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明細書 :ナノ結晶、インク組成物、量子ドット形成用材料及び物品。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-210663 (P2016-210663A)
公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
発明の名称または考案の名称 ナノ結晶、インク組成物、量子ドット形成用材料及び物品。
国際特許分類 C01F  17/00        (2006.01)
C09K  11/56        (2006.01)
C09D  11/037       (2014.01)
C09K  11/84        (2006.01)
FI C01F 17/00 E
C09K 11/56 CPC
C09D 11/037 ZNM
C09K 11/84
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2015-098018 (P2015-098018)
出願日 平成27年5月13日(2015.5.13)
発明者または考案者 【氏名】中西 貴之
【氏名】中島 綾子
【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】北川 裕一
【氏名】伏見 公志
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4G076
4H001
4J039
Fターム 4G076AA03
4G076AA18
4G076AB11
4G076BA39
4G076BA40
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA26
4G076DA30
4H001CA02
4H001XA16
4H001XA20
4H001XA63
4H001XB21
4H001YA63
4J039BA18
4J039BA30
4J039BA39
4J039GA13
要約 【課題】磁気光学効果を制御することができるナノ結晶、及びナノ結晶を用いた発光性のインク組成物、量子ドット形成用材料及び物品の提供。
【解決手段】CaSナノ結晶において、Ca2価イオンの一部をEu2価イオンに置換したM1-XEuSで表される組成を有する結晶相を含みXが0.001~0.25であり、ナノ結晶中のCaとEuの比率を変えることで、Eu2価イオンの磁気光学物性が異なる結晶場の影響を受け、光吸収波長及びその強度、希土類間の磁気相互作用に大きな変化が生じる磁気光学効果を有する結晶。即ち、アルカリ土類金属と、Euと、Sとを含む20nm以下の平均径径を有するナノ結晶。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ土類金属と、Euと、Sと、を含むナノ結晶。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属がCaである、請求項1に記載のナノ結晶。
【請求項3】
当該ナノ結晶が、M1-XEuSで表される組成を有する結晶相を含み、Mが前記アルカリ土類金属で、xが0.001~0.25である、請求項1又は2に記載のナノ結晶。
【請求項4】
20nm以下の平均粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ結晶。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ結晶を含む、インク組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ結晶を含む、量子ドット形成用材料。
【請求項7】
請求項6に記載の量子ドット形成用材料を含む部材を備える、物品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶、インク組成物、量子ドット形成用材料及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
EuOをはじめとするEu(II)化合物(ユーロピウムカルコゲナイド)は、7つの不対f電子を有するEu(II)がf-d遷移に起因する強い光吸収及び発光を示すこと、及び強磁性を示すことから、その磁気光学効果が注目されている。その特性の中でも、磁場をかけることにより光の偏光面が回転するファラデー効果及びカー効果が注目されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。特許文献1及び2は、EuO又はEuSのナノ結晶が、量子サイズ効果によって磁気光学効果を室温で発現することを示唆している。特許文献1及び2では、これらの特性を利用した光アイソレーター等が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-354417号公報
【特許文献2】特開2004-354927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、偽造防止パッケージングの分野では解読技術が進んだため、従来の単一蛍光発光機能、ホログラム機能等の方法では高度なセキュリティを確保することが難しくなっている。
【0005】
本発明者らは、偽造防止パッケージングの分野において、Eu化合物が備える発光性及び光の偏光面の回転をもたらす磁性といった磁気光学効果が、セキュリティの確保に利用できると考えた。より高度なセキュリティを確保するためには、ファラデー効果若しくはカー効果を示す波長域又は光の偏光面の回転の大きさ等の磁気光学効果を容易に制御できることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、磁気光学効果を制御することができるナノ結晶を提供することを目的とする。また、本発明は更に、ナノ結晶を用いた発光性のインク組成物、量子ドット形成用材料及び物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、CaSナノ結晶において、Ca2+イオンの一部をEu2+イオンに置換し、ナノ結晶中のCaとEuの比率を変えることで、Eu2+の磁気光学物性が異なる結晶場の影響を受け、光吸収波長及びその強度、希土類間の磁気相互作用に大きな変化が生じることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明の一側面は、アルカリ土類金属と、Euと、Sと、を含むナノ結晶に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気光学効果を制御することができるナノ結晶を提供することができる。また、本発明は更に、ナノ結晶を用いたインク組成物、量子ドット形成用材料及び物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(Ca97Eu)Sのナノ結晶の透過型電子顕微鏡像である。
【図2】ナノ結晶のXRDパターンである。
【図3】(Ca97Eu)Sのナノ結晶、(Ca50Eu50)Sのナノ結晶及びEuSのナノ結晶のMCDスペクトルである。
【図4】(Ca97Eu)Sのナノ結晶の蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0012】
本明細書において、「ナノ結晶」とは、ナノサイズの平均粒径を有する結晶粒子を意味する。ナノサイズとは、一般に1nm~1000nmである。

