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明細書 :マイクロニードル及びマイクロアレイ並びにその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-000724 (P2017-000724A)
公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
発明の名称または考案の名称 マイクロニードル及びマイクロアレイ並びにその製造方法
国際特許分類 A61M  37/00        (2006.01)
FI A61M 37/00 514
A61M 37/00 505
請求項の数または発明の数 19
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2016-055428 (P2016-055428)
出願日 平成28年3月18日(2016.3.18)
優先権出願番号 2015115266
優先日 平成27年6月5日(2015.6.5)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】西澤 松彦
【氏名】甲斐 洋行
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100181272、【弁理士】、【氏名又は名称】神 紘一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4C167
Fターム 4C167AA72
4C167BB02
4C167BB03
4C167BB04
4C167BB24
4C167CC01
4C167FF10
4C167GG42
4C167GG43
4C167GG46
要約 【課題】吸水速度に優れたマイクロニードル及びそれを含むマイクロアレイ並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】内部に網目状に延びる流路2を備えることを特徴とする、マイクロニードル1、及び該マイクロニードル1を基材12に立設させてなることを特徴とする、マイクロアレイ11、並びに、該マイクロニードル1及び該マイクロニードル1、並びに、マイクロアレイ11の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に網目状に延びる流路を備えることを特徴とする、マイクロニードル。
【請求項2】
前記流路の径Rが50nm超30μm以下である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記流路の延在長さLの前記流路の径Rに対する割合(L/R)が2以上である、請求項1又は2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
空隙率が5~50%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
ハイドロゲル材料、キセロゲル、ハイドロゲルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
ハイドロゲルを含む、請求項5に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記ハイドロゲルの引張破断応力が10kPa~50MPaである、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
前記ハイドロゲルの含水率が30~99.9質量%である、請求項6又は7に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
前記ハイドロゲルが、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物記載のマイクロニードル。
【請求項10】
前記ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)と前記ポリエチレングリコールとの質量比が100:1~1:100である、請求項9に記載のマイクロニードル。
)とポリエチレングリコールとの架橋体を含む、請求項5~8のいずれか一項に
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロニードルを基材に立設させてなることを特徴とする、マイクロアレイ。
【請求項12】
水相と、油相と、前記水相及び前記油相が両連続相を形成する中間相とを含む三相系溶液の前記中間層において、ハイドロゲルのマイクロニードル材料及び/又はマイクロアレイ材料を調製する
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロニードル及び請求項11に記載のマイクロアレイの製造方法。
【請求項13】
前記三相系溶液を水、ブタノール、トルエンを含む溶液とし、
前記ハイドロゲルの材料をポリアクリルアミドとする、
請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
中実体とハイドロゲル材料とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、
前記混合物から前記中実体を除去する中実体除去工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロニードル及び請求項11に記載のマイクロアレイの製造方法。
【請求項15】
前記中実体をファイバーとする、
請求項14に記載のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法。
【請求項16】
前記混合物調製工程において、非水溶性樹脂からなるファイバーにハイドロゲル材料の水溶液を加えることによって、ファイバー含有ハイドロゲルを調製し、
前記中実体除去工程において、前記ファイバー含有ハイドロゲルに有機溶媒を加えて、前記ファイバーを溶出する、
請求項15に記載のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法。
【請求項17】
前記非水溶性樹脂をポリスチレンとし、
前記ハイドロゲル材料をポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体とし、
前記有機溶媒をトルエンとする
請求項16に記載のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法。
【請求項18】
前記中実体を多孔体とする、
請求項14に記載のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法。
【請求項19】
前記多孔体をキトサンの凍結乾燥物とする、
請求項18に記載のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、連続したポーラス構造(マイクロチャネル構造)を有するマイクロニードル、及びマイクロアレイ、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
刺入時に被験者が痛みを感じない低侵襲のマイクロニードル及びマイクロアレイは、皮下組織液等の体液の採取(サンプリング)、体液中の成分の濃度の計測による生体情報のセンシング、薬剤の経皮投与等に有用であり、投薬の分野では既に実用化が進んでいる。
【0003】
最も一般的な既存のマイクロニードルは樹脂製の中実体であり、ときにマイクロニードルを並べてマイクロアレイとして用いられる。中実体のマイクロニードルは、例えば、その表面に薬剤を塗布しておき、ニードルを皮膚に刺入することによって、薬剤の皮下投与に用いることができる。
【0004】
一方で、マイクロニードルにより、薬剤液の注入や、組織液のサンプリングや計測を行うため、マイクロニードルに通液性が求められることもある。
この必要に応えるため、金属や酸化物の微細加工を用いて、注射針が備える直線状の空隙からなる中空構造を有するマイクロニードルを作製する技術(特許文献1参照)や、発泡剤であるNaHCO3を用いてハイドロゲルを含むマイクロニードルを調製することによって、多数の球状の空隙からなる中空構造を有するマイクロニードルを作製する技術(非特許文献1参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-021677号公報
【0006】

