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明細書 :IL-6産生抑制作用を有する非下痢原性分散接着性大腸菌及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-000126 (P2017-000126A)
公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
発明の名称または考案の名称 IL-6産生抑制作用を有する非下痢原性分散接着性大腸菌及びその利用
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
A61K  35/74        (2015.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A23L  33/10        (2016.01)
FI C12N 1/20 E
A61K 35/74 A
A61P 1/04
A23L 1/30 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-121127 (P2015-121127)
出願日 平成27年6月16日(2015.6.16)
発明者または考案者 【氏名】西川 禎一
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
【識別番号】100174883、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 雅己
審査請求 未請求
テーマコード 4B018
4B065
4C087
Fターム 4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE06
4B018MD85
4B018ME11
4B065AA26X
4B065AC20
4B065BA22
4B065BD39
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC34
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
要約 【課題】腸管の炎症、特に炎症性腸疾患の予防又は治療に有用なプロバイオティクスを提供することを課題とする。
【解決手段】上皮細胞のインターロイキン6産生を抑制する作用を有する、非下痢原性分散接着性大腸菌を見出して、上記の課題を解決する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
上皮細胞のインターロイキン6(IL-6)産生を抑制する作用を有する、非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項2】
上皮細胞のインターロイキン8(IL-8)産生を抑制する作用をさらに有する、請求項1に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項3】
非線毛性接着因子遺伝子を有する、請求項1又は2に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項4】
べん毛を有し、運動性のある、請求項1~3のいずれか1項に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項5】
上皮細胞のIL-6産生が、細菌、菌体成分、炎症性サイトカイン及び起炎性化学物質の少なくとも1種による上皮細胞の刺激によって生じるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項6】
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受領番号NITE AP-02049で受領された大腸菌SK1144である、請求項1~5のいずれか1項に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、上皮細胞のIL-6産生抑制剤。
【請求項8】
上皮細胞が、腸管上皮細胞である、請求項7に記載のIL-6産生抑制剤。
【請求項9】
上皮細胞のIL-8産生を抑制する作用をさらに有する、請求項7又は8に記載のIL-6産生抑制剤。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮細胞のインターロイキン6(IL-6)産生を抑制する作用を有する非下痢原性分散接着性大腸菌に関する。また、本発明は、その大腸菌を有効成分とする上皮細胞のIL-6産生抑制剤及び炎症性腸疾患の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、主に消化管に原因不明の炎症が起こる慢性疾患であるが、近年、IBDの患者数が増加している。IBDはクローン病及び潰瘍性大腸炎の2種に分けられるが、いずれの疾患も活動期において腸管粘膜のIL-6産生が亢進しており、疾患との関連を示唆する報告がなされている。
【0003】
IBDの治療では、ステロイドなどの抗炎症剤、抗生物質、免疫抑制剤などが用いられるが、これらの薬剤では、アレルギーや免疫機能低下などの副作用が懸念される。一方、より自然な作用機構による治療のアプローチとして、プロバイオティクスが注目されている。プロバイオティクスは、腸内フローラのバランスを改善することにより、腸内感染の予防、免疫力の向上など有益な作用をもたらす微生物として定義され、乳酸菌やビフィズス菌が知られている。インビトロの試験では、プロバイオティクスにより、病原性微生物による炎症誘導を抑制できたことが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Fujihara S.ら, Jpn. J. Infect. Dis., vol.62, p.318-323 (2009)
【非特許文献2】Tanimoto Y.ら. Vet. Immunol. Immunopathol., vol.152, p.183-188 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腸管の炎症の治療や予防に有用なプロバイオティクスはいくつか知られているが、まだ少数に過ぎず、より効果の高いプロバイオティクスの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、プロバイオティクスとして大腸菌に着目した。大腸菌は、主に糞便から単離されることなどから心理的抵抗もあり、プロバイオティクスとしては顧みられたことのない菌種である。一方で、大腸菌は腸内細菌の一種であるので、乳酸菌やビフィズス菌に比べて、腸内での定着性がよいことが期待される。本研究では、大腸菌の中でも腸管定着因子の一つと目されている非線毛性接着因子(Afa)を有する菌について検討し、ヒト腸管に定着性が高く、なおかつプロバイオティクスの候補となり得る大腸菌を探索し発見した。本発明者は、これまでに、散発性下痢患者及び健常者の糞便検体から分散接着性大腸菌を単離している。本発明者は、患者由来の大腸菌株のうち、べん毛を有する株が、腸粘膜上皮細胞のインターロイキン8(IL-8)産生を強く誘導する一方で、健常者由来の株が、IL-8産生を抑制することを示唆する知見を得た(非特許文献1及び2参照)。そして、今回、本発明者は、驚くべきことに、この健常者由来の分散接着性大腸菌が、種々の刺激によるヒト上皮細胞のIL-6産生を抑制することを見出して、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、上皮細胞のIL-6産生を抑制する作用を有する、非下痢原性分散接着性大腸菌を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、上皮細胞のIL-6産生抑制剤を提供する。さらに、本発明は、上記の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上皮細胞のIL-6産生を抑制する作用を有する非下痢原性微生物が提供され、腸管の炎症を抑制する効果のあるプロバイオティクスとしての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フラジェリンでの刺激により誘導されたヒト上皮細胞のIL-6産生量をELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【図2】TNF-αでの刺激により誘導されたヒト上皮細胞のIL-6産生量をELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【図3】PMAでの刺激により誘導されたヒト上皮細胞のIL-6産生量をELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【図4】サルモネラでの刺激により誘導されたヒト上皮細胞のIL-6産生量をELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【図5】フラジェリンでの刺激により誘導されたヒト上皮細胞のIL-8産生量をELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る微生物は、上皮細胞のIL-6産生を抑制する作用を有する、非下痢原性分散接着性大腸菌である(以下、単に「大腸菌」ともいう)。

