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明細書 :リハビリテーション装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-198479 (P2016-198479A)
公開日 平成28年12月1日(2016.12.1)
発明の名称または考案の名称 リハビリテーション装置
国際特許分類 A61H   1/00        (2006.01)
A61B   5/0476      (2006.01)
FI A61H 1/00
A61B 5/04 322
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-067266 (P2016-067266)
出願日 平成28年3月30日(2016.3.30)
優先権出願番号 2015080917
優先日 平成27年4月10日(2015.4.10)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】橋本 泰成
出願人 【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
【識別番号】100162189、【弁理士】、【氏名又は名称】堀越 真弓
審査請求 未請求
テーマコード 4C046
4C127
Fターム 4C046AA13
4C046EE11
4C046EE24
4C046EE25
4C046EE32
4C127AA03
4C127FF01
4C127FF02
4C127GG09
4C127GG11
4C127GG13
4C127HH03
要約 【課題】リハビリ対象者への刺激なしに痛みを抑制する訓練が可能となるリハビリテーション装置を提供する。
【解決手段】リハビリ対象者の脳波を計測して脳波信号を得る脳波計測部と、脳波計測部から得られる脳波信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、事前にリハビリ対象者の運動イメージ時又はメンタルローテーション時と安静時とにおいて計測した脳波から特徴的な周波数帯を求め、パワースペクトル算出手段から得られるパワースペクトルのうち、上述ごとく求めた特徴的な周波数帯におけるパワースペクトルを脳波の特徴量として算出する特徴量算出手段と、この特徴量算出手段から得られる脳波の特徴量を線形判別関数に代入して皮質興奮性を示す判別結果を算出する線形判別手段と、リハビリ対象者へフィードバックするために、線形判別手段から得られた判別結果を表示画面に表示する表示制御手段とを備えている。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
リハビリ対象者の脳波を計測して脳波信号を得る脳波計測部と、前記脳波計測部から得られる脳波信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、前記脳波計測部により事前に前記リハビリ対象者の運動イメージ時又はメンタルローテーション時と安静時とにおいて計測した脳波から特徴的な周波数帯を求め、前記パワースペクトル算出手段から得られるパワースペクトルのうち、前記求めた特徴的な周波数帯におけるパワースペクトルを脳波の特徴量として算出する特徴量算出手段と、該特徴量算出手段から得られる脳波の特徴量を線形判別関数に代入して皮質興奮性を示す判別結果を算出する線形判別手段と、前記リハビリ対象者へフィードバックするために、前記線形判別手段から得られた判別結果を表示画面に表示する表示制御手段とを備えていることを特徴とするリハビリテーション装置。
【請求項2】
前記線形判別手段が、フィッシャーの線形判別法により、下式(ただし、xは国際10-20法のC3に関する脳波の特徴量、xは国際10-20法のC4に関する脳波の特徴量、w、w及びcは事前に設定されたパラメータ)
LDA=w+w+c
から判別結果LDAを算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリハビリテーション装置。
【請求項3】
前記線形判別手段が、教師付学習によって、前記パラメータw、w及びcを事前に計測し計算してラベル付けした特徴量を使って設定するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のリハビリテーション装置。
【請求項4】
