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明細書 :接着剤及び積層体、並びにこれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6083715号 (P6083715)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
発明の名称または考案の名称 接着剤及び積層体、並びにこれらの製造方法
国際特許分類 C09J 183/06        (2006.01)
C09J 101/10        (2006.01)
C09J  11/04        (2006.01)
C09J 101/08        (2006.01)
B32B  23/14        (2006.01)
B32B  27/00        (2006.01)
FI C09J 183/06
C09J 101/10
C09J 11/04
C09J 101/08
B32B 23/14
B32B 27/00 D
請求項の数または発明の数 14
全頁数 17
出願番号 特願2014-550128 (P2014-550128)
出願日 平成25年11月15日(2013.11.15)
国際出願番号 PCT/JP2013/080938
国際公開番号 WO2014/084069
国際公開日 平成26年6月5日(2014.6.5)
優先権出願番号 2012261602
優先日 平成24年11月29日(2012.11.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年11月19日(2015.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】大石 知司
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】吉田 邦久
参考文献・文献 特開2001-278901(JP,A)
特開平8-283302(JP,A)
特開昭61-078801(JP,A)
特開昭62-033189(JP,A)
特開2012-116895(JP,A)
特開平6-145201(JP,A)
調査した分野 C09J 183/06
B32B 23/14
B32B 27/00
C09J 11/04
C09J 101/08
C09J 101/10
特許請求の範囲 【請求項1】
セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンと、の縮合物を含む接着剤。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の総数の平均値はケイ素原子1個あたり0.5以上である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記セルロース誘導体はアルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するグルコース由来の構造単位を含み、前記置換基の総数の平均値はグルコース由来の構造単位あたり1.0以上である、請求項1又は請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
さらに有機溶剤を含み、前記有機溶剤はエーテル溶剤、ケトン溶剤及びエステル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンと、を含む混合物を加熱して、前記セルロース誘導体と前記ポリシロキサンとの縮合物を得ることを含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の接着剤の製造方法。
【請求項6】
ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するシラン化合物、水及び有機溶剤を含む溶液中で、前記シラン化合物を加水分解及び重縮合させて、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンを得ることをさらに含む、請求項5に記載の接着剤の製造方法。
【請求項7】
前記シラン化合物と前記セルロース誘導体との質量比が1:9~9:1である、請求項6に記載の接着剤の製造方法。
【請求項8】
前記シラン化合物、水及び有機溶剤を含む溶液がさらに酸性触媒を含む、請求項6又は請求項7に記載の接着剤の製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方が無機材料を含有する第1の層と第2の層とが、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の接着剤又は請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の接着剤の製造方法により製造された接着剤を用いて接着された構造を含む、積層体。
【請求項10】
前記第1の層及び第2の層の一方が無機材料を含有し、もう一方が有機材料を含有する、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記無機材料が金属及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9又は請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記有機材料がセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項10又は請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記第1の層と、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の接着剤又は請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の接着剤の製造方法により製造された接着剤を含む接着剤層と、前記第2の層とをこの順に配置して、前記第1の層と前記第2の層とを接着させることを含む、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記接着は熱及び圧力の少なくとも一方を付与して行われる、請求項13に記載の積層体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤及び積層体、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、金属酸化物等の無機材料と樹脂等の有機材料とを接着させるために種々の接着剤が使用されている。しかし、一般に用いられるアクリル系樹脂などの接着剤は分子間力によって無機材料と接着するため充分に強固な接着力は得られない場合がある。従って、無機材料と有機材料とをより強固に接着できる接着剤が求められている。
【0003】
これに関連して、特開2012-116895号公報はセルロース誘導体と、光硬化性媒体と、シランカップリング剤及び界面活性剤を含む光硬化性接着剤を用いて無機材料としてのガラスと有機材料としてのトリアセチルセルロースとを接着させることを開示している。さらに、セルロース誘導体としてはヒドロキシアルキル基を有するセルロース誘導体であることが接着剤の接着性を高める点で好ましい旨、及びシランカップリング剤は接着剤から形成される接着膜と基板との接着性をさらに向上させる観点から用いられる旨が記載されている。
【0004】
特開平6-145201号公報はセルロースとシリコーンの両方の性質を有するシロキサン含有セルロース誘導体及びその製造方法を開示している。前記シロキサン含有セルロース誘導体は接着剤としても有用であると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2012-116895号公報に記載の接着剤ではセルロース誘導体及びシランカップリング剤がそれぞれ単体で含まれており、両者が化学的に結合した構造となっていない。またシランカップリング剤が高分子の状態となっていないため、無機材料に対する接着力には限界があると考えられる。特開平6-145201号公報に記載のシロキサン含有セルロース誘導体のシロキサン部分は無機材料の表面に存在するヒドロキシ基と反応する官能基を有しておらず、無機材料と化学的に結合しないと考えられる。またシロキサン部分が高分子の状態となっていないため、無機材料に対する接着力には限界があると考えられる。本発明は上記事情に鑑み、無機材料と有機材料の双方に対して優れた接着力を示す接着剤、これを用いた積層体、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は上記目的を達成するための手段である。
<1>セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンと、の縮合物を含む接着剤。
【0007】
<2>前記ポリシロキサンが有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の総数の平均値はケイ素原子1個あたり0.5以上である、<1>に記載の接着剤。
【0008】
<3>前記セルロース誘導体はアルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するグルコース由来の構造単位を含み、前記置換基の総数の平均値はグルコース由来の構造単位あたり1.0以上である、<1>又は<2>に記載の接着剤。
【0009】
<4>さらに有機溶剤を含み、前記有機溶剤はエーテル溶剤、ケトン溶剤及びエステル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の接着剤。
【0010】
<5>セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンと、を含む混合物を加熱して、前記セルロース誘導体と前記ポリシロキサンとの縮合物を得ることを含む<1>~<4>のいずれかに記載の接着剤の製造方法。
【0011】
<6>ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するシラン化合物、水及び有機溶剤を含む溶液中で、前記シラン化合物を加水分解及び重縮合させて、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンを得ることをさらに含む、<5>に記載の接着剤の製造方法。
【0012】
<7>前記シラン化合物と前記セルロース誘導体との質量比が1:9~9:1である、<6>に記載の接着剤の製造方法。
【0013】
<8>前記シラン化合物、水及び有機溶剤を含む溶液がさらに酸性触媒を含む、<6>又は<7>に記載の接着剤の製造方法。
【0014】
<9>少なくとも一方が無機材料を含有する第1の層と第2の層とが、<1>~<4>のいずれかに記載の接着剤又は<5>~<8>のいずれかに記載の接着剤の製造方法により製造された接着剤を用いて接着された構造を含む、積層体。
【0015】
<10>前記第1の層及び第2の層の一方が無機材料を含有し、もう一方が有機材料を含有する、<9>に記載の積層体。
【0016】
<11>前記無機材料が金属及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<9>又は<10>に記載の積層体。
【0017】
<12>前記有機材料がセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<10>又は<11>に記載の積層体。
【0018】
<13>前記第1の層と、<1>~<4>のいずれかに記載の接着剤又は<5>~<8>のいずれかに記載の接着剤の製造方法により製造された接着剤を含む接着剤層と、前記第2の層と、をこの順に配置して、前記第1の層と前記第2の層とを接着させることを含む、<9>~<12>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0019】
<14>前記接着は熱及び圧力の少なくとも一方を付与して行われる、<13>に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無機材料と有機材料の双方に対して優れた接着力を示す接着剤、これを用いた積層体、並びにこれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の積層体の断面構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。

