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明細書 :上皮間葉系転換に着目した早期肺腺癌悪性度診断マーカーの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-211928 (P2016-211928A)
公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
発明の名称または考案の名称 上皮間葉系転換に着目した早期肺腺癌悪性度診断マーカーの利用
国際特許分類 G01N  33/574       (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
C07K  14/71        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
FI G01N 33/574 ZNAA
G01N 27/62 V
C07K 16/18
C07K 14/47
C07K 14/705
C07K 14/71
C07K 16/28
請求項の数または発明の数 24
出願形態 OL
全頁数 28
出願番号 特願2015-094599 (P2015-094599)
出願日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明者または考案者 【氏名】岡山 明子
【氏名】堀内 弥生
【氏名】梁 明秀
【氏名】平野 久
【氏名】宮城 洋平
【氏名】中山 治彦
【氏名】伊藤 宏之
【氏名】尾下 文浩
【氏名】横瀬 智之
【氏名】山田 耕三
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
【識別番号】510126379
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立病院機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
4H045
Fターム 2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041KA01
2G041LA08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA86
4H045EA50
要約 【課題】 早期肺腺癌の再発・転移の予測に有効な悪性度診断マーカーを用いた検査方法およびそのキットを提供すること。
【解決手段】 被検者由来の検体について、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することを含む、早期肺腺癌の悪性度検査法。TrkCの516番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、TNS1の1404番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化を検出できる試薬からなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、早期肺腺癌の検査キット。抗体、ペプチドも提供される。
【選択図】 図5
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者由来の検体について、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することを含む、早期肺腺癌の悪性度検査法。
【請求項2】
TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定する請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を検出することを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定する請求項3記載の方法。
【請求項5】
被検者由来の検体が、肺腺癌組織、血清、全血又は尿である請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCに対する抗体、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1に対する抗体、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を用いた抗原抗体反応により、リン酸化されたタンパク質の発現量を測定する請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
さらに、c-Metの1234番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体及び/又はc-Metの1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体を用いた抗原抗体反応により、リン酸化されたc-Metの発現量を測定する請求項6記載の方法。
【請求項8】
多重反応モニタリング(MRM)分析により、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出する請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を多重反応モニタリング(MRM)分析により検出する請求項8記載の方法。
【請求項10】
下記の表に示す条件で多重反応モニタリング(MRM)分析を行う請求項9記載の方法。
JP2016211928A_000009t.gif
【請求項11】
検査が手術前及び/又は手術後に行われる請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
TrkCの516番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、TNS1の1404番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化を検出できる試薬からなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、早期肺腺癌の検査キット。
【請求項13】
さらに、c-Metの1234及び/又は1235番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬を含む、請求項11記載のキット。
【請求項14】
試薬が抗体である請求項11又は12記載のキット。
【請求項15】
SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体であって、C+TPLGA(pS)LDEQSを免疫原として得られた抗体。
【請求項16】
N末端にCysが付加されていてもよいTPLGA(pS)LDEQSのアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項17】
7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいAGSLPNYATINGK、7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいDMYDKEYYSVHNK、9番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N4同位体標識されていてもよいIPVIENPQYFR、6番目のセリンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項18】
AGSLPNYATINGK、DMYDKEYYSVHNK、IPVIENPQYFR及びTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであって、前記アミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸がリン酸化及び/又は標識されていてもよい前記ペプチド。
【請求項19】
被験者由来の検体について、SSFA2のレベルを測定することを含む、肺腺癌の検査方法。
【請求項20】
SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルが高い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が高いと判定し、前記レベルが低い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が低いと判定する請求項19記載の方法。
【請求項21】
被験者が肺腺癌の治療を受けている患者であり、SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルを異なる時期に複数回測定し、前記レベルが低下した場合に、治療により肺腺癌から回復したと判定し、前記レベルが低下しない場合に、治療により肺腺癌から回復していない、あるいは、回復が不十分であると判定する請求項19載の方法。
【請求項22】
被験者由来の検体が、癌組織、血清、全血又は尿である請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
SSFA2を特異的に検出できる試薬を含む、肺腺癌の検査キット。
【請求項24】
試薬が抗体である請求項23記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮間葉系転換に着目した早期肺腺癌悪性度診断マーカーの利用に関し、より詳細には、上皮間葉系転換に着目した早期肺腺癌悪性度診断マーカーを用いた検査方法およびそのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺腺癌は一般的に転移や再発がし易いために悪性度の高い癌として知られており、I期肺腺癌症例において、外科的に切除しても20%は再発する。そのため、その群には、再発・転移予防のための術後療法が必要である。しかし、I期肺腺癌症例の全員に必要な治療ではない。そのため、切除癌組織を用いて再発・転移のリスクを予測することができれば、予後不良の患者群にのみ、的確な術後療法を行える一方、予後良好な患者群には不必要な治療を行うリスクを軽減することができる。癌の診断にはX線CTやMRIなどの画像診断のほか、18F(フッ素18)を標識したフルオロデオキシグルコース(18F-FDG)を用いたPET(Positron Emission Tomography)検査、特定の癌に特異的に発現する癌マーカーを組織免疫染色で検出する方法や血液、組織中に漏出する癌マーカーなどを検出する方法が用いられている。肺腺癌予後予測マーカーに関する特許としては、肺癌手術組織のesRAGE(Endogenous Secretory Receptor for Advanced Glycation End products)発現を測定する方法(特許第4779115号:特許文献1)、I期肺腺癌組織の細胞におけるACTN4のmRNAコピー数を測定する方法(WO2011122634 A1:特許文献2)などがある。
【0003】
従来の胸部レントゲン写真や CT, MRI では、癌が転移・再発する可能性を診断するための正確な情報を得ることは困難である。PET検査は、人体に影響が出るほどの量ではないが放射線をおびた検査薬を体内に注射するので放射線被曝があり、そのため、妊産婦や授乳中の女性は検査を受けることができない。組織免疫染色は、固定した組織標本に適した特異性の高い抗体が必要である上、組織を固定する段階での抗原性の減弱や失活・消失、固定ムラによる抗原への反応性の違いなどにより、正確に診断できない場合がある。特に免疫染色でのリン酸化タンパク質の検出は困難である。CEA、CYFRA21-1、Pro-GRPは肺癌診断に使用されている分子マーカーであるが、早期癌では感度が不十分である上、予後予測マーカーとしては十分ではない。また、予後予測マーカーを利用して、予後診断のために市販されている診断薬はまだない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4779115号
【特許文献2】WO2011122634 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、早期肺腺癌の再発・転移の予測に有効な悪性度診断マーカーを用いた検査方法およびそのキットを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、早期肺腺癌の再発・転移の予測に有効な悪性度診断マーカーを用いた検査に利用可能な抗体を提供することも目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、早期肺腺癌の再発・転移の予測に有効な悪性度診断マーカーを用いた検査に利用可能な内部標準ペプチドを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、I期肺腺癌症例において、癌組織が再発・転移しやすい細胞を含むかどうかを指標として予後を予測することを検討した。そのような細胞を含む癌組織の場合、再発・転移する(している)可能性が非常に高く、そのような細胞を検出する方法を確立することで、I期肺腺癌症例の予後を的確に予測することができる。具体的には、癌の悪性化、特に癌細胞の浸潤や転移の促進にかかわる上皮間葉系転換(EMT)誘導細胞で発現が亢進しているタンパク質のリン酸化(肝細胞増殖因子受容体[Hepatocyte growth factor receptor, c-Met]の1234/1235番目のチロシン、NT3受容体チロシンキナーゼ [Neurotrophic Tyrosine Kinase Receptor , TrkC]の516番目のチロシン、テンシン-1 [tensin 1, TNS1]の1404番目のチロシン、精子特異的抗原 2 [Sperm-specific antigen 2, SSFA2]の92番目のセリンのリン酸化)を診断マーカーとし、それを指標として、切除癌組織を用いて診断する。診断法としては、組織標本から抽出したタンパク質を用い、診断マーカーの発現量についてはリン酸化特異的抗体を用いたイムノブロット分析、もしくは質量分析装置を用いた多重反応モニタリング(MRM)分析により行う方法を見出した。さらに、多重反応モニタリング(MRM)分析に必要な内部標準用ペプチドの合成やイムノブロット分析で92番目のセリンでリン酸化されたSSFA2を検出するための抗体を作成した。これにより、より簡便かつ高感度にI期肺腺癌の予後を予測することが可能になった。I期肺腺癌症例において、予後不良群(術後5年以内に再発した患者群)9症例と予後良好群(術後5年以内に再発しなかった)9症例の外科切除癌組織を用いて多重反応モニタリング(MRM)分析を行った結果、c-Metの1234/1235番目のチロシンリン酸化、TrkCの516番目のチロシンリン酸化、TNS1の1404番目のチロシンリン酸化全てにおいて、予後不良群と予後良好群間の発現量に統計的に有意な差(p<0.0001)を認めた。また、c-Metの1234/1235番目のチロシンリン酸化、TrkCの516番目のチロシンリン酸化については、各リン酸化部位特異的抗体を用いたイムノブロット分析によっても発現量の違いを確認することができた。一方、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化についても、I期肺腺癌症例において、予後不良群20症例と予後良好群31症例の外科切除癌組織を用いた多重反応モニタリング(MRM)分析の結果、予後不良群と予後良好群間の発現量に統計的に有意な差(p<0.005)を認め、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化に対する特異的抗体を用いたイムノブロット分析によっても発現量の差を確認することができた。また、SSFA2は予後不良および予後良好群の癌部でのみ発現していた。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。本発明の要旨は以下の通りである。
(1)被検者由来の検体について、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することを含む、早期肺腺癌の悪性度検査法。
(2)TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定する(1)記載の方法。
(3)さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を検出することを含む(1)又は(2)記載の方法。
(4)c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定する(3)記載の方法。
(5)被検者由来の検体が、肺腺癌組織、血清、全血又は尿である(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCに対する抗体、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1に対する抗体、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を用いた抗原抗体反応により、リン酸化されたタンパク質の発現量を測定する(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)さらに、c-Metの1234番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体及び/又はc-Metの1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体を用いた抗原抗体反応により、リン酸化されたc-Metの発現量を測定する(6)記載の方法。
(8)多重反応モニタリング(MRM)分析により、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出する(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(9)さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を多重反応モニタリング(MRM)分析により検出する(8)記載の方法。
(10)下記の表に示す条件で多重反応モニタリング(MRM)分析を行う(9)記載の方法。
JP2016211928A_000003t.gif
【0010】
(11)検査は手術前及び/又は手術後に行われる(1)~(10)のいずれかに記載の方法。
(12)TrkCの516番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、TNS1の1404番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、及びSSFA2の92番目のセリンのリン酸化を検出できる試薬からなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、早期肺腺癌の悪性度検査キット。
(13)さらに、c-Metの1234及び/又は1235番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬を含む、(12)記載のキット。
(14)試薬が抗体である(12)又は(13)記載のキット。
(15)SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体であって、C+TPLGA(pS)LDEQSを免疫原として得られた抗体。
(16)N末端にCysが付加されていてもよいTPLGA(pS)LDEQSのアミノ酸配列からなるペプチド。
(17)7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいAGSLPNYATINGK、7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいDMYDKEYYSVHNK、9番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N4同位体標識されていてもよいIPVIENPQYFR、6番目のセリンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(18)AGSLPNYATINGK、DMYDKEYYSVHNK、IPVIENPQYFR及びTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであって、前記アミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸がリン酸化及び/又は標識されていてもよい前記ペプチド。
(19)被験者由来の検体について、SSFA2のレベルを測定することを含む、肺腺癌の検査方法。
(20)SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルが高い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が高いと判定し、前記レベルが低い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が低いと判定する(19)記載の方法。
(21)被験者が肺腺癌の治療を受けている患者であり、SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルを異なる時期に複数回測定し、前記レベルが低下した場合に、治療により肺腺癌から回復したと判定し、前記レベルが低下しない場合に、治療により肺腺癌から回復していない、あるいは、回復が不十分であると判定する(19)記載の方法。
(22)被験者由来の検体が、癌組織、血清、全血又は尿である(19)~(21)のいずれかに記載の方法。
(23)SSFA2を特異的に検出できる試薬を含む、肺腺癌の検査キット。
(24)試薬が抗体である(23)記載のキット。
【0011】
本発明は、早期肺腺癌、特に、I期(IA期及びIB期)非小細胞肺癌に対して、有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、早期肺腺癌患者に対して、予後予測のための悪性度スクリーニング検査を正確かつ、高い感度で行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】TGF-β処理によるA549細胞におけるEMT誘導イムノブロット分析により細胞溶解物中のE-カドヘリンおよびビメンチン量を調べた結果、βアクチンの発現量は同じだが、TGF-β処理に応答してE-カドヘリン量は減少し、ビメンチン量は増加することを確認した(A)。また、形態学的変化を調べた結果、TGF-β処理によりA549細胞は上皮細胞様形態から紡錘状線維芽細胞様の形態への変化することを確認した(B)。TGF-β( - ):TGF-β非処理細胞、 TGF-β(+): TGF-β処理細胞
【図2】TGF-β処理した細胞中での各タンパク質量各特異的抗体を用いたイムノブロット分析の結果、TGF-β処理により、細胞中のTrkC、TNS1、c-Metのタンパク質量は変化しないが、516番目のチロシンでリン酸化されたTrkC量と1234および/又は1235番目のチロシンでリン酸化されたc-Met量は増加することを確認した。TGF-β( - ):TGF-β非処理細胞、 TGF-β(+): TGF-β処理細胞
【図3】TGF-β処理した細胞中での各ペプチド量TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(A)、c-Metの1234/1235番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(B)、TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(C)は、多重反応モニタリング(MRM)分析の結果、全てにおいてTGF-β非処理細胞とTGF-β処理細胞間で統計的に有意な差(p<0.001)を示した。一方、脱リン酸化処理した試料におけるこれらの非リン酸化ペプチド量に統計的に有意な差はなかった(D、E、F)。TGF-β( - ):TGF-β非処理細胞、 TGF-β(+): TGF-β処理細胞【図7】アルカリホスファターゼによる脱リン酸化効率抗リン酸化チロシン抗体(PY20)(Santa Cruz Biotechnology)を用いて、脱リン酸化処理前後の細胞内リン酸化タンパク質を検出し、多くのタンパク質が脱リン酸化されていることを確認した。CIAP+:脱リン酸化処理した細胞抽出タンパク質CIAP-:脱リン酸化処理しなかった細胞抽出タンパク質
【図8】TGF-β処理した細胞中で各タンパク質量の測定。各特異的抗体を用いたイムノブロット分析の結果TGF-β処理により、細胞中のSSFA2のタンパク質量は変化しないが、92番目のセリンでリン酸化されたSSFA2量は増加することを確認した。TGF-β( - ):TGF-β非処理細胞、 TGF-β(+): TGF-β処理細胞
【図9】I期肺腺癌外科切除癌組織中でのタンパク質量各特異的抗体を用いたイムノブロット分析結果、予後不良群と予後良好群両患者群の癌部でのみSSFA2が発現していることが確認できた(A)。さらに、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたタンパク質量をリン酸化部位特異的抗体を用いたイムノブロット分析により調べた結果、予後良好群の癌部に比べて、予後不良群の癌部で発現量が増加していることがわかった(B)。
【図10】I期肺腺癌外科切除組織中での各ペプチド量予後不良群は20症例または17症例、予後良好群は31症例または32症例のI期肺腺癌外科切除癌組織を、それぞれ用いて多重反応モニタリング(MRM)分析によりリン酸化ペプチド量または非リン酸化ペプチド量の定量を行った。その結果、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたペプチド量(左)は予後良好群と予後不良群間で統計的に有意な差(p<0.005)を認めた。一方、脱リン酸化処理した試料におけるこれらの非リン酸化ペプチド量に統計的に有意な差はなかった(右)。GP:予後良好群、PP:予後不良群、S[Pho]:リン酸化セリン、N.S.:non-significant【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0015】
本発明は、被検者由来の検体について、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することを含む、早期肺腺癌の悪性度検査法を提供する。