【0013】
<ナノ結晶>
本実施形態のナノ結晶は、アルカリ土類金属と、ユーロピウム(Eu)と、硫黄(S)とを含む。本実施形態のナノ結晶において、アルカリ土類金属、Eu、及びSが固溶体(特に、全率固溶体)を形成していてもよい。アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。アルカリ土類金属は、Eu2+とイオン半径が近いことから、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれてもよく、Caであってもよい。Eu及びSの原子価は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。

【0014】
本実施形態のナノ結晶は、M1-XEuSで表される組成を有する結晶相を含んでいてもよい。組成式中、Mがアルカリ土類金属である。xは0を超えて1未満の数値であり、0.0001以上1未満であってもよい。ナノ結晶中の各原子のモル比率を調整することで、ナノ結晶の磁気光学旋光性を制御することができる。例えば、xが0.001~0.25であると、磁気円偏光二色性(MCD)スペクトルにおいて、シャープな正及び負の両方の磁気光学旋光性を示す。より良好な発光性及び磁気光学旋光性の観点から、xは0.001~0.07であってもよい。xが0.75以上1未満であると、ナノ結晶の短波長領域における負の磁気光学旋光性は減少し、長波長領域においてブロードな正の磁気光学旋光性が示される傾向にある。ナノ結晶は、実質的に、M1-XEuSで表される組成を有する結晶相からなる粒子であってもよいが、微量の他の成分も含み得る。例えば、ナノ結晶のうち90質量%以上が、M1-XEuSで表される組成を有する結晶相であってもよい。

【0015】
ナノ結晶の平均粒径は、100nm以下であってもよく、50nm以下であってもよい。ナノ結晶の量子効果及び表面効果がより強く働き、より良好な発光性を示すという観点から、ナノ結晶の平均粒径は20nm以下であってもよい。ナノ結晶の平均粒径は、1nm以上、又は2nm以上であってもよい。ナノ結晶において、平均粒径を変えることで発光波長を制御することができる。平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察、又は動的光散乱(DLS)法による粒径分布から測定することができる。

【0016】
ナノ結晶の結晶構造は特に限定されるものではなく、岩塩型(面心立方格子構造)であってもよい。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)測定により同定することができる。XRD測定に基づいて、ナノ結晶がM1-XEuSで表される組成を有する結晶相を含む固溶体であることも確認できる。

【0017】
本実施形態のナノ結晶は、発光性、及びファラデー効果又はカー効果による磁気光学旋光性といった磁気光学効果を示す。これらの磁気光学効果は、ナノ結晶におけるアルカリ土類金属M、Eu及びSのモル比率、並びに、平均粒径を調整することで制御することができる。発光性は、例えば、分光蛍光光度計によって測定することができる。ファラデー効果による磁気光学旋光性は、例えば、MCDスペクトル測定によって評価することができる。

【0018】
本実施形態のナノ結晶は、アルカリ土類金属及びSを含む錯体と、Eu及びSを含む錯体と、これらが溶解又は分散する溶媒とを含む反応液を加熱することを含む方法(熱還元法)によって調製することができる。熱還元法は、例えば、Synthesis and photophysical properties of EuS nanoparticles from the thermal reduction of novel Eu(III) complex(Hasegawaら、J.Phys.Chem.B、2006, 110 (18), pp9008-9011)に記載されている。

【0019】
アルカリ土類金属及びSを含む錯体としては、例えば、[M(Bpy)(SCNHex]、[M(Phen)(SCNHex]が挙げられる。錯体中、Mは上述したアルカリ土類金属を示し、目的とするナノ結晶の組成に応じて、適宜選択することができる。Eu及びSを含む錯体としては、例えば、[Eu(Phen)(SCNHex]を挙げることができる。これら式中、Bpyは2,2’-ビピリジンを示し、Hexはヘキシル基を示し、Phenはフェニル基を示す。

【0020】
溶媒としては、例えば、オレイルアミン、トリオクチルフォスフィンオキシドが挙げられる。

【0021】
ナノ結晶におけるアルカリ土類金属、Eu及びSのモル比率は、前駆体原料であるアルカリ土類金属及びSを含む錯体と、Eu及びSを含む錯体との比率に基づいて、制御することができる。例えば、組成式M1-XEuSにおけるxが0.5であるナノ結晶を作製する場合、アルカリ土類金属及びSを含む錯体、及びEu及びSを含む錯体の量を、錯体中に含まれるアルカリ土類金属及びEuのモル数が当量となるように設定すればよい。

【0022】
熱還元法による反応時の雰囲気は、空気中であってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換してもよい。不要な反応を防ぐという観点から、反応時の雰囲気は不活性ガス雰囲気であってもよい。

