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明細書 :可聴音出力装置及び可聴音出力方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-006216 (P2017-006216A)
公開日 平成29年1月12日(2017.1.12)
発明の名称または考案の名称 可聴音出力装置及び可聴音出力方法
国際特許分類 A61B   5/0472      (2006.01)
A61B   5/044       (2006.01)
FI A61B 5/04 312Q
A61B 5/04 314S
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-122430 (P2015-122430)
出願日 平成27年6月17日(2015.6.17)
発明者または考案者 【氏名】寺澤 洋子
【氏名】松原 正樹
【氏名】川原崎 雅敏
【氏名】佐藤 明
【氏名】大原 信
【氏名】星本 弘之
【氏名】森本 洋太
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100166006、【弁理士】、【氏名又は名称】泉 通博
審査請求 未請求
テーマコード 4C027
4C127
Fターム 4C027AA02
4C027FF00
4C027GG01
4C027GG02
4C027HH06
4C027KK03
4C127AA02
4C127FF00
4C127GG01
4C127GG02
4C127HH06
4C127KK03
要約 【課題】パルス波を含む信号の異常を把握しやすくする。
【解決手段】可聴音出力装置1は、種類が異なる複数のパルス波を含む信号を取得する取得部131と、信号における複数のパルス波の夫々の位置を特定する位置特定部132と、位置特定部132が特定した位置に対応するタイミングにおいて、複数のパルス波の種類に対応する音域内で複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力する出力部133と、を有する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
種類が異なる複数のパルス波を含む信号を取得する取得部と、
前記信号における前記複数のパルス波の夫々の位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部が特定した前記位置に対応するタイミングにおいて、前記複数のパルス波の種類に対応する音域内で前記複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力する出力部と、
を有する可聴音出力装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記複数のパルス波の幅よりも短い間隔で、周波数が異なる複数のグラニュラー合成音により構成される可聴音を出力する、
請求項1に記載の可聴音出力装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記パルス波の振幅の変化率が所定の値よりも大きいタイミングで、前記グラニュラー合成音を出力する、
請求項2に記載の可聴音出力装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記複数のパルス波のうち、所定の種類のパルス波に対応するタイミングにおいて、前記パルス波に対応する前記グラニュラー合成音と当該グラニュラー合成音の周波数よりも低い周波数の前記グラニュラー合成音とを加算することにより生成された前記可聴音を出力する、
請求項2又は3に記載の可聴音出力装置。
【請求項5】
前記パルス波の画像を表示する表示部と、
前記出力部が出力する前記可聴音に対応するタイミングで、前記画像の表示態様を変化させる表示制御部と、
を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項6】
前記パルス波を含む信号を一時的に蓄積するバッファ部をさらに有し、
前記出力部は、前記信号を前記バッファ部に蓄積する速度よりも遅い速度で前記信号を前記バッファ部から読み出して、前記信号が生成された時の速度よりも遅い速度で前記可聴音を出力する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項7】
前記パルス波が、心電計で計測されたQRS波、P波及びT波を含み、
前記位置特定部は、前記QRS波、前記P波及び前記T波の位置を特定し、
前記出力部は、前記QRS波の位置に対応するタイミングにおいて、前記QRS波に対応する第1可聴音を出力し、前記P波の位置に対応するタイミングにおいて、前記P波に対応する第2可聴音を出力し、前記T波のタイミングにおいて、前記T波に対応する第3可聴音を出力する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項8】
前記位置特定部は、所定の区間ごとに、前記信号の大きさの分散値を算出し、前記分散値が所定の閾値よりも大きい区間を、前記QRS波の位置として特定する、
請求項7に記載の可聴音出力装置。
【請求項9】
前記位置特定部は、隣接する複数の前記QRS波の中間位置を特定し、
前記出力部は、前記QRS波の位置に対応するタイミングから前記中間位置に対応するタイミングまでの間に前記第2可聴音を出力し、前記中間位置に対応するタイミングから前記QRS波の位置に対応するタイミングまでの間に前記第3可聴音を出力する、
請求項7又は8に記載の可聴音出力装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記P波に対応するタイミングにおいて、前記T波に対応するタイミングよりも強調された可聴音を出力する、
請求項7から9のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記QRS波に対応するタイミングにおいて、前記P波に対応するタイミング、及び前記T波に対応するタイミングにおいて出力する可聴音よりも弱い可聴音を出力する、
請求項7から10のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項12】
前記位置特定部は、前記QRS波の開始位置及び終了位置を特定し、
前記出力部は、前記開始位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第1の音色の前記第1可聴音を出力し、前記終了位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第2の音色の前記第1可聴音を出力する、
請求項7から11のいずれか1項に記載の可聴音出力装置。
【請求項13】
種類が異なる複数のパルス波を含む信号を取得するステップと、
前記信号における前記複数のパルス波の夫々の位置を特定するステップと、
前記位置を特定するステップにおいて特定された前記位置に対応するタイミングにおいて、前記複数のパルス波の種類に対応する音域内で前記複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力するステップと、