【非特許文献1】T. R. R. Singh, et al., Journal of Applied Polymer Science, 2012, 125, 2680-2694.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術においては刺入時に流路となる中空構造が詰まるという問題が発生する等、従来の中空構造を備えるマイクロニードルでは、吸水速度が十分ではなく、体液の採取や生体情報のセンシングといった分野において、応用範囲が狭められるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、吸水速度に優れたマイクロニードル及びそれを含むマイクロアレイ並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明のマイクロニードルは、内部に網目状に延びる流路を備えることを特徴とする。
ここで、本発明のマイクロニードルでは、前記流路の径Rが50nm超30μm以下であることが好ましい。また、本発明のマイクロニードルでは、前記流路の延在長さLの前記流路の径Rに対する割合(L/R)が2以上であることが好ましい。更に、前記ハイドロゲルの空隙率が5~50%であることが好ましい。
【0010】
本発明のマイクロニードルは、ハイドロゲル材料、キセロゲル、ハイドロゲルからなる群から選択される少なくとも1つを含んでよい。
本発明のマイクロニードルは、特に、ハイドロゲルを含んでよい。
また、前記ハイドロゲルの引張破断応力が10kPa~50MPaであることが好ましい。更に、前記ハイドロゲルの含水率が30~99.9質量%であることが好ましい。
このとき、前記ハイドロゲルが、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体を含むことが好ましく、前記ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)と前記ポリエチレングリコールとの質量比が100:1~1:100であることが好ましい。
【0011】
本発明のマイクロアレイは、上記いずれかのマイクロニードルを基材に立設させてなることを特徴とする。
【0012】
本発明のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法では、水相と、油相と、前記水相及び前記油相が両連続相を形成する中間相とを含む三相系溶液の前記中間層において、ハイドロゲルのマイクロニードル材料及び/又は前記マイクロアレイ材料を調製することを特徴とする。
ここで、前記三相系溶液を水、ブタノール、トルエンを含む溶液とし、前記ハイドロゲル材料をポリアクリルアミドとすることが好ましい。
【0013】
本発明のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法は、中実体とハイドロゲル材料とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、前記混合物から前記中実体を除去する中実体除去工程とを含む。
【0014】
ここで、マイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法では、前記中実体をファイバーとしてよい。
このとき、前記混合物調製工程において、非水溶性樹脂からなるファイバーにハイドロゲル材料の水溶液を加えることによって、ファイバー含有ハイドロゲルを調製し、前記中実体除去工程において、前記ファイバー含有ハイドロゲルに有機溶媒を加えて、前記ファイバーを溶出することが好ましい。
そして、前記非水溶性樹脂をポリスチレンとし、前記ハイドロゲル材料をポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体とし、前記有機溶媒をトルエンとすることが好ましい。
【0015】
またここで、マイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法では、前記中実体を多孔体としてよい。
このとき、前記多孔体をキトサンの凍結乾燥物とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸水速度に優れたマイクロニードル及びそれを含むマイクロアレイ並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルの断面図を示し、(b)に、マイクロアレイの断面図を示す。
【図2】本発明の第二実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルの断面図を示し、(b)に、マイクロアレイの断面図を示す。
【図3】本発明の実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの寸法を示す説明図を示す。(a)に、マイクロニードルの寸法を示す説明図を示し、(b)に、マイクロアレイの寸法を示す説明図を示す。
【図4】本発明の第一実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
【図5】本発明の第二実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
【図6】本発明の第二実施形態の好適例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
【図7】本発明の第二実施形態の更なる好適例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
【図8】マイクロチャネル構造を有するハイドロゲルシートの吸水速度評価の結果を表すグラフを示す。グラフ中、横軸に時間(分)を示し、縦軸に膨潤率(重量%)を示す。
【図9】本発明の実施例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法に用いた鋳型の製造方法の概略を示す。
【図10】本発明の実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し、(b)に、マイクロアレイを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
【図11】本発明の実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す。(a)に、ポリスチレンファイバーを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し、(b)に、鋳型内にポリスチレンファイバーを堆積させたときの様子を電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
【図12】本発明の実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し(左に外観図、右に拡大図を示す)、(b)に、マイクロアレイを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す(全体に頂面図を示し、右下に側面図を示す)。
【図13】本発明の実施例1及び実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度の評価方法の概略を示す。(a)に、吸水速度を評価するためのキットの分解及び組立の様子を示し、(b)に、(a)に示すキットをアガロースゲルに適用したときの様子を、(a)の線A-Aに沿う面に相当する面よる断面図で示す。
【図14】本発明の実施例1のマイクロニードルをアガロースゲルに刺入したときの、刺入後0分後、10分後における発汗チェッカーの様子を撮影したときの写真を示す。
【図15】本発明の実施例2のマイクロニードルをアガロースゲルに刺入したときの、刺入後0時間、1.5時間、3時間、12時間における発汗チェッカーの様子を撮影したときの写真を示す(左にコントロールの場合、右に実施例2の場合を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明のマイクロニードル、及び本発明のマイクロアレイ、並びに本発明のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の実施形態について詳細に例示説明する。

【0019】
(マイクロニードル及びマイクロアレイ)
本発明の実施形態のマイクロニードル1(以下、「マイクロニードル1」ともいう。)は、内部に網目状に延びる流路2を備えることを特徴とする。
図1に、本発明の第一実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルの断面図を示し、(b)に、マイクロアレイの断面図を示す。
また、図2に、本発明の第二実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルの断面図を示し、(b)に、マイクロアレイの断面図を示す。

【0020】
図1に示す本発明の第一実施形態のマイクロニードル1では、流路2の断面形状が流路2の延在方向に関する位置によって異なり、また、流路2の断面積が流路2の延在方向に亘って不定である、より具体的には、流路2の断面積が不規則に漸増及び漸減を繰り返している。
一方、図2に示す本発明の第二実施形態のマイクロニードル1では、流路2の断面形状が流路2の延在方向に亘って同じであり、また、流路2の断面積が流路2の延在方向に亘って一定である。
いずれのマイクロニードル1も、図1及び図2に示す通り、内部に網目状に延びる流路2を備えている。

