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明細書 :自己組織化膜形成材料として有用なトリプチセン誘導体、その製造方法、それを用いた膜、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年1月19日(2017.1.19)
発明の名称または考案の名称 自己組織化膜形成材料として有用なトリプチセン誘導体、その製造方法、それを用いた膜、及びその製造方法
国際特許分類 C07C  59/72        (2006.01)
C07C  43/20        (2006.01)
C07C  39/17        (2006.01)
C07C  39/42        (2006.01)
C07C  43/225       (2006.01)
C07C  47/575       (2006.01)
C07C 217/80        (2006.01)
C07C 309/65        (2006.01)
C07C 255/52        (2006.01)
C07C  69/712       (2006.01)
C07C 217/74        (2006.01)
C07F   7/18        (2006.01)
C07C  37/84        (2006.01)
C07C  43/21        (2006.01)
C07C  43/215       (2006.01)
C07C 217/24        (2006.01)
C07D 333/18        (2006.01)
C07D 209/48        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/40        (2006.01)
FI C07C 59/72 CSP
C07C 43/20 D
C07C 39/17
C07C 39/42
C07C 43/225 C
C07C 47/575
C07C 217/80
C07C 309/65
C07C 255/52
C07C 69/712 Z
C07C 217/74
C07F 7/18 W
C07C 37/84
C07C 43/21
C07C 43/215
C07C 217/24
C07D 333/18
C07D 209/48
H01L 29/78 618B
H01L 29/78 618A
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 310J
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 61
出願番号 特願2014-557181 (P2014-557181)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第216頁において発表(1-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会においてポスター発表(2-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第217頁おいて発表(2-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会においてポスター発表(3-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第30、31頁において発表(3-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会において口頭発表(4-1)平成24年9月26日発行の日本化学会秋季事業-第2回CSJ化学フェスタ2012プログラム・講演予稿集、第266頁において発表(P6-53)(4-2)平成24年10月16日開催の日本化学会秋季事業-第2回CSJ化学フェスタ2012においてポスター発表(P6-53)(5-1)平成25年8月5日に配布された附置研究所間アライアンス「次世代エレクトロニクス」グループ(G1)分科会(山形大学ジョイントシンポジウム)(平成25年8月5日~7日開催)において発表(タイトル:二次元集積化能を有する分子ビルディングブロックの開発)(5-2)平成25年8月5日に配布された附置研究所間アライアンス「次世代エレクトロニクス」グループ(G1)分科会(山形大学ジョイントシンポジウム)(平成25年8月5日~7日開催)において発表(タイトル:二次元集積化によるセンチメートルスケールの単結晶状分子薄膜の形成)
国際出願番号 PCT/JP2013/004952
国際公開番号 WO2014/111980
国際出願日 平成25年8月21日(2013.8.21)
国際公開日 平成26年7月24日(2014.7.24)
優先権出願番号 2013005126
優先日 平成25年1月16日(2013.1.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ
発明者または考案者 【氏名】福島 孝典
【氏名】庄子 良晃
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100189131、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 拓郎
【識別番号】100147289、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 裕子
【識別番号】100182486、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 正展
【識別番号】100158872、【弁理士】、【氏名又は名称】牛山 直子
【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査請求
テーマコード 4C204
4H006
4H049
5F110
Fターム 4C204BB04
4C204CB04
4C204DB30
4C204EB03
4C204FB17
4C204GB01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB90
4H006AB91
4H006AD15
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BS10
4H006BU32
4H006BU46
4H006FC56
4H006FE13
4H006FE73
4H006FE76
4H006GP03
4H006GP20
4H006GP22
4H006KC12
4H049VN01
4H049VP03
4H049VQ21
4H049VQ23
4H049VR23
4H049VR41
4H049VU24
4H049VW02
5F110CC07
5F110DD05
5F110EE03
5F110FF01
5F110FF22
5F110GG05
5F110GG06
5F110GG42
5F110GG57
要約 本発明は、自己組織化膜、特に自己組織化単分子膜の材料物質として有用な一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及びそれを製造するための原料となる一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、並びにそれらの製造法を提供する。
また、本発明は、一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる膜形成材料、それを用いた自己組織化膜、当該膜を表面に有する固体基板、及び当該膜の製造方法を提供する。
本発明は、基板の材質に依存しない自己組織的な膜を形成することができる下記の一般式[I]、
(式中、Xは酸素原子等のリンカー基であり、Rは長鎖の基であり、Zは末端の水素原子又は各種の官能基であり、Rは水素原子又は各種の置換基である。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を製造するための中間体である一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体に関する。
JP2014111980A1_000034t.gif
特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式[I]
【化1】
JP2014111980A1_000032t.gif
(式中、3つのRは同じ基であって、Rは、炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-R-Zとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのZは同じ基であって、Zは、水素原子、固体基板の表面に結合若しくは吸着し得る基;又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項2】
一般式[I]におけるXが、-CH-、-CH=CH-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、請求項1に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項3】
一般式[I]におけるRが、炭素数2から30のアルキレン基、炭素数2から30のアルケニレン基、炭素数2から30のアルキニレン基、炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、請求項1又は2に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項4】
一般式[I]におけるZが、水素原子、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、水酸基、-COOR(ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-N(R(ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)、又は、-P(=O)(OR15(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。)である、請求項1から3のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項5】
一般式[I]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、請求項1から4のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体が、自己組織的に整列してなる膜。
【請求項7】
膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
膜が、多層膜である、請求項6又は7に記載の膜。
【請求項9】
膜が、単分子膜である、請求項6又は7に記載の膜。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の膜を固体基板の表面に有する構造体。
【請求項11】
構造体が、電子デバイスの一部を形成するものである、請求項10に記載の構造体。
【請求項12】
電子デバイスが、薄膜トランジスター(TFT)である、請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、ヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。
【請求項14】
さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
溶媒が、極性溶媒である、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
膜が、多層膜である、請求項13から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
膜が、単分子膜である、請求項13から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
請求項1から5のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、固体基板の表面に前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。
【請求項20】
次の一般式[II]
【化2】
JP2014111980A1_000033t.gif
(式中、3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのRは同じ基であって、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又はそれぞれのアルキル基が炭素数1~5のアルキル基であって同一若しくは異なるアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基を表し、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-Rとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項21】
一般式[II]におけるXが、-CH-;-O-;-S-;-SO-;-SO-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CO-;-OCO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);又は、-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。);である、請求項20に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項22】
一般式[II]におけるXが、-CH-、-CO-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、請求項21に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項23】
一般式[II]におけるRが、水素原子、アルコキシアルキル基、又はトリアルキルシリル基である、請求項20から22のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項24】
一般式[II]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、請求項20から23のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【請求項25】
トリヒドロキシトリプチセン混合物を溶媒に溶解して溶液とし、当該溶液から1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを結晶化させて、これを分離することからなる1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを製造する方法。
【請求項26】
トリヒドロキシトリプチセン混合物が、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンと1,8,16-トリヒドロキシトリプチセンの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
トリヒドロキシトリプチセン混合物が、トリアルコキシトリプチセン混合物を加水分解して製造されたものである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
トリアルコキシトリプチセン混合物が、1,8-ジアルコキシアントラセンと1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノール又はその誘導体とを縮合剤の存在下で反応させて製造されたものである、請求項27に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayers)の形成材料として有用なトリプチセン誘導体、及びそれを製造するための中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
自己組織化単分子膜とは、固体基板の表面に吸着又は化学結合し、分子間の相互作用により高い配向性で単分子の層(膜)として形成されたものとされている。なお、当該自己組織化単分子膜は、自己集合単分子膜とも、自己集積化単分子膜ともいわれているが、本明細書では自己組織化単分子膜、又は単にSAM膜という。
SAM膜は、ガラス基板上に有機シラン化合物を用いて形成されたことが報告され(非特許文献1参照)、また、金基板上に有機イオウ化合物を用いて形成されたことが報告されて(非特許文献2参照)から、急速に発展してきた。
SAM膜は、LB(Langmuir-Blodgett)膜よりも安定であり、気相反応によっても形成させることができ、その応用範囲は広範になってきている。また、SAM膜の膜厚は分子の大きさ(長さ)と基板との傾斜角で決定され、1nm程度の分子レベルの膜を精密にかつ簡便に製造することができる。膜厚は、一般的には、アルキル鎖の1つのメチレン単位により約0.2nmとなり、アルキル鎖の長さを調節することにより、所望の膜厚の単分子膜を正確に製造することができる。
SAM膜の形成により、固体基板の表面の特性を改質することができる。例えば、有機電界効果型トランジスタ(有機FET)では、多くの場合に絶縁層として酸化ケイ素が用いられているが、当該酸化ケイ素の表面にオクタデシルトリクロロシラン(OTS)などの有機シラン化合物によるSAM膜を形成させることにより、その表面を撥水性にすることにより、隣接する(有機)半導体の結晶性を向上させ電荷移動度を改善できるとされている。このように、固体基板の表面にSAM膜を形成させることにより、固体基板表面の親水性や疎水性を制御することができる。
【0003】
また、SAM膜を形成する分子の一方に機能性官能基を結合させることにより、固体基板の表面に特定の機能を付与することもできる。例えば、電子移動・酸化還元反応、触媒作用、光誘起電子移動、電気化学的発光、イオン・分子の認識、バイオセンサ、バイオ分子デバイス、太陽光発電、などの様々な機能をSAM膜の形成により固体基板の表面に付与することが可能となり、これらの分野での応用が期待されている。
例えば、アルデヒド部分を有する糖や、カルボキシル基を有する化合物を固定するために末端基としてアミノ基を有するアルキレンチオール化合物を材料としたSAM膜の形成(特許文献1参照)、末端基にシアノアリール基などの電子受容性官能基を有するアルキレンチオール化合物などを材料としたSAM膜の形成(特許文献2参照)、末端基にポリフェニレン基を有するアルキレンチオール化合物などを材料とした紫外線耐性を有するSAM膜の形成(特許文献3参照)、ビス(アダマンチルメチル)ジスルフィドを用いた剛直なアダマンタン表面膜構造を有するSAM膜の形成(特許文献4参照)、アルキレン鎖の途中に比較的長波長の光で感光する官能基を導入し、長波長の光でパターン化が可能となるリソグラフィー用のSAM膜の形成(特許文献5参照)、ピロール環拡張ポルフィリンとフラーレンを共有結合した化合物を用いた太陽電池及び光電荷分離素子用のSAM膜の形成(特許文献6参照)などが報告されている。
【0004】
一方、トリプチセン誘導体をSAM膜の形成材料として用いた報告は見あたらないが、トリプチセンのポリマー又はコポリマーからなる有機EL材料(特許文献7参照)、ポリイミド樹脂やポリアミド樹脂の原料となるトリプチセンジアミンを製造する方法(特許文献8参照)、トリプチセンをさらに連結させた「イプチセン類」(iptycenes)と総称される化合物を用いた液晶高分子組成物(特許文献9参照)、トリプチセントリアミン類を反応させて得られるポリアミド酸、これを加熱して得られるポリイミド樹脂、及びこれを用いた光学部品(特許文献10参照)、ナノフィルムの材料となる大環状モジュールの成分としてのトリプチセン環の使用(特許文献11参照)、酵素を用いたトリプチセン誘導体の光学分割法(特許文献12参照)、三重結合又は二重結合を複数個有するトリプチセン誘導体を重合単位として重合した重合体を含有する絶縁膜及び電子デバイス(特許文献13参照)、少なくとも1つの酸解離性溶解抑止基を有するフォトレジスト用のトリプチセン誘導体(特許文献14参照)、トリプチセン-1,4-ジイル基を含む化合物を用いた液晶高分子組成物(特許文献15参照)などが報告されている。
また、1個、2個、5個、又は6個の長鎖アルコキシ基で置換されたトリプチセン誘導体が規則的に整列しスメクチック液晶を形成することが報告されている(非特許文献3参照)が、3つの置換基が同じ方向に規則的に整列することまでは開示されていないし、SAM膜形成材料として適していることも開示されていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-363154号公報
【特許文献2】国際公開第2003-055853号
【特許文献3】特開2004-33824号公報
【特許文献4】特開2004-315461号公報
【特許文献5】特開2007-277171号公報
【特許文献6】特開2012-111716号公報
【特許文献7】特表2002-539286号公報
【特許文献8】特開2004-359599号公報
【特許文献9】特表2004-506791号公報
【特許文献10】特開2006-1968号公報
【特許文献11】特表2006-512472号公報
【特許文献12】特開2006-187225号公報
【特許文献13】特開2008-75047号公報
【特許文献14】特開2008-308433号公報
【特許文献15】特開2010-248467号公報
【0006】