【0023】
<接着剤>
本発明の接着剤は、セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサンとセルロース誘導体との縮合物(以下、特定縮合物とも称する)を含む。前記接着剤は、無機材料と有機材料との双方に対して優れた接着力を示し、無機材料と有機材料とを強固に接着することができる。その理由は以下のように考えることができる。

【0024】
特定縮合物のポリシロキサン部分が有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基は、無機材料の表面に存在するヒドロキシ基と反応して化学的に結合する。これにより、分子間力による接着力よりも強固な接着力が得られると考えられる。さらに、シロキサン単位が連続してポリマーの状態となっているため、無機材料の表面に存在するヒドロキシ基との反応点が多く存在し、無機材料との接着力がより強固になると考えられる。さらに、特定縮合物のセルロース誘導体部分は有機材料との親和性が高く、有機材料との強固な接着力が得られると考えられる。

【0025】
無機材料との強固な接着力を得る観点からは、特定縮合物のポリシロキサン部分が有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基はシロキサン単位のケイ素原子に結合していることが好ましく、その数は多いほど好ましい。具体的には、特定縮合物のポリシロキサン部分に含まれるケイ素原子に結合しているヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の総数の平均値はケイ素原子1個あたり0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。

【0026】
前記アルコキシ基としては炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基は置換基を有していてもよい。前記アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブチル基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。特定縮合物のポリシロキサン部分が有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。

【0027】
特定縮合物のポリシロキサン部分の重量平均分子量に特に制限はないが、60~100,000であることが好ましく、100~80,000であることがより好ましく、600~60,000であることがさらに好ましい。