【0012】
本実施形態の大腸菌の種名は、Escherichia coliである。本実施形態の大腸菌は、グラム陰性の桿菌であり、コロニーはクリーム色をしている。また、本実施形態の大腸菌は、非線毛性接着因子(Afa)遺伝子を有する。本実施形態では、大腸菌は、べん毛を有し、運動性のあるものであってもよい。

【0013】
本実施形態の大腸菌は、当該技術において公知の方法により、健常者の糞便から単離できる。例えば、健康な成人の糞便を滅菌水に懸濁し、得られた懸濁液を適切な液体培地(例えば、EC液体培地など)に加えて培養する。そして、得られた菌液を、適切な寒天培地(例えば、デソキシコレート寒天培地など)に塗抹して培養する。培地上のコロニーを複数採取して、LSI培地やLIM培地などを用いる腸内細菌を同定するための試験により、大腸菌を同定して単離することができる。

【0014】
本実施形態の大腸菌は、健常者に由来するので下痢原性はないが、必要に応じて、エンテロトキシンなどの毒素及び/又は該毒素遺伝子の検査を行ってもよい。そのような検査自体は当該技術において公知であり、例えば、毒素遺伝子の検出はPCR法によって行うことができ、毒素の検出は免疫学的検査によって行うことができる。

【0015】
本実施形態の大腸菌の分散接着性は、当該技術において公知の方法により確認することができる。例えば、カバーグラス上に上皮細胞(例えば、ヒト上皮細胞株HEp-2)を培養して、該カバーグラス上に細胞の単層を形成させる。これに、大腸菌の菌液を加えて3時間程インキュベートして、適切な緩衝液(例えば、PBS)で洗浄する。培地を添加して、さらに3時間程インキュベートした後、細胞をアルコールで固定して、ギムザ染色を行う。細胞を顕微鏡で観察し、大腸菌が細胞表面全体に分散して接着していることを確認する。

【0016】
本実施形態において、上皮細胞の種類は特に限定されないが、好ましくは腸管上皮細胞である。また、上皮細胞の由来は特に限定されないが、好ましくはヒトの上皮細胞である。本実施形態では、上皮細胞は、株化細胞(上皮様細胞を含む)であってもよく、例えば、ヒト上皮細胞株HEp-2、ヒト結腸がん由来細胞株Caco-2、ヒト胎児腎由来細胞株HEK293などが挙げられる。