【非特許文献1】Sagiv,J., J. Am. Chem. Soc., 102, 92-98 (1980)
【非特許文献2】Nuzzo,R.G.,et al., J. Am. Chem. Soc., 105, 4481-4483 (1983)
【非特許文献3】S. Norves, J. Org. Chem., 1993, 58, 2414-2418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自己組織化膜、特に自己組織化単分子膜の材料物質として有用な下記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及びそれを製造するための原料となる下記の一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、並びにそれらの製造法を提供する。
また、本発明は、下記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる膜形成材料、下記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を用いた自己組織化膜、当該膜を表面に有する固体基板、及び当該膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、トリプチセンに複数の機能団を位置特異的かつ面特異的に導入することを検討してきた。そして、本発明者らは、トリプチセンの一方の側に3つの同じ置換基を面特異的に有するトリプチセン誘導体が、トリプチセンの三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積すること、そして、3つの同じ置換基が比較的長い炭素鎖を有している場合には、これらの置換基が同じ方向に整列して集積して膜を形成することを見出した。このようにして形成された膜は自己組織的であり、さらにこれを処理することにより、自己組織化単分子膜とすることができることも見出した。
【0009】
即ち、本発明は、次の一般式[I]
【0010】
【化1】
JP2014111980A1_000003t.gif

【0011】
(式中、3つのRは同じ基であって、Rは、炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-R-Zとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのZは同じ基であって、Zは、水素原子、固体基板の表面に結合若しくは吸着し得る基;又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体に関する。
【0012】
また、本発明は、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる膜形成材料用組成物に関する。
さらに、本発明は、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体が自己組織的に整列してなる膜、特に自己組織化単分子膜、及び当該膜を固体基板の表面に有する構造体に関する。
また、本発明は、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解して溶液とし、当該溶液を固体基板の表面に塗布又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥し、必要に応じてさらにアニーリングしてなる、固体基板の表面に前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法に関する。
また、本発明は、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解して溶液とし、当該溶液を固体基板の表面に塗布又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥し、必要に応じてさらにアニーリングしてなる、固体基板の表面に前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法に関する。
【0013】
さらに、本発明は、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を製造する際の原料物質として有用な次の一般式[II]
【0014】
【化2】
JP2014111980A1_000004t.gif

