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明細書 :同位体を含有するリン酸の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-082912 (P2016-082912A)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
発明の名称または考案の名称 同位体を含有するリン酸の製造方法
国際特許分類 C12P   3/00        (2006.01)
C05B  17/00        (2006.01)
C01B  25/22        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12P 3/00 ZNAZ
C05B 17/00
C01B 25/22 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-217664 (P2014-217664)
出願日 平成26年10月24日(2014.10.24)
発明者または考案者 【氏名】黒田 章夫
【氏名】本村 圭
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4H061
Fターム 4B024AA03
4B024AA07
4B024BA11
4B024CA02
4B024CA04
4B024DA06
4B024EA04
4B024GA11
4B064AA02
4B064CA21
4B064CB04
4B064CB11
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC07
4B064CD01
4B064CD30
4B064DA11
4H061AA01
4H061BB21
要約 【課題】同位体を含有するリン酸の安全な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法は、酵素によって、同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることにより、同位体を含有するリン酸を合成する工程、または、酵素によらず、同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、同位体を含有するリン酸を合成する工程、を有する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
酵素によって、所定の同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する酵素反応工程、または、
酵素によらず、所定の同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する加水分解反応工程、
を有することを特徴とする同位体を含有するリン酸の製造方法。
【請求項2】
上記同位体は、酸素の安定同位体であることを特徴とする請求項1に記載の同位体を含有するリン酸の製造方法。
【請求項3】
上記同位体は、17O、または、18Oであることを特徴とする請求項2に記載の同位体を含有するリン酸の製造方法。
【請求項4】
上記酵素反応工程に亜リン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、亜リン酸デヒドロゲナーゼであり、
上記酵素反応工程にリン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、ピロホスファターゼであり、
上記酵素反応工程にポリリン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、ポリホスファターゼであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の同位体を含有するリン酸の製造方法。
【請求項5】
上記加水分解反応工程では、pH3以下の酸性条件下、または、70℃以上の温度条件下で、所定の同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、同位体を含有するリン酸を合成することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の同位体を含有するリン酸の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体を含有するリン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上のリン酸には限りがあるため、特に農業分野などでは、肥料等として使用されるリン酸を効率よく利用および再利用する技術に注目が集まっている。
【0003】
リン酸を効率よく利用および再利用するためには、肥料として土壌に加えたリン酸の何割が生体内に取り込まれるか、換言すれば、肥料として土壌に加えたリン酸の何割が生体内に取り込まれずに残留するのか、を知る必要がある。
【0004】
例えば、何らかの標識されたリン酸を、所定の量(以下、初期量と呼ぶ)だけ土壌へ加えた後、当該土壌を用いて所望の植物を栽培する。次いで、栽培終了後に、土壌中に残留している標識されたリン酸の量(以下、残留量と呼ぶ)を測定する。このとき、初期量から残留量を引いた量が、植物に取り込まれた量となる。
【0005】
一般に、農地に撒布された肥料中のリンの多くは、農作物に吸収されずに、土壌中に存在する鉄やアルミなどと結合して、農作物に利用されない不活性なリンとして固定される。なお、土壌や肥料の形態にもよるが、日本の一般的な土壌の場合、撒布されたリンの約80%が、不活性なリンとして固定されると言われている。
【0006】
リン肥料の効果を評価するためには、農作物に利用能な可溶性リン酸を、どれだけ土壌に供給できるのかを、科学的に定量する技術が必要である。これまで、トルオーグ法などを用いて土壌中の可溶性リン酸の存在量が評価されてきたが、土壌へ投入される肥料中のリン酸と、元々土壌中に存在するリン酸と、を区別できないという問題があった。
【0007】
リンの放射性同位体は存在するが、当該放射性同位体の野外での使用は制限される。リンの安定同位体は存在しないが、酸素の安定同位体(例えば、18O)は、自然界にも0.2%の存在比で含まれており、生体や環境への有害な影響はない。従って、安定同位体(例えば、18O)でリン酸を標識すれば、当該リン酸を、質量分析計で区別、および、追跡できる。また、農業分野(具体的には、肥料)に限らず、畜産分野、食品・医薬品分野、環境分野など、リン酸の生物学的利用能の評価や動態モニタリングが重要な意味をもつ広範な産業分野で、安定同位体で標識されたリン酸が、活用され得る。
【0008】
それ故に、現在、酸素の安定同位体が導入されたリン酸、および、当該リン酸の合成方法の開発が進められている。
【0009】
例えば、非特許文献1には、同位体(例えば、18O)を含有する水と、五塩化リン(PCl)とを反応させることによって、同位体を含有するリン酸を製造する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献1には、同位体(例えば、18O)を含有する酸化剤で3価リン化合物を酸化することによって、上記同位体を含有する5価のリン酸化合物を合成する酸化工程を含む、同位体含有リン酸化合物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】WO2012/153704 A1(2012年11月15日公開)
【0012】