前記表示制御手段が、縦軸が判別結果を、横軸が時間をそれぞれ表す表示画面上に、前記線形判別手段から得られた前記判別結果をマーク表示するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリハビリテーション装置。
【請求項5】
前記パワースペクトル算出手段が、前記脳波計測部から得られる脳波信号を所定時間毎のデータに分割し、該分割したデータをフーリエ変換し、該フーリエ変換後の全データを二乗して平均化することによって前記パワースペクトルを算出するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリハビリテーション装置。
【請求項6】
前記特徴量算出手段が、前記パワースペクトル算出手段から得られる前記パワースペクトルを前記周波数帯のみのパワースペクトルとなるようにバンドパス処理し、該バンドパス処理したパワースペクトルを整流処理し、該整流処理したパワースペクトルを所定の窓幅で移動平均処理して脳波の特徴量を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリハビリテーション装置。
【請求項7】
前記特徴量算出手段が、前記パワースペクトル算出手段から得られる前記パワースペクトルをあらかじめ定めた一定の周波数帯のみのパワースペクトルとなるようにバンドパス処理し、該バンドパス処理したパワースペクトルを整流処理し、該整流処理したパワースペクトルを所定の窓幅で移動平均処理して脳波の特徴量を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリハビリテーション装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛改善を目的とし、外傷や手術の後遺症として発症することがある複合性局所疼痛症候群の症状を改善する訓練に用いられるリハビリテーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトの脳活動に応じて外部機械を制御する技術であるブレイン・マシン・インタフェース(BMI)が注目されている。この技術は、脳の神経ネットワークを流れる微弱な電流から生じる脳波を検出し、これを解析して電気信号に変換することで情報伝達を行い、外部機器を制御するものである。特に、リハビリテーションや医療工学の分野において、この技術を応用して身体の代替を行わせることにより、肢体不自由者の生活の質を飛躍的に向上できることから大きく期待されている。例えば、四肢切断者においては、身体動作に伴う脳波変化に応じて電動の義手及び義足を操作することによって、移動や把持等の機能を切断以前のように回復させることが可能となる。
【0003】
このようにBMIは、脊髄損傷患者や筋萎縮性側索硬化症等の重度四肢不自由者をはじめ、脳卒中片麻痺患者を適用対象者としており、これを用いた様々な研究が行われ、開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら特許文献1が開示している技術を含む従来のBMI技術は、対象者が限られており、より多くの疾患や症状に対してBMI関連技術を適用して、多くの患者がその恩恵を受けられるようにすることが望まれている。
【0005】
次期BMIの有力な対象は疼痛である。その中でも特に複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、感覚過敏・アロディニア・代謝異常・浮腫・腫脹・皮膚温異常・局所的骨粗鬆症など様々な症状が表れ、生活が非常に困難になるものの、そのメカニズムには不明な点が多く、有効な治療方法が無いのが現状である。わかっている部分的なメカニズムは、交感神経求心性線維または遠心性線維から放出される神経伝達物質によって、侵害受容器を直接刺激することに起因するとされる。疼痛により生じる交感神経活性は、求心性C線維を活性化させることがあり、これは二次痛を増大させる。これはさらに交感神経の活性を亢進させ、痛みの悪循環が形成される。このような状態では患者の生活の質は大幅に低下させる。
【0006】
例えば、CRPSに対して経頭蓋磁気刺激を適用する事例が報告されている(非特許文献1)。この方法は図1に示すように、大脳皮質運動野の手部に対して20Hz、運動閾値の95%の強度で約500回の磁気刺激を与えることにより、痛みを感じる閾値を上昇させることを狙っている。磁気刺激では周波数や強度を調整することにより、皮質の興奮性を上昇させられることがわかっている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2010-051356号公報
【0008】