【0015】
(式中、3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのRは同じ基であって、Rは、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又はそれぞれのアルキル基が炭素数1~5のアルキル基であって同一若しくは異なるアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基を表し、
3つのRは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-Rとは異なる基であって、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体に関する。
【0016】
さらに詳細に本発明の態様を説明すれば次のようになる。
(1)前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。
(2)一般式[I]における3つのRが、全て同じ基である、前記(1)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(3)一般式[I]における3つのRが、それぞれ異なる基である、前記(1)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(4)一般式[I]におけるXが、-CH-、-CH=CH-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、前記(1)から(3)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(5)一般式[I]におけるXが、-CH=CH-、又は-O-で表される2価の基である、前記(4)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(6)一般式[I]におけるRが、炭素数2から30のアルキレン基、炭素数2から30のアルケニレン基、炭素数2から30のアルキニレン基、又は炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、前記(1)から(5)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(7)一般式[I]におけるRが、炭素数2から30のアルキレン基、又は炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、前記(6)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(8)一般式[I]におけるZが、水素原子、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、水酸基、-COOR(ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-N(R(ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)、又は、-P(=O)(OR15(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。)である、前記(1)から(7)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(9)一般式[I]におけるZが、水素原子、-CF、-CH=CH、-C≡CH、-COOR(ここで、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-NH、又は-N(Ar(ここで、Arは、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)である、前記(8)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(10)一般式[I]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、前記(1)から(9)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(11)一般式[I]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基である、前記(10)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【0017】
(12)前記(1)から(11)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体が、自己組織的に整列してなる膜。
(13)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(12)に記載の膜。
(14)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[I]における置換基-X-R-Zが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(12)又は(13)に記載の膜。
(15)一般式[I]におけるZが、極性官能基である前記(12)から(14)のいずれかに記載の膜。
(16)極性官能基が、水酸基、アミノ基、又はカルボキシル基若しくはそのエステルである、前記(15)に記載の膜。
(17)膜が、多層膜である前記(12)から(16)のいずれかに記載の膜。
(18)膜が、二層膜である前記(17)に記載の膜。
(19)二層膜が、一般式[I]におけるZ基が分子間で向かい合った構造である、前記(18)に記載の膜。
(20)膜が、単分子膜である、前記(12)から(16)のいずれかに記載の膜。
(21)膜が、機能性膜である前記(12)から(20)のいずれかに記載の膜。
(22)膜が、固体基板の表面に形成されたものである、前記(12)から(21)のいずれかに記載の膜。
(23)前記(12)から(22)のいずれかに記載の膜を固体基板の表面に有する構造体。
(24)構造体が、電子デバイスの一部を形成するものである前記(23)に記載の構造体。
(25)電子デバイスが、薄膜トランジスター(TFT)である、前記(24)に記載の構造体。
(26)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(23)に記載の構造体。
【0018】
(27)前記(1)から(11)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、ヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。
(28)さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、前記(27)に記載の方法。
(29)溶媒が、極性溶媒である前記(27)又は(28)に記載の製造方法。
(30)極性溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はテトラヒドロフラン(THF)である前記(29)に記載の製造方法。
(31)一般式[I]におけるZが、極性官能基である前記(27)から(30)のいずれかに記載の製造方法。
(32)極性官能基が、水酸基、アミノ基、又はカルボキシル基若しくはそのエステルである、前記(31)に記載の製造方法。
(33)前記(1)から(11)のいずれかに記載の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を、その融点以上に加熱して蒸発させる工程、及び蒸発した当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を固体基板上に蒸着する工程、を含有してなる一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。
(34)さらに、製造された膜をアニーリングする工程を含有してなる前記(33)に記載の製造方法。
(35)アニーリングが、100℃~融点までの温度で、5~50分間の加熱処理である前記(34)に記載の製造方法。
(36)蒸着が、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われる、前記(33)から(35)のいずれかに記載の製造方法。
(37)一般式[I]におけるXが-O-であり、Zが水素原子、-CH=CH、-C≡CH、又は-CFである、前記(33)から(36)のいずれかに記載の製造方法。
(38)一般式[I]におけるRが、炭素数8~15のアルキレン基である前記(37)に記載の製造方法。
(39)一般式[I]におけるRが、炭素数9~12のアルキレン基である前記(37)又は(38)に記載の製造方法。
(40)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(27)から(39)のいずれかに記載の製造方法。
(41)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[I]における置換基-X-R-Zが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(27)から(40)のいずれかに記載の製造方法。
(42)膜が、多層膜である前記(27)から(41)のいずれかに記載の製造方法。
(43)膜が、二層膜である前記(42)に記載の製造方法。
(44)二層膜が、一般式[I]におけるZ基が分子間で向かい合った構造である、前記(43)に記載の製造方法。
(44)膜が、単分子膜である、前記(27)から(41)のいずれかに記載の製造方法。
(45)膜が、機能性膜である前記(27)から(44)のいずれかに記載の製造方法。
(46)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(27)から(45)のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
(47)前記(1)から(11)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、固体基板の表面に前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。
(48)さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、前記(47)に記載の製造方法。
(49)溶媒が、極性溶媒である前記(47)又は(48)に記載の製造方法。
(50)極性溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はテトラヒドロフラン(THF)である前記(49)に記載の製造方法。
(51)一般式[I]におけるZが、極性官能基である前記(47)から(50)のいずれかに記載の製造方法。
(52)前記(1)から(11)のいずれかに記載の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を、その融点以上に加熱して蒸発させる工程、及び蒸発した当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を固体基板上に蒸着する工程、を含有してなる固体基板の表面に前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。
(53)さらに、製造された膜をアニーリングする工程を含有してなる前記(52)に記載の製造方法。
(54)アニーリングが、100℃~融点までの温度で、5~50分間の加熱処理である前記(53)に記載の製造方法。
(55)蒸着が、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われる、前記(52)から(54)のいずれかに記載の製造方法。
(56)一般式[I]におけるXが-O-であり、Zが水素原子、-CH=CH、-C≡CH、又は-CFである、前記(52)から(55)のいずれかに記載の製造方法。
(57)一般式[I]におけるRが、炭素数8~15のアルキレン基である前記(56)に記載の製造方法。
(58)一般式[I]におけるRが、炭素数9~12のアルキレン基である前記(56)又は(57)に記載の製造方法。
(59)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(47)から(58)のいずれかに記載の製造方法。
(60)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[I]における置換基-X-R-Zが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(47)から(59)のいずれかに記載の製造方法。
(61)膜が、多層膜である前記(47)から(60)のいずれかに記載の製造方法。
(62)膜が、二層膜である前記(61)に記載の製造方法。
(63)二層膜が、一般式[I]におけるZ基が分子間で向かい合った構造である、前記(62)に記載の製造方法。
(64)膜が、単分子膜である、前記(47)から(60)のいずれかに記載の製造方法。
(65)膜が、機能性膜である前記(47)から(64)のいずれかに記載の製造方法。
(66)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(47)から(65)のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
(67)前記の一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体。
(68)一般式[II]における3つのRが、全て同じ基である、前記(67)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(69)一般式[II]における3つのRが、それぞれ異なる基である、前記(67)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(70)一般式[II]におけるXが、-CH-;-O-;-S-;-SO-;-SO-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CO-;-OCO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);又は、-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。);である、前記(67)から(69)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(71)一般式[II]におけるXが、-CH-、-CO-、-O-、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、前記(70)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(72)一般式[II]におけるXが、-CH-、-CO-、又は-O-で表される2価の基である、前記(71)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(73)一般式[II]におけるRが、水素原子、又はアルコキシアルキル基である、前記(67)から(72)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(74)一般式[II]におけるRが、トリアルキルシリル基である、前記(67)から(73)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(75)一般式[II]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、前記(67)から(74)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(76)一般式[II]におけるRが、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基である、前記(75)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(77)一般式[II]におけるRが水素原子で、-X-Rが水酸基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又はトリアルキルシリルオキシ基である、前記(67)から(76)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(78)置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基が、メトキシ基又はメトキシメトキシ基である、前記(77)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(79)トリアルキルシリルオキシ基が、トリエチルシリルオキシ基又はtert-ブチルジメチルシリルオキシ基である、前記(77)に記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
(80)一般式[II]におけるRが水素原子で、-X-Rが水酸基である、前記(67)から(77)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体。
【0021】
(81)前記(67)から(80)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体が、自己組織的に整列してなる膜。
(82)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(81)に記載の膜。
(83)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[II]における置換基-X-Rが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(81)又は(82)に記載の膜。
(84)膜が、多層膜である前記(81)から(83)のいずれかに記載の膜。
(85)膜が、二層膜である前記(84)に記載の膜。
(86)膜が、単分子膜である、前記(81)から(83)のいずれかに記載の膜。
(87)膜が、機能性膜である前記(81)から(86)のいずれかに記載の膜。
(88)膜が、固体基板の表面に形成されたものである、前記(81)から(87)のいずれかに記載の膜。
(89)前記(81)から(88)のいずれかに記載の膜を固体基板の表面に有する構造体。
(90)構造体が、電子デバイスの一部を形成するものである前記(89)に記載の構造体。
(91)電子デバイスが、薄膜トランジスター(TFT)である、前記(90)に記載の構造体。
(92)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(89)に記載の構造体。
【0022】
(93)前記(67)から(80)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、ヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。
(94)さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、前記(93)に記載の方法。
(95)溶媒が、極性溶媒である前記(93)又は(94)に記載の製造方法。
(96)極性溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はテトラヒドロフラン(THF)である前記(95)に記載の製造方法。
(97)前記(67)から(80)のいずれかに記載の一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を、その融点以上に加熱して蒸発させる工程、及び蒸発した当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を基板上に蒸着する工程、を含有してなる一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を製造する方法。
(98)さらに、製造された膜をアニーリングする工程を含有してなる前記(97)に記載の製造方法。
(99)アニーリングが、100℃~融点までの温度で、5~50分間の加熱処理である前記(98)に記載の製造方法。
(100)蒸着が、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われる、前記(97)から(99)のいずれかに記載の製造方法。
(101)一般式[II]におけるXが-O-である、前記(97)から(100)のいずれかに記載の製造方法。
(102)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(93)から(101)のいずれかに記載の製造方法。
(103)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[II]における置換基-X-Rが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(93)から(102)のいずれかに記載の製造方法。
(104)膜が、多層膜である前記(93)から(103)のいずれかに記載の製造方法。
(105)膜が、二層膜である前記(104)に記載の製造方法。
(106)二層膜が、一般式[II]におけるR基が分子間で向かい合った構造である、前記(105)に記載の製造方法。
(107)膜が、単分子膜である、前記(93)から(103)のいずれかに記載の製造方法。
(108)膜が、機能性膜である前記(93)から(107)のいずれかに記載の製造方法。
(109)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(93)から(108)のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
(110)前記(67)から(80)のいずれかに記載のヤヌス型トリプチセン誘導体を溶媒に溶解し、当該溶液を固体基板の表面に塗布するか又は当該溶液に固体基板を浸漬し、次いで乾燥してなる、固体基板の表面に前記の一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。
(111)さらに、乾燥した膜をアニーリングしてなる、前記(110)に記載の製造方法。
(112)溶媒が、極性溶媒である前記(110)又は(111)に記載の製造方法。
(113)極性溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はテトラヒドロフラン(THF)である前記(112)に記載の製造方法。
(114)前記(67)から(80)のいずれかに記載の一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を、その融点以上に加熱して蒸発させる工程、及び蒸発した当該ヤヌス型トリプチセン誘導体を固体基板上に蒸着する工程、を含有してなる固体基板の表面に前記一般式[II]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の膜が形成された構造体を製造する方法。
(115)さらに、製造された膜をアニーリングする工程を含有してなる前記(114)に記載の製造方法。
(116)アニーリングが、100℃~融点までの温度で、5~50分間の加熱処理である前記(115)に記載の製造方法。
(117)蒸着が、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われる、前記(114)から(116)のいずれかに記載の製造方法。
(118)一般式[II]におけるXが-O-である、前記(114)から(117)のいずれかに記載の製造方法。
(119)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、かつトリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した膜である、前記(110)から(118)のいずれかに記載の製造方法。
(120)膜が、トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した部分、及び一般式[II]における置換基-X-Rが集積した部分からなるレイヤー構造を形成している、前記(110)から(119)のいずれかに記載の製造方法。
(121)膜が、多層膜である前記(110)から(120)のいずれかに記載の製造方法。
(122)膜が、二層膜である前記(121)に記載の製造方法。
(123)二層膜が、一般式[II]におけるR基が分子間で向かい合った構造である、前記(122)に記載の製造方法。
(124)膜が、単分子膜である、前記(110)から(120)のいずれかに記載の製造方法。
(125)膜が、機能性膜である前記(110)から(124)のいずれかに記載の製造方法。
(126)固体基板が、酸化ケイ素、ガラス基板、雲母、有機基板、又は生体由来材料である、前記(110)から(125)のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
(127)トリヒドロキシトリプチセン混合物を溶媒に溶解して溶液とし、当該溶液から1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを結晶化させて、これを分離することからなる1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを製造する方法。
(128)トリヒドロキシトリプチセン混合物が、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンと1,8,16-トリヒドロキシトリプチセンの混合物である、前記(127)に記載の方法。
(129)溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)である前記(127)又は(128)に記載の方法。
(130)トリヒドロキシトリプチセン混合物が、トリアルコキシトリプチセン混合物を加水分解して製造されたものである、前記(127)から(129)のいずれかに記載の方法。
(131)トリアルコキシトリプチセン混合物が、1,8-ジアルコキシアントラセンと1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノール又はその誘導体とを縮合剤の存在下で反応させて製造されたものである、前記(130)に記載の方法。
(132)1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノールが、フェノール性水酸基を脱離基としたものである、前記(131)に記載の方法。
(133)脱離基が、トリフラート基である前記(132)に記載の方法。
(134)縮合剤が、フッ化セシウム(CsF)である前記(131)から(133)のいずれかに記載の方法。
(135)アルコキシ基が、メトキシ基である前記(130)から(134)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、自己組織化膜、特に自己組織化単分子膜を形成させるための新規な膜形成材料を提供するものである。
従来の自己組織化膜は、膜形成材料が基板の表面に結合又は吸着して集積されるものであり、基板表面に結合又は吸着される必要があったが、本発明の膜形成材料は、それ自体に集積能を有しており、基板の表面に結合又は吸着するための官能基を有することを必須としていない。また、トリプチセンはそれ自体が剛直な構造をしており、かつトリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した規則的な配列をしていることから、膜を構成する置換基がトリプチセン骨格に対して規則的に配列し、基板表面の化学的及び/又は物理的な状況にかかわらず規則的かつ剛直な膜を形成させることができる。
また、本発明の一般式[I]における基Zの種類を適宜選択することにより、固体基板表面との相互作用を強くすることもできるし、当該相互作用を弱くすることもできる。さらに、基Z同士又は基R同士に親和性があるものを選択することにより、生体膜に類似した二層構造の膜とすることもできる。
このように、本発明の新規な膜形成材料を用いて形成される膜は、従来の自己組織化膜とは異なる極めて特異な特性を有するものとすることができ、薄膜トランジスターなどの電子デバイス用の薄膜のみならず、保護膜や生体膜類似膜などとして極めて応用範囲の広いナノ単位の薄膜を提供することができる。
【0026】
さらに、本発明のトリプチセン誘導体は、剛直なトリプチセン骨格の上下に、一般式[I]における基-X-R-Zの面と一般式[I]におけるRの面の二面を有しており、膜形成能と同時に各種の機能を付加することが可能となる。例えば、一般式[I]におけるRに適当な親水性の基又は疎水性の基を導入することにより、膜の一方の面の親水性又は疎水性を適宜調節することが可能となる。また、一般式[I]におけるRに電子受容体のような基を導入することにより、膜の一方の面に半導体のような特性をもたせることも可能となる。
【0027】
本発明は、新規な膜形成材料のための新規なトリプチセン誘導体、及びそれを製造するための新規な中間体を提供するものである。本発明のトリプチセン誘導体は、剛直なトリプチセン骨格の一方の面のみに一般式[I]における基-X-R-Zを有することを特徴とするものである。さらに、基-X-R-Zは、それぞれの機能を有する3つの部分からなっており、基Rは膜形成に必要な相互作用を得るための長鎖の基であり、好ましくは長鎖の疎水性の基であり形成される膜の特性を特徴付けるものである。基Xは当該R基とトリプチセン骨格を連結するためのリンカー基であり、基Zは鎖状部分の末端基であり、基Zは基板などとの相互作用を必要とする場合のための官能基として機能させることもできる基である。このために、本発明のトリプチセン誘導体は、規則的かつ安定した薄膜を形成することができるだけでなく、薄膜の目的に応じた修飾が極めて容易となり、応用範囲の広い膜形成材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体が、集積した状態を模式的に示したものである。
【図2】図2は、本発明の1,8,13-トリメトキシトリプチセンの結晶構造を模式的に示したものである。メトキシ基の酸素原子が赤色で示されている。
【図3】図3は、本発明の化合物1による単層構造(図3の左側)、並びに化合物18及び20によるバイレイヤー構造(図3の右側)を模式的に示したものである。
【図4】図4は、化合物18によるバイレイヤー構造をより詳細に模式的に示した図である。
【図5】図5は、本発明の化合物1を用いてガラス基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【図6】図6は、本発明の化合物1を用いて雲母基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【図7】図7は、本発明の化合物1を用いて雲母基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の態様をさらに詳細に説明する。
「トリプチセン」自体は、既知の化合物であり、特異な三枚羽状に配列したベンゼン環を有する化合物である。本発明において、トリプチセンの位置番号はCASの命名法にしたがって次に示すとおりとする。

【0030】
【化3】
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【0031】
本発明における「ヤヌス型トリプチセン誘導体」とは、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの異なる面を有しており、それぞれの面がそれぞれ異なる特性を有しているトリプチセン誘導体である。ヤヌス(Janus)とは、頭の間の前後に異なる顔を持つローマ神話に登場する神の名前である。本発明のトリプチセン誘導体は、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの面に異なる面を有していることからローマ神話の神の名前に基づいて「ヤヌス型」と命名している。
したがって、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、トリプチセンの2つの面に異なる特性を有するトリプチセン誘導体であるということができる。本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、膜を形成する面と膜を形成しない面の二面を有していることを特徴とするものである。より詳細には、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、どちらかひとつだけの面、例えば1,8,13位の面だけに膜を形成するための同じ置換基を有していることを特徴とするトリプチセン誘導体である。さらに好ましい態様としては、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体の一般式[I]におけるRの3つの置換基も同じ置換基であり、共通する特性を有する面として機能する態様が挙げられるが、この面の置換基は必ずしも同じである必要は無い。
本発明の一般式[I]におけるXが-O-で、RがC11アルキレン基で、Zが-COOMe基で、Rが全て水素原子である場合の本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体(以下、化合物1という。)を示せば次のとおりとなる。

【0032】
【化4】
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【0033】
本発明における「トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した」とは、トリプチセン骨格の3つのベンゼン環がそれぞれ面角120°を形成しており、それぞれのベンゼン環の間に隣接するトリプチセンのベンゼン環が入れ子状に入ってきている状態であり、このような状態を上から見た場合には図1に模式的に示されるようになる。

