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明細書 :口臭抑制剤及び口腔用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-084311 (P2016-084311A)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
発明の名称または考案の名称 口臭抑制剤及び口腔用組成物
国際特許分類 A61K   8/97        (2006.01)
A61Q  11/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61K 8/97
A61Q 11/00
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2014-218878 (P2014-218878)
出願日 平成26年10月28日(2014.10.28)
発明者または考案者 【氏名】栗原 英見
【氏名】應原 一久
【氏名】岩崎 代利子
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C083
Fターム 4B024AA01
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024HA11
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC41
4C083EE34
要約 【課題】口臭の成分であるメチルメルカプタンの産生を抑え得る口臭抑制剤及び口腔用組成物を提供する。
【解決手段】口臭予防組成物は、コウボク及び五倍子から選択される1種以上を含有する。コウボク、五倍子は、メチオニンを分解してメチルメルカプタンを産生する酵素をコードするPorphyromonas gingivalisのmgl mRNAの発現を抑制する。メチルメルカプタンの産生が抑制されることになるため、口臭を改善することができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
コウボク及び五倍子から選択される1種以上を含有する、
ことを特徴とする口臭抑制剤。
【請求項2】
請求項1に記載の口臭抑制剤を含有する、
ことを特徴とする口腔用組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、口臭抑制剤及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭は本人、あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称と定義され、近年では口臭に悩む人の割合が高まっている。口臭は、主に細菌が剥離上皮細胞、唾液などの分泌液、血漿成分、食物残渣などに含まれるタンパク質が分解される過程で発生する。口臭の臭気物質としては、揮発性硫黄化合物、揮発性窒素化合物、低級脂肪酸などが挙げられる。なかでも、揮発性硫黄化合物である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィドが主な口臭成分とされている。
【0003】
主な口臭成分である揮発性硫黄化合物は、口腔内グラム陰性嫌気性菌によって産生され、歯周炎の進行と関連していると考えられている。特にメチルメルカプタンは歯周炎患者の口腔内で高濃度に検出されている。歯周炎は口腔内の細菌による感染症であり、適切な治療を行うことで口臭は減少するが、簡易的に口臭を抑えるべく、種々の洗口剤、歯磨剤等の口腔用組成物が市場に流通している(特許文献1,2など)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-129601号公報
【特許文献2】特開平11-217321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、市場に出回っている口腔用組成物は、産生したメチルメルカプタン等を消臭し、簡易的に清涼感を自覚させることで消臭効果を期待したものであり、口臭の根本的な改善につながらない。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、口臭の成分であるメチルメルカプタンの産生を抑え得る口臭抑制剤及び口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る口臭抑制剤は、
コウボク及び五倍子から選択される1種以上を含有する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点に係る口腔用組成物は、
本発明の第1の観点に係る口臭抑制剤を含有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る口臭抑制剤は、メチオニンを分解してメチルメルカプタンを産生させる酵素(METase)をコードするPorphyromonas gingivalis(P.gingivalis)のmgl mRNAの発現を抑制する。メチルメルカプタンの産生が抑制されることになるため、口臭を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】P.gingivalis菌株間におけるmgl mRNA発現量の違いを示すグラフである。
【図2】それぞれの生薬におけるP.gingivalis W38株のメチルメルカプタン産生能を示すグラフである。
【図3】それぞれの生薬におけるP.gingivalis W38株のmgl mRNA発現に対する抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る口臭抑制剤は、コウボク及び五倍子から選択される一種以上を含有する。

【0012】
コウボクは、モクレン科カラホオノキや凹葉ホオノキ、ホオノキの樹皮や根皮を乾燥したものである。また、五倍子とは、ウルシ科ヌルデ属Rhus樹木の葉の付け根にできる虫こぶを乾燥したものである。

【0013】
口臭の主要な原因として歯周病が挙げられる。歯周病は細菌感染による感染症であり、歯周病の主な原因菌として、口腔細菌であるP.gingivalisが位置づけられている。このP.gingivalisの遺伝子であるmgl mRNAがコードしている酵素(METase(L-methionine-α-deamino-γ-mercaptomethane-lyase))によって、口臭ガスの一つであるメチルメルカプタンが産生される。

【0014】
本願の口臭抑制剤では産生したメチルメルカプタンではなく、メチルメルカプタンの産生自体を抑える。そのメカニズムは不明であるが、コウボク或いは五倍子によって、メチルメルカプタンの産生に必要な酵素をコードする遺伝子mgl mRNA自体の発現が抑制される。これにより、メチルメルカプタンの産生が抑えられるので、口臭の改善、予防が可能になる。

