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明細書 :ヒト汗中に含まれる新規ヒスタミン遊離物質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6232618号 (P6232618)
登録日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発行日 平成29年11月22日(2017.11.22)
発明の名称または考案の名称 ヒト汗中に含まれる新規ヒスタミン遊離物質
国際特許分類 C07K  14/39        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61K  39/35        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
C07K  16/14        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07K 14/39 ZNA
C12P 21/02 C
A61K 39/00 K
A61K 39/35
A61P 37/08
A61P 17/00
C07K 16/14
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 19
微生物の受託番号 IPOD FERM BP-11111
IPOD FERM BP-11112
IPOD FERM BP-11110
全頁数 30
出願番号 特願2014-522641 (P2014-522641)
出願日 平成25年6月25日(2013.6.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/067396
国際公開番号 WO2014/003008
国際公開日 平成26年1月3日(2014.1.3)
優先権出願番号 2012145814
優先日 平成24年6月28日(2012.6.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年6月15日(2016.6.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】秀 道広
【氏名】平郡 隆明
【氏名】石井 香
【氏名】三原 祥嗣
【氏名】平郡 真記子
【氏名】イェンス-エム・シュレーダー
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
【識別番号】100138911、【弁理士】、【氏名又は名称】櫻井 陽子
審査官 【審査官】宮岡 真衣
参考文献・文献 国際公開第2009/133951(WO,A1)
特開2004-313755(JP,A)
特開2009-233557(JP,A)
国際公開第2005/005474(WO,A1)
Accession No. XM_001731984.1,Definition: Malassezia globosa CBS 7966 hypothetical protein MGL_1304 partial mRNA.,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],23-Apr-2008 uploaded [retrieved on 2013]
RASOOL O. et al.,Eur. J. Biochem.,267(14)(2000),p.4355-4361
KANBE T. et al.,Jpn. J. Med. Mycol.,44(2003),p.71-75
HIRAGUN T. et al.,Fungal protein MGL_1304 in sweat is an allergen for atopic dermatitis patients.,J. Allergy Clin. Immunol.,132(3)(2013 May),p.608-615.e4
SHINDO H. et al.,Arch. Dermatol. Res.,304(8)(Epub 2012 Apr 19),p.647-654
調査した分野 C07K 14/37-14/39
A61K 38/00
A61K 39/00
A61K 39/35
A61P 17/00
A61P 37/08
C12P 21/02
C07K 16/14
C12N 15/09
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/PDB/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Derwent Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用キットであって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質に結合する抗体を含み、スタンダードとして単離および精製された配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質をさらに含むキット。
【請求項2】
汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用キットであって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質に結合する抗体を含み、スタンダードとして、組換え蛋白質であるか、マラセチア・グロボーザ(Malassezia globosa)の培養上清または菌体溶解物から得られるものである配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質をさらに含むキット。
【請求項3】
スタンダードである配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用キットであって、単離および精製された配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質を含み、ヒト由来の試料における配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質に結合する抗体を検出するキット。
【請求項5】
汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用キットであって、組換え蛋白質であるか、マラセチア・グロボーザ(Malassezia globosa)の培養上清または菌体溶解物から得られるものである配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質を含み、ヒト由来の試料における配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質に結合する抗体を検出するキット。
【請求項6】
キットに含まれる配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項4または5に記載のキット。
【請求項7】
ヒト由来の試料がヒト血清または血漿である、請求項4-6のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
抗体がIgEまたはIgGである、請求項4-7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
抗体がIgG4である、請求項4-8のいずれかに記載のキット。
【請求項10】
ELISAである、請求項1-9のいずれかに記載のキット。
【請求項11】
スタンダードとして配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質をさらに含む、請求項4-10のいずれかに記載のキット。
【請求項12】
スタンダードである配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
アトピー性皮膚炎またはアレルギー性鼻炎の診断用である、請求項1-12のいずれかに記載のキット。
【請求項14】
減感作治療法の治療効果の判定用のキットであって、請求項4-12のいずれかに規定されるキット。
【請求項15】
単離および精製された配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質を含む、汗アレルギー治療用組成物。
【請求項16】
換え蛋白質であるか、マラセチア・グロボーザ(Malassezia globosa)の培養上清または菌体溶解物から得られるものである配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質を含む、汗アレルギー治療用組成物
【請求項17】
減感作療法用である、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
マラセチア・グロボーザ(Malassezia globosa)をpH7からpH9で培養する工程;および
配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む汗アレルギー抗原蛋白質を精製する工程を含む、汗アレルギー抗原蛋白質の製造方法。
【請求項19】
汗アレルギー抗原蛋白質が配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる、請求項18に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年6月28日に出願された日本出願第2012-145814号に基づく優先権を主張し、引用によりその全ての記載内容が本明細書に組み込まれる。
本発明は、ヒト汗中に含まれる新規ヒスタミン遊離物質の臨床的応用(患者血清中の抗原特異的抗体濃度の測定、汗抗原に対する抗体の作製、および特異的減感作療法等)に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分のアトピー性皮膚炎患者は、自己の汗や、粗精製汗抗原に対する即時型アレルギー反応を呈する。これまでに粗精製汗抗原及びそれに特異的に結合する抗体が報告されている(特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、その正確な分子(汗抗原)は不明であった。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開2005-005474号パンフレット
【特許文献2】国際公開2009-133951号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、ヒト汗より、アトピー性皮膚炎患者末梢血好塩基球からのヒスタミン遊離活性を指標としてヒト汗抗原の精製を行い、質量分析によりMalassezia globosa由来の蛋白質であるMGL_1304をヒト汗抗原として同定した。
【0005】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を提供する。例えば、本発明は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質を提供する。
【0006】
本発明は、一つの側面(aspect)において、MGL_1304部分ペプチドを提供する。例えば、本発明は、配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0007】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質およびMGL_1304部分ペプチドをコードする遺伝子を提供する。
【0008】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を提供する。
【0009】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含む、汗アレルギー抗原検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用組成物もしくはキットを提供する。
【0010】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用組成物もしくはキットを提供する。
【0011】
本発明は、一つの側面(aspect)において、
(i)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド;または
(ii)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片
を含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキットを提供する。
【0012】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物を提供する。
【0013】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体を含む、汗アレルギー抗原除去または中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材を提供する。
【0014】
本発明は、一つの側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、減感作治療の効果判定用組成物またはキットを提供する。
【0015】
本発明は、一つの側面(aspect)において、Malassezia globosaをpH7からpH9で培養する工程および汗アレルギー抗原蛋白質を精製する工程を含む、汗アレルギー抗原蛋白質の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】部分精製汗抗原(以下、QRXとも称す)をさらに精製し、質量分析でMGL_1304と一致するアミノ酸配列を検出したことを示す図である。
