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明細書 :信号検出装置および信号検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年8月25日(2016.8.25)
発明の名称または考案の名称 信号検出装置および信号検出方法
国際特許分類 A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0428      (2006.01)
FI A61B 5/04 300Q
A61B 5/04 300J
A61B 5/04 300V
A61B 5/04 310B
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2014-539731 (P2014-539731)
国際出願番号 PCT/JP2013/076568
国際公開番号 WO2014/054586
国際出願日 平成25年9月30日(2013.9.30)
国際公開日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権出願番号 2012220427
優先日 平成24年10月2日(2012.10.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ
発明者または考案者 【氏名】関谷 毅
【氏名】染谷 隆夫
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4C027
4C127
Fターム 4C027AA02
4C027EE03
4C027EE05
4C027KK03
4C127AA02
4C127EE03
4C127EE05
4C127KK03
4C127LL08
4C127LL18
4C127LL21
要約 本発明の一態様による信号検出装置は、被検体と接する複数の電極が形成された第1回路層(201)と、前記複数の電極のそれぞれと容量結合された入力部を有する複数の増幅器が形成された第2回路層(202)と、前記複数の増幅器の出力を読み出すための複数のトランジスタが形成された第3回路層(203)と、を積層して備え、前記第1回路層に形成された前記複数の電極と前記第2回路層との間に、前記第2回路層を封止する絶縁層が形成され、その絶縁層を介して前記複数の電極と前記複数の増幅器の入力部とが容量結合されている。
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体から発生される信号を検出する信号検出装置であって、
前記被検体と接する複数の電極が形成された第1回路層と、
前記複数の電極のそれぞれと容量結合された入力部を有する複数の増幅器が形成された第2回路層と、
前記複数の増幅器の出力を読み出すための複数のトランジスタが形成された第3回路層と、
を積層して備え、
前記第1回路層に形成された前記複数の電極と前記第2回路層との間に、前記第2回路層を封止する絶縁層が形成され、その絶縁層を介して前記複数の電極と前記複数の増幅器の入力部とが容量結合された、信号検出装置。
【請求項2】
前記電極は、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、その水溶性高分子が架橋されてなる導電性材料から構成されたことを特徴とする請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項3】
前記第2回路層に形成された複数の増幅器の出力信号を前記第3回路層に形成された複数のトランジスタを介して読み出すための配線が、前記第2回路層が位置する一面側とは反対側の前記第3回路層の他面側に引き出された、請求項1または2に記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記配線が、前記第3回路層の外周領域において前記第3回路層の他面側に引き出された、請求項3に記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記第1回路層には、その第1回路層に形成された前記複数の電極と前記第2回路層に形成された前記複数の増幅器の出力部とを容量結合する複数のコンデンサが形成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の信号検出装置。
【請求項6】
前記第1回路層と前記第2回路層との間、および、前記第2回路層と前記第3回路層との間は、それぞれ、異方性導電性シートを介して電気的に接続された、請求項1から5のいずれか一項に記載の信号検出装置。
【請求項7】
前記第1回路層を構成する部材は、前記第2回路層を封止する封止層を形成する、請求項1から6の何れか1項に記載の信号検出装置。
【請求項8】
前記第2回路層が前記第1回路層と前記第3回路層とにより挟まれて前記第1回路層と前記第2回路層と前記第3回路層とが積層され、
前記第1回路層と前記第3回路層は、相互に同等の曲げ剛性を有する、請求項1から7の何れか1項に記載の信号検出装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載された信号検出装置を用いて前記被検体から信号を検出する信号検出方法であって、
前記第3回路層に形成された複数のトランジスタを介して、前記第2回路層に形成された複数の増幅器の何れかの出力信号を選択的に読み出す段階を含む、信号検出方法。
【請求項10】
前記第2回路層に形成された複数の増幅器の何れかの出力信号を選択的に読み出す段階は、
前記複数のトランジスタを介して前記複数の増幅器の出力信号を走査して順次的に読み出す第1段階と、
前記第1段階で読み出された前記複数の増幅器の出力信号の強度分布を生成する第2段階と、
前記強度分布の分析結果に基づいて特定された前記複数の増幅器の1または2以上の出力信号を同時に読み出す第3段階と、
を含む請求項9に記載の信号検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を検出するための信号検出装置および信号検出方法に関する。
本願は、2012年10月2日に、日本に出願された特願2012-220427号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば生体信号を検出するための装置として、例えば心電計や脳波計などの信号検出装置が知られている(特許文献1)。通常、この種の信号検出装置では、被検体の生体に装着した一対の電極の信号の差分を差動増幅器で増幅する。信号の差をとることにより、それぞれの信号に含まれる同相のノイズ成分をキャンセルし、SN比の高い検出信号を得ている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平6-197877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術によれば、電極と差動増幅器とが配線ケーブルを介して接続されているため、配線ケーブル上でノイズが混入する可能性があり、検出信号のSN比の改善に限界がある。また、電極と差動増幅器とを一体化したとしても、これら一体化された電極と差動増幅器を長期間にわたって被検体である生体内に埋め込んでおくと、生体内の環境が増幅器等の電子回路の故障または誤動作を引き起こすおそれがある。更に、電極材料として可撓性に乏しい金属等が用いられているため、例えば、鼓動を繰り返す心臓等の生体の表面組織に電極を装着することは困難である。仮に装着することができたとしても、可撓性に乏しい電極等が心臓の動きを阻害し得るため、心臓が発生させる生体信号を精度よく検出することは困難である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検出信号のSN比を改善することができ、また、被検体の動きを阻害することなく、被検体が発生させる信号を安定的に検出することができる信号検出装置および信号検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、被検体から発生される信号を検出する信号検出装置であって、前記被検体と接する複数の電極が形成された第1回路層と、前記複数の電極のそれぞれと容量結合された入力部を有する複数の増幅器が形成された第2回路層と、前記複数の増幅器の出力を読み出すための複数のトランジスタが形成された第3回路層と、を積層して備え、前記第1回路層に形成された前記複数の電極と前記第2回路層との間に、前記第2回路層を封止する絶縁層が形成され、その絶縁層を介して前記複数の電極と前記複数の増幅器の入力部とが容量結合された、信号検出装置の構成を有する。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記電極は、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、その水溶性高分子が架橋されてなる導電性材料から構成されている。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記第2回路層に形成された複数の増幅器の出力信号を前記第3回路層に形成された複数のトランジスタを介して読み出すための配線が、前記第2回路層が位置する一面側とは反対側の前記第3回路層の他面側に引き出されている。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記配線が、前記第3回路層の外周領域において前記第3回路層の他面側に引き出されている。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記第1回路層には、その第1回路層に形成された前記複数の電極と前記第2回路層に形成された前記複数の増幅器の入力部とを容量結合する複数のコンデンサが形成されている。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記第1回路層と前記第2回路層との間、および、前記第2回路層と前記第3回路層との間は、それぞれ、異方性導電性シートを介して電気的に接続されている。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記第1回路層を構成する部材は、前記第2回路層を封止する封止層を形成する。
上記信号検出装置の構成において、例えば、前記第2回路層が前記第1回路層と前記第3回路層とにより挟まれて前記第1回路層と前記第2回路層と前記第3回路層とが積層され、前記第1回路層と前記第3回路層は、相互に同等の曲げ剛性を有する。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記信号検出装置を用いて前記被検体から信号を検出する信号検出方法であって、前記第3回路層に形成された複数のトランジスタを介して、前記第2回路層に形成された複数の増幅器の何れかの出力信号を選択的に読み出す段階を含む、信号検出方法の構成を有する。
上記信号検出方法の構成において、例えば、前記第2回路層に形成された複数の増幅器の何れかの出力信号を選択的に読み出す段階は、前記複数のトランジスタを介して前記複数の増幅器の出力信号を走査して順次的に読み出す第1段階と、前記第1段階で読み出された前記複数の増幅器の出力信号の強度分布を生成する第2段階と、前記強度分布の分析結果に基づいて特定された前記複数の増幅器の1または2以上の出力信号を同時に読み出す第3段階と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、電極と増幅器が一体的に構成されるので、検出信号のSN比を改善することができる。また、本発明の一態様によれば、電極と増幅器の入力部とを容量結合したので、電極から見て増幅器を封止することができ、電極が置かれた環境が増幅器の動作に与える影響を抑制することができる。更に、本発明の一態様によれば、可撓性に優れた電極を有する信号検出装置を実現することができるので、被検体の動きを阻害することなく、被検体から信号を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による信号検出装置の回路構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による信号検出装置が備える信号検出器の回路構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による信号検出装置が備える信号検出器の静的特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による信号検出装置のデバイス構造(積層構造)を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施形態による信号検出装置のデバイス構造(断面構造)を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態による信号検出装置が備える信号検出器の動作を説明するための波形図である。
【図7】本発明の実施形態による信号検出装置の動作を説明するための図である。
【図8】本発明の組成物又は導電性材料を示すものであって、(a)はDEMEBF4を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサンに分散されてなる組成物を示す写真であり、(b)は(a)で示した組成物を光架橋して得られたシートの写真であり、(c)は図8(a)で示した組成物を光架橋すると共に、約50μm程度の線幅の微細構造をパターニングしたものの光学顕微鏡写真である。
【図9】高分解断面透過電子顕微鏡像(TEM像)であり、(a)は本発明で用いることができるカーボンナノチューブのTEM像であり、(b)はイオン液体なしで、カーボンナノチューブとポリロタキサンとを水中で混合し、ジェットミルで細分化を行いながら撹拌して得られたポリロタキサンで覆われたカーボンナノチューブのTEM像であり、(c)は図8(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られたカーボンナノ材料あるいは組成物のTEM像である。
【図10】本発明の組成物(又は導電性材料)の面抵抗とそのカーボンナノチューブ含有量依存性を示すグラフである。
【図11】本発明の(又は導電性材料)の電気容量とその周波数依存性を示すグラフである。
【図12】本発明の導電性材料の製造方法を説明するためのフロー図である。
【図13】本発明の導電性材料の製造方法の応用例を示すフロー図である。
【図14】カーボンナノチューブの分散性を調べた結果を示す写真であり、(A)はカーボンナノチューブを脱イオン水に入れ、1週間撹拌した後の状態を示す写真であり、(B)は、カーボンナノチューブとDEMEBF4とを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌した後の状態を示す写真であり、(C)はカーボンナノチューブを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真であり、(D)はカーボンナノチューブとDEMEBF460mgとを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真であり、(E)はカーボンナノチューブとDEMEBF4とミクロフィブリル化セルロースとを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌して得られたペーストを、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[構成の説明]
図1は、本発明の実施形態による信号検出装置100の回路構成の一例を示す図である。信号検出装置100は、被検体から発生される信号を検出する信号検出装置であって、8行8列の行列状に配列された複数(64個)の信号検出器F11~F88と、信号転送用の複数のトランジスタT11~T88と、複数のビット線BL1~BL8と、複数のワード線WL1~WL8とを備える。なお、本実施形態では、被検体として生体を想定するが、本実施形態による信号検出装置100は、生体に限らず、任意の対象物を被検体として信号を検出することができる。例えば、信号検出装置100は、生体信号に限らず、電子部品を実装した回路基板等の工業製品の複雑な表面の信号分布等を検出することもできる。従って、本発明による信号検出装置100の被検体となる対象物は任意である。

