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明細書 :未分化細胞のアポトーシス誘導剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-216387 (P2016-216387A)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明の名称または考案の名称 未分化細胞のアポトーシス誘導剤
国際特許分類 A61K  31/7028      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
C12N   5/0797      (2010.01)
FI A61K 31/7028
A61P 43/00 105
A61P 25/00
C12N 5/00 202T
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2015-102175 (P2015-102175)
出願日 平成27年5月19日(2015.5.19)
発明者または考案者 【氏名】加藤 晃一
【氏名】矢木 宏和
【氏名】山口 拓実
【氏名】ヤン ゲンエイ
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C086
Fターム 4B065AA91X
4B065BA30
4B065BB12
4B065BB19
4B065BB25
4B065BB40
4B065BC03
4B065BC07
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB21
4C086ZB26
要約 【課題】未分化細胞に対して特異的ないし選択的に細胞死を誘導する技術を提供し、細胞医療の更なる発展、及び新たな細胞医療の実現に貢献することを課題とする。
【解決手段】
Lewis X型糖鎖がスペーサーを介してアシル鎖に連結した構造のネオ糖脂質からなる、未分化細胞のアポトーシス誘導剤が提供される。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
Lewis X型糖鎖がスペーサーを介してアシル鎖に連結した構造のネオ糖脂質からなる、未分化細胞のアポトーシス誘導剤。
【請求項2】
アシル鎖の炭素数が16~24である、請求項1に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項3】
アシル鎖の炭素数が16~20である、請求項1に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項4】
未分化細胞が神経幹細胞であり、アシル鎖の炭素数が18である、請求項1に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項5】
神経幹細胞の移植を受けた個体に投与されることになる、請求項4に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項6】
脳腫瘍を標的として個体に投与されることになる、請求項4に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項7】
スペーサーが、1~10個の構成単位が連結した構造を有し、各構成単位が、独立して、糖、アミノ酸、核酸、メチレン鎖及びエチレングリコール鎖からなる群より選択されるいずれかの分子からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項8】
スペーサーが、2~6個の構成単位が連結した構造からなる、請求項7に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項9】
スペーサーが、Lewis X構造側に配置される単糖又はオリゴ糖と、アシル鎖側に配置されるアルキル鎖が連結した構造からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項10】
オリゴ糖がラクトースである、請求項9に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項11】
アルキル鎖がアミノエチル基又はヒドロキシエチル基である、請求項9又は10に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項12】
スペーサーが、Lewis X構造側に配置されるラクトースと、アシル鎖側に配置されるアミノエチル基が連結した構造からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
【請求項13】
ネオ糖脂質の構造が下記の化学式で表される、請求項1に記載のアポトーシス誘導剤。
【化3】
JP2016216387A_000017t.gif

【請求項14】
以下のステップ(1)及び(2)を含む、分化細胞の調製方法:
(1)特定の細胞系譜に沿った分化を誘導する条件下で未分化細胞を培養するステップ;
(2)請求項1~13のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤の存在下で培養を継続するステップ。
【請求項15】
以下のステップ(i)を含む、分化細胞の調製方法:
(i)未分化細胞と分化細胞が混在する試料を請求項1~13のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤の存在下で培養するステップ。
【請求項16】
以下のステップ(3)を更に含む、請求項14又は15に記載の調製方法:
(3)分化細胞を回収するステップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は新規ネオ糖脂質及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
神経幹細胞は高い自己複製能と分化能を併せ持つ神経系の未分化細胞である。近年、パーキンソン病などの難治性疾患の治療に神経幹細胞を利用すること(細胞医療)が試みられている。こうした治療を行うためには、移植に用いる神経幹細胞の分化過程を正確に制御する必要がある。特に、移植後に未分化細胞が残存することは、細胞の異常増殖に伴う細胞隗の形成等の問題を引き起こすおそれがあり、癌化のリスクも伴う。
【0003】
一方、細胞医療の一つとして、iPS細胞や間葉系幹細胞(例えば骨髄由来、脂肪組織由来)等を利用した再生医療の実現に向けた研究・開発が世界的規模で進行している。このような再生医療では、利用する細胞の分化能が高く、そのまま移植すると癌化のリスクが高いことから、通常は予め生体外で特定の細胞系譜に沿って分化誘導して得られた細胞(即ち、分化細胞)又はそれを含有する組成物を移植に供する。十分に分化していない細胞(未分化細胞)が移植材料中に混在することは、移植に伴う塞栓の形成や意図しない細胞が移植後に出現すること、或いはがん化等の問題を引き起こす可能性があり、治療成績や安全性に多大な影響を及ぼす。
尚、本願で開示する化合物(ネオ糖脂質)の構造と一部において共通する化合物が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-210968号公報
【0005】