を有する可聴音出力方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス波を含む信号におけるパルス波の特徴に応じた可聴音を出力する可聴音出力装置及び可聴音出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心電図波形に基づいて、可聴音を出力する方法が知られている。特許文献1には、心電図波形においてP波、QRS波及びT波等のパルス波を特定し、特定したパルス波の種類に応じた可聴音を出力するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開昭58-173532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心電図波形に表れる心臓の障害の種類は多く、例えば、不整脈に関しては、心室性期外収縮(VPC)、心房性期外収縮(APC)、心房頻拍(AT)、心房粗動(AFL)及び心室頻拍(VT)等がある。心電図波形に基づく診断をする医師や看護師等(以下、「ユーザ」という)は、心電図波形の画像を解析することにより、異常が発生していることを認識する。しかし、心電図波形の画像を解析することにより異常の種別を認識するには、高度な知識が必要であり、異常が発生していることを見落としてしまうおそれがあった。
【0005】
人は、音の違いに敏感に反応するので、特許文献1に記載されているように、可聴音を心電図波形の解析に活用することは有効な手段である。しかしながら、従来のシステムは、心電図波形の値が閾値よりも大きい場合と閾値未満である場合の2つの場合に分けて、2種類の可聴音から選択した可聴音を出力するだけに過ぎない。したがって、ユーザは、可聴音を聞いても、どのような心電図波形であるかを把握することができず、異常の発生に気付くことは困難であった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、パルス波を含む信号の異常を把握しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様においては、種類が異なる複数のパルス波を含む信号を取得する取得部と、前記信号における前記複数のパルス波の夫々の位置を特定する位置特定部と、前記位置特定部が特定した前記位置に対応するタイミングにおいて、前記複数のパルス波の種類に対応する音域内で前記複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力する出力部と、を有する可聴音出力装置を提供する。
【0008】
前記出力部は、例えば、前記複数のパルス波の幅よりも短い間隔で、周波数が異なる複数のグラニュラー合成音により構成される可聴音を出力する。前記出力部は、前記パルス波の振幅の変化率が所定の値よりも大きいタイミングで、前記グラニュラー合成音を出力してもよい。前記出力部は、前記複数のパルス波のうち、所定の種類のパルス波に対応するタイミングにおいて、前記パルス波に対応する前記グラニュラー合成音と当該グラニュラー合成音の周波数よりも低い周波数の前記グラニュラー合成音とを加算することにより生成された前記可聴音を出力してもよい。
【0009】
上記の可聴音出力装置は、前記パルス波の画像を表示する表示部と、前記出力部が出力する前記可聴音に対応するタイミングで、前記画像の表示態様を変化させる表示制御部と、を有してもよい。
【0010】
また、上記の可聴音出力装置は、前記パルス波を含む信号を一時的に蓄積するバッファ部をさらに有し、前記出力部は、前記信号を前記バッファ部に蓄積する速度よりも遅い速度で前記信号を前記バッファ部から読み出して、前記信号が生成された時の速度よりも遅い速度で前記可聴音を出力してもよい。
【0011】
前記パルス波が、心電計で計測されたQRS波、P波及びT波を含み、前記位置特定部は、前記QRS波、前記P波及び前記T波の位置を特定し、前記出力部は、前記QRS波の位置に対応するタイミングにおいて、前記QRS波に対応する第1可聴音を出力し、前記P波の位置に対応するタイミングにおいて、前記P波に対応する第2可聴音を出力し、前記T波のタイミングにおいて、前記T波に対応する第3可聴音を出力してもよい。
【0012】
前記位置特定部は、例えば、所定の区間ごとに、前記信号の大きさの分散値を算出し、前記分散値が所定の閾値よりも大きい区間を、前記QRS波の位置として特定する。
【0013】
前記位置特定部は、隣接する複数の前記QRS波の中間位置を特定し、前記出力部は、前記QRS波の位置に対応するタイミングから前記中間位置に対応するタイミングまでの間に前記第2可聴音を出力し、前記中間位置に対応するタイミングから前記QRS波の位置に対応するタイミングまでの間に前記第3可聴音を出力してもよい。
【0014】
前記出力部は、前記P波に対応するタイミングにおいて、前記T波に対応するタイミングよりも強調された可聴音を出力してもよい。前記出力部は、前記QRS波に対応するタイミングにおいて、前記P波に対応するタイミング、及び前記T波に対応するタイミングにおいて出力する可聴音よりも弱い可聴音を出力してもよい。
【0015】
また、前記位置特定部は、前記QRS波の開始位置及び終了位置を特定し、前記出力部は、前記開始位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第1の音色の前記第1可聴音を出力し、前記終了位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第2の音色の前記第1可聴音を出力してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、種類が異なる複数のパルス波を含む信号を取得するステップと、前記信号における前記複数のパルス波の夫々の位置を特定するステップと、前記位置を特定するステップにおいて特定された前記位置に対応するタイミングにおいて、前記複数のパルス波の種類に対応する音域内で前記複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力するステップと、を有する可聴音出力方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パルス波を含む信号の異常を把握しやすくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】可聴音出力装置1の概要を説明するための図である。
【図2】可聴音出力装置1の構成を示す図である。
【図3】パルス波の種類と可聴音の音域との関係を模式的に示す図である。
【図4】記憶部12に記憶されている可聴音データテーブルの例を示す図である。
【図5】パルス波の位置を特定する方法を説明するための図である。
【図6】出力部133の構成を示す図である。
【図7】パルス波と可聴音の出力タイミングとの関係を示す図である。
【図8】QRS波に対応するタイミングで出力される可聴音について説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に係る可聴音出力装置2の構成を示す図である。
【図10】正常な心拍信号に対応する区間信号を示す図である。
【図11】心室性期外収縮(VPC)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。
【図12】心房性期外収縮(PAC)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。
【図13】心室頻拍(VT)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
[本実施形態の概要]
図1は、本実施形態に係る可聴音出力装置1の概要を説明するための図である。可聴音出力装置1は、心電図測定装置(不図示)から出力される心拍信号を取得し、取得した心拍信号に応じた可聴音を出力する。可聴音は、例えば、減衰しながら振動するグラニュラー合成音により構成されている。可聴音出力装置1は、例えば、スピーカー、多チャネルスピーカー又はイヤホン等を備える音響再生装置である。可聴音出力装置1は、コンピュータであってもよく、心電図測定装置に組み込まれていてもよい。