【0016】
TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定することができる。

【0017】
本発明の方法において、さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を検出してもよい。

【0018】
c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化が亢進している場合に、早期肺腺癌が転移及び/又は再発する可能性が高いと判定することができる。

【0019】
被検者由来の検体としては、肺腺癌組織、血清、全血、尿などを例示することができる。

【0020】
TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCに対する抗体、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1に対する抗体、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を用いた抗原抗体反応により、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することができる。

【0021】
さらに、c-Metの1234番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体及び/又はc-Metの1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに対する抗体を用いた抗原抗体反応により、リン酸化されたc-Metの発現量を測定してもよい。

【0022】
抗原抗体反応を利用して、ELISAやイムノブロットにより、リン酸化タンパク質の発現量を測定することができる。

【0023】
また、多重反応モニタリング(MRM)分析により、TrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、SSFA2の92番目のセリンからなる群より選択される少なくとも1つの部位のリン酸化を検出することもできる。

【0024】
さらに、c-Metの1234/1235番目の一方又は両方のチロシンのリン酸化を多重反応モニタリング(MRM)分析により検出してもよい。

【0025】
本発明の一実施態様において、下記の表に示す条件で多重反応モニタリング(MRM)分析を行うことができる。
JP2016211928A_000004t.gif

【0026】
*Y[Pho]またはS[Pho];リン酸化チロシンまたはリン酸化セリンを表す
*[13C6,15N2]; 13Cを6個と15Nを2個で安定同位体標識されたK(リシン)を含むペプチド
*[13C6,15N4]; 13Cを6個と15Nを4個で安定同位体標識されたR(アルギニン)を含むペプチド

【0027】
また、検査は、手術前及び/又は手術後に行うことができる。

【0028】
本発明は、TrkCの516番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、TNS1の1404番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化を検出できる試薬からなる群より選択される少なくとも1つの試薬を含む、早期肺腺癌の悪性度検査キットも提供する。

【0029】
本発明のキットは、さらに、c-Metの1234及び/又は1235番目のチロシンのリン酸化を検出できる試薬を含んでもよい。

【0030】
試薬としては、抗体が好ましく、516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCに特異的に結合する抗体、1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1に特異的に結合する抗体、92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に特異的に結合する抗体、1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに特異的に結合する抗体であるとよい。516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCに特異的に結合する抗体、1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1に特異的に結合する抗体、1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに特異的に結合する抗体は市販されており、利用可能である。92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に特異的に結合する抗体は、C+TPLGA(pS)LDEQSを免疫原として動物に接種した後、この動物から採取することにより、本発明者らが自作した。よって、本発明は、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体であって、C+TPLGA(pS)LDEQSを免疫原として得られた抗体を提供する。

【0031】
抗体は、放射性同位元素、酵素、発光物質、蛍光物質、ビオチンなどで標識されてもよい。また、ターゲット分子(本発明では、516番目のチロシンがリン酸化されたTrkC、1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1、92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2、1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Met)に特異的に結合する一次抗体の反応後、この一次抗体に結合する二次抗体を反応させて、ターゲット分子の検出を行う場合には、二次抗体を標識するとよい(一次抗体は標識しない)。

【0032】
この他、本発明のキットには、標準タンパク質(ELISAやイムノブロットによる分析の場合、516番目のチロシンがリン酸化されたTrkC、1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1、92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2、1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Met)、内部標準ペプチド(多重モニタリング(MRM)分析の場合、516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCの部分ペプチド、1404番目のチロシンがリン酸化されたTNS1の部分ペプチド、92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2の部分ペプチド、1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metの部分ペプチドなど)、バッファー、基質(抗体が酵素標識されている場合)、反応停止液、洗浄液、反応容器、使用手引書などを含めてもよい。

【0033】
さらに、本発明は、N末端にCysが付加されていてもよいTPLGA(pS)LDEQSのアミノ酸配列からなるペプチドも提供する。これらのペプチドは、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体を得るための免疫原として利用可能である。

【0034】
さらにまた、本発明は、7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいAGSLPNYATINGK、7番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいDMYDKEYYSVHNK、9番目のチロシンがリン酸化及び/又は13C6, 15N4同位体標識されていてもよいIPVIENPQYFR、6番目のセリンがリン酸化及び/又は13C6, 15N2同位体標識されていてもよいTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。もしくは、AGSLPNYATINGK、DMYDKEYYSVHNK、IPVIENPQYFR及びTPLGASLDEQSSSTLKからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドであって、前記アミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸がリン酸化及び/又は標識されていてもよい前記ペプチドを提供する。これらのペプチドは、多重モニタリング(MRM)分析における内部標準用のペプチドとして利用可能である。
さらに、本発明は、被験者由来の検体について、SSFA2のレベルを測定することを含む、肺腺癌の検査方法を提供する。