【0028】
特定縮合物のセルロース誘導体部分は、アルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するグルコース由来の構造単位を含むことが好ましい。接着剤に含まれる溶媒への溶解性の観点からは、グルコース由来の構造単位1個あたりのアルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の総数の平均値は1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。

【0029】
前記アルキル基としては炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。前記アルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。前記アシル基としては炭素数1~10のアシル基等が挙げられる。前記アシル基としては炭素数1~4のアシル基が好ましく、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基がより好ましく、アセチル基がさらに好ましい。特定縮合物のセルロース誘導体部分が有するアルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。

【0030】
特定縮合物のセルロース誘導体部分の重量平均分子量に特に制限はないが、1,000~500,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることがさらに好ましい。

【0031】
特定縮合物のセルロース誘導体部分とポリシロキサン部分とが縮合している態様は特に制限されないが、セルロース誘導体部分に含まれるグルコース由来の構造単位がポリシロキサン部分に含まれるケイ素原子と、少なくとも酸素原子を介して結合していることが好ましい。

【0032】
特定縮合物は、下記一般式(1)で示される構造単位を含むことが好ましい。

【0033】
【化1】
JP0006083715B2_000002t.gif

【0034】
式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。複数存在するR、R及びRはそれぞれ同じでも互いに異なってもよい。

【0035】
で表されるアルキル基としては炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。前記アルキル基は置換基を有していてもよい。前記アルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
及びRで表されるアルキル基としては炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。前記アルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
及びRで表されるアシル基としては炭素数1~10のアシル基等が挙げられる。前記アシル基としては炭素数1~4のアシル基が好ましく、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基がより好ましく、アセチル基がさらに好ましい。

【0036】
特定縮合物は、一般式(1)においてRが水素原子又はメチル基であり、R及びRの少なくとも一方がアセチル基である構造を含むことが好ましく、Rが水素原子又はメチル基であり、R及びRがそれぞれアセチル基である構造を含むことがより好ましい。

【0037】
特定縮合物の重量平均分子量に特に制限はないが、2,000~600,000であることが好ましく、3,000~200,000であることがより好ましく、5,000~50,000であることがさらに好ましい。
特定縮合物のポリシロキサン部分とセルロース誘導体部分との質量比(ポリシロキサン部分:セルロース誘導体部分)は特に制限されないが、良好な接着力を得る観点からは1:9~9:1であることが好ましく、2:8~8:2であることがより好ましく、3:7~7:3であることがさらに好ましい。

【0038】
特に、特定縮合物のポリシロキサン部分とセルロース誘導体部分との質量比が3:7~7:3の範囲内であると、良好な接着力が得られると同時に柔軟な構造の縮合物が得られる傾向にある。このような性質は、フレキシブルな性質を有する被着体に接着剤を適用する場合に有益である。

【0039】
本発明の接着剤における特定縮合物の含有率に特に制限はないが、1質量%~90質量%であることが好ましく、1質量%~50質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることがさらに好ましい。

【0040】
本発明の接着剤は、特定縮合物以外の成分をさらに含んでもよい。具体的には有機溶剤、水、特定縮合物を構成していないシラン化合物及びセルロース誘導体等が挙げられる。

【0041】
有機溶剤は特定縮合物を溶解又は分散できるものであれば特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン溶剤、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤などが挙げられる。前記有機溶剤としてはケトン溶剤、エーテル溶剤又はエステル溶剤が好ましい。

【0042】
有機材料との強固な接着力を得る観点からは、接着剤が有機材料と接触した際に有機材料の表面を適度に溶解する性質を有している有機溶剤が好ましい。例えば、有機材料がトリアセチルセルロース等のセルロース誘導体を含む場合は、エーテル溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、ジオキサンを含むことがより好ましい。

【0043】
接着剤の被着体への付与性を向上させる観点から有機溶剤を選択してもよい。例えば、接着剤を被着体の表面に均一に付与する観点からは、ケトン溶剤、エステル溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ケトン溶剤及びエステル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、シクロヘキサノンを含むことがさらに好ましい。

【0044】
有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤は、例えば、特定縮合物の合成に用いる溶媒のみからなっても、その他の溶媒との組み合わせであってもよい。

【0045】
有機溶剤の沸点は特に制限されないが、40℃~250℃であることが好ましく、45℃~200℃であることがより好ましく、50℃~160℃であることがさらに好ましい。

【0046】
有機溶剤の含有率は特に制限されないが、接着剤中に1質量%~99質量%であることが好ましく、50質量%~99質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることがさらに好ましい。