【図2】大腸菌を用いてMGL_1304の組換え蛋白質を作製し、CBB染色、アトピー性皮膚炎患者血清及び抗Hisタグ抗体によるウエスタンブロットを示す図である。
【図3】MGL_1304の組換え蛋白質に対する、アトピー性皮膚炎患者(AD1、AD2及びAD3)及び健常人(HC1)のヒスタミン遊離試験を示す図である。
【図4】アトピー性皮膚炎患者血清をQRX、MGL_1304それぞれで前処理し、それぞれに対する抗体の結合を互いに中和できることを示す図である。
【図5】アトピー性皮膚炎患者血清を、ヒト高親和性IgE受容体を発現するラット肥満細胞株と反応させて細胞を感作する(抗原に対する感受性を付与する)反応系において、アトピー性皮膚炎患者血清をMGL_1304で前処理すると、感作された細胞のQRXに対する反応性(ヒスタミン遊離能)が消失することを示す図である。
【図6】A:作製したMGL_1304のN末端またはC末端の欠損蛋白質を示す図である。B:MGL_1304のN末端またはC末端を欠損させた蛋白質へのアトピー性皮膚炎患者血清IgEの結合性を示す図である。CおよびD:MGL_1304のN末端またはC末端を欠損させた蛋白質のヒスタミン遊離活性を示す図である。E:MGL_1304組換え蛋白質およびその部分ペプチドのSmith2抗体、2人のアトピー性皮膚炎患者由来の血清(AD1およびAD2)への結合を示す図である。
【図7】MGL_1304組換え蛋白質を用いて、アトピー性皮膚炎患者および健常人の血清中のIgEの結合性をELISAで測定し、結合の有無が血清ドナーの好塩基球の精製汗抗原に対する反応性と一致したことを示す図である。
【図8】マラセチア菌体抽出物(M.G. lysate)、マラセチア培養上清(M.G. Sup)、MGL_1304組換え蛋白質(rMGL)及び部分精製汗抗原(QRX)を電気泳動し、1人のアトピー性皮膚炎患者血清を用いて免疫ブロットを行い、血清をTrigger FactorとrMGLの融合蛋白(rTF-MGL)で前処理するとQRXおよびrMGLへのIgEの結合性が消失することを示す図である。
【図9】マラセチア菌体抽出物(M.G. lysate)、マラセチア培養上清(M.G. Sup)、MGL_1304組換え蛋白質(rMGL)及び部分精製汗抗原(QRX)を電気泳動し、図8で使用した血清の患者と異なる1人のアトピー性皮膚炎患者血清を用いて図8と同様の免疫ブロットを行ったことを示す図である。
【図10】精製したマラセチア菌体抽出物(M. lysate(purified))、マラセチア培養上清(M. Sup(purified))及び部分精製汗抗原(sweat(QRX))を電気泳動し、1人のアトピー性皮膚炎患者血清を用いて免疫ブロットを行ったことを示す図である。
【図11】A:Myc-tagと融合させたMGL_1304遺伝子またはダニ抗原遺伝子をCOS7細胞で発現させ、その培養上清を電気泳動し、抗Myc抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。図はそのウエスタンブロッティングの結果を示す。B:部分精製汗抗原(QR)とMGL_1304組換え蛋白質(rMGL_1304)のヒスタミン遊離能の相関を示す図である。
【図12】組換えMGL_1304蛋白質をマウスに免疫して作成したモノクローナル抗体MGLab6-3、MGLab8-2、MGLab8-4、MGLab9-1、MGLab9-5、MGLab10-8、MGLab10-10、MGLab22-1、MGLab36-1およびMGLab40-1が認識するMGL_1304蛋白質の部位を示した図である。Trigger Factor (TF)、TFと融合したMGL_1304蛋白質(TF-MGL)、TFと融合したMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列1-50に相当するペプチド(TF-P1)、TFと融合したMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列46-100に相当するペプチド(TF-P2)、TFと融合したMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列96-140に相当するペプチド(TF-P3)およびTFと融合したMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列136-183に相当するペプチド(TF-P4)に対し、各抗体が認識するか否かをELISAにより試験した。組換えMGL_1304蛋白質をマウスに免疫して作成したモノクローナル抗体は、MGLab6-3を除きMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列46-100を認識すること、MGLab6-3はMGL_1304蛋白質のアミノ酸配列136-183を認識することが示された。
【図13】アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)および健常人(Nor1)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質を免疫して調製したマウスモノクローナル抗体8-2を一次抗体としてELISAプレートにコーティングし、それにQRXを結合させた。マウスモノクローナル抗体8-2とQRXの複合体に結合するIgE抗体を血清より検出した。
【図14】アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)および健常人(Nor1)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質を免疫して調製したマウスモノクローナル抗体8-2を一次抗体としてELISAプレートにコーティングし、それにrMGLを結合させた。マウスモノクローナル抗体8-2とrMGLの複合体に結合するIgE抗体を血清より検出した。
【図15】アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)および健常人(Nor1)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。Smith2抗体を一次抗体としてELISAプレートにコーティングし、それにrMGLを結合させた。マウスモノクローナル抗体8-2とrMGLの複合体に結合するIgE抗体を血清より検出した。
【図16】アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)および健常人(Nor1)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質を免疫して調製したマウスモノクローナル抗体6-3を一次抗体としてELISAプレートにコーティングし、それにrMGLを結合させた。マウスモノクローナル抗体6-3とrMGLの複合体に結合するIgE抗体を血清より検出した。
【図17】アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)および健常人(Nor1)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質を免疫して調製したマウスモノクローナル抗体8-2を一次抗体としてELISAプレートにコーティングし、それにrMGLを結合させた。マウスモノクローナル抗体8-2とrMGLの複合体に結合するIgE抗体を血清より検出した。
【図18】アレルギー性鼻炎患者(アレルギー性鼻炎1-5)、アトピー性皮膚炎患者(AD1-8)および健常人(Normal1-3)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質(rMGL)をELISAプレートにコーティングし、結合するIgE抗体を血清より検出した。各血清は10倍希釈(x10)および20倍希釈(x20)して試験に用いた。縦軸は、450nmでの吸光度を示す。
【図19】アレルギー性鼻炎患者(アレルギー性鼻炎1-5)および健常人(Normal1-3)の血清中の汗抗原特異的IgE抗体の検出を示す。MGL_1304組換え蛋白質(rMGL)をELISAプレートにコーティングし、結合するIgE抗体を血清より検出した。各血清は10倍希釈(x10)して試験に用いた。縦軸は、450nmでの吸光度を示す。
【図20】QRXを反復皮下注射して減感作治療を行った患者の血清におけるrMGLに結合する抗体の量の経時変化を示す図である。患者の血液を3回採取して(2011年3月(2011.3)、2011年12月(2011.12)および2012年3月(2012.3))血清を調製し、rMGLを固相化したELISAプレートを用いて、血清中の抗MGLヒトIgE抗体の量の変化を測定した。
【図21】QRXを反復皮下注射して減感作治療を行った患者の血清におけるrMGLに結合する抗体の量の経時変化を示す図である。患者の血液を3回採取して(2011年3月(2011.3)、2011年12月(2011.12)および2012年3月(2012.3))血清を調製し、rMGLを固相化したELISAプレートを用いて、血清中の抗MGLヒトIgG抗体の量の変化を測定した。
【図22】QRXを反復皮下注射して減感作治療を行った患者の血清におけるrMGLに結合する抗体の量の経時変化を示す図である。患者の血液を3回採取して(2011年3月(2011.3)、2011年12月(2011.12)および2012年3月(2012.3))血清を調製し、各血清を10倍(x10)、50倍(x50)および100倍(x100)に希釈し、rMGLを固相化したELISAプレートを用いて、抗MGLヒトIgG4抗体の量の変化を測定した。
【図23】Malassezia globosaをpH4、pH6またはpH8のbuffer A(PBS/HEPES/glucose)で2~60分培養した時の培養上清中に産生されたMGL_1304蛋白質(MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質)の濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.汗アレルギー抗原蛋白質
本発明は、第1の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を提供する。
本明細書において、微生物はMalassezia globosaであり得、Malassezia globosaは、例えば、ATCCから購入できるMalassezia globosa(番号MYA-4612)であり得る。微生物由来の蛋白質は、Malassezia globosaが産生するタンパク質であり得る。Malassezia globosaが産生するタンパク質は菌体外に分泌される蛋白質であっても、菌体内に存在する蛋白質であってもよい。
Malassezia globosa菌体外に分泌される蛋白質の例には、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体(受託番号FERM BP-11111であるハイブリドーマが産生する抗体)に結合する蛋白質が挙げられる。MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)は、例えば、大腸菌、COS7細胞、Malassezia globosa等の適切な宿主で発現させた蛋白質であってもよい。配列番号1で表されるアミノ酸配列を以下に示す。
配列番号1:MVSLNIFSAAFVASLASAVFAAPSALERRAAPDNTVWVTSVADHCLILPRHKMSVGDSESPGNMRSFCTKPYSSKQGQLASDFWTKAHFKKTDKYVQITGCINPNVQSTLLSNDEGGQYDSNGGEGGRGNPAGSVCLGYSSYVELVEPAGNRACIRCCYDPSDCDVSQDEAGCETVIPGKYDC
Malassezia globosa菌体内に存在する蛋白質の例には、Malassezia globosaの菌体内に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質が挙げられる。
Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質は、SDS-PAGEによる測定で、分子量が約17kDaである蛋白質であり得る。Malassezia globosaの菌体内に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質は、SDS-PAGEによる測定で、分子量が約30kDaである蛋白質であり得る。上記「約17kDa」および「約30kDa」は、実験(SDS-PAGE)により測定される分子量として当業者により合理的に認識される。例えば、上記「約17kDa」および「約30kDa」は、それぞれ「14kDa以上20kDa以下」、「27kDa以上33kDa以下」の範囲を超えない分子量であり得る。Malassezia globosaの培養上清または菌体内に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質は、また、汗アレルギー患者由来の好塩基球に対するヒスタミン遊離活性を持つ蛋白質、および/またはIgE受容体を発現する細胞からIgEを介してヒスタミンを遊離する蛋白質であり得る。
本明細書において、汗アレルギー抗原とは、ヒトの汗に含まれる、アレルギー反応を誘導し、アトピー性皮膚炎やコリン性蕁麻疹等の疾患を引き起こす抗原物質(以下、汗抗原とも称す)であり、汗アレルギー抗原蛋白質とは、蛋白質である汗アレルギー抗原である。一つの実施態様において、汗アレルギー抗原蛋白質は、汗に溶解している。