【0035】
SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルが高い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が高いと判定し、前記レベルが低い場合に、肺腺癌に罹患している可能性が低いと判定することができる。よって、本発明の方法は、肺腺癌の診断(肺腺癌への罹患の有無の判定)に利用できる。

【0036】
また、被験者が肺腺癌の治療を受けている患者であれば、SSFA2について、被験者由来の検体中のレベルを異なる時期に複数回測定し、前記レベルが低下した場合に、治療により肺腺癌から回復したと判定し、前記レベルが低下しない場合に、治療により肺腺癌から回復していない、あるいは、回復が不十分であると判定することができる。よって、本発明の方法は、肺腺癌の病状の変化、現在の病状、予後の検査や肺腺癌の治療効果の確認にも利用できる。

【0037】
被験者由来の検体としては、癌組織、血清、全血、尿などを例示することができる。

【0038】
本発明は、SSFA2を特異的に検出できる試薬を含む、肺腺癌の検査キットも提供する。

【0039】
試薬としては、抗体が好ましく、SSFA2に特異的に結合する抗体であるとよい。このような抗体は、市販されており、利用可能である。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよい。抗体は、放射性同位元素、酵素、発光物質、蛍光物質、ビオチンなどで標識されてもよい。また、ターゲット分子(SSFA2)に特異的に結合する一次抗体の反応後、この一次抗体に結合する二次抗体を反応させて、ターゲット分子の検出を行う場合には、二次抗体を標識するとよい(一次抗体は標識しない)。抗原抗体反応を利用して、ELISAやイムノブロットにより、SSFA2の発現量を測定することができる。

【0040】
この他、本発明のキットには、標準タンパク質(SSFA2)、バッファー、基質(抗体が酵素標識されている場合)、反応停止液、洗浄液、反応容器、使用手引書などを含めてもよい。