【非特許文献1】Nicolaou, KC, Caulfield, TJ, Kataoka, H, Stylianides, NA (1990) J Am Chem Soc 112: pp. 3693-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未分化細胞(例えば神経幹細胞)の分化誘導や幹細胞性の維持を行うための技術は数多く開発されている。しかしながら、未分化細胞の除去(死滅)に有効な技術の報告は少ない。尚、ガレクチン-1とインテグリンβ1との結合を阻害することが神経幹細胞の増殖抑制に有効であるとの報告(特許文献1)があるが、直接的に細胞死を誘導するものではなく、細胞医療におけるその有用性は限定的といえる。
そこで本発明は、未分化細胞に対して特異的ないし選択的に細胞死を誘導する技術を提供し、細胞医療の更なる発展、及び新たな細胞医療の実現に貢献することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ネオ糖脂質の構造解析や生理機能を研究する中で、特徴的な3糖構造からなるLewis X型糖鎖に着目し、Lewis X型糖鎖を含有するネオ糖脂質を各種合成し、その機能を調べることにした。検討の結果、Lewis X型糖鎖にスペーサーを介してアシル鎖が連結された構造のネオ糖脂質が神経幹細胞特異的な細胞死(アポトーシス)を誘導することが明らかとなった。即ち、神経幹細胞特異的な細胞死を誘導できる新規化合物を見出すことに成功した。また、ネオ糖脂質の構造とアポトーシス誘導効果との関係について重要且つ興味深い知見も得られた。
【0008】
ここで、神経幹細胞の表面にはLewis X型糖鎖が発現している(例えばJ Biol Chem. 2012 Jul 13;287(29):24356-64.を参照)。後述の実験結果(実施例)を踏まえると、ネオ糖脂質のLewis X型糖鎖と、神経幹細胞表面のLewis X型糖鎖が相互作用することがトリガーとなって細胞死が誘導されたと考察できる。一方、過去の報告(例えばNeurochem Res. 2011 Sep;36(9):1623-35.)から、未分化細胞のいくつかは、神経幹細胞と同様、Lewis X型糖鎖を発現していることが知られている。Lewis X型糖鎖を発現している未分化細胞については、神経幹細胞で観察されたものと同様の現象が起きると予測できる。従って、Lewis X型糖鎖にスペーサーを介してアシル鎖が連結されたという、特徴的な構造を備えるネオ糖脂質は、神経幹細胞に限らず、Lewis X型糖鎖を発現している他の未分化細胞に対しても、選択的な細胞死を誘導できるといえる。即ち、当該ネオ糖脂質は、未分化細胞に対する選択的なアポトーシス誘導剤として汎用性が高いと評価できる。
本発明は以上の知見及び考察に基づくものである。
[1]Lewis X型糖鎖がスペーサーを介してアシル鎖に連結した構造のネオ糖脂質からなる、未分化細胞のアポトーシス誘導剤。
[2]アシル鎖の炭素数が16~24である、[1]に記載のアポトーシス誘導剤。
[3]アシル鎖の炭素数が16~20である、[1]に記載のアポトーシス誘導剤。
[4]未分化細胞が神経幹細胞であり、アシル鎖の炭素数が18である、[1]に記載のアポトーシス誘導剤。
[5]神経幹細胞の移植を受けた個体に投与されることになる、[4]に記載のアポトーシス誘導剤。
[6]脳腫瘍を標的として個体に投与されることになる、[4]に記載のアポトーシス誘導剤。
[7]スペーサーが、1~10個の構成単位が連結した構造を有し、各構成単位が、独立して、糖、アミノ酸、核酸、メチレン鎖及びエチレングリコール鎖からなる群より選択されるいずれかの分子からなる、[1]~[6]のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
[8]スペーサーが、2~6個の構成単位が連結した構造からなる、[7]に記載のアポトーシス誘導剤。
[9]スペーサーが、Lewis X構造側に配置される単糖又はオリゴ糖と、アシル鎖側に配置されるアルキル鎖が連結した構造からなる、[1]~[6]のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
[10]オリゴ糖がラクトースである、[9]に記載のアポトーシス誘導剤。
[11]アルキル鎖がアミノエチル基又はヒドロキシエチル基である、[9]又は[10]に記載のアポトーシス誘導剤。
[12]スペーサーが、Lewis X構造側に配置されるラクトースと、アシル鎖側に配置されるアミノエチル基が連結した構造からなる、[1]~[6]のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤。
[13]ネオ糖脂質の構造が下記の化学式で表される、[1]に記載のアポトーシス誘導剤。
【化3】
JP2016216387A_000002t.gif
[14]以下のステップ(1)及び(2)を含む、分化細胞の調製方法:
(1)特定の細胞系譜に沿った分化を誘導する条件下で未分化細胞を培養するステップ;
(2)[1]~[13]のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤の存在下で培養を継続するステップ。
[15]以下のステップ(i)を含む、分化細胞の調製方法:
(i)未分化細胞と分化細胞が混在する試料を[1]~[13]のいずれか一項に記載のアポトーシス誘導剤の存在下で培養するステップ。
[16]以下のステップ(3)を更に含む、[14]又は[15]に記載の調製方法:
(3)分化細胞を回収するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成した化合物。化合物a: Lewis X型糖鎖(Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc)がスペーサー(アミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、化合物b: 2糖構造(Galβ1,4GlcNAc)がスペーサー(ラクトースとアミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、化合物c: Lewis X型糖鎖がスペーサー(ラクトースとアミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、化合物d: Lewis X型糖鎖にスペーサー(ラクトースとアセチルアミノエチル基)が連結した構造の化合物。
【図2】WST-8アッセイの結果。各化合物を添加した培地で神経幹細胞を24時間培養し、細胞数(増殖)を評価した。*, p<0.01(スチューデントのt検定(両側検定)による)
【図3】WST-8アッセイの結果。神経幹細胞を10日間、分化誘導して分化細胞を調製した。各化合物を添加した培地で分化細胞を24時間培養し、細胞数(増殖)を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.未分化細胞のアポトーシス誘導剤
本発明の第1の局面は未分化細胞のアポトーシス誘導剤に関する。本発明のアポトーシス誘導剤は、標的の未分化細胞に対して特異的/選択的にアポトーシスを誘導する。従って、本発明のアポトーシス誘導剤を用いれば、標的の未分化細胞を選択的に死滅させることができる。本発明のアポトーシス誘導剤は特定の構造のネオ糖脂質からなる。天然に存在するのではなく、人工的に得られる糖脂質(即ち人工糖脂質)であることを表現するため、慣例に倣い、本発明の糖脂質を「ネオ糖脂質」と呼称する。