【0020】
図1に示す心拍信号の波形は、心電図測定装置により測定された心拍信号の波形を模式的に表した波形である。心拍信号には、P波、QRS波、T波等のように、信号の周期よりも短い時間で変化するパルス波が含まれている。P波は、心房の脱分極により発生するパルス波である。QRS波は、心室の脱分極により発生するパルス波であり、最初の下向きのパルス波であるQ波と、Q波に続く上向きのパルス波であるR波と、R波に続く下向きのパルス波であるS波とから構成されている。T波は、心室の再分極により発生するパルス波である。

【0021】
心電図測定装置から出力された心拍信号は、可聴音出力装置1に入力される。可聴音出力装置1は、心拍信号に含まれるパルス波であるP波、QRS波及びT波の位置を特定し、これらのパルス波の特徴に応じた可聴音を出力する。可聴音は、例えば、音階を構成する周波数の音により構成されており、夫々のパルス波の波形に関する情報が、メロディ、音色又はリズム等によって表現される。

【0022】
可聴音出力装置1は、心拍信号に含まれるパルス波の重要度に応じて、注意を引きやすい音高・音色・音量の音を出力することにより、診断時に注意が必要な部分に聴覚的な注意を向けやすくすることができる。以下、可聴音出力装置1の詳細な構成及び動作について説明する。