【非特許文献1】Sama Johnson,Jeff Summer,Saxby Prifmore,”Changes to somatosensory detection and pain thresholds following high frequency repetitive TMSof motor cortexin individuals suffering from chronic pain”,International Association for the Study of Pain 123,pp.187-192, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示されているような磁気刺激を使った方法は、磁気刺激により頭部皮下の神経や筋を刺激しているので、不快感や痛みを伴うものであり、また、てんかん発作の可能性がある等の制約が多いものであった。また痛みの治療法としては磁気刺激等の工学的手法やBMIのような脳波を使った手法はまだCRPSに対して適用されていない。
【0010】
従って本発明の目的は、CRPSに対して、磁気刺激なしに皮質の局所的な興奮性を上昇させ、痛みの閾値を上げることを可能にするリハビリテーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、リハビリテーション装置は、リハビリ対象者の脳波を計測して脳波信号を得る脳波計測部と、脳波計測部から得られる脳波信号のパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、脳波計測部により事前にリハビリ対象者の運動イメージ時又はメンタルローテーション時と安静時とにおいて計測した脳波から特徴的な周波数帯を求め、パワースペクトル算出手段から得られるパワースペクトルのうち、上述のごとく求めた特徴的な周波数帯におけるパワースペクトルを脳波の特徴量として算出する特徴量算出手段と、この特徴量算出手段から得られる脳波の特徴量を線形判別関数に代入して皮質興奮性を示す判別結果を算出する線形判別手段と、リハビリ対象者へフィードバックするために、線形判別手段から得られた判別結果を表示画面に表示する表示制御手段とを備えている。
【0012】
事前に、リハビリ対象者(例えば患者、被験者又は使用者等)の運動イメージ時又はメンタルローテーション時と安静時とにおける脳波信号を計測して特徴的な周波数帯を求めておく。脳波計測部から得られる脳波信号から算出したパワースペクトルのうち、上述ごとく求めた特徴的な周波数帯におけるパワースペクトルを脳波の特徴量として算出する。この特徴量を線形判別関数に代入して得られた皮質興奮性を示す判別結果を表示画面に表示してリハビリ対象者へフィードバックする。メンタルローテーション(心的回転)は、精神的に思い浮かべたイメージ(心的イメージ)を認知的に回転変換することであり、本発明の装置では、事前に、痛みのある患部四肢をメンタルローテーションした時の脳波を記録することで、脳波のうち体の運動や感覚に対応するものだけを抽出することを可能にしている。リハビリ対象者は、表示画面を見ながら皮質興奮性が高くなるようにメンタルローテーションを行うことにより、痛みの閾値を上げる訓練を行う。これにより、リハビリ対象者への刺激なしに痛みを改善する訓練が可能となる。その結果、リハビリ対象者への刺激なしに、疼痛を低減し患者に負担をかけない新規なリハビリテーション装置として、これまで適用されていなかった患者群までBMI研究の適用範囲を広げることが可能となる。
【0013】
線形判別手段が、フィッシャーの線形判別法により、下式(ただし、xは国際10-20法のC3に関する脳波の特徴量、xは国際10-20法のC4に関する脳波の特徴量、w、w及びcは事前に設定されたパラメータ)
LDA=w+w+c
から判別結果LDAを算出するように構成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、線形判別手段が、教師付学習によって、パラメータw、w及びcを事前に計測し計算してラベル付けした特徴量を使って設定するように構成されていることがより好ましい。
【0015】
表示制御手段が、縦軸が判別結果を、横軸が時間をそれぞれ表す表示画面上に、線形判別手段から得られた判別結果をマーク表示するように構成されていることも好ましい。
【0016】
パワースペクトル算出手段が、脳波計測部から得られる脳波信号を所定時間毎のデータに分割し、分割したデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の全データを二乗して平均化することによってパワースペクトルを算出するように構成されていることも好ましい。
【0017】
特徴量算出手段が、パワースペクトル算出手段から得られるパワースペクトルを上述の周波数帯のみのパワースペクトルとなるようにバンドパス処理し、バンドパス処理したパワースペクトルを整流処理し、整流処理したパワースペクトルを所定の窓幅で移動平均処理して脳波の特徴量を算出するように構成されていることも好ましい。
【0018】
特徴量算出手段が、パワースペクトル算出手段から得られるパワースペクトルをあらかじめ定めた一定の周波数帯、例えば8~13Hzの周波数帯、のみのパワースペクトルとなるようにバンドパス処理し、バンドパス処理したパワースペクトルを整流処理し、整流処理したパワースペクトルを所定の窓幅で移動平均処理して脳波の特徴量を算出するように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リハビリ対象者への刺激なしに、痛みを低減し患者に負担をかけない新規なリハビリテーション装置として、これまで適用されていなかった患者群までBMI研究の適用範囲を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】皮質運動野への磁気刺激により皮質興奮性を上げる従来の方法を説明する図である。
【図2】本発明におけるリハビリテーション装置を用いて痛みの閾値を変化させる方法を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態として、リハビリテーション装置全体の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図3の実施形態におけるリハビリテーション装置のコンピュータの構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図3の実施形態におけるリハビリテーション装置の信号処理部の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図3の実施形態におけるリハビリテーション装置の信号処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】図3の実施形態における患者へのフィードバック表示画面の一例を示す図である。
【図8】図3の実施形態によって訓練したことによるマクギル(McGill)痛みの質問票(MPQ)のスコアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2は本発明におけるリハビリテーション装置を用いて痛みを低減する方法を説明しており、同図に示すように、リハビリ対象者(患者、被験者又は使用者等)の脳波信号から皮膚興奮性の指標を計算し、皮質興奮性の変化をマーク(この場合星のマーク)の動きとして表示画面に表示してリハビリ対象者へリアルタイムでフィードバックする。リハビリ対象者は、表示画面を見ながら皮質興奮性が高くなるようにメンタルローテーションの訓練を行う。これにより、リハビリ対象者への刺激なしに筋の痛みを抑制するイメージ訓練が可能となる。