【0017】
本実施形態の大腸菌のIL-6産生の抑制作用は、後述の実施例1に示されるように、当業者に公知の方法によりルーチンで確認することができる。以下に、大腸菌のIL-6産生の抑制作用を確認する方法の例を示すが、本発明はこの例に限定されない。まず、マイクロプレートに上皮細胞(例えばHEp-2)を培養して、これに、大腸菌の菌液を加えて3時間程インキュベートして、上皮細胞と大腸菌とを接触させる。接触時間は特に限定されないが、炎症抑制効果を及ぼすのに時間を要する場合でも、接触時間は3時間未満で十分である。また、対照として、大腸菌と接触させていない上皮細胞(「対照細胞」ともいう)を用意する。大腸菌と接触させた細胞及び対照細胞に、上皮細胞のIL-6産生を誘導する刺激物質を添加して、6~22時間インキュベートする。そして、培養上清を回収して、該上清に含まれるIL-6の濃度又は量を測定する。IL-6の測定法は特に限定されず、ELISA法など公知の方法から適宜選択できる。大腸菌と接触させた細胞の上清のIL-6濃度が、対照細胞の上清のIL-6濃度と比べて、統計学的に有意に低いとき、該大腸菌はIL-6産生の抑制作用を有すると決定してもよい。

【0018】
本実施形態では、上皮細胞のIL-6産生を誘導する刺激物質は特に限定されず、細菌、菌体成分、炎症性サイトカイン及び起炎性化学物質から適宜選択できる。細菌は、腸に炎症を引き起こすことが知られているものであれば特に限定されず、例えば、サルモネラ、カンピロバクターなどが挙げられる。菌体成分は、細菌を構成する成分であればよく、例えば、リポ多糖、べん毛タンパク(フラジェリン)、核酸などが挙げられる。炎症性サイトカインは、公知のものから選択でき、例えば、TNF-α、IL-1などが挙げられる。起炎性化学物質は、細胞に炎症反応を引き起こす公知の化学物質から選択でき、例えば、ホルボールミリステートアセテート(PMA)、デキストラン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。

【0019】
本実施形態の大腸菌は、上記のIL-6産生抑制作用に加えて、上皮細胞のIL-8産生を抑制する作用を有していてもよい。本実施形態の大腸菌のIL-8産生の抑制作用は、後述の参考例に示されるように、当業者に公知の方法によりルーチンで確認することができる。具体的には、上述のIL-6産生の抑制作用を確認する方法の例において、上皮細胞のIL-6産生を誘導する刺激物質に代えて、上皮細胞のIL-8産生を誘導する刺激物質を用いればよい。

【0020】
本実施形態では、上皮細胞のIL-8産生を誘導する刺激物質は特に限定されず、細菌、菌体成分、炎症性サイトカイン及び起炎性化学物質から適宜選択できる。上述のIL-6産生を誘導する刺激物質を、上皮細胞においてIL-8産生を誘導するために用いてもよい。

【0021】
本実施形態の大腸菌としては、2015年5月13日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受領番号NITE AP-02049で受領された大腸菌SK1144が好ましい。このSK1144株は、健常者由来の非下痢原性分散接着性大腸菌であって、上皮細胞のIL-6及びIL-8の産生を抑制する作用を有する。また、SK1144株の特徴として、Afa遺伝子を有すること、及び、べん毛を有し、運動性があることが挙げられる。

【0022】
本実施形態の大腸菌の培養方法は、通常の大腸菌の培養方法と変わるところは特にない。液体培地としては、窒素源及び炭素源を含有する培地であればよく、窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、トリプトン、カゼイン、酵母エキス、アミノ酸などが挙げられ、炭素源としては、例えば、グルコース、キシロース、フルクトース、イノシトール、マルトースなどが挙げられる。また、無機質として、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、鉄、マンガン、モリブデンなどを添加してもよい。さらに、培地にビタミンなどを添加してもよい。好ましい液体培地としては、例えば、LB培地、トリプトソーヤ培地などが挙げられる。培養温度は、室温(約25℃)~40℃、好ましくは35~38℃(特に37℃)である。培養時間は、通常12~30時間、好ましくは18~24時間である。培地のpHは、通常6.5~8.0、好ましくは7~7.5(特に7.2)である。本実施形態の大腸菌は、好気的条件下で、静置培養又は振とう培養するこができる。