【0015】
また、コウボク、五倍子はいずれも漢方薬に用いられる生薬であるため、口臭抑制剤は副作用等のおそれも低い。

【0016】
口臭抑制剤は、口腔用組成物として利用される。口腔用組成物として、例えば、練歯磨剤、ジェル剤、液体歯磨剤、洗口剤、スプレー剤、パスタ剤、軟ペースト剤(クリーム状製剤)、軟膏状製剤、錠剤、顆粒剤、チューイングガム剤、キャンディー剤、トローチ剤、タブレット剤、チュアブルタブレット剤、粒カプセル剤、飲料等の形態(剤形)として用いることができる。

【0017】
口腔用組成物は、コウボク、五倍子に加えて、更に、その使用目的、剤型等に応じて適宜他の成分が配合されていてもよい。たとえば、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、アルミノシリケート、無水ケイ酸、レジン等の研磨剤;長鎖アルキル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルジエタノールアマイド、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、カラゲナン、アラビアガム、ポリビニルアルコール等の粘結剤;ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の粘稠剤;サッカリン、ステビオサイド類、グリチルリチン酸、ソーマチン等の甘味剤;デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム等の防腐;メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、ハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油等の香料;各種色素等、口腔用組成物の製造に通常使用される原料を製品の種類や用途に応じて任意に選択し、常法により製造することができる。
【実施例】
【0018】
まず、メチルメルカプタン産生能が高いP.gingivalis菌株間におけるmgl RNAの発現量について検討した。
【実施例】
【0019】
(供試菌株および培養法と菌の調整法)
本実施例で用いたP.gingivalis菌株を表1に示す。ATCC33277、ATCC49417、W83 ATCC53978、S2はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入し使用した。HW24D1、6/26は大阪大学歯学部予防歯科 天野敦雄教授から分与を受けて使用した。P.gingivalis菌株は、-80℃凍結保存してあるものを血液寒天培地(日本BD)で前培養して使用した。
【実施例】
【0020】
P.gingivalisの培養は、TSBYE[1%Yeast extract(Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)を添加したTrypticase soy broth(TSB、Difco Laboratories)]にhemin(5μg/ml)(Sigma chemical Co.)とVitamin K3(1μg/ml)(片山化学)を添加した液体培地中で37℃、2日間、嫌気状態で行った。
【実施例】
【0021】
P.gingivalisの調整は、上記の菌培養液を遠心(5,800xg,4℃,10分間)集菌後、PBS(-)で菌体を2回洗浄し、リン酸緩衝液(pH7.7)[40mMリン酸カリウム(KHPO)7g/l、50mM塩化ナトリウム(NaCl)3g/l]に懸濁し、細菌密度を吸光度OD660=1.0に調整した。
【実施例】
【0022】
【表1】
JP2016084311A_000003t.gif
【実施例】
【0023】
調整したP.gingivalisを以下のように培養してtotal RNAの精製を行い、mgl mRNAを定量した。
【実施例】
【0024】
リン酸緩衝液8700μlを含む15mlの遠沈管の中に、上記のOD660=1.0に調整したそれぞれの菌液1000μl、1mMのL-メチオニン300μlを添加し、パラフィルムでシール後、37℃、60分間培養した。次に反応液を遠心(20,400xg、4℃、5分間)した。
【実施例】
【0025】
上清を取り除き、菌体を集菌した。RNAiso Plus(タカラバイオ株式会社)500μlを加え溶菌後、クロロホルム200μlを添加して混和した。
【実施例】
【0026】
その溶液を遠心(20,400xg、4℃、15分間)によって3層に分離後、上部の水層をisopropanol(和光純薬株式会社)300μlの入ったチューブに移し、穏やかに転倒混和後、遠心(20,400xg、4℃、10分間)し、RNA沈渣を得た。
【実施例】
【0027】
これを75%ethanolで洗浄、乾燥後、50μlのDEPC(Diethylpyrocarbonate)水に溶解した。
【実施例】
【0028】
次に、total RNA中のDNA除去のためのDNase I処理を行った。DNase I(Roche,Germany)をDEPCで50倍希釈し、RNA溶液と同量加え37℃、30分間、静置した。
【実施例】
【0029】
フェノール・クロロホルム(和光純薬株式会社)溶液を100μl加え、10秒間vortex後、遠心(20,400xg、4℃、15分間)を行い2層に分離した。
【実施例】
【0030】