【0021】
本発明の実施形態のマイクロニードル1を皮膚(図示せず)に刺入した際には、皮下組織液とマイクロニードル1に設けられた網目状に延びる流路2との間では、毛細管現象が生じ、皮下組織液をマイクロニードル1の流路2を通じて高速で吸い上げることが可能となる。そのため、マイクロニードル1は、優れた吸水速度を備える。
この作用効果により、例えば、皮下組織液等の体液の採取(サンプリング)や、体液中の成分の濃度の計測による生体情報のセンシングを、高速で(例えば、実用上好適な約10分以下で)効率的に行うことが可能となる。

【0022】
また、本発明の実施形態のマイクロニードル1によれば、薬剤溶液をマイクロニードル1の流路2を通じて迅速に皮下に投与することも可能となる。

【0023】
ここで、図1(a)及び図2(a)に示すように、マイクロニードル1では、流路2の径Rが、前述の毛細管現象による効果を十分に得る観点から、好適には30μm以下であり、更に好適には10μm以下であり、特に好適には5μm以下であり、また、好適には50nm超であり、更に好適には100nm以上であり、より好適には500nm以上であり、特に好適には1μm以上である。
なお、流路2の径Rとは、マイクロニードル1の内部に設けられた全ての流路2についてそれらの延在長さに亘って径(最大径)を測定した場合における径の平均値を指す。

【0024】
また、マイクロニードル1では、流路2の延在長さLが、10~1000μmであってよく、前述の毛細管現象による効果を十分に得る観点から、100~1000μmであることが好ましく、更に製造の簡便性の観点から、100~300μmであることが更に好ましい。
なお、流路2の延在長さLとは、マイクロニードル1の内部に設けられた全ての流路2についてそれらの延在長さを測定した場合における延在長さの平均値を指す。

【0025】
更に、マイクロニードル1では、流路2の延在長さLの流路2の径Rに対する割合(L/R)が、マイクロニードル1の内部に流路2をより連続的に設けて、マイクロニードル1の吸水速度を更に高める観点から、好適には2以上であり、更に好適には10以上であり、特に好適には100以上であり、最も好適には1000以上である。

【0026】
本発明の実施形態のマイクロニードル1は、その内部を貫通する流路2を少なくとも1つ備えることが好ましい。貫通していない流路2では、流路2内の圧力が高まり、皮下組織液の流路2への導入が遅くなるのに対して、貫通する流路2では、皮下組織液が毛細管現象により流路2に導入される際に、流路2内の圧力の高まりが抑制され、皮下組織液の流路2への導入が速くなる。

【0027】
また、マイクロニードル1の空隙率は、吸水速度を更に高めつつ、機械的強度を十分に得る観点から、5~50%であることが好ましく、10~30%であることが更に好ましい。

【0028】
本発明の実施形態のマイクロニードル1の三次元形状について言えば、マイクロニードル1は、図1及び図2に示すように、円錐台形状を有している。
図3に、本発明の実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの寸法を示す説明図を示す。(a)に、マイクロニードルの寸法を示す説明図を示し、(b)に、マイクロアレイの寸法を示す説明図を示す。

【0029】
ここで、マイクロニードル1の円錐台形状における底面の円の直径Rbは、20~500μmとしてよく、作製の簡便さおよび皮膚への刺し入れのしやすさ、機械的強度の観点から、100~400μmであることが好ましく、例えば、300μmであってよい。
頂面の円の直径Rtは、1~50μmとしてよく、作製の簡便さ、及び皮膚への刺し入れのしやすさの観点から、5~20μmであることが好ましく、例えば、10μmであってよい。
高さHは、20~1000μmとしてよく、角質を貫通させた上で表皮との十分な接触面積を確保し、真皮への侵襲を防ぐ観点から、30~600μmであることが好ましく、例えば、600μmであってよい。

【0030】
なお、本発明のマイクロニードルの三次元形状は、円錐台形状に限定されることなく、皮膚に刺入することが可能である限り、円錐形状、四角錐形状、四角錐台形状等の他の形状としてもよい。

【0031】
本発明の実施形態のマイクロニードル1の材料は、特に限定されないが、例えば、ハイドロゲル材料、樹脂、酸化物、金属等が挙げられる。

【0032】
ハイドロゲル材料とは、水(分散媒)に分散させることによって、ハイドロゲルを形成する材料をいう。
ハイドロゲル材料としては、例えば、寒天、ゼラチン、アガロース、キサンタンガム、ジェランガム、スクレロチウガム、アラビヤガム、トラガントガム、カラヤガム、セルロースガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キトサン、カラギーナン、クインスシード、ガラクタン、マンナン、デンプン、デキストリン、カードラン、カゼイン、ペクチン、コラーゲン、フィブリン、ペプチド、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸(ムコ多糖類)及びヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸カルシウム等のアルギン酸塩、並びにこれらの誘導体等の天然高分子;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体及びこれらの塩;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー等のポリ(メタ)アクリル酸類及びこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体、ポリエチレングリコール架橋体、N-ビニルアセトアミド架橋体、アクリルアミド架橋体、デンプン・アクリル酸塩グラフトコポリマー架橋物等の合成高分子;シリコーン;相互侵入網目構造ヒドロゲル及びセミ相互侵入網目構造ヒドロゲル;これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの中でも、ハイドロゲルを構成する材料としては、耐荷重、生体親和性の観点から、コラーゲン、グルコマンナン;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム;相互侵入網目構造ヒドロゲル及びセミ相互侵入網目構造ヒドロゲルが好ましく、また、優れた機械的強度及び優れた生体適合性を得る観点から、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体が好ましく、更に、ハイドロゲルの電気的中性を担保する観点から、架橋ポリエチレングリコールが好ましい。
ここで、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体における、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの質量比は、100:1~1:100であることが好ましく、マイクロニードル1の皮膚への刺入しやすさを高める観点から、10:1~1:10であることが更に好ましく、3:2~4:3であることが特に好ましい。