【0018】
本明細書において、汗アレルギー抗原はヒスタミン遊離活性を有する。ヒスタミン遊離活性は、公知の方法に従って測定することができる(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)。例えば、細胞表面にIgE受容体を発現する細胞に汗アレルギー抗原及びIgE抗体を接触させ、該細胞から分泌されるヒスタミン量を測定することで、ヒスタミン遊離活性を決定してもよい。細胞表面にIgE受容体を発現する細胞は、例えば、好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)、IgE受容体遺伝子を発現させて人工的に作製したヒスタミン等の化学伝達物質遊離能を有する細胞株等が挙げられる。
例えば、ヒスタミン量を測定し、全ヒスタミン量に対する遊離ヒスタミン量が3~97%の範囲の場合にヒスタミン遊離活性を有すると判定することができる(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)。

【0019】
本発明が提供する「微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質」は、ヒト汗腺の分泌物からヒスタミン遊離活性を指標に精製することにより調製され得る。例えば、ヒト汗を濃縮する工程、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、逆相カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む方法により調製され得る。よって、一つの実施態様として、本発明は、ヒト汗を濃縮する工程、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、逆相カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む方法により調製される、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を提供する。また、一つの実施態様として、本発明は、ヒト汗を濃縮する工程、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、逆相カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を製造する方法を提供する。

【0020】
また、本発明が提供する「微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質」は、Malassezia globosaの培養産物から調製され得る。培養について、条件や方法は当業者が適宜設定でき、限定されない。例えば、本発明が提供する「微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質」は、ATCCから購入できるMalassezia globosa(番号MYA-4612)を2693mDixon培地(2693mDixon培地は、Malt Extract 36g; Desiccated Oxbile 20g; Tween 40 10ml; Peptone 6.0g; Glycerol 2.0ml; Oleic Acid 2.0ml;および DI Water 1.0Lを混合し、HClを用いてpHを6に調整した溶液を適切な容器に入れ、121℃でオートクレーブして調製する。)にて32℃で4日間培養した培養物を遠心(2000rpm、10分間)し、得られた上清または菌体をリン酸緩衝液(PBS)に溶解した溶解物(cell lysate)からSmith2抗体への結合を指標に精製することにより調製され得る。
よって、本発明は、一つの実施態様として、Malassezia globosaを培養する工程、培養上清または菌体溶解物からSmith2抗体への結合を指標に精製する工程により調製される、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を提供する。また、本発明は、一つの実施態様として、Malassezia globosaを培養する工程、培養上清または菌体溶解物からSmith2抗体への結合を指標に精製する工程を含む、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を製造する方法を提供する。
なお、Malassezia globosaからの汗アレルギー抗原蛋白質であるMGL_1304蛋白質(MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質)の産生は、pH4またはpH6でMalassezia globosaを培養するときに比較し、pH8でMalassezia globosaを培養するときに、増大する。よって、Malassezia globosaの培養は、pH7~10、好ましくはpH7~9、より好ましくはpH8で行ってもよい。
また、Malassezia globosaの培養液からの汗アレルギー抗原蛋白質の精製は、培養液に汗アレルギー抗原蛋白質以外の蛋白質を含まない場合に、より簡単な作業となり得る。よって、Malassezia globosaをpH4~6、好ましくはpH4で培養して菌体量を増加させた後に、培養上清を捨て去り、その後、pH7~10、好ましくはpH7~9、より好ましくはpH8の緩衝液(例えば、PBS/HEPES/glucose緩衝液)を用いてMalassezia globosaを培養することにより、汗アレルギー抗原蛋白質を産生させ、得られた汗アレルギー抗原蛋白質を含む緩衝液から汗アレルギー抗原蛋白質を精製してもよい。精製は、カラムクロマトグラフィー(例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー)を用いてもよい。

【0021】
また、本発明が提供する「微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質」は、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)を、微生物、細胞等の適当な宿主(例えば、大腸菌、COS7細胞、Malassezia globosa)で発現させることで調製され得る。
よって、本発明は、一つの実施態様として、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)を、微生物、細胞等の適当な宿主(例えば、大腸菌、COS7細胞、Malassezia globosa)で発現させることで調製される、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を提供する。また、本発明は、一つの実施態様として、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)を、微生物、細胞等の適当な宿主(例えば、大腸菌、COS7細胞、Malassezia globosa)で発現させる工程を含む、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質を製造する方法を提供する。

【0022】
さらに、本発明は、一つの実施態様において、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)の類縁体を提供する。類縁体は、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質または配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に基づいて作製できるものであれば、特に限定はされない。配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質の類縁体の例には、配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一性が60、70、80、90または95%以上のアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号1で表されるアミノ酸配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質が挙げられる。

【0023】
MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)の類縁体の他の例には、タグが付加されたMGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)が挙げられる。本明細書においてタグとは、蛋白質またはポリペプチドの精製、検出等のため蛋白質またはポリペプチドに付加される部分を意味し、ヒスチジン(His)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、myc、FLAGタグ、Trigger Factor(TF)などが例示される。タグが付加されたポリペプチドは、例えば、pET30a(Novagen社製)(Hisタグ用)、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)(GSTタグ用)、pColdTFベクター(タカラバイオ社製)などの発現ベクターを用いて、微生物、細胞等の適当な宿主(例えば、大腸菌、COS7細胞、Malassezia globosa)で発現させることで得られる。

【0024】
MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)の類縁体は、汗アレルギー患者の血清に存在するIgE抗体に結合することができる。
また、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)の類縁体は、ヒスタミン遊離活性を有し得る。

【0025】
本発明が提供するMGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)及びその類縁体は、通常の遺伝子工学的方法またはペプチド合成において用いられる方法によって製造することができる。製造された蛋白質及びそれらの類縁体は、汗アレルギー抗原として使用できる。よって、一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原の製造における、微生物由来の蛋白質及びその類縁体(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質及びその類縁体、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質)の使用を提供する。
本発明が提供する蛋白質またはポリペプチドは、汗アレルギー患者の血清に存在する汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体に結合するので、汗アレルギー患者の血清に存在する汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の検出、定量または除去に使用することができる。よって、一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の検出、定量、中和または除去における、微生物由来の蛋白質(例えば、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)及びそれらの類縁体)の使用を提供する。
本発明が提供する蛋白質またはポリペプチドは、単離された蛋白質またはポリペプチドであり得る。

【0026】
2.MGL_1304部分ペプチド
本発明は、第2の側面(aspect)において、MGL_1304部分ペプチドを提供する。
MGL_1304部分ペプチドは汗アレルギー抗原であり得る。よって、一つの実施態様において、本発明は、汗アレルギー抗原の製造における、MGL_1304部分ペプチドの使用を提供する。

【0027】
本明細書において、MGL_1304部分ペプチドとは、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質の一部分に相当するペプチドであり得る。MGL_1304部分ペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部分からなるペプチドであり得る。MGL_1304部分ペプチドの例には、配列番号1で表されるポリペプチドの32-173残基に相当するペプチド(配列番号2)、配列番号1で表されるポリペプチドの32-183残基に相当するペプチド(配列番号3)、配列番号1で表されるポリペプチドの27-173残基に相当するペプチド(配列番号4)、配列番号1で表されるポリペプチドの27-183残基に相当するペプチド(配列番号5)、配列番号1で表されるポリペプチドの22-173残基に相当するペプチド(配列番号6)または配列番号1で表されるポリペプチドの22-183残基に相当するペプチド(配列番号7)が挙げられる。
よって、一つの実施態様において、本発明は、配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。

【0028】
MGL_1304部分ペプチドは、汗アレルギー患者の血清に存在するIgE抗体に結合するペプチドであり得る。
また、1つの実施態様において、MGL_1304部分ペプチドは、IgE受容体を発現する細胞からIgEを介してヒスタミンを遊離し得る。
本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドは、単離された蛋白質またはポリペプチドであり得る。

【0029】
一つの実施態様において、本発明は、MGL_1304部分ペプチドの類縁体を提供する。類縁体は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部分からなるペプチドに基づいて作製できるものであれば、特に限定はされない。配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部分からなるペプチドの類縁体の例には、配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列と同一性が60、70、80、90または95%以上のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。

【0030】
配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部分からなるペプチドの類縁体の他の例には、タグが付加された配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。本明細書においてタグとは、ポリペプチドの精製、検出等のためポリペプチドに付加される部分を意味し、ヒスチジン(His)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、myc、FLAGタグ、Trigger Factor(TF)などが例示される。タグが付加されたポリペプチドは、例えば、pET30a(Novagen社製)(Hisタグ用)、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)(GSTタグ用)、pColdTFベクター(タカラバイオ社製)などの発現ベクターを用いて、微生物、細胞等の適当な宿主細胞で発現させることで得られる。