【0047】
<接着剤の製造方法>
本発明の接着剤の製造方法は、セルロース誘導体と、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するポリシロキサン(以下、特定ポリシロキサンとも称する)とを含む混合物を加熱して、特定縮合物を得ることを含む。

【0048】
特定ポリシロキサンが有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の好ましい数、及びアルコキシ基の好ましい種類は、上述した特定縮合物のポリシロキサン部分が有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の総数のケイ素原子1個あたりの平均値、及びアルコキシ基の好ましい種類と同様である。特定ポリシロキサンが有するヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。

【0049】
特定ポリシロキサンの重量平均分子量に特に制限はないが、60~100,000であることが好ましく、100~80,000であることがより好ましく、600~60,000であることがさらに好ましい。

【0050】
特定ポリシロキサンは市販されているものを用いても、後述する方法によって調製してもよい。

【0051】
セルロース誘導体は特に制限されないが、特定ポリシロキサンと反応して特定縮合物を形成する観点からは、セルロース誘導体はヒドロキシ基を有していることが好ましい。溶媒への溶解性の観点からは、セルロース誘導体はヒドロキシ基以外の置換基を有していることが好ましい。従って、セルロース誘導体はヒドロキシ基と、ヒドロキシ基以外の置換基とを有していることが好ましい。セルロース誘導体が有するヒドロキシ基以外の置換基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。

【0052】
セルロース誘導体が有するヒドロキシ基以外の置換基としては、アルキル基、アシル基等が挙げられる。前記アルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記アルキル基としては炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。前記アルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
前記アシル基としては炭素数1~10のアシル基等が挙げられる。前記アシル基としては炭素数1~4のアシル基が好ましく、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基がより好ましく、アセチル基がさらに好ましい。

【0053】
セルロース誘導体が有するヒドロキシ基以外の置換基としては、アルキル基及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アシル基がより好ましく、アセチル基がさらに好ましい。

【0054】
ヒドロキシ基と、ヒドロキシ基以外の置換基とを有するセルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル化合物、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル化合物などが挙げられる。前記セルロース誘導体としてはセルロースエステル化合物が好ましく、ジアセチルセルロースがより好ましい。

【0055】
セルロース誘導体と特定ポリシロキサンとを効率よく反応させる観点からは、セルロース誘導体の有するヒドロキシ基の数は多いほど好ましい。他方、有機溶剤への溶解性の観点からは、セルロース誘導体に含まれるヒドロキシ基以外の置換基の数は多いほど好ましい。以上を考慮すると、セルロース誘導体の置換度(グルコース由来の構造単位中の3個のヒドロキシ基のうち置換している数の平均値)は1.0~2.5であることが好ましく、1.0~2.0であることがより好ましい。

【0056】
セルロース誘導体の重量平均分子量に特に制限はないが、1,000~500,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることがさらに好ましい。

【0057】
特定ポリシロキサンとセルロース誘導体との混合物に含まれる特定ポリシロキサンとセルロース誘導体との質量比(特定ポリシロキサン:セルロース誘導体)は特に制限されないが、良好な接着力を得る観点からは1:9~9:1であることが好ましく、2:8~8:2であることがより好ましく、3:7~7:3であることがさらに好ましい。

【0058】
特に、特定ポリシロキサンとセルロース誘導体との質量比が3:7~7:3の範囲内であると、良好な接着力が得られると同時に柔軟な構造の縮合物が得られる傾向にある。このような性質は、フレキシブルな性質を有する被着体に接着剤を適用する場合に有益である。

【0059】
特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを含む混合物は、さらに有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤は、例えば、上述の接着剤に好適な有機溶剤から選択してもよい。特定ポリシロキサンを調製して使用する場合は、特定ポリシロキサンの調製に好適な有機溶剤から選択してもよい。

【0060】
特定ポリシロキサンとセルロース誘導体との混合物は、縮合を効率よく行う観点から触媒を含むことが好ましい。触媒の種類は特に制限されず、酸性触媒であっても塩基性触媒であってもよい。酸性触媒としては、有機酸及び無機酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸等のハロゲン化水素、硝酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸などが挙げられる。有機酸としては、蟻酸、酢酸等のカルボン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。塩基性触媒としては、アンモニア水等のアンモニア性塩基、エチルアミン、アニリン等の有機アミンなどが挙げられる。前記触媒としては酸性触媒が好ましく、無機酸がより好ましく、塩酸、硝酸又はリン酸がさらに好ましく、塩酸が特に好ましい。触媒の添加量は特に制限されないが、特定ポリシロキサンの質量の0.01%~10.00%であることが好ましく、0.10%~0.50%であることがより好ましい。