【0023】
本実施形態において、大腸菌は、生菌又は死菌のいずれであってもよいが、好ましくは生菌である。大腸菌は、凍結乾燥されていてもよいし、液体培地中に懸濁又は沈殿した状態であってもよい。

【0024】
本実施形態の大腸菌は、医薬品成分、飲食品成分、飲食品添加物、飼料成分、飼料添加物などとして用いてもよい。本実施形態の大腸菌は病原性(下痢原性)がないので、そのまま経口投与してもよいが、必要に応じて当該菌体に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、乳化剤、分散剤、溶剤、安定化剤などを添加して、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤、腸溶剤などの製剤としてもよい。

【0025】
本発明の範囲には、上記の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、上皮細胞のIL-6産生抑制剤(以下、「IL-6産生抑制剤」ともいう)が含まれる。本実施形態では、上皮細胞は特に限定されないが、好ましくは腸管上皮細胞である。また、有効成分である非下痢原性分散接着性大腸菌が上皮細胞のIL-8産生を抑制する作用も有するとき、本実施形態のIL-6産生抑制剤は、上皮細胞のIL-8産生を抑制する作用をさらに有する。

【0026】
本発明の範囲には、上記の非下痢原性分散接着性大腸菌を有効成分とする、炎症性腸疾患の予防又は治療剤(以下、単に「治療剤」ともいう)も含まれる。本実施形態では、炎症性腸疾患は特に限定されず、クローン病及び潰瘍性大腸炎のいずれであってもよい。

【0027】
本実施形態では、IL-6産生抑制剤及び治療剤の投与量及び投与頻度は特に限定されず、対象者の年齢、体重、体調、疾患の状態などに応じて適宜設定できる。例えば、投与量は、有効成分である大腸菌の湿菌体重量で表して、1日当たり10 mg以上500 mg以下、好ましくは50 mg以上200 mg以下、特に好ましくは80 mg以上120 mg以下である。なお、湿菌体重量は、大腸菌の懸濁液を遠心分離した後、上清を除いて得られる菌体の沈殿物の重量である。あるいは、乾燥重量で表して、1日当たり2.5 mg以上125 mg以下、好ましくは12.5 mg以上50 mg以下、特に好ましくは20 mg以上30 mg以下である。

【0028】
本実施形態のIL-6産生抑制剤及び治療剤の利点の一つとして、頻回投与しなくともよいことが挙げられる。これは、本実施形態の大腸菌は、接着因子を有するので、腸管での定着性が高いことが期待されることによる。IL-6産生抑制剤及び治療剤は、例えば、1ヶ月の間に1回以上15回以下の頻度で投与してもよい。

【0029】
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、腸溶剤、凍結乾燥製剤などの固体の製剤であってもよいし、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤であってもよい。これらの製剤は、当該技術において慣用の公知の方法により調製できる。本実施形態において、製剤は、有効成分である上記の大腸菌と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤など)とを含んでなることが好ましい。

【0030】
上記の添加剤としては、次のようなものが挙げられる。例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリンなどが挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween(登録商標)60(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Tween(登録商標)80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Span(登録商標)80(ソルビタンモノオレエート)、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPAなど)、オリーブ油などが挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。懸濁化剤としては、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)80、Span(登録商標)80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。