【0023】
熱還元法の反応液の温度は、100~340℃であってもよく、100~250℃であってもよく、250~340℃であってもよい。熱還元法による反応時の圧力条件は、常圧下であってもよく、減圧下であってもよく、加圧下であってもよい。反応時間は、5秒~24時間であってもよく、5秒~6時間であってもよく、6~15時間であってもよく、15~24時間であってもよい。生成するナノ結晶の粒径は、例えば、熱還元法の反応に関して温度、反応時間、前駆体となる錯体の濃度の条件を制御することにより、調整することができる。例えば、反応温度が高いと、ナノ結晶の粒径が大きくなる傾向がある。

【0024】
<インク組成物>
本実施形態のインク組成物は、上記ナノ結晶を含む。インク組成物は、溶媒及び各種添加剤のような、インクに関して通常用いられる成分等を含んでいてもよい。このインク組成物を用いて、各種物品の偽造防止パッケージングのための塗膜を形成することができる。

【0025】
本実施形態のインク組成物において、ナノ結晶の含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~95質量%であってもよく、0.1~50質量%であってもよく、50~95質量%であってもよい。

【0026】
<量子ドット形成用材料>
本実施形態の量子ドット形成用材料は、上記ナノ結晶を含む。「量子ドット」とは、3次元全ての方向から移動方向が制限された状態の電子を含むドット状の微小領域である。各種材料中に分散した本実施形態のナノ結晶を、量子ドットとして用いることができる。

【0027】
<物品>
本実施形態の物品は、上記量子ドット形成用材料を量子ドットとして含む部材を備える。部材の素材は特に限定されるものではなく、樹脂、木材、金属、紙等を適宜選択することができる。部材に量子ドット形成用材料を担持させる方法としては特に限定されるものではない。量子ドット形成用材料を含む部材は、インク組成物から形成された塗膜であってもよい。物品としては、例えば、3Dプリンターによる成形品、偽造防止用のセキュリティインクが挙げられる。