上部の水層を採取し、エタノール(99.5%)250μlの入ったチューブに移して混和した後、再び遠心(20,400xg、4℃、15分間)を行い、RNA沈渣を得た。
【実施例】
【0031】
これを75%ethanolで洗浄、乾燥後、50μlのDEPC水に溶解し-80℃にて保存した。
【実施例】
【0032】
精製したtotal RNAからRNA量をGeneQuant(Pharmacia LKB)を用いて測定した。
real-time PCRは、total RNAから1st Strand cDNA Synthesis Kit(Roche,Mannheim,Germany)を用いてcDNAを合成し、そのcDNAを鋳型として行うTwo-step法を用いた。
【実施例】
【0033】
逆転写反応は、まず、鋳型RNA(2μg)、10x reaction buffer [100mM Tris、500mM KCL(pH8.3)]を2μl、25mM MgClを4μl、10mM dNTPsを1μl、random primer(0.02units/μl)を1μl、RNase inhibitor(50units/μl)を0.5μl、AMV Reverse Transcriptaseを0.2μl加え、Gene Amp PCR system 9700(Applied Biosystems)で行った。逆転写反応は42℃、1時間、99℃、5分間で行った。
【実施例】
【0034】
real-time PCRによる定量方法は相対定量法を用いた。相対定量法は目的遺伝子とリファレンス遺伝子を同時に解析し、リファレンス遺伝子に比べ、目的遺伝子がどれだけ発現しているかを相対的に比較するものである。cDNAを1μl、Core Reagent Fast SYBR(r) Master Mix system(Applied Biosystem,CA,USA)を4μl、primerを0.5μl、滅菌イオン交換水を4.5μl、加えた。解析にはABI Step One Plus real-time PCR systemを用いた。本実験で使用したプライマーの塩基配列を表2に示すとともに、mgl-Fプライマーの塩基配列を配列番号1に、mgl-Rプライマーの塩基配列を配列番号2に、Pg16S rRNA-Fプライマーの塩基配列を配列番号3に、Pg16S rRNA-Rプライマーの塩基配列を配列番号4に記す。
【実施例】
【0035】
【表2】
JP2016084311A_000004t.gif
【実施例】
【0036】
それぞれのP.gingivalisにおけるmgl RNAの発現量を図1に示す。W83株のmgl mRNAの発現量が最も多いことがわかる。
【実施例】
【0037】
続いて、mgl mRNAの発現量が最も多いW83を使用し、種々の生薬を用いてmgl mRNA発現、並びに、メチルメルカプタン産生能への影響について検討した。
【実施例】
【0038】
生薬として、カンゾウ、どくだみ、オウレン、コウボク、麦門冬、カミツレ、ダイオウ、クチナシ、オウゴン、セイキョウ、ミカン、ガジュツ、クジン、ウイキョウ、黄精、枳実、五倍子、ケイヒを用いた。
【実施例】
【0039】
CHSHの産生はPerssonらの方法(Persson S, Edlund MB., (1990) The formation of hydrogen sulfide and methylmercaptan by oral bacteria. Oral Microbiol Immunol, 5: 195-201.)を一部修正して行った。滅菌済み13mlガラス製試験管のそれぞれにリン酸緩衝液870μlを入れ、更に、OD660=1.0に調整したP.gingivalis W83(100μl)、L-メチオニン(10nmol)、それぞれの生薬(100μg)を添加し、パラフィルムでシール後、37℃に静置し培養した。また、培養時間は60分間とした。また、参照例として生薬を添加しない以外、上記と同様の培養を行った。
【実施例】
【0040】
培養後、それぞれの試験管内の上層気体を1ml気密シリンジ(トップ社、東京)で採取し、0.9ml廃棄した。そして、VSCsに影響を与えないことを確認した空気0.9mlを吸引し、10倍希釈した。そのうちの0.5mlをオーラルクロマ(エフアイエス株式会社)に注入し、CHSH産生量を測定した。
【実施例】
【0041】
また、mgl mRNAの発現量の定量は、上述した手法にて行った。
【実施例】
【0042】
それぞれの生薬におけるメチルメルカプタン産生能への影響を図2に、また、mgl mRNA発現量への影響を図3に示す。
【実施例】
【0043】
図2を見ると、コウボクでは69%、五倍子では76.4%、メチルメルカプタンの産生が有意に抑制されていることがわかる。また、図3を見ると、コウボクでは78%、mgl mRNAの発現が有意に抑制されていることがわかる。
【実施例】
【0044】
以上のように、コウボク、五倍子はPgW83によるCHSH産生能を抑制していることから、口臭を抑制可能であることを立証した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述したように口臭抑制剤は、メチオニンを分解してメチルメルカプタンを産生する酵素をコードするP.gingivalisのmgl mRNAの発現を抑制する。メチルメルカプタンの産生が抑制されることになるため、口臭の改善が可能となり、種々の形態の口腔用組成物として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2