【0061】
特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを含む混合物を加熱して特定縮合物を得る条件は特に制限されないが、40℃~60℃で10分~180分撹拌することが好ましく、40℃~60℃で60分~120分撹拌することがより好ましい。特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを含む混合物中の特定ポリシロキサンの含有率は特に制限されないが、例えば混合物中に0.1質量%~30.0質量%であってもよい。特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを含む混合物中のセルロース誘導体の含有率は特に制限されないが、例えば混合物中に2.0質量%~20.0質量%であってもよい。

【0062】
特定縮合物が生成した後の溶液はそのまま接着剤として使用してもよく、濃縮又は希釈して使用してもよい。

【0063】
(特定ポリシロキサンの調製)
特定ポリシロキサンは、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有するシラン化合物(以下、特定シラン化合物とも称する)の加水分解及び重縮合により調製することができる。特定シラン化合物の加水分解及び重縮合により特定ポリシロキサンを調製する方法としては、ゾルゲル法等が挙げられる。具体的には、特定シラン化合物、水及び有機溶剤を含む溶液中で特定アルコキシシランを加水分解及び重縮合させて、特定ポリシロキサンを得ることができる。

【0064】
特定ポリシロキサンを特定シラン化合物の加水分解及び重縮合により調製する場合は、得られた特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを混合して特定縮合物を得てもよい。特定ポリシロキサンとセルロース誘導体とを混合する方法に特に制限はない。例えば、特定ポリシロキサンにセルロース誘導体をそのまま添加しても、セルロース誘導体を溶媒に溶解した溶液と混合してもよい。

【0065】
特定シラン化合物はヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していれば特に制限はないが、接着剤の無機材料に対する接着性の観点からは、特定ポリシロキサンに含まれるヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の数が多いほど好ましい。従って、特定シラン化合物に含まれるヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の数も多いほど好ましい。具体的には、特定シラン化合物に含まれるヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の数の平均値は1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。

【0066】
特定シラン化合物に含まれるヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の種類は特に制限されないが、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基の少なくとも一つがメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。前記アルコキシ基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。特定シラン化合物は、ヒドロキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基以外の置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。前記アルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。

【0067】
特定シラン化合物として具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどを挙げることができる。特定シラン化合物としてはテトラアルコキシシランが好ましく、テトラエトキシシラン又はテトラメトキシシランがより好ましい。

【0068】
特定シラン化合物を溶解させる有機溶剤は特に制限されないが、加水分解反応及び重縮合反応を促進する観点からはアルコール溶剤、エーテル溶剤又はケトン溶剤が好ましく、エーテル溶剤がより好ましく、ジオキサンがさらに好ましい。有機溶剤は、上述の接着剤に好適な有機溶剤から選択してもよい。

【0069】
特定シラン化合物の加水分解及び重縮合を促進する観点からは、触媒を用いることが好ましい。触媒の種類は特に制限されず、酸性触媒であっても塩基性触媒であってもよい。酸性触媒としては、有機酸及び無機酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸等のハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸などが挙げられる。有機酸としては、蟻酸、酢酸等のカルボン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。塩基性触媒としては、アンモニア水等のアンモニア性塩基、エチルアミン、アニリン等の有機アミンなどが挙げられる。触媒の添加量は特に制限されないが、特定ポリシロキサンの質量の0.01%~10.00%であることが好ましい。

【0070】
触媒の種類は特に制限されないが、塩基性触媒は重縮合を塊状に、酸性触媒は線状に進行させる傾向がある。従って、得られた特定ポリシロキサンとセルロース誘導体との縮合の効率を高める観点からは酸性触媒であることが好ましく、無機酸であることがより好ましく、塩酸であることがさらに好ましい。触媒は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒はそのまま特定シラン化合物を含む溶液に添加しても、溶媒に溶解した状態で添加してもよい。

【0071】
特定シラン化合物を加水分解及び重縮合させる条件は特に制限されず、公知の方法から選択してよい。

【0072】
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも一方が無機材料を含有する第1の層と第2の層とが本発明の接着剤を用いて接着された構造を含む。

【0073】
第1の層及び第2の層は、無機材料を含有する層と無機材料を含有する層の組み合わせであっても、無機材料を含有する層と有機材料を含有する層の組み合わせであってもよい。前記積層体は、さらに別の層を含む3層以上の構造を有していてもよい。

【0074】
無機材料と有機材料の双方に対して高い接着力を示す本発明の接着剤の効果は、無機材料を含む層と有機材料を含む層とを接着させる場合に顕著である。特に、接着剤と有機材料を含む層との間に明確な界面が形成されず、接着剤と有機材料とが一体化した状態となっている場合には、より強固な接着力が得られる。