【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
緒 言
現在の癌医療において、その多くは、早期に発見し外科的に切除することにより、良好な治療成績が得られる。しかし、転移や再発がしやすいために一般に悪性度の高い癌として知られ、先進国の癌による死亡の主要な原因になっている肺腺癌では、早期に肺腺癌患者から罹患部を外科的に切除した場合でも20%は再発し手術後5年以内に死亡している1,2。このことは、早期の癌でも、より進行した癌と同様、術後すぐに化学療法などの補助療法が必要であることを示している。しかし、残り80%には、このような治療は不要であり、このような状況から、様々な補助治療を必要とする再発のリスクをもった患者を、的確に見分けることができる診断マーカーの開発が求められている。これまで、肺腺癌においては手術直後に採取した肺腺癌組織を用いて予後良好群および予後不良群間で発現量が異なるタンパク質を特定して、予後予測マーカー候補タンパク質をいくつか見いだしている3-5。しかし、上皮間葉系転換(Epithelial-Mesenchymal Transition, EMT)誘導に関連したリン酸化の変動に着目して予後予測マーカーを探索する研究が行われたことはない。
【実施例】
【0042】
EMTは、上皮細胞が細胞間接着を失い、間葉系様(非上皮)細胞に形態変化する現象であり、その誘導にTGF-β(β型変異増殖因子)が関与することがわかっている6-11。EMTが誘導された細胞は、運動能・浸潤能をもつようになり、癌の浸潤や転移が引き起されることが示唆されている6-11。そのため、TGF-βが引き起こすEMT誘導に関連するリン酸化タンパク質を検出し、腫瘍組織におけるEMT誘導細胞の存在を検出することができる分子を発見することは、EMT誘導(癌細胞の浸潤や転移のしやすさ)を指標にして予後を予測する新規悪性度診断マーカーの開発につながる可能性が高い。
【実施例】
【0043】
そこで、本研究では、癌の悪性化に関与するEMT誘導細胞におけるリン酸化タンパク質の特異的な変動をとらえ、それらが早期肺腺癌患者由来の組織検体においても、予後良好および不良と相関して変動するかどうかをイムノブロット分析と多重反応モニタリング(MRM)分析によって確認した。
【実施例】
【0044】
材料および方法
細胞培養
A549細胞(ヒト肺腺癌細胞株)は10%(w / v)ウシ胎児血清(FBS)を添加したRPMI-1640培地(ナカライテスク、京都、日本)を用いて、37℃に固定した5% CO2インキュベーター内で培養した。TGF-β処理は、細胞を低血清(0.1%FBS)培地中で24時間培養した後、TGF-β(HumanZyme, Chicago, IL, USA、最終濃度5 ng / mL)を添加した培地で48時間培養することで行った。一方、 TGF-β非処理は、TGF-βを溶解した溶媒(DMSO)のみを添加した培地で48時間培養することで行った。
【実施例】
【0045】
組織検体
組織検体を研究等に用いることに同意した、早期段階(Ia又はIb)肺腺癌患者18人から摘出した癌組織で、本研究に使用するまで-80℃で保存した凍結組織検体を神奈川県立がんセンターから入手した(表1)。内訳は、摘出後5年以内に再発を呈した予後不良な患者群9症例と手術後5年以内に再発を示さなかった予後良好な患者群9症例である。
【実施例】
【0046】
タンパク質調製
採取した細胞または組織を、Sample Grinding Kit(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を使用して、8 M尿素、4%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム、Protease Inhibitor Mix(GE Healthcare)およびPhosphatase Inhibitor Cocktail 2と3(Sigma, Madison, WI, USA)を含む50 mM重炭酸アンモニウム溶液中で破砕した。破砕物はUR-21P(TOMY、東京、日本)で5回(1秒間隔)超音波処理した後、15,000g (4℃)で15分間遠心分離して上清を回収し、これをタンパク質抽出液とした。脱リン酸化処理については、50μg相当の タンパク質に対して、10 unit アルカリホスファターゼ(CIAP、宝酒造、東京、日本)を37℃で1時間反応させることで行った。
【実施例】
【0047】
イムノブロット分析
タンパク質抽出液は、SuperSepTMAce (10%T, 17ウェル)(和光純薬)を用いて分離し、Trans-Blot(登録商標) TurboTM Transfer System (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を使用してPVDF膜に転写した。その後PVDF膜を、5%(w/v) スキムミルク(森永乳業、日本)を含むT-PBS(最終濃度 10 mM Na2HPO4・12H2O, 1.8 mM KH2PO4, 0.137 M NaCl, 2.7 mM KCl, 0.05%[v/v] Tween20)と1時間反応させることで非特異的反応を抑制するためのブロッキング操作を行った。一次抗体については、ウサギ抗テンシン1抗体 (Abcam, MA, USA)、ウサギ抗c-Met抗体(MBL、名古屋、日本)、ウサギ抗リン酸化c-Met[Tyr1234/1235]抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗TrkC抗体(R&D, Minneapolis, MN, USA)、ウサギ抗リン酸化TrkC[Tyr516]抗体 (EnoGene, New York, NY, USA)、マウス抗E-カドヘリン抗体(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)、ウサギ抗ビメンチン抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗アクチンβ抗体(H-196, Santa Cruz Biotechnology, Dallas, TX, USA)、抗リン酸化チロシン抗体(PY20, Santa Cruz Biotechnology)を5%(w/v)スキムミルクを含むT-PBSで1,000倍希釈したものを使用し、12時間以上反応させた。反応後、PVDF膜をT-PBSで洗浄後、二次抗体としてペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗ウサギIgG抗体もしくはヤギ抗マウスIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology)を5%(w/v) スキムミルクを含むT-PBSで5,000倍希釈したものを使用し、1時間反応させた。反応後、PVDF膜はT-PBSで洗浄し、HRP基質であるECL Plus Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare)と5分間反応させた。各タンパク質のシグナルはLAS4000mini発光イメージアナライザ(GE Healthcare)を用いて検出した。
【実施例】
【0048】
ペプチド溶液の調製
タンパク質抽出液に終濃度が10 mMになるようにDTTを添加し、室温に45分間置いて還元した。還元後、終濃度が5 mMになるようにヨードアセトアミドを添加して、室温で30分間反応させシステイン残基をアルキル化した。その後、15分間10,000gで遠心分離を行い上清を回収し、50 mM重炭酸アンモニウムを上清の3倍量添加して、尿素の終濃度が2 Mとなるよう希釈した。NanoDrop 2000c(Thermo Fisher Scientific, Bremen, Germany)を用いてタンパク質定量を行った後、1 mg相当のタンパク質に対して、トリプシン(Sigma)を、タンパク質:トリプシン(酵素)の比20:1(w/w)になるように添加し、16時間37℃で温置した。消化物の1/20 量の20%(v/v) TFAを添加後、5分間15,000g (4℃)で遠心分離を行い上清を回収し、添加相間移動溶解法(PTS法)によりペプチド溶液中に含まれるデオキシコール酸ナトリウムを除去した12。回収したペプチド溶液は一旦乾燥させた後、0.1 % トリフルオロ酢酸に再溶解してから、Sep-PakR C18 Plus Short Cartridge (Waters, Milford, MA, USA)を用いて脱塩し、乾燥させた。トリプシン消化物(1mg)中のチロシンリン酸化ペプチドの濃縮には、Phospho-Tyrosine Mouse mAb (P-Tyr-100) beads (Cell Signaling Technology, Boston, USA)を用いた抗原抗体反応を利用した13。その後、回収したペプチドについては、C18 フィルターを用いたチップカラム(C18 Stage Tip)を使用してペプチドを濃縮・脱塩した14。各ペプチドは質量分析まで、乾燥させた状態で-20℃で保存した。