【非特許文献1】Eric S. Melby et. Al., “Synthesis and Detection of Oxygen-18 Labeled Phosphate” PLoS ONE/1414115769257_0.org , April 2011, Volume 6, Issue 4, e18420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のような従来技術には、原料の五塩化リンが空気中の酸素により酸化されやすく、五塩化リンそのものが有毒であり、更に、反応後100℃で2時間加熱をして生成した塩化水素を除去する必要がある、など問題点がある。
【0014】
また、上述のような従来技術では、非常に有毒な物質が発生するので、安全キャビネットが必要になるという問題点がある。
【0015】
また、特許文献1に記載の技術では、ヨウ素を含むTHF/ピリジン/水の混合液など、特殊で環境にとって好ましくない物質を、同位体を含有するリン酸の合成に用いる必要がある、等の理由から、同位体を含有するリン酸を安全に製造することができないという問題点を有している。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、同位体を含有するリン酸の安全な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法は、上記課題を解決するために、酵素によって、所定の同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する酵素反応工程、または、酵素によらず、所定の同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する加水分解反応工程、を有することを特徴としている。
【0018】
本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法では、上記同位体は、酸素の安定同位体であることが好ましい。
【0019】
本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法では、上記同位体は、17O、または、18Oであることが好ましい。
【0020】
本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法では、上記酵素反応工程に亜リン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、亜リン酸デヒドロゲナーゼであり、上記酵素反応工程にリン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、ピロホスファターゼであり、上記酵素反応工程にポリリン酸を用いる場合、当該酵素反応工程に用いられる上記酵素は、ポリホスファターゼであることが好ましい。
【0021】
本発明の同位体を含有するリン酸の製造方法では、上記加水分解反応工程にて、pH3以下の酸性条件下、または、70℃以上の温度条件下で、所定の同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、同位体を含有するリン酸を合成することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明であれば、同位体を含有するリン酸を安全に作製することができる。
【0023】
本発明であれば、安全キャビネットが無くても、同位体を含有するリン酸を製造することができる。
【0024】
本発明であれば、有機溶媒や特殊な酸化剤が無くても、同位体を含有するリン酸を製造することができる。
【0025】
本発明であれば、同位体を含有するリン酸を大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例における、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いた場合の質量分析試験の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例における、ピロホスファターゼを用いた場合の質量分析試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例における、ポリホスファターゼを用いた場合の質量分析試験の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における、酸加水分解を行った場合の質量分析試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。

【0028】
本実施の形態の同位体を含有するリン酸の製造方法は、酵素によって、同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する酵素反応工程、または、酵素によらず、同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する加水分解反応工程、を有している。

【0029】
以下に、酵素反応工程、および、加水分解反応工程の各々について説明する。

【0030】
〔1.酵素反応工程〕
本実施の形態の同位体を含有するリン酸の製造方法は、酵素によって、所定の同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する酵素反応工程を有し得る。本明細書において「酵素によって」とは、酵素の触媒作用によって、所定の同位体を含有する水と、亜リン酸、リン酸、または、ポリリン酸とを反応させることを意図する。

【0031】
酵素は基質特異性が高いので、酵素反応工程を用いれば、同位体を含有する不純物の生成を抑えながら、同位体を含有するリン酸を収率高く合成することができる。

【0032】
また、酵素は各酵素に特有の反応メカニズムにしたがって反応を進めるので、酵素反応工程を用いれば、所望の箇所に同位体が導入されたリン酸、および、所望の数(例えば、1個~4個)の同位体が導入されたリン酸を合成することができる。つまり、酵素反応工程を用いれば、所望の品質を有するリン酸(例えば、均一なリン酸)を、精度高く合成することができる。

【0033】
上記水が含有する同位体は、特に限定されないが、自然界における存在比が小さな同位体(例えば、同一元素における存在比が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下である同位体)であることが好ましい。

【0034】
更に具体的に、水が含有する同位体は、酸素の同位体(例えば、酸素の安定同位体(例えば、17O、または、18O))であることが好ましい。

【0035】
後述するように、酵素反応工程では、水に含有される酸素が、生成物であるリン酸に導入される。それ故に、上記構成であれば、所定の同位体を含有するリン酸を効率よく作製することができる。

【0036】
また、安定同位体であれば、放射能を発しないので、被ばくの危険性がなく、専用の施設も不要であることから、取扱い性に優れ、かつ、コストを抑えることができる。また、安定同位体であれば、同位体を含有するリン酸が経時的に物性を変化させることがないので、長期間にわたってトレースすることができる。

【0037】
上述した安定同位体の中では、18Oがより好ましい。その理由は、18Oを含有する水であれば、純度の高い市販品を容易に入手することができるからである。

【0038】
本実施の形態の同位体を含有するリン酸の製造方法では、酵素反応工程に亜リン酸を用いる場合、酵素反応を触媒する酵素は、亜リン酸デヒドロゲナーゼであることが好ましく、酵素反応工程にリン酸を用いる場合、酵素反応を触媒する酵素は、ピロホスファターゼであることが好ましく、酵素反応工程にポリリン酸を用いる場合、酵素反応を触媒する酵素は、ポリホスファターゼであることが好ましい。