【0011】
本発明を構成するネオ糖脂質は、Lewis X型糖鎖がスペーサーを介してアシル鎖に連結した構造を備える。本発明を構成するネオ糖脂質では、Lewis X型糖鎖、スペーサー、及びアシル鎖が直鎖状に連なり、片方の末端にLews X型糖鎖が、他方の末端にアシル鎖が配置されることになる。

【0012】
(1)Lewis X型糖鎖
Lewis X型糖鎖は、ガラクトース、フコース及びN-アセチルグルコサミンからなる3糖構造(Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc)の糖鎖である。生体中に見出されるLewis X構造と同様のLewis X構造が形成されるように、GlcNacにスペーサーが結合している。Lewis X型糖鎖はstage-specific embryonic antigen-1 (SSEA-1)とも呼ばれ、ヒト神経幹細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト脳腫瘍細胞、マウスiPS細胞、マウスES細胞、マウス羊膜由来幹細胞等に発現していることが知られている。

【0013】
(2)スペーサー
スペーサーは、Lewis X型糖鎖とアシル鎖の連結という基本的な役割の他、Lewis X型糖鎖とアシル鎖の間の空間的距離の形成、及び柔軟性の付与という役割も担う。これらの役割を果たすため、本発明に使用するスペーサーは、1~10個の構成単位が連結した構造を有する。好ましくは、協働性の観点から、2~6個の構成単位が連結した構造のスペーサーを用いる。構成単位毎にそれを構成する分子を選択できる。従って、スペーサーは一種又は二種以上の分子から構成されることになる。スペーサーを構成する分子(即ち、構成単位として採用可能な分子)の例は、糖、アミノ酸、核酸、メチレン鎖(CH2)及びエチレングリコール鎖(HOCH2CH2OH)である。

【0014】
スペーサーの構造の好ましい一例として、Lewis X構造側に配置される単糖又はオリゴ糖と、アシル鎖側に配置されるアルキル鎖が連結した構造を挙げることができる。単糖はアルドース又はケトースであり、具体例はグルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、フルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミンである。オリゴ糖の重合度は特に限定されない。例えば重合度2~6のオリゴ糖を用いることができる。特に好ましいオリゴ糖の一例としてラクトースを挙げることができる。ラクトースを採用した場合、本発明のネオ糖脂質は、ラクトースにLewis X構造が連結した5糖構造という、生体中に存在する構造を備えることになり、非免疫原性であるという利点ないし効果を期待できる。