【0031】
これらMGL_1304部分ペプチドの類縁体は、汗アレルギー患者の血清に存在するIgE抗体に結合するペプチドの類縁体であり得る。
また、MGL_1304部分ペプチドの類縁体は、IgE受容体を発現する細胞からIgEを介してヒスタミンを遊離し得る。
本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドの類縁体は、単離された蛋白質またはポリペプチドであり得る。

【0032】
本発明が提供するMGL_1304部分ペプチド及びその類縁体は、通常の遺伝子工学的方法またはペプチド合成において用いられる方法によって製造することができる。例えば、以下の方法により製造できる:
(i)配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を挿入した発現ベクターを用いて、大腸菌または細胞等で本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドを発現させる;
(ii)配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列と同一性が60、70、80、90または95%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列を挿入した発現ベクターを用いて、大腸菌または細胞等で本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドを発現させる;または、
(iii)配列番号2-7のいずれかで示されるアミノ酸配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を挿入した発現ベクターを用いて、大腸菌または細胞等で本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドを発現させる。

【0033】
本発明が提供するMGL_1304部分ペプチドおよびその類縁体は、汗アレルギー患者の血清に存在する汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体に結合するので、汗アレルギー患者の血清に存在する汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の検出、定量、中和または除去に使用することができる。よって、一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の検出、定量、中和または除去における、MGL_1304部分ペプチドおよびその類縁体(例えば、配列番号2-7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質及びそれらの類縁体)の使用を提供する。

【0034】
3.遺伝子、ベクター、形質転換体
本発明は、第3の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質、MGL_1304部分ペプチドまたはそれらの類縁体をコードする遺伝子を提供する。

【0035】
一つの実施態様において、本発明は、配列番号1-7のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する。

【0036】
また、一つの実施態様において、本発明は、配列番号1-7のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと同一性が60、70、80、90または95%以上の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1-7のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにおいて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個の塩基が欠失、置換または付加された核酸配列からなるポリヌクレオチドを提供する。

【0037】
本発明が提供するポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドであり得る。
本発明が提供するポリヌクレオチドは、適宜、ベクターに導入され、宿主細胞で発現させることができる。
よって、一つの実施態様において、本発明は、本発明が提供するポリヌクレオチド含むベクター及び本発明が提供するポリヌクレオチドが導入された宿主細胞(形質転換体)を提供する。
これらの、本発明が提供するポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞は、配列番号1-7のいずれかで示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、ペプチドまたはそれらの類縁体の製造に使用することができる。よって、一つの実施態様において、本発明は、本発明が提供するポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞の汗アレルギー抗原を製造するための使用を提供する。

【0038】
4.抗体
本発明は、第4の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を提供する。
一つの実施態様において、本発明は、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、配列番号2-7および10-13のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはそれらの類縁体に特異的に結合する抗体または抗体断片を提供する。例えば、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)に特異的に結合する抗体または抗体断片は、大腸菌、COS7細胞またはMalassezia globosaで発現させた配列番号1-7および10-13のいずれかで示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、ペプチドまたはそれらの類縁体を抗原として哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ)に投与することにより作製することができる。
また、一つの実施態様において、本発明は、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質に特異的に結合する抗体または抗体断片を提供する。例えば、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質に特異的に結合する抗体または抗体断片は、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を抗原として哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ)に投与することにより作製することができる。
一つの実施態様において、本発明は、配列番号1-7および10-13のいずれかで示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、ペプチドもしくはそれらの類縁体、またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ)に投与することを含む、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)に特異的に結合する抗体または抗体断片の製造方法を提供する。

【0039】
本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。
本明細書において、モノクローナル抗体には、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型モノクローナル抗体、例えば、キメラモノクローナル抗体、ヒト型化モノクローナル抗体や、ヒトモノクローナル抗体が含まれる。
抗体の断片は、抗原と特異的に結合する抗体の一部である。抗体の断片には、Fab (fragment of antigen binding)、F(ab')2、Fab'、一本鎖抗体(single chain Fv;以下、scFvと称する)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv;以下、dsFvと称する)、2量化体V領域断片 (以下、Diabodyと称する)、CDRを含むペプチド等を挙げることができる(エキスパート・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ、第6巻、第5号、第441~456頁、1996年)。抗体および抗体の断片は、当業界にて周知の方法により調製可能である(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988、http://www.gene.mie-u.ac.jp/Protocol/Original/Antibody.html、米国特許第6331415号、米国特許第5693761号、米国特許第5225539号、米国特許第5981175号、米国特許第5612205号、米国特許第5814318号、米国特許第5545806号、米国特許第7145056号、米国特許第6492160号、米国特許第5871907号、米国特許第5733743号などを参照)。

【0040】
本発明が提供する抗体は、ヒト由来の試料、例えばヒトの汗、皮膚に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質を認識し、当該蛋白質の量、分布、機能等を解析するツールとなり得る。

【0041】
本発明が提供する抗体は、標識物質が結合されていてもよい。標識物質の例には、酵素、蛍光物質、放射性同位元素、ビオチン等が挙げられる。
酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等が挙げられる。
蛍光物質の例としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、GFP、ルシフェリン等が挙げられる。
放射性同位元素の例としては、125I、14C、32P等が挙げられる。

【0042】
本発明が提供する、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質に特異的に結合する抗体の例としては、以下(i)~(iii)が挙げられるがこれらに限定されない。
(i)2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託された受託番号FERM BP-11110(FERM P-21439より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-1)が産生する抗体;
(ii)2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託された受託番号FERM BP-11111(FERM P-21440より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-2)が産生する抗体;
(iii)2009年4月1日で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託された受託番号FERM BP-11112(FERM P-21697より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-8)が産生する抗体。



【0043】
5.汗アレルギー抗原検出用、定量用組成物またはキット
本発明は、第5の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含む、汗アレルギー抗原検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用組成物もしくはキットを提供する。
汗アレルギー抗原検出および汗アレルギー抗原の量の測定は、任意の方法で測定することができる。例えば、ウエスタンブロッティングやELISAを用いて汗アレルギー抗原検出および汗アレルギー抗原の量の測定を実施することができる。
よって、一つの実施態様として、汗アレルギー抗原検出用組成物または汗アレルギー抗原の量の測定用組成物は、ウエスタンブロッティングやELISAに用いるための、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含む組成物であり得る。
また、一つの実施態様として、汗アレルギー抗原検出用キットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用キットは、ウエスタンブロッティングまたはELISAに必要な試薬を含んだキットであり得る。ウエスタンブロッティングに必要な試薬の例としては、SDS-PAGEゲル、ニトロセルロース膜またはPVDF膜、本発明の第4の側面(aspect)において提供する抗体、ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等)、洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS)、発光検出試薬等が挙げられる。ELISAに必要な試薬の例としては、プレート(例えば96穴プレート)、本発明の第4の側面(aspect)において提供する抗体、ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等)、洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS)、発色基質(例えば、TMB)等が挙げられる。
また、汗アレルギー抗原検出用キットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用キットは、スタンダードとして、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を含んでもよい。MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質の既知濃度の溶液を使用することにより、正確な汗アレルギー抗原量の定量が可能となる。例えば、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質の複数の既知濃度の溶液を使用することにより、正確な汗アレルギー抗原量の定量が可能となる。MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)は、本発明が第3の側面において提供する遺伝子を大腸菌、COS7細胞等の宿主で発現させて調製してもよい。
ウエスタンブロッティングおよびELISAは当業者が適宜実施できる。
例えば、ウエスタンブロッティングであれば、汗アレルギー抗原を含む試料をSDS-PAGEゲルを用いて電気泳動し、PVDF膜に転写し、本発明の第4の側面(aspect)において提供するマウスIgG抗体である汗アレルギー抗原に対する抗体および酵素標識抗マウスIgG抗体を順に反応させ、その後、酵素活性により、汗アレルギー抗原を検出または定量することができる。
例えば、ELISAであれば、汗アレルギー抗原を含む試料をプレートに添加することにより汗アレルギー抗原を固相化し、本発明の第4の側面(aspect)において提供するマウスIgG抗体である汗アレルギー抗原に対する抗体および酵素標識抗マウスIgG抗体を順に反応させ、その後、酵素活性により、汗アレルギー抗原を検出または定量することができる。また、他の例としては、2種類の本発明の第4の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原に対する抗体を使用したサンドイッチELISAにより、汗アレルギー抗原を検出または定量してもよい。また、これらの反応においては、本発明の第4の側面において提供するマウスIgG抗体を酵素標識することにより、酵素標識抗マウスIgG抗体の反応を省略してもよい。
一つの実施態様として、本発明は、本発明の第4の側面(aspect)において提供する抗体をヒト由来の試料と反応させることを含む、汗アレルギー抗原検出方法または汗アレルギー抗原の量の測定方法を提供する。ヒト由来の試料の例としては、限定はされないが、ヒトの汗、ヒトの皮膚の洗浄液、ヒトの皮膚の抽出物の溶解液、ヒトの血清、ヒトの血漿等が挙げられる。
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用組成物もしくはキットの製造のための、本発明の第4の側面(aspect)において提供する微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片の使用を提供する。