【0033】
樹脂としては、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂等が挙げられる。酸化物としては、無機酸化物及びその誘導体が挙げられ、ここで、無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニア、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。金属としては、ニッケル、鉄、これらの合金等が挙げられる。

【0034】
ここで、マイクロニードル1の材料は、上記網目状に延びる流路2により吸水速度を高めながら、マイクロニードル1自体に通液性を与えることによって吸水速度を更に高める観点から、ハイドロゲル材料であることが好ましい。

【0035】
本発明の実施形態のマイクロニードル1は、上記の通り、ハイドロゲル材料を含むことが好ましく、ハイドロゲル材料からなるものとしてもよい。ハイドロゲル材料は、ニードルを皮膚に刺し入れた際に皮下組織液等の体液を吸収することによって、ハイドロゲルとし得る。
また、マイクロニードル1は、ハイドロゲル材料と、水と、目的に応じて、薬剤等を含んでなるハイドロゲルを含むことが好ましく、該ハイドロゲルを乾燥させたキセロゲルを含むことも好ましい。なお、キセロゲルにおいて、水の質量のキセロゲルの質量に対する割合は、0~5質量%としてよい。
これらハイドロゲル材料、ハイドロゲル、キセロゲルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、マイクロニードル1は、上記のハイドロゲル及び/又はキセロゲルからなるものとしてもよい。
ハイドロゲルに用いられる水としては、例えば、超純水等が挙げられる。
薬剤としては、例えば、インシュリン、DNA、ワクチン等が挙げられ、現状では皮下注射で投与されており、分子量が小さい、インシュリンが好適に用いられる。

【0036】
因みに、図1及び図2に示すマイクロニードル1は、ハイドロゲル材料と水とを含むハイドロゲルからなるものとしている。

【0037】
マイクロニードル1がハイドロゲル材料又はキセロゲルである場合、ハイドロゲル材料又はキセロゲルの弾性率は、0.1kPa~100MPaであることが好ましく、100kPa~50MPaであることが更に好ましい。
なお、「弾性率」は、バルクの試験片を引張試験することによって、測定することができる。測定装置としては、例えば、インストロン社製の引張試験機5960シリーズ等が挙げられる。

【0038】
マイクロニードル1がハイドロゲルである場合について以下に詳述する。
ハイドロゲルの含水率は、マイクロニードル1を薬剤の皮下投与(や経皮投与)に用いる場合に、ハイドロゲル中における薬剤等の包含量を増加させる観点から、30~99.9質量%であることが好ましく、30~80質量%であることが更に好ましく、50~80質量%であることが特に好ましく、例えば、70質量%であってよい。
なお、「含水率」とは、水の質量のハイドロゲルの質量に対する割合(質量%)を指す。

【0039】
また、ハイドロゲルの曲げ破断応力は、マイクロニードル1の機械的強度を十分に得る観点から、10kPa~50MPaであることが好ましく、100kPa~30MPaであることが更に好ましく、300kPa~20MPaであることが更により好ましく、1MPa~20MPaであることが特に好ましく、2MPa~5MPaであることが最も好ましい。
なお、「引張破断応力」は、引張荷重によりハイドロゲルが破断する応力を、ロードセルを用いて計測することによって、測定することができる。測定装置としては、例えば、インストロン社製の引張試験機5960シリーズ等が挙げられる。

【0040】
ハイドロゲルのpHは、皮膚とマイクロニードル1との接触により皮膚に炎症が生じるのを抑制する観点から、5~9であることが好ましく、7~8であることが更に好ましく、例えば、7.4であってよい。

【0041】
(マイクロアレイ)
本発明の実施形態のマイクロアレイ11(以下、「マイクロアレイ11」ともいう。)は、本発明の実施形態のマイクロニードル1を基材12に立設させてなることを特徴とする。
図1(b)に、本発明の第一実施形態のマイクロアレイの断面図を示し、図2(b)に、本発明の第二実施形態のマイクロアレイの断面図を示す。

【0042】
図1(b)、図2(b)、図3(b)に示すように、本発明の実施形態のマイクロアレイ11では、円錐台形状を有する本発明の実施形態のマイクロニードル1が、正方形の基材12上に、マイクロニードル1の底面が基材12表面上に位置するように、配置されている。
マイクロアレイ11におけるマイクロニードル1の立設態様としては、特に限定されることなく、適用部位や使用目的に合わせて適宜定めることができる。マイクロニードル1は基材に均一に又は不均一に立設されていてよく、例えば、図3(b)に示すように、所定方向に複数個(図3(b)では11個)、該所定方向に直交する方向に複数個(図3(b)では11個)立設される。

【0043】
図3(b)に、本発明の実施形態のマイクロアレイの寸法を示す説明図を示す。
マイクロニードル1の数は、特に限定されることなく、適用部位や使用目的に合わせて適宜定めることができる。
隣接するマイクロニードル1間の距離d(マイクロニードル1の底面間の最短距離)は、特に限定されないが、10~500μmとしてよく、皮膚に刺し入れるニードルの単位面積当たりの量を十分としつつ、刺入時にニードル1つ当たりにかかる力を十分にしてニードルの皮膚への刺入を容易にする観点から、20~300μmであることが好ましく、例えば、50μmであってよい。