【0015】
アルキル鎖としては、例えば、アミノエチル基又はヒドロキシエチル基を用いる。アミノエチル基を採用した場合、スペーサーとアシル鎖がアミド結合を介して連結されることになる。一方、ヒドロキシエチル基を採用した場合の結合様式はエステル結合となる(エチレンオキシ基が形成されることになる)。

【0016】
(3)アシル鎖
例えば、炭素数が16~24のアシル鎖が用いられる。好ましくは、炭素数が16~20のアシル鎖を用いる。アシル鎖は、典型的には、非修飾のアシル鎖である。但し、本発明の効果、即ち、未分化細胞に対してアポトーシスを誘導すること、に実質的な影響のない限り、修飾されたアシル鎖であってもよい。ここでの修飾の例として、ニトロベンゾオキサジアゾールをはじめとする蛍光色素の付加を挙げることができる。

【0017】
後述の実施例に示す通り、炭素数18のアシル鎖を用いて構成したネオ糖脂質が神経幹細胞に対して優れた効果を発揮した事実に鑑み、本発明のアポトーシス誘導剤の標的となる細胞(即ち、アポトーシスを誘導することになる細胞)が神経幹細胞の場合には、好ましくは炭素数が18のアシル鎖を採用する。

【0018】
(4)ネオ糖脂質の具体例
本発明のアポトーシス誘導剤を構成するネオ糖脂質の構造の具体例を示す。
【化3】
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【0019】
(5)合成方法
本発明のアポトーシス誘導剤を構成するネオ糖脂質は化学合成で調製することができる。例えば、グルコサミン、ガラクトース、フコースの誘導体を用いて、チオグリコシドを用いた反応やシュミットのグリコシル化反応でLewis X型糖鎖誘導体を合成する。また、ラクトースをアセテート体とし、これを用いたグリコシル化反応でスペーサーを合成する。このようにして得たLewis X型糖鎖誘導体とスペーサーを、糖供与体、受容体としたグリコシル化反応で5糖構造とし、次いで各保護基を塩基または還元剤等によって脱保護した後、脱水縮合反応で脂肪酸と連結することにより、目的のネオ糖脂質を得る。

【0020】
(6)標的細胞
本発明のアポトーシス誘導剤は、Lewis X型糖鎖を発現している未分化細胞に適用される。即ち、Lewis X型糖鎖を発現していることを条件として様々な細胞に適用できる。未分化細胞を例示すると、成体幹細胞(例えば、神経幹細胞、上皮幹細胞、造血幹細胞)、間葉系幹細胞(骨髄由来、脂肪組織由来、歯髄由来、臍帯由来など)、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、ntES細胞(体細胞由来ES細胞)、これらの細胞を分化誘導して得られた細胞(但し、更に分化する能力を有するもの)、脳腫瘍細胞である。未分化細胞の分化能や分化レベルは特に限定されない。従って、上記のごとき各種幹細胞はもとより、各種前駆細胞も未分化細胞に該当する。

【0021】
未分化細胞の動物種はヒト、マウス、ラット等の哺乳動物である。好ましい標的細胞はヒト細胞である。即ち、好ましい一態様では、ヒト未分化細胞に対して本発明のアポトーシス誘導剤を適用する。

【0022】
未分化細胞がLewis X型糖鎖を発現しているか否かは、Lewis X型糖鎖に特異的結合性を有する抗体を用いた免疫学的検出、クロマトグラフィーや質量分析等によって確認することができる。また、過去の報告を参考にしてLewis X型糖鎖の発現の有無を判断することにしてもよい。尚、ヒト神経幹細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト脳腫瘍細胞、マウスiPS細胞、マウスES細胞、マウス羊膜由来幹細胞はLewis X型糖鎖を発現することが知られており、好適な標的細胞となる。