【0031】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1
実施例1では、上皮細胞において各種の刺激により誘導されるIL-6産生に対する、健常者由来の分散接着性大腸菌(DAEC)株(SK1144)及び散発下痢症患者由来のDAEC株(V64)の効果を検討した。
【実施例】
【0033】
(1)材料
(1-1)供試菌
DAECとして、本発明者により単離された健常者由来株(SK1144:受領番号NITE AP-02049)及び散発下痢症患者由来株(V64)を用いた(Fujihara S.ら, Jpn J. Infect. Dis., vol.62, p.318-323, 2009参照)。実施例1では、これらの株をLB培地にて37℃で16時間培養し、OD600が0.20~0.27(3×108~4×108 CFU/ml相当)となったことを確認した。そして、これらの培養物(1 ml)を、10,000 rpmで5分間遠心して上清を除いた。得られた沈殿物(菌体)を、メチルα-D-マンノピラノシド(MαDM:和光純薬株式会社)を0.5%の濃度で含有するイーグルMEM培地(日水製薬株式会社)(以下、「0.5%MαDM含有EMEM」という)で懸濁して、菌液(約1×109 CFU/ml)を得た。
【実施例】
【0034】
(1-2)上皮細胞
上皮細胞として、ヒト上皮細胞株HEp-2(大日本製薬より入手した)を用いた。実施例1では、HEp-2細胞を、ウシ胎仔血清(FBS:NICHIREI社)を10%含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM:日水製薬株式会社)を用いて、24ウェルプレートにて約70~90%コンフルエントとなるまで37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。
【実施例】
【0035】
(1-3)刺激物質
HEp-2細胞のIL-6産生を誘導するために、刺激物質として、Toll様受容体(TLR)5のリガンドであるフラジェリン、プロテインキナーゼ活性化剤であるPMA、炎症性サイトカインのTNF-α、及び細胞に炎症を引き起こす細菌であるサルモネラを用いた。以下に、各刺激物質を含む試薬の調製について説明する。
【実施例】
【0036】
・フラジェリン溶液
サルモネラの精製べん毛タンパクであるflagellin(Novus Biologicals社)を、0.5% MαDM含有EMEMに溶解して、フラジェリン溶液(2μg/ml)を調製した。
【実施例】
【0037】
・PMA溶液
PMA溶液は、次のようにして調製した。ホルボール12-ミリステート13-アセテート(SIGMA社)をDMSOに10μg/mlとなるように溶解し、得られた溶液を濾過フィルターMillex-LG (0.20 μm)(EMD Millipore社)により滅菌した。滅菌した溶液を0.5%MαDM含有EMEMで100倍に希釈して、PMA溶液(100 ng/ml)を調製した。
【実施例】
【0038】
・TNF-α溶液
TNF-α(SIGMA社)を50%グリセロールに溶解し、得られた溶液を濾過フィルターMinisart(0.45μm)(Sartorius Stedim社)により滅菌して、TNF-α溶液(5μg/ml)を調製した。
【実施例】
【0039】
・サルモネラ菌液
サルモネラ(Salmonella Enteritidis)は、大阪市立環境科学研究所より入手した。サルモネラの菌液は、次のようにして調製した。サルモネラを、LB培地にて37℃で16時間培養した。そして、この培養物(1 ml)を、10,000 rpmで5分間遠心して上清を除き、得られた沈殿物(菌体)を0.5%MαDM含有EMEMに懸濁して、菌液(約1×109 CFU/ml)を得た。
【実施例】
【0040】
(2)IL-6産生量の測定
HEp-2細胞を培養した24ウェルプレートから培地を除き、各ウェルに0.5% MαDM含有EMEMを1 mlずつ添加した。そして、上記のSK1144株又はV64株の菌液を1ウェル当たり5μlずつ添加して、HEp-2細胞とSK1144株又はV64株とを接触させた。菌体数と細胞数との比は約25:1とした。また、対照として、別のウェルに、菌液に代えて0.5%MαDM含有EMEMを5μl添加した。3時間後、IL-6誘導刺激をするウェルにフラジェリン溶液、PMA溶液、TNF-α溶液又はサルモネラ菌液を添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で19時間インキュベートした。各刺激物質の終濃度は、フラジェリンが50 ng/ml、PMAが2.5 ng/ml、TNF-αが100 ng/ml、サルモネラ菌が5×106 CFU/mlであった。IL-6誘導刺激をしないウェルには、各刺激物質に代えて、0.5%MαDM含有EMEMを添加した。インキュベーション後、各ウェルから上清を回収した。回収した上清をサンプルとして、Human Interleukin-6 (Hu IL-6) ELISAキット(Life Technologies社、Cat.No. KHC0061)を用いて、上清中のIL-6濃度を定量した。なお、具体的な操作は、当該キットに添付されたマニュアルに従って行った。