【0044】
マイクロアレイ11の基材12の材料は、特に限定されないが、基材12は、ハイドロゲルを含むことが好ましく、ハイドロゲルからなるものとしてもよい。基材12の材料をマイクロニードル1の材料と同じであってもよい。

【0045】
マイクロニードル1と基材12とが一体化されていることが好ましく、本発明の効果を高める観点から、流路2がマイクロニードル1と基材12とを連通していることが、好ましい。

【0046】
(マイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法)
本発明の実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイを製造する方法は、特に限定されることはないが、下記の本発明の第一及び第二実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法が好適に用いられる。

【0047】
本発明の第一実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法は、水相51と、油相52と、水相51及び油相52が両連続相を形成する中間相53とを含む三相系溶液55の中間層53において、マイクロニードル材料及び/又はマイクロアレイ材料54を調製することを特徴とする。

【0048】
熱力学的平衡状態で水と油とがミクロに混在した溶液であるマイクロエマルションでは、適度なHLB値を有する界面活性剤及び/又は補助界面活性剤を用いることによって、O/W相状態とW/O相状との中間に位置づけられる相状態であり、水相及び油相が共に閉じていない状態(両連続相の状態)を形成させることができることが知られている(例えば、Kawano et al. "Construction of Continuous Porous Organogels, Hydrogels, and Bicontinuous Organo/Hydro Hybrid Gels from Bicontinuous Microemulsions." Macromolecules 43, No. 1 (12 2010): 473?79. doi:10.1021/ma901624p. 参照)。

【0049】
図4に、本発明の第一実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
本発明の第一実施形態のマイクロニードル1及びマイクロアレイ11の製造方法50(以下、「第一実施形態の製造方法50」ともいう。)は、水相51と、油相52と、水相51及び油相52が両連続相を形成する中間相53とを含む三相系溶液55の中間層53において、ハイドロゲル54を調製することを特徴とする。かかるハイドロゲル54は、共連続構造を備えることが特徴である。

【0050】
この第一実施形態の方法50では、中間層53の連続的な水相51中で、モノマーを重合させることによって網目状構造を備えるハイドロゲル54を調製しつつ、中間層53の連続的な油相52が占める部分を、このハイドロゲル54の内部を網目状に延びる流路2として形成する。

【0051】
油相52を構成する油性成分としては、例えば、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、鉱物油等が挙げられ、特に、形成される両連続相のドメインサイズの観点、及びゲル化後の除去の容易さの観点から、トルエンが好ましい。
界面活性剤及び補助界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、2-ブタノール、ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル等が挙げられ、特に、形成される両連続相のドメインサイズの観点、及びゲル化後の除去の容易さの観点から、ドデシル硫酸ナトリウム、2-ブタノールが好ましい。
ハイドロゲル材料54mとしては、前述の通り、マイクロニードル1やマイクロアレイ11を構成する材料が挙げられ、ハイドロゲル54を構成するポリマーが好ましい。
上記の中でも、油性成分としてのトルエンと、界面活性剤及び補助界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム及び2-ブタノールと、ハイドロゲル材料54mとしてのポリアクリルアミドとの組み合わせが特に好ましい。

【0052】
第一実施形態の方法50では、例えば、水相51にハイドロゲル材料54mを溶解させておき、次いで、図4に示す通り、メス鋳型100(後述)に、三相系溶液55の中間層53のみを加え、その後、ハイドロゲル54を調製してよい。このとき、マイクロニードル1の全体形状を整えるためには、油相52を構成する油性成分、水、ハイドロゲル材料等を、使用前に減圧下で十分に脱気することが好ましい。

【0053】
図5に、本発明の第二実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す説明図を示す。
本発明の第二実施形態のマイクロニードル1及びマイクロアレイ11の製造方法60(以下、「第二実施形態の製造方法60」ともいう。)は、中実体61とハイドロゲル材料62とを含む混合物63を調製する混合物調製工程と、混合物63から中実体61を除去する中実体除去工程と、を含むことを特徴とする。ここで、除去された中実体61の跡61hが、マイクロニードル1及びマイクロアレイ11における流路2となる点が特徴となる。
なお、ハイドロゲル材料がポリマーである場合、該ポリマーは予め重合されたものでも、混合物調製工程の系中にて重合されるものであってもよい。

【0054】
ここで、第二実施形態の製造方法60における中実体61としては、ファイバー(後述の図6では、61fで表す)、キトサンの凍結乾燥物等の多孔体(後述の図7では、61pで表す)等が挙げられる。

【0055】
第二実施形態の製造方法60の好適例60aでは、中実体61をファイバー61fとする。
図6に、本発明の第二実施形態の好適例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の好適例の概略を示す説明図を示す。

【0056】
そして、第二実施形態の製造方法60の好適例60aでは、前述の混合物調製工程(図5参照)において、非水溶性樹脂からなるファイバー61fにハイドロゲル材料62mの水溶液を加えることによって、混合物63としてのファイバー含有ハイドロゲル63fを調製し、また、前述の中実体除去工程(ファイバー除去工程)(図5参照)において、ファイバー含有ハイドロゲル63fに有機溶媒64を加えて、ファイバー61fを溶出する。

【0057】
((混合物調製工程))
第二実施形態の製造方法60の好適例60aにおける混合物調製工程では、例えば、図6に示す通り、メス鋳型100(後述)に、ファイバー61fと、ハイドロゲル材料62mの水溶液とを加えることによって、ファイバー61fとハイドロゲル材料62mとを含む混合物63を調製してよい。