【0039】
以下に、各酵素の反応系について説明する。

【0040】
(A.各酵素の反応系について)
以下に、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いた場合の反応系を示す。以下に示すように、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いれば、所定の同位体を含有する水、および、亜リン酸から、当該同位体を含有するリン酸を合成することができる。なお、下記反応系では、用いる同位体の一例として「18O」を用いているが、本発明は、当該構成に限定されない。

【0041】
【化1】
JP2016082912A_000002t.gif
以下に、ピロホスファターゼを用いた場合の反応系を示す。以下に示すように、ピロホスファターゼを用いれば、所定の同位体を含有する水、および、リン酸から、当該同位体を含有するリン酸を合成することができる。なお、下記反応系では、用いる同位体の一例として「18O」を用いているが、本発明は、当該構成に限定されない。

【0042】
【化2】
JP2016082912A_000003t.gif
以下に、ポリホスファターゼを用いた場合の反応系を示す。以下に示すように、ポリホスファターゼを用いれば、所定の同位体を含有する水、および、ポリリン酸から、当該同位体を含有するリン酸を合成することができる。なお、下記反応系では、用いる同位体の一例として「18O」を用いているが、本発明は、当該構成に限定されない。

【0043】
【化3】
JP2016082912A_000004t.gif
以下に、各酵素の詳細について説明する。

【0044】
(B.亜リン酸デヒドロゲナーゼについて)
亜リン酸デヒドロゲナーゼとしては特に限定されず、周知の亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いることができる。

【0045】
例えば、以下の生物に由来する亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質、または、当該亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の変異型タンパク質を用い得る。更に具体的に、上記変異型タンパク質は、以下の生物に由来する亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、であり得る。

【0046】
上記生物、および、当該生物の亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のAccession Numberとしては、Ralstonia sp. 4506(Accession Number:AEQ29500)、Pseudomonas stutzeri WM88(Accession Number:AAC71709)、Desulfotignum phosphitoxidans(Accession Number:WP_006968138)、Dietzia cinnamea(Accession Number:WP_007633964)、Methylobacterium extorquens(Accession Number:WP_003596049)、Comamonas testosteroni(Accession Number:WP_003056092)、Acidovorax ebreus(Accession Number:WP_015913021)、Cupriavidus metallidurans(Accession Number:WP_024569576)、Thioalkalivibrio sulfidiphilus (Accession Number:WP_012637486)、Klebsiella pneumoniae(Accession Number:YP_008999123)、Pseudomonas aeruginosa SCV20265(Accession Number:YP_008980032)、Marinobacter algicola(Accession Number:WP_007151956)、Marinobacter hydrocarbonoclasticus ATCC 49840(Accession Number:YP_005429823)、Shewanella putrefaciens 200(Accession Number:YP_006011140)、Prochlorococcus sp. scB243_498I20(Accession Number:WP_025955540)、Cyanothece sp. ATCC 51142(Accession Number:YP_001803974)、Trichodesmium erythraeum(Accession Number:WP_011610233)、Nostoc sp. PCC 7120(Accession Number:WP_010994144)、Nodularia spumigena(Accession Number:WP_006198879)、Nostoc punctiforme(Accession Number:WP_012409720)、Gallionella capsiferriformans(Accession Number:WP_013294822)、Burkholderia vietnamiensis(Accession Number:WP_011875617)、Acinetobacter radioresistens SK82(Accession Number:EET83888)、Herminiimonas arsenicoxydans(Accession Number:YP_001101443)、Alcaligenes faecalis(Accession Number:AAT12779)、および、Oxalobacter formigenes(Accession Number:WP_005882154)を挙げることができる。

【0047】
更に具体的に、上記亜リン酸デヒドロゲナーゼは、下記(a)または(b)にて示されるポリペプチドを少なくとも一部分として含むものであることが好ましい:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド。

【0048】
更に具体的に、上記亜リン酸デヒドロゲナーゼは、下記(g)または(h)にて示されるポリヌクレオチドを少なくとも一部分として含むポリヌクレオチドにコードされたものであることが好ましい:
(g)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(h)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【0049】
なお、上記ポリヌクレオチドは、DNA(deoxyribonucleic acid)であってもよいし、RNA(ribonucleic acid)であってもよい。

【0050】
ポリペプチドが亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有しているか否かは、上述した反応系にしたがって確認することができる。具体的に、NAD依存的(または、NADP依存的)な亜リン酸の酸化によって生成される、NADH(または、NADPH)、および/または、リン酸(例えば、所定の同位体を含有するリン酸)を検出することによって確認することができる。なお、NADH(または、HADPH)およびリン酸の検出方法は周知であるので、当該周知の方法(例えば、質量分析法)にしたがってNADH(または、HADPH)およびリン酸の各々を検出すればよい。