【0028】
本実施形態のナノ結晶は、発光性、及びファラデー効果又はカー効果による磁気光学旋光性といった磁気光学効果を有するため、高いセキュリティ能を有している。ナノ結晶を構成する原子のモル比率及びナノ結晶の平均粒径を調整することで、磁気光学効果を任意に設定することができる。そのため、高いセキュリティ能を有する様々なバリエーションの物質を簡便に調製することができる。また、本実施形態のナノ結晶は平均粒径が小さいため、視認することが困難である。そのため、これを用いた量子ドット形成用材料を量子ドットとして含む部材を備える物品は、ナノ結晶が備える発光性又は磁気光学旋光性を測定することで、一見しただけではわからない複製品又は偽造品と、容易に判別することができる。
【実施例】
【0029】
1.Ca錯体、Eu錯体の準備
[Ca(Bpy)(SCNHex]は以下の方法で作製した。ナスフラスコに水酸化ナトリウム0.66g(16.5mmol)を加え、氷冷しながら蒸留水16.5mLで溶解した。調製した水酸化ナトリウム水溶液を室温に戻し、ジ-N-ヘキシルアミン2.78g(15mmol)を加えた。更に、フラスコにシリンジを用いて二硫化炭素1.09mLを加え、30分間撹拌混合し、N,N-ジヘキシルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を得た。得られたN,N-ジヘキシルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物に、エタノール8.00mLに溶解させたCaCl 1.11g(10mmol)を加え、更に、エタノール8.00mLに溶解させた2,2-ビピリジン5.0g(30mmol)を加え、攪拌することで沈殿を得た。得られた黄色沈殿をエタノール水溶液(1:1)で再結晶することで、薄黄色粉末の[Ca(Bpy)(SCNHex]を5.6g得た。
[Eu(Phen)(SCNHex]は以下の方法で作製した。ナスフラスコに、EuCl・6HO 0.70g(1.9mmol)とNa(SCNEt)・3HO 2.3g(10mmol)と、エタノール16mLと、を加え、1時間撹拌した。フラスコの内容物を吸引ろ過し、ろ液にPPhBr 4.0g(9.6mmol)及びエタノール5mLを加え、2時間撹拌した。反応溶液を吸引ろ過し、オレンジ色の粉末として[Eu(Phen)(SCNHex](0.48g、収率22%)を得た。反応を繰り返し行い、[Eu(Phen)(SCNHex]を5.6g得た。
【実施例】
【0030】
2.ナノ結晶の作製
(作製例1)
[Ca(Bpy)(SCNHex]0.5gを、オレイルアミン4mLにガラス容器中で分散させた。分散液を窒素雰囲気下で、1時間、250~340℃に加熱することで、加熱還元反応によりCaSのナノ結晶を生成させた。生成したCaSのナノ結晶0.2gを分散液から回収した。得られたナノ結晶の平均粒径は15nmだった。ナノ結晶の平均粒径は、トルエン中での動的光散乱(DLS)法によって測定した。以下の作製例も同様である。
【実施例】
【0031】
(作製例2)
[Ca(Bpy)(SCNHex]0.9g、及び[Eu(Phen)(SCNHex]0.03gを、オレイルアミン8mLにガラス容器中で分散させた。分散液を窒素雰囲気下で、1時間、250~340℃に加熱することで、加熱還元反応により(Ca97Eu)Sのナノ結晶を生成させた。生成したナノ結晶0.4gを分散液から回収した。得られたナノ結晶の平均粒径は15nmだった。組成:(Ca97Eu)Sは、Ca:Eu:Sのモル比率が97:3:100であることを意味する。Eu価数は151Euメスバウアー測定及び磁化測定によって求めた。Euの濃度はICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法によって測定した。以下の作製例も同様である。
【実施例】
【0032】
(作製例3)
[Ca(Bpy)(SCNHex]0.5g、及び[Eu(Phen)(SCNHex]0.4gを、オレイルアミン8mLにガラス容器中で分散させた。分散液を窒素雰囲気下で、1時間、250~340℃に加熱することで、加熱還元反応により(Ca50Eu50)Sのナノ結晶を生成させた。生成したナノ結晶0.4gを分散液から回収した。得られたナノ結晶の平均粒径は15nmだった。組成:(Ca50Eu50)Sは、Ca:Eu:Sのモル比率が50:50:100であることを意味する。
【実施例】
【0033】
(作製例4)
[Eu(Phen)(SCNHex]0.5gを、オレイルアミン4mLにガラス良い気中で分散させた。分散液を窒素雰囲気下で、1時間、250~340℃に加熱することで、加熱還元反応によりEuSのナノ結晶を生成させた。生成したナノ結晶0.2gを分散液から回収した。得られたナノ結晶の平均粒径は22nmだった。
【実施例】
【0034】
3.評価
(透過型電子顕微鏡(TEM)観察)
図1は、(Ca97Eu)Sナノ結晶の50000倍のTEM像を示す。TEM像から、均一なナノ結晶が得られていることが分かった。
【実施例】
【0035】
(X線回析(XRD))
図2は、各ナノ結晶のXRDパターンを示す。CaSのナノ結晶、(Ca97Eu)Sのナノ結晶、(Ca50Eu50)Sのナノ結晶及びEuSのナノ結晶において、岩塩構造に帰属される回析ピークが観測された。このことから、それぞれのナノ結晶は単一相であることが示された。ナノ結晶中のEu比率を増加させた場合、その回析ピークは連続的な低角シフトを示したことから、各ナノ結晶は全率固溶体であることが示された。
【実施例】
【0036】
(磁気円偏光二色性(MCD)スペクトル)
ナノ結晶によるファラデー効果を、トルエン中におけるMCDスペクトル測定によって評価した。図3は、(Ca97Eu)Sナノ結晶、(Ca50Eu50)Sナノ結晶及びEuSナノ結晶のMCDスペクトルの測定値を吸収波長で処理したものである。各ナノ結晶において、Eu2+の4f-5d吸収位置(400~700nm)に明確な吸収が観測された。図3のMCDスペクトルに示されるように、Euの比率が低い(Ca97Eu)Sのナノ結晶は、短波長領域においてシャープな正負の磁気光学旋光を示し、Euの比率が高い(Ca50Eu50)Sのナノ結晶及びEuSのナノ結晶は、長波長領域においてブロードな正の磁気光学旋光を示した。これらの結果から、Euのアルカリ土類金属に対する比率に基づいて、ナノ結晶の磁気光学旋光特性(ピーク、回転強度、スペクトル形状及び旋光の向き等)を高い自由度で変化させられることが確認された。
【実施例】
【0037】
光吸収形状はEu2+の結晶場環境に応じて大きく異なる。MCDスペクトルを光吸収スペクトルで割り付けたものがEu濃度当たりの回転能力であるが、Eu量を僅かにしか含まない(Ca97Eu)Sのナノ結晶が、EuSのナノ結晶よりも遥かに大きなファラデー回転能力値を有する。この性能指数の大きな変化は、EuSのナノ結晶格子の磁気的相互作用だけでは説明できない。そのため、結晶場強度及び量子効果の発現が性能指数の変化に関与していると考えられる。
【実施例】
【0038】
(蛍光スペクトル)
図4は、(Ca97Eu)Sのナノ結晶の蛍光スペクトルである。(Ca97Eu)Sのナノ結晶は、波長460nmの光により励起し、波長650nmの光を発光することが確認された。
図面
【図4】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図3】
3