【0058】
第二実施形態の製造方法60の好適例60aでは、図6に示す通り、メス鋳型100に、非水溶性樹脂からなるファイバー61fにハイドロゲル材料62mの水溶液を加えることによって、混合物63としてのファイバー含有ハイドロゲル63を調製する。
この好適例60aでは、メス鋳型100に加えるときのハイドロゲル材料62mの水溶液の温度は、水溶液がゲル状態ではなく溶液状態である温度としてよい。
また、この好適形態では、先にファイバー61fを加え、後にハイドロゲル材料62mの水溶液を加えるという操作を用いるため、ファイバー61fをメス鋳型100のマイクロニードル1相当部分に留めやすくなる。これにより、マイクロニードル1に十分な流路2を設けることが可能となり、マイクロニードル1及びマイクロアレイ11の品質を高めることが可能となる。

【0059】
ハイドロゲル材料62mとしては、前述の通り、マイクロニードル1やマイクロアレイ11を構成するハイドロゲル材料が挙げられ、ポリマーが好ましい。
ファイバー61fとしては、例えば、ポリスチレン、セルロース、マルトース等が挙げられ、ファイバー61fの製造工程での安定性および中実体除去の容易さの観点から、ポリスチレン、セルロースが好ましい。
ファイバー61fの直径としては、前述の流路2の径Rと同様としてよく、好適には30μm以下であり、更に好適には10μm以下であり、特に好適には5μm以下である。
ファイバー61fの長さとしては、前述の流路2の延在長さLと同様としてよく、10~1000μmであってよく、100~1000μmであることが好ましく、100~300μmであることが更に好ましい。

【0060】
((中実体除去工程(ファイバー除去工程)))
第二実施形態の製造方法60の好適例60aにおける中実体除去工程(ファイバー除去工程)では、例えば、図6に示す通り、ファイバー61fとハイドロゲル材料62mとを含む混合物63から、材料の性質に応じた手法により、ファイバー61fを除去してよい。

【0061】
この好適例60aでは、図6に示す通り、混合物調製工程においてメス鋳型100内に調製したファイバー含有ハイドロゲル63fに有機溶媒64を加えて、非水溶性樹脂からなるファイバー61fを溶出する。そして、ファイバー61fの有機溶媒64溶液を取り出す。
ここでは、ハイドロゲルの奥深くにあるファイバー61fを効率的に溶出するため、有機溶媒64を加熱又は超音波照射条件下で加えることが好ましい。

【0062】
有機溶媒64としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロホルム等が挙げられ、溶媒除去の容易さの観点から、テトラヒドロフランも好ましい。

【0063】
第二実施形態の製造方法60の更なる好適例60bでは、中実体61を多孔体61pとする。
図7に、本発明の第二実施形態の更なる好適例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の好適例の概略を示す説明図を示す。

【0064】
そして、第二実施形態の製造方法60の更なる好適例60bでは、前述の混合物調製工程(図5参照)において、キトサンの凍結乾燥物等の水溶性の多孔体61pにハイドロゲル材料62mを、水の非存在下で加えることによって、混合物63としての多孔体含有ヒドロゲル63pを調製し、また、前述の中実体除去工程(多孔体除去工程)(図5参照)において、多孔体含有ヒドロゲル63pに水65を加えて、多孔体61pを溶出する。

【0065】
本発明の実施形態のマイクロニードル1及びマイクロアレイ11の製造方法において用いられる鋳型は、常法により適宜準備することができる。
例えば、鋳型は、樹脂板に切削加工機やドリルを用いて彫刻を施すことによって得ることができる。また、かかる鋳型を用いて得られた別の鋳型も、本発明の実施形態の製造方法において用いてよい。