【0022】
以下、本発明の一実施形態であるリハビリテーション装置の構成、動作及び作用効果について詳細に説明する。図3は本発明の一実施形態としてリハビリテーション装置全体の電気的構成を概略的に示しており、図4は本実施形態におけるリハビリテーション装置のデジタルコンピュータの構成を概略的に示しており、図5は実施形態におけるリハビリテーション装置の信号処理部の動作を説明しており、図6は本実施形態におけるリハビリテーション装置の信号処理部の構成を概略的に示している。

【0023】
本実施形態におけるリハビリテーション装置は、図3に示すように、リハビリ対象者の一例である患者の脳に貼付した複数の脳波電極10と、この脳波電極10に電気的に接続された生体信号増幅器11と、生体信号増幅器11に電気的に接続されたデジタルコンピュータ12とを備えている。

【0024】
デジタルコンピュータ12は、生体信号増幅器11に電気的に接続された信号処理部13と、信号処理部13に電気的に接続された表示ディスプレイ16とを少なくとも備えている。

【0025】
複数の脳波電極10は、患者の国際10-20法のC3及びC4を中心に前後左右4箇所に電極中心間距離が等距離の2.5cmとなるように貼付した電極である。接地電極は前頭部、基準電極は右耳朶として単極導出を行うように構成されている。

【0026】
生体信号増幅器11は、高性能DC生体増幅器である例えばg.tec社のg.USBampからそれぞれ構成されている。この生体信号増幅器11は、複数の脳波電極10からの脳波信号を増幅し、2~1000Hzの通過帯域でバンドパスし、その後、2400Hzのサンプリング周波数でA/D変換する。

【0027】
生体信号増幅器11からのデジタルの脳波データはデジタルコンピュータ12の信号処理部13へ入力するように構成されている。

【0028】
図4に示すように、デジタルコンピュータ12は、バス40を介して互いに接続された中央処理装置(CPU)41と、リードオンリメモリ(ROM)42と、ランダムアクセスメモリ(RAM)43と、ハードディスク駆動装置(HDD)44と、画像処理部45と、外部メモリ駆動装置46と、入出力インタフェース47とを備えたコンピュータ及びこれを作動させるプログラムから構成される。

【0029】
画像処理部45は表示ディスプレイ14に接続されており、外部メモリ駆動装置46は例えばブルーレイディスク/デジタルバーサタイルディスク/コンパクトディスク(BD/DVD/CD)48やメモリカードが装着可能となっており、入出力インタフェース47にはキーボード49及びマウス50が接続されており、さらに、図示しないUSBポートを介して前述した生体信号増幅器11に接続され、脳波データが入力されるように構成されている。

【0030】
CPU41は、ROM42に記憶されているオペレーションシステム(OS)やブートプログラム等の基本プログラムに従ってRAM43に記憶されているプログラムを実行して本実施形態の処理を行う。また、CPU41は、RAM43、HDD44、画像処理部45、外部メモリ駆動装置46、及び入出力インタフェース47の動作を制御する。

【0031】
RAM43は信号処理部15のメインメモリとして使用され、HDD44や外部メモリ駆動装置46から転送されたプログラムやデータを記憶する。また、RAM43は、プログラム実行時の各種データが一時的に記憶されるワークエリアとしても使用される。

【0032】
HDD44は、プログラム及びデータをあらかじめ記憶している。

【0033】
画像処理部45は、CPU41の指示に従って画像処理を行い、画像データを生成する。生成された画像データは、表示ディスプレイ14に出力される。

【0034】
外部メモリ駆動装置46は、CPU41の指示に従って、セットされたBD/DVD/CD48やメモリカード等の外部メモリからプログラムやデータを読出し、RAM43へ転送する。また、セットされた外部メモリへプログラムやデータの書き込みをすることも可能である。

【0035】
入出力インタフェース47は、生体信号増幅器11からの脳波データの入力、並びにキーボード49及びマウス50とCPU41又はRAM43との間のデータのやり取りを制御する。

【0036】
このような構成の信号処理部13において、CPU41は、作動時は、まず、RAM43内にプログラム記憶領域、データ記憶領域及びワークエリアを確保し、HDD44又は外部からプログラム及びデータを取り込んで、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域に格納する。次いで、このプログラム記憶領域に格納されたプログラムに基づいて、図5に示す処理を実行する。CPU41がプログラムを実行することによって、図6に概略的に示すごとき信号処理部13が構築される。なお、本実施形態において、これらプログラムは、代表的な数値解析ソフトウェアであるMathworks社のMATLABを用いて構成されている。もちろん、他のソフトウェアを用いても良い。