【0044】
6.汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用、定量用組成物またはキット
本発明は、第6の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用組成物もしくはキットを提供する。検出または定量される抗体の例は、限定はされないが、ヒトIgE抗体またはヒトIgG抗体(例えば、汗アレルギー抗原に結合する全てのヒトIgG抗体、または汗アレルギー抗原に結合するヒトIgG4抗体)であり得る。
汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出および汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定は、任意の方法で測定することができる。例えば、ウエスタンブロッティングやELISAを用いて汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出および汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定を実施することができる。
よって、一つの実施態様として、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用組成物または汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用組成物は、ウエスタンブロッティングやELISAに用いるための、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む組成物であり得る。
また、一つの実施態様として、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用キットまたは汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用キットは、ウエスタンブロッティングまたはELISAに必要な試薬を含んだキットであり得る。ウエスタンブロッティングに必要な試薬の例としては、SDS-PAGEゲル、ニトロセルロース膜やPVDF膜、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原(例えば、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質)または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチド(例えば、配列番号2-7のいずれかで示されるペプチド)、ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等)、洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS)、発光検出試薬等が挙げられる。ELISAに必要な試薬の例としては、プレート(例えば96穴プレート)、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原(例えば、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体(受託番号FERM BP-11111)に結合する蛋白質)または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチド(例えば、配列番号2-7のいずれかで示されるペプチド)、ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等)、洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS)等が挙げられる。
また、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用キットまたは汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用キットは、スタンダードとして、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を含んでもよい。これら蛋白質の既知濃度の溶液を使用することにより、それに結合する抗体の正確な定量が可能となる。例えば、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質の複数の既知濃度の溶液を使用することにより、抗原量に基づく、汗アレルギー抗原に結合する抗体の正確な定量が可能となる。
ウエスタンブロッティングおよびELISAは当業者が適宜実施できる。
例えば、ELISAであれば、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原蛋白質または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチドを固相化し;そこに汗アレルギー抗原に結合する抗体を含む試料を添加し;酵素標識抗ヒト抗体(例えば、酵素標識抗ヒトIgG抗体、酵素標識抗ヒトIgM抗体、酵素標識抗ヒトIgG4抗体)を反応させ;そして、当該酵素活性を測定することにより、汗アレルギー抗原を検出または定量することができる。また、他の例としては、本発明の第4の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原に対する抗体を固相化し;そこに、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原蛋白質または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチドを反応させ;さらに、汗アレルギー抗原に結合する抗体を含む試料を添加し;酵素標識抗ヒト抗体(例えば、酵素標識抗ヒトIgG抗体、酵素標識抗ヒトIgM抗体、酵素標識抗ヒトIgG1抗体)を反応させ;そして、当該酵素活性を測定することにより、汗アレルギー抗原を検出または定量してもよい。
一つの実施態様として、本発明は、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチドをヒト由来の試料と反応させることを含む、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出方法または汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定方法を提供する。当該方法は、in vitroで実施され得る。ヒト由来の試料の例としては、限定はされないが、ヒトの汗、ヒトの皮膚の洗浄液、ヒトの皮膚の抽出物の溶解液、ヒトの血清、ヒトの血漿等が挙げられる。
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定用組成物もしくはキットの製造のための、本発明の第1の側面(aspect)において提供する汗アレルギー抗原蛋白質または本発明の第2の側面(aspect)において提供するMGL_1304部分ペプチドの使用を提供する。

【0045】
7.汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキット
本発明は、第7の側面(aspect)において、
(i)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド;または
(ii)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片
を含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキットを提供する。
本明細書において、汗アレルギー抗原が関連する疾患は、汗に含まれる抗原物質により誘引される汗アレルギーを随伴する疾患であり得、例えば、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(例えば、コリン性蕁麻疹)、アレルギー性鼻炎等が挙げられる。
本発明が第7の側面において提供する汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキットは、汗アレルギー抗原に結合する抗体または汗アレルギー抗原を検出または定量することにより、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患を診断するか、または診断を補助することができる。
一つの実施態様として、本発明の第7の側面に関する、(i)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキットは、本発明が第6の側面において提供する汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出または定量用組成物またはキットを利用できる。例えば、本発明が第6の側面において提供するキットを用いて、被験者であるヒトの血液由来の試料(例えば、血清または血漿)中の汗アレルギー抗原に結合する抗体(例えば、IgEおよび/またはIgG(例えば、全IgGおよび/またはIgG4))の量を測定し、健常人の血液由来の試料における汗アレルギー抗原に結合する抗体の量と比較し、被験者の血液由来の試料中の汗アレルギー抗原に結合する抗体の量が健常人の血液由来の試料中の汗アレルギー抗原に結合する抗体の量より多い場合は、被験者が汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患に罹患している、または汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患のリスクがあると診断できる。また、この汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定結果を、臨床所見による汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断の補助とできる。
また、一つの実施態様として、本発明の第7の側面に関する、(ii)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用組成物またはキットは、本発明が第5の側面において提供する汗アレルギー抗原検出用組成物もしくはキットまたは汗アレルギー抗原の量の測定用組成物もしくはキットを利用できる。例えば、本発明が第5の側面において提供するキットを用いて、被験者であるヒトの汗の試料中の汗アレルギー抗原の量を測定し、健常人の汗の試料における汗アレルギー抗原の量と比較し、被験者の汗中の汗アレルギー抗原の量が健常人の汗中の汗アレルギー抗原の量より多い場合は、被験者が汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患に罹患している、または汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患のリスクがあると診断できる。また、この汗アレルギー抗原の量の測定結果を、臨床所見による汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断の補助とできる。
本発明が第7の側面において提供する汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断用キットは、スタンダードとして、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を含んでいてもよい。このスタンダードを使用することにより、正確な定量が可能になり、正確な診断が可能になる。
また、一つの実施態様として、本発明は、(i)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、皮膚テスト用キットまたは組成物を提供する。皮膚テストは、例えば、パッチテスト、スクラッチテスト、プリックテスト、皮内反応テストであり得る。皮膚テストにより、被験者が汗アレルギーまたは汗アレルギーに関連する疾患に罹患していること、またはそのリスクがあることが診断され得る、または診断の補助となるデータが提供され得る。
皮膚テスト用キットには、比較対照として使用する生理食塩水をさらに含んでもよい。
パッチテストは接触性アレルギーの簡便な検査法として皮膚科領域で広く実施されている。接触性アレルギーが存在するときは、皮膚炎のある部位だけではなく全身の皮膚が感作されているので、健康な皮膚にアレルギー性接触皮膚炎を人工的に再現させることにより接触皮膚炎の原因が判定できる。例えば、絆創膏に、本発明が第1または第2の側面において提供する汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド(例えば、配列番号1-7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)を滴下、あるいは塗布し、背部上腕大腿などに貼付する。判定は、2日、3日、1週間後にICDRG (国際接触皮膚炎研究斑)規準に従って行う。なにも反応がなければ(-)、絆創膏の試薬部分に紅斑と浮腫を伴っている状態を(+)とし、反応の程度に応じて(++)、(+++)と判定する。
スクラッチテスト、プリックテストは抗原溶液を皮膚表面に滴下し、針先で皮膚に出血しない程度の擦り傷をつけ、15~20分後に反応を調べる検査である。真皮上層の肥満細胞表面に抗原特異的IgE抗体が存在すれば、滴下した抗原と反応し、肥満細胞内のヒスタミンや化学伝達物質が放出され、局所が赤く腫れる。例えば、本発明が第1または第2の側面において提供する汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド(例えば、配列番号1-7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)をスクラッチテスト、プリックテストの為の抗原として使用できる。
皮内反応テストは、極少量の抗原溶液を薄い皮膚の内部に注入し、一定時間後に注入部が赤くはれるか否かを観察して、アレルギーの有無を判断するテストである。例えば、本発明が第1または第2の側面において提供する汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド(例えば、配列番号1-7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)を皮内反応テストの為の抗原として使用できる。
また、さらなる一つの実施態様において、本発明は、(i)微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、ヒスタミン遊離試験用キットまたは組成物を提供する。ヒスタミン遊離試験は、抗原刺激による血球(好塩基球)からのヒスタミン遊離量を、細胞反応測定法を用いて測定してもよい。例えば、抗原刺激により血球(好塩基球)から遊離したヒスタミンの量により、被験者が汗アレルギーまたは汗アレルギーに関連する疾患に罹患していること、またはそのリスクがあることが診断され得、または診断の補助となるデータが提供され得る。
ヒスタミン遊離試験用キットには、抗ヒスタミン抗体、スタンダードとしてのヒスタミンをさらに含んでもよい。
一つの実施態様として、本発明は、(i)本発明の第1または第2の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド;または
(ii)本発明の第4の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片
をヒト由来の試料(血液試料(例えば、血漿、血清)、汗、皮膚由来の試料(例えば、皮膚の洗浄液)等)に接触させることを含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断または診断を補助する方法を提供する。当該方法は、in vitroで実施され得る。
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断または診断を補助するための組成物の製造のための、
(i)本発明の第1または第2の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチド;または
(ii)本発明の第4の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片の使用を提供する。