【0010】
ここで、行列状に配列された信号検出器F11~F88のうち、第1列に属する信号検出器F11~F81の各出力部は、信号転送用のトランジスタT11~T81を介してビット線BL1に接続され、第2列に属する信号検出器F12~F82の各出力部は、信号転送用のトランジスタT12~T82を介してビット線BL2に接続されている。以下同様にして、第8列に属する信号検出器F18~F88の各出力部は、信号転送用のトランジスタT18~T88を介してビット線BL8に接続されている。

【0011】
また、行列状に配列された信号検出器F11~F88のうち、第1行に属する信号検出器F11~F18に設けられた信号転送用のトランジスタT11~T18の各ゲートはワード線WL1に接続され、第2行に属する信号検出器F21~F28に設けられた信号転送用のトランジスタT21~T28の各ゲートはワード線WL2に接続されている。以下同様にして、第8行に属する信号検出器F81~F88に設けられた信号転送用のトランジスタT81~T88の各ゲートはワード線WL8に接続されている。

【0012】
このように、本実施形態では、64個の信号検出器F11~F88を行列状に配列し、ワード線WL1~WL8とビット線BL1~BL8とにより信号転送用のトランジスタT11~T88を選択することにより、信号検出器F11~F88のそれぞれから信号を選択的に読み出すことが可能になっている。なお、図1の例では、8行8列の計64個の信号検出器F11~F88を備えるが、この例に限定されず、信号検出器の個数は任意である。また、この信号検出器の個数に合わせて、信号転送用のトランジスタ、ワード線、ビット線の個数も任意である。

【0013】
図2は、図1に示す信号検出器F11~F88の回路構成の一例を示す図であり、信号検出器F11~F88の全てが同一の構成を有する。図2に示すように、信号検出器F11~F88のそれぞれは、電極101、コンデンサ102、増幅器103を備える。電極101には被検体(図示なし)が接し、この被検体から電極101に生体信号(電気信号)が印加される。本実施形態では、電極101は、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、その水溶性高分子が架橋されてなるゲル状の導電性材料(導電ゲル)から構成されてもよい。その場合電極101は優れた可撓性および柔軟性を有する。その詳細については後述する。

【0014】
コンデンサ102は、被検体からの生体信号に含まれる直流成分をカットするためのものであり、電極101と増幅器103の入力部との間に接続される。即ち、増幅器103の入力部はコンデンサ102を介して電極101と容量結合されている。コンデンサ102は、例えば約670nFの容量値を有し、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer; SAM)とアルミニウム酸化物(AlOx)とからなるSAM/AlOx構造を有していてもよい。後述するように、コンデンサ102は、薄膜を用いて形成され、可撓性を有している。

【0015】
増幅器103は、トランジスタ1031~1034と抵抗素子1035とから構成されている。本実施形態では、トランジスタ1031~1034は、可撓性を有するp型の有機トランジスタである。増幅器103を構成する有機トランジスタのゲート幅は、例えば600μmであり、ゲート長は20μmである。この例では、約-100μAのドレイン電流が確認された。ただし、この例に限定されず、p型の有機トランジスタに代えてn型の有機トランジスタを用いてもよい。動作の安定性とキャリアの移動度の違いを考慮すれば、p型の有機トランジスタの方が、n型の有機トランジスタよりも大きなドレイン電流を安定的に得ることができる点で、n型の有機トランジスタに比較して有利である。なお、増幅器103は、有機トランジスタに限らず、用途に応じて任意の増幅素子を用いて構成することが可能である。

【0016】
増幅器103を構成するトランジスタ1031のドレインは、電源ノードVDD(高電位ノード)に接続され、トランジスタ1031のゲートは、増幅器103の入力部に接続されている。また、トランジスタ1032のドレインはトランジスタ1031のソースに接続され、トランジスタ1032のソースはグランドノードGNDに接続されている。また、トランジスタ1033のドレインは電源ノードVDDに接続され、トランジスタ1033のゲートは増幅器103の入力部に接続されている。