【0037】
図6に示すように、信号処理部13は、生体信号増幅器11からの(実際にはラプラシアン導出された)脳波データを受け取ってパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段60と、事前に、メンタルローテーション時及び安静時に計測した脳波データを生体信号増幅器11から受け取ってパワーが大きく変化する特徴的な周波数帯を算出する特徴的周波数帯算出手段61と、パワースペクトル算出手段60から算出したパワースペクトルを受け取り、特徴的周波数帯算出手段61から算出した特徴的な周波数帯を受け取って脳波の特徴量を算出する特徴量算出手段62と、特徴量算出手段62から脳波の特徴量を受け取って皮質興奮性を示す判別結果を算出する線形判別手段63と、線形判別手段63から得られた判別結果を表示ディスプレイ16上に表示する表示制御手段64とを備えている。

【0038】
以下、図5を参照してデジタルコンピュータ12(CPU41)の処理動作を説明する。

【0039】
まず、事前に、メンタルローテーション時及び安静時の脳波をそれぞれ計測する(ステップS1)。メンタルローテーション時の計測はリハビリ対象者が四肢の1つを回転させることをイメージしている際の脳波を計測するものであり、安静時の計測はリハビリ対象者が特に何もしない覚醒状態時、例えば、リラックスして椅子等に座っている際等の脳波を計測するものである。脳波の計測は、生体信号増幅器11から脳波データを受け取って行う。受け取った脳波データは、RAM43内のワークエリアに記憶される。

【0040】
次いで、このようにして受け取ったメンタルローテーション時及び安静時の脳波データを比較してパワーが大きく変化する特徴的な周波数帯が算出される(ステップS2)。算出された周波数帯は、RAM43内のワークエリアに記憶される。

【0041】
次いで、ラプラシアン導出処理が行われ、パワースペクトルが算出される(ステップS3)。ラプラシアン導出処理は、背景脳波の影響を取り除くための処理であり、例えばC3の脳波データについてはその前後左右4箇所の脳波データを平均したデータからC3の脳波データを除算して算出される。C4の脳波データについても同様である。ラプラシアン導出された脳波データは、RAM43内のワークエリアに記憶される。さらに、ラプラシアン導出されたC3及びC4に関する脳波データを所定時間毎のデータに分割し、これら分割したデータをフーリエ変換し、フーリエ変換後の全データを二乗して平均化することによってそれぞれのパワースペクトルが算出される。ここでは、ウェルチの平滑化法が用いられる。算出されたパワースペクトルは、RAM43内のワークエリアに記憶される。この脳波のパワースペクトルの算出方法は単なる一例であり、他の算出方法を用いても良い。

【0042】
その後、算出された特徴的周波数帯及び算出されたC3及びC4に関するパワースペクトルから脳波の振幅に相当する特徴量がそれぞれ算出される(ステップS4)。これら特徴量の算出は、ステップS3において算出されたC3及びC4に関するパワースペクトルのうち、特徴的な周波数帯(例えば8~13Hzミュー波帯)のみのC3及びC4に関するパワースペクトルとなるように、例えばバターワースフィルタによってバンドパス処理し、バンドパス処理して得たパワースペクトルを全波整流処理(絶対値化処理)し、全波整流処理したパワースペクトルを例えば1秒等の所定の窓幅で移動平均処理(ローパスフィルタ処理)するものである。このようにして算出されたC3に関する脳波の特徴量x及びC4に関する脳波の特徴量xは、RAM43内のワークエリアに記憶される。この脳波の特徴量の算出方法は単なる一例であり、他の算出方法を用いても良い。

【0043】
次いで、算出されたC3及びC4に関する脳波の特徴量から特徴量の線形判別が行われる(ステップS5)。この線形判別は、フィッシャーの線形判別法により、下式から判別結果LDAを算出するものである。ただし、xは国際10-20法のC3に関する脳波の特徴量、xは国際10-20法のC4に関する脳波の特徴量、w、w及びcは事前に設定されたパラメータである。

【0044】
LDA=w+w+c
算出された線形判別結果LDAは、RAM43内のワークエリアに記憶される。この線形判別方法は単なる一例であり、他の方法を用いても良い。