【実施例】
【0049】
多重反応モニタリング(MRM)分析によるペプチド定量
多重反応モニタリング(MRM)分析についてはDiNa-AP (KYA Technologies, 東京, 日本)を連結したTripleTOF5600システム(AB Sciex, Foster City, CA, USA)を用いて行った。DiNa-APに接続する濃縮カラムは、HiQ sil C18W-3, 500 μm id × 1mm (KYA Technologies)を、分離カラムはnanoscale HiQ sil C18W-3, 100 μm id × 10 cm (KYA Technologies)を使用し、流速は200 nL/分とした。Aバッファーには、2%(v/v)アセトニトリルを含む0.1%(v/v) ギ酸溶液を、Bバッファーには、80%(v/v) アセトニトリルを含む0.1%(v/v) ギ酸溶液を用いた。ペプチドの吸着は、Aバッファー98%(v/v)、Bバッファー2%(v/v)で行い、溶出は、Bバッファー の濃度を2%から40%に42分間かけて連続的に高くするプログラムを使用して行った。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、イオンスプレー電圧2300Vのポジティブモード、20に設定されたカーテンガスとスプレーガスモードで実行され、分解能はunitに設定、測定質量 (m/z)範囲は 100 から1,600 Daとし、 MS2 accumulation timesは0.1秒に設定した。リン酸化ペプチドおよび安定同位体標識-リン酸化ペプチドの合成はスクラム(東京、日本)で行った(表2)。MRMPilot v2.0(AB Sciex)ソフトウエアを用いて、標的ペプチドのプリカーサーイオン/フラグメントイオン対(MRMトランジション)および衝突エネルギーを自動的に算出した。その中から、最終的に、再現性のあるyイオンとMRMトランジションを選択した(表2)。各ペプチド試料については、各25 fmol濃度の安定同位体標識-リン酸化ペプチドを添加し、定量の際の内部標準として用いた。検量線については0.5、1、5、10、及び50fmolのペプチドを用いて作成し、検量線の精度は20%以内に収めた(%CV<20)。質量分析の結果得られた質量分析データはMultiQuant v.2.1(AB Sciex)を用いて解析し、ペプチド量を算出した。【0050】
統計解析
2群間の差の統計的有意性を示すためのマン・ホイットニー検定、無再発生存期間解析を行うためのカプラン・マイヤー法、受信者動作特性(ROC)曲線解析などの統計解析はGraphPadプリズム5(V. 5.04, GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて行った。
【実施例】
【0051】
結 果
1.TGF-β処理によるA549細胞におけるEMT誘導
各タンパク質特異的抗体を用いたイムノブロット分析の結果からTGF-β処理に応答してA549肺腺癌培養細胞中のE-カドヘリン量が減少し、ビメンチン量が増加することがわかった(図1A)。また、形態学的変化を調べた結果、TGF-β処理によりA549細胞が上皮細胞様形態から紡錘状線維芽細胞様の形態に変化していることを確認した(図1B)。これらの結果はTGF-β処理によるEMT誘導に関する既報7、15と同様の結果であり、本研究に用いたA549細胞もTGF-β処理によりEMT誘導されていると判断した。
2.TGF-β処理したA549細胞中で特異的に変動するチロシンリン酸化タンパク質の検出
質量分析装置を用いたチロシンリン酸化ペプチドの網羅的な相対定量解析から、A549細胞においてTGF-β処理により著しく発現量が増加するリン酸化ペプチドとして、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたペプチド、c-Metの1234/1235番目のチロシンがリン酸化されたペプチド、TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたペプチドを見出した。TrkC、TNS1、c-Metに対する特異的抗体および516番目のチロシンがリン酸化されたTrkCと1234及び/又は1235番目のチロシンがリン酸化されたc-Metに特異的な抗体を用いたイムノブロット分析の結果、これらのタンパク質の細胞内での発現量はTGF-β処理によって変動しないが、各部位でのリン酸化は亢進することが確認された(図2)。また、質量分析装置としてTripleTOF 5600システムを用いた多重反応モニタリング(MRM)分析により、細胞中の各リン酸化ペプチド量および脱リン酸化処理した各試料(図7)に由来する非リン酸化ペプチド量(総ペプチド量)の変動を調べた(図3)。その結果、イムノブロット分析と同様に多重反応モニタリング(MRM)分析によっても、総ペプチド量に有意な差異はなかったが(図3D、E、F)、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図3A)、c-Metの1234/1235番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図3B)、TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図3C)については、全てTGF-β処理に応答して統計的に有意に増加(p<0.001)することが確認された。 外科的手術によって摘出した18名の患者の凍結保存した肺腺癌組織を用いて、5年後に肺腺癌を再発した患者9名(予後不良群,PP)と再発のない患者9名(予後良好群,GP)の組織中のリン酸化タンパク質量について、質量分析装置を用いた多重反応モニタリング(MRM)分析と各特異的抗体を用いたイムノブロット分析により比較した(図4)。多重反応モニタリング(MRM)分析の結果、TNS1の1404番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図4A左)、c-Metの1234/1235番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図4B左)、TrkCの516番目のチロシンがリン酸化されたペプチド量(図4C左)については、全て予後良好群と予後不良群間で統計的に有意な差(p<0.0001)を認めた。一方、脱リン酸化処理した試料におけるこれらの非リン酸化ペプチド量に有意な差はなかった(図4D左、E左、F左)。また、各特異的抗体を用いたイムノブロット分析により、組織中のTrkC、TNS1、c-Metのタンパク質量は変化しないが(図4D右、E右、F右)、1234および/又は1235番目のチロシンでリン酸化されたc-Met量(図4B右)と516番目のチロシンでリン酸化されたTrkC量(図4C右)は増加することを確認した。【0052】
考 察
EMTは、癌の浸潤や転移と関係しており6-11、EMTが誘導される際、発現量が変動するタンパク質は、癌の悪性度に関連するタンパク質である可能性が高い。EMT誘導におけるタンパク質の量的変動について質量分析装置を用いて解析した例はあるが15,16、細胞内情報伝達において重要な役割を担っているリン酸化に着目してタンパク質の変動を調べた例は少ない17,18。本研究において、私たちは、TGF-β処理に応答してTNS1の1404番目のチロシンのリン酸化、c-Metの1234/1235番目のチロシンのリン酸化、TrkCの516番目のチロシンリン酸化が亢進されることを見出した。これらチロシンリン酸化の変動については、特異的抗体を用いた従来型のイムノブロット分析と同様に、多重反応モニタリング(MRM)分析によっても高感度、高精度に検出可能であることが明らかになった。抗体を使った標的タンパク質の検出は高感度で優れた手法ではあるが、検出は特異性の高い抗体の入手に依存してしまう上、新規に抗体を作成するためには数か月もの時間が必要である。一方、多重反応モニタリング(MRM)分析による定量解析では、修飾部位特異的に認識する抗体を作出する必要がなく、翻訳後修飾されたタンパク質の発現量を迅速に評価することができる上、複数のタンパク質を同時に定量することも可能である19,20。また、本研究で多重反応モニタリング(MRM)分析に用いたTripleTOF 5600システムについては、検出に飛行時間(TOF)型質量分析計を用いているために分解能が良く、定量的な分析に適していた。したがって、TripleTOF 5600システムを用いた多重反応モニタリング(MRM) 分析は、本診断マーカーを検出する方法として優れた方法である。