【0051】
(C.ピロホスファターゼについて)
ピロホスファターゼとしては特に限定されず、周知のピロホスファターゼを用いることができる。

【0052】
例えば、以下の生物に由来するピロホスファターゼタンパク質、または、当該ピロホスファターゼタンパク質の変異型タンパク質を用い得る。更に具体的に、上記変異型タンパク質は、以下の生物に由来するピロホスファターゼタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチド、であり得る。

【0053】
上記生物、および、当該生物のピロホスファターゼタンパク質のAccession Numberとしては、Saccharomyces cerevisiae(Accession Number:CAA84949)、Geobacillus stearothermophilus(Accession Number:KFL15661)、Escherichia coli K-12 MG1655(Accession Number:AAC77183)、Halomonas salina(Accession Number:KGE76985)、Photobacterium phosphoreum ANT220(Accession Number:CDN97028)、Oceanimonas sp. GK1(Accession Number:YP_005091637)、Segetibacter koreensis(Accession Number:WP_026260162)、Clostridium ultunense(Accession Number:WP_005584199)、Mollicutes bacterium HR2(Accession Number:KFZ26844)、Synechococcus elongatus(Accession Number:WP_011242486)、Sulfobacillus acidophilus(Accession Number:WP_013986710)、Cyanothece sp. PCC 7424(Accession Number:WP_015955263)、Mollicutes bacterium HR1(Accession Number:AIO19553)、Geitlerinema sp. PCC 7105(Accession Number:WP_017661683)、Thermosynechococcus sp. NK55a(Accession Number:WP_024124917)、Cylindrospermopsis raciborskii(Accession Number:WP_006277419)、Prochlorothrix hollandica(Accession Number:WP_016924562)、Klebsiella pneumoniae(Accession Number:WP_023283153)、Salmonella bongori NCTC 12419(Accession Number:YP_004732643)、Enterobacter aerogenes(Accession Number:WP_015368588)、Enterococcus gallinarum EGD-AAK12(Accession Number:ERE47147)、Muricauda ruestringensis DSM 13258(Accession Number:AEM70984)、Nostoc sp. PCC 7107(Accession Number:YP_007049604)、Stanieria cyanosphaera PCC 7437(Accession Number:AFZ35507)、Pseudanabaena sp. PCC 7367(Accession Number:AFY69055)、Calothrix sp. PCC 6303(Accession Number:YP_007139175)、Streptomyces coelicolor A3(2)(Accession Number:NP_627615)を挙げることができる。

【0054】
更に具体的に、上記ピロホスファターゼは、下記(c)または(d)にて示されるポリペプチドを少なくとも一部分として含むものであることが好ましい:
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(d)配列番号3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチド。

【0055】
更に具体的に、上記ピロホスファターゼは、下記(i)または(j)にて示されるポリヌクレオチドを少なくとも一部分として含むポリヌクレオチドにコードされたものであることが好ましい:
(i)配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(j)配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【0056】
なお、上記ポリヌクレオチドは、DNA(deoxyribonucleic acid)であってもよいし、RNA(ribonucleic acid)であってもよい。

【0057】
ポリペプチドがピロホスファターゼ活性を有しているか否かは、上述した反応系にしたがって確認することができる。具体的に、リン酸から生成される、ポリリン酸および/またはリン酸(例えば、所定の同位体を含有するリン酸)を検出することによって確認することができる。なお、ポリリン酸および/またはリン酸の検出方法は周知であるので、当該周知の方法(例えば、質量分析法)にしたがってポリリン酸および/またはリン酸を検出すればよい。

【0058】
(D.ポリホスファターゼについて)
ポリホスファターゼとしては特に限定されず、周知のポリホスファターゼを用いることができる。

【0059】
例えば、以下の生物に由来するポリホスファターゼタンパク質、または、当該ポリホスファターゼタンパク質の変異型タンパク質を用い得る。更に具体的に、上記変異型タンパク質は、以下の生物に由来するポリホスファターゼタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ポリホスファターゼ活性を有するポリペプチド、であり得る。