【0023】
(7)適用方法
中枢神経の障害の治療・改善を目的として、中枢神経組織への神経細胞の移植(再生医療)が検討されている。これまでの報告によれば、分化した細胞(ニューロンなど)を直接移植すると死滅してしまうため、通常は神経幹細胞が移植される。移植された神経幹細胞は周囲の環境によって特定の機能を担う細胞(ニューロンなど)に分化し、治療効果を発揮する。この治療戦略では、神経幹細胞の増殖能が高いために移植部位において細胞塊を形成する可能性や、がん化等が懸念されている。本発明の一態様は、この課題に対する解決策を提供する。具体的には、神経幹細胞の移植を受けた個体に対して、移植後のある程度分化が進行した段階でアポトーシス誘導剤を投与し、移植部位に残存する未分化細胞(即ち神経幹細胞)の選択的除去を図る。即ち、残存神経幹細胞の除去剤として本発明のアポトーシス誘導剤を利用する。この態様では、移植部に送達されるようにアポトーシス誘導剤を投与する。例えば、移植部への直接投与(典型的には注射)、移植部近傍への投与(典型的には注射)等の投与形態で投与することができる。移植部に送達されることを条件にその他の投与形態を採用することにしてもよい。尚、神経幹細胞以外の幹細胞が移植される治療戦略においても同様に、残存する未分化細胞を除去する目的で本発明のアポトーシス誘導剤を用いることができる。

【0024】
一方、脳腫瘍幹細胞がLewis X型糖鎖を発現していることが知られている。この点に注目し、本発明の別の一態様は、脳腫瘍の治療剤としてアポトーシス誘導剤を利用する。具体的には、脳腫瘍を患う個体に対し、脳腫瘍を標的としてアポトーシス誘導剤を投与する。投与されたアポトーシス誘導剤は脳腫瘍に選択的毒性を示すことで治療効果を発揮し得る。この態様では、脳腫瘍組織に送達されるようにアポトーシス誘導剤を投与する。例えば、脳腫瘍組織内への直接投与(典型的には注射)、脳腫瘍組織近傍への投与(典型的には注射)等の投与形態で投与することができる。脳腫瘍組織に送達されることを条件にその他の投与形態を採用することにしてもよい。

【0025】
2.分化細胞の調製方法
本発明の第2の局面はアポトーシス誘導剤(第1の局面)の用途に関し、分化細胞の調製方法を提供する。「分化細胞」とは、特定の細胞系譜に沿って分化した結果として得られる細胞である。分化の過程で分化能を喪失することから、分化細胞は通常の条件下(即ち、生理的な条件下)では更に分化することはない。但し、特殊な条件下や特別の操作(例えば、リプログラミング)によって再び分化能を獲得する場合がある。

【0026】
本発明の調製方法では、上記アポトーシス誘導剤を用いることにより、未分化細胞にアポトーシスを誘導して死滅させ、純度の高い(即ち、未分化細胞の混在の少ない)分化細胞を得る。本発明の調製方法によれば、未分化性を維持した細胞(残存未分化細胞)又は目的の分化細胞まで分化するに至っていない細胞をアポトーシス誘導剤の効果によって死滅させることができる。現在、iPS細胞に代表される、細胞を利用した再生医療の実用化に向けた取り組みが進められている。移植用細胞又は組織に未分化細胞が残存していると癌化のリスクが増大すると懸念されている。残存する未分化細胞を除去するために様々な技術が開発されているが、決定的といえるものはない。本発明は、このような状況を打開し得る技術を提供するものであり、簡便な方法にもかかわらず、高品質(即ち、夾雑する未分化細胞が少なく、純度が高い)の分化細胞の提供を可能とする。

【0027】
本願では大別して2種類の調製方法(第1の調製方法、第2の調製方法)が提供される。第1の調製方法は、未分化細胞を出発材料として分化細胞を調製する方法である。当該調製方法では、以下のステップ(1)及び(2)をこの順序で行い、分化細胞を得る。
(1)特定の細胞系譜に沿った分化を誘導する条件下で未分化細胞を培養するステップ
(2)本発明のアポトーシス誘導剤の存在下で培養を継続するステップ

【0028】
ステップ(1)は未分化細胞を分化誘導するステップであり、未分化細胞から目的の分化細胞が得られるように、分化を誘導する条件下で未分化細胞を培養する。未分化細胞としては、目的の分化細胞への分化能を有するものが用いられる。未分化細胞の定義、使用可能な未分化細胞については上記の説明((6)標的細胞の欄)が援用される。

【0029】
用意した未分化細胞は、特定の細胞系譜に沿った分化が誘導される条件下で培養される。特定の細胞系譜とは、目的とする分化細胞が属する細胞系譜である。例えば、目的とする分化細胞が神経系を構成する細胞(ニューロン、アストロサイト(星状膠細胞)、オリゴデンドロサイト(稀突起膠細胞)、ミクログリア)であれば、神経細胞系譜が該当する。培養条件は過去の報告や成書を参考にして設定すればよい。例えば、基本培地に分化誘導剤及びその他の必要な成分を添加した培養液を用いて未分化細胞を培養する。分化誘導剤の例として、bFGF、EGF、BDNF、BMP9、レチノイン酸、TGF-βファミリー阻害剤、GSK3β阻害剤、ソニックヘッジホッグタンパク質、プルモルファミン等を挙げることができる。