【0023】
[可聴音出力装置1の構成]
図2は、可聴音出力装置1の構成を示す図である。
可聴音出力装置1は、バッファ11と、記憶部12と、制御部13とを有する。バッファ11は、例えばRAMであり、外部から入力された心拍信号を一時的に記憶する。可聴音出力装置1は、バッファ11を有することにより、心電図測定装置から入力された心拍信号をリアルタイムで蓄積した後の任意のタイミングで、心拍信号に基づく可聴音を出力することができる。

【0024】
可聴音出力装置1は、例えば、心拍信号をバッファ11に蓄積する速度よりも遅い速度で心拍信号をバッファ11から読み出して、心電図測定装置で心拍信号が生成された時の速度よりも遅い速度で可聴音を出力することにより、ユーザが心拍信号の特徴を把握しやすくすることができる。この場合、例えば、心拍信号が生成された際のパルス波の発生間隔よりも長い間隔で、パルス波に対応する可聴音が出力され、実際の心拍信号よりもゆっくりと可聴音が出力されることになる。

【0025】
記憶部12は、例えばROMであり、制御部13により実行されるプログラムを記憶している。また、記憶部12は、パルス波の種類に関連付けて可聴音データを記憶している。記憶部12は、例えば、心拍信号に含まれるP波、QRS波及びT波の夫々のパルス波に対応する区間における心拍信号の値に関連付けて、異なる音域の可聴音に対応する可聴音データを記憶している。

【0026】
可聴音データは、例えば、一以上のグラニュラー合成音に対応するデータにより構成されている。グラニュラー合成音は、音の断片を連結して合成された音である。可聴音出力装置1は、さまざまな周波数の音の断片を連結したり合成したりすることにより、音域及び音色が異なる各種の可聴音を生成することができる。図1においては、正弦波に窓関数を掛け合わせることにより生成された、減衰しながら振動するグラニュラー合成音を示したが、グラニュラー合成音は、メロディの合成に用いることができる音であれば、任意の音でよい。

【0027】
図3は、パルス波の種類と可聴音の音域との関係を模式的に示す図である。図3(a)は、パルス波がP波である場合に出力される可聴音の音域を示している。P波は、心電図波形を用いた診断において最も重要であるので、ユーザの注意を引きやすい高い音域に割り当てられている。図3(b)は、パルス波がT波である場合に出力される可聴音の音域を示している。T波は、例えば、心電図波形を用いた不整脈の診断において、P波よりは重要度が低いので、P波に比べて注意を引きにくい、P波よりも低い音域に割り当てられている。虚血性心疾患の診断をする際には、S波及びT波の重要性が高いので、S波及びT波に、ユーザの注意を引きやすい音を割り当ててもよい。このように、可聴音出力装置1は、診断する対象となる疾患の種類に応じて、夫々のパルス波に割り当てる可聴音の種類を切り替えてもよい。

【0028】
図3(c)は、パルス波がQRS波である場合に出力される可聴音の音域を示している。QRS波は、心拍リズムを把握しやすくするために、発生タイミングを認識しやすい可聴音であるとともに、P波及びT波の特徴を把握することを阻害しない音であることが望ましい。そこで、QRS波は、P波及びT波に割り当てられた可聴音よりも低い音域に割り当てられているとともに、太鼓の音のように、メロディを有しないサイン音が用いられる。

【0029】
図4は、記憶部12に記憶されている可聴音データテーブルの例を示す図である。図4(a)は、P波の信号値に対応する音名と音色(強調度)を示している。信号値が増加するにつれて、P波に割り当てられた音域において、周波数が増加するように音名が割り当てられている。また、信号値が増加するにつれて、強調度が大きい音色になるようにされている。

【0030】
図4(b)は、T波の信号値に対応する音名と音色を示している。信号値が増加するにつれて、T波に割り当てられた音域において、周波数が増加するように音名が割り当てられている。また、信号値が増加するにつれて、強調度が大きい音色になるようにされているが、同一の信号値で比較した場合、P波に比べて強調度が小さい音色になっている。

【0031】
図4(c)は、QRS波に対応する音名と音色を示している。QRS波の立ち上がりタイミングに対応して、T波に割り当てられた音よりも1オクターブ低い「ド」が割り当てられ、QRS波の立ち下がりタイミングに対応して、「ド#」が割り当てられている。また、QRS波の音色は、QRS波の立ち上がりタイミングでは第1サイン音であり、QRS波の立ち下がりタイミングでは、第1サイン音と異なる第2サイン音となっている。