【0046】
8.汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物
本発明は、第8の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物を提供する。
汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物は、減感作治療用の組成物であり得る。「減感作治療」とはIgE抗体が関与するアレルギーにおいて、微量の治療用アレルゲンを、一定日数をあけてしだいに増量しつつ投与し、原因アレルゲンが進入してもアレルギー反応が生じないようにする治療法である。本発明が、第1の側面または第2の側面で提供する蛋白質またはペプチドは、減感作治療において治療用アレルゲンとして使用され得る。
本発明が提供する治療用組成物は、本発明が提供する蛋白質またはペプチドを使用して、適宜製剤化される。例えば、本発明が提供する治療用組成物は、医薬品として許容できる担体(添加剤も含む)と共に製剤化することができる。医薬品として許容できる担体としては、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル等)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記治療用組成物の投与量、投与方法は、投与対象の年齢、体重、健康状態によって、当業者により適宜選択され得る。
一つの実施態様として、本発明は、本発明の第1または第2の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを投与することを含む、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患を治療する方法を提供する。
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物を製造するための、本発明の第1または第2の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドの使用を提供する。

【0047】
9.汗アレルギー抗原除去または中和用組成物および汗アレルギー抗原除去材
本発明は、第9の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体を含む、汗アレルギー抗原除去または中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材を提供する。
汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体は、汗アレルギー抗原の抗原活性を中和するために使用できる。また、汗アレルギー抗原を患部から除去するためにも使用できる。
例えば、汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体を含む生理食塩水等の等張液を患部に接触させることにより、汗アレルギー抗原が中和および/または汗アレルギー抗原の患部からの除去が達成され得る。

【0048】
また、汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体を繊維に固定化して、汗アレルギー抗原を患部から除去する除去材として使用してもよい。除去材の例としては、拭き取りシートが挙げられる。このような除去材は、当業者が適宜製造することができる。
例えば、特許第3642340号には、公定水分率が7%以上である繊維(織布または不織布等)に抗体を固定化して、拭き取りシート等の除去材を製造する方法が開示されている。
抗体を繊維等の担体に固定化する方法は、例えば、担体をγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングしたのちにアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法を挙げることができる。ここで、上記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C6H5NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。また、抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよく、使用されるリンカーの例としては、マレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Etyl-3-[3-dimetylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanete)が挙げられる。
除去材は、グリセロールを含む水に含浸させて保管され得る。
一つの実施態様として、本発明は、本発明の第4の側面で提供される汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体を汗アレルギー抗原に接触させることを含む、汗アレルギー抗原除去または中和方法を提供する。
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原除去または中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材の製造のための、本発明の第4の側面で提供される汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドに特異的に結合する抗体の使用を提供する。

【0049】
10.減感作治療の効果判定用組成物またはキット
本発明は、第10の側面(aspect)において、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む、減感作治療の効果判定用組成物またはキットを提供する。
汗アレルギー抗原(例えば、本発明の第1の側面で提供される蛋白質または第2の側面で提供されるペプチド)を含む組成物を、しだいに増量しつつ投与することにより、減感作療法を行えることは上記本発明の第8の側面において説明した。
一般に、減感作療法では、治療経過とともに、抗原に対するIgG4の血中濃度が増加し、抗原に対するIgEの血中濃度が低下することが知られている。
汗アレルギー抗原(例えば、本発明の第1の側面で提供される蛋白質または第2の側面で提供されるペプチド)を含む組成物を、一定日数をあけてしだいに増量しつつ投与することにより行う減感作療法においても、治療効果があれば、汗アレルギー抗原に対するIgG4の血中濃度が増加し、治療経過とともに汗アレルギー抗原に対するIgE抗体および全IgG抗体の血中濃度が減少し得る。
よって、本発明は、一つの実施態様において、ヒト血液試料(例えば、ヒト血清または血漿)の汗アレルギー抗原(例えば、本発明の第1の側面で提供される蛋白質または第2の側面で提供されるペプチド)に結合するヒトIgG4抗体の量を測定することを含む、減感作治療の効果を判定する方法を提供する。また、本発明は、一つの実施態様において、減感作治療実施前に採取した血液試料と減感作治療実施後に採取した血液試料中の汗アレルギー抗原(例えば、本発明の第1の側面で提供される蛋白質または第2の側面で提供されるペプチド)に結合するヒトIgG4抗体の量を比較することを含む、減感作治療の効果を判定する方法を提供する。これら減感作治療の効果を判定する方法において、患者の血中の汗アレルギー抗原に結合するIgG4抗体の濃度が増加すれば、減感作治療が効果を奏していると判断できる。また、上記減感作治療の効果を判定する方法は、さらに、汗アレルギー抗原に対するIgE抗体および/または全IgG抗体の血中の量を測定すること、および/または減感作治療実施前に採取した血液試料と減感作治療実施後に採取した血液試料中の汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体および/または全IgG抗体の量を比較することを含んでもよい。上記減感作治療の効果を判定する方法は、in vitroで実施され得る。
汗アレルギーに結合する抗体の量の測定には、本発明の第6の側面において提供する、汗アレルギー抗原に結合する抗体の検出、定量用組成物もしくはキットが利用できる。
よって、本発明の第6の側面において提供する、微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質またはMGL_1304部分ペプチドを含む組成物もしくはキットを、減感作治療の効果判定用組成物またはキットとして使用することができる。
一つの実施態様として、本発明は、減感作治療の効果判定用組成物またはキットの製造のための、本発明の第1の側面で提供される微生物由来の蛋白質である汗アレルギー抗原蛋白質または本発明の第2の側面で提供されるMGL_1304部分ペプチドの使用を提供する。