【0017】
また、トランジスタ1034のドレインおよびゲートは、トランジスタ1032のゲートと共にトランジスタ1033のソースに接続され、トランジスタ1034のソースは低電位ノードVSSに接続されている。また、増幅器103の入力部と出力部との間には抵抗素子1035が接続されている。抵抗素子1035は、増幅器103の出力信号を入力部に帰還させるためのものである。抵抗素子1035は、例えば約20MΩの抵抗値を有し、例えば可撓性および導電性を有するカーボンペーストから構成される。ただし、この例に限定されることなく、抵抗素子1035は、任意の材料を用いて形成することが可能である。また、抵抗素子1035は、増幅器103と一体的に形成する必要はなく、外付け抵抗として備えられてもよい。

【0018】
図3は、増幅器103の静的特性を模式的に示す図である。同図(a)は、増幅器103の入出力特性の一例を示し、同図(b)は、増幅器103のゲインと入力電圧との関係の一例を示す。ここで、同図(b)に示す増幅器103のゲインは、同図(a)に示す入出力特性における入力電圧の変化分に対する出力電圧の変化分を表し、各入力電圧における入出力特性の接線の傾きから得られる。図3の例では、低電位ノードVSSの電位は-1Vに設定されている。

【0019】
図3(a)において、特性C1~C4は、それぞれ、電源ノードVDDの電圧を2V、1.5V、1V、0.5Vとしたときの増幅器103の入出力特性である。これらの特性C1~C4に示すように、増幅器103は、電源ノードVDDの電圧に応じて、入力電圧の微小な変化に対し出力電圧が大きく変化する遷移領域を有している。このような遷移領域における入力電圧に対しては、同図(b)に示すように、大きなゲインが得られる。増幅器103の動作点は、このような遷移領域内に設定されている。

【0020】
図3(b)において、特性G1~G4は、それぞれ、電源ノードVDDの電圧を2V、1.5V、1V、0.5Vとしたときの増幅器103のゲイン特性である。同図に示す例では、電源ノードVDDの電圧が0.5Vのときでさえ、400以上のゲインが得られている。本発明者らによれば、1.2mVの入力電圧が220mVに増幅されることが確認され、増幅器103のゲインとして、183が得られている。このような動作領域で増幅器103を動作させることにより微弱な生体信号(入力電圧)を効果的に増幅することができる。本実施形態では、上述の動作領域で増幅器103を動作させるため、低電位ノードVSSの電位を選択することにより増幅器103の動作点を調整することが可能になっている。

【0021】
なお、本発明者らは、ウサギの心臓に取り付ける前と後で増幅器103の静的特性を比較し、増幅器103の静的特性が殆ど変わらないことを確認している。即ち、増幅器103の入出力特性は被検体の生体の環境の影響を殆ど受けないことが確認されている。従って、被検体の生体信号を安定的に増幅することが可能になる。

【0022】
次に、信号検出装置100のデバイス構造を説明する。図4は、信号検出装置100のデバイス構造を模式的に示す図である。同図に示すように、信号検出装置100は、概略的に、電極回路層(第1回路層)201、増幅回路層(第2回路層)202、転送回路層(第3回路層)203、異方性導電性シートからなる導電層204,205から構成され、後述する図5に示すように、電極回路層201と増幅回路層202と転送回路層203が導電層204,205を介して概略シート状に一体的に積層された積層構造を有している。本実施形態では、導電層204,205をなす各異方性導電性シートの膜厚は、例えば約10μmである。本実施形態では、異方性導電性シートは、例えば、絶縁性の高い接着剤中に導電粒子を均一に分散させた材料からなり、液晶ディスプレイ等の電子部品において電極間を電気的に接続するために使用されているものを流用することができる。

【0023】
ここで、電極回路層201は、図2に示す電極101とコンデンサ102が、図1に示す信号検出器F11~F88に対応して行列状に配列されて形成された回路層である。また、増幅回路層202は、図2に示す増幅器103が行列状に配列されて形成された回路層である。転送回路層203は、図1に示す信号転送用のトランジスタT11~T88が行列状に配列されて形成された回路層である。本実施形態では、ワード線WL1~WL8とビット線BL1~BL8は転送回路層203に形成されている。ただし、この例に限定されず、ワード線WL1~WL8とビット線BL1~BL8は何れの回路層に形成されてもよい。

【0024】
図5は、積層構造を有する信号検出装置100の断面構造の一例を示す図である。同図に示すように、電極回路層201、増幅回路層202、転送回路層203は、異方性導電性シートからなる導電層204および導電層205を介して積層されている。各回路層について具体的に説明すると、電極回路層201は、図2の電極101とコンデンサ102が形成された回路層であって、可撓性を有する基体であるポリイミド層2011(例えば膜厚1.2μm)、図2に示すコンデンサ102の一方の電極となる金属層2012(例えば膜厚30nmのAl)、コンデンサ102の絶縁層となるAlOx/SAM層2013(例えば膜厚4nmのAlOx+膜厚2nmのSAM)、コンデンサ102の他方の電極となる金属層2014(例えば膜厚50nmのAu)、図2に示す電極101となる導電ゲル層2015、上記の金属層2012に接続された金属層2016(Au)から構成される。導電ゲル層2015の膜厚は、例えば約0.1mm~1mmである。金属層2016は、電極回路層201の下面に露出している。本実施形態では、コンデンサ102の絶縁層を形成するAlOx/SAM層2013は、導電ゲル層2015から見て下層側の増幅回路層202を封止するように形成されている。即ち、本実施形態では、電極回路層201を構成する部材は、増幅回路層202を封止する封止層を形成する。

【0025】
増幅回路層202は、図2の電極101と容量結合された入力部を有する増幅器103が形成された回路層であって、可撓性を有する基体であるポリイミド層2021(例えば膜厚1.2μm)、配線となる金属層2022(例えば膜厚30nmのAl)、有機トランジスタのゲート絶縁膜となるAlOx/SAM層2023(例えば膜厚4nmのALOx+膜厚2nmのSAM)、有機トランジスタのゲート電極となるアルミニウム層2024(例えば膜厚30nm)、有機トランジスタのチャネル形成層となる有機半導体層2025(例えば膜厚30nm)、有機トランジスタのソース・ドレイン電極となる金属層2026(Au)、パリレン(parylen)層2027(例えば膜厚2μm)、配線に接続された金属層2028,2029(Au)から構成される。金属層2028および金属層2029は、それぞれ、増幅回路層202の下面および上面に露出している。

【0026】
転送回路層203は、図2の増幅器103の出力信号を読み出すための図1の信号転送用のトランジスタT11~T88が形成された回路層であって、可撓性を有する基体であるポリイミド層2031(例えば膜厚1.2μm)、有機トランジスタのゲート電極となるアルミニウム層2032(例えば膜厚30nm)、有機トランジスタのゲート絶縁膜となるAlOx/SAM層2033(例えば膜厚4nmのAlOx+膜厚2nmのSAM)、有機トランジスタのチャネル形成層となる有機半導体層2034(例えば膜厚30nm)、有機トランジスタのソース・ドレイン電極となる金属層2035(Au)、パリレン(parylen)層2036(例えば膜厚2μm)、有機トランジスタのソース・ドレイン電極に接続された金属層2037(Au)から構成される。金属層2037は、転送回路層203の上面に露出している。