【0030】
培地に添加可能な他の成分の例としは、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、ウマ血清など)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミン(BSA)、抗生物質、2-メルカプトエタノール、PVA、非必須アミノ酸(NEAA)、インスリン、トランスフェリン、セレニウムを挙げることができる。基本培地の例は、ダルベッコ変法イーグル培地(D-MEM)、α-MEM、ハムF12培地(HamF12)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、グラスゴー基本培地、Medium 199培地、イーグル最小必須培地(EMEM)培地、RPMI1640培地、Neurobasal培地、Neurobasal A培地である。培養温度は例えば、約30~40℃、好ましくは約37℃に設定する。CO2濃度は、例えば約1~10%、好ましくは約2~5%に設定する。培養期間は、使用する細胞、その他の培養条件等によって変動しうるが、例えば1日~60日である。尚、最適な培養条件は予備実験を通して決定すればよい。

【0031】
ステップ(1)によって未分化細胞が特定の細胞系譜に沿って分化し、目的の分化細胞が生ずる。即ち、目的の分化細胞を含む細胞集団が形成される。ステップ(2)では、当該細胞集団に残存する未分化細胞(目的の分化細胞まで分化するに至っていない細胞が存在する場合には、当該細胞も除去の対象となり得る)を選択的に除去(死滅)するために、本発明のアポトーシス誘導剤の存在下で培養を継続する。典型的には、ステップ(1)の後、本発明のアポトーシス誘導剤を含有する培養液へと培地交換し、分化細胞の維持ないし増殖に適した条件で培養する。ステップ(2)の培養液として、例えば、ステップ(1)に使用する培養液に本発明のアポトーシス誘導剤を添加したものを使用することができる。ステップ(1)の後に培地交換するのではなく、培養液にアポトーシス誘導剤を添加し、培養を継続することにしてもよい。また、ステップ(1)後の細胞を一旦回収し、新たな培養(即ちステップ(2))に供することにしてもよい。ステップ(2)における培養液中のアポトーシス誘導剤の濃度(添加濃度)は、所望の効果が発揮される限りにおいて特に限定されないが、例えば、アポトーシス誘導剤の有効成分であるネオ糖脂質の培養液中の濃度を50μM~300μM、好ましくは100μM~200μMとする。構造の異なる二種類以上のネオ糖脂質を併用してもよい。例えば、アシル鎖の長さが異なるネオ糖脂質を併用(炭素数が16のアシル鎖を有するネオ糖脂質と炭素数が18のアシル鎖を有するネオ糖脂質の併用、更に炭素数が24のアシル鎖を有するネオ糖脂質を併用等)。尚、ステップ(2)におけるその他の培養条件は、ステップ(1)に準ずればよい。

【0032】
以上の調製方法(第1の調製方法)では、未分化細胞を出発材料として分化細胞を調製するが、本発明の第2の調製方法では、未分化細胞と分化細胞が混在する試料(細胞集団)から分化細胞を調製する。この調製方法によれば、未分化細胞が選択的に除去され、分化細胞の含有率が高められる。即ち、夾雑する未分化細胞が少ない、高純度の分化細胞が得られる。この特徴に注目すれば、当該調製方法を「分化細胞を精製する方法」、或いは「分化細胞の純度を高める方法」として捉えることも可能である。本発明の第2の調製方法では、以下のステップを行う。
(i)未分化細胞と分化細胞が混在する試料を本発明のアポトーシス誘導剤の存在下で培養するステップ

【0033】
未分化細胞と分化細胞が混在する試料としては、例えば、特定の細胞系譜に沿った分化を誘導する条件下で未分化細胞を培養すること(即ち、第1の調製方法のステップ(1))によって得られた細胞集団を用いる。生体から採取した組織から分離した細胞集団又はその継代細胞を試料として用いることもできる。ステップ(i)では、アポトーシス誘導剤の存在下で培養するが、その操作方法や条件等は上記第1の調製方法の場合と同様である。