【0034】
トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環のそれぞれの間に隣接するトリプチセン骨格のベンゼン環が入り、規則的な集積をしている状態である。前記に例示した化合物1が集積した場合のトリプチセンの橋頭と、隣接するトリプチセンの橋頭までの距離は約0.81nmであった。
本発明における「トリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した」とは、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の一方の面に存在している3つの置換基-X-R-Zが、前記したベンゼン環が入れ子状に集積しているトリプチセン骨格の集積体の同じ方向に伸びており、それらが整列して集積している状態を示す。
前記に例示した化合物1が集積した状態を模式的に示せば、図3の左側に示したようになる。上側のトリプチセンレイヤーは、前記したベンゼン環が入れ子状に集積しているトリプチセン骨格の集積体を示している。そして、当該トリプチセンレイヤーの同じ方向、図3の場合では下側に3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積して、アルキルレイヤー及びエステルレイヤーを形成している。
トリプチセン骨格が集積した場合に、3つの同じ置換基が異なる方向にランダムに整列する場合には、図3に示すような整然とした膜状にはならず、塊状となる。しかし、本発明者らは、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を集積させた場合には、これらの置換基がランダムにはならず、同じ方向に整然と集積し、安定な膜を形成することを初めて見出し、規則的で安定なナノ単位の膜の形成に成功したのである。
図3の右側は、末端のZ基が-COOHの化合物(化合物18)及び-CHNH(化合物20)によるバイレイヤー構造になる場合を模式的に示している。
図4は化合物18によるバイレイヤー構造をより詳細に説明するための図である。

【0035】
本発明における「膜」とは、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体が前記した状態で集積して形成されるものをいう。このようにして集積してできた膜が、一層の場合には単分子膜になり、SAM膜であるということができる。膜厚はアルキレン鎖の炭素数で調節することができ、炭素原子1個当たりで約0.2nmという一般則に沿って決定することができる。
また、このような層が重なり合って多層膜とすることもできる。この場合には、同じ方向で重なり合う場合と、相互に反対方向に向いて重なり合う場合とがある。どちらの状態になるかは、一般式[I]におけるZ基及び/又はR基の種類や、膜形成の条件によることになる。
前記に例示した化合物1をTHFに溶解した溶液(1mg/200mL、約5.3μM)を、ガラス基板上に塗布して乾燥させて形成された膜は、一層構造、二層構造、又は三層構造とすることができる。一層構造の場合の膜厚は約2.46nmであった。二層構造の場合の膜厚は約5.4nmであった。三層構造の場合の膜厚は約7.84nmであった。また、同じ溶液を雲母基板に塗布して乾燥させて形成された膜は、一層構造、又は二層構造とすることができ、一層構造の場合の膜厚は約3.27nmであり、二層構造の場合の膜厚は約6.45nmであった。さらに、同じ溶液を雲母基板に塗布して乾燥させた後、180℃でアニーリングして形成された膜は、一層構造であり、その膜厚は約2.04nmであった。

【0036】
本発明における「機能性膜」とは、前記した本発明の膜に種々の機能を有する官能基が結合された膜をいう。一般に、SAM膜のような膜は、固体基板の表面に結合又は吸着するための部分、安定な膜を形成するためのアルキル鎖などのアルキル鎖間のvan der Waals力を得るための部分、及び分子の末端部分の3つの部分に分けられる。そして、分子の末端部分に電気化学的、光学的、生物学的などの機能を有する官能基を導入することにより、形成される膜に種々の機能を付与できることが知られている。このように、従来の膜と同様に本発明の膜にも分子の末端部分を用いて種々の機能を付与することができる。
前記してきたように、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、「一般式[I]における基-X-R-Zの面」と「一般式[I]におけるRの面」の二面を有しており、このうちのRの面において、従来の膜と同様に種々の機能を有する官能基を導入することが可能である。また、従来の膜では、固体基板の表面に結合又は吸着するための部分を有することが必須であったが、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を用いた膜では、アルキル鎖などのアルキル鎖間のvan der Waals力のみならずトプチセン骨格部分において膜形成能を有しているために、必ずしも固体表面の結合又は吸着するための部分を必須とするものではない。そのために、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の基Z部分に、種々の機能を有する官能基を導入することも可能となる。
したがって、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体の膜を形成しない面、及び/又は本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の基Z部分のいずれかの部分に、各種の機能を有する官能基が導入されて形成された膜を、本発明においては「機能性膜」という。

【0037】
本発明における「固体基板」とは、従来からSAM膜などの固体基板として使用されてきているガラス;石英;サファイヤ;シリコン、ゲルマニウムなどの非金属;酸化ケイ素などの非金属酸化物;金、白金、銀、銅など金属;酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物;GaAs;CdSなど固体基板、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子材料などの有機基板;コラーゲン、澱粉、セルロースなどの動植物由来の材料を原料とする生体由来材料などの固体基板のみならず、固体基板への結合や吸着が困難である固体も基板として使用することができ、前記してきた本発明の膜が安定に存在し得る固体は全て包含することができる。また、固体の形状も、特に制限されることはなく、薄膜状であってもよい。
本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を用いた膜は、アルキル鎖などによるvan der Waals力のみならずトリプチセン骨格部分において膜形成能を有しているために、必ずしも固体基板の表面に結合又は吸着するための部分を必須とするものではない。そのために、固体基板との結合性や吸着能を考慮する必要がなく、固体基板に特に制限はないことになる。しかしながら、形成された膜の位置安定性を確保するために、固体基板に結合及び/又は吸着することができる部分を含むヤヌス型トリプチセン誘導体を選択することが好ましい。

【0038】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」としては、炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは5から30の飽和又は不飽和、鎖状又は環状、直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基であり、これらの飽和炭素原子及び不飽和炭素原子、鎖状炭素原子及び環を形成する炭素原子は、規則的又は不規則的に配置されていてもよい。本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」としては、例えば、炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは5から20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基;炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは2から20の直鎖状又は分岐状のアルケニレン基;炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは2から20の直鎖状又は分岐状のアルキニレン基;炭素数6から30、好ましくは6から20、より好ましくは6から12の単環状、多環状、又は縮合環状のアリール環を含有してなる総炭素数が6から60、好ましくは6から30の2価のアリーレン基(当該アリーレン基は、アリール環とアリール環の間又は末端にアルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基を有していてもよい。);などが挙げられる。アルケニレン基を形成するための炭素-炭素二重結合、アルキニレン基を形成するための炭素-炭素三重結合、又はアリーレン基を形成するためのアリール環は、飽和のアルキレン基の中(末端を含む)又は不飽和の炭素-炭素結合の前後に、規則的又は不規則的に配置されていてもよい。
より具体的には、例えば、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、又はC17の、直鎖状又は分岐状、好ましくは直鎖状のアルキレン基、前記のアルキレン基の中(末端を含む)に1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合が規則的又は不規則的に配置されたアルキレン基、-(-CH=CH-)n-(ここで、nは3、4、5、6、7、又は8の整数を表す。)の不飽和アルキレン基、前記のアルキレン基の中(末端を含む)に1個、2個、又は3個の炭素-炭素三重結合が規則的又は不規則的に配置されたアルキレン基、-(-Ph-CH=CH-)m-Ph-(ここで、Phは、p-フェニレン基を示し、mは1、2、3、又は4の整数を表す。)で表されるアリーレン基などが挙げられる。

【0039】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」は、置換基を有してもよく、その「置換基」としては、ハロゲン原子;水酸基;炭素数1~5のアルキル基;炭素数1~5のアルキコキシ基;1個から5個、好ましくは1個から3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~5のアルキル基;1個から5個、好ましくは1個から3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~5のアルコキシ基;アミノ基;及び1個又は2個の炭素数1~5のアルキル基で置換されたアミノ基からなる群から選ばれる置換基が挙げられる。

【0040】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」は、「当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく」とは、-C-C-C-の炭素原子の連鎖の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が他の原子で置換され、例えば、-C-O-C-、-C-S-C-、-C-SiH-C-(式中のケイ素原子に結合する水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい。)、-C-NR-C-などのような連鎖になっていてもよいことを表している。このような他の原子での置換は、置換の順番が規則的であってもよいし、不規則的であってもよい。

【0041】
本発明における「炭素数1~10のアルキル基」としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、などが挙げられる。
本発明における「置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基」としては、炭素数1~5、好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、などが挙げられる。

【0042】
本発明における「炭素数2~10のアルケニル基」としては、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する基であって、総炭素数2~10、好ましくは総炭素数2~8、より好ましくは総炭素数2~6の直鎖状又は分枝状のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基の例としては、ビニル基、1-メチル-ビニル基、2-メチル-ビニル基、n-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-ビニル基、1-メチル-プロペニル基、2-メチル-プロペニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基などが挙げられる。

【0043】
本発明における「炭素数2~10のアルキニル基」としては、1個以上の炭素-炭素三重結合を有する基であって、総炭素数2~10、好ましくは総炭素数2~8、より好ましくは総炭素数2~6の直鎖状又は分枝状のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基の例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基などが挙げられる。

【0044】
本発明における「炭素数6~30のアリール基」としては、炭素数6~30、好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。このような炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられる。

【0045】
本発明における「窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員のヘテロアリール基」としては、1個~5個、好ましくは1~3個又は1~2個の窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を含有する5~8員、好ましくは5~6員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピロリル基、2-ピリジル基、2-インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。

【0046】
本発明における「炭素数1~10のアルコキシ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基に酸素原子結合した基が挙げられる。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基などが挙げられる。

【0047】
本発明における「炭素数1~10のアルキルチオ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基に硫黄原子結合した基が挙げられる。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基などが挙げられる。これらのアルキルチオ基における硫黄原子は、スルフィニル(-SO-)又はスルホニル(-SO-)となっていてもよい。

【0048】
本発明における「炭素数1~10のアルキルカルボニル基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にカルボニル基(-CO-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、などが挙げられる。

【0049】
本発明における「炭素数1~10のアルコキシカルボニル基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にオキシカルボニル基(-O-CO-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、などが挙げられる。

【0050】
本発明における「炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にカルボニルオキシ基(-CO-O-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、などが挙げられる。

【0051】
本発明における各種の基における「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアミノ基、アルキルシリル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、ヘテロアリール基、炭素数1~10のアルキルカルボニル基、炭素数3~16の脂環式炭化水素-カルボニル基、炭素数6~30のアリールカルボニル基、炭素数7~30のアリールアルキルカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7~30のアリールカルボニルオキシ基、炭素数7~30のアリールアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2~21のアルコキシカルボニル基、炭素数7~37の炭素環式芳香族-オキシカルボニル基、炭素数6~30のアリールオキシカルボニル基、炭素数7~30のアリールアルキルオキシカルボニル基、などが挙げられる。

【0052】
本発明における「モノアルキル置換アミノ基」としては、アミノ基(-NH)における1個の水素原子が、前記した炭素数1から10のアルキル基で置換されているアミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などが挙げられる。
本発明における「ジアルキル置換アミノ基」としては、アミノ基(-NH)における2個の水素原子が、前記した炭素数1から10のアルキル基でそれぞれ置換されているアミノ基であり、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基などが挙げられる。

【0053】
本発明における「ホルミル基」とは、アルデヒド基(-CHO)である。
本発明における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
本発明における「トリアルキルシリル基」としては、前記した炭素数1~5のアルキル基が3個置換したシリル基であって、それぞれのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。このようなトリアルキルシリル基としては、トリエチルシリル基、エチルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジエチルシリル基などが挙げられる。

【0054】
本発明の一般式[I]及び[II]の2価のリンカー基Xにおける「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基」とは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の水素原子以外の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなる基であり、トリプチセン骨格と2価の炭化水素基R基を連結する基であり、その構造は特に制限されるものではない。好ましい基Xとしては、例えば、-O-;-S-;-SO-;-SO-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH-;-CH-CH-;-CH=CH-;-C-(フェニレン基);-CS-(2価のチオフェン);-CO-;-OCO-;-COO-;-OCOO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。);-NHCONH-、-CO-NR63-NR63-(ここで、R63は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表す。);-SiR10-O-(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-O-SiR10-O-(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-SiR10-NH-(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-NH-SiR10-O-(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。)などが挙げられる。
一般式[II]における好ましいX基としては、-O-;-S-;-SO-;-SO-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH-;-CH=CH-;-CO-;-OCO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。)などが挙げられ、特に好ましいXとしては、-O-;-NR-(ここで、Rは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH-;-CO-などが挙げられる。