【0060】
上記生物、および、当該生物のポリホスファターゼタンパク質のAccession Numberとしては、Escherichia coli K-12 MG1655(Accession Number:NP_416997)、Saccharomyces cerevisiae(Accession Number:AAA65933)、Laccaria bicolor S238N-H82(Accession Number:EDR10579)、Neisseria gonorrhoeae FA 1090(Accession Number:YP_208125)、Burkholderia pseudomallei K96243(Accession Number:YP_107992)、Klebsiella pneumoniae 909957(Accession Number:ESA99976)、Thermus sp. CCB_US3_UF1(Accession Number:AEV16178)、Bacillus thuringiensis IBL 4222(Accession Number:EEN01649)Methylophilaceae bacterium 11(Accession Number:EUJ10002)、Pseudomonas denitrificans ATCC 13867(Accession Number:AGI22156)、Enterobacter aerogenes KCTC 2190(Accession Number:AEG95063)、Pseudomonas aeruginosa DK2(Accession Number:AFM67807)、Yersinia pseudotuberculosis IP 32953(Accession Number:YP_071310)、Beggiatoa alba B18LD(Accession Number:EIJ43068)、Bradyrhizobium sp. WSM1253(Accession Number:EIG56575)、Clostridium pasteurianum BC1(Accession Number:YP_007941729)、Synechococcus sp. PCC 6312(Accession Number:AFY60545)、Vibrio cholerae IEC224(Accession Number:YP_005332544)、Rhizobium grahamii CCGE 502(Accession Number:EPE99206)、Synechococcus sp. PCC 6312(Accession Number:YP_007061088)、Methanosarcina acetivorans C2A(Accession Number:AAM05741)、Sulfolobus acidocaldarius(Accession Number:WP_024084421)、Ralstonia pickettii DTP0602(Accession Number:YP_008596570)、Serratia marcescens FGI94(Accession Number:YP_007345710)、Alteromonas macleodii AltDE1(Accession Number:YP_006975703)、Agrobacterium tumefaciens LBA4213 (Ach5) (Accession Number:AHK01020)、Acetobacter malorum(Accession Number:KFL88337)を挙げることができる。

【0061】
更に具体的に、上記ポリホスファターゼは、下記(e)または(f)にて示されるポリペプチドを少なくとも一部分として含むものであることが好ましい:
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号5のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、ポリホスファターゼ活性を有するポリペプチド。

【0062】
更に具体的に、上記ポリホスファターゼは、下記(k)または(l)にて示されるポリヌクレオチドを少なくとも一部分として含むポリヌクレオチドにコードされたものであることが好ましい:
(k)配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(l)配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ポリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【0063】
なお、上記ポリヌクレオチドは、DNA(deoxyribonucleic acid)であってもよいし、RNA(ribonucleic acid)であってもよい。

【0064】
ポリペプチドがポリホスファターゼ活性を有しているか否かは、上述した反応系にしたがって確認することができる。具体的に、ポリリン酸から生成される、ポリリン酸(例えば、分子量が小さくなったポリリン酸)および/またはリン酸(例えば、所定の同位体を含有するリン酸)を検出することによって確認することができる。なお、ポリリン酸および/またはリン酸の検出方法は周知であるので、当該周知の方法(例えば、質量分析法)にしたがってポリリン酸および/またはリン酸を検出すればよい。

【0065】
(E.亜リン酸デヒドロゲナーゼ、ピロホスファターゼ、および、ポリホスファターゼについて)
上記(b)のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであり、上記(d)のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチドであり、上記(f)のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、かつ、ポリホスファターゼ活性を有するポリペプチドである。

【0066】
このとき、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加される部位は特に限定されず、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された後のポリペプチドが亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性、ピロホスファターゼ活性、または、ポリホスファターゼ活性を有していれば、タンパク質中のどの部位であってもよい。

【0067】
また、「1若しくは数個のアミノ酸」が意図するアミノ酸の数は特に限定されないが、15個以内、より好ましくは14個以内、より好ましくは13個以内、より好ましくは12個以内、より好ましくは11個以内、より好ましくは10個以内、好ましくは9以内の、より好ましくは8個以内、より好ましくは7個以内、より好ましくは6個以内、より好ましくは5個以内、より好ましくは4個以内、より好ましくは3個以内、より好ましくは2個以内、最も好ましくは1個以内のアミノ酸、である。

【0068】
上記(b)、(d)および(f)の各々のポリペプチドは、配列番号1、配列番号3および配列番号5の各々のアミノ酸配列と、85%以上、より好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性、ピロホスファターゼ活性およびポリホスファターゼ活性の各々を有するポリペプチドであってもよい。

【0069】
アミノ酸配列の相同性は、公知の方法で求めることができる。具体的には、GENETYX-WIN(株式会社ゼネティックス社製)を、GENETYX-WINのマニュアルに従って使用し、例えば、特定のアミノ酸配列と比較対象のアミノ酸配列とのホモロジーサーチ(homology search)を行い、同一のアミノ酸の割合(%)として相同性を算出することができる。更に具体的には、比較するアミノ酸配列のうちの長い方のアミノ酸配列の総アミノ酸数に対する、同一のアミノ酸の数の割合(%)として、相同性を算出することができる。

【0070】
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、当該ポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけでなく、天然のポリペプチドにおいて、当該ポリペプチドの構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。