【0034】
本発明の調製方法(第1の調製方法及び第2の調製方法)によって得られる分化細胞は、典型的には回収され(ステップ(3))、各種用途(再生医療、研究用途など)に供される。回収操作は常法(例えば、セルスクレイパーによる剥離、トリプシン等による酵素処理、ピペッティング、遠心分離、セルソーターによる分取等)で行えばよい。回収後の細胞を更なる処理(濃縮、希釈、継代培養、活性化、凍結等)に供してもよい。
【実施例】
【0035】
1.ネオ糖脂質の合成(図1)
3種類のネオ糖脂質(化1~3)、即ち化合物a: Lewis X型糖鎖(Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAc)がスペーサー(アミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、化合物b: 2糖構造(Galβ1,4GlcNAc)がスペーサー(ラクトースとアミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、化合物c: Lewis X型糖鎖がスペーサー(ラクトースとアミノエチル基)を介してアシル鎖(炭素数18)に連結した構造のネオ糖脂質、を合成した。また、比較のために、化合物d: Lewis X型糖鎖にスペーサー(ラクトースとアセチルアミノエチル基)が連結した構造の化合物(化4)も合成した。
【化1】
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【実施例】
【0036】
【化2】
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【実施例】
【0037】
【化3】
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【実施例】
【0038】
【化4】
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【実施例】
【0039】
<化合物a>
化合物aは例えば以下のような合成スキームで調製することができる。
【化5】
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【実施例】
【0040】
Lewis X型糖鎖誘導体1とオクタデカン酸をN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)と4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride(DMT-MM)を用いて縮合することで化合物aを調製する。化合物1はChemical Communications, 2011, 47(38), 10800-10802を参考に調製した。調製した化合物aを高分解能質量分析およびNMR分析により同定した(表1)。
HRMS (FAB): Calcd for C40H75N2O16 [M+H]+: 839.5111; Found: 839.5125.
NMR (500 MHz, 化合物a : DPC = 1 : 4, D2O, 300 K)
【表1】
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【実施例】
【0041】
<化合物b>
化合物bは例えば以下のような合成スキームで調製することができる。
【化6】
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【実施例】
【0042】
まず、化合物2とラクトース誘導体3を、N-ヨードこはく酸イミド(NIS)とトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)を加えて反応させることで、化合物4を得る。化合物4をエチレンジアミンによって処理した後、ピリジンおよび無水酢酸を加え反応させることで化合物5を得る。化合物5は、ナトリウムメトキシドによる処理および接触水素化によって化合物6へ誘導する。化合物6とオクタデカン酸をDIPEAとDMT-MMを用いて縮合することで化合物bを調製する。
【実施例】
【0043】
化合物2は以下のように調製した。
【化7】
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【実施例】
【0044】
まず、Phenyl 6-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-1-thio-1-deoxy-β-D-glucopyranoside(7)と2,3,4,6-tetra-O-acetyl-α-D-galactopyranosyl 2,2,2-trichloroacetimidate(8)のジクロロメタン溶液にtrimethylsilyl trifluoromethanesulfonate(TMSOTf)を加えて反応させることで化合物9を合成した(収率66%)。化合物9にピリジンおよび無水酢酸を加え反応させることで化合物2を得た(収率83%)。
【実施例】
【0045】
ラクトース誘導体3は以下のスキームに従って合成した。
【化8】
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【実施例】
【0046】
まず、Lactose octacetate(10)のジクロロメタン溶液に2-bromoethanolを加え、boron trifluoride-ethyl ether complexを用いて反応させることで化合物11へ誘導した(収率35%)。化合物11はDMF中、ヨウ化ナトリウムとアジ化ナトリウムを用いて化合物12へと変換した(収率92%)。化合物12をメタノール中、ナトリウムメトキシドを用いて処理し脱保護体13とした(収率90%)。化合物13を、DMF中、2,2-dimethoxypropaneとp-トルエンスルホン酸によって処理し、化合物14を得た(収率55%)。化合物14の水酸基を臭化ベンジルと水素化ナトリウムを用いて保護し、化合物15とした(収率52%)。化合物15を酢酸で処理することで化合物3を調製した(収率83%)。
【実施例】