【0055】
本発明の一般式[I]の末端基Zにおける「固体基板の表面に結合又は吸着し得る基」とは、ガラス、金属、金属酸化物などの基板表面に結合又は吸着することができる官能基であり、例えば、ガラス基板に対するトリメトキシシリル基やトリクロロシリル基、金などに対するメルカプト基やジスルフィド基などの硫黄原子を含有する基などが挙げられる。

【0056】
本発明の一般式[I]の末端基Zにおける「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基」とは、本発明の一般式[I]における2価の炭化水素基R基の末端となる1価の基であり、1~15個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団であれば特に制限はない。好ましい基Zとしては、例えば、炭素数1から10のアルキル基;炭素数2から15、好ましくは2から10、より好ましくは2から6の直鎖状又は分岐状のアルケニル基;炭素数2から15、好ましくは2から10、より好ましくは2から6の直鎖状又は分岐状のアルキニル基;炭素数6から15、好ましくは6から12、より好ましくは6から10の単環状、多環状、又は縮合環状のアリール環を含有してなる総炭素数が6から15、好ましくは6から12の2価のアリール基(当該アリール基は、アリール環とアリール環の間又は末端にアルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基を有していてもよい。);炭素数1から10のアルキル基の任意の位置が1~7個のハロゲン原子で置換された炭素数1から10のハロアルキル基;-OR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SOR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SO11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-N(R12(ここで、R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-OCO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-COO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-OCOO-R14(ここで、R14は、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CON(R13(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-NR13CO-R13(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-N(R13)CON(R13(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CO-NR13-N(R13(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-SiR10-O-R13(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-O-SiR10-O-R13(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-SiR10-N(R13(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-NH-SiR10-O-R13(ここで、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-P(OR15(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-P(=O)(OR15(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);などが挙げられる。

【0057】
本発明の一般式[I]の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」とは、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの異なる面を有しており、それぞれの面がそれぞれ異なる特性を有しているトリプチセン誘導体である。非特許文献3には、ベンゾキノンを用いるディールスアルダー反応(Diels-Alder reaction)をキー反応としてトリプチセン誘導体を製造しているが、この方法では、13位及び16位に同じ置換基(-OH)が同時に導入され、本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」を製造することは困難である。
本発明者らは、1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノールのフェノール性水酸基をトリフラート基などで脱離基とした化合物と、1,8-ジアルコキシアントラセンを縮合剤の存在下で縮合させることにより3置換トリプチセン誘導体を製造することに成功した。この反応の具体例を後述する実施例1に示す。この方法により、3置換トリプチセン誘導体を製造することができたが、製造された3置換トリプチセン誘導体は、1,8,13-3置換トリプチセン誘導体(ヤヌス型)と、1,8,16-3置換トリプチセン誘導体(非ヤヌス型)の混合物であり、これを分離することが困難であったが、これを再結晶して精製することにより、1,8,13-トリメトキシトリプチセンを分離精製することに成功した。後述する実施例1を参照されたい。

【0058】
1,8,13-トリメトキシトリプチセンは、トリプチセン部位の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積したユニークなパッキング構造をした結晶として分離精製することができた。1,8,13-トリメトキシトリプチセンの結晶構造を図2に示す。図2では、メトキシ基の酸素原子が赤色で示されている。この結晶構造は、メトキシ基を紙面奥側に向けたトリプチセン分子の層と、紙面手前側に向けた分子の層で、ダイポールを相殺した集積構造となっている。意外にも、無置換のトリプチセンではこのような入れ子状の結晶構造は見られない。本発明のヤヌス型分子の方向性を揃えた置換基構造によって、特徴的な集積構造が発現していることが、この結晶構造においても示されている。
結晶形は斜方晶系(Orthorhombic crystal system)であり、この結晶形のa、b、及びcの値は、それぞれオングストローム単位で、15.608、13.388、8.041であった。また、Vの値は1680立方オングストロームであった。
このようにして、本発明者らはトリプチセン骨格の一つの方向に同じ置換基を有する「ヤヌス型トリプチセン誘導体」を製造することに初めて成功した。

【0059】
このようにして分離精製された1,8,13-トリメトキシトリプチセンは通常の方法により加水分解して1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンとすることができる。例えば、ジクロロメタンなどの溶媒中でハロゲン化ホウ素の存在下で加水分解することができる。
そして、1,8,13-トリメトキシトリプチセン、及びこれを加水分解して得られる1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンをキー中間体として、公知の各種の合成手段により、本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」及びその中間体化合物を製造することができる。
例えば、アルキル化剤を用いてアルキル化することにより、トリアルコキシ誘導体とすることができる。また、各種のカルボン酸やスルホン酸によりエステル誘導体とすることができる。さらに、水酸基をトリフラート(Tf:トリフルオロメタンスルホネート)とした後、ジシアノ亜鉛によりシアノ化することにより、1,8,13-トリシアノトリプチセンとすることができる。当該シアノ基は通常の方法により、加水分解してホルミル基又はカルボキシル基とすることができる。また、当該シアノ基を通常の方法により還元することにより、アミノメチル基とすることができ、当該アミノ基は通常の方法により各種の置換基で置換することができる。
また、得られたホルミル基はカルボニル化合物としての各種の反応原料として使用することができる。例えば、当該ホルミル基をウィッティッヒ試薬(Wittig reagent)と反応させて-CH=C-結合とすることができる。これを通常の方法により脱水素することにより炭素-炭素三重結合とすることができる。

【0060】
さらに、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンをNBS(N-ブロモスクシンイミド)を用いてブロム化することにより、4,5,16-トリブロモ-1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを製造することができる。この化合物は、トリプチセン分子内の一つの対称面に対して、その一方に3個のヒドロキシ基、他方に3個のブロモ基という異なる置換基を有する化合物であり、一つの対称面に対して異なる機能団を有する本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」のキー中間体となる化合物である。
このブロモ体は、ホウ素化合物やケイ素化合物を用いた各種のカップリング反応により、フェニル基やチエニル基などの各種のアリール基やヘテロアリール基に直接変換することができる。例えば、ブロモ基が置換している側に電子受容体となる機能団を導入しようとする場合には、このようなカップリング反応により直接又は段階的に当該機能団を導入することができる。

【0061】
例えば、光・電子機能性ユニットとして、電子ドナー性の蛍光色素であるトリフェニルアミンユニットを、フェニレンビニレン部位を介してトリプチセンに導入した。具体的にはDMF中、BuOKを塩基とし、ホルミル基を有するヤヌス型トリプチセン2とホスホネート3を混合することで、色素部位が3基導入された化合物4を収率11%で得た。この化学反応式を次に示す。

【0062】
【化5】
JP2014111980A1_000007t.gif

【0063】
化合物4はジクロロメタン中で385nmを極大とする吸収帯を示し、これを励起波長とした蛍光スペクトル測定を行ったところ、486nmに強い発光が観測された。化合物4では色素を高密度に集積化しているにも関わらず、色素部位の吸収・蛍光特性が損なわれていないことが示された。このように、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体のひとつの面に、光学的特性や電子的特性を有する機能団を通常の合成手段により導入することができる。

【0064】
本発明の一般式[I]で表される化合物は、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの面に、それぞれ異なる置換基を有していることを特徴とするものであり、そのうちの少なくとも1つの面に3つの同じ置換基を有していることを特徴とするものである。そして、そのような特異的なトリプチセン誘導体がトリプチセン部位の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積したユニークなパッキング構造を形成し、特異な膜を形成することができることを特徴とするものである。さらに、このような特異的な構造をしているトリプチセン誘導体を、1,8,13-トリメトキシトリプチセンを結晶化することができることにより分離精製することに成功し、それをキー中間体として製造することができることを見出したことを特徴とするものである。
本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を製造する方法は、本発明者らが初めて分離精製に成功した1,8,13-トリメトキシトリプチセンをキー中間体とすることが大きな特徴であり、それにより各種の本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を通常の合成手段を組み合わせることにより製造することができることは、当業者には容易に理解されることである。

【0065】
本発明の一般式[I]で表される化合物を製造する場合には、公知の方法で次に示す一般式[III]、
-R-Z [III]
(式中、R及びZは前記した基を示し、Yはハロゲンなどの脱離基を示す。)
の化合物をまず製造し、これと前記してきた一般式[II]で表されるトリプチセン誘導体を反応させることにより製造することができる。この反応は置換反応であり、公知の各種の置換反応に準じて行うことができる。
また、置換基Zが反応性である場合には、Zを各種の保護基で保護して反応を行うこともできるし、Zとしてその前駆体、例えば、カルボキシル基を導入しようとする場合には、Zとしてシアノ基の化合物を用い、得られた生成物を加水分解してカルボキシル基とすることができる。Zがエステル基の場合には、エステルのままで反応させてもよく、また、カルボキシル基とした後にエステル化してもよい。なお、保護基及び脱保護については当業者には周知であるが、必要であれば、T.W. Green著Protective Group in Organic Synthesis (John Wiley and Sons, 1991)を参照されたい。
また、トリプチセンの置換基が、ホルミル基のようなカルボニル基を有する化合物である場合には、前記したウィッティッヒ試薬(Wittig reagent)を用いることにより、基Xが-C=C-である一般式[I]の化合物とすることができる。

【0066】
例えば、ウィリアムソン(Williamson)合成反応により、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを原料として、12-ブロモドデカン酸メチル(ブロモの代わりにクロロ、ヨード、あるいはトシル酸エステルなどのシュードハライドでも可)と塩基存在下で反応させることにより、前記したエステル基を末端基として有する化合物1を製造することができる。

【0067】
これらの反応において必要に応じて溶媒を使用することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THFなどのエーテル系溶媒、DMF、DMA、DMSOなどの非プロトン性極性溶媒、エタノールなどのアルコール系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて各種の試薬の存在下に反応を行うこともできる。このような試薬としては塩基が好ましく、塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。塩基としてはトリアルキルアミンなどの有機塩基を使用することもできるが、無機塩基の方が好ましい。
反応温度としては、反応が適切に進行する範囲であれば任意に設定することができるが、通常は常温から溶媒の沸点までの範囲が好ましい。反応混合物から目的の生成物を単離し精製する方法としては、通常の単離・精製手段、例えば、溶媒抽出、再結晶、再沈殿、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法で行うことができる。また、生成物に光学活性がある場合には、必要に応じて光学分割することもできる。