【0032】
図2に戻って、制御部13について説明する。制御部13は、例えばCPUである。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、位置特定部132及び出力部133として機能する。

【0033】
取得部131は、心電図測定装置等の外部装置から、パルス波を含む心拍信号を取得する。取得部131は、取得した心拍信号をアナログ/デジタル変換することによりデジタル心拍信号に変換し、変換後のデジタル心拍信号をバッファ11に格納する。アナログ/デジタル変換のサンプリング間隔は任意であるが、少なくとも、診断が必要なパルス波の最小幅よりも短い間隔である。

【0034】
位置特定部132は、バッファ11に記憶されたデジタル心拍信号を読み出して、読み出したデジタル心拍信号におけるP波、QRS波及びT波等のパルス波の位置を特定する。具体的には、位置特定部132は、図5に示す以下の手順によりパルス波の位置を特定する。

【0035】
図5は、パルス波の位置を特定する方法を説明するための図である。図5(a)は、心拍信号を示している。図5(b)は、心拍信号の分散値を示している。図5(c)は、QRS波に対応する区間を示すQRS波区間信号を示している。図5(d)は、P波に対応する区間を示すP波区間信号を示している。図5(e)は、T波に対応する区間を示すT波区間信号を示している。

【0036】
位置特定部132は、図5(c)~図5(e)に示す区間信号を生成するために、まず、所定の窓時間ごとにデジタル心拍信号の値の分散値を算出する。続いて、位置特定部132は、分散値を所定の閾値と比較し、図5(b)に示す分散値が所定の閾値よりも大きい区間がQRS波の区間であると特定する。そして、位置特定部132は、図5(c)に示すように、QRS波の開始位置のタイミング及び終了位置のタイミングを特定する。

【0037】
続いて、位置特定部132は、隣接する複数のQRS波の区間の中間位置のタイミングを特定する。位置特定部132は、図5(d)に示すように、中間位置に対応するタイミングからQRS波の位置に対応するタイミングまでの間を、P波の区間であると特定する。また、位置特定部132は、図5(e)に示すように、QRS波の位置に対応するタイミングから中間位置に対応するタイミングまでの間を、T波の区間であると特定する。このようにして、位置特定部132は、各パルス波に対応する可聴音を出力すべき区間を特定することができる。

【0038】
位置特定部132は、QRS波区間信号、P波区間信号及びT波区間信号の長さの割合を維持しつつ、夫々の区間信号の長さを任意の長さに設定することができる。位置特定部132は、例えば、ユーザからの操作を受けて、各区間信号の長さを、実際の心拍信号におけるP波、QRS波及びT波の長さよりも長くすることで、ユーザが可聴音の特徴を識別しやすくすることができる。

【0039】
なお、位置特定部132が各パルス波の位置を特定する方法は任意であり、上記の方法に限らない。例えば、位置特定部132は、心拍信号における所定の期間内に最も波高値が大きい位置を探索し、所定の閾値以上の波高値のパルス波を検出した場合に、検出したパルス波がQRS波であると特定してもよい。また、位置特定部132は、ウェーブレット解析を用いることにより、パルス波の位置を特定してもよい。また、位置特定部132は、ジアプ・パン、ウィリス・トンプキンス著「リアルタイムQRS検出アルゴリズム(A Real-Time QRS Detection Algorithm)」、IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING, VOL. BME-32, No.3, pp.230-236、1985年3月に記載された方法のように、信号を微分してから2乗した値を用いて、QRS波の位置を特定してもよい。

【0040】
出力部133は、位置特定部132が特定した複数のパルス波の位置に対応するタイミングにおいて、複数のパルス波の種類に対応する音域内で複数のパルス波の大きさに応じて連続的に周波数が変化する可聴音を出力する。具体的には、出力部133は、位置特定部132が特定したQRS波の位置に対応するタイミング(QRS波区間信号がハイレベルのタイミング)で第1可聴音を出力し、中間位置に対応するタイミングからQRS波の位置に対応するタイミングまでの間(P波区間信号がハイレベルのタイミング)に第2可聴音を出力し、QRS波の位置に対応するタイミングから中間位置に対応するタイミングまでの間(T波区間信号がハイレベルのタイミング)に第3可聴音を出力する。