【0027】
転送回路層203と増幅回路層202は導電層205を介して積層され、これにより、転送回路層203の上面に形成された金属層2037と増幅回路層202の下面に形成された金属層2028とが電気的に接続される。本実施形態では、導電層204を介して金属層2037と金属層2028とが電気的に接続されることにより、例えば、図1に示す信号検出器F11~F88の出力部と信号転送用のトランジスタT11~T88の入力部(ソース・ドレイン)とが電気的に接続される。

【0028】
増幅回路層202と電極回路層201は導電層204を介して積層され、これにより、増幅回路層202の上面に形成された金属層2029と電極回路層201の下面に形成された金属層2016とが電気的に接続される。本実施形態では、導電層204を介して金属層2029と金属層2016とが電気的に接続されることにより、例えば、図2に示す信号検出器を構成する増幅器103の入力部とコンデンサ102の一方の電極とが電気的に接続される。

【0029】
また、図5に示す信号検出装置100のデバイス構造では、電極回路層201に形成された導電ゲル層2015(電極101)と増幅回路層202との間に、増幅回路層202を封止する絶縁層としてAlOx/SAM層2013が形成され、この絶縁層を介して電極101と増幅器103の入力部とが容量結合されている。具体的には、導電ゲル層2015(電極101)と増幅回路層202との間に、金属層2012、AlOx/SAM層2013、金属層2014から構成される図2のコンデンサ102が形成され、導電ゲル層2015と増幅回路層202はコンデンサ102により容量結合されていると共に、金属層2014とAlOx/SAM層2013と金属層2012の積層構造により、導電ゲル層2015に対して増幅回路層202が封止されている。これにより、増幅回路層202に形成された増幅器103の入力部は、電極回路層201に形成された図2の電極101と電気的(交流的)に接続され、且つ、増幅回路層202および転送回路層203は、電極回路層201に形成された耐湿性に優れるAlOx/SAM層2013により導電ゲル層2015から隔離される。このため、導電ゲル層2015(電極101)を被検体に接触させても、被検体から増幅回路層202または転送回路層203への水分等の侵入を抑えつつ、生体信号を検出することができる。従って、増幅回路層202に形成された図1に示す信号検出器F11~F88の各増幅器103(図2)と、転送回路層203に形成された図1に示す信号転送用のトランジスタT11~T88とから構成される電子回路の故障や誤動作を抑制し、安定的に生体信号を検出することができる。

【0030】
また、図5に示す信号検出装置100のデバイス構造では、増幅回路層202に形成された図2の増幅器103の出力信号Soutを、転送回路層203に形成された信号転送用のトランジスタT11~T88を介して読み出すための配線(図示なし)が、増幅回路層202が位置する転送回路層203の上面側(転送回路層203の一面側)とは反対側の転送回路層203の下面側(他面側)に引き出されていてもよい。本実施形態では、上記の配線は、転送回路層203の外周領域においてその転送回路層203の下面側(他面側)に引き出されていてもよい。また、本実施形態では、全ての配線が転送回路層203の下面側に引き出されていてもよい。これにより、信号検出装置100から外部に引き出される配線と被検体との接触を防止することができる。

【0031】
ここで、電極回路層201の膜厚は、導電ゲル層2015を除けば、約2μmである。
また、増幅回路層202、転送回路層203の各膜厚は、パリレン層を含めて約4μmである。また、前述のように、導電層204,205の各膜厚は約10μmである。従って、導電ゲル層2015の膜厚を0.1mmとすれば、電極回路層201から転送回路層203までの膜厚の合計値は、約130μmにとどまる。よって、上述したデバイス構造を有する信号検出装置100は、全体として極めて薄い膜厚のシート状に形成され、高い可撓性を有している。また、電極回路層201に形成されたコンデンサや、増幅回路層202および転送回路層203にそれぞれ形成されたトランジスタ等の個々の回路素子も可撓性を有している。また、各回路層に形成された金属層は、例えばCVD法を用いて形成された薄膜であり、高い可撓性を有している。また、導電ゲル層2015(電極101)を構成する後述の導電ゲルはきわめて優れた生体適合性と可撓性を有している。更に、被検体に接する導電ゲル層2015から増幅回路層202を隔離するAlOx/SAM層2013は耐湿性に優れている。従って、上述の電極回路層201、増幅回路層202、転送回路層203、導電層204,205を積層して備えた信号検出装置100は、高い可撓性と耐湿性を有しており、生体環境における信号検出に適した特性を備えている。本発明者らによれば、信号検出装置100の可撓性に関する評価値として1kPa弱のヤング率が確認された。従って、本実施形態による信号検出装置100は、食品のプリンに匹敵する1kPa~10kPaのヤング率を有すると言われている脳よりも柔らかい。よって、例えば、信号検出装置100を脳溝内に密着させることができ、脳が発生させる信号の多くを占める脳溝内の活動信号を有効に検出することも可能になる。

【0032】
このように、本実施形態では、増幅回路層202が電極回路層201と転送回路層203とにより挟まれた状態で、電極回路層201と増幅回路層202と転送回路層203とが積層されている。また、本実施形態では、電極回路層201と転送回路層203は、相互に同等の曲げ剛性を有していてもよい。このような積層構造によれば、増幅器103が形成された増幅回路層202が、信号検出装置100の曲げの中立軸付近に位置する。このため、シート状の信号検出装置100を被検体に装着した際に、この信号検出装置100が被検体の表面形状に沿って曲がることによって発生する応力の影響を可及的に小さくすることができる。従って、シート状の信号検出装置100の曲げに対し、増幅器103の電気的特性を安定化させることができ、被検体の信号を安定的に検出することができる。
なお、図5では省略されているが、信号検出装置100の積層構造の側端部においても、電極回路層201が形成する封止層により増幅回路層202が封止された構造となっている。

【0033】
[動作の説明]
次に、図6を参照して、前述の図2に示す信号検出器の基本動作を説明する。本実施形態では、被検体としてウサギの心臓を用い、図2の信号検出器を備えた図1の信号検出装置100がウサギの心臓の表面に取り付けられているものとする。また、図2の信号検出器を構成する増幅器103の動作点は、低電位ノードVSSの電位を調整することにより、所望のゲインが得られる動作領域に予め設定されているものとする。

【0034】
信号検出装置100を構成する電極101(導電ゲル層2015)が被検体のウサギの心臓の表面組織と接触された状態で、被検体のウサギの心臓から発生される生体信号(電気信号)Sが電極101に伝達される。

【0035】
図6(a)は、被検体のウサギの心臓から発生される電気信号Sの波形の一例を示す。
同図(a)に示すように、生体信号Sはパルス信号であり、一種の交流信号である。この例では、生体信号Sのパルスの振幅は約1.2mVである。生体信号Sは交流信号の一種であるため、コンデンサ102を通過して増幅器103に電気信号Sinとして入力される。ここで、電極101と増幅器103はコンデンサ102により直流的に絶縁されているので、被検体の心臓の電位が増幅器103の動作点に影響を与えることはない。

【0036】
増幅器103は、電気信号Sinを増幅して出力信号Soutを出力する。詳細には、電気信号Sinの信号レベルに応じて、トランジスタ1031がオンまたはオフする。一方、トランジスタ1033とトランジスタ1034から構成されるインバータは、電気信号Sinの反転信号をトランジスタ1032のゲートに出力する。従って、トランジスタ1031とトランジスタ1032は相補的にスイッチング動作し、トランジスタ1031~1034は擬似的にCMOS(Complementary Metal Oxicide Semiconductor)構成のインバータ回路として動作する。このスイッチング動作の結果、トランジスタ1031のソースとトランジスタ1032のドレインとの接続ノード、即ち、増幅器103の出力部からパルス状の出力信号Soutが出力される。以下では、トランジスタ1031~1034から構成されるインバータ回路を疑似CMOSインバータ回路と称す。疑似CMOSインバータ回路の出力信号Soutは、抵抗素子1035を介して、増幅器103の入力部に負帰還される。