本研究でEMT誘導に関連するリン酸化タンパク質として検出されたTNS1は、アクチンフィラメントに結合してリン酸化チロシンを含むタンパク質と相互作用する細胞接着分子である21,22。TNS1がインテグリンを介して細胞外マトリックスの接着タンパク質に結合すると、FAKの自己リン酸化が起こる。その結果、生じたリン酸化チロシン残基にSrcファミリーのチロシンキナーゼが結合することにより、p130Cas, Shc, paxillin, TNSなどのドッキングタンパク質やアダプタータンパク質のチロシンリン酸化が二次的に誘導される22。このようなタンパク質チロシンリン酸化のカスケードを介して、PI3KからAktに至る経路やGrb2/Sos/RasからMAPKに至る経路が活性化され、細胞の生存が維持され、細胞周期が進行することが、これまで示唆されている21,22。また、TNS1のリン酸化解析についてはHEK293細胞を用いた解析から、多くのセリン/トレオニン/チロシン部位でのリン酸化が検出されているが、各部位でのリン酸化の役割については、ほとんど解明されていない23。本研究で検出された1404番目のチロシンに関しても、これまでリン酸化されるとの報告はあったが、機能に関しては明らかになっておらず、EMT誘導や早期肺腺癌の予後との関連性が示された例は今回が初めてである。また、TrkCは神経栄養因子(ニューロトロフィン)受容体として知られており、この受容体に関しては、他にTrkAやTrkBが知られている24。TrkCとTrkAのアミノ酸配列相同性検索の結果から、本研究で検出されたTrkCのリン酸化部位である516番目のチロシンは、TrkAの490番目のチロシンに相当することがわかった。このTrkAの490番目のチロシンでのリン酸化は、ShcやFrs2と相互作用に関係し、 Ras-MAP キナーゼカスケードを活性化して癌の増殖に関与していることが報告されている25。また、TrkCを抑制した場合に乳癌が肺へ転移することを抑制することや26、乳癌細胞でTrkCがETV6とキメラチロシンキナーゼを形成し、これが直接II型TGF-β受容体に結合することで、I型TGF-β受容体との相互作用を防ぎ、結果としてTGF-bata/Smad signalingを抑制してTGF-βの腫瘍抑制活性を阻害する役割があることも示唆されている27。しかしながら、本研究で検出された516番目のチロシンにおけるリン酸化のEMT誘導や早期肺腺癌の予後との関連性が示された例はなく今回が初めての発見である。一方、c-Metに関しては、すでに肺癌との関わりが報告されている。c-Metは、受容体型チロシンキナーゼであり28-30、リガンドである肝細胞増殖因子(HGF)が結合した場合にチロシンキナーゼ活性を活性化し、それを介して血管新生や細胞の運動性、増殖、浸潤、分化などに関与することが報告されている32,33。本研究でEMT誘導に応答してリン酸化が亢進した1234番目のチロシンは、c-Metの活性化ループ(A loop)に位置しており、1235番目のチロシンと共に自己リン酸化されることでc-Metを活性化する。この1234番目および/又は1235の番目のチロシンでのリン酸化が過剰になった場合には、癌の増殖および浸潤をもたらすことや34,35、肺腺癌において、1235の番目のチロシンでのリン酸化c-Met高発現群は低発現群と比較して生存率が低い傾向にあることも報告されている29。これらの研究結果は、本研究により得られた結果と一致している。
以上のように、各タンパク質は癌の悪性度とのかかわりが深く、本研究で見出したTrkCの516番目のチロシン、TNS1の1404番目のチロシン、c-Metの1234番目および/又は1235の番目のチロシンの少なくとも1つの部位のリン酸化を診断マーカーとして利用する方法は、早期肺腺癌の悪性度検査法として有用であると考える。
【実施例】
【0053】
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【実施例】
【0054】
実施例1に用いた組織検体の患者情報を下記の表に示す。
【実施例】
【0055】
【表1】
JP2016211928A_000005t.gif
【実施例】
【0056】
各ペプチドの多重反応モニタリング(MRM)分析による定量解析のための実施例1の測定条件を下記の表に示す。
【実施例】
【0057】
【表2】
JP2016211928A_000006t.gif
【実施例】
【0058】
〔実施例2〕
TGF-β処理材料および方法
細胞培養
A549細胞(ヒト肺腺癌細胞株)は10%(w / v)ウシ胎児血清(FBS)を添加したRPMI-1640培地(ナカライテスク、京都、日本)を用いて、37℃に固定した5% CO2インキュベーター内で培養した。TGF-β処理は、細胞を低血清(0.1%FBS)培地中で24時間培養した後、TGF-β(HumanZyme, Chicago, IL, USA、最終濃度5 ng / mL)を添加した培地で48時間培養することで行った。一方、 TGF-β非処理は、TGF-βを溶解した溶媒(DMSO)のみを添加した培地で48時間培養することで行った。
【実施例】
【0059】
組織検体
組織検体を研究等に用いることに同意した、早期段階(Ia又はIb)肺腺癌患者58人から摘出した癌組織で、本研究に使用するまで-80℃で保存した凍結組織検体を神奈川県立がんセンターおよび横浜市立大学付属病院から入手した(表3)。内訳は、摘出後5年以内に再発を呈した予後不良な患者群22症例と手術後5年以内に再発を示さなかった予後良好な患者群36症例である。
【実施例】
【0060】
タンパク質調製
凍結組織を、Sample Grinding Kitを使用して、8 M尿素、4%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム、Protease Inhibitor MixおよびPhosphatase Inhibitor Cocktail 2と3を含む50 mM重炭酸アンモニウム溶液中で破砕した。破砕物はUR-21P(TOMY、東京、日本)で5回(1秒間隔)超音波処理した後、15,000g (4℃)で15分間遠心分離して上清を回収し、これをタンパク質抽出液とした。脱リン酸化処理については、50μg相当の タンパク質に対して、10 unit アルカリホスファターゼを37℃で1時間反応させることで行った。
【実施例】
【0061】
イムノブロット分析
タンパク質抽出液は、SuperSepTMAce (7.5%T, 17ウェル)を用いて分離し、Trans-Blot(登録商標) TurboTM Transfer Systemを使用してPVDF膜に転写した。その後PVDF膜を、5%(w/v) スキムミルクを含むT-PBS(最終濃度 10 mM Na2HPO4・12H2O, 1.8 mM KH2PO4, 0.137 M NaCl, 2.7 mM KCl, 0.05%[v/v] Tween20)と1時間反応させることで非特異的反応を抑制するためのブロッキング操作を行った。一次抗体については、ウサギ抗SSFA2抗体(Proteintech, Chicago, IL, USA)、ウサギ抗リン酸化SSFA2[Ser92]抗体(自作 スクラム依頼)、抗体ウサギ抗アクチンβ抗体を5%(w/v)スキムミルクを含むT-PBSで1,000倍希釈したものを使用し、12時間以上反応させた。反応後、PVDF膜をT-PBSで洗浄後、二次抗体としてペルオキシダーゼ(HRP)標識したヤギ抗ウサギIgG抗体を5%(w/v) スキムミルクを含むT-PBSで5,000倍希釈したものを使用し、1時間反応させた。反応後、PVDF膜はT-PBSで洗浄し、HRP基質であるECL Plus Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare)と5分間反応させた。各タンパク質のシグナルはLAS4000mini発光イメージアナライザ(GE Healthcare)を用いて検出した。
【実施例】
【0062】
ペプチド溶液の調製