【0071】
好ましい変異としては、アミノ酸の置換、欠失、または付加を挙げることができる。上述した変異の中では、アミノ酸の置換が更に好ましい。

【0072】
アミノ酸の置換は、保存的置換であることが好ましい。なお、保存的置換とは、特定のアミノ酸から、当該アミノ酸と同様な化学的性質および/または構造を有する他のアミノ酸に置換されることをいう。化学的性質としては、例えば、疎水性度(疎水性および親水性)、電荷(中性、酸性および塩基性)が挙げられる。構造としては、例えば、側鎖、または、側鎖の官能基として存在する芳香環、脂肪炭化水素基およびカルボキシル基が挙げられる。

【0073】
保存的置換の例としては、例えば、セリンとスレオニンとの置換、リジンとアルギニンとの置換、およびフェニルアラニンとトリプトファンアミノとの置換、が挙げられる。勿論、本発明は、これらの置換に限定されない。

【0074】
上記(h)のポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、上記(j)のポリヌクレオチドは、配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ピロホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、上記(l)のポリヌクレオチドは、配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ポリホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。

【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルタを洗浄することが意図されるが、ハイブリダイゼーションさせるポリヌクレオチドによって、高ストリンジェンシーでの洗浄条件は適宜変更され、例えば、哺乳類由来DNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.5×SSC中にて65℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、E.coli由来DNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にて68℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、RNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にて68℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、オリゴヌクレオチドを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にてハイブリダイゼーション温度での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましい。また、上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている周知の方法で行うことができる。

【0076】
上述した酵素としては、周知の方法で作製したものを用いることも可能であるし、市販のものを用いることも可能である。上述した酵素を周知の方法で作製する場合、その方法は、特に限定されない。例えば、以下のようにして、上述した酵素を作製することができる。

【0077】
まず、所望の酵素のアミノ酸配列をコードするDNAを作製する。例えば、所望の酵素のアミノ酸配列に基づいて当該DNAを化学合成してもよいし、所望の酵素を有する生物のゲノムまたはcDNAライブラリー等を鋳型としたPCR法によって当該DNAを増幅してもよい。

【0078】
次いで、作製したDNAを、所望の発現ベクターに挿入する。なお、当該発現ベクターには、予め所望のタグ(例えば、Hisタグ、Mycタグ、HAタグ、GSTタンパク質など)をコードするDNAが挿入されており、作製したDNAを発現ベクターに挿入したときに、当該DNAと所望のタグをコードするDNAとが、インフレームにて連結されるようになっている。つまり、当該発現ベクターは、所望の酵素と所望のタグとの融合タンパク質を発現することができる。

【0079】
発現ベクターとしては特に限定されず、宿主に応じて適宜選択することができる。上記ベクターは、導入されるべき宿主に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有することが可能である。プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)などが挙げられる。また、上記プロモーターとしては、IPTGなどによって発現を誘導することが可能な発現誘導性プロモーターであってもよい。

【0080】
上記発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、アンピシリン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、発現ベクターが宿主に導入されたか否か、さらには、所望の酵素が宿主中で確実に発現しているか否かを確認することができる。

【0081】
次いで、上記発現ベクターを所望の宿主へ導入して、当該宿主内で、所望の酵素と所望のタグとの融合タンパク質を発現させる。

【0082】
上記発現ベクターを宿主へ導入する方法は特に限定されず、適宜、周知の方法を用いることが可能である。例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。更に具体的には、エシェリヒア属に属する宿主微生物に発現ベクターを導入する場合は、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAを導入する方法や、エレクトロポレーション法を用いる方法が適用され得る。

【0083】
上記宿主としては特に限定されず、適宜、所望の宿主を用いることが可能である。例えば、大腸菌(例えば、Escherichia coliなど)等の細菌、酵母(例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなど)、昆虫細胞、線虫(例えば、Caenorhabditis elegansなど)、アフリカツメガエル(例えば、Xenopus laevisなど)の卵母細胞、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)や各種ヒト培養細胞などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。

【0084】
次いで、所望の酵素と所望のタグとの融合タンパク質を発現している宿主を、所望の溶液中で破砕して破砕溶液を得、更に、当該破砕溶液を遠心分離して上清を得る。

【0085】
上記破砕に用いる溶液は、特に限定されないが、例えば、界面活性剤(例えば、Tween-20(登録商標)、Triton-X100(登録商標)またはSDSなど)、NaCl、または、これらの両方を含む溶液であり得る。

【0086】
上記溶液における界面活性剤の濃度は特に限定されないが、例えば、0%(w/v)以上1.0%(w/v)以下であってもよく、0%(w/v)以上0.5%(w/v)以下であってもよく、0%(w/v)以上0.3%(w/v)以下であってもよく、0%(w/v)以上0.1%(w/v)以下であってもよく、0%(w/v)以上0.01%(w/v)以下であってもよい。

【0087】
最後に、タグと特異的に結合するカラム(例えば、市販のカラム)に上記上清を供して、当該カラムに、所望の酵素と所望のタグとの融合タンパク質を結合させる。そして、当該カラムを所望の溶液にて洗浄した後、当該カラムから、上記融合タンパク質を溶出する。