【0037】
ここで、仮に、増幅器103の入力部に与えられる電気信号Sinのレベルに変化がなければ、増幅器103の出力信号Soutの信号レベルは、トランジスタ1031~1034から構成される疑似CMOSインバータ回路の入出力特性と抵抗素子1035の抵抗値により定まる動作点で安定する。この動作点は、前述したゲインが大きくなる動作領域、即ち、入力信号の変化に対して出力信号の変化が大きくなる動作領域に存在する。

【0038】
増幅器103が上述の動作点で安定した状態から、電極101からコンデンサ102を介して供給される電気信号Sinのパルスが発生すると、このパルスの信号レベルに応答して増幅器103の出力信号Soutの信号レベルが変化する。このとき、増幅器103は、ゲインの大きな動作領域で動作するので、電気信号Sinの信号レベルが増幅され、出力信号Soutとして大きな信号レベルが得られる。これにより、増幅器103が電気信号Sinを増幅して出力信号Soutを出力する。

【0039】
図6(b)は、出力信号Soutの波形の一例を示す。この例では、出力信号Soutのパルスの振幅は、約220mVであり、増幅器103に入力された電気信号Sinのパルスの振幅の1.2mVが約183倍に増幅されている。なお、同図(b)に示す例では、マイナス側のパルス信号が出力されていないが、この原因としては、例えば動作点の調整不足などが考えられる。しかしながら、このような現象は、動作点の再調整や、増幅器103を最適化設計するなどの対策により解消することが可能であり、本発明の本質的な問題ではない。

【0040】
図6(c)は、被検体のウサギの心臓を虚血状態にした場合の電気信号Sinの波形の一例を示し、同図(d)は、被検体のウサギの心臓を虚血状態にした場合の出力信号Soutの波形の一例を示す。同図(c)および(d)に示す各信号波形の違いから、オペレータは、被検体のウサギの心臓が虚血状態にあるか否かを把握できる。

【0041】
次に、図7を参照して、図1に示す信号検出装置100の動作の一例を説明する。図7は、信号検出装置100を被検体の心臓Hに装着した様子を模式的に表している。同図では詳細に表現されていないが、電極回路層201の導電ゲル層2015が被検体の心臓Hの表面組織に密着するようにして、信号検出装置100が被検体に装着される。このとき、信号検出装置100は極めて高い可撓性を有しているため、心臓Hの動きを殆ど阻害することなく、心臓Hの表面形状に沿って信号検出装置100の電極回路層201の導電ゲル層2015が心臓Hの表面組織に密着する。従って、心臓Hの組織表面の生体信号を的確に検出することができる。

【0042】
次に、本実施形態の動作の一例を説明する。
上述のように信号検出装置100を被検体の心臓Hに装着した状態で、図示しない外部情報処理装置(例えばパソコン)を用いて、ワード線WL1~WL8を選択することにより、トランジスタT11~T88を介して信号検出器F11~F88の出力信号を走査して順次的に読み出す。例えば、図7(a)に示すように、第1行目の信号検出器F11~F18に接続された信号転送用のトランジスタT11~T18をワード線WL1により選択すると、信号検出器F11~F88の各出力信号Soutが信号転送用のトランジスタT11~T18を介してビット線BL1~BL8にそれぞれ出力される。ビット線BL1~BL8に出力された信号は外部情報処理装置により読み取られる。これにより、第1行目の信号検出器F11~F18が走査される。他の行についても同様に走査される。

【0043】
この例では、信号検出装置100を構成するワード線WL1~WL8およびビット線BL1~BL8は適切なインターフェースを介して外部情報処理装置に接続されるが、ワード線WL1~WL8を選択するためのデコーダと、ビット線BL1~BL8を選択するためのセレクタ(マルチプレクサ)を、電極回路層201、増幅回路層202、転送回路層203のうちの任意の回路層に設けてもよい。この場合、上記デコーダとセレクタとを介して、信号検出器F11~F88を順次的に走査する。例えば、図7(a)に示すように、第1行目の先頭の信号検出器F11から信号検出器F18を図1のワード線WL1により選択した状態で、信号検出器F11~F88からビット線BL1~BL8に出力された信号をセレクタにより順次選択する。

【0044】
このように順次的に読み出された各ビット線の信号(各信号検出器の出力信号)は、図示しない外部情報処理装置に入力される。この外部情報処理装置は、入力された信号に対して所定の信号処理を施すことにより、各信号検出器(増幅器)の出力信号の強度分布を生成する。例えば、外部情報処理装置は、各信号検出器の出力信号をサンプリングしてデジタル信号に変換し、第1行目の信号検出器F11~F18の各出力信号の強度分布(信号強度の二次元分布)を生成して表示部(図示なし)に表示させる。同様に他の行の信号検出器について走査が実施され、全ての信号検出器F11~F88の出力信号の強度分布を得る。上述の走査により得られた強度分布から、オペレータは、異常を示す信号強度の発生部位を特定することができる。ただし、この例に限定されず、信号強度の表示形態は任意である。

【0045】
図7(b)は、異常な信号強度が検出された信号検出器の配置位置の例を示している。
この例では、信号検出器F53,F54,F63,F64が、異常な信号強度が検出された信号検出器に相当する。この場合、オペレータは、信号の強度分布を分析し、異常部位を特定し、その異常部位に配置された信号検出器F53,F54,F63,F64の出力信号を読み出す旨の指示を外部情報処理装置に入力する。この指示(信号の強度分布の分析結果)に基づいて、外部情報処理装置は、異常部位に配置された信号検出器F53,F54,F63,F64の出力信号を同時に選択して読み出すことにより、被検体の異常部位の生体信号を経時的にモニタする。そして、外部情報処理装置は、モニタにより得られた生体信号を、波形、グラフ、数値等として表示部に表示させる。

【0046】
この場合、信号検出器F53,F54,F63,F64でそれぞれ検出された信号を一つの信号に合成(合算)して外部情報処理装置に入力してもよく、個別に入力してもよい。また、異常な信号強度を示す部位に対し、上述のデコーダおよびセレクタにより選択される信号検出器の個数を増やせば、信号に含まれる情報量が増えるため、精度よく生体信号をモニタすることが可能になる。

【0047】
上述した本実施形態による図5に示す信号検出装置100のデバイス構造によれば、図2に示す電極101とコンデンサ102と増幅器103とが一体的に構成されているので、電極101から増幅器103までの信号の伝達経路を短くすることができる。従って、電極101から増幅器103の入力部に至る信号の伝達経路におけるノイズの影響を抑制することができ、検出信号のSN比を改善することが可能になる。このため、信号検出器F11~F88の配置間隔を短くしても、生体信号を有意に検出することができる。従って、高密度に信号検出器F11~F88を配置することができ、生体信号の強度分布を精度よく取得することができる。

【0048】
また、本実施形態による図5に示す信号検出装置100のデバイス構造によれば、図2の電極101を構成する導電ゲル層2015から見て、増幅回路層202および転送回路層203の各トランジスタが封止される。よって、電極101とコンデンサ102と増幅器103とを一体化し、長期間にわたって被検体である生体に信号検出装置100を取り付けておいても、生体から増幅器103に侵入する水分等を抑制することができる。従って、増幅器103の故障や誤動作を抑制することができ、信号検出の信頼性を維持することができる。