【0041】
出力部133は、パルス波がQRS波である場合、QRS波の位置に対応するタイミング、例えば、図5(c)に示したQRS波区間信号が立ち上がるタイミング及び立ち下がるタイミングにおいて、第1可聴音を出力する。出力部133は、QRS波に対応するタイミングにおいて、P波に対応するタイミング、及びT波に対応するタイミングにおいて出力される可聴音よりも弱い可聴音であるサイン音を出力する。

【0042】
出力部133は、パルス波がP波である場合、P波の位置に対応するタイミングにおいて第2可聴音を出力する。出力部133は、例えば、記憶部12に記憶された、P波に割り当てられた音域の第2可聴音のうち、P波区間信号がハイレベルの期間の心拍信号の値に対応して連続的に周波数が変化するメロディ性がある可聴音を所定のタイミングで出力する。具体的には、出力部133は、図5(d)に示したP波区間信号の立ち上がりタイミングから、所定の出力間隔ごとにP波の値を取得し、取得したP波の値に対応するグラニュラー合成音を出力する。第1可聴音が、メロディ性がない単発の音であるサイン音であったのに対して、第2可聴音は、P波の特徴を表すメロディ音であり、ユーザが、連続性のある音として認識することができる。

【0043】
同様に、出力部133は、パルス波がT波である場合、T波の位置に対応するタイミングにおいて第3可聴音を出力する。出力部133は、例えば、記憶部12に記憶された、T波に関連付けられた高さの第3可聴音のうち、T波区間信号がハイレベルの期間の心拍信号の値に対応して連続的に周波数が変化するメロディ性がある可聴音を所定のタイミングで出力する。具体的には、出力部133は、図5(e)に示したT波区間信号の立ち上がりタイミングから、所定の出力間隔ごとにT波の値を取得し、取得したT波の値に対応するグラニュラー合成音を出力する。第3可聴音も、第2可聴音と同様に、T波の特徴を表すメロディ音であり、ユーザが、連続性のある音として認識することができる。

【0044】
出力部133は、複数のパルス波のうち、所定の種類のパルス波に対応するタイミングにおいて、パルス波に対応するグラニュラー合成音と当該グラニュラー合成音の周波数よりも低い周波数のグラニュラー合成音とを加算することにより生成された可聴音を出力してもよい。このようにすることで、出力部133は、ユーザの注意を引きたいパルス波のタイミングで、ユーザの注意を引きやすい、音量や周波数が変動する可聴音を出力することができる。例えば、記憶部12が、図4に示した可聴音データを記憶している場合、出力部133は、P波に対応するタイミングにおいて、T波に対応するタイミングよりも強調された可聴音を出力することになる。

【0045】
また、出力部133は、P波区間信号がハイレベルの期間よりも短い期間だけ、P波に対応する第2可聴音を出力してもよい。同様に、出力部133は、T波区間信号がハイレベルの期間よりも短い期間だけ、T波に対応する第3可聴音を出力してもよい。例えば、出力部133は、P波区間信号がハイレベルに変化してから所定の時間が経過した後に第2可聴音の出力を開始する。このようにすることで、ユーザが、P波、QRS波及びT波が切り替わったことを認識しやすくなる。

【0046】
図6は、出力部133の構成を示す図である。出力部133は、夫々のパルス波に対応する区間信号がハイレベルのタイミングにおいて、夫々のパルス波に関連付けて記憶部12に記憶された、グラニュラー合成音により構成される可聴音を出力する。

【0047】
出力部133は、P波合成音生成部21、T波合成音生成部22、QRS波合成音生成部23、ゲート部24、ゲート部25、ゲート部26、ミキサー27、スピーカー28及びスピーカー29を有する。P波合成音生成部21、T波合成音生成部22及びQRS波合成音生成部23は、夫々、記憶部12から可聴音データを読み出すことにより、または演算処理をすることにより、P波合成音、T波合成音及びQRS波合成音を生成する。

【0048】
ゲート部24、ゲート部25及びゲート部26は、夫々、P波合成音生成部21、T波合成音生成部22及びQRS波合成音生成部23が生成したP波合成音、T波合成音及びQRS波合成音を、P波区間信号、T波区間信号及びQRS波区間信号がハイレベルのタイミングで、ミキサー27へと出力する。