【0075】
図1は本発明の接着剤が有機材料と一体化している状態の一例を示す電子顕微鏡写真である。具体的には、厚さが70μmのガラス板2の両面に本発明の接着剤からなる層を10μm~15μmの厚さに形成し、その上に厚さが40μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム1及び3を配置し、熱圧着して得た積層体の断面が示されている。図1に示すように、接着剤の層を介さずにガラス板2とTACフィルム1及び3とが接しているかのような状態が観察される場合がある。このように接着剤と有機材料とが一体化した状態が得られる理由は明らかではないが、例えばTACフィルムを構成する樹脂分子間に接着剤の分子が入り込んでいるためと推測される。

【0076】
前記無機材料は、特定縮合物のシロキサン部分が有するヒドロキシ基又はアルコキシ基と反応するヒドロキシ基が表面に存在している材料であれば特に制限されない。具体的には金属、金属酸化物等が挙げられる。

【0077】
金属の種類は特に制限されず、鉄、アルミ、銅、ケイ素等の半金属、これらの金属を含む合金などが挙げられる。金属酸化物の種類は特に制限されず、前述の金属の酸化物等が挙げられる。中でも、無機材料は金属酸化物を含むガラスであることが好ましい。ガラスの種類としては、石英、ナトリウムホウケイ酸ガラス、有機無機ハイブリッドガラス及びそれらの強化ガラス等が挙げられる。

【0078】
前記有機材料は、特定縮合物のセルロース誘導体部分との親和性が高く、良好な接着が得られるものであれば特に制限されない。具体的にはトリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。中でも、接着剤との親和性の観点からはセルロース樹脂が好ましく、トリアセチルセルロースがより好ましい。

【0079】
本発明の積層体における第1の層及び第2の層の厚みは特に制限されず、用途に応じて選択することができる。本発明の接着剤は、積層体を構成する層の厚みに関わらず優れた接着強度を発揮することができる。

【0080】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、第1の層と、本発明の接着剤を含む接着剤層と、第2の層とをこの順に配置することを含み、前記第1の層及び第2の層の少なくとも一方が無機材料を含有する。

【0081】
前記積層体は、第1の層及び第2の層のいずれか一方の上に接着剤を付与して接着剤層を形成し、形成された接着剤層の上にもう一方の層を配置して製造しても、第1の層及び第2の層の上にそれぞれ接着剤を付与して接着剤層を形成し、形成された接着剤層同士を貼り合わせて製造してもよい。また、上記の工程を繰り返して3層以上の積層体を製造してもよい。

【0082】
第1の層及び第2の層の少なくとも一方の上に接着剤層を形成する方法は特に制限されない。具体的には、スピン法、刷毛塗り法、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法等が挙げられる。接着剤層は、接着剤を第1の層及び第2の層の少なくとも一方の上に付与した後に、加熱等により接着剤層に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去して形成してもよい。接着剤層の厚さは特に制限されないが、例えば0.01μm~100μmとすることができる。

【0083】
接着剤層の第1の層及び第2の層に対する接着力を高める観点から、第1の層と、接着剤層と、第2の層とをこの順に配置した後、熱又は圧力の少なくとも一方を接着剤層に付与してもよい。付与する熱や圧力は特に制限されず、接着剤、第1の層及び第2の層の材質、厚さ等によって異なる。例えば、厚さが30μm~100μmのガラス板の片面に接着剤層を形成し、その上に厚さが0.1μm~50μmのトリアセチルセルロースフィルムを配置した後に熱及び圧力を付与する場合は、接着剤層の上にトリアセチルセルロースフィルムを配置した後に50℃~150℃、0.01Pa~1MPaで5分~120分の間、加熱及び加圧処理を行ってもよい。

【0084】
第1の層及び第2の層は積層体の製造の前に準備してもよく、積層体の製造の際にこれらの層の材料を用いて形成してもよい。例えば、これらの層の材料を接着剤の付与と同様の方法で仮支持体又は形成された接着剤層の上に付与し、必要に応じて乾燥等を行うことで、これらの層を形成してもよい。

【0085】
<フレキシブル基板>
本発明の接着剤を用いて製造した積層体は、フレキシブルディスプレイ、電子ペーパー、フレキシブル照明、フレキシブル太陽電池等に用いるフレキシブル基板として好適である。