【0049】
さらに、本実施形態による図5に示す信号検出装置100のデバイス構造によれば、優れた可撓性を得ることができる。従って、信号検出装置100を被検体に取り付けても、被検体の動きを阻害することが殆どなく、被検体の組織表面に電極101を密着させることができる。従って、被検体が発生させる生体信号を精度よく安定的に検出することができる。

【0050】
また、本実施形態による図1に示す信号検出装置100の回路構成によれば、複数の信号検出器F11~F88を任意に選択することができる。よって信号検出装置100を被検体に装着する際に、モニタすべき部位を予め厳密に特定して信号検出装置100を被検体に装着する必要がない。従って、信号検出装置100の被検体への装着を容易化することができる。
また、本実施形態による図1に示す信号検出装置100の回路構成によれば、複数の信号検出器F11~F88を任意に選択することができる。よって、異常部位に限らず、目標とすべき部位を容易に特定して生体信号をモニタすることができ、信号検出器F11~F88が位置する範囲内で任意の部位の生体信号を選択的に検出することができる。

【0051】
[導電ゲル]
次に、電極101(導電ゲル層2015)を構成する導電ゲルについて説明する。
本発明の一実施形態に係る電極101を構成する導電ゲルは、カーボンナノ材料を含む。このカーボンナノ材料は、親水性のイオン液体を構成する分子と、水溶性高分子とで、二重に被覆されているものである。
この二重被覆されたカーボンナノ材料を、例えば、紙に漉き込んで導電性の紙を作製することにより、カーボンナノ材料自体に直接触れることなく、この導電性の紙に触れることが可能となる。同様に、この二重被覆されたカーボンナノ材料を紙以外の物の材料に混ぜ込んでその物を作製することにより、カーボンナノ材料自体に直接触れることなく、その物に触れることが可能となる。

【0052】
本発明の一実施形態に係る電極101を構成する導電ゲルの組成物は、親水性のイオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散されてなり、カーボンナノ材料はイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されている。
上記カーボンナノ材料はイオン液体を構成する分子の単分子膜で被覆されていることが好ましい。

【0053】
本発明の一実施形態に係る電極101を構成する導電ゲルである導電性材料は、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、その水溶性高分子が架橋されてなるものである。

【0054】
本明細書においてイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。
親水性のイオン液体としては、従来から知られた各種のイオン液体のうち、親水性のイオン液体を使用することができ、例えば、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を挙げることができる。

【0055】
本明細書においてカーボンナノ材料とは、カーボン原子で構成され、ナノメートルサイズで構造化している構成要素(例えば、1本のCNT)が通常、その構成要素のカーボン原子同士がファンデルワールス力で結合しているもの、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(炭素繊維のうち、径が10nm以下のもの)、カーボンナノホーン、フラーレンをいう。径が10nm以下の微細なカーボンナノ材料であれば、水中で良好な分散性を発揮する。

【0056】
カーボンナノ材料は同じ種類のものだけが用いられていてもよいし、複数の種類のものが用いられていてもよい。

【0057】
カーボンナノチューブは、炭素原子が六角網目状に配列したグラフェンシートが単層で又は多層で円筒状に丸まった構造を有するものであるが(単層ナノチューブ(SWNT)、2層ナノチューブ(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)と呼ばれる)、カーボンナノ材料として用いることができるカーボンナノチューブは特に制限はなく、SWNT、DWNT、MWNTのいずれでも構わない。また、カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電、熱CVD法、プラズマCVD法、気相法、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブを用いても構わない。また、複数の種類のカーボンナノチューブを用いても構わない。

【0058】
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ間のファンデルワールス力によって凝集しやすく、通常、複数本のカーボンナノチューブがバンドル(束)を形成したり、凝集体を形成して存在する。しかし、イオン液体の存在下で、そのバンドルもしくは凝集体にせん断力を加えて細分化する(カーボンナノチューブの絡み合いを低減する)ことができる。十分に細分化を行うことにより、カーボンナノチューブ同士を凝集しているファンデルワールス力を弱めて一本一本のカーボンナノチューブに分離すると共に、一本一本のカーボンナノチューブにイオン液体を吸着させることができる。その結果、イオン液体の分子が覆った単体のカーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブとイオン液体とからなる組成物を得ることできる。
なお、細分化工程において用いるせん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどのせん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。

【0059】
カーボンナノチューブとイオン液体とを混ぜ、上記細分化工程を行うことにより、からみ合いが減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン-π」相互作用により結合したイオン液体の分子がイオン結合を介してカーボンナノチューブを結びつけることによりゲル状組成物になると考えられている(特許文献2)。後述するように、このゲル状組成物を、例えば、生理食塩水やエタノール等でリンスすることにより、カーボンナノチューブの表面に1層のイオン液体の分子の層を形成することができる。さらに、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブに水と水溶性高分子とを混ぜることにより、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが水溶性高分子媒体中に分散されてなる組成物を作製することができる。

【0060】
本明細書において水溶性高分子(媒体)としては、水に溶解でき、あるいは、分散できる高分子であれば特に制限はなく、水中で架橋できるものであればより好ましい。例えば、以下の例を挙げることができる。
1.合成高分子
(1)イオン性
ポリマクリル酸(アニオン性)
ポリスチレンスルホン酸(アニオン性)
ポリエチレンイミン(カチオン性)
MPCポリマー(両性イオン)
(2)非イオン性
ポリビニルピロリドン(PVP)
ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニル鹸化物)
ポリアクリルアミド(PAM)
ポリエチレンオキシド(PEO)
2.天然系高分子(多くは多糖類)
デンプン
ゼラチン
ヒアルロン酸
アルギン酸
デキストラン
タンパク質(例えば水溶性コラーゲンなど)
3.半合成高分子(例えばセルロースを可溶化したもの)
カルボキシメチルセルロース(CMC)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
メチルセルロース(MC)、等のセルロース誘導体
水溶性キトサン(「2.天然系高分子」に分類することもできる)

【0061】
また、水溶性高分子の具体的な化合物としては、例えば、ポリロタキサンを挙げることができる。ポリロタキサンは、環状分子(回転子:rotator)の開口部が直鎖状分子(軸:axis)によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)に、環状分子が遊離しないように封鎖基を配置して成る。例えば、環状分子としてα-シクロデキストリン、直鎖状分子としてポリエチレングリコールを用いたポリロタキサンを用いることができる。

【0062】
また、水溶性高分子媒体としては架橋剤と反応する基を有する化合物であれば、架橋により強固な膜を形成することから、より好ましい。
本発明の組成物又は導電性材料を用いて、微細な形状のパターンを形成するには、水溶性高分子が光架橋性であることが好ましい。

【0063】
カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層は単分子層であってもよい。カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用により結合する。そのため、イオン液体の分子同士の間の結合がその「カチオン-π」相互作用による結合よりも小さい、カーボンナノ材料とイオン液体との組み合わせを選択することにより、カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層を単分子層とすることが可能となる。
例えば、カーボンナノ材料としてカーボンナノチューブ、イオン液体としてN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を選択することにより、カーボンナノチューブを包み込むDEMEBF4の分子の層を単分子層とすることができる。さらに、水溶性高分子として例えば、ポリロタキサンを選択すると、DEMEBF4の単分子層の上に5nm程度の薄いポリロタキサンの層を形成することができる。こうして得られる組成物はカーボンナノチューブの分散濃度を高密度とすることができ、導電性の高い材料とすることができる。かかる導電性材料で作製した電極等の導電部材では、薄いDEMEBF4分子層及びポリロタキサン層を介してカーボンナノチューブ間を電子が移動して電流が流れる。