【0088】
以上の方法にて、上述した酵素を作製することができる。なお、上記方法は、単なる一例であって、本発明は、当該方法に限定されない。

【0089】
〔2.加水分解反応工程〕
本実施の形態の同位体を含有するリン酸の製造方法は、酵素によらず、所定の同位体を含有する水と、ポリリン酸とを反応させることにより、上記同位体を含有するリン酸を合成する加水分解反応工程を有し得る。本明細書において「酵素によらず」とは、酵素の触媒作用によらず、所定の同位体を含有する水とポリリン酸とを反応させること、換言すれば、酵素の触媒作用によらず、所定の同位体を含有する水を用いて、ポリリン酸を酸加水分解させること、を意図する。

【0090】
以下に、加水分解反応工程における反応系を示す。以下に示すように、ポリリン酸を酸加水分解することによって、所定の同位体を含有する水、および、ポリリン酸から、当該同位体を含有するリン酸を合成することができる。なお、下記反応系では、用いる同位体の一例として「18O」を用いているが、本発明は、当該構成に限定されない。

【0091】
【化4】
JP2016082912A_000005t.gif
上記水が含有する同位体は、特に限定されないが、自然界における存在比が小さな同位体(例えば、同一元素における存在比が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下である同位体)であることが好ましい。

【0092】
更に具体的に、水が含有する同位体は、酸素の同位体(例えば、酸素の安定同位体(例えば、17O、または、18O))であることが好ましい。

【0093】
加水分解反応工程では、水に含有される酸素が、生成物であるリン酸に導入される。それ故に、上記構成であれば、所定の同位体を含有するリン酸を効率よく作製することができる。

【0094】
また、安定同位体であれば、被ばくの危険性が少なく、専用の施設も不要であることから、取扱い性に優れ、かつ、コストを抑えることができる。また、安定同位体であれば、同位体を含有するリン酸が経時的に物性を変化させることがないので、長期間にわたってトレースすることができる。

【0095】
上述した安定同位体の中では、18Oがより好ましい。その理由は、18Oを含有する水であれば、純度の高い市販品を容易に入手することができるからである。

【0096】
酸加水分解の条件としては特に限定されない。

【0097】
例えば、酸加水分解に用いる溶液(換言すれば、同位体を含有する水と、ポリリン酸とを溶解させる溶液)としては、塩酸を用いることができるが、pHが低い酸であればよい。当該構成によれば、安全かつ効率よく、所定の同位体を含有するリン酸を合成することができる。

【0098】
酸加水分解に用いる溶液のpHは、3以下であり得るが、2以下であることが好ましく、1以下が更に好ましい(pHは、低いほど好ましい)。当該構成によれば、安全かつ効率よく、所定の同位体を含有するリン酸を合成することができる。