【0050】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1:部分精製汗抗原(QRX)の精製
1-1.濃縮汗の調製
ヒトの汗を、100μmと70μmのメッシュフィルター(Nylon製Cell Strainer、Falcon)を通して不溶物を除去した後、さらに0.22μmフィルター(Bottle Top Filter、1L、Corning)で沈殿物を除去した。フィルター濾過済みの汗4Lを限外濾過(3000M.W.cut)で150mL程度に濃縮して、汗抗原精製のための材料とした。
【実施例】
【0052】
1-2.陰イオン交換カラムによる分離
あらかじめ10mmol/L Tris-HCl(pH8.0)で平衡化させた陰イオン交換カラムMonoQ 10/100 GT(GEヘルスケアバイオサイエンス)に、pH8.0に調製した濃縮汗75mLをロードし、10mmol/L Tris-HCl(pH8.0)中、0~1.0MのNaCl濃度勾配により溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【実施例】
【0053】
ヒスタミン遊離活性を誘引する物質を含む画分を選択するために、各フラクションについて、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験を行った。
【実施例】
【0054】
まず、適当に希釈した各フラクションと、5mmol/L グルコース、0.03w/v%HSA、2mmol/L CaCl2、1mmol/L MgCl2を含むHEPESバッファー中に調製したアトピー性皮膚炎患者の好塩基球画分を1:1で混和し、37℃で40分インキュベートした。遠心分離で上清と沈渣血球に分け、それぞれに0.2mol/L過塩素酸を加えて変性させた後、遠心分離によって得られた上清中のヒスタミン濃度をHPLC(シマヅLC solution)で測定した。全ヒスタミン量に対する上清のヒスタミン量の割合をヒスタミン遊離活性とした。
【実施例】
【0055】
なお、ヒスタミン量の測定は文献(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)記載の方法に従った。
【実施例】
【0056】
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった0.25~0.3mol/L NaClの塩濃度範囲で溶出される画分を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収した。
【実施例】
【0057】
1-3.逆相カラムによる分離
実施例1-2で得られた画分18mLを純水で10倍希釈して最終濃度0.1v/v%のTFAを添加した。これを、逆相カラム(SOURCE 15RPC ST 4.6/100(GEヘルスケアバイオサイエンス) にロードし、0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【実施例】
【0058】
溶出した各フラクションのTFAおよびアセトニトリルを揮発させた後、実施例1-2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
【実施例】
【0059】
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった約30~35v/v%アセトニトリルの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収した(4mL)。
【実施例】
【0060】
1-4.ゲル濾過クロマトによる分離
実施例1-3で得られた画分は、凍結乾燥後、PBSに再溶解してSuperdex 75 PC 3.2/30(GEヘルスケアバイオサイエンス)にロードし、PBS(-)で分画溶出した。精製用クロマト装置としてはSmart system(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【実施例】
【0061】
溶出した各フラクションについて、実施例1-2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
【実施例】
【0062】
その結果、溶出位置15~60kDの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収し(1.2mL)、以後これをQRX画分とした。
【実施例】
【0063】
実施例2:部分精製汗抗原(QRX)の精製と質量分析
部分精製汗抗原(QRX)を、Aqua 5μ-C18-200A HPLCカラム(Phenomenex社製)を用いて精製した(0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/100%アセトニトリルの濃度勾配で溶出)。ヒスタミン遊離活性を示す画分を回収し、これをJupiter 5μ-C18-300A HPLCカラム(Phenomenex社製)で更に精製し(0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/80%アセトニトリルの濃度勾配で溶出)、ヒスタミン遊離活性を示した画分(図1の矢印の分画)について質量分析(TOF-MS)を行った。TOF-MSでは、通常試料をカチオン化するが、本実験ではアニオン化することにより質量を測定した。ヒスタミン遊離活性は、Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999記載の方法に従って測定した。検出したアミノ酸配列はMGL_1304と一致した。
【実施例】
【0064】
実施例3:MGL_1304の組換え蛋白質の作製と、アトピー性皮膚炎患者IgEとの反応性
Malassezia globosaをATCCから購入した(MYA-4612)。 Malassezia globosaから抽出したmRNAをcDNAに逆転写し、PCR法(senseプライマー: 5’-GGGGTACCGTATCCCTCAACATTTTCTCAGCTGC-3’(配列番号8); antisenseプライマー: 5’-CCCAAGCTTTTAGCAGTCGTACTTGCCGGGGATG-3’ (配列番号9), (94℃ 5 min/60℃ 1 min/72℃ 1 min)×1サイクル、(94℃ 1 min/60℃ 1 min/72℃ 1 min)×30サイクル、(94℃ 5 min/60℃ 1 min/72℃ 10 min)×1サイクル)を用いてMGL_1304をコードするcDNAを増幅し、pColdTFベクター(タカラバイオ製)に組み込み、大腸菌JM109に形質転換を行った。15℃で24時間培養し、得られた大腸菌をxTractorバッファーで溶解し、コバルトカラムで組み換え蛋白質を精製した。Trigger Factorのみ(TF)、TF-MGL_1304融合蛋白(TF-MGL_1304)、融合蛋白を酵素処理してTFを取り除いたもの(rMGL_1304)を作製した。得られた蛋白をアクリルアミドゲル電気泳動し、そのままCBB染色(図2左)を行い、またPVDF膜に転写して抗Hisタグ抗体(図2中)、アトピー性皮膚炎患者血清(図2右)で免疫ブロットを行った。アトピー性皮膚炎患者IgEはrMGL_1304に結合することが示された(図2)。
作製したrMGL_1304を、アトピー性皮膚炎患者末梢血好塩基球(図3、AD1、AD2、AD3)、健常人末梢血好塩基球(図3、HC1)と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行った。MGL_1304はアトピー性皮膚炎患者特異的にヒスタミン遊離を起こすことが示された。
また、上述したMGL_1304をコードするcDNAまたはダニcDNAを、Myc-tagを含むpSecTag2/Hygroベクター(Invitrogen社製)に組み込み、COS7細胞にトランスフェクションした。これらのDNAをトランスフェクションしたCOS7細胞の培養上精をアクリルアミドゲル電気泳動し、PVDF膜に転写して抗Mycタグ抗体で免疫ブロットを行った。培養上清中には各々のcDNAに対応するタンパク質が含まれることが示された(図11A)。さらにその培養上清をアトピー性皮膚炎患者末梢血好塩基球と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行った。また、同じ好塩基球をヒト汗を濃縮、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相カラムクロマトグラフィーにより部分精製した汗抗原(QR)と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行い、培養上清によるヒスタミン遊離率と比較した(図11B)。
COS7細胞により産生されたMGL_1304蛋白(rMGL_1304)は、部分精製したヒト汗抗原(QR)と同様のヒスタミン遊離をおこすことが示された。
【実施例】
【0065】
実施例4:MGL_1304の組換え蛋白質とアトピー性皮膚炎患者IgEとの反応性
MGL_1304がこれまで用いてきた部分精製汗抗原(QRX)とほぼ同一の性質を有しているかを検討した。
(1)
組み換えダニ抗原(Der f1)、QRX、MGL_1304を電気泳動し、PVDF膜に転写したものを複数用意した。QRXまたは実施例3で作製したMGL_1304で前処理したアトピー患者血清(AD serum)、または前処理をしなかったAD serumをそれぞれ用いて、免疫ブロットを行った。用いたアトピー性皮膚炎患者血清は3名分である。MGL_1304による前処理はQRXへのIgE結合を、QRXによる前処理はMGL_1304に対するIgEの結合を、それぞれ阻害した(図4)。
(2)
アトピー性皮膚炎患者血清(AD1~AD4)をTFまたはTF-MGL_1304で前処理し、ヒトIGE受容体(Aサブユニット)を発現させたラット細胞株に感作して、anti-IgE、QRX、ダニ抽出物(Mite-Df)刺激を行ったときの脱顆粒を測定したものである。実施例3で作製したMGL_1304前処理してMGL_1304特異的IgEを取り除くことで、QRX刺激への反応性が消失することが示された(図5)。
【実施例】
【0066】
実施例5:MGL_1304におけるIgE結合に必要な構造
MGL_1304蛋白(183アミノ酸)のN端が欠損しているもの、C端が欠損しているもの、配列番号1で表されるポリペプチドの1-50(P1)、46-100(P2)、96-140(P3)、146-183(P4)に相当するものをそれぞれ大腸菌に発現させることで作製し、抗Hisタグ抗体、アトピー性皮膚炎患者血清(図6B、AD1、AD2、AD3、AD4)およびまたは2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP-11111(FERM P-21440より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-2)が産生する抗体であるSmith2抗体で免疫ブロットを行った。また、各ペプチド断片について、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験を行った(図6Cおよび図6D)。数字はアミノ酸配列の番号を示す。
N端が32アミノ酸以上短い蛋白、またはC端が10アミノ酸以上欠失した蛋白は、アトピー性皮膚炎患者IgEの結合能を失うことが示された。また、MGL_1304を4分割する形で断端が少しずつオーバーラップするように作製されたポリペプチドP1~4(P1:MGL_1304蛋白のアミノ酸配列1-50(配列番号10)に相当するポリペプチド;P2: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列46-100(配列番号11)に相当するポリペプチド;P3: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列96-140(配列番号12)に相当するポリペプチド;P4: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列136-183(配列番号13)に相当するポリペプチド)にはアトピー性皮膚炎患者IgEの結合能もヒスタミン遊離活性も見られなかった。一方、Smith-2抗体はMGL_1304蛋白およびそのアミノ酸配列1-50に相当するポリペプチド(P1)にそれぞれ結合性を示した(図6E)。これらの結果から、アトピー性皮膚炎患者IgEはMGL_1304蛋白を構成する短いペプチドを認識しているのではなく、高次構造を認識している可能性が高いことが示された(図6A)。また、P1(MGL_1304蛋白およびそのアミノ酸配列1-50に相当するポリペプチド)領域が、MGL_1304蛋白質における抗MGL_1304蛋白質抗体の認識部位となり得ることが示された。