【0068】
本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体は、トリプチセンの三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、このような特徴的な集積化挙動を利用することで、次元性が制御された二次元状分子集合体が合理的に構築でき、膜を形成させることができる。本発明の膜を製造する方法としては、スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法、超音波法、気相法、蒸着法などを任意に選定することができるが、本発明の化合物は有機溶媒に溶解させることができるので、スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法などが好ましい。
スピンコート法は、高速で回転する基板の上に溶液を滴下して均一な膜厚の薄膜を成膜させる方法である。浸漬法は、溶液に基板を浸漬させて成膜する方法である。キャスト法(ドロップキャスト法を含む)は溶液を基板の上に滴下した後、溶媒を乾燥させて成膜する方法であるが、その膜厚は必ずしも均一とはならない。インクジェット法は、任意の位置に微少な溶液を滴下して成膜させる方法である。また、本発明の膜を製造する方法としては、これらの公知の成膜方法により成膜することができるが、本発明の膜は特異的な集積化挙動をすることから、液/液界面による成膜法でも行うことができる。例えば、本発明の化合物を水に溶けない有機溶媒に溶解させた溶液を、水と接触させて水/有機溶媒の界面を形成させ、当該界面において膜を製造することもできる。
また、本発明の一般式[I]で表される化合物の中のいくつかの化合物は蒸着法、好ましくは真空蒸着法により膜を形成することができる。特に、融点が比較的低く、分解温度が高い化合物が好ましい。本発明における蒸着法は、通常の蒸着法により行うことができる。例えば、化合物を融点以上に加熱して蒸発させ、又は化合物が昇華性である場合は、昇華させて、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われるのが好ましい。基板の温度は、室温付近でもよいが、好ましくは50℃~100℃程度が挙げられる。蒸着法による膜の形成に適した本発明の化合物としては、一般式[I]における、Xが-CH-で、Zが水素原子で、Rが炭素数8~15のアルキレン基、好ましくは炭素数9~12のアルキレン基である化合物が挙げられる。

【0069】
本発明の膜を固体基板上に製造する場合には、前記してきた本発明の固体基板をもちいることができる。さらに、これらの固体基板に対して紫外線(UV)、オゾン等による洗浄処理が施された固体基板;これらの固体基板上に、配線、電極等の接続端子や、絶縁層、導電層等の他の層が積層された積層体などを固体基板とすることもできる。本発明において用いられる固体基板としては、これらの中でも、ガラス基板または有機基板が好ましく、特に洗浄処理が施されたものが好ましい。
本発明の膜を固体基板上に製造する方法としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を有機溶媒に溶解し溶液とする工程、次いで、当該溶液を塗布若しくはスピンコート、又は当該溶液に固体基板を浸漬する工程、及び前記固体基板上の溶液を乾燥する工程を含有する方法が挙げられる。
また、本発明の膜を界面で製造する方法としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を水などの第二の溶媒と交わらない有機溶媒に溶解し溶液とする工程、次いで、当該溶液に水などの第二の溶媒を加え界面を形成し、当該界面に膜を形成させる工程、製造された膜を分離する工程、及び分離された膜を乾燥する工程を含有する方法が挙げられる。
このような方法で製造された本発明の膜の膜厚としては、特に制限はないが、単分子膜とする場合の平均厚さは、0.1nmから5nm、好ましくは1nmから3nmとするのが好ましい。また、多層膜とする場合の、平均厚さは、2nmから50nm以下、好ましくは3nmから30nmとするのが好ましい。さらに、液/液界面により製造される場合には、さらに膜厚の大きな膜を製造することができ、膜厚を30nmから1000nm、好ましくは50nmから500nmとすることもできる。

【0070】
膜を製造する際の有機溶媒としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を溶解することができるものであれば特に制限はなく、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等のグリコールエステル;前記の多価アルコール類又は前記のエステル類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノエーテル又はモノエーテルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;ジオキサンやTHFなどの環式エーテル類;ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド類;ジメチルスルホキサイド(DMSO)などの硫黄含有溶媒;などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
好ましい有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド類、ジオキサンやTHFなどの環式エーテル類、ジメチルスルホキサイド(DMSO)などの硫黄含有溶媒などが挙げられる。特に好ましい溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)などの極性溶媒が挙げられる。

【0071】
有機溶媒の使用量は、特に制限はなく、製造する膜厚や製造条件を考慮して適宜設定すればよい。好ましい濃度としては、有機溶媒100mL中に本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体が、0.01mgから1000mg、より好ましくは0.1mgから100mg、さらに好ましくは0.1mgから10mgとすることができる。
本発明の膜を製造する際の温度としては、通常は室温で行うことができるが、溶媒の種類や製造条件によっては、加温下又は冷却下でも行うことができる。
本発明の膜の製造における乾燥は、自然乾燥で十分であるが、乾燥した空気や窒素等を吹き付けるなどの方法や、必要により加温して乾燥させることもできる。
また、膜の形成後、メタノール、クロロホルム等の有機溶剤や精製水などを用いて製造された膜の洗浄を行ってもよいが、特に洗浄する必要はない。
本発明の膜を界面で製造する場合には、界面で製造された膜をガラス基板などの基板に転写して分離することができる。分離された膜は、前記した方法で乾燥させることができる。

【0072】
このようにして製造された本発明の膜を、さらにアニーリング処理することもできる。スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法などで製造された膜については、アニーリング処理は、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の融点とほぼ同じ温度、好ましくは約100℃から230℃、より好ましくは約130℃から230℃、さらに好ましくは150℃から200℃程度に加熱することにより行われる。
また、蒸着法で製造された膜については、約100℃から200℃、好ましくは約110℃から150℃程度に加熱することにより行われる。
アニーリング処理は、通常は大気下で行うことができるが、窒素気流下などの不活性気流下であってもよい。アニーリングの時間は特に制限はないが、通常は5分から50分、好ましくは10分から30分程度で十分である。
アニーリング処理による機構の詳細は不明であるが、アニーリングにより一度形成された膜が再構築され、より均一な膜厚となると考えられる。

【0073】
本発明の膜は、一般式[I]における末端基Zの種類により、単層構造とすることや末端基Zが分子間で向かい合ったバイレイヤー構造とすることができる。また、製造方法によっても膜の厚さを調整することができ、電子材料、光学材料、表面処理材料などとして幅広い用途に適した薄膜や、固体基板と一体化した構造体として幅広い用途に適した構造体を提供することができる。