タンパク質抽出液に終濃度が10 mMになるようにDTTを添加し、室温に45分間置いて還元した。還元後、終濃度が5 mMになるようにヨードアセトアミドを添加して、室温で30分間反応させシステイン残基をアルキル化した。その後、15分間10,000gで遠心分離を行い上清を回収し、50 mM重炭酸アンモニウムを上清の3倍量添加して、尿素の終濃度が2 Mとなるよう希釈した。NanoDrop 2000cを用いてタンパク質定量を行った後、100 μg相当のタンパク質に対して、トリプシンを、タンパク質:トリプシン(酵素)の比20:1(w/w)になるように添加し、16時間37℃で温置した。消化物の1/20 量の20%(v/v) TFAを添加後、5分間15,000g (4℃)で遠心分離を行い上清を回収し、添加相間移動溶解法(PTS法)によりペプチド溶液中に含まれるデオキシコール酸ナトリウムを除去した(引用)1。回収したペプチド溶液は一旦乾燥させた後、0.1 % トリフルオロ酢酸に再溶解してから、C18 Stage Tipを使用してペプチドを濃縮・脱塩した2。その後のリン酸化ペプチド濃縮については、Titansphere TiO2 bulk beads (GL Sciences, Tokyo, Japan)を用いて行った3。濃縮したリン酸化ペプチドについては、再度C18 Stage Tipを使用して脱塩濃縮し、各ペプチドは質量分析まで、乾燥させた状態で-20℃で保存した。
【実施例】
【0063】
多重反応モニタリング(MRM)分析によるペプチド定量
多重反応モニタリング(MRM)分析についてはcHiPLC nanoflex system(AB Sciex)を連結したTripleTOF5600システムを用いて行った。cHiPLC nanoflex systemに接続する分離カラムはChromXP C18-CL, 75 μm id × 15 cmを使用し、流速は300 nL/分とした。Aバッファーには、2%(v/v)アセトニトリルを含む0.1%(v/v) ギ酸溶液を、Bバッファーには、80%(v/v) アセトニトリルを含む0.1%(v/v) ギ酸溶液を用いた。ペプチドの吸着は、Aバッファー98%(v/v)、Bバッファー2%(v/v)で行い、溶出は、Bバッファー の濃度を2%から40%に42分間かけて連続的に高くするプログラムを使用して行った。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、イオンスプレー電圧2300Vのポジティブモード、20に設定されたカーテンガスとスプレーガスモードで実行され、分解能はunitに設定、測定質量 (m/z)範囲は 100 から1600Daとし、 MS2 accumulation timesは0.1秒に設定した。リン酸化ペプチドおよび安定同位体標識-リン酸化ペプチドの合成はスクラムで行った(表4)。MRMPilot v2.0ソフトウエアを用いて、標的ペプチドのプリカーサーイオン/フラグメントイオン対(MRMトランジション)および衝突エネルギーを自動的に算出した。その中から、最終的に、再現性のあるyイオンとMRMトランジションを選択した(表4)。各ペプチド試料については、各25 fmol濃度の安定同位体標識-リン酸化ペプチドを添加し、定量の際の内部標準として用いた。検量線については1、5、10、及び50fmolのペプチドを用いて作成し、検量線の精度は20%以内に収めた(%CV<20)。質量分析の結果得られた質量分析データはMultiQuant v.2.1を用いて解析し、ペプチド量を算出した。【0064】
統計解析
2群間の差の統計的有意性を示すためのマン・ホイットニー検定、無再発生存期間解析を行うためのカプラン・マイヤー法、受信者動作特性(ROC)曲線解析などの統計解析はGraphPadプリズム5(V. 5.04, GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて行った。
【実施例】
【0065】
結果
質量分析装置を用いたリン酸化ペプチドの網羅的な相対定量解析から、A549細胞においてTGF-β処理に応答して著しく発現量が増加するリン酸化ペプチドとして、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたペプチドを見出した。SSFA2に対する特異的抗体および92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に特異的な抗体を用いたイムノブロット分析の結果、これらのタンパク質の細胞内での発現量はTGF-β処理によって変動しないが、92番目のセリンでのリン酸化は亢進することが確認された(図8)。
次に、外科的手術によって摘出した58名の患者の凍結保存した肺腺癌組織を用いて、5年後に肺腺癌を再発した患者22名(予後不良群,PP)と再発のない患者36名(予後良好群,GP)の癌組織を用いて、各特異的抗体を用いたイムノブロット分析と質量分析装置を用いた多重反応モニタリング(MRM)分析を行った。まず、組織検体を癌部と非癌部に分けてタンパク質を抽出した場合の組織中のSSFA2量をSSFA2特異的抗体を用いたイムノブロット分析により調べた結果、予後不良群と予後良好群両患者群の癌部でのみSSFA2が発現していることが確認できた(図9A)。さらに、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたタンパク質量についてリン酸化部位特異的抗体を用いたイムノブロット分析により調べた結果、予後良好群の癌部に比べて、予後不良群の癌部で発現量が増加していることがわかった(図9B)。
さらに、多重反応モニタリング(MRM)分析によって、予後良好群と予後不良群の癌部におけるSSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたペプチド量を調べた結果、予後良好群と予後不良群間で統計的に有意な差(p<0.005)が認められた(図10)。また、得られた結果を基に、リン酸化ペプチド量毎の無再発生存期間曲線を作成した結果、I期肺腺癌の予後不良群20症例と予後良好群31症例について、多重反応モニタリング(MRM)分析によって得られたリン酸化ペプチド量を平均値以上と以下で分類した場合、平均値以下の群に比べて平均値以上の群は統計的に有意に術後生存期間が短い(p<0.005)ことを確認した(図11)。また、受信者動作特性 (ROC) 曲線解析の結果は、SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたタンパク質が診断マーカーとして有用であることを示した(図12)。【0066】
考察
SSFA2は、結腸癌細胞株において活性化K-rasにより発現が上昇する遺伝子として同定され、K-ras-induced actin-interacting protein(KRAP)とも呼ばれている4。SSFA2の機能としては、小胞体や核膜上に存在するイノシトール3リン酸受容体(IP3R)と結合することによりカルシウムイオンの放出を制御し、細胞内の様々な生理作用を調節しているとの報告がある5。 更に、SSFA2はビメンチンと共にMDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株)の分化の際に、タイトジャンクション (細胞間接着構造)近傍でのIP3Rの蓄積に関与しており、上皮細胞を含む様々な細胞型のIP3Rの局在を制御することが示唆されている6。また、IP3Rの作用については、EMTとの関連が示唆されており7、乳がん細胞におけるEMT誘導はカルシウムシグナルに依存的であることも報告されている8。以上の報告から、SSFA2はEMT誘導に関連している可能性が高いことが示唆される。一方、SSFA2のリン酸化は役割については未だ解明されていないことが多い。今回のSSFA2の92番目のセリンにおけるリン酸化がEMT誘導および早期肺腺癌の予後と密接に関係しているとの報告は今回が初めてである。以上の結果から、SSFA2の92番目のセリンのリン酸化を検出することは、早期肺腺癌の悪性度を検査する方法として有用であると考える。
さらに、SSFA2は結腸癌細胞株および肺扁平上皮癌組織において、腫瘍特異的な遺伝子として同定されている4, 9。本研究でも、イムノブロット分析の結果から、SSFA2は癌部に特異的に発現しているタンパク質であり、肺腺癌検出マーカーとして利用可能ということが確認された。また、このことは正常組織に作用することなく、癌部でのみ特異的に作用する治療標的として利用できる可能性を秘めている。
【実施例】
【0067】
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【実施例】
【0068】
実施例2に用いた組織検体の患者情報を下記の表に示す。
【実施例】
【0069】
【表3】
JP2016211928A_000007t.gif
【実施例】
【0070】
各ペプチドの多重反応モニタリング(MRM)分析による定量解析のための実施例2の測定条件を下記の表に示す。
【実施例】
【0071】
【表4】
JP2016211928A_000008t.gif