【0086】
例えば、液晶ディスプレイの偏光フィルムとして用いられるトリアセチルセルロースフィルム等の有機フィルムに厚さが30μm~150μm程度の超薄板ガラスを貼り付けてガスバリア性を付与したフレキシブル基板の製造に適用することが考えられる。一般的なフレキシブル基板に必要とされるガス透過率(10-6~10-4g/m/d)を実現するフレキシブル基板を製造するためには、有機フィルム上に真空蒸着やスパッタリングにより無機薄膜を4~6層に積層する必要がある。これに対して本発明によれば、超薄板ガラスに有機フィルムを貼り付けるという簡易な方法で、無機薄膜を積層したフレキシブル基板を越える性能を備えるフレキシブル基板を製造することが可能となる。なお、トリアセチルセルロースフィルムに厚さが30μm~150μm程度の超薄板ガラスを貼り付けた場合のガス透過率はほぼゼロであり、通常のガラス基板を使用したディスプレイと同等のガスバリア性が得られる。

【0087】
一般に、無機材料を含む層の厚みが小さいほどフレキシブル性は高まる傾向にあるが、材料によっては脆くなりフレキシブル性が低下する場合もある。このような材料に有機材料を含む層を接着すると、無機材料を含む層の脆さが改善されてフレキシブル性が向上する場合がある。フレキシブル基板が無機材料を含む層と有機材料を含む層とを含む場合、無機材料を含む層の厚みに特に制限はないが、例えば200μm以下であってよく、10μm~200μmであってよい。有機材料を含む層の厚みに特に制限はないが、例えば250μm以下であってよく、10μm~250μmであってよい。フレキシブル基板の総厚みに特に制限はないが、例えば500μm以下であってよく、20μm~500μmであってよい。

【0088】
フレキシブル基板がディスプレイ等に使用される場合、高い透明性を有している必要がある。本発明の接着剤は透明性が高く、これを用いて製造したフレキシブル材料の透明性にほとんど影響しない。