【0064】
本発明の組成物又は導電性材料において、カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用によって強く結合しているために、カーボンナノ材料の表面と結合しているイオン液体の分子は水溶性高分子媒体の外に出てこない。なお、カーボンナノ材料の表面と結合していないイオン液体の分子は、例えば、生理食塩水やエタノールによる濯ぎによって除去することができる。

【0065】
本発明の実施形態に係る組成物又は導電性材料によれば、含有するカーボンナノ材料がイオン液体の分子と水溶性高分子とによって二重に被覆されているので、生体内に適用してもカーボンナノ材料が生体内の細胞に実質的に触れることがない。また、高い柔軟性を有するので、生体内の臓器等の表面に対して追従性に優れ、臓器等との間に極めて良好な界面を形成できる。さらにまた、高い導電率を有するものとすることができる。

【0066】
本発明の一実施形態に係る導電性材料の製造方法は、親水性のイオン液体とカーボンナノ材料と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料が分散する第1の分散系を得る第1の工程と、第1の分散系と水溶性高分子と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料と水溶性高分子とが分散する第2の分散系を得る第2の工程と、を備えることを特徴とする。

【0067】
第1の工程において、カーボンナノ材料にせん断力を加えて細分化してもよい。
これにより、カーボンナノ材料のバンドル又は凝集がより解けた状態で親水性のイオン液体でカーボンナノ材料を覆うことができる。

【0068】
第2の工程の後に、水溶性高分子を架橋させて、カーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、その水溶性高分子が架橋されてなる組成物を作製する工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。
カーボンナノ材料に結合していない前記イオン液体を構成する分子を除去するために濯ぎ工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。
この濯ぎ工程は例えば、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体によって行うことができる。この濯ぎ工程はいずれの段階で行ってもよい。

【0069】
なお、本発明の組成物又は導電性材料は、本発明の効果を損なわない範囲で他の物質を含むことができる。また、本発明の導電性材料の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で他の工程を含むことができる。