【0066】
刺入時に被験者が痛みを感じない低侵襲のマイクロニードル及びマイクロアレイは、皮下組織液等の体液の採取(サンプリング)、体液中の成分の濃度の計測による生体情報のセンシング、薬剤の経皮投与等に有用である。
本発明の実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイは、内部に網目状に延びる流路を備えることによって、優れた吸水速度を備えるため、上記用途に特に有用である。更に、本発明の好適な実施形態のマイクロニードル及びマイクロアレイは、それ自体通液性を備えるハイドロゲルを含むことによって、吸水速度を更に高めることができ、マイクロニードル及びマイクロアレイの実用化を加速することが期待される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
A.材料
A-1.市販試薬
・ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PMVE)(MW:~216,000,シグマアルドリッチ)
・ポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10,000,シグマアルドリッチ)
・ポリジメチルシロキサン(PDMS)(SYLPOT184,ダウコーニング・東レ)
・ポリスチレン(PS)(Mw:8,000,シグマアルドリッチ)
・N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Mw:73.09,和光純薬工業)
・2-ブタノール(Mw:74.1,和光純薬工業)
・18%(w/v)アクリルアミド水溶液(Mw:71.08,和光純薬工業)
・過硫酸アンモニウム(APS)(重合開始剤)(Mw:228.20,和光純薬工業)
・N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(重合開始補助剤)(Mw:116.24,和光純薬工業)
・トルエン(Mw:92.14,和光純薬工業)
・トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(Mw:481.55,和光純薬工業)
・水酸化ナトリウム水溶液(2mol/L,Mw:40,和光純薬工業)
・アガロース-I(同仁化学研究所)
・リン酸二水素カリウム(KH2PO4)(Mw:139.09,和光純薬工業)
・発汗チェッカー(ライフケア技研株式会社)(水分に触れると青色や緑色を示す)
・メディカルテープ(防水フィルムロールタイプ,テルガード)
【実施例】
【0069】
A-2.ポリスチレンファイバーの調製(実施例2用)
ナノファイバー紡糸装置(NANON-03,MECC)を、電圧:30kV、流量:0.1mL/時、キャピラリーサイズ:0.92mm ID、1.28mm OD)、時間:40分、の条件で用いて、エレクトロスピニング法により、直径:1μm、長さ:100~300μmのポリスチレンファイバー(PSファイバー)を調製した(図11(a)参照)。
【実施例】
【0070】
B.マイクロチャネル構造を有するハイドロゲルの作製及びその吸水速度評価(予備実験)
初めに、マイクロチャネル構造を有するハイドロゲル製のマイクロニードル及びマイクロアレイの前に、マイクロチャネル構造を有するハイドロゲルシートを作製し、その吸水速度の評価を行った。
【実施例】
【0071】
B-1.鋳型の作製
常法により、縦1cm×横1cm×高さ1cmのサイズを有し、PDMSからなる鋳型を作製した(図示せず)。
【実施例】
【0072】
B-2.ハイドロゲルの作製
PMVEに脱イオン水を加え、その後、混合物を、100℃で加熱し、水溶液の色が白色から透明になるまで撹拌することによって、10重量%PMVE水溶液を調製した。加熱・撹拌を止め、十分に冷やした後に、PMVE:PEG=4:3(質量比)となるように、PEGをPMVE水溶液に加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した。調製したPMVE-PEG水溶液を、B-1.で作製した鋳型に流し込んだ。水溶液が入った鋳型を24時間以上真空脱気した。その後、鋳型を85℃に設定したオーブンに入れて、PMVE-PEGを24時間加熱して、これらを架橋させた。
上記操作により、PMVE-PEG水溶液をゲル状に固化させて、PMVEとPEGとの架橋体からなるハイドロゲル(シート状)を作製した。
【実施例】
【0073】
B-3.ハイドロゲルの吸水速度評価
B-2.で作製したハイドロゲルシートを純水に浸漬し、ここで、シートを10分間隔で水中から取り出して、浸漬前後におけるハイドロゲルシートの重量を計測することによって、ハイドロゲルシートの吸水速度を評価した。コントロールとして用意した、マイクロチャネル構造を有しないハイドロゲルシートについても同様に吸水速度を評価した。
図8に、マイクロチャネル構造を有するハイドロゲルシートの吸水速度評価の結果を表すグラフを示す。図8のグラフ中、横軸に時間(分)を示し、縦軸に膨潤率(重量%)を示す。
図8に示す結果から、マイクロチャンネル構造が存在することによって、ハイドロゲルシートの吸水速度が向上することが示された。
【実施例】
【0074】
C.ハイドロゲルを含むマイクロニードル及びマイクロアレイの作製
C-1.鋳型の作製
図9に、本発明の実施例のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法に用いた鋳型の製造方法の概略を示す。
アクリル板に、切削加工機(PRODIA-M45,モディアシステムズ)及びニードル型のドリルを用いて、マイクロニードル及びマイクロアレイのメス鋳型となる形状を彫った。
鋳型の寸法は下記の通りとした。
・底面の円の直径Rb:300μm
・頂面の円の直径Rt:10μm
・高さH:600μm
・縦方向に11個、横方向に11個
・マイクロニードル相当部分間の距離d:50μm
このメス鋳型であるアクリル板を容器内に置いた(図9(a)参照)。
容器内に、PDMSのプレポリマーを流し込み、PDMS及びメス鋳型が入った容器を1時間真空脱気した。その後、鋳型を70℃で1時間静置した(図9(b)参照)。
PDMS及びメス鋳型を容器から取り出し、メス鋳型を取り外し、PDMSの形状を調整して、PDMSからなるオス鋳型を得た。そして、オス鋳型を容器内に置いた(図9(c)参照)。
得られたオス鋳型の表面に、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シランを用いて、フッ化処理を施した(図9(d)参照)。
容器内に、再びPDMSのプレポリマーを流し込み、PDMSを硬化させた(図9(e)参照)。
PDMS及びフッ化処理されたオス鋳型を容器から取り出し、フッ化処理されたオス鋳型を取り外し、PDMSからなるメス鋳型を得た(図9(f)参照)。
なお、後述の通り、得られたメス鋳型にPMVE-PEG水溶液を流し込み、PMVE-PEGを24時間加熱して、これらを架橋させた(図9(g)参照)。
【実施例】
【0075】
C-2.ハイドロゲルを含むマイクロニードル及びマイクロアレイの作製
本実施例では、本発明の第一実施形態及び第二実施形態の製造方法により、それぞれ実施例1及び実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイを作製した。
【実施例】
【0076】
C-2-1.実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイの作製
18%(w/v)アクリルアミド水溶液3mLと、トルエン3mLと、2-ブタノール1.2mLとを、室温で手で振盪して撹拌することによって、両連続相を形成する中間相を含む三相系溶液を調製した。ここで、上記三相系溶液のうち中間相のみを取り出し、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)20mg、及びテトラメチルエチレンジアミン(重合開始補助剤)15uLを加えた後、PDMSからなるメス鋳型(図9(f)参照)に流し込んだ。そして、鋳型を室温で静置した。