【実施例】
【0041】
(3)結果及び考察
IL-6濃度の定量結果を、図1~4に示す。図中、「+」は、刺激物質を添加したことを示し、「-」は、刺激物質を添加しなかったことを示す。これらの図に示されるように、分散接着性大腸菌と接触させていないHEp-2細胞(対照)は、フラジェリン、PMA、TNF-α及びサルモネラ菌による刺激によりIL-6産生が誘導されていた。また、患者由来のV64株と接触させたHEp-2細胞では、未刺激の場合及びいずれの刺激物質を添加した場合も、IL-6産生が誘導されていた。一方、健常者由来のSK1144株と接触させたHEp-2細胞では、未刺激の場合及びいずれの刺激物質を添加した場合も、IL-6産生が抑制されていた。これらのことから、SK1144株は、上皮細胞の刺激誘導性のIL-6産生を抑制することが示された。本発明者は、今回の実験に先立ち、供試した分散接着性大腸菌が上皮細胞における炎症性サイトカインIL-8濃度の上昇を抑制することを発見し、既に報告している。今回、いずれの刺激物質によるIL-6産生も抑制されたことから、SK1144株は、IL-8のみならず炎症反応を包括的に抑制していることが示唆される。
【実施例】
【0042】
参考例
本参考例では、上皮細胞においてフラジェリン刺激により誘導されるIL-8産生に対する、健常者由来のDAEC株(SK1144)及び散発下痢症患者由来のDAEC株(V64)の効果を示した。
【実施例】
【0043】
(1)材料
(1-1)供試菌
実施例1と同様にして、SK1144株及びV64株のそれぞれの菌液(約1×109 CFU/ml)を調製した。
【実施例】
【0044】
(1-2)上皮細胞
上皮細胞として、TLR5を安定発現するHEK293形質転換体(TLR5, NF-κB/SEAP Stably Transfected HEK293 cell line、IMGENEX社)を用いた。本参考例では、この細胞を、ウシ胎仔血清(FBS:NICHIREI社)を10%含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM:日水製薬株式会社)を用いて、96ウェルプレートにて約70~90%コンフルエントとなるまで37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。
【実施例】
【0045】
(1-3)刺激物質
実施例1と同様にして、flagellin(Novus Biologicals社)を0.5% MαDM含有EMEMに溶解して、フラジェリン溶液(2μg/ml)を調製した。
【実施例】
【0046】
(2)IL-8産生量の測定
HEK293形質転換体を培養した96ウェルプレートから培地を除き、各ウェルに0.5% MαDM含有EMEMを200μlずつ添加した。そして、上記のSK1144株又はV64株の菌液を1ウェル当たり5μlずつ添加して、HEp-2細胞とSK1144株又はV64株とを接触させた。菌体数と細胞数との比は約100:1とした。また、対照として、別のウェルに、菌液に代えて0.5%MαDM含有EMEMを5μl添加した。3時間後、IL-8誘導刺激をするウェルにフラジェリン溶液を添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で19時間インキュベートした。フラジェリンの終濃度は50 ng/mlであった。IL-8誘導刺激をしないウェルには、フラジェリン溶液に代えて、0.5%MαDM含有EMEMを添加した。インキュベーション後、各ウェルから上清を回収した。回収した上清をサンプルとして、Human CXCL8/IL-8 Quantikine ELISAキット(R&D SYSTEMS社、Cat.No. D8000C)を用いて、上清中のIL-8濃度を定量した。なお、具体的な操作は、当該キットに添付されたマニュアルに従って行った。
【実施例】
【0047】
(3)結果及び考察
IL-8濃度の定量結果を、図5に示す。図中、「+」は、刺激物質を添加したことを示し、「-」は、刺激物質を添加しなかったことを示す。図5に示されるように、分散接着性大腸菌と接触させていない細胞(対照)は、フラジェリンによる刺激によりIL-8産生が誘導されていた。また、患者由来のV64株と接触させた細胞では、未刺激の場合及びいずれの刺激物質を添加した場合も、IL-8産生が誘導されていた。一方、健常者由来のSK1144株と接触させた細胞では、未刺激の場合及びいずれの刺激物質を添加した場合も、IL-8産生が抑制されていた。これらのことから、SK1144株は、上皮細胞の刺激誘導性のIL-8産生を抑制することが示された。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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