【実施例】
【0067】
実施例6:MGL_1304を用いたELISA
96ウェルマイクロプレート上に、実施例3で作製したrMGL_1304を固相化し、ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングを行い、AD患者4名(そのうちAD2はHRT陰性)、健常人血清(Normal)を添加し、rMGL_1304に結合したIgEを抗ヒトIgE抗体で検出するELISAの結果を示す(図7)。このように組み換えMGL_1304蛋白を用いることにより、血清中のMGL_1304特定的IgEを測定できることが示された(図7)。
【実施例】
【0068】
実施例7:マラセチア菌体(M. Globosa)抽出物、マラセチア菌体培養上清、QRXおよび組み換えMGL_1304蛋白の免疫反応性
M. Globosaを2693 mDixon培地を用い、32℃で4日間培養した。培養液を遠心(2000rpm)し、培養上清と菌体を分離した。菌体をPBSに溶解,超音波破砕後、遠心(2000rpm)して上清を回収、0.22μmフィルターを通して、菌体抽出物を調製した。マラセチア菌体抽出物、培地のみ、マラセチア培養上清、実施例3で作製した組み換えMGL_1304蛋白(rMGL)、およびQRXを電気泳動し、2人のアトピー性皮膚炎患者血清でそれぞれ免疫ブロットを行った(図8、図9は、使用したアトピー性皮膚炎患者血清が相違する)。
また、マラセチア菌体抽出物およびマラセチア培養上清を精製した後、精製したマラセチア菌体抽出物、精製したマラセチア培養上清およびQRXを電気泳動し、Smith2抗体で免疫ブロットを行った(図10)。なお、マラセチア菌体抽出物およびマラセチア培養上清の精製は以下のように行った。M.Globosaを2693 mDixon培地で、32℃、4日間培養した。培養液を遠心(2000rpm)し、上清を回収して0.22μmフィルターを通して、マラセチア培養上清を調製した。さらにヒスタミン遊離を指標にして実施例1で示したイオン交換カラムクロマトグラフィーと逆相カラムクロマトグラフィーで培養上清を分画し、ヒスタミン遊離活性がある分画を回収した。
rMGLは、DNA配列から予想された分子量(約23kDa)を示した(図2)が、マラセチア菌体のlysateに存在するアトピー性皮膚炎患者血清で検出される蛋白は約30kDaを示し、MGLは翻訳後修飾を受けることが示された(図8、図9、図10)。一方、マラセチア菌体の培養上清に存在するアトピー性皮膚炎患者血清で検出される蛋白は約17kDaであり、QRXと同じであった(図10)。よって、MGLは、菌体から分泌される際に、更なる修飾を受けることが示された。マラセチア菌体のlysateに存在する約30kDaのバンド、マラセチア菌体の培養上清に存在する約17kDaのバンドおよびQRXのバンドは、アトピー性皮膚炎患者血清をrMGLで前処理することにより消失した(図8、図9)。ヒスタミン遊離活性の点では、マラセチア菌体から分泌された、培養上清からの精製抗原とrMGL(蛋白発現のために連結させたTFを酵素処理して切断した全長rMGL)では、前者が後者に比較し高活性であった。
【実施例】
【0069】
実施例8:組換えMGL_1304蛋白を免疫原とする抗体のQRXおよび組み換えMGL_1304蛋白への結合
実施例3で作製した組換えMGL_1304蛋白(rMGL_1304)をBalb/cマウスに免疫し、rMGLへの結合性を指標にスクリーニングしてモノクローナル抗体産生株(MGLab)を作製した。また、実施例5で作製したMGL_1304蛋白を4つに分割した配列のポリペプチド(P1~4)に対するこれらの抗体の結合性をELISAにより検討した。
96ウェルマイクロプレート上に、3μg/mlとなるようにPBSに溶解したTFを融合させたP1~4(TF-P1~4)を固相化し(50μl/well)、BSAでブロッキングを行い、モノクローナル抗体を添加し、各ポリペプチドに結合したマウスIgGを酵素標識した抗マウスIgG抗体で検出した。
その結果、MGLab6-3はP4へ、MGLab8-2、8-4、9-1、9-5、10-8、10-10、22-1、36-1および40-1はP2へ各々結合し、実施例3で示したSmith-2とは異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体が得られことが示された(図12)。
この結果より、P2(MGL_1304蛋白のアミノ酸配列46-100(配列番号11)に相当するポリペプチド)およびP4(P4: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列136-183(配列番号13)に相当するポリペプチド)領域が、MGL_1304蛋白質における抗MGL_1304蛋白質抗体の認識部位となり得ることが示された。
【実施例】
【0070】
実施例9:患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定
実施例3で作製したrMGLをマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体MGLab8-2(8-2)およびMGLab6-3(6-3)を用いて、アトピー性皮膚炎患者(AD1およびAD2)の血清中のIgE抗体を検出できるか否かを検討した。
【実施例】
【0071】
抗体を、96穴ELISAプレートに、10μg/ml、50μl/wellでコーティングし、4℃で一晩放置した。2回洗浄後、2%BSAでブロッキング(1時間)し、2回洗浄した。100倍希釈のQRXまたは3μg/mlの実施例3で作製したTF-MGLを100μl/well加え90分間放置し、3回洗浄後、血清を100μl/well加え90分間放置した。3回洗浄後、HRP標識抗ヒトIgE抗体を含む溶液を100μl/well加え1時間放置し、3回洗浄後、TMBを用いて発色させ吸光度(450nm)を測定した。
【実施例】
【0072】
その結果、rMGLをマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体MGLab8-2は、QRXまたはrMGLとの結合を介してアトピー性皮膚炎患者の血清中のIgE抗体を検出した。一方、Smith2抗体は、rMGLを介してアトピー性皮膚炎患者の血清中のIgE抗体を検出できなかった(図13-15)。
そこで、rMGLをマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体MGLab8-2およびMGLab6-3を用いて、アトピー性皮膚炎患者の血清中のIgE抗体を定量することができるか否かを検討した。その結果、アトピー性皮膚炎患者の血清の希釈によるIgE抗体量の低下に比例して、吸光度が低下した。両抗体(モノクローナル抗体MGLab8-2およびMGLab6-3)とも、rMGLを用いて、アトピー性皮膚炎患者の血清中のIgE抗体を定量できることが示された(図16および図17)。
【実施例】
【0073】
これらの結果より、rMGLをマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体を利用して、アトピー性皮膚炎における汗アレルギーの診断が可能であることが示された。
【実施例】
【0074】
実施例10:患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定(2)
実施例3で作製したrTF-MGLを固相化したELISAを用いて、アトピー性皮膚炎(AD)、アレルギー性鼻炎および健常人(Normal)の血清中の汗抗原に特異的に結合するIgE抗体を検出できるか否かを検討した。
【実施例】
【0075】
rTFまたはrTF-MGLを、96穴ELISAプレートに、3μg/ml、50μl/wellでコーティングし、4℃で一晩放置した。2回洗浄後、2%BSAでブロッキング(室温、1時間)し、2回洗浄した。血清を1%BSAで希釈したものを100μl/well加え室温で1時間放置した。3回洗浄後、HRP標識抗ヒトIgE抗体を含む溶液を100μl/well加え1時間放置し、3回洗浄後、TMBを用いて発色させ吸光度(450nm)を測定した。
【実施例】
【0076】
その結果、rMGLを固相化したELISAを用いて、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎患者の血清中で汗抗原(MGL)に結合するIgEを検出した(図18および図19)。一方、健常人の血清中で汗抗原(MGL)に結合するIgEは検出されなかった(図18および図19)。
【実施例】
【0077】
これらの結果より、rMGLを固相化したELISAを利用して、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎患者における汗アレルギーの診断が可能であることが示された。
【実施例】
【0078】
実施例11:減感作治療を行った患者における抗MGL抗体の測定
汗アレルギー患者にQRXを低濃度から徐々に濃度を上げて反復して皮下注射した。経時的に血清を採取し、採取した血清中の抗MGL抗体量の変化を、実施例3で作製したrMGLを固相化し、抗ヒトIgE抗体、抗ヒトIgG抗体または抗ヒトIgG4抗体を用いたELISAにより測定した。
【実施例】
【0079】
その結果、患者血清中の抗MGL-IgE抗体、抗MGL-IgG抗体、抗MGL-IgG4抗体の各抗体の量の変化を測定することができた(図20-22)。抗MGL-IgEおよび抗MGL-IgG(1~4のサブタイプを含む)の濃度は治療経過とともに減少したが、抗MGL-IgG4は治療経過とともに増加した。この現象は、減感作治療では、IgEの減少はわずかで、まずはその抗原に対するIgG4の濃度が上昇してくるという一般的な知見と一致した。
また、医師による臨床診断で、当該患者は減感作治療により、生活の質を表す指標であるDLQIが改善した。
【実施例】
【0080】
これらの結果より、rMGLがQRXと同様に減感作療法の抗原として有用であること、減感作療法の治療効果の判定にrMGLが有用であることが示された。
【実施例】
【0081】
実施例12:M.Globosaの緩衝液を用いた培養でのMGL_1304蛋白質の産生量の検討
M. Globosaを2693 mDixon培地を用い、32℃で4日間培養した。培養上清を除去し、pH4、pH6またはpH8の緩衝液(buffer A:PBS/HEPES/glucose緩衝液)で菌体を洗浄した。その後、各緩衝液を用いて、2~60分培養し、産生されたMGL_1304蛋白質の濃度を、ELISAを用いて測定した。その結果、pH8の緩衝液で培養したときにMGL_1304蛋白質の産生が増大した(図23)。
【実施例】
【0082】
JP0006232618B2_000002t.gifJP0006232618B2_000003t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
22