【0047】
調製した化合物bを高分解能質量分析およびNMR分析により同定した(表2)。
HRMS (FAB): Calcd for C46H85N2O22 [M+H]+: 1017.5588; Found: 1017.5610.
NMR (500 MHz, 化合物b : DPC = 1 : 4, D2O, 300 K)
【表2】
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【実施例】
【0048】
<化合物c>
化合物cは例えば以下のような合成スキームで調製することができる。
【化9】
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【実施例】
【0049】
まず、Lewis X型糖鎖誘導体16とラクトース誘導体3を、NISとTfOHを加えて反応させることで、化合物17を得る。化合物17をエチレンジアミンによって処理した後、ピリジンおよび無水酢酸を加え反応させることで化合物18を得る。化合物18は、ナトリウムメトキシドによる処理および接触水素化によって化合物19へ誘導する。化合物19とオクタデカン酸をDIPEAとDMT-MMを用いて縮合することでネオ糖脂質(化合物c)を調製する。
【実施例】
【0050】
Lewis X型糖鎖誘導体16は、化合物9とmethyl 2,3,4-tri-O-benzyl-1-thio-β-L-fucopyranoside(20)とをジクロロメタン中、NISおよびTfOHを用いて反応させることで調製した(収率50%)。
【化10】
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【実施例】
【0051】
調製したネオ糖脂質(化合物c)を高分解能質量分析およびNMR分析により同定した(表3)。
HRMS (FAB): Calcd for C52H95N2O26 [M+H]+: 1163.6168; Found: 1163.6193.
NMR (500 MHz, 化合物c : DPC = 1 : 4, D2O, 300 K)
【表3】
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【実施例】
【0052】
<化合物d>
化防物dは例えば化合物19と酢酸を縮合させることで調製することができる。
【実施例】
【0053】
2.神経幹細胞に対するネオ糖脂質の効果
(1)神経幹細胞の調製
神経幹細胞は過去の報告(H. Yagi et al. J. Biol. Chem. 285, 37923-37301, 2015)を参考にして調製した。具体的には、胎生1日目のICRマウスの胎児の脳から線条体を集め、0.25%トリプシン存在下で37℃、10分間インキュベートすることでシングル細胞を調製した。その後、2% B27(Life Technologies)、2mM L-グルタミン、20 ng/ml basic FGF(Pepro Tech)および20 ng/ml 上皮成長因子(EGF; Pepro Tech)を含むNeurobasal A medium(Life Technologies)培地を用い、5% CO2存在下37℃で培養することで、細胞隗として神経幹細胞を調製した。分化細胞は上記の培地からEGF、FGFを除き、1%ウシ胎仔血清を加えた培地を用い、5% CO2存在下37℃で10日間培養することで調製した。
【実施例】
【0054】
(2)WST-8アッセイを用いた細胞増殖の比較
増殖させた神経幹細胞隗をTrypLETMExpress (Life Technologies)存在下で37℃、5分間インキュベートし、シングル細胞を調製した。一方、分化細胞は、培養シャーレにト神経幹細胞を96ウェルプレートに1ウェル中に1×105細胞入るように調製した。合成したネオ糖脂質を最終濃度が所定濃度(0.2μM、0.96μM、4.8μM、24μM又は120μM)になるように加え、非処理のウェルとともに24時間後における増殖をCell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて比較した。測定は450 nmの吸光を測定することで行った。
【実施例】
【0055】
結果を図2、3に示す。ラクトースとアミノエチル基からなるスペーサーを介してLewis X型糖鎖がアシル鎖に連結した構造のネオ糖脂質(化合物c)のみ、神経幹細胞特異的に細胞死を誘導していた。アシル鎖を結合させていない化合物(化合物d)では神経幹細胞の細胞死は認められなかった。また、Lewis X型糖鎖を有さないネオ糖脂質(化合物b)、及びスペーサーが短い(ラクトース構造を含まない)ネオ糖脂質(化合物a)についても、神経幹細胞特異的な細胞死誘導は認められなかった。
【実施例】
【0056】
以上の通り、Lewis X型糖鎖にスペーサーを介してアシル鎖が連結された構造のネオ糖脂質が神経幹細胞特異的な細胞死(アポトーシス)を誘導することが明らかとなった。また、ラクトースを含むスペーサーが有効に機能することが示され、細胞死誘導効果においてスペーサーの長さも重要なファクターであることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のアポトーシス誘導剤は未分化細胞特異的にアポトーシスを誘導する。生体外(in vitro)で幹細胞(例えば神経幹細胞)を分化させると、通常、分化細胞と未分化細胞が入り混じったヘテロな細胞集団が形成される。本発明のアポトーシス誘導剤を利用すれば、分化が進んでいない細胞(未分化細胞)を選択的に除去することが可能となり、純度の高い分化細胞を得ることができる。また、例えば培地中への添加によってその効果を発揮させることができることから、簡便な操作による分化細胞の調製が可能となる。このように、本発明は、再生医療用の細胞集団に混在する未分化細胞(残存未分化細胞)を除去する手段として極めて有用である。また、細胞移植後に分化することなく残存した未分化細胞の除去に本発明を利用することも可能である。更には、脳腫瘍の治療剤として本発明を利用することも期待される。
【0058】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2