結果を図3(B)に示す。
図3(B)に示すように、酸素添加量が0.5vol%でレジスト剥離速度が最大となった。そのときの剥離速度は、水素ラジカルのみの場合(0vol%)の1.4倍であり、酸素を添加することで、剥離速度を大幅に向上できることを確認した。
一方、それ以上の酸素添加量では、水素ラジカルのみの場合(0vol%)よりもレジスト剥離速度は速いものの、レジスト剥離速度は低下した。この理由は、過度の酸素添加は触媒体の酸化劣化および水素ラジカルの減少を招くため、剥離速度が低下するものと考えられる。
【実施例】
【0088】
(基板温度と酸素添加量の影響)
つぎに、基板温度と酸素添加量がレジスト剥離速度に与える影響を確認した。
実験では、酸素添加量を0、0.3、0.5、1.0、2.0vol%と変化させ、かつ、基板温度を70~150℃まで変化させて、レジスト剥離速度を確認した。なお、その他の条件は、表1の条件で行った。
【実施例】
【0089】
結果を図4(A)に示す。
図4(A)に示すように、水素ラジカルのみの場合は、基板温度に対してレジスト剥離速度は線形に増加した。一方、酸素添加すると、およそ110℃以上でレジスト剥離速度が指数関数的に増加した。これは、反応性の高い水酸基ラジカルが生成したからであると考えられる。
【実施例】
【0090】
なお、110℃以上におけるレジスト剥離速度の増加の割合の違いは、水酸基ラジカルが存在することにより、従来の水素ラジカルのみの場合とは異なる反応が起こっていることを示唆している。
【実施例】
【0091】
(高速剥離の条件検討)
レジストをより高速に剥離できる条件を検討した。高速化を図るために、実験条件は表2に示すように変更し、各条件を以下のように設定した。
【実施例】
【0092】
まず、酸素添加量は、図3(B)の結果で最速条件となった0.5sccm(=0.5vol%、水素ガスが100sccmのため)とした。
つぎに、触媒体温度を高くすることでラジカルを高濃度に生成できるので、触媒体温度を2200℃まで上昇させた。また、触媒体温度を高温にすることにより、高いエネルギーの水素ラジカルを生成できる。
さらに、触媒体と基板との距離を近づけることにより高いエネルギーの水素ラジカルをレジストと反応させることできるので、触媒体と基板との距離を20mmまで近づけた。
【実施例】
【0093】
図4(B)に結果を示す。
酸素添加量0.5sccmにおいて、レジスト剥離速度の向上が確認できた。一方で、約1700nm/minで剥離速度の頭打ちが起こった。これは、チャンバー内において、ガス(レジストの分解生成物)のよどみが発生したことが原因と考えられる。
【実施例】
【0094】
【表2】
JP2016213328A_000006t.gif

【実施例】
【0095】
(よどみの解消方法の検討)
図4(B)で見られた剥離速度の頭打ちの原因であるよどみがガスの循環不良によるものと想定し、ガスの循環を良好にするために容器内を減圧することが有効と考えた。実験条件を表3に示すように変更した。触媒体温度は2200℃とした。酸素は添加せず、水素ガス流量は100sccmに固定した。なお、水素ガス圧力は、よどみの状況を把握するために、一般的な水素ラジカルによるレジスト剥離を行う場合の圧力よりも低い、5~40Paの間で調整した。
【実施例】
【0096】
図5に結果を示す。
図5(A)は、平均基板温度に対するレジスト剥離速度をプロットしたものである。図5(A)に示すように、レジスト剥離速度は各水素ガス圧力において基板温度に対してほぼ指数関数的に増加した。
【実施例】
【0097】
また、図5(B)は、平均基板温度が120℃において、各水素ガス圧力に対するレジスト剥離速度をプロットしたものである。図5(B)に示すように、レジスト剥離速度は水素ガス圧力の低下とともに大幅に増加した。1700nm/min(1.7μm/min)においても剥離速度の頭打ちは見られないことから、よどみを解消できたと考えられる。
【表3】
JP2016213328A_000007t.gif

【実施例】
【0098】
(よどみの解消)
実験条件を表4に示すように変更し、圧力を5Paまで減圧した。圧力を減圧にすることにより、ガス滞在時間が短くなり、よどみの解消が期待できる。しかも、水素ラジカルの持つエネルギーを損なうことなく基板まで到達させることができるため、反応速度の向上が期待できる。
【実施例】
【0099】
図6に結果を示す。
図6に示すように、図4(B)で見られたようなレジスト剥離速度の頭打ちが解消された。基板温度がおよそ90℃以上で剥離速度が増加しはじめており、110℃程度で4μm/minを達成している。つまり、この条件とすることにより、低温においてレジスト剥離の高速処理が実現できることが確認された。
【表4】
JP2016213328A_000008t.gif

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のレジスト剥離方法は、半導体デバイスや微小電気機械システム等に使用する基板の表面に形成されたレジストを剥離する方法として適している。
【符号の説明】
【0101】
1 レジスト剥離装置
2 収容部
3 圧力調整手段
10 触媒体
10a 螺旋状構造部
20 混合気体供給部
25 酸素供給部
40 膜厚測定手段
41 膜厚測定計
42 光学系
S シリコン基板
R レジスト
A 混合気体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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