【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例はあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するためのものであって、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
図8(a)は、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサンに分散されてなる組成物であって、紫外線(UV)硬化前のものの状態を示す写真である。得られた組成物は、ゲル状であることがわかる(なお、本明細書において「ゲル状」とは、流動性を有する液状に対して、流動性を失った状態、もしくは、流動性をほぼ失っている状態を意味する)。
この組成物の作製は、市販のカーボンナノチューブ(MWNT、長さ10μm、径5nm)30mgと、親水性のイオン液体である、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)60mgと混合し、磁気スターラーを用いて700rpm以上の回転数で1週間、25℃で脱イオン水中で撹拌した。得られた懸濁液を、高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano-jet pal, JN10, Jokoh)によって処理して、黒い物質を得た。得られたCNTゲルを含む溶液を生理食塩水で濯いだ後に、光架橋剤(Irgacure2959、長瀬産業株式会社製)1mgと、ポリロタキサンゲル(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)1000mgとを混合し、上記組成物を作製した。
【実施例】
【0072】
図8(b)は、図8(a)で示した組成物を、5分間、紫外線(波長:365nm)を照射して硬化して得られたシートの写真である。
得られたシートのヤング率は10kPaよりも低かった。シリコンのヤング率は100GPa程度であり、従来のプラスチックフィルムのヤング率は1~5GPaであるから、非常に柔らかいことがわかる。また、脳のヤング率は1~2kPaであり、心臓の筋肉細胞のヤング率は~100kPaであるから、本発明の一実施形態の組成物又は導電性材料は、臓器と同程度あるいはそれ以上の高い柔らかさを有することがわかった。このため、臓器の表面に高い追従性を有し、臓器との間に極めて良好な界面を形成できる。
【実施例】
【0073】
図8(c)は、超微細デジタル型UV露光システム(「デジタル露光装置」、ピーエムティー株式会社製)を用いて、光架橋を行うと共に、約50μm程度の線幅の微細構造をパターニングしたものの光学顕微鏡写真である。本発明の一実施形態の組成物又は導電性材料は、このように、微細加工が可能な材料である。
光架橋材料の種類を変えることで様々な波長で架橋できるので、架橋手段はUVには限定されない。
【実施例】
【0074】
図9は、高分解断面透過電子顕微鏡像(TEM像)であり、(a)は本発明で用いることができるカーボンナノチューブ((MWNT、長さ10μm、径5nm)のTEM像、(b)はイオン液体なしで、カーボンナノチューブ((MWNT、長さ10μm、径5nm)30mgと、ポリロタキサン(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)100mgとを水中で混合し、ジェットミルで細分化を行いながら撹拌して得られた、ポリロタキサンで覆われたカーボンナノチューブのTEM像、(c)は図8(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物のTEM像である。
高分解断面透過電子顕微としては、HF-2000Cold-FE TEM(80kV、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【実施例】
【0075】
図9(a)に示すように、用いたカーボンナノチューブは3層又は4層からなっていたことがわかる。
図9(b)に示すように、単体のカーボンナノチューブにポリロタキサンが被覆しているが、その被覆層の層厚は不均一であることがわかる。これに対して、図9(c)に示すように、単体のカーボンナノチューブを被覆するポリロタキサン層の層厚が非常に均一であり、図9(b)に示すものとは明確に異なることわかる。
この被覆層の層厚の均一性の違いは、後者がカーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBF4の分子が剥がされて、ポリロタキサンがカーボンナノチューブを覆い直したのではなく、カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBF4の分子の層の上にポリロタキサンが覆ったものであることを示している。カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBF4の分子が剥がされて、ポリロタキサンがカーボンナノチューブを覆ったのであれば、図9(c)も図9(b)と同様に被覆層の層厚は不均一になるはずである。また、カーボンナノチューブとDEMEBF4の分子との結合が水素結合にも匹敵する高いカチオン-π相互作用で結合しているので、カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBF4の分子は上記の工程では剥がされないと考えられる。
【実施例】
【0076】
図9に示すように、本発明の導電性材料の製造方法によれば、カーボンナノチューブの表面をイオン液体の分子を介して均一に生体適合性材料で被覆することが可能となる。
【実施例】
【0077】
図10は、本発明の一実施形態である組成物(CNT-gel)の面抵抗、及び、面抵抗のカーボンナノチューブ含有量依存性を示すグラフである。比較のために、従来の生理食塩水を主成分とするゲル(Saline-based gel)の面抵抗についても点線で示した。
組成物(CNT-gel)は、図8(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物である。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
生理食塩水を主成分とするゲル(Saline-based gel)は、300mgのロタキサンゲルに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
図10に示すように、本発明の一実施形態である組成物の面抵抗は、従来の生理食塩水を主成分とするゲルに比べて、2桁~3桁以上低いことがわかった。
【実施例】
【0078】
図11は、本発明の一実施形態である組成物(CNT-rotaxane gel)の電気容量、及び、電気容量の周波数依存性を示すグラフである。比較のために、ポリアクリルアミドゲル(Poly-acrylamide gel)、生理食塩水含有ポリアクリルアミドゲル(Saline poly-acrylamide gel)、生理食塩水含有ロタキサンゲル(Saline-rotaxane gel)についても示した。
組成物(CNT-rotaxane gel)は、図8(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物である。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
ポリアクリルアミドゲル(Poly-acrylamide gel)は、300mgのポリアクリルアミドに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの脱イオン水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
また、脱イオン水の代わりに生理食塩水100mlで溶かしてもよい。この場合、ゲルに含浸される水を生理食塩水で置換する手間を省いて生体に適用することができる。
生理食塩水含有ポリアクリルアミドゲル(Saline poly-acrylamide gelは、300mgのポリアクリルアミドに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
生理食塩水含有ロタキサンゲル(Saline-rotaxane gel)は、300mgのロタキサンゲルに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
図11に示すように、本発明の一実施形態である組成物の電気容量は、比較例のゲルよりも高いことがわかった。
【実施例】
【0079】
電気信号を容量結合で検出する際、その大きさは電極の表面積に比例する。本発明の組成物で電極を形成して、その電極を使って容量結合で電気信号を検出する場合、本発明の組成物は従来の金属電極に比べると格段に柔らかく、電極は生体組織にぴったりと付着することができるために実質的な接触面積が大きくなる。そのため、電気信号を得るための実質的な容量の検出感度は従来の金属電極に比べて非常に高く、より小型の電極であっても高い検出能力を有するものとなる。
また、本発明の組成物又は導電性材料は、カーボンナノ材料を含むものであり、カーボンナノ材料、特に、カーボンナノチューブは高い比表面積を有するものなので、この点からも高い信号検出能力を有するものである。また、本発明の組成物又は導電性材料を用いて作製した電極の導電率は、Au電極の導電率より低いが、信号を容量でとる場合には導電率ではなく、実効的な表面積が大きいことが重要である。
【実施例】
【0080】
以下では、カーボンナノ材料としてカーボンナノチューブを、イオン液体としてN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF4)を、また、水溶性高分子としてポリロタキサンを用いた場合を例にとって、本発明の一実施形態である導電性材料の製造方法について、図12を用いて説明する。
(1)第1の工程
まず、カーボンナノチューブとDEMEBF4と水とを混合し、撹拌して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが分散する第1の分散系を得る。
第1の分散系を、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBF4を除去してもよい。
この分散系においては、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが水に分散されている。カーボンナノチューブとイオン液体の量に依存して、他に、イオン液体を構成する分子に十分に覆われていない又は全く覆われていないカーボンナノチューブ(バンドル化されているカーボンナノチューブも含む)やイオン液体を構成する分子が含有されている場合がある。
この工程において、ジェットミル等により、カーボンナノチューブにせん断力を加えて細分化するのが好ましい。この工程により、カーボンナノチューブは、ファンデルワールス力でバンドル化していた1本1本のカーボンナノチューブが解けて、バンドル化(凝集)の程度が低減し、1本1本のカーボンナノチューブにまで解くことも可能となるからである。
【実施例】
【0081】
図14は、カーボンナノチューブの分散性を調べた結果を示すものである。(A)は、カーボンナノチューブ30mgを25℃の脱イオン水に入れ、磁気スターラーを用いて700rpm以上の回転数で1週間撹拌した後の状態、(B)は、カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF460mgとを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌した後の状態、(C)は、カーボンナノチューブ30mgを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano-jet pal, JN10, Jokoh)で処理した後の状態、(D)は、カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF460mgとを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、高圧ジェットミルホモジナイザーで処理した後の状態、(E)カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF460mgと、ミクロフィブリル化セルロース(10%セルロース含有の水溶液100mg、「セリッシュ(商品名)」、Daicel Chemical Industries社製)とを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌して得られたペーストを、その後、高圧ジェットミルホモジナイザーで処理した後の状態、を示すものであり、撹拌を終えてから1週間後に撮影した写真である。なお、「セリッシュ(商品名)」は、高度に精製した純植物繊維を原料とし、特殊な処理方法でミクロフィブリル化したセルロースナノファイバーであり、原料の繊維はこの処理によって数万本に引き裂かれ、繊維の太さは0.1-0.01μmまで微細化されている。
【実施例】
【0082】
(D)及び(E)は、水の中でカーボンナノチューブが高い分散性を示していることがわかる。高い分散性を得るには、せん断力を加えてバンドル化されているカーボンナノチューブを細分化することが好ましいことがわかる。
【実施例】
【0083】
(2)第2の工程
次に、上記第1の分散系とポリロタキサン(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)と水とを混合し、撹拌して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料と水溶性高分子とが分散する第2の分散系を得る。
第2の分散系を、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBF4を除去してもよい。
なお、図12に示すように、得られた組成物を架橋する場合には架橋剤も混合することができる。これによって、得られた第2の分散系は図12に示すようなゲル状の物質である。
【実施例】
【0084】
(3)架橋工程
次に、ポリロタキサンを架橋して、DEMEBF4を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサン媒体中に分散され、そのポリロタキサンが架橋されてなる組成物(導電性材料)を得る。
得られた組成物(導電性材料)を生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBF4を除去してもよい。
【実施例】
【0085】
以上の工程により、本発明の一実施形態に係る組成物(導電性材料)を得ることができる。
【実施例】
【0086】
次に、上記第2の分散系を用いて、本発明の一実施形態に係る組成物(導電性材料)からなるシートや、本発明の一実施形態に係る組成物(導電性材料)からなる微細な線幅のラインを形成する工程の一例について説明する。
【実施例】
【0087】
図13(a)に示すように、上記第2の分散系をガラス基板にキャスト(流延)する。次いで、図13(b)に示すように、所望の厚さ(図の例では50μm)のスペーサーシートを介してガラス基板上にカバーガラスを載せる。
【実施例】
【0088】
次に、シートを作製する場合は、図13(c)に示すように、例えば、紫外線(365nm)露光装置を用いて露光することにより、50μm厚のシートを得ることができる。また、微細な線幅のラインを形成する場合は、図13(d)に示すように、例えば、デジタル型の紫外線(365nm)露光装置を用いて露光することにより、例えば、50μm幅のラインを形成することができる。
【実施例】
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態では、信号検出器F11~F88を行列状に均等に配列したが、被検体の形状に応じて不均等に配列してもよい。また、増幅器103の出力信号Soutを電圧信号として取り出すものとしているが、この例に限定されず、出力信号Soutを電流信号として取り出してもよい。
【実施例】
【0090】
また、図5の例では、金属層2012、AlOx/SAM層2013、金属層2014によりコンデンサ102を構成するものとしたが、例えば、金属層2012、AlOx/SAM層2013、金属層2014を省略し、導電層204とポリイミド層2011と導電ゲル層2015とによりコンデンサ102を構成してもよい。また、金属層2029、導電層204、金属層2016、およびポリイミド層2011を省略し、パリレン層2027上に金属層2012を直接形成し、金属層2012とAlOx/SAM層2013と金属層2014とによりコンデンサ102を構成してもよい。また、コンデンサ102の絶縁層(誘電体層)として種々の有機膜、無機膜、有機膜と無機膜の積層膜を用いることができる。特にパリレンを用いると封止性能を向上させるのに有効である。また、ポリイミド層2011または他の可撓性基材の表面により水分・酸素遮断性の優れる薄膜を形成した積層構造にすると更に封止性能を向上させることができる。この薄膜としては、例えばパリレン膜、酸化シリコン膜(SiOx)、窒化シリコン膜(SiN)等の無機膜、有機膜とこれら無機膜の積層膜が有効である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、SN比に優れた信号検出装置および信号検出方法を提供することができる。また、可撓性に優れた信号検出装置を提供することができる。更に生体適合性を有する信号検出装置および信号検出方法を提供することができる。更にまた、工業製品を含む任意の対象物が発生させる信号を検出する信号検出装置および信号検出方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
100…信号検出装置、101…電極、102…コンデンサ、103…増幅器、1031~1034…トランジスタ、1035…抵抗素子、201…電極回路層、202…増幅回路層、203…転送回路層、204,205…導電層、F11~F88…信号検出器、T11~T88…信号転送用のトランジスタ、WL1~WL8…ワード線、BL1~BL8…ビット線。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図4】
8
【図8】
9
【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
13