【0089】
本発明の接着剤は、フレキシブル性に劣る材料のフレキシブル性を向上させる手段としても有効である。従って、例えば、樹脂フィルムを積層してフレキシブル性を高めた超薄板ガラスの製造や、2枚以上の超薄板ガラスを接着すると同時に接着剤自体が樹脂フィルムとして機能することでフレキシブル性を高めた超薄板ガラスの製造にも本発明の接着剤を好適に用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお「%」は質量基準である。
【実施例】
【0091】
<実施例1>
(特定ポリシロキサンの調製)
1.095g(7.19mmol)のテトラメトキシシラン(TMOS、信越化学社製)及び5.000gの1,4-ジオキサン(関東化学社製)を30mlスクリュー管に量り取り、マグネチックスターラで撹拌してテトラメトキシシランを溶解させた。その後、撹拌を継続しながら0.034gの12mol/L塩酸(関東化学社製)を1.500gの1,4-ジオキサンで希釈した溶液をゆっくり添加した。さらに、0.530gの純水を1.840gの1,4-ジオキサンで希釈した溶液をゆっくり添加した。その後、60℃のウォーターバスにて2時間加熱撹拌した。
以上の操作によって特定ポリシロキサン(TMOSゾル)を調製した。
【実施例】
【0092】
(特定縮合体の調製)
3.000gのジアセチルセルロース(DAC、関東化学社製、重合度150)及び15.90gの1,4-ジオキサンを30mlスクリュー管に量り取り、マグネチックスターラで撹拌してジアセチルセルロースを溶解させた。このDAC溶液に、8.100gの先に作製した特定ポリシロキサンのゾル溶液を加え、更に60℃のウォーターバス中にて2時間加熱撹拌した。2時間の撹拌後、3.000gのシクロヘキサノンを反応溶液に加えた。
以上の操作により、特定縮合体の溶液(TMOS-DACsol)を調製した。TMOS溶液とDAC溶液の質量比(TMOS:DAC)は3:7とした。
【実施例】
【0093】
(積層体の作製)
アプリケーター台上に厚さ70μmの超薄板ガラス(50mm×40mm)を配置し、超薄板ガラスの上面に上記の特定縮合体の溶液を少量滴下し、その上に厚さ100μmのTACフィルムを配置した。TACフィルムが動かないようにテープで固定し、アプリケーターをTACフィルムの上から、特定縮合体の溶液を押し出すように超薄板ガラスの一端から他端まで一定速度でゆっくりと動かし、TACフィルムを密着させた。TACフィルムを密着させた超薄板ガラスを裏返し、上記と同様にして厚さ100μmのTACフィルムを超薄板ガラスの他方の面に密着させた。その後、乾燥機中で80℃、10分間プレベイクし、続いて100℃、0.1MPaの条件で30分間の加熱加圧処理を行ってTACフィルムを超薄板ガラスに接着させた。
以上のようにして、超薄板ガラスの両面に厚さ100μmのTACフィルムがそれぞれ接着された積層体を作製した。TACフィルムの厚さを40μm、60μm及び80μmにそれぞれ変更した積層体も同様にして作製した。
【実施例】
【0094】
<実施例2>
DACの量を変更した以外は実施例1と同様にして、DAC濃度が7.5%の特定縮合体の溶液を調製した。得られた特定縮合体の溶液を用いて実施例1と同様にして積層体を作製した。TACフィルムの厚さを40μm、60μm及び80μmにそれぞれ変更した積層体も同様にして作製した。
【実施例】
【0095】
<実施例3>
DACの量を変更した以外は実施例1と同様にして、DAC濃度が5.0%の特定縮合体の溶液を調製した。得られた特定縮合体の溶液を用いて実施例1と同様にして積層体を作製した。TACフィルムの厚さを40μm、60μm及び80μmにそれぞれ変更した積層体も同様にして作製した。
【実施例】
【0096】
<実施例4>
DACの量を変更した以外は実施例1と同様にして、DAC濃度が2.5%の特定縮合体の溶液をそれぞれ調製した。得られた特定縮合体の溶液を用いて実施例1と同様にして積層体を作製した。TACフィルムの厚さを40μm、60μm及び80μmにそれぞれ変更した積層体も同様にして作製した。
【実施例】
【0097】
<実施例5>
DAC及びTMOSの量を変更した以外は実施例1と同様にして、TMOSとDACの混合比(TMOS:DAC)が5:5である特定縮合体の溶液を調製した。DAC濃度は2.5%であった。得られた特定縮合体の溶液を用いて、超薄板ガラスの両面に接着されるTACフィルムの厚さを60μmに変更した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【実施例】
【0098】
<実施例6>
DAC及びTMOSの量を変更した以外は実施例1と同様にして、TMOSとDACの混合比(TMOS:DAC)が7:3である特定縮合体の溶液を調製した。DAC濃度は2.5%であった。得られた特定縮合体の溶液を用いて、超薄板ガラスの両面に接着されるTACフィルムの厚さを60μmに変更した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【実施例】
【0099】
<透明性の評価>
実施例1~6で作製した積層体の可視光領域での光透過率を可視紫外分光光度計により測定した。測定結果は実施例1~6のいずれも波長400nm~800nmの範囲内で90%以上であり、透明性が非常に高いことが確認された。
【実施例】
【0100】
<接着力の評価>
実施例1~6で調製した特定縮合体の溶液のガラス基板及びTACフィルムに対する接着力を、JIS-K5400に規定される碁盤目試験で評価した。具体的には、ガラス基板及びTACフィルムの上に実施例1~6で調製した特定縮合体の溶液をアプリケーターにより塗布し、100℃で30分乾燥して形成した被膜について試験を行った。結果はいずれの場合も25マス中の剥離枚数が0であり、ガラス基板及びTACフィルムに対する接着性が非常に高いことが確認された。比較のため、DAC単体の被膜をガラス基板上に形成して碁盤目試験を行った。結果は25マスすべてが剥離し、ガラス基板に対する接着力に劣ることが確認された。
【実施例】
【0101】
<フレキシブル性の評価>
実施例1~6で作製した積層体について、下記方法によるひねり強度試験を行った。
積層体の長さ50mmである側の端部の両面に両面テープを貼り付け、その上にスライドガラス(厚さ1mm)を接着し、その上に滑り止め用のテープを貼り付けて評価用試料を得た。得られた評価用試料のスライドガラスが接着された両端部を、端部を挟持可能なアーム部を有する2台の器具でそれぞれ挟んで固定した。その後、積層体にひねりが加えられるように一方の器具のアーム部を徐々に回転させ、積層体の超薄板ガラスに亀裂が入ったときの角度を測定し、ひねり角度とした。結果を表1に示す。比較例として、実施例に使用した超薄板ガラス単体(TACフィルムを有しない)のひねり角度を測定した。
【実施例】
【0102】
【表1】
JP0006083715B2_000003t.gif

【実施例】
【0103】
表1の結果に示されるように、TACフィルムを超薄板ガラスに接着した実施例1~6の積層体はひねり角度が約40°以上になるまで亀裂が発生しなかった。これに対して比較例の超薄板ガラス単体はひねり角度17.2°で亀裂が発生した。以上の結果より、TACフィルムを接着することにより超薄板ガラスのフレキシブル性が大幅に向上することがわかった。
【実施例】
【0104】
日本国特許出願2012-261602号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
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