【0049】
ミキサー27は、P波合成音、T波合成音及びQRS波合成音をミキシングして、スピーカー28及びスピーカー29に出力する。ミキサー27は、P波合成音、T波合成音及びQRS波合成音をスピーカー28に出力する音量と、及びP波合成音、T波合成音及びQRS波合成音をスピーカー29に出力する音量を調整してもよい。例えば、ミキサー27は、QRS波合成音を、スピーカー28及びスピーカー29から同じ音量で出力し、P波合成音を主にスピーカー28から出力し、T波合成音を主にスピーカー29から出力することにより、ユーザが、夫々の合成音を識別しやすくすることができる。

【0050】
ミキサー27は、P波区間信号がハイレベルの間に、P波合成音が、スピーカー28からスピーカー29に移動するように聞こえるべく、スピーカー28から出力する音量とスピーカー29から出力する音量とを変化させてもよい。また、ミキサー27は、T波区間信号がハイレベルの間に、T波合成音が、P波合成音を逆方向のスピーカー29からスピーカー28に移動するように聞こえるべく、スピーカー28から出力する音量とスピーカー29から出力する音量とを変化させてもよい。このように、空間的に可聴音が聞こえる方向を変化させることによっても、ユーザが、夫々の合成音を識別しやすくなる。

【0051】
図7は、パルス波と可聴音の出力タイミングとの関係を示す図である。図7(a)における▲印は、可聴音が出力されるタイミングを示している。図7(a)においては、複数のパルス波の幅よりも短い間隔で、周波数が異なる複数のグラニュラー合成音により構成される可聴音が出力されることを示しているが、出力部133は、パルス波の振幅の変化率が所定の値よりも大きいタイミングで、グラニュラー合成音を出力するものとしてもよい。

【0052】
例えば、出力部133は、出力タイミングにおけるパルス波の値と、直前の出力タイミングにおけるパルス波の値との差が所定の範囲内である場合、可聴音を出力しないものとする。図7(b)における△印は、可聴音が出力されないタイミングを示している。このように、出力部133が、パルス波の値に所定の大きさ以上の変化があったタイミングで可聴音を出力することで、ユーザが、パルス波の特徴を把握しやすくなる。なお、出力部133がパルス波の振幅の変化率が所定の値よりも大きいタイミングを検出する方法は任意であるが、例えば、所定の窓時間におけるパルス波の値の変動の大きさを示す分散を用いることができる。

【0053】
図8は、QRS波に対応するタイミングで出力される可聴音について説明するための図である。出力部133は、QRS波区間信号の開始位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第1の音色の第1サイン音を出力し、QRS波区間信号の終了位置に対応するタイミングから所定期間にわたって第2の音色の第2サイン音を出力する。

【0054】
図8(a)に示すように、QRS波が正常な細いパルス波である場合、第1サイン音と第2サイン音とが重なって、一つの音に聞こえる。これに対して、図8(b)に示すように、QRS波に異常が生じており、幅の広いパルス波になっている場合、第1サイン音と第2サイン音とが分離されて聞こえる。このようにすることで、ユーザが、QRS波の幅が大き過ぎる異常状態を把握しやすくなり、不整脈の診断に好適である。

【0055】
[第1の実施形態における効果]
以上説明したように、第1の実施形態における可聴音出力装置1は、心拍波形に含まれている複数のパルス波の種類に対応する音域内で、複数のパルス波の大きさに応じて変化する周波数のグラニュラー合成音により構成される可聴音を出力することができる。可聴音出力装置1は、パルス波の種類に応じて、異なる音域でパルス波の波形に応じたメロディを出力することで、ユーザが、P波、QRS波及びT波の夫々の発生タイミングに関する状態を把握できるとともに、夫々のパルス波の波形に異常があるか否かを把握することができる。

【0056】
また、可聴音出力装置1は、ユーザの認知、すなわちユーザが音に対して抱く心象が、パルス波の状態に応じた状態になるような音量、音高、音色、リズム、メロディ、ハーモニーを用いた可聴音を出力することにより、ユーザが直感的に異常状態を把握できるようにすることが可能になる。このように、聴覚的なゲシュタルトを考慮した可聴音を用いることで、ユーザは、画面を見ない状態で他の作業をしている間にも、心拍信号に異常が生じたことを速やかに認識することができる。また、ユーザは、可聴音を聞くことにより、視覚では認識しづらい異常状態を把握することもできる。