【0074】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
トリメトキシトリプチセン混合物の製造
次に示す反応式に沿ってトリメトキシトリプチセンを製造した。
【実施例1】
【0076】
【化6】
JP2014111980A1_000008t.gif
【実施例1】
【0077】
1,8-ジメトキシアントラセン(22.3g、93.7mmol)とフッ化セシウム(CsF)(85.3mg、561.0mmol)にアセトニトリル(750mL)を加え懸濁液とし、80℃に加熱した。この懸濁液に、2-メトキシ-6-トリメチルシリルオキシ-トリフルオロメチルスルホネート(61.5g、188mmol)を滴下し、5時間加熱還流した。得られた反応混合物から、アセトニトリルを減圧留去し、残渣を水、次いでヘキサン/クロロホルム混合溶媒(1/1、v/v)で洗浄して目的のトリメトキシトリプチセンを得た(収量22.2g、収率64.5%)。得られたトリメトキシトリプチセンは、NMRの測定によれば、1,8,13-トリメトキシトリプチセン(化合物5a)と1,8,16-トリメトキシトリプチセン(化合物5b)の2:1の混合物であった。
【実施例1】
【0078】
化合物5a:
H-NMR(400MHz、CDCl): δ (ppm)
7.01 (d, J = 0.7 Hz, 3H), 6.90 (dd, J = 7.3, 1.0 Hz, 3H), 6.80 (s, 1H), 6.58 (dd, J = 8.2, 0.7 Hz, 3H), 5.38 (s, 1H), 3.86 (s, 9H).
化合物5b:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.09-7.07 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.06-7.04 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.93-6.89 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.93-6.89 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 6.58-6.56 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 6.56-6.54 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.35 (s, 1H), 5.87 (s, 1H), 3.84 (s, 6H), 3.83 (s, 3H).
【実施例2】
【0079】
1,8,13-トリメトキシトリプチセン(化合物5a)単結晶の製造
【実施例2】
【0080】
【化7】
JP2014111980A1_000009t.gif
【実施例2】
【0081】
実施例1で製造されたトリメトキシトリプチセン混合物(10.0mg)を、クロロホルムに溶解させ、静置することにより結晶化させて、標記の1,8,13-トリメトキシトリプチセン(2.0mg)を得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析を行った結果、この結晶は、斜方晶系(Orthorhombic crystal system)であり、単位格子のa、b、及びcの値は、それぞれオングストローム単位で、15.608、13.388、8.041であった。また、Vの値は1680立方オングストロームであった。
得られた結晶の構造を図2に模式図として示す。
【実施例3】
【0082】
1,8,13-トリヒドロキシトリプチセン(化合物6)の製造
【実施例3】
【0083】
【化8】
JP2014111980A1_000010t.gif
【実施例3】
【0084】
実施例1で製造されたトリメトキシトリプチセン混合物(22.0g、62.9mmol)にジクロロメタン320mLを加え懸濁溶液とし、これにトリブロムホウ素(BBr)(18.2mL、192mmol)を加え、0℃で4時間攪拌した。反応混合物に水200mLを加え、析出した粉末をろ取し、減圧下乾燥させた。得られた粉末をジメチルホルムアミド80mLに溶解させ、5℃で静置すると、無色透明結晶が析出した。この結晶をろ取し、クロロホルムで洗浄することにより、標記の1,8,13-トリヒドロキシトリプチセン(化合物6)を選択的に得た(収量9.14g、収率71%)。
【実施例3】
【0085】
化合物6:
H-NMR(400MHz、アセトン-d):δ (ppm)
8.35 (br, s, 3H), 6.94-6.93 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.86 (s, 1H), 6.79-6.75 (dd, J = 7.2, 0.9 Hz, 3H), 6.56-6.54 (dd, J = 8.1, 0.9 Hz, 3H), 5.44 (s, 1H).
【実施例4】
【0086】
1,8,13-トリヒドロキシ-4,5,16-トリブロム-トリプチセン(化合物7)の製造
【実施例4】
【0087】
【化9】
JP2014111980A1_000011t.gif
【実施例4】
【0088】
実施例3で得られた化合物6(1.10g、3.64mmol)とパラトルエンスルホン酸一水和物(0.692g、3.64mmol)をDMF72mLに溶解させ、氷冷下で、これにN-ブロモスクシンイミド(1.94mg、10.9mmol)を加え、氷冷下で4時間攪拌した。反応混合物に対して10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を200mL加え、ジエチルエーテルにより抽出操作を行った。得られたジエチルエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧下ジエチルエーテルを留去した。残渣を、クロロホルム/メタノール混合溶媒(9/1、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の1,8,13-トリヒドロキシ-4,5,16-トリブロム-トリプチセン(化合物7)を得た(収量1.20g、収率61%)。
【実施例4】
【0089】
化合物7:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.08-7.06 (d, J = 8.7 Hz, 3H), 6.96 (s, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.63-6.61 (d, J = 8.7 Hz, 3H).
【実施例5】
【0090】
1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリブロモトリプチセン(化合物8)の製造
【実施例5】
【0091】
【化10】
JP2014111980A1_000012t.gif
【実施例5】
【0092】
(式中、MOMはメトキシメチル基を表す。以下同じ。)
実施例4で製造された化合物7(737mg、1.37mmol)のアセトン100mLの溶液を入れ、これにメトキシメチルクロライド(662mg、8.22mmol)及び炭酸カリウム(1.14mg、8.22mmol)を加えた。反応混合物を加熱還流下、10時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム100mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄して、標記の1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリブロモトリプチセン(化合物8)を得た(収量716mg、収率78%)。
【実施例5】
【0093】
化合物8:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.15 (d, J = 8.8 Hz, 3H), 6.86 (s, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.72 (d, J = 8.8 Hz, 3H), 5.22 (s, 6H), 3.47 (s, 9H).
【実施例6】
【0094】
1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリホルミルトリプチセン(化合物9)の製造
【実施例6】
【0095】
【化11】
JP2014111980A1_000013t.gif
【実施例6】
【0096】
実施例5で製造した化合物8(500mg、0.745mmol)をTHF40mLに溶解し、これに-78℃でn-BuLiペンタン溶液(濃度1.54M、3.2mL)を少しずつ滴下した。滴下終了後、さらにこの温度で30分攪拌した後、これにDMF10mLを滴下した。反応温度を室温に戻し、反応混合物にジエチルエーテル100mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣を、クロロホルム/メタノール混合溶媒(99/1、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリホルミルトリプチセン(化合物9)を得た(収量243mg、収率63%)。
【実施例6】
【0097】
化合物9:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
10.42 (s, 3H), 9.31 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 7.01 (s, 1H), 6.97 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 5.35 (s, 6H), 3.50 (s, 9H).
【実施例7】
【0098】
1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリブロモトリプチセン(化合物10)の製造
【実施例7】
【0099】
【化12】
JP2014111980A1_000014t.gif
【実施例7】
【0100】
実施例4で製造された化合物7(4.65g、8.63mmol)、イミダゾール(2.38g、34.9mmol)、tert-ブチルジメチルクロロシラン(5.26g、34.9mmol)のジメチルホルムアミド50mLの溶液を、60℃で12時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル200mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣をヘキサン100mLから再結晶することで、標記の1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリブロモトリプチセン(化合物10)を得た(収量4.20g、収率55%)。
【実施例7】
【0101】
化合物10:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.04 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 6.83 (s, 1H), 6.55 (s, 1H), 6.46 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 0.97 (s, 27H), 0.25 (s, 18H).
【実施例8】
【0102】
1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリホルミルトリプチセン(化合物11)の製造
【実施例8】
【0103】
【化13】
JP2014111980A1_000015t.gif
【実施例8】
【0104】
実施例7で製造された化合物10(4.20g、4.76mmol)をジエチルエーテル50mLに溶解し、これに-78℃でn-BuLiペンタン溶液(濃度1.54M、21.6mL)を少しずつ滴下した。滴下終了後、さらにこの温度で30分攪拌した後、これにDMF37mLを滴下した。反応温度を室温に戻し、反応混合物にジエチルエーテル100mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣を、クロロホルム/メタノール混合溶媒(98/2、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリホルミルトリプチセン(化合物11)を得た(収量2.88g、収率83%)。
【実施例8】
【0105】
化合物11:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
10.4 (s, 3H), 9.28 (s, 1H), 7.44 (d, J = 8.6 Hz, 3H), 6.75 (s, 1H), 6.71 (d, J = 8.6 Hz, 3H), 0.99 (s, 27H), 0.34 (s, 18H).
【実施例9】
【0106】
1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリス(2,2-ジブロモビニル)-トリプチセン(化合物12)の製造
【実施例9】
【0107】
【化14】
JP2014111980A1_000016t.gif
【実施例9】
【0108】
実施例8で製造した化合物11(2.88g、3.95mmol)および四臭化炭素(CBr)(5.90g、17.8mmol)をジクロロメタン(DCM)15mLに溶解し、氷冷下で、トリフェニルホスフィン(PPh)(9.31g、35.5mmol)のDCM溶液(25mL)をゆっくり滴下した。反応混合物を氷冷下で3時間攪拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を減圧留去し乾燥させた。残渣を、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒(1/4、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリス(2,2-ジブロモビニル)-トリプチセン(化合物12)を得た(収量2.97g、収率63%)。
【実施例9】
【0109】
化合物12:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.26 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8.7 Hz, 3H), 6.60 (s, 1H), 6.56 (d, J = 8.7 Hz, 3H), 5.70 (s, 1H), 1.01 (s, 27H), 0.30 (s, 18H).
【実施例10】
【0110】
1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリエチニルトリプチセン(化合物13)の製造
【実施例10】
【0111】
【化15】
JP2014111980A1_000017t.gif
【実施例10】
【0112】
実施例9で製造した化合物12(2.97g、2.48mmol)をTHF60mLに溶解し、これに-78℃でn-BuLiペンタン溶液(濃度1.64M、15.1mL)を少しずつ滴下した。滴下終了後、さらにこの温度で30分攪拌した後、室温に戻し、反応混合物に水を50mL加えた。反応混合物にジエチルエーテル100mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣を、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒(1/4、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の1,8,13-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-4,5,16-トリエチニルトリプチセン(化合物13)を得た(収量1.72g、収率97%)。
【実施例10】
【0113】
化合物13:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.10 (s, 1H), 7.02 (d, J = 8.7 Hz, 3H), 6.54 (s, 1H), 6.50 (d, J = 8.7 Hz, 3H), 3.26 (s, 3H), 0.97 (s, 27H), 0.25 (s, 18H).
【実施例11】
【0114】
化合物4の製造
次に示す反応式に沿って化合物4を製造した。
【実施例11】
【0115】
【化16】
JP2014111980A1_000018t.gif
【実施例11】
【0116】
実施例6で製造した1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリホルミルトリプチセン(化合物9)[前記の反応式における化合物2](111mg、0.214mmol)に前記の反応式の化合物3(960mg、1.93mmol)(ホスホン酸エステル化合物)及びジメチルホルムアミド20mLを加えた。反応混合物に、カリウムtert-ブトキシド(219mg、1.93mmol)を撹拌しながら少しずつ加えた。反応混合物を120℃に加熱し24時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム100mLおよびヘキサン30mLを加え、水洗後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去した。残渣を、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒(3/1、v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の化合物4を得た(収量36mg、収率11%)。
【実施例11】
【0117】
化合物4:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.57 (d, J = 16.1Hz, 3H), 7.30-7.22 (m, 20H), 7.17-7.11 (m, 16H), 7.03-6.91 (m, 27H), 6.85-6.83 (m, 8H), 5.30 (s, 6H), 3.54 (s, 9H).
【実施例12】
【0118】
1,8,13-トリ(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)トリプチセン(化合物14)の製造
【実施例12】
【0119】
【化17】
JP2014111980A1_000019t.gif
【実施例12】
【0120】
実施例3で製造した化合物6(300mg、0.992mmol)を、ピリジン0.80mL及びジクロロエタン15mLに溶解し、これにトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)(1.68g、5.95mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。反応混合物を分液操作により水洗し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧留去により乾燥した。残渣をヘキサン30mLに溶解させ、5℃で静置して、標記の1,8,13-トリ(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)トリプチセン(化合物14)を無色透明結晶として得た(収量575mg、収率83%)。
【実施例12】
【0121】
化合物14:
H-NMR(400MHz、アセトン-d):δ (ppm)
7.77 (d, J = 7.4 Hz, 3H), 7.39 (t, J = 8.1 Hz, 3H), 7.27 (d, J = 8.6 Hz, 3H), 6.58 (s, 1H), 6.31 (s, 1H).
【実施例13】
【0122】
1,8,13-トリシアノトリプチセン(化合物15)の製造
【実施例13】
【0123】
【化18】
JP2014111980A1_000020t.gif
【実施例13】
【0124】
実施例12で製造した化合物14(200mg、0.29mmol)を、DMF3.0mLに溶解し、これに1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(ddpf)(100mg、0.18mmol)、dbaパラジウム(Pddba)(165mg、0.18mmol)を加え、90℃で1時間攪拌した後、これにシアン化亜鉛(ZnCN)(336mg、2.86mmol)を加え、90℃で12時間反応させた。反応混合物に対して水5.0mLおよび26%アンモニア水溶液3.0mLを加え、析出した沈殿物をろ取し、さらに26%アンモニア水溶液3.0mLおよび水10.0mLで洗浄し、減圧下乾燥した。残渣をアセトンでソックスレー抽出し、アセトンを留去することで、標記の1,8,13-トリシアノトリプチセン(化合物15)を得た(収量85.8mg、収率91%)。
【実施例13】
【0125】
化合物15:
H-NMR(400MHz、アセトン-d):δ (ppm)
7.95 (d, J = 7.3 Hz, 3H), 7.60 (d, J = 8.6 Hz, 3H), 7.40 (t, J = 8.1 Hz, 3H), 6.77 (s, 1H), 6.26 (s, 1H).
【実施例14】
【0126】
1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリチエニルトリプチセン(化合物16)の製造
【実施例14】
【0127】
【化19】
JP2014111980A1_000021t.gif
【実施例14】
【0128】
実施例5で製造した1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリブロモトリプチセン(化合物8)(10.0mg、0.015mmol)を、THF2.0mL及び水1.0mLに溶解し、これに(2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニリル)ジシクロヘキシルホスフィン(SPos)(6.49mg、0.016mmol)及び酢酸パラジウム(Pd(OAc))(20.7mg、0.098mmol)を加え、60℃で攪拌した。次いで、これにチエニルホウ酸(チエニルB(OH))(11.5mg、0.090mmol)を除々に滴下し、60℃で14時間反応させた。