こうして、アクリルアミドからなるマイクロニードル及びマイクロアレイを作製した。
【実施例】
【0077】
図10に、本発明の実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し、(b)に、マイクロアレイを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
【実施例】
【0078】
C-2-2.実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイの作製
図11に、本発明の実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイの製造方法の概略を示す。(a)に、ポリスチレンファイバーを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し、(b)に、鋳型内にポリスチレンファイバーを堆積させたときの様子を電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
A-2.で作製したPSファイバー(図11(a)参照)を、エタノールと水との1:4(体積比)混合溶液に、ファイバーが3.8重量%となるよう加え、600rpmで24時間撹拌することによって、溶液中にPSファイバーを分散させた。
PDMSからなるメス鋳型(図9(f)参照)に、PSファイバーの分散液50μLを滴下し、2時間真空脱気することで、鋳型内にPSファイバーを堆積させた(図11(b)参照)。
ここに、B-2.における方法と同様の方法により、調製したPMVE-PEG(4:3(質量比))水溶液を流し込み、PMVE-PEGを加熱により架橋・固化させて、PSファイバーを含有するPMVE-PEGからなるハイドロゲルを作製した。
得られたファイバー含有ハイドロゲルをトルエンに24時間浸すことによって、PSファイバーを溶出した。
こうして、PMVEとPEGとの架橋体からなるマイクロニードル及びマイクロアレイを作製した。
【実施例】
【0079】
図12に、本発明の実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイを示す。(a)に、マイクロニードルを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示し(左に外観図、右に拡大図を示す)、(b)に、マイクロアレイを電子顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す(全体に頂面図を示し、右下に側面図を示す)。
【実施例】
【0080】
C-3.ハイドロゲルを含むマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度評価
C-2.で作製したマイクロニードルの直径と同じ直径(300μm)の微小孔を空けたPETフィルム(厚さ:200μm)を準備した。
上記PETフィルム、C-2.で作製したマイクロニードル及びマイクロアレイ、発汗チェッカー、及びメディカルテープを、この順に積層させて、本発明の実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度を評価するためのキットを作製した(図13(a)参照)。
図13に、本発明の実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度の評価方法の概略を示す。(a)に、吸水速度を評価するためのキットの分解及び組立の様子を示し、(b)に、(a)に示すキットをアガロースゲルに適用したときの様子を、(a)の線A-Aに沿う面に相当する面による断面図で示す。
【実施例】
【0081】
アガロース-Iと50mMPBS(pH7.0)とから1%(w/v)アガロースゲルを調製し、これを本実験系で生体の皮膚の代わりに用いた。
作製したキットを図12(b)に示すようにアガロースゲルに適用して、マイクロニードルをアガロースゲルに刺入した。
そして、刺入直後、及び刺入後所定時間経過後における発汗チェッカーの様子を目視観察して、マイクロニードルの吸水速度を評価した。
【実施例】
【0082】
C-3-1.実施例1のマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度評価
C-3.に記載の手順に従って、本発明の実施例1のマイクロニードルの吸水速度を評価した。
図14に、本発明の実施例1のマイクロニードルをアガロースゲルに刺入したときの、刺入後0分、10分における発汗チェッカーの様子を撮影したときの写真を示す。
図14に示す結果から、実施例1の場合には10分後の時点でマイクロニードルの吸水が観察された。このことから、マイクロチャンネル構造が存在することによって、ハイドロゲルを含むマイクロニードルの吸水速度が向上することが示された。
【実施例】
【0083】
C-3-2.実施例2のマイクロニードル及びマイクロアレイの吸水速度評価
C-3.に記載の手順に従って、本発明の実施例2のマイクロニードルの吸水速度を評価した。コントロールとして用意した、マイクロチャネル構造を有しないマイクロニードルについても同様に吸水速度を評価した。
図15に、本発明の実施例2のマイクロニードルをアガロースゲルに刺入したときの、刺入後0時間、1.5時間、3時間、12時間における発汗チェッカーの様子を撮影したときの写真を示す(左にコントロールの場合、右に実施例1の場合を示す)。
図15に示す結果から、コントロールの場合には12時間後にならないとマイクロニードルの吸水が観察されないのに対して、実施例2の場合には1.5時間後の時点でマイクロニードルの吸水が観察された。このことから、マイクロチャンネル構造が存在することによって、ハイドロゲルを含むマイクロニードルの吸水速度が向上することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、吸水速度に優れたマイクロニードル及びそれを含むマイクロアレイ並びにそれらの製造方法を提供することができる。
本発明のマイクロニードル及びマイクロアレイは、内部に網目状に延びる流路を備えることによって、優れた吸水速度を備えるため、皮下組織液等の体液の採取(サンプリング)、体液中の成分の濃度の計測による生体情報のセンシング、薬剤の経皮投与等の用途に特に有用である。更に、本発明の好適なマイクロニードル及びマイクロアレイは、それ自体通液性を備えるハイドロゲルを含むことによって、吸水速度を更に高めることができ、マイクロニードル及びマイクロアレイの実用化を加速することが期待される。
【符号の説明】
【0085】
1 マイクロニードル
2 流路
11 マイクロアレイ
12 基材
50 本発明の第一実施形態の製造方法
51 水相
52 油相
53 中間相
54 ハイドロゲル
54m ハイドロゲル材料
55 三相系溶液
60 本発明の第二実施形態の製造方法
60a 本発明の第二実施形態の更なる好適例の製造方法
60b 本発明の第二実施形態の更なる好適例の製造方法
61 中実体
61f ファイバー
61p 多孔体
61h 中実体の跡
62 ハイドロゲル
62m ハイドロゲル材料
63 混合物
63f ファイバー含有ハイドロゲル
63p 多孔体含有ハイドロゲル
64 有機溶媒
65 水
R 流路の径
L 流路の延在長さ
Rb マイクロニードルの底面の円の直径
Rt マイクロニードルの頂面の円の直径
H マイクロニードルの高さ
d マイクロニードル間の距離
図面
【図3】
0
【図8】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14