【0057】
<第2の実施形態>
図9は、第2の実施形態に係る可聴音出力装置2の構成を示す図である。第2の実施形態に係る可聴音出力装置2は、表示制御部134及び表示部14をさらに有する点で第1の実施形態に係る可聴音出力装置1と異なる。表示部14は、パルス波の画像を表示するディスプレイである。位置特定部132は、出力部133が出力する可聴音に対応するタイミングで、画像の表示態様を変化させる。

【0058】
位置特定部132は、出力部133に対してP波、QRS波及びT波の位置を示す区間信号を出力するタイミングに同期して、バッファ11から読み出したデジタル心拍信号を、P波、QRS波及びT波の位置を示す情報に関連付けて表示制御部134に対して出力する。表示制御部134は、位置特定部132から入力されたデジタル心拍信号に基づく画像を生成して表示部14に表示させる。

【0059】
表示制御部134は、デジタル心拍信号に基づく画像を生成する際に、P波、QRS波及びT波のタイミングで、夫々のパルス波に対応する表示態様で画像を加工する。具体的には、表示制御部134は、出力部133が出力する可聴音の強調度に対応するように画像を強調する。例えば、表示制御部134は、P波に対応する可聴音がT波に対応する可聴音よりも強調されている場合、P波に対応するタイミングにおいて、T波に対応するタイミングよりも強調された色、太さ又は模様により心拍信号を表示する。表示制御部134は、例えば、P波に対応するタイミングにおいて赤色の太い線で心拍信号を表示し、T波に対応するタイミングにおいて青色の細い線で心拍信号を表示する。

【0060】
[第2の実施形態における効果]
以上説明したように、第2の実施形態における可聴音出力装置2は、心拍信号に同期して可聴音を出力するとともに、可聴音に合わせて表示態様が変化する画像を表示する。このようにすることで、ユーザは、可聴音を聞きながら、パルス波の波形を確認することができるので、診断の精度を向上させることができる。

【0061】
<実施例>
可聴音出力装置1を用いて、心電図測定装置から取得した心拍信号に基づいてP波、QRS波、T波の位置を特定し、特定した位置に対応するタイミングにおいて可聴音を出力し、心拍信号に生じた異常状態を認識できるかどうかを確認する実験を行った。

【0062】
図10から図13は、心電図測定装置から取得した心拍信号に基づいて算出した分散値、分散値に基づいて生成したP波区間信号及びT波区間信号を示す図である。図10は、正常な心拍信号に対応する区間信号を示す図である。図11は、心室性期外収縮(VPC)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。図12は、心房性期外収縮(PAC)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。図13は、心室頻拍(VT)が発生した状態の心拍信号に対応する区間信号を示す図である。

【0063】
心拍信号に異常が発生している場合には、P波区間信号及びT波区間信号が正常な状態と異なっていることがわかる。P波区間、T波区間、QRS波のタイミングに対応する音域で、夫々の区間の波形に対応するメロディを聞くことができることで、心拍信号の異常状態を容易に認識することができることを確認できた。

【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【0065】
例えば、上記の実施形態においては、パルス波を含む信号が心拍信号である例について説明したが、これに限らない。パルス波を含む信号は、他の任意の信号又はデータであってもよく、例えば、脳波信号、筋電波信号及び地震波信号等の信号、又は気象データ及び天文データ等のデータであってもよい。

【0066】
また、上記の実施形態においては、主に、出力部133が、記憶部12から読み出した可聴音データに基づいて可聴音を生成し、生成した可聴音を出力する例について説明したが、これに限らない。出力部133は、位置特定部132が特定した複数のパルス波の位置に対応するタイミングにおいて、複数のパルス波の種類、及び複数のパルス波の大きさに対応する演算式を用いて、連続的に周波数が変化する可聴音を生成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 可聴音出力装置
2 可聴音出力装置
11 バッファ
12 記憶部
13 制御部
14 表示部
21 P波合成音生成部
22 T波合成音生成部
23 QRS波合成音生成部
24 ゲート部
25 ゲート部
26 ゲート部
27 ミキサー
28 スピーカー
29 スピーカー
131 取得部
132 位置特定部
133 出力部
134 表示制御部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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