反応混合物にクロロホルム30mLを加え、水洗後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥およびろ過し、減圧留去した。残渣を、クロロホルムを溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することにより、標記の1,8,13-トリス(メトキシメトキシ)-4,5,16-トリチエニルトリプチセン(化合物16)を得た(収量5.2mg、収率51%)。
【実施例14】
【0129】
化合物16:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.05-7.03 (m, 4H), 6.92 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 3H), 6.77 (m, 3H), 6.12 (m, 3H), 5.31 (s, 6H), 3.54 (s, 9H).
【実施例15】
【0130】
化合物17の製造
【実施例15】
【0131】
【化20】
JP2014111980A1_000022t.gif
【実施例15】
【0132】
実施例14におけるチエニルホウ酸に代えてターチエニルホウ酸を用いて、実施例14と同様にして、標記の化合物17を製造した(収率12%)。
【実施例15】
【0133】
化合物17:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ (ppm)
7.18-7.15 (m, 4H), 7.08-7.05 (m, 4H), 6.98-6.97 (m, 3H), 6.93-6.84 (m, 15H), 6.40 (d, J = 3.1 Hz, 3H), 5.33 (s, 6H), 3.55 (s, 9H).
【実施例16】
【0134】
次に示す化合物1の製造
【実施例16】
【0135】
【化21】
JP2014111980A1_000023t.gif
【実施例16】
【0136】
実施例3で製造された化合物6(102mg、0.337mmol)をジメチルホルムアミド10.0mLに溶解させ、炭酸カリウム(190mg、1.34mmol)および12-ブロモドデカン酸メチル(373mg、1.21mmol)を加え、70℃で10時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル50mLを加え、水洗後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥およびろ過し、減圧留去した。残渣を、クロロホルムを溶媒とするゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより、標記の化合物1を得た(収量261g、収率82%)。
【実施例16】
【0137】
化合物1:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)
6.99 (d, J = 7.3 Hz, 3H), 6.89-6.84 (m, 4H), 6.54 (d, J = 8.3 Hz, 3H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 3.67 (s, 9H), 1.85 (m, 6H), 1.705-1.270 (m, 60H).
【実施例17】
【0138】
次に示す化合物18の製造
【実施例17】
【0139】
【化22】
JP2014111980A1_000024t.gif
【実施例17】
【0140】
実施例16で製造された化合物1(140mg、0.150mmol)をテトラヒドロフラン5.0mLに溶解させ、水酸化カリウム(84.0mg、1.50mmol)を加え、12時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、塩酸(1.0M、10mL)を加え、10分間撹拌した。析出した白色粉末をろ取後、水で洗い、乾燥させることで標記の化合物18を得た(収量30.0mg、収率23%)。
【実施例17】
【0141】
化合物18:
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)
11.95 (s, 3H), 7.02 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 6.89 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 6.67(s, 1H), 6.63 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 5.53 (s, 1H), 3.92 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 2.17 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.78-1.26 (m, 60H)
【実施例18】
【0142】
次に示す化合物19の製造
【実施例18】
【0143】
【化23】
JP2014111980A1_000025t.gif
【実施例18】
【0144】
実施例3で製造された化合物6(245mg、0.810mmol)をジメチルホルムアミド5.0mLに溶解させ、炭酸カリウム(450mg、3.25mmol)およびN-(12-ブロモドデシル)フタルイミド(1.15g、2.92mmol)を加え、70℃で8時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル100mLを加え、水洗後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥およびろ過し、減圧留去した。残渣を、ヘキサン/クロロホルム混合溶媒(2/8,v/v)を溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで、標記の化合物19を得た(収量855mg、収率87%)。
【実施例18】
【0145】
化合物19:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)
7.82 (m, 6H), 7.68 (m, 6H), 6.98 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.89 (s, 1H), 6.88 (t, J = 8.1 Hz, 3H), 6.53 (d, J = 8.1 Hz, 3H), 5.36 (s, 1H), 3.95 (t, J = 6.4 Hz, 3H), 3.66 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.8-1.2 (m, 60 H).
【実施例19】
【0146】
次に示す化合物20の製造
【実施例19】
【0147】
【化24】
JP2014111980A1_000026t.gif
【実施例19】
【0148】
実施例18で製造された化合物19(187mg、0.153mmol)をテトラヒドロフラン15.0mLに溶解させ、ヒドラジン一水和物(2.0mL、2.00mmol)を加え、12時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却後、水150mLを加え、析出した固体をろ取した。水洗後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥およびろ過し、減圧留去した。残渣をジメチルホルムアミド2.0mLに溶解させ再結晶を行うことにより、標記の化合物20を得た(収量100mg、収率76%)。
【実施例19】
【0149】
化合物20:
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)
7.05 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 6.91 (t, 7.6 Hz, 3H), 6.81 (s, 1H), 6.66 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 5.53 (s, 1H), 4.00 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 2.67 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.81 (m, 6H), 1.59 (m, 6H), 1.47-1.29 (m, 48H).
【実施例20】
【0150】
次に示す化合物21の製造
【実施例20】
【0151】
【化25】
JP2014111980A1_000027t.gif
【実施例20】
【0152】
実施例3で製造された化合物6(100mg、0.331mmol)及び炭酸カリウム(274mg、1.98mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに1-ブロモドデカン(990mg、3.97mmol)を加え、75℃で8時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル300mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水及び水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物21を白色粉末として得た(収量213mg、収率89%)。
【実施例20】
【0153】
化合物21:
H-NMR(400MHz、アセトン-d):δ(ppm)
7.99 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 7.91 (s, 1H), 7.89 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 7.55 (d, J = 8.1 Hz, 3H), 3.95 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 1.85 (q, J = 7.1 Hz, 6H), 1.60-1.55 (m, 6H), 1.36-1.28 (m, 54H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 9H).
【実施例21】
【0154】
次に示す化合物22の製造
【実施例21】
【0155】
【化26】
JP2014111980A1_000028t.gif
【実施例21】
【0156】
実施例3で製造された化合物6(100mg、0.331mmol)及び炭酸カリウム(365mg、2.64mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに11-ブロモドデセン(608mg、2.61mmol)を加え、80℃で12時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル200mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物22を白色粉末として得た(収量187mg、収率75%)。
【実施例21】
【0157】
化合物22:
H-NMR(400MHz、アセトン-d):δ(ppm)
6.99 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.89 (s, 1H), 6.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 6.54 (d, J = 7.8 Hz, 3H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 2.19 (td, J = 7.1 Hz, J = 2.6 Hz, 6H), 1.94 (t, J = 2.6 Hz, 3H), 1.85 (q, J = 7.0 Hz, 6H), 1.58-1.50 (m, 12H), 1.41 -1.35 (m, 24H).
【実施例22】
【0158】
次に示す化合物23の製造
【実施例22】
【0159】
【化27】
JP2014111980A1_000029t.gif
【実施例22】
【0160】
実施例3で製造された化合物6(160mg、0.221mmol)及び炭酸カリウム(365mg、2.64mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに11-ブロモドデシン(11-bromododecyne)(555mg、2.61mmol)を加え、80℃で12時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル200mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物23を白色粉末として得た(収量99.3mg、収率47%)。
【実施例22】
【0161】
化合物23:
H-NMR(300MHz、アセトン-d):δ(ppm)
7.00 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.90 (s, 1H), 6.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 6.55 (d, J = 7.5 Hz, 3H), 5.87-5.75 (m, 3H), 5.04-4.92 (m, 6H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (d, J = 6.6 Hz, 6H), 2.08-2.01 (m, 6H), 1.85 (q, J = 6.6 Hz, 6H), 1.65-1.51 (m, 12H), 1.36-1.32 (m, 24H).
【実施例23】
【0162】
次に示す化合物24の製造
【実施例23】
【0163】
【化28】
JP2014111980A1_000030t.gif
【実施例23】
【0164】
実施例21で製造された化合物22(160mg、0.221mmol)、次式
【実施例23】
【0165】
【化29】
JP2014111980A1_000031t.gif
【実施例23】
【0166】
で表されるトリフルオロメチル化剤(J.Am.Chem.Soc., 2011, 133, 16410)(316mg、1.00mmol)、及び塩化銅(I)(9.90mg、0.100mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え、混合物を凍結して脱気し、アルゴン下、70℃で30分加熱撹拌した。反応混合物に水300mLを加え、析出した固体をろ取し、ヘキサン-ジクロロメタン混合溶媒(2:1、v/v)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに供した。得られた白色粉末(119mg)に5%パラジウムカーボン(24mg)、テトラヒドロフラン50mL及びエタノール50mLを加え、水素ガス雰囲気下、室温で12時間撹拌した。反応混合物をセライト濾過し、溶媒を減圧で留去した。残渣をヘキサン-ジクロロメタン混合溶媒(2:1、v/v)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに供することで、標記の化合物24を白色粉末として得た(収量99.3mg、収率47%)。
【実施例23】
【0167】
化合物24:
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)
7.00 (d, 3H, J = 7.4 Hz), 6.89 (s, 1H), 6.87 (dd, 3H, J = 7.4, 7.4 Hz), 6.55 (d, 3H J = 7.4 Hz), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, 6H, J = 6.5 Hz), 1.85(m, 6H), 1.61-1.51 (tt, 6H, J = 6.5, 6.5 Hz), 1.43-1.29 (m, 36H).
【実施例24】
【0168】
化合物1の集合構造の同定
【実施例24】
【0169】
化合物1の粉末を240℃でアニールし、25℃に冷却して化合物1の集合構造を製造した。
製造された化合物1の集合構造は、粉末X線回折測定により、三枚羽状のベンゼン環が入れ子状に充填された層と、長鎖アルキル基の層からなるラメラ状の集積構造を形成することが明らかにされた(図3参照)。粉末X線回折測定により約2.4nmの層間距離が観測され、これは分子1の長軸方向の距離と一致している。上記結果は、本ヤヌス型分子の集合化挙動を利用することで、官能基や機能団を層状に高密度集積化できることを示している。
【実施例25】
【0170】
化合物18又は20を用いた集合構造の製造
化合物18又は20を用いて実施例20と同様にして、これらの化合物の集合構造を製造した。
得られた集合構造の粉末X線回折の測定を行った。
粉末X線回折測定の結果、これらの膜は約4.8nmの層間距離が観測され、これは官能基が分子間で向かい合ったバイレイヤー構造であった(図3及び4参照)。
【実施例26】
【0171】
本ヤヌス型トリプチセン(化合物1)を用いて、水と有機溶媒による液/液界面での膜形成を行った。数cmスケールでの膜形成が可能で、屈曲性のある膜が得られた。膜をガラス基板に転写し、X線回折測定を行った。この結果、レイヤー構造は基板に平行に形成されていることが明らかになった。また、膜厚は50-数百nm程度であり、膜の最も薄い部分は約20分子層に相当すると考えられる。
さらに、膜状構造体の薄膜化および高強度化を測定した。
【実施例27】
【0172】
化合物1を用いたガラス基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図5に示す。
【実施例28】
【0173】
化合物1を用いた雲母基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図6に示す。
【実施例29】
【0174】
化合物1を用いた雲母基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させた。
次いで、大気下で180℃、20分間アニーリングした。
製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図7に示す。
【実施例30】
【0175】
化合物21を用いた蒸着法による膜の製造
通常の真空蒸着装置を用いて、4×10-4Paの減圧環境下で、シリコン基板を基板温度25℃として、実施例20で製造した化合物21を融点以上の約200℃に加熱して、真空蒸着した。得られた蒸着膜の膜厚は62nmであった。
得られた膜における分子の配向を斜入射X線回折法(GIXD)で測定した結果、d110の間隔が0.41nmの規則的な配向分子膜であることがわかった。この結果からも配向分子膜におけるトリプチセン骨格の間隔が0.81nmであることがわかった。
前記の方法でシリコン基板上に形成された膜を120℃で60分間アニールすることにより、膜厚が2.5nmである平坦な(モノドメイン)膜が得られた。
【実施例31】
【0176】
実施例30と同様の方法で、石英基板、雲母基板、ポリイミド基板、及びPET基板に、実施例20で製造した化合物21を、それぞれ真空蒸着した。得られたそれぞれの膜圧は50nmであった。
得られたそれぞれの膜における分子の配向を、実施例30と同様にGIXDで測定した結果、d110の間隔が約0.41nmの規則的な配向分子膜であることがわかった。
【実施例32】
【0177】
実施例30と同様の方法で、サファイヤ基板に、実施例20で製造した化合物21、実施例21で製造した化合物22、実施例22で製造した化合物23、及び実施例23で製造した化合物24をそれぞれ真空蒸着した。得られた膜の膜厚は、それぞれ50nmであった。
化合物23を用いて製造された蒸着膜を、減衰全反射赤外吸収スペクトル(ATR-IR)で測定したところ、炭素-炭素三重結合の特性吸収を確認することができた。
【実施例33】
【0178】
実施例20で製造した化合物21を用いたシリコン基板上での膜の製造
化合物21のトルエン溶液(200μM,50μL)を、シリコン基板に2300rpmでスピンコーティングした。塗布量を単分子膜の形成に想到する量とすることにより、単分子膜を形成させた。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した結果、膜厚は約1.9nmであった。
これを150℃で1時間アニーリングしたところ、極めて平坦な膜を得ることができた。アニーリングをトルエン蒸気により、80℃で1時間行っても同様の結果が得られた。
【実施例34】
【0179】
化合物1を用いて製造された膜を用いたトランジスターを製造した。
シリコンウエハー上にアルミニウムでパターン化し、プラズマでその表面を酸化してAl/Alのゲート電極を製造した。その上に本発明の化合物1の溶液をドロップキャストし、200℃でアニーリングして、単分子膜(SAM)を製造した。SAMの上にDNTT(ジナフトチエノチオフェン)をパターン化し、その上に金電極を付けた。
得られたトランジスターの静電容量(キャパシタンス)は644nF/cmであり、電子移動度(モビリティー)は0.387cm/Vsであり、オンオフ比は7.32×10であり、スレショルド電圧は-0.487Vであり、リーケイジ電流は9.44×10-11Aであった。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、従来の自己組織化膜とは異なる極めて特異な特性を有するものとすることができ、薄膜トランジスターなどの電子デバイス用の薄膜のみならず、保護膜や生体膜類似膜などとして極めて応用範囲の広いナノ単位の薄膜、当該膜を形成させるための新規な膜形成材料として有用なトリプチセン誘導体、及びそれを製造するための中間体化合物を提供するものである。
したがって、本発明は、薄膜トランジスターなどの薄膜を利用する産業分野において有用であり、化学産業のみならず電子素子産業などにおいて産業上の利用可能性を有している。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6