【0045】
パラメータw、w及びcは、教師付学習によって、事前に計測され計算されてラベル付けされた特徴量を使って設定される。例えば、「安静時」及び「メンタルローテーション時」を脳波から識別するために、両方のデータが入った特徴量ベクトルのセットx,x,...,x2Nを用意する。ここで、2Nは計測した回数であり、xからxまでは安静時のクラス、xN+1からx2Nはメンタルローテーション時のクラスとする。このとき、クラス間分散Sとクラス内分散Sとの比であり、次式で示すJが最大となるように、パラメータw、w及びcを設定する。

【0046】
J(w)=Tr{S′-1S′}=Tr{(ww)-1(ww)}
即ち、Jが最大となるwはS′-1S′の固有ベクトルで与えられるので、この行列の固有値を求めることでwを設定することができる。このパラメータの設定方法は単なる一例であり、他の設定方法を用いても良い。

【0047】
次いで、算出された線形判別結果LDAが表示ディスプレイ14上に表示される(ステップS6)。図7は表示ディスプレイ14上に表示され、患者へフィードバックされる判別結果LDAの一例を示している。同図において、横軸は時間、縦軸は線形判別結果LDAをそれぞれ表しており、この例では星マークで示される表される線形判別結果LDAが時間の経過に従って左から右へ一定の速度で移動する。本実施形態においては、1トライアルを8secとし、画面の更新速度が120Hzであるため、約4msecに一度、星マークが横軸方向へ移動することとなる。この表示方法は単なる一例であり、他の表示方法を用いても良い。

【0048】
患者は、表示ディスプレイ14上のこの星マークの動きを注視し、画面上に色分けして示されるメンタルローテーション時に星マークが上方へ上がるように繰り返して訓練する。即ち、この訓練を終了するかどうか判別し(ステップS7)、終了しない場合(NOの場合)、ステップS3に戻り、新たに計測した脳波からパワースペクトルを算出して以後のステップS4~S7の処理を繰り返す。ステップS7において、訓練を終了する場合(YESの場合)は、この処理動作を終了する。

【0049】
図8は本実施形態のリハビリテーション装置によって訓練したことによるマクギル(McGill)痛みの質問票(MPQ)のスコアの一例を示している。

【0050】
痛みの評価については、一般的に臨床で用いられている日本語版McGill痛みの質問票(MPQ)を用いた。このMPQは、1~20群に分類された78の単語と痛みの時間による変化、痛みの強さに関する質問から構成されている。1~10群は痛みの表現、11~15群は痛みの感情的表現、17~20群はその他となっている。各群内の単語は疼痛の弱い順に並べられて点数化され、全体を加算した合計点数で評価が行われる。MPQスコアは、低いほど痛みが弱いことを示している。

【0051】
複合性局所疼痛症候群である患者(男性、60歳代)において、試用実験を行った。使用前は、各関節がワイヤで締め付けられ頭部と共鳴するような痛みを感じていたが、試用を繰り返すことで図8に示すようにこの痛みが軽減した。なお、気温が低い季節では痛みが増加し易いため、痛み強度の傾向が分かりにくいが、試用によりMPQスコアが減少していることが分かる。

【0052】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、リハビリ対象者は、脳波を計測するのみで表示画面を見ながら皮質興奮性が高くなるようにメンタルローテーションを行うことにより、痛みを抑制する訓練を行うことができる。即ち、リハビリ対象者への刺激なしに、痛みを低減し患者に負担をかけない新規なリハビリテーション装置として、これまで適用されていなかった患者群までBMI研究の適用範囲を広げることが可能となる。

【0053】
なお、上述した実施形態においては、メンタルローテーション時と安静時との脳波を計測してパワーが大きく変化する特徴的な周波数帯を算出しているが、リハビリ対象者が手を伸ばしたり指を曲げたりすることを含む身体の運動を実際に行っている運動時と安静時との脳波を計測して特徴的な周波数帯を算出しても良いし、リハビリ対象者がこのような運動をイメージしている運動イメージ時と安静時との脳波を計測して特徴的な周波数帯を算出しても良い。また、このような計測ができない場合は、パワースペクトルのピークより特徴的な周波数帯を決める。例えば、8~13Hzとする。

【0054】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0055】
10 脳波電極
11 生体信号増幅器
12 デジタルコンピュータ
13 信号処理部
14 表示ディスプレイ
40 バス
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 HDD
45 画像処理部
46 外部メモリ駆動装置
47 入出力インタフェース
48 BD/DVD/CD
49 キーボード
50 マウス
60 パワースペクトル算出手段
61 特徴的周波数帯算出手段
62 特徴量算出手段
63 線形判別手段
64 表示制御手段











図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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