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、早期肺腺癌患者の予後予測初期スクリーニング検査として利用できる。
【配列表フリ-テキスト】
【0073】
<配列番号1~16>
配列番号1~16は、実施例1及び2の多重反応モニタリング(MRM)分析で用いた内部標準ペプチドのアミノ酸配列を示す。
Phospho-TNS1 (pY1404):AGSLPNY[Pho]ATINGK(配列番号1)
Isotope-labeled phospho-TNS1 (pY1404):AGSLPNY[Pho]ATINGK(13C6, 15N2) (配列番号2)
Phospho-c-Met(pY1234):DMYDKEY[Pho]YSVHNK(配列番号3)
Isotope-labeled phospho-c-Met(pY1234):DMYDKEY[Pho]YSVHNK(13C6, 15N2) (配列番号4)
Phospho-TrkC(pY516):IPVIENPQY[Pho]FR(配列番号5)
Isotope-labeled phospho-TrkC(pY516):IPVIENPQY[Pho]FR(13C6, 15N4) (配列番号6)
Phospho-SSFA2 (pS92):TPLGAS[Pho]LDEQSSSTLK(配列番号7)
Isotope-labeled Phospho-SSFA2 (pS92):TPLGAS[Pho]LDEQSSSTLK(13C6, 15N2) (配列番号8)
TNS1(Y1404):AGSLPNYATINGK(配列番号9)
Isotope-labeled TNS1(Y1404):AGSLPNYATINGK(13C6, 15N2) (配列番号10)
c-Met(Y1234):DMYDKEYYSVHNK(配列番号11)
Isotope-labeled c-Met(Y1234):DMYDKEYYSVHNK(13C6, 15N2) (配列番号12)
TrkC(Y516):IPVIENPQYFR(配列番号13)
Isotope-labeled TrkC(Y516):IPVIENPQYFR(13C6, 15N2) (配列番号14)
SSFA2 (S92):TPLGASLDEQSSSTLK(配列番号15)
Isotope-labeled SSFA2 (S92):TPLGASLDEQSSSTLK(13C6, 15N2) (配列番号16)
<配列番号17>
配列番号17は、TPLGA(pS)LDEQSのアミノ酸配列である。キャリアタンパク質に結合させるためN末端にCysを付加したもの(C+TPLGA(pS)LDEQS)を抗体(SSFA2の92番目のセリンがリン酸化されたSSFA2に対する抗体)作製のための免疫原として用いた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11