【0099】
酸加水分解時の上記溶液の温度は、70℃以上(例えば、70℃~100℃)であり得るが、90℃~100℃であることが好ましい。当該構成によれば、安全かつ効率よく、所定の同位体を含有するリン酸を合成することができる。
【実施例】
【0100】
〔1.反応方法〕
(A.亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いた反応)
5mMの濃度にて亜リン酸(Phosphonic acid、ナカライテスク)を含有する水溶液10μL、10mMの濃度にてNADを含有する水溶液10μL、1Mの濃度にてMOPS-KOH(pH7.3)を含有する水溶液2μL、3mg/mLの濃度で亜リン酸デヒドロゲナーゼ(Ralstonia sp. 4506株由来の亜リン酸デヒドロゲナーゼ:配列番号1および2に対応)(亜リン酸デヒドロゲナーゼ(BENX-PTXD)、バイオエネックス社)を含有する水溶液0.4μL、[18O]HO(大陽日酸株式会社)77.6μLを混合し、当該混合液を40℃で30分間インキュベートした。
【実施例】
【0101】
インキュベート後の混合液をMilliQ水で適宜希釈したサンプルを、フーリエ変換-リニアイオントラップハイブリッド質量分析計(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific)に供し、18Oが導入されたリン酸の存在比を測定した。
【実施例】
【0102】
(B.ピロホスファターゼを用いた反応)
250mMの濃度にてリン酸二水素カリウム(Potassium dihydrogenphosphate、ナカライテスク)を含有する水溶液4μL、250Mの濃度にてMgClを含有する水溶液4μL、0.5mg/mLの濃度でピロホスファターゼ(Saccharomyces cerevisiae由来のピロホスファターゼ:配列番号3および4に対応)(Pyrophosphatase, Inorganic from baker’s yeast(S. cerevisiae)、シグマ社)を含有する水溶液4μL、[18O]HO(大陽日酸株式会社)88μLを混合し、当該混合液を25℃で12時間インキュベートした。
【実施例】
【0103】
インキュベート後の混合液をMilliQ水で適宜希釈したサンプルを、フーリエ変換-リニアイオントラップハイブリッド質量分析計(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific)に供し、18Oが導入されたリン酸の存在比を測定した。
【実施例】
【0104】
(C.ポリホスファターゼを用いた反応)
0.5Mの濃度にてメタリン酸ナトリウム(Sodium metaphosphate、シグマ)を含有する水溶液1μL、50mMの濃度にてMgClを含有する水溶液1μL、2.5Mの濃度にてKClを含有する水溶液2μL、250μg/mlの濃度にてポリホスファターゼ(Escherichia coli MG1655株由来のポリホスファターゼ:配列番号5および6に対応)を含有する水溶液6μL、[18O]HO(大陽日酸株式会社)を含有する水溶液40μLを混合し、当該混合液を37℃で12時間インキュベートした。
【実施例】
【0105】
インキュベート後の混合液を80℃で10分間加熱してポリホスファターゼを失活させた後、当該混合液をMilliQ水で適宜希釈したサンプルを、フーリエ変換-リニアイオントラップハイブリッド質量分析計(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific)に供し、18Oが導入されたリン酸の存在比を測定した。
【実施例】
【0106】
(D.酵素を用いない、ポリリン酸の酸加水分解)
50mgのメタリン酸ナトリウム(Sodium metaphosphate、シグマ)、12Mの濃度にて塩酸を含有する水溶液4.2μL、[18O]HO(大陽日酸株式会社)を含有する水溶液45.8μLを混合し、当該混合液を100℃で30分間インキュベートした。
【実施例】
【0107】
インキュベート後の混合液をMilliQ水で適宜希釈したサンプルを、フーリエ変換-リニアイオントラップハイブリッド質量分析計(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific)に供し、18Oが導入されたリン酸の存在比を測定した。
【実施例】
【0108】
〔2.試験結果〕
図1~4に試験結果を示す。
【実施例】
【0109】
図1は、上述した実施例(A)の試験結果であり、更に具体的に、反応前のサンプルの試験結果と、反応後のサンプルの試験結果とを示している。
【実施例】
【0110】
図1に示すように、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いた場合には、所定の同位体を含有するリン酸が1種類だけ生成されることが明らかになった。なお、図1に示す反応後のサンプルの試験結果には、所定の同位体を含有しないリン酸の存在が示されているが、当該リン酸は、反応系に不純物として含まれる、所定の同位体を含有しない水に由来するものと考えられる。
【実施例】
【0111】
所定の同位体を含有するリン酸を1種類だけ生成したい場合には、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いることが好ましいといえる。
【実施例】
【0112】
図2は、上述した実施例(B)の試験結果であり、更に具体的に、反応前のサンプルの試験結果と、反応後のサンプルの試験結果とを示している。
【実施例】
【0113】
図2に示すように、ピロホスファターゼを用いた場合には、所定の同位体を含有するリン酸が複数種類生成されることが明らかになった。
【実施例】
【0114】
所定の同位体を含有するリン酸を複数種類生成したい場合には、ピロホスファターゼを用いることが好ましいといえる。
【実施例】
【0115】
図3は、上述した実施例(C)の試験結果であり、更に具体的に、[18O]HOの代わりに[16O]HOを用いた場合の試験結果と、[18O]HOを用いた場合の試験結果とを示している。
【実施例】
【0116】
図3に示すように、ポリホスファターゼを用いた場合には、所定の同位体を含有するリン酸が1種類だけ生成されることが明らかになった。なお、図3に示す[18O]HOを用いた場合の試験結果には、所定の同位体を含有しないリン酸の存在が示されているが、当該リン酸は、反応系に不純物として含まれる、所定の同位体を含有しない水に由来するものと考えられる。
【実施例】
【0117】
所定の同位体を含有するリン酸を1種類だけ生成したい場合には、ポリホスファターゼを用いることが好ましいといえる。
【実施例】
【0118】
図4は、上述した実施例(D)の試験結果であり、更に具体的に、[18O]HOの代わりに[16O]HOを用いた場合の試験結果と、[18O]HOを用いた場合の試験結果とを示している。
【実施例】
【0119】
図4に示すように、酸加水分解の場合、所望の同位体を含有するリン酸が複数種類生成されることが明らかになった。更に、反応系に加える、[18O]HOの量を少なくすると、所望の同位体を2原子含有するリン酸の生成量を低く抑え、かつ、所望の同位体を1原子含有するリン酸の生成量を優先させ得ることも明らかになった(図示せず)。なお、図4に示す[18O]HOを用いた場合の試験結果には、所定の同位体を含有しないリン酸の存在が示されているが、当該リン酸は、反応系に不純物として含まれる、所定の同位体を含有しない水に由来するものと考えられる。
【実施例】
【0120】
リン酸に含有される所定の同位体の数を適宜制御したい場合には、酸加水分解を用いることが好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、トレースすることができるリン酸を利用する分野(例えば、農業分野、医療分野)などに利用することができる。更に具体的に、本